96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合の分析的感想を書いたりするチラシの裏です。 twitter: @urawareds96

目覚めを願って。 Jリーグ第6節 vsベガルタ仙台 分析的感想

水曜日のルヴァンカップから大槻暫定監督の下立て直しを図りはじめた浦和。15連戦の3戦目は、今期公式戦負けなしのリーグ2位、ベガルタ仙台戦を振り返ります。

 

 

プレビューと今節への準備

今節の最大の注目ポイントは大槻監督が調子の良い仙台に対してどのようなサッカーで臨むのか。水曜日の広島戦でも顕著に見られた大槻監督の基本的な方針は「戦術をシンプルに整理し、選手の特徴を活かす」戦い方。大槻監督がコメント等で再三強調しているメンタル面の改善のために、ピッチ上での選手の迷いを極力無くすことを第一優先としてチームを整理しているようです。広島戦での大槻監督監督の回答は相手に形を合わせることでした。広島の4-4-2に対して浦和も4-4-2を採用し数を合わせたことに加え、スタメンを磐田戦から11人全員入れ替えてフレッシュかつモチベーションの高い選手を起用し、若手中心の広島をマルティノスやナバウト、李を中心に質の差で殴るというシンプルなサッカーで善戦を演出。初陣を引き分けてホーム埼スタの今節に繋げました。ただ、広島戦ではリーグ戦を戦ってきたレギュラー組を起用していないことから、4-4-2が大槻監督のスタイルと断言することは難しく、その意味で今節にどのように臨むのかが注目されました。

一方の仙台は昨シーズンから取り組んでいる自分たちでボールを保持し、ハーフレーンを使いつつポジショナルに相手を攻略する戦術的サッカーで、過去5戦連敗している「天敵」浦和に挑む、という意気込みだったようです。渡辺監督は試合前のコメントでも「浦和は日本最大のビッグクラブで、我々はチャレンジャーである」という趣旨の発言をしており、実態として崩壊状態にあった浦和を最大にリスペクトした上で一切舐めることなく今節に臨むことを強調していました。

これらの両監督の今節への準備が、そのまま試合展開となってピッチ上に現れる展開となりました。両チームのスタメンは下記の通り。

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浦和控え:福島、森脇、長澤、直輝、武富、アンドリューナバウト、李

 

仙台は(おそらく)これまでと同様に3-1-4-2を採用。富田のワンボランチの前にIH(シャドー)として中野と野津田。その前に西村と石原の2トップを置く攻撃的な布陣。これに対して浦和は3-4-1-2を採用。今季初めてレッズは3バックを採用してゲームに臨みました。大槻監督がこの布陣を採用した狙いは主に二つあると考えられます。一つは自軍の選手層、特に最終ラインの選手は3バックに慣れていてより特徴が活きると判断した点、もう一つは仙台対策です。特に仙台対策としては、特徴的な中盤の富田、中野、野津田のトライアングルに対してはっきりと数を合わせ、柏木をトップ下で起用したことがその象徴と言えるでしょうか。対戦する両チームが同じフォーメーションで試合に臨み、配置が同じ故にピッチの至る所でマッチアップが明確に発生する試合をミラーゲームと呼びますが、大槻監督は中盤の並びを対戦相手に合わせることで、より鮮明なミラーゲームを仕掛けました。

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こうなると浦和の選手としては細かい戦術の前に自分の目の前の相手がかなりはっきりと認識できますし、それ故に局所での個人の質勝負が多く発生することになります。仙台の細かい戦術やムーブをチームに仕込む時間は無かったはずなので、ある程度割り切って仙台の狙いのうち代表的なものに対応しつつ、あとは個人の勝負で「気持ちを見せろ」というのがプランだったのではないでしょうか。

 

仙台の誤算と混乱。

試合後の渡辺監督のコメントでも明らかになりましたが、仙台は浦和は4バック(4-4-2)でこの試合に臨むと想定していたようです。したがって浦和の布陣に面食らったというか、なかなかポイントを掴めないまま序盤をフワフワと進めてしまったように感じました。何よりも問題だったのは、浦和の選手を捕まえるポイントを最序盤で掴むことができなかった点ではないでしょうか。仙台は浦和が4バックであるとの想定からか、もしくはそれに関係なくかはわかりませんが、2シャドーの野津田と中野が浦和最終ライン、特に両ストッパーにボールが入った瞬間を起点にしたプレッシングの意図を見せていました。

