96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合の分析的感想を書いたりするチラシの裏です。 twitter: @urawareds96

進化の途中: 新しい強さを見せる宮本恒靖のガンバに悔しい敗戦。 Jリーグ第31節 vs ガンバ大阪 分析的感想

前節宿敵鹿島に快勝したことで6戦負けなしとなり、ACL出場圏内となる3位が現実的な目標となってきた浦和。今節は、レジェンド宮本恒靖を監督に迎え、その後の中盤の猟犬・今野泰幸の復帰以来リーグ戦6連勝と空前の勢いで順位を上げ続けるライバル・ガンバ大阪をホーム埼スタに迎えました。

 

両チームスタメンと思惑

両チームのスタメンは下記の通り。

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浦和側控え:榎本、茂木、武富、マルティノス、柴戸、アンドリュー、李

 

浦和はいつも通りの3-5-2を採用。しかし青木が直前の練習でもも裏のハリを訴えて別メニュー。今節は出場回避となり、代わりに阿部がアンカーに入ります。浦和としては3位以内に食い込んでいくことを考えると、この一戦は絶対に負けられない試合。タイトルがかかっているわけではありませんが、試合の重要度としては決勝戦と言って差し支えのないビッグゲームです。ガンバは6連勝と絶好調ということで、オリヴェイラ監督もガンバの選手の高い個人能力は警戒していたようで、ガンバに対してどのような対策を用意したのかが注目のポイントとなります。

一方のガンバは4-4-2。14得点と決定力を見せているファンウィジョの相棒は、いつもの渡邉千真ではなくアデミウソン。両SBボランチにはお馴染みの面々が名を連ねます。

システムの噛み合わせは前節と同じということで、基本的に浦和の狙いは前節と変わらなかったと考えてよいのではないでしょうか。つまり、4-4-2のSHとSBの間でWBを起点にし、SBを食いつかせた背後をFWや3ボランチの選手が使っていくイメージです。対するガンバの4-4-2は、前節の浦和-鹿島から何を感じているか。浦和のやり方はほとんどわかっているはずなので、ガンバ側の対応力が問われるゲームとなりました。

 

ナンバーフィフティー

また、今節の注目で言えば、二人の15番を外すことはできません。ガンバ大阪の6連勝の立役者といえば背番号15、今野泰幸。元日本代表が怪我からチームに復帰した直後からの6連勝ということでその影響力は計り知れません。ガンバがゲームコンダクターとして遠藤を中盤で使い続ける限り、中盤のインテンシティとバランスを保ち続ける守備的な相方の起用が不可欠となる中で、今野の存在はガンバの屋台骨となっていると言えます。一方の浦和も、背番号15はチームに欠かせない存在です。オリヴェイラ就任後の紆余曲折を経て3-5-2を採用して以来、このシステムの肝の一つであり続けているのが浦和の背番号15、長澤和輝です。攻撃時においては中盤から前線へ飛び出していくことで興梠、武藤のサポートをするとともに、武藤とともに右サイドのビルドアップの出口として積極的かつ効果的なフリーランニングを繰り返し、守備においても豊富な運動量とフィジカルを活かして相手のキーマンを潰すとともに、自陣バイタルエリア付近でのセカンドボールを回収しまくることで浦和の守備を終わらせ、しかも自分で敵陣までボールを運んでいけることでトランジションを安定化させる役割まで担う、今や浦和の生命線とも言える選手です。今節は好調の両チームを支える二人の背番号15がどのような働きをするかもまた、注目のゲームとなりました。

キックオフ前から動いたのはガンバでした。コイントスで勝ったガンバのゲームキャプテン三浦弦太は迷わず陣地変えを要求。お互いが前半にサポーター側に向かって攻めるように陣地を変えました。比較的天候も安定しており、風上風下や、西日の差し具合といった要素も少なかったこの試合で、この行為にピッチ上でどれほどの意味があるかはわかりませんが、少なくとも浦和に対する揺さぶりの意味はあったのではないかと推測します。

もちろんオリヴェイラ・レッズも、何も考えずにこの試合に臨んだわけではありませんでした。キックオフ直後の慌ただしい時間帯が少し落ち着いてきた4分頃から、浦和の守備の形が明らかになります。

