96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

崩壊。今、何を信じるか。 ルヴァンカップ予選リーグ第2節 vsガンバ大阪 分析的感想

どんな形でこの試合に触れていたとしても、この試合を振り返りたいと思うレッズサポーターは殆どいないのではと思いますが、、、今日のこの90分も記録しておきたいと思います。

 

 

レッズはメンバー全員をターンオーバーした名古屋との前節を4ー1で快勝。リーグ戦は未勝利ですがやりたい形が見えるシーンもあり、堀監督の手腕を100%信じられないまでも一縷の希望とともにホームでガンバを叩き、日曜日のリーグ第4節マリノス戦に繋げたいところ。一方のガンバも昨シーズンから公式戦17試合未勝利と泥沼から抜け出せず、今シーズンから就任したクルピ監督の手腕が問われるシーズン序盤となっていました。お互いにどんな形でも勝利がほしい一戦、スタメンはお互いレギュラー格の選手を起用した平日のルヴァンカップにしてはガチ度の高いメンバーとなりました。

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控え:福島、宇賀神、青木、直輝、マルティノス、武藤、李

 

クルピの奇襲

レッズはいつも通りの4ー3ー3。CFにズラタン、左には前節名古屋線で鮮烈デビューの荻原、右には武富が始めてこのポジションに入りました。中央は柏木と長澤のレギュラーIHを起用し、アンカーに阿部。左には堀監督が評価している菊池、CBは槙野と岩波、右SBは遠藤が連戦を戦います。レッズとしては、森脇がこの試合に間に合わず遠藤を連戦で使わざるを得なかったのは誤算でしょうか。また槙野、長澤、柏木も連戦となりました。

ガンバは4ー3ー3を採用。これまで4ー4ー2を採用していた印象があったのですが、この試合では市丸、遠藤、泉澤を中盤に、アデミウソン、長沢、ファンウィジョを前線に並べる攻撃的なフォーメーションで試合に臨んできました。

今振り返れば、この試合の勝敗は試合が始まる前から決まっていたのかもしれません。ガンバの布陣は4ー3ー3ながら、レッズのようにスリートップが幅をとる形でなく、スリートップ全員がCFのように振る舞い中央に人数をかける形で試合に入りました。これによって、レッズは堀監督や選手、もしかするとサポーターも含め予想もしなかった猛攻撃を浴びることになります。

まず、中央に長沢とファンウィジョが構えて中央への圧力を確保し、浦和の2CBへ対応を迫ります。それと同時にアデミウソンがアンカーの阿部の脇で浮遊するように中間ポジションを取りました。これに困ったのが岩波で、長沢を監視したいところですがアデミウソンに縦パスが入ると前を向かれてしまう。漂うアデミウソンが気になりながらも捕まえきれなくなってしまいます。そこで、遠藤は岩波をサポートしようと中央に絞り気味にポジションを取り状況に対応を図ります。ここで自由を手に入れたのが3枚のセンターハーフに入っていた泉澤。遠藤が絞った分の浦和右サイド大外のスペースに猛然と走り込み、ドリブル突破を仕掛けます。さらには泉澤のサポートに藤春まで上がってくるので浦和の右サイドは完全に制圧されてしまい、最初の10分間、浦和はこの形に全く対応できず、キックオフから一度も修正できないまま3度も決定機を作られます。

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これはおそらくクルピの用意した奇襲作戦。試合開始直後に一気に浦和のバックラインを混乱に陥れることに成功し、試合の主導権を明確に握ります。ちなみにこの間、阿部の脇のスペースを消すために前2枚のIHがボランチ化してスペースを消すだとか、泉澤が外に張り出す動きに着いて行くという動きはほとんど見られませんでした。浦和としては、ガンバがこのような積極果敢な試合の入り方をしてくると全く予想していなかったのではないでしょうか。修正やマークの整理をする間もないまま、ガンバのペースに飲み込まれていきます。

