96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合の分析的感想を書いたりするチラシの裏です。 twitter: @urawareds96

試合を決めた開始3分。 ルヴァンカップ予選リーグ第1節 vs名古屋

日曜日の広島戦から中2日。昨シーズン7位に甘んじ久しぶりの出場となるカップ戦予選のレビューです。

 

ルヴァンカップはレギュレーションで21歳以下の若手を一人以上スタメン出場させることが義務付けられており、それを反映したスカッドが組まれました。ちなみに、レッズはこのままリーグ戦第3節vs長崎へ直行することが決まっています。

 

—————興梠—————

荻原————————李—

———長澤—-—武富——-

—————青木—————

菊池—-槙野—岩波-—遠藤

—————西川—————

 

控え;福島、マウリシオ、宇賀神、阿部、マルティノス、武藤、ズラタン

 

対する名古屋はスタメンをリーグ戦から全員交代。特に両サイドバックにu-18の選手が入るなど大幅なターンオーバー。対していわゆるレギュラークラスの選手を5枚ほど変えた1.5軍という構成のレッズ。試合のポイントとしては、個人的には下記の3点に注目していました。

 

・プロデビューとなった荻原の思い切り

・同じくレッズデビューとなった岩波のビルドアップへの貢献度と守備

・右サイドバックのプレーの質

 

最後の右サイドバックについては、左サイドの荻原の突破を普段のマルティノスの突破に置き換えて機能させると考えた場合、逆サイドの李が普段の武藤のように中央に飛び込む狙いがあるのではと予想するところ、李が中よりにプレーした際のサポートの仕方、また遠藤がマルティノス以外の選手と組んだ際にどのようなプレーを見せるかというところでの注目点です。

 

試合の趨勢を決めた開始3分と荻原の勢い

 この試合を決めたのは開始3分までの展開だったのではないでしょうか。キックオフからボールを繋ぎ、試合を作ろうとしたのは名古屋でした。サイドバックを絡めた中盤でのパス回しから中央へ短いパスで侵入していく狙い。しかし浦和は中盤の3枚と両サイドバックを含め、素早いアプローチとフィジカルコンタクトで悉く潰していきます。名古屋はベテランの玉田や佐藤寿人、押谷を含めボールを迎えにいきますが、その前の段階で中盤が浦和の選手に潰されてボールを失い、カウンターを受けるたびに作りにいったリズムを崩していきました。この3分間の攻守のぶつかりで、名古屋は「フリーの相手にパスを出し、それを連続することでゴールへの道筋をつくる」風間イズムを発揮できず、中盤でボールを引き出す動きまでも連鎖して消極的になってしまいました。浦和は青木や長澤、槙野や遠藤など昨年ACLを戦い抜いた面々が名古屋の若手にアジアレベルのフィジカルを見せつけた形。個人的に、この時間帯にフィジカル面の優位を明確に名古屋の選手へ刷り込み、また同時に松尾主審のジャッジ基準を作り出したという点で良かったのかなと思います。名古屋の選手は浦和の選手のフィジカルコンタクトに対応するため当たりを強めましたが、ボールへの出足の遅さも相まってファールを取られることが多くなり、さらにリズムを崩す要因となったように思います。名古屋の中盤のトランジションの遅さ、ボールへのチェックの甘さに乗じてレッズの選手は五分五分の判断になる局面で自信を持ってプレーし、こぼれ球やDFでのファーストチェックもより積極的にはっきりプレーできるようになりました。この3分間でフィジカル的な優位を確認できたことが浦和の前半のこれまでにない良好なプレーリズムを導いたと言えます。

試合はその直後の前半9分、右サイド長澤のクロスから興梠がヘディングでファーストシュートを決めて先制、15分には左サイドに流れた興梠が中に柔らかくパスを入れると、流れで中央右に入っていた荻原が飛び込んで左足ダイレクトのゴラッソでプロ初ゴール。さらに直後の17分にまたも右サイドの長澤から遠藤がすらして中央の興梠へ。若手DFに挟まれるもしなやかで強いボディコントロールでボールを収め、転んだDFを嘲笑うように余裕を持って3点目。この間、試合開始直後と同じように名古屋のトランジション、ボールへの執着、ボディコンタクトは甘いまま、浦和は局面勝負を優位に展開すると同時に積極的にボールを前に展開し、名古屋の両サイドのスペースを有効に使いつつ中央で仕留める形を繰り返しました。31分には荻原が裏に抜け出しドリブルでペナルティエリア内に侵入、左足を振り抜くとこれがディフレクションしゴールに吸い込まれ決定的な4点目。この4点目は自陣左サイド深い位置でボールを持った浦和選手を追いかけた名古屋を中盤の青木⇨長澤で一気に外し、入れ替わった瞬間に裏をついた荻原のスピードを活かした美しい展開の得点でした。