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今節浦和が準備した守備の形は、長澤による遠藤のマンマークでした。ガンバの基本的なビルドアップは、両SBが高い位置に張り出し、2枚のCBと遠藤もしくは今野が中央3枚でボールを回す形になります。もちろん中盤の底からビルドアップを指揮するのは遠藤ですので、オリヴェイラとしてはゲームコンダクターの遠藤に長澤を当てることで、まずガンバのビルドアップとゲーム構築の自由を奪いたいという作戦だったのではないでしょうか。遠藤は藤春のスタートポジションとなる左SBの位置や両CBの間に降りていく形を基本としていますが、今節の長澤はピッチの最深部まで遠藤についていっており、中盤の位置で待ち構える守備はしていませんでした。長澤が中盤のエリアを捨てて遠藤を見る代わりに、浦和の中盤を埋める役割は武藤が負っていました。従って、今節の浦和は形上は5-3-2ですが、最初から長澤と武藤が前後を入れ替えたような形での守備を基本としていました。

また、今節の浦和の守備の基本構造のもう一つの特徴が、「なるべくファビオに持たせる」でした。

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長澤と入れ替わった武藤は最前線と中盤の間くらいのポジションで縦を切るか、ファビオに入った場合はファビオにとって最も近いパスコースとなる藤春へのコースを切るポジションをとっていました。その上で興梠は、三浦からガンバの右SBオジェソクへのパスコースを切るような位置をとるか、降りてくる今野のケアをしているようでした。三浦からファビオにボールが渡ればそれがスイッチで、興梠はそのまま三浦へのリターンパスや今野への縦パスのコースを切りながらファビオにプレッシングをかけていました。するとファビオは一番頼りになる遠藤を長澤のマークで失い、興梠は三浦もしくは中盤へのパスコースを塞いでおり、かといってとなりの藤春は森脇と武藤の挟み撃ちを受けそうだ、という形で選択肢を失います。ファビオはこの状態に陥ると状況打開のために自らドリブルでボールを運ぼうとするのですが、武藤や興梠に突っ込んで引っかかっては奪われるといった形が多く、あまり効果的に解決できたような感じはありませんでした。

 

「何もしない」をする遠藤

遠藤は、どのタイミングで長澤が本来のポジションを離れて自分についてきていると悟ったのでしょうか。試合を見る限りでは、遅くとも8分ごろに遠藤が状況を把握したような挙動を見せ始めます。遠藤は長澤が自分をケアしているとはっきりと認識すると、潔いほどに試合から気配を消し始めました。

遠藤は、攻守に関係なく長澤を引き連れて中盤の底にとどまっているように見えました。これにどのような意図と心理があったかは非常に興味があったのですが、残念ながらこの長澤のマーキングと遠藤の対応について触れているメディアや記事は見つけることが出来ませんでした。個人的な想像ですが、遠藤は自分がボールに関わらないことで、長澤も自分をフリーに出来ないために試合に参加できないような状況を作り出していたのかもと思います。自らが中盤の底で停止することで長澤を高い位置にピン止めし、浦和の中盤の密度を下げる、また同時に自分の体力を温存する、くらいの考えは遠藤ほどのプレイヤーであれば当然考えたのではないでしょうか。

一方で、この遠藤の「なにもしない」作戦がガンバにとって有益であったかは評価が難しいように思います。 前半のガンバの攻撃は非常に単調でした。後述する守備組織の構造から言って、そもそもガンバの攻撃は2トップが如何にボールを収めるかに試合展開を大きく委ねる性質があります。浦和のビルドアップに押し込まれたこともあって、ガンバのポジティブ・トランジションは低い位置から始まることが多かったですが、中盤で遠藤のサポートが上手く得られなかったこともあってか中盤で持ち運ぶというよりは早めに2トップに蹴りだすような攻撃が多かったように思います。これが、宮本ガンバの基本姿勢なのか、遠藤の「なにもしない」作戦による弊害なのか、その両方なのか、非常に興味があるのですが、その答えは遠藤のみぞ知るところでしょうか。もしかすると、こんな問いに意味はないのかもしれませんが。

ガンバの攻撃は上記の通り基本的には2トップが収められるかどうかがスイッチで、ファールを受けるなどして前進できれば中盤でボールを保持し、サイドを起点に作っていくというものでした。SBはサイドに大きく幅を取り、その分SHはかなり自由に中央に絞ることが許されています。とはいえポジション取りは個性に応じてという印象で、左SHの倉田は逆サイドまで顔を出すことも珍しくありませんでしたが、一方で右SHの小野瀬は縦にプレーする意識が強かったように感じます。頻出したのは右SBのオジェソクにボールを入れて浦和の左WB宇賀神を釣りだし、宇賀神の裏、大外のスペースに小野瀬がランニングするパターンで、8分、10分、19分など早い時間帯から見ることができましたので、ガンバとしては準備してきたパターンだったのではないでしょうか。