ガンバによる、まさにいきなりクライマックスとも言えるジェットストリームアタックは、そのままプレッシング面でも機能的に設計されていました。浦和のポジティブトランジション、またはビルドアップを図る局面においては、そのまま泉澤が4トップのごとく浦和のバックラインに数を合わせて襲い掛かります。

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ガンバのプレッシングラインは2ー4ー4。アンカーの阿部やフィードに自信のある岩波をうまく使って前進し陣地回復を図りたい浦和でしたが、ガンバの前線4枚の壁に為すすべくボールを刈り取られ、もはやサンドバック状態となったのでした。この流れの中、ガンバは最終ラインからの縦パスを中央に入り込んだ泉澤が受ける動き。一連の流れと同じく遠藤がついていきますが泉澤はスルー。同ライン上のアデミウソンが岩波もろとも潰れると落としを回収した泉澤がドリブル突破から高速クロス。中央に入り込んだファンウィジョが合わせて13分に早々と先制。試合の趨勢を一気に決めてしまったのでした。遠藤も必死に戻って対応しましたが彼の足に当たったクロスは勢いそのままにDFラインとGKの間へ。少し不運ではありましたがファンウィジョの飛び込みは素晴らしいタイミングで、それまでの展開から考えても当然とも言える失点となってしまいました。

 

巻き返せなかった中盤

先制点をとったガンバは、勝ちから遠ざかっているからか、ここから落ち着いてレッズの攻撃を受け止める守備にシフトしていきます。

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最初の15分間の浦和の混乱具合からすれば、このまま同じように試合を決めてしまっても良かったように思いますが、なんとしても勝利したいガンバからすれば妥当な判断だったのかもしれません。このおかげで浦和は図らずもボールを保持する時間を享受できるようになっていきます。ここから40分までは、浦和も自分たちのビルドアップから攻撃を仕掛けていきますが、なかなか良い形で攻撃を構築できません。右WGに入った武富にボールを入れて相手を広げ、遠藤がサポートする形を狙いますが、武富が相手をぶち抜けるわけでもなく、遠藤も連戦の疲労からか自分の後ろのスペースを気にしてか積極的に追い越す動きをするわけでもなく、停滞感のある各駅停車のパス回しが続いてしまいました。浦和はこれまでの試合と同様にIHの役割と狙いが整理されているとは言い難い内容で、バックラインからの押し上げを前線で待つのか、それとも一旦下がってビルドアップを助けるのか、その場合前線の枚数不足をどのように補填するのかという部分に工夫がみられなかったのが残念です。途中長澤が持ち上がり対角のパスを狙ったり、ズラタンとのコンビネーションを狙いますがこれも不発。長澤は大きなジェスチャーで味方にポジションを要求する場面も多く、かなりのフラストレーションを溜めていたように思います。

そんな折、まさに浦和が狙うべき形をガンバが創り出します。

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得意のSBの攻撃参加を交えて浦和右サイドに人数をかけたガンバ。市丸がワンステップで糸を引くようなサイドチェンジで逆サイドに幅を取っていたオジェソクへ。菊池と荻原が詰めますがオジェソクにクロスを上げられると、浦和2CBの中央で弩がつくフリーの長沢が完璧なヘディングで2点目をゲット。ピッチに広く幅をとり、中盤から正確なサイドチェンジで相手の視野を強制的に逆サイドへ誘導し、中央のスペースで仕留める。まさに浦和が狙いたい形でガンバが完璧なゴールゲットしたわけですが、この場面では岩波が長沢を捕まえなければいけないところを悠々とフリーで放置し、競ることも槙野に長沢の位置を伝えることも何もないまま棒立ちで失点してしまう大失態。言ってしまえば単純なアーリークロスだったわけで、この2点目は浦和としては非常に苦しい失点だったと言わざるを得ないと思います。それまでうまくいかずともガンバがトーンダウンしたおかげもあり一発何かで追いつけば試合を変えられるという時間帯だっただけに、岩波のこの対応は試合をぶち壊したと評価されてしまうところ。もっとも危険なポイントであまりにも淡白な対応をしてしまう岩波の悪い部分が出てしまったシーンでした。このまま悪い流れを変えることができず、追加点まで奪われて最悪の前半を終えた浦和。ハーフタイムにも関わらずサポーターのブーイングを浴びてしまうのでした。