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図は槙野に対して野津田がプレスに行く場面。左WBの菊池は古林とマッチアップ状態のため、ここで槙野に突撃することで早い段階でボールを奪いきりたいという意図だったのだと想像しますが、浦和が3バックで慣れ親しんだ立ち位置だったこと、阿部がボランチに入っていたことで広くビルドアップをサポートしていたことや、仙台の2トップが連動性に欠いてしまい西川を簡単に使われたこともあって、ほとんど意味をなしていませんでした。やはり、おそらく仙台は浦和が4バックという想定でこのプレッシングを準備したのだと思います。浦和の4バックに対して枚数を合わせてのプレッシング、追い詰めてからのショートカウンター連発による浦和最終ラインの制圧はルヴァンカップ予選でガンバ大阪がその破壊力を証明していましたので、渡辺監督としてはその再現を目論んでいたかもしれません。

仙台のプレッシングが空砲に終わり、特にビルドアップに問題を抱えなかったことに加え、追い込まれる場面では簡単に蹴り出すことも選択できていた浦和。浦和の攻撃は、仙台の2トップ横のスペースをストッパーが持ち上がることをベースに、2トップ+柏木の3枚にボールを供給することがポイントとなりました。具体的には、興梠と武藤の2トップが頻繁に富田の脇に降りてボールを引き出し、それに連動して柏木が前線のスペースへ入れ替わるように侵入することで中央からの突破を積極的に狙っていました。

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ここで仙台にとって致命的だったのは、上述のプレッシングのために野津田、中野が高い位置を取ったためにアンカー富田の両脇のスペースを広大に空けていたことに加えて、仙台の3バックが興梠、武藤に中盤へ降りていくのを容認してしまい、潰すことができないまま起点を作らせてしまった点です。中盤が同数で、しかもその内2枚を浦和最終ラインへのプレッシングに使ってしまっていたとはいえ、最終ラインは2トップに対して1枚余らせていたのですから、仙台としてはボールを引き出しに降りていく興梠と武藤は何が何でも捕まえ切って潰すことが重要でした。もちろん全く付いて行かず放置するというわけではありませんでしたが、この二人を自陣の中央で相手にするにしては余りにもチェックが緩かったと言わざるを得ません。興梠、武藤の二人は中央で近い関係を築くことさえ出来れば、非常に豊富なコンビネーションのパターンを持っています。それに加えて柏木が2列目からサポートに飛び込んできますので、仙台の最終ラインとしては極めて対処が難しい状況を作り出してしまいました。結局、中盤に降りた武藤に連動して裏をとった興梠に武藤からスルーパス。実際のところそこまで精度のあるボールではありませんでしたが、平岡が無警戒に興梠を走らせてしまいゴール前で入れ替わられると、興梠が平岡の走るコースを身体で消してボールを保持、出し抜かれた平岡はキーパーと被りながら倒れこんでしまい、それを嘲笑うかのように切り返した興梠が流し込んで浦和が先制します。これで興梠は仙台戦11試合で14点目らしいのですが、これって興梠が仙台を得意にしているのではなく、前に強いが出しぬきやすい平岡をカモにし続けているだけのような気がしなくもありません。興梠vs平岡でマッチアップする試合を抽出してどのような結果になるか少し興味があります。

そんなわけで仙台は自分たちの狙いが外れ、浦和のポイントを潰すことも出来ず。主導権を浦和にプレゼントしてしまった試合序盤となっていました。

 

試合に順応していく仙台と浦和の守備

上述の浦和の支配はおそらく前半30分くらいまで続いていたと思います。正確には、20分に差し掛かる頃からこれはまずいということで仙台の3バックが興梠、武藤を潰しに行くようになり、その後は潰せたり躱されたりという展開が続きますが30分過ぎにはハイテンションで全方位に走り続けた浦和2トップの攻め疲れも相まって仙台の守備が比較的安定し、ボールを保持できるようになっていきます。そうなると試合のポイントは浦和の守備に移っていきます。

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浦和の守備は非常に興味深かったです。基本的に最終ラインへのプレッシングは自重し、ミドルサードで待ち構える守備を採用していました。最重要ポイントは仙台が人数を集める2トップ2シャドーへの縦パスです。ここにボールが直接入ると局面で数的優位を作られて中央から守備が破壊されるため、まずは興梠と武藤をパスコースに構えさせて縦パスを潰します。柏木はその間、若干後方で同じく中央のパスコースを塞ぎつつ富田を監視していました。これまでの試合、柏木隊長を先頭にした特攻プレッシングを仕掛けては頻繁に中央での大ピンチを招いてきた浦和。こうした待ち構える守備を試合開始から整然と始めたのは間違いなく大槻監督の整理であり、「指針さえあれば実行できる」という事がよく確認できた点は感動的ですらありました。