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浦和の対応としては柏木か阿部がついていくか、槙野が迎え撃つとなりますが、同時にガンバにはファンウィジョやアデミウソン、時に遠藤や逆サイドから倉田が小野瀬のいたスペースを使う意図があり、実際に浦和の5バックの前、バイタルエリアが空くシーンは何度か見受けられました。これで小野瀬から致命的なクロスが上がっているとボコボコに点を取られるところなのですが、さすがに対応が槙野ですので簡単にはクロスを上げさせず、致命的なピンチにならなかったのは浦和の強みでしょうか。前半は両チーム非常にコレクティブで、中盤のプレスバックも良く、普段より多くのコーナー(特にガンバ右サイドからのコーナー)を与えた印象はありますが、浦和の守備は比較的安定していたと思います。

 

宮本恒靖のガンバ:基本に忠実で質の高い4-4-2

試合は、上記ガンバの攻撃をたまに挟みつつも、開始から大部分は浦和のボール保持からの攻撃をガンバが受け止めるという展開となりました。ガンバの守備は4-4-2で、配置としては前節鹿島戦と同じです。従って浦和の攻撃の狙いも前節と変わらず、オリヴェイラ・レッズの基本形であり岩波・森脇の起用で劇的に質も向上したWBを起点にしたサイドからの組み立てを狙いとしていくことになります。(浦和の攻め手の基本構造は前節のレビューをご参照ください。)

アジアへ。オリヴェイラ・レッズの充実。 Jリーグ第30節 vs鹿島アントラーズ 分析的感想。 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

前節鹿島の組織にボコボコに穴を空けた浦和の右WB起点のビルドアップに、ガンバはどのように対応したでしょうか。今節のガンバの守備のコンセプトは、「時間を奪う」だったように思います。ガンバの4-4-2はハイプレスは行わず、ゾーン2からスタート。2トップは中央レーンを塞ぎ、マウリシオや下がって受ける阿部からの縦パスを塞ぎます。その上で、3バックの両脇、岩波と槙野に対してはSHが出ていきますが、これに連動して、ほぼ同時のタイミングでガンバのボールサイドのSBが浦和のWBにアタックします。こうなると、例えば岩波にボールが入ったとして最初の選択肢である右WBの森脇は既にガンバの左SB藤春に捕まっており余裕はなく、簡単に前を向けません。スイッチは、マウリシオからの3バック間の横パス。浦和のビルドアップが西川→マウリシオから始まることを利用し、マウリシオから両脇のCBへの横パスを合図に、起点となる岩波や槙野、さらにその先のWBからも時間を奪うというコンセプトだったように思います。

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浦和は狙いの第2段階として武藤がハーフスペースに落ちてWBからのパスコースを作り、ガンバの4-4-2CB(この場合はファビオ)を釣りだします。そしてガンバのSBCBが前に出てきた裏を長澤や興梠がアタックします。ガンバはこれに対して、長澤の対応に遠藤や今野のボランチが最終ラインに落ちて対応、最終ライン、中盤で中央の枚数が減った分は逆サイドのSBSHが中央まで絞る動きを徹底していました。

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この、逆サイドのSBSHがボールに併せて中央まで絞り、時にCBボランチのように振る舞う動きは4-4-2ゾーンディフェンスの基本中の基本となります。しかし、前節の鹿島のように、これを徹底できているチームはそう多くはありません。例えば前節の鹿島では、右SBの西は絞ってエリア内の枚数を確保していたものの、右SHの遠藤の戻り方は曖昧で、ボランチが埋めるべきラインまで下がってスペースを埋めることができず、それゆえに長澤、興梠が裏を突いた後に柏木がバイタルで浮くという浦和の狙いの第3段階がピッチによく見られました。しかし、この日のガンバは、特に多かったのは右SHの小野瀬ですが、ボランチの位置まで下がってラインをつくりバイタルエリアを埋める作業をほぼ完璧にこなしていました。従って、中央もしっかりと締められてしまっています。