 

盤面をマネージするということ

試合内容としても得点差としてもほとんど勝利が間違いないガンバは、アデミウソンに変えて現役高校生Jリーガーの中村敬斗を投入。4ー2ー3ー1で中央を締めつつカウンターを狙います。一方浦和は疲れからか動きに精彩を欠き(試合後コメントでは怪我とのこと)、泉澤の対応に苦労した遠藤に変えて青木を投入。阿部を右SBに落とし4ー1ー4ー1をキープしたまま後半に入ります。

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ここからの展開を全て振り返るのはもはや精神衛生上重大なリスクがあるとしか思えませんのであまり詳しく振り返ることができないのですが、印象的だったのはクルピの盤面の動かし方。序盤の2ー4ー4でのプレッシングから4ー4ー2(ファンウィジョの高さで4ー3ー3にも見えました)、そして後半は中央を固める4ー2ー3ー1と、並び方を細かく変えながら盤面を優位に保っていました。対して浦和堀監督はあくまで4ー1ー4ー1にこだわる構え。サイドチェンジは少なく、選手の距離感も明らかにつかめていない中でも並びは変えず、あくまで選手の質で勝負に出ます。このあたりから、正直見ていても何もないなあという絶望が頭をよぎり始めていました。

試合は、後半9分にコーナー崩れから浦和右サイドで青木をかわした泉澤のシュータリングをまたも長沢が頭で合わせて3点目。試合を決定づけます。浦和はこれを受けて16分に長澤に変えてマルティノスを投入。武富をIHに落とし、堀サッカーの狙いとする、マルティノスや荻原のサイド攻撃、サイドを押し込んだ後のSBからのクロスでの攻撃を強調します。この形からズラタン、槙野などが頭で狙うも、東口にストップされて効果的な反撃にはならず。ガンバはその後初瀬、米倉を同時投入しシステムを4ー4ー2に変更します。サポーターの多くはこのあたりから(もう結果はいいから直輝を見せてくれ、、、)という感じだったのではないでしょうか。少なくとも僕は今日は直輝が観れるかなあとおもっていました。後半28分。その時は訪れます。業を煮やした堀監督は菊池に変えて李を投入。こうして浦和は李とズラタンの2トップにサイドからボールを放り込む最終作戦に突入するのでした。

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試合はその後、中央ズラタンの落としを青木がダイレクトで裏に放り込んだボールを、ガンバのオフサイドトラップを搔い潜って2列目から裏に抜けた武富がもつれながらも蹴り込んで移籍後初得点。このあたりから、浦和は漸く自分たちの形を崩しながらもボールを前進させる工夫を見せ始めたと思います。あまりセットの時間帯がなかったので確認しきれませんが、4ー2ー2ー2っぽい並びになっていたように思います。その後、終盤になって荻原の足が限界になったこともあってか、荻原を前に押し出して阿部が下がる3バックに近い形でボールを前進させていきます。

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ガンバの4ー4ー2に対して後ろで明確な数的優位を作れたからか、槙野の持ち上がりなどを使ってボールを前進させる浦和。荻原が限界で突破できず左サイドは壊死し、右のマルティノスも厳しいマークに目立った仕事はできなかったものの、半ば無理やりサイドに起点をつくって中でスクランブルを起こす形でゴールに迫ります。が、最後は中村敬斗に華麗なターンから単独カウンターを許し、最後は阿部もかわされてプロ初ゴールを献上。堀監督の指揮した試合でも最悪の内容の試合は終了したのでした。

