96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

浦和の進む道は正しいか?-その2

 

 続いて、守備について。不用意な失点と前回のチラ裏で書いていますが、実のところミシャサッカーの守備については正直あまり議論の余地が無いというか、どれだけ考えてもしょうがないとしかいいようのない部分があります。難しい部分もありますが、オフェンスに引き続き要素を分けながら考えていきたいと思います。

 

 

 導入として、失点を2つのパターンに分類します。

  • どうにもできない失点
  • どうにかできそうな失点

今回の分類は簡単に言うと、「これはしゃーない」と思える失点と、「なんでだよ!」とため息をついて思わずブツクサ言ってしまいたくなる失点ということなんですが、みなさんの感覚としてはどちらの失点のほうが多いですか?僕の場合は圧倒的に後者が多いです。多くの失点シーンは、「なーんであそこで失点するかね?」とハーフタイムにタバコでも吸いながら知らない人と愚痴り合えるようなものなのです。笑。(不用意な失点と前回書いたので、つなぎのミスからの失点についても書こうかとも思ったのですが、いろいろと記事を書くにあたってつなぎのミスは割合として重大ではなく、わりきりが必要な部分と考え、今回は触れません。)

 では、なぜ「どうにかできそうな」失点が多いのでしょうか?それは、人が足りているからです。レッズの守備は、ほとんどの場合人が足りています。オフェンシブなサッカーを標榜しているくらいですから守から攻への切り替えはもちろんのこと、攻から守への切り替えの意識も非常に高く、観ていて不満に思うこともほとんどありません。攻撃参加ばかりがクローズアップされる槙野や、攻撃時にはWGの位置まで上がって再三チャンスメイクしてくれるサイドの選手ですら守備でサボっていると感じることはほっとんどありません。実はニコニコ動画に、2012シーズン前半戦の得点および失点をパターンごとに分類して紹介してくれる神動画があります。リンクは貼りませんが、気になる方は是非ご覧になってください。その動画によると、動画内の28失点のうち相手選手の個人突破による失点は0。しかも、僕が見る限りボールロストから切り替えで遅れて数的同数もしくは数的不利の状態で決められたゴールもありません。けっこう良いと思います、レッズの守備。(ちなみに今季のACLでは広州にカウンターを決められていますが。。。)

 長い導入になりましたが、ここからが本題です。人が足りてるのはわかった。選手が守備サボってるわけでもないこともわかった。「じゃあなんでこんなイライラする失点が多いのさ!」ってことですね。なぜ、「どうにかできそう」なのに失点してしまうのか。これは、ある意味で構造的な問題です。ミシャサッカーを続ける限り解決できないのではと疑ってしまうような、根っこの深い問題だと思います。

 前出の神動画によりますと、昨年の失点で一番多いのはセットプレーからの失点です。より正確に言うと、セットプレー崩れの失点です。何が言いたいかと言うと、セカンドボールを拾われちゃうんです。しかも、バイタルで。クロスを跳ね返しても、セカンドボールを拾われてそのまま失点してるのが一番多いんです。レッズのディフェンスの最大の欠点は、試合の経過とともにセカンドボールを拾えなくなっていくことだと僕は思います。レッズの選手の個の能力はJでも有数でしょう。そして前述のようにほとんどのシーンで守備の人数は足りています。それでもセカンドボールを拾われる。そしてそのまま失点するのです。なので、サポーターは(おそらく選手も)非常に歯がゆい思いをしてしまうのでしょう。

 では、なぜレッズの選手たちはセカンドボールを拾えないのか?それは、人がいないからです。クリアボールが落ちてくるバイタルエリア周辺に、レッズの選手がいないのです。ミシャサッカーの守備では、3バック+WBの5枚が最終ラインに並びます。その前にダブルボランチが並び、その前に2シャドー、1トップというのが基本的な守備陣形です。この守備陣形が問題の根源なのです。多くのメディアでは、ミシャサッカーは守備時5-4-1になると記述されています。ですが、実際はそうではありません。いうならば、5-2-2-1、より極端に言えば5-2-3と言っても良いかもしれません。つまり、思ってるほど2シャドーは守備に戻らないということです。導入部分で申し上げた通り、レッズの守備、最終ラインにはほとんどいつも人が足りています。むしろ、相手チームのサイドバックがオーバーラップした場合ですら、ファーで逆サイドのWB1枚は余っているくらいです。ただし、その前に人はいません。特にサイドをえぐられてクロスを上げられた場面では、多くの場合バイタルエリアはすっかすかです。2列目から飛び込んでくる選手のケアもあるのでしょうが、ボランチが最終ラインに吸収されていることが非常に多い。少々大げさですが、瞬間的に7-0-3になっているんです。これではどれだけ屈強な選手を補強したって、基本的には失点して当然かと思います。相手はボールを拾った瞬間に決定的ゴールチャンスなわけですから。さらにひどいことに、昨年はディフェンス時にボールをあまり奪いにいかず、自陣深くで囲い込むような守備をしていました。つまり、勝手にじりじりラインが下がっていくような守備を採用していたんです。ラインが下がって、ボランチが吸収されて、、、こう書くと背水の陣なのにバックステップかましてるような守備ですね。ですが、今季はこの部分を若干修正し、ボールを奪いにいくような前からの守備を実践していますね。ただし、90分続けるにはまだまだといった感じです。試合展開や経過時間によって、昨年のずるずるディフェンスが顔を出してきます。こういった理由から、時間の経過とともにセカンドボールが拾いにくくなっていくのです。そして、決壊。