ではどうするか。ガンバの4-4-2は基本に忠実な守備組織です。故に、逆サイドを捨てています。ということで、サイドチェンジ砲台「いわなみ」の登場です。岩波は前半だけで56本のサイドチェンジを宇賀神へ。ノーミスというだけでもすごいのに、ワンステップ、ノーステップ、ダイレクトも混ぜながら視野と技術を見せつける様な非常にハイレベルなサイドチェンジで対抗します(サイドチェンジ一本で埼スタから歓声を引き出す選手はなかなかいないと思います。)。4-4-2ゾーンディフェンスの理想としては、サイドに追い込んで縦を切った時点で、相手はサイドチェンジを狙う余裕があってはならないのですが、現実として蹴られたときにどうするか。ガンバの4-4-2の質の高さは、ここにキモがありました。

 

オリヴェイラが言及した「個人の質」。ガンバの4-4-2を支えるのは…

試合前のコメントでは、(ちなみに試合後のコメントでも)オリヴェイラガンバ大阪の選手の「個人の質」、能力に言及しています。

オリヴェイラ監督の中で、調子がよく結果が出ているチームと対戦する上で、特に気をつけなければいけない部分は?)
「選手個々を見ますと、ガンバ大阪川崎フロンターレが日本トップクラスだと思います。非常に高い質の経験豊富な選手たちがいます。そして、最近はいいゲームをしているだけではなく、結果も残しています。ここ6試合でも大きく進化しているチームです。ですので、プラスアルファの注意、そしてプラスアルファの我々の努力が求められると思います」

http://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/オズワルド-オリヴェイラ監督会見11-2/

96は、このコメントに最初違和感がありました。これが誰の事を指しているかわからなかったからです。客観的な数字でいえば、ファンウィジョはここまで14ゴールと結果を出しています。もしくはレジェンドたる遠藤や今野?しかし、リーグ12を争う個人能力と言えるでしょうか?トップ5というならわかりますが、リーグ1、2と言われると…。試合を観て、印象は変わりました。おそらくオリヴェイラは、ガンバの両サイドの選手の質を指しているのではないか?

岩波からの高精度サイドチェンジが宇賀神に通ります。瞬間、宇賀神vsオジェソクの1on1。ここでまず抜かれない。そして槙野や柏木のフォローには、ボランチの位置からケアに走る小野瀬。全体のスライドも早い。宇賀神がクロスを入れても、エリア内には2枚のCB+逆サイドの藤春が絞って枚数を確保、浦和が作り直せば、ボールに連動して小野瀬が出ていき、全体に合せて逆サイドの左SH倉田と左SB藤春がスライド…。ガンバの両サイドの選手4人の運動量と連動性は、今シーズンのJリーグの試合を観てきた中でトップクラスのものでした。埋めるべきスペースを埋め、寄せが早く、デュエルでも浦和の選手に一歩もひるまない。そして、上述した攻撃面では最重要となる幅取りや大外へのフリーランを絶やさない。ガンバ大阪のコレクティブな4-4-2は、両サイドの4枚の高いレベルのフィジカルと献身性に支えられているものでした。

もちろん、弱みはあります。ガンバの守備は横圧縮を徹底した上で、最終的にはエリア内を固めます。今節でも、押し込まれればエリア内に8枚が入り込んでスペースを消すシーンは多く見受けられ、またSHボランチや、時にWBをケアして最終ラインまで下がって守備をするために前線との距離は必然的に遠くなってしまいます。宮本ガンバはサイドの選手の献身をベースにした堅い守備を具備している一方、ポジティブ・トランジションにおいてボールを前進させる術は多く持っておらず、基本的に攻撃に転換できるかどうかは前線の2枚のボールキープが成功するか否かに依存していると言えます。このため前半は守備が機能していてもファンウィジョとアデミウソンが浦和の3バックに捕まってなかなか良い形で前を向けず、攻撃に転換できないという状態が続いていました。

試合が動いたのは42分。上述のガンバの狙い通りのSHの岩波へのプレッシングで時間を奪うと、ボールを引き出しに降りてきた森脇へ藤春がアタック。森脇が中央へダイレクトで折り返そうとした浮き球がミスになりアデミウソンに渡ると、対応した阿部に当たったこぼれ球に逆サイドまで絞っていた小野瀬が反応。ゲームで相手に決められたら即コントローラーを放り出したくなる美しい軌道の左足ミドルが決まり、ガンバが先制に成功したのでした。

このシーンでもやはり、ガンバの両サイドの選手の運動量と連動、攻撃性能が光りました。前半終了時のスタッツが非常に印象的で、走行距離1位はガンバの小野瀬。2位~4位を浦和の3ボランチが占め、その下にオジェソク、藤春、倉田とガンバの両サイドの選手が並びます。さらにスプリントランキングでは上位5位までをガンバが独占し、ランクインはガンバの両サイドの選手+ファンウィジョという結果になっています。