個人的には、最後に見せた3ー4ー3チックなボールの運び方は、とくに4ー4ー2を採用するチーム相手には機能するのではないかと思います。やはりバックラインを中心に3バックでのボールの動かし方、全体の前進にはこなれ感があり、リスクのかけ方も距離感の遠い4ー3ー3よりは良かった印象です。また、アンカーシステムはどうも攻守にバランスを欠き、リスクのかけどころが非常に難しい上に、IHが少しでも上下動をサボるとチームが簡単に崩壊してしまうリスクが感じられますが、中盤を4枚で組めばそれも多少は軽減されるように感じます。もしくは、今節のように枚数を合わせられると厳しいことは依然として残ってしまうものの、4ー1ー4ー1を継続しつつビルドアップのパターンをより増やしていくという解決方法もあるのかもしれません。課題となるのはIHとSBの使い方で、彼らの高さによってできるパスコースとそれに応じた3枚目の動き方をより整理することでスムーズな攻撃が再現できる可能性が高まります。特にIHの2枚はこれまでの試合ではかなり流動的に自由にポジションをとっており、ボールに寄ってサポートする意識は非常に高いのですが、ミドルレンジのパスコースを開けておく意識や、あえて離れることで相手の中盤を引き連れる意識はあまり見られません。特に柏木は彼のプレースタイル的にもボールに寄っていくため、同時に相手の中盤を必要以上に収束させてしまっており、CFを含めた前線の選手のプレーエリアが極端に狭くなり、返ってボールが収まらないという事態を招いているようにも見えます。また、SBについても高さや幅、パスコースの面で状況に応じたポジションが取れていないため、特に前線をサポートするIHのサポートという役割の面で不十分に感じます。このあたりは、連戦の中ではなかなか修正できないのが辛いところですが、一度オーガナイズできれば再現性の高さは期待できるため、取り組む意義はあるのかなというところです。

 

選手の目が死なない限り

振り返っても試合内容は最悪で、良いところはほとんど無かったと言って差し支えないと思います。堀監督の采配は相変わらず謎に満ちており、4ー1ー4ー1からサイド攻撃を目指すこだわりは頑なに捨てようとしません。あきらかに配置上の距離感と選手のプレーできる距離感がマッチしておらず、選手の特徴がなかなかでないことも絶望感を加速させる要因のひとつで、このサッカーでは優勝どころか残留を思い描くことすら憚られるような厳しい内容でした。おそらく、このような状況では博打でもなんでもやり方を大きく見直さなければ結果は出ず、このような試合が続けば遅かれ早かれ堀監督は解任となるのでしょう。もともと堀監督はミシャの特攻チームに守備の安定を植え付けようとしたわけですが、それと同時にミシャサッカーの魅力的な攻撃を失いました。そして陥ってしまった、失った攻撃を再構築しようと試行錯誤するればするほどチーム全体がバランスを失うという悪循環。キャンプを通じて、攻撃の部分を選手たちと改善しつつあるはずの今シーズン序盤に、この最悪の試合内容では我慢できないサポーターがいることも当然です。

それでも、堀監督を解任して、それで誰が来てくれるのかという現実問題もあり、いちサポーターとしては、何かきっかけを掴んで、もしくはビルドアップになんらかの整理がなされて、少しずつでもパフォーマンスが上向くのを祈るばかりです。最悪の試合でしたが、一つ良いところを見つけるとすれば、それは選手の目が死ななかったことではないかと思います。もちろん3点目、4点目を食らって足がとまり、パフォーマンスが悪かったことは事実ですが、逆転不可能な状況に陥っても点を取りに前へ前へと走った選手を讃えたいと思います(実は得失点差があるので当然のことなのですが)。試合後のコメントを読んでも、序盤の混乱を反省しつつもより良い組み立てに意欲的なものもあり、それが強がりだとしてもそれを応援していきたいと思います。今節のように、あまりにもあっけなくチームが崩壊した様を見てしまってはなかなか強気なことは言えませんが、それでもサポーターとして信じられるのは、我々に少しでも良いプレーを見せようとしてくれる選手のその目の光なのかなと、自分に言い聞かせるばかりなのでした。

 

色々な意味で、日曜日のマリノス戦は早くも今シーズンの浦和レッズの大一番となりそうです。

今節もお付き合い頂きありがとうございました。