ただ一方で、仙台も今季無敗は伊達やマグレではありません。中央への単純なパスコースを切られたことに対して、2シャドーの中野や野津田がサイドに張り出してボールを引き出す動きを見せていました。ここで起点を作られることはそのまま仙台の両WBがオーバーラップし高い位置をとる起点を作られることになりますので、浦和としてもどうにか対処するほかありません。ここには素直に青木や阿部がそのままシャドーについていき、1枚引き出された中央の守備は柏木が戻って枚数を補充するという整理になっているようでした。浦和は最序盤〜20分ごろまでは、このような守備をベースにミラーゲームを仕掛けた有利を活かして仙台の選手を局面で潰し、比較的安定した守備を見せることが出来ていたと思います。このあたりの人への強さやマッチアップが定まった場合の責任という部分では、さすがに腐ってもアジアを戦いきったチームということで、仙台の序盤の守備と比べると強固であるとともに、失っていた自信をチームが取り戻しつつある、取り戻すべく戦っているという部分が現れていたようにも感じました。しかし、仙台が前線に2トップ+2シャドーと人数をかけている以上、起点が作られてしまえばゴール前へのクロス、その後の混戦はある程度覚悟しなければいけませんでした。仙台は上述のシャドー(IH)がサイドに起点になったところから両WBがサポートに入り、アーリー気味に浦和の3バックの裏へ2トップ+中盤が走り込む攻撃を連発し始めます。この展開では仙台の左WBの永戸がクロスのタイミング、精度、質、種類において特筆すべき能力を見せていました。サイドでWB同士の勝負になった場面でも滑らかなドリブルからグラウンダーのボールを正確に入れることができる彼は仙台の明らかなストロングポイントであり、戦術的前提なのだと思います。彼が今年1シーズン戦いきることができれば、3バックを採用しているチームからは彼を放っておかないと思います。(修三さん、よろしくお願いします。)

その後、サイドに起点を作られたことに対して浦和の中央が空き始めるとともに、仙台の最終ラインがより高い位置を取れるようになっていきます。19分過ぎには高い位置をとった金正也から中央の西村に縦パス。落としたボールを中野が預かり、エリア内に侵入されるピンチを招いています。この形こそ浦和が絶対にやらせたくない形でしたが、これ以降は試合に順応した仙台が安定して再現性の高い攻撃を繰り出す展開となりました。

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浦和は前半終盤、現場の判断かベンチからの指示かは不明ですが、興梠と柏木が最前線で2枚並び、武藤が一列落ちて左サイドのIHのような守備位置に入って、5-3-2を形成する時間帯がありました。これによって、浦和がケアする中央のエリア、仙台が起点にできる2トップ脇のエリアが一層明確になっていました。

 

息切れする浦和と、梁勇基の躍動

後半は開始から浦和が試合序盤と同じくハイテンションで試合に入りました。狙いは基本的に前半と変わらず、武藤と興梠が富田の両脇に降りたところからの展開。青木と阿部のサポートが効いているうちはセカンドボールを拾ってサイドに展開、菊池を走らせるなどの連携も多く見られました。仙台もシャドーがサイドに開いてWBと起点をつくり、中央を経由して永戸のクロスから石原に惜しくも合わないシーンを作っていたものの、概ねレッズペースの後半序盤だったかと思います。流れを変えたのは仙台渡辺監督の采配。前半左からのクロスで再三チャンスを演出していた永戸に変えて梁勇基を投入します。梁は交代直後、仙台右サイドで自らが得たFKをゴール前に蹴り込むとこれが流れてポスト直撃。いきなり見せ場を作ります。仙台は配置は変えずに中野を左のWB、中野の位置に梁を置いていました。永戸を変えたのは終盤を考えると勿体ない気がしましたが、この交代によって中央でのフリーランが増えた仙台の攻撃は確実に活性化し、浦和を押し込む展開となっていきました。

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仙台の攻撃のハイライトは梁のフリーランから。金正也から中野にボールが入ると、梁が遠藤を連れて大外にフリーラン。空いたスペースに野津田が入り込んだところで、マウリシオがケアのためポジションを一瞬あげると、その隙に途中出場で入ったばかりの阿部がエリア内に飛び込み、中野からスルーパス。逆サイドでは石原がフリーで待っていましたが、ギリギリで槙野のスライディングが間に合い間一髪。敵ながら非常に鮮やかな攻撃を梁、中野を中心に構築していました。