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やはりデータからも、ガンバの両サイドの選手のハードワークが宮本ガンバの4-4-2を支えており、一方で浦和は中盤3ボランチが激しい攻防を支えていたことがわかります。0-1とリードを許して前半は終了。ここまでに見てきた「試合の構造」は、もちろん後半にも引き継がれていくこととなりました。

 

一撃に泣く。

交代なしで後半へ。後半も試合の構造は変わりません。ビハインドを背負い、早く追いつきたい浦和はボール保持からの攻撃を試み、対するガンバはポジティブ・トランジションに難を抱えながらもSHSBが浦和のサイド起点の攻撃を牽制します。浦和としては、ガンバがポジティブ・トランジションに苦労していたこともあって小野瀬のザ・理不尽以外は守備がやられたという感覚もなかったことでしょう。前半と同じ流れでゲームを進めていきます。

同点弾は48分。マウリシオから右の岩波を試したもののガンバのSHSBの寄せの速さを感じてやり直し。西川を経由してマウリシオへ。良かったのは、サイド起点が強く警戒されていたことの裏を突き、バックラインから直接ハーフスペースを使ったことでしょうか。マウリシオは素直に岩波を使うと見せかけてハーフスペースに降りてきた武藤へ直接縦パス。ファビオが付いてきていますが武藤が無理やりターンで剥そうと試みると、こぼれ球は遠藤の裏へ。アドバンテージを得た浦和は、反応の速さとフィジカルで上回る長澤が一気に遠藤を置き去りにするとエリア内へ侵入、ファーにグラウンダーミドルを撃つと弾いたボールを興梠が沈めて注文通り。浦和がサイド起点で作ることを前提としてSHSBが大外に食いついた逆を使う形で後半開始直後に同点とします。

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同点に追いつかれたガンバは、ウィジョとアデミウソンの役割を少し整理。3バックをサポートする阿部がビルドアップのつなぎ役として機能していたのを嫌ったか、アデミウソンに阿部を見させ、守備時はファンウィジョの一枚残しに変更。4-4-1-1のような並びにするとともに、ファンウィジョが槙野を離れ、浦和右サイドにも広く流れてボールを受けるような形になります。

一気に逆転したい浦和は同点後もボール保持。逆転のため、さらにリスクを掛けていきます。左サイドで押し込んでから槙野、阿部を経由して岩波へ。浦和はこの時点で両サイドのWBが大きく張り出し、5トップ化。それに合わせてガンバは両SHが最終ラインまで戻って6バック化。この瞬間だけを切り取ればミシャ時代の盤面のようにガンバの最終ラインに圧力をかけ、ガンバの陣形は6-2-1-1状態。当然岩波はフリーで中盤の広大なスペースを享受します。

使ったのはハーフスペースの武藤。しかし、藤春がしっかりと武藤を捕まえていました。素早い出足で自由を奪い、サポートに入った今野と挟み込んでボールを溢させると、拾ったのはただ一人このディフェンスに反応し、するすると最終ラインからサポートに出てきた遠藤。サイドに開いたファンウィジョに素早くつけると、ドリブルからエリア内に侵入しファーへ右足一閃。西川ノーチャンスのスーパーゴールで浦和を突き放しました。

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浦和としては痛すぎる失点。しかしこれはシュートが良すぎました。もちろん、言及できる点としては、

①少し前の時間帯からアデミウソンが一列降りていて、遠藤からパスを受けられる位置にいた。岩波がアデミウソンをケアした分、その裏のファンウィジョに時間が出来た。
②同点後の早くもう一点ほしい時間帯で、浦和は両WBが非常に高い位置を取っていた。これ自体は間違いではないが、上記岩波の対応と併せて右サイドの岩波と森脇が一度に裏返されて二人のスピード不足が晒された。せめてファンウィジョがエリア内に到達する前に潰しておきたかった。エリア内でファールが出来ず、ファンウィジョの「型」が出る余地が出来てしまった。
③その意味ではマウリシオが早めにファンウィジョを潰すという選択肢はあったかもしれないが…
④そもそも、岩波のパスの選択肢がリスキーであった。ガンバの最終ラインは正面から待ち構えていたので、そこに無理に縦パスを付ける必要があったか…云々。