2得点の荻原は、味方(特に菊池)との連動ははっきり言ってまだまだという印象ですが、前へ前へプレーする勢いは名古屋右SBで先発の荻野を圧倒。持ち前のスピードを活かした突破に加えて常にゴールへ、ゴール前へボールを供給していく姿勢はデビュー戦としては満点の出来。対面する同世代の荻野を早々に屈辱の交代へ追いやり、繋がらなかったものの惜しい高速クロスを見せるなど、原口、関根といったかつてWGで活躍した同ポジションの先輩たちを大きく凌ぐスーパーデビューでレッズサポーターの心を掴んだのではないでしょうか。

 

岩波の可能性と課題

この試合のもう一つの注目ポイントの岩波。彼もまた、良い浦和デビューを飾ったのではないでしょうか。興梠の美しい先制点は長澤のクロスからでしたが、起点は右サイドから大外裏へ走った李への岩波の完璧なフィードから。相手FWを目の前にしていましたがしっかりと顔を上げて李のフリーランをドンピシャで捉えました。さらに2点目も興梠が浦和左サイドに落ちたところに岩波から対角へフィード一発。いずれもワンステップで正確に前線へ繋げており、岩波からの長く大きな展開が名古屋の守備面での狙いをさらに難しくするとともに、浦和の狙いである両サイドの幅取りとSBのサポート、名古屋DFラインの押し込みと中盤でのプレースペース等、多くのメリットをレッズにもたらしました。岩波の大きなフィードは同サイドでも対角線でも精度はほとんど変わらず、しっかりと試合を見返せていませんがこの試合で7本程度あったのではないかと思います。同じCBの槙野がこの試合フィードチャレンジなし、遠藤は2本ほど対角への展開を狙いましたが失敗したことを踏まえると、岩波が今日の試合の組み立てにどれだけの貢献を果たしたかはっきりとわかります。また、前線への持ち出しで中盤を圧縮すること、西川を使ったビルドアップでのはっきりとした幅取りなど、迷いなくプレーできたことは岩波の大きな自信になったかと思います。ここまでの2試合では最終ラインからのビルドアップに難を抱え、SBからのWGへの組み立てを狙われたことや、日曜日の広島戦ではマウリシオのボールタッチが定まらなかったことを考えると、この試合での岩波の台頭はレッズの攻撃全体を下支えする役割として注目に値するものであったと言えると思います。

一方で、岩波はこの試合で弱点を晒してしまったことも事実として見逃せません。前半で一回、後半では複数回名古屋FWに裏のスペースを突破されピンチを招きました。岩波の弱点としてはスプリントのスピード不足と、それ以上に5メートル程度の初速の遅さが挙げられます。特に後半では複数回イーブンのボールへの反応で遅れ、ラインの裏を突破されシュートに持ち込まれたほか、突破された後に対応を諦めたような素振りも見えました。槙野に裏の対応を任せ、マイナスのスペースを埋める考えとも判断できそうですが、裏への対応に弱点を抱えることとネガティブなシチュエーションで淡白な対応が散見されることは岩波の今後の課題と言えるかもしれません。

岩波は、少なくとも今後のルヴァンカップでの出場機会は保証されていると考えて良いでしょう。槙野とは別の、そしてお互いを補完しあう特徴を持つ選手なので、うまく連携が出来てくればマウリシオを押しのけてのリーグ戦での起用も期待できるかもしれません。特にビルドアップでは彼のフィードはレッズの大きな武器になる可能性があります。個人的には、ビルドアップにおいてはより主体的に、全体をコントロールするくらいの意気込みと存在感でプレーして欲しいところ。ショートパスの組み立てやグラウンダーの縦パスでも後半スペースが出来てからはより積極的に狙っていたように思え、これがリーグ戦のより強いプレッシャーの中でも見せられれば非常に期待できる武器になるのかなと思います。

 

圧倒的な存在感を見せつつある遠藤航

最後のポイント、右サイドバックのプレーの質。これについては遠藤が試合前の懸念を圧巻のプレーで払拭してくれました。久しぶりの先発で前半から積極的なプレーとフリーランニングを見せる李を適切にサポート。タイミングを見計らったオーバーラップ、最終列でプレッシャーを外した後のハーフレーンへのドリブルでの前進、大外で幅を取りつつネガティブトランジションに対応するポジショニングなど、このポジションに求められるプレーをほぼ完璧に理解し実行する質の高さを見せました。ちなみに、個人的な当初の目論見である荻原のクロスから李が中央で合わせるという形はあまり見られませんでした。おそらく、ボールの引き出し方や後ろのサポートも含め、右サイドのほうが組織として整理されていたためだと思われます。むしろ、右サイドからのクロスによる得点が多かったこともこれに起因すると言えると思います。局面でも名古屋の若手相手にフィジカルコンタクトとボールスキルで質の違いを見せつけるなど、安定感のあるプレーは腕に巻いたキャプテンマークも納得の出来と言えると思います。遠藤は現チームでもっとも堀サッカーのポイントとギミックを理解していると思われます。広島戦では試合後のコメントでもスペースの使い方やWGのサポートの判断について具体的なコメントと手応えを口にしており、持ち前の戦術理解力は現チームでも群を抜いているのではと感じます。