 では、悪いのは誰でしょうか。頻繁に最終ラインに吸収されてしまうボランチでしょうか?中途半端なクリアを繰り返すCB?はたまた、一向に戻ってこない2シャドー?これが、いろいろ考えてみても、特定できません。まず、ボランチ(特に批判の的になるのは啓太ですね)が最終ラインに吸収されてしまうのはある程度仕方ないと言えます。なぜなら、Jリーグのオフェンスでは2列目のゴール前への飛び出しはもはやスタンダートだからです。サイドからクロスが上がった場合、これについていかなければボランチ失格です。J有数の危機察知能力を持つ啓太がこれを察知してケアするのはチームに大きく貢献していると言ってよいと思います。この結果単純なクロスからの失点は少なく済んでいる、という面もあるかもしれません。ただ、ついていった結果バイタルが空いてしまい、そこでセカンドボールを拾われて失点している"だけ"なのです。では、CBの責任はどうでしょうか。はっきり言って、この問題の解決を彼らに託すのは少々無理があると思います。そりゃ、相手のクロスを、自陣ゴールに向かって戻りながら、ヘディングでハーフラインまでクリアしてくれるか、的確に味方にパスしてくれるのであれば、ほとんど一気にこの問題は解決しますが。。。最後に、2シャドー。レッズの2シャドーが守備に戻らないというのは、キャプ画像をふんだんに使ったわかりやすい解説をされる有名サッカーブログさんが指摘しておりました。そんで、元気やマルシオを痛烈に批判しておりました。確かに2シャドーが相手サイドバックについて行ったり、ボランチと同じラインまで下がってバイタルを埋めてくれれば、なんだかセカンドボール問題は一気に改善しそうな気がします。でも、それじゃカウンター撃てないじゃん。ミシャサッカーというのはオフェンシブなサッカーです。点を獲るサッカーです。頻繁にクローズアップされるようなポゼッションを基礎にしたオフェンスだけではありません。素早い切り替えと前線の個の能力からなる華麗な速攻もミシャサッカーの大きな強みなのです。事実、それで広島を撃破したのですから。つまり、ミシャサッカーを貫いてオフェンシブに戦うなら、2シャドーがあんまり低い位置をとって、1トップと離れるのはNGなのです。このように考えていくと、有効な改善策がすぐには見つかりません。これが、僕の思う"構造的な問題"なのです。

 ここで、冒頭・導入に戻ります。「どうにかできそう」な失点が多い!と文句を言っていた僕ですが、ここまで考えて帰ってくると、皮肉にも、「どうにかできそう」な失点を減らすことは、ミシャサッカーを続ける限り、「どうにもできない」ように思えてきます。実際、現時点で僕は具体的にどうすれば良いという意見はありません。どう考えても、しょうがねえよなあと思ってしまいます。このへんは素人なので気楽なもんです。もはや、誰かうまくどうにかしてくれ!と思いながら見ています。ですが、ミシャ監督は大変です。この問題をどうにかしない限り、レッズの「どうにかできそうな」失点は減らないのです。現状終盤必ずバイタルが空き、ピンチを招きます。少し応用すれば、アーリークロスを入れてレッズの最終ラインを強制的に下げ、セカンドボール狙いという戦術も有効かもしれません。現状、こういった状況に陥らないためには、ボール保持率を極限まで上げるか、ラインを常に高く保ちボールホルダーに常にプレッシャーをかけ続けるくらいしかないのではないでしょうか。それゆえ、ポゼッションが7割近かった清水戦であんな負け方をしたのは僕は個人的に非常にショックでしたが。。。

 以上が、僕の考える守備面でのレッズのサッカーの問題点です。守備に関しては本当に難しいです。これが広島の降格した理由、ミシャサッカーでは優勝できないといわれてしまう理由なのでしょうか。攻撃・守備それぞれにある、こういったもやもやを、セレッソ戦で解消できるかどうか、その兆しが見えるのかどうかを、前回の記事で、レッズのサッカーで勝っていけるかどうかの証明と表現しました。結局セレッソ戦を観てからこのチラ裏を書いているので、もうほとんど中身が前後してしまっている部分もあるのですが。。。

 

③へ続く。