などなどあるのですが、とにかくシュートがエグかったで良いと思います。あんなの聞いてないよ。

このゴールは、浦和の士気に大きな負の影響を与えたと思います。逆転のため攻撃にアクセルを入れていた時間帯での失点、しかもシーズンに何度もあるのだろうかというようなゴラッソ、スタジアム全体の空気も若干意気消沈し、ピッチ上もバランスを見失ってしまった感がありました。その後の浦和は攻撃が単調になり、早く点を獲りたいために前線に直線的にボールを付けるか、早めにエリア内に放り込んでいくような攻撃となってしまいました。68分にはまたも武藤が藤春の素早い出足に潰され、遠藤のサポートでペナ角攻略からのマイナス折り返しをアデミウソン。この3点目で勝負あり。失点直後から交代枠を使いつつ盤面を動かそうとするオリヴェイラでしたが、今節ばかりは苦しいものがありました。

 

 課題はある、でも今は切り替えて前へ。

印象としては完敗です。ええそうです。認める必要があります。宮本ガンバの4-4-2守備組織と、それを支えるフィジカル、献身性、攻撃性能を兼ね備えた総合力の高い両サイドの4はえぐいです。フルタイムのスタッツでも、誰が宮本ガンバ4-4-2を支えているかは一目瞭然です。

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とはいえ、いくら能力が高いといっても、遮二無二走れば強くなるわけではもちろんありません。その意味では、4-4-2守備の基本を落とし込み、役割と狙いを整理し、彼らのフィジカルを最大限発揮させている組織作りはツネ様さすがじゃないですか?とはいえ、二つのゴラッソはやりすぎですね。運営にはゲームバランスを考えてほしいです。片方だけにシュートアシストつけたら喧嘩になります。

真面目な話、ガンバはこのメンバー・このコンディションであればかなり強いと思います。エンジンとなる両サイドの4枚の質に加えて、スーパーゴールをぶち込んでくるファンウィジョ、中盤でいやらしい巧さを見せつけてくる遠藤・今野のボランチコンビ…。ということでシーズン終了まで突っ走ってしまうかもという印象です。ただ、渡邉千真はまだ良いとしても交代で出てくる選手が同じパフォーマンスができるのか?は怪しいところ。それを克服するためにもオフの戦力確保と若手の育成は今後の宮本ガンバのテーマになっていくのかもしれません。

浦和は、たしかに3失点後はゲームが壊れてしまい厳しいパフォーマンスでしたが、全体としては良く戦っていたと思います。狙いがバレている中でもその裏を使って一点を返したことは悪くないですし、逆転を急いだ結果右サイドを裏返されてしまいましたが、右サイドのパフォーマンスも前半のうちに点が取れていれば評価は違ったものになるでしょう。ちょっとこの時期にこのパフォーマンスで当たるのは運が悪かったですね。一方で、幸か不幸かJリーグには今節のガンバのような守備を具備するチームはそう多くなく、今節のパフォーマンスをあまり気にしても仕方ありません。その意味では、悔しい敗戦後にも関わらず冷静に相手が良かったと讃えたオリヴェイラはさすがだなあと思う次第。

惜しむらくは、マウリシオからの横パスが明らかにガンバのプレッシングのスイッチになっているのにも関わらず、それをずらして利用するような組立が出来なかったことでしょうか。浦和の得点シーンにあったように、大外に食いつくガンバのSHSBを利用してハーフスペースと中央で勝負するような狙いをもう少し徹底できれば、ガンバをより困らせることができたかもしれません。実際、ガンバの4-4-2組織は整備されていましたが、遠藤の強度不足は局面局面で表面化しており、うまく遠藤の周囲から裏を取れれば得点シーンのようなチャンスがあったかもしれません。しかし、これは次のステップ。シーズン序盤の閉塞感を考えれば、同じシーズン中にこのクオリティで戦えていることは素晴らしいことですし、何より浦和はまだACL出場権を失ったわけではありません。宮本恒靖のガンバが新しい強さを見せているように、オリヴェイラ・レッズもまた進化の途中です。

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とはいえ実際のところ、札幌や鹿島の結果を経て、確かにリーグ3位に滑り込むことは難しくなってきました。一方で天皇杯優勝に伴うACLストレートインの可能性は残されており、下を向く必要はまったくありません。このガンバの強さも、今年はもう戦うこともないわけですから来年まで無視しても問題ありません。つまり、浦和レッズは前を向くべきです。今節貰った分のゴラッソは、そのうち興梠かウガあたりが返してくれるでしょう。シーズンはまだ終わりません。次節は、ミシャとの決戦です。

 

長文にお付き合い頂きありがとうございました。