96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

主力4人を欠き苦戦…。 Jリーグ第33節 vs湘南ベルマーレ 分析的感想

こんにちは、96です。Jリーグも残すところあと2試合、リーグ順位でのACL圏内3位以内を目指すレッズはもう1試合も負けられないどころか既に他力本願の状態。対する湘南も過酷な残留争いを勝ち抜くには絶対に勝利が欲しい一戦。お互いに負けられない一戦を振り返ります。

 

両チームスタメンと思惑

両チームスタメンは下図の通り。

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浦和側控え:榎本、荻原、大城、柴戸、アンドリュー、李、ズラタン

 

今節は怪我やアクシデントに泣かされた週でした。前節カウンター潰しで累積4枚目のイエローカードを受けたキャプテン柏木が出場停止。前節から引き続きもも裏の状態が悪い青木も出場不可で、浦和の生命線である中盤の3枚のうち2枚が出場できない事態。さらには練習中にマウリシオが怪我、日本代表に選出されていた槙野も試合中の脳しんとうで最低でも1週間は試合に出れず、浦和は結果的に主力4選手を欠いた状態でこの試合に臨むことになりました。4選手の穴埋めはそれぞれ、茂木、森脇、阿部、武富が務めスタメン入り。特に茂木はJこれが1デビュー戦、武富も約半年ぶりのスタメンとさすがに万全とは言えません。

一方の湘南はほぼベストメンバーで重要な一戦に臨みました。ただし、浦和から湘南にレンタル移籍の身分の岡本拓也は「浦和と対戦する全ての公式戦」に出場できないためベンチ外。代わりのWBには若い石原広教が起用されました。また、今月のルヴァンカップ決勝で出色のパフォーマンスを見せた金子大毅の代わりに、世代別代表では橋岡のチームメイトの齊藤未月が入っています。

 

曹貴裁オリヴェイラによる戦術戦①

基本的に似通ったシステムの両チーム。お互いに3バックを使うために、両サイドを任されるWB同士は完全なマッチアップが生まれます。一方で、前節の札幌戦も同じでしたが、3-4-2-1に対する3-5-2は噛み合わせ上非常に興味深いミスマッチも生まれます。

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上記が両チームのシステムの噛み合わせですが、湘南のボランチは浦和のIHを見るために、浦和はアンカー阿部のところが余ります。湘南の1トップ2シャドーは浦和の3バックにほぼマンマークを仕掛けるような形になりますが、アンカーの阿部が余っているために、彼が3バックの間に入る等、ビルドアップの逃げ道として振る舞うことで浦和の3バックへのマンマークを空転させることができます。従って、概して言えば浦和の5-3-23-4-33-4-2-15-2-3)で追ってくる相手は、最終ラインの3バック+アンカーで相手の3枚の第一プレッシャーラインを潜ることができれば後ろで待つ5-2のブロックはそう堅くありませんから、実は戦いやすい形とも考えられます。

これを解決するために、湘南の守備はマンマークで追っては来ませんでした。湘南の守備は、トップの山崎が岩波を中心にケアしつつ、2シャドーがアンカーの阿部をはさむような立ち位置で、ボールサイドのシャドーがサイドに出る場合でも余ったほうのシャドーが阿部をケアすることで阿部をビルドアップの出口に使われることを警戒するような守り方でした。

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対して浦和は、森脇が躍動します。一度阿部を挟むように中央から守る湘南のシャドー(主に梅﨑)を全く意に介さないかの如く攻撃参加を繰り返し、右サイドから中央に入っていきます。梅﨑は阿部を見てから森脇のケアに出ていくために対応が遅れ気味で、また森脇が上がっていくとついて行ききれない部分が序盤から見られました。加えて、湘南の守備は中盤のボランチが浦和のIHを広くケアしており、浦和のIHがビルドアップを助けるために降りると、それにマンマーク気味についてきていました。中盤を守る2枚のボランチのうちの1枚がIHについて行けば中央にスペースができるのは必然で、このエリアを森脇が使う構図となっていました。オリヴェイラ監督としては、湘南が3-4-2-1のいつもの形を崩さないこと、それに対して自分たちの5-3-2のアンカーを使ったビルドアップが有効で、かつ湘南の中盤にできるボランチ vs IH2on2に梅﨑がプレッシングに出てきた裏を使う森脇の攻め上がりを当てれば、サイドから湘南を攻略できることは想定通りであったように思います。

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そのほか浦和のビルドアップでは、岩波の貢献度が高かったように思います。今節では、出場停止の柏木の代わりに最終ライン裏へのランニングをフィードの出し手として使う役割を担っていました。普段は右CBで出場を続ける岩波ですが、オリヴェイラ監督の契約更新を考えると来期の4バックへの移行も気にならないとは言えません。もし4バックを採用すれば槙野、マウリシオというリーグ屈指のCBとの競争に晒される岩波にとっては、この3バックの中央での出場機会は地味ながら重要なテストの場だったかもしれません。その意味では、攻撃面、特に得意のフィード砲台としての役割は大いに果たしていたように思います。

 

曹貴裁オリヴェイラによる戦術戦②

しかし、守備面では弱点を見せることになりました。開始直後の約10分間は上述の森脇の攻め上がりを軸にした迫力ある前進をチームとして見せた一方で、湘南の1トップ2シャドーに入る楔の縦パスを潰せずに湘南の前進を許してしまうシーンが散見され、結果的に両チーム出入りの激しいゲーム展開を招いてしまいました。特に山崎vs岩波の中央での楔受け勝負ではほとんど対応できず、この点においてはマウリシオの不在を重く感じさせたことは事実でした。

14分ごろから、湘南・チョウ監督は守備の修正を施したように見えました。山崎が岩波を見るのは変わりませんが、梅﨑は森脇をはっきりとケアするように。そして菊地が阿部をマンマーク気味にケアすることで、浦和のビルドアップの起点をはっきりと消しに来ます。

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こうなると左CBに入った茂木が完全に余るために茂木からの前進が容易になりますが、今節がJ1デビューの茂木はミス回避を優先で安全なプレーに終始したために効果的な前進を自重していたように思います。加えて、菊地が阿部を見ながらも茂木にフリーで入った際には縦のコースを塞ぐように、後追いながらも素早くスライドしてポジションをとるために、茂木に対しても十分なプレッシャーを与えていました。これによって、湘南は開始直後よりも低い位置で浦和の攻撃を待ち構える形になったものの、守備の安定を手に入れることが出来たように思います。副次的に、サイドからこじ開けようとする森脇の裏を梅﨑のスピードで攻略するという狙いも明確にピッチに現れるようになっていきました。

19分に自陣からのクリアボール。ボールを受ける山崎には岩波が付いていましたが対応が間に合わず頭でフリックされると、森脇と入れ替わった梅﨑も頭での完璧なトラップを前へ。追いすがる森脇を寄せ付けずに中へドリブルで侵入し、セーフティの茂木が寄せきる前にトゥーキック。西川の脇を抜けたボールがネットに収まり鮮やかな先制点。山崎と梅﨑の2つのヘディング、そして梅﨑のシュートはスーパーでしたが、その前の15分にも森脇を裏返されて梅崎のドリブルカウンターからコーナーキックに持ち込まれており、湘南としては完璧に狙い通りの先制点を手にしたと言