一方で、後半終了間際の失点シーンでは高い位置でプレッシャーをかけた遠藤と岩波の間のスペースを押谷にフリーランで使われ、マイナスのクロスで佐藤寿人の得点を許しており、このあたりのバランスと守備面での連携はもう少しと言ったところ。ただし、後半65分以降のレッズはチーム全体のパフォーマンスが落ち込み、名古屋に押し込まれるとともに中盤でのパス交換の時間、空間的余裕を許していたため、遠藤の判断だけの問題というのは憚られます。

 

余裕の展開でも露呈した堀サッカーの大きな課題

圧倒的なフィジカル面での優位をベースに、岩波からの大きな展開と李の積極的なフリーランでスペースを有効に使い、さらに副次的にできた中央の空間を興梠、長澤、武富、青木の真ん中の四辺形が大きく動き回ることで名古屋を翻弄。両サイドのSB、IH、WGの三角形のローテーションを使った(特に右サイドでの)ボール前進など、これまでになく自信を持って積極的にプレーした堀レッズ。最後の局面での興梠の落ち着きや荻原の積極果敢なプレーと良いことづくめだった前半に比べ、後半は体力の消耗に従って徐々に中盤の支配力を失い、名古屋に押し込まれると最後には上述の押谷⇨寿人でゴールをこじ開けられ、またもクリーンシートを逃しました。これはもちろん、中2日のレギュラー組に加えて久々の先発出場の李や初先発で早々に体力を使い果たしてしまった荻原など体力的に厳しかったことは否めず、4得点で勝負を早々に決めた展開からも、致し方ないことなのかもしれません。ただ、戦術的な対応力という意味で堀サッカーの課題がまたも露呈したことは特筆すべきことと感じます。

名古屋は後半開始後しばらくから、前半の4ー3ー3から押谷と寿人の2トップへシステムをシフト。中盤を4枚にすることで浦和WGを外した後の中盤両サイドの展開で数的優位を狙うとともに、前半猛威を振るった浦和の最終ライン4枚に加えて西川を使ったビルドアップに数を合わせてプレッシャーをかけます。これに対して浦和としては、両サイドバックを高い位置にあげるとともに岩波と槙野が大きく開き、真ん中にアンカーの青木や、その後青木と交代した阿部が降りることで3枚回しを多用。最終ラインに数的優位を用意することで前進を図りましたが、その後の展開でサイドにつけたところで局面の数的同数となり苦戦。前述の体力消耗も輪をかけリズムを失っていきます。時折局面の勝負で入れ替わったり、名古屋の稚拙なミスからショートカウンターを発動、武富、ズラタン、長澤などがゴールに襲いかかりますが不発。追加点が奪えなかったことで試合をクローズできず、自らが制御できないほどリズムを失ってしまいました。

4ー4ー2で中盤4枚がハードワークできる相手との対戦だった開幕節、第2節と同様に、4ー4ー2で4バックに枚数を揃えられ、IHのサイドへのサポートが遅れ気味になるとレッズは試合のリズムを失う傾向にあります。これは最終ラインにアンカーを落として数的優位を作っても、IHを含めた中盤の構成がボールの展開に間に合わないことや中央を閉められたことによってサイドにボールが過剰に寄ってしまうことなどが原因と考えられます。おそらくSBの位置どりを工夫したり、片方のWGを中に入れて中央の枚数を揃えるなどの工夫でもう少し対応できそうですが、この辺りはまだ試合中に修正し速やかに対応するところまでの整理はなされていないようです。広島戦でも後半から2トップを縦関係にしトップ下を作られたところで対応が中途半端になり、川辺の中央突破を許しスクランブルを作られてしまいました。

まだまだサンプルが少ないので決定的ではないものの、SBをシンプルに使え、中盤で数的優位を築かれない4ー3ー3相手であればフィジカル面や個の質などで優位を保ち試合をコントロールできる可能性が高そうです。一方で4ー4ー2や4ー2ー3ー1など中盤で数的優位をベースに中央を塞がれ、浦和のビルドアップを「待たれる」場合は苦労することが予想されます。思えば名古屋は中盤が同数にもかかわらず中途半端に浦和のビルドアップを深追いした節があり、特に前半は比較的単純にプレッシャーを突破し青木、長澤の質的優位で中盤で前を向き、前線へと良い展開を供給できていました。3バックへの対応はまだなんとも言えませんが、長崎は時に5バックとなり枚数を使って自陣スペースを消したところからのカウンターを狙うと思われ、堀レッズがどのように立ち向かうのか注目です。

総括して、前半の優位な展開で4得点を奪い攻撃の良いイメージを持てたこと、新戦力のデビューを良い形で飾れたこと、今シーズン初勝利を上げたことはポジティブな点。相手の息の根を止める追加点がなかったこと(あと4点分はフリーでシュートを撃てた決めるべきシュートがありました。)、相手のシステム変更への試合中の対応、修正に若干の不安が見られることや最後の瞬間に失点してしまったことはネガティブな点。全体では相手のレベルも考えて70点程度の出来なのではないかと思います。この勝利で勢いをつけ、チーム全体の競争を煽ることでよりチーム全体の完成度が高まっていく、そんな好循環を期待して、次節長崎戦でのリーグ戦初勝利を待ちたいと思います。

 

長文を読んでいただきありがとうございました。