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これに影響を受けたのが浦和の中盤、青木と阿部でした。梁が2列目から最終ラインへ頻繁に出入りしており、彼のランニングから空いたスペースを順番に使われていくのがわかっているため、二人はなかなか中盤を押し上げられなくなります。同時に、仙台の中央とサイドのパス交換に手を焼いていた最終ラインが下がり始めてしまい、65分〜80分すぎまで、浦和はかなり押し込まれ続ける展開となってしまいました。ただ、仙台はこの時間に追いつくことが出来ませんでした。ほとんど正直言って浦和の守備は最後の最後でなんとかボールを掻き出しているという感じでしたので、最期の質の部分という話になってしまうのですが、若干の攻め急ぎがあったかもしれません。もしくは、中央を改めて強調して攻めたことで、逆に浦和がゴール前に集中できてしまったという見方があっても良いかもしれません。その後、攻め疲れからか仙台のトランジションの質が落ちてくると、試合は若干大味な展開に。浦和は途中投入したナバウトが柏木らと絡んでのカウンターで追加点を狙いましたが不発。ナバウトはなかなか勝てないチームの雰囲気を感じてか、それとも来日初ゴールが早く欲しいのか、おそらく両方でしょうが、すこし強引に行きすぎる部分がありました。でも基本的には連携で崩せる選手なので、慣れてくれば良い戦力になると思います。総合力は高いです。最期は浦和は柏木、興梠を第2プレッシャーラインまで落としてはっきりと5-4-1を選択。それまでの大味の展開もあって仙台も最後まで勢いが持たず、結局開始5分の興梠のゴールを守りきり、2018シーズン初勝利をようやく、ようやく掴んだのでした。

 

大槻監督の手腕とベガルタ仙台というチーム

水曜日の広島戦同様、大槻監督の整理は非常にシンプルだったと思います。基本的には選手がプレーしやすい距離感とセットを用意するということでの3-4-1-2であったと思います。仙台の攻撃の組み立てもかなり整理されており、どうしても終盤は個人がどこまで気合いで頑張れるかという部分になってしまいましたが、就任の経緯と準備に使える時間を考えれば何も文句は言えません。むしろ、大槻監督は就任から一貫してメンタルの改善に取り組んでいることを発信している通り、最低限の約束があればメンタル部分の作用でチームは劇的に変わるということなのでしょう。そういう意味では、少ない時間でも選手に「頑張る方向性」を少ないルールを以ってして授け、試合中に選手と一緒に戦い、声をかけ続けるというやり方は現状のチームを導く貴重な光になっているのだと思います。本当に、このように闘うレッズを復活させてくれたことには感謝しかありません。個人的には最終ラインのボール奪取や持ち上がりなど、浦和を支えているのは最終ラインの機能性だと考えていますので、少なくとも3バックは継続してほしいと思いますが、いずれにせよシンプルに戦いやすい方法と約束を整理し、選手の自信を取り戻すとともに個人の能力を発揮しやすくするようなやり方で戦っていくのだと思います。そう考えると、やはりチームはこれまで方針と自信を失っていたのだと今更感じてしまう部分もあるのですが、、、。

最後に、仙台について触れておきたいと思います。仙台、本当に良いチームでした。僕の中では仙台といえばサイドバックのクロスにサイドバックが飛び出して合わせるといったアグレッシブなトランジションスタイルのサッカーが印象に強いのですが、今節のようなポジショナルに整理されたコンビネーションは観ていてとても楽しいものでした。選手の役割がきちんと整理されていて迷いがなく、崩しの狙いに再現性があるため何度もトライできる。もちろん個人の質の問題が見え隠れする部分もあるのですが、それを補って余りある選手の特徴を活かした気持ちの良い戦い方。今節は負けに相応しくない、素晴らしい試合をしたと思います。また、チーム状態が悪いものの、浦和を苦手にしている仙台にとってはここで絶対に浦和を叩きたいというモチベーションがあったのだと思います。個人的な事情で今節はDAZNで見たのですが、70分すぎの仙台サポーターの大きなチャントを聞いて感動してしまいました。

これはもちろん勝ったから言えることですが、大槻監督の手腕により闘い方を思い出しつつあるチームと、仙台の質の高いサッカー、声を張り上げて1勝を追い求める選手とサポーター。こんなに素晴らしい舞台で戦っていたのかと思ってしまうほどに、本当に素晴らしい試合でした。恥ずかしながら、目に汗が溜まりました。

これまでなかなか辛い部分ばかりが見えてしまっていましたが、今日の勝ち点3をきっかけに、浦和レッズが目覚めることを願わずにいられません。

 

今節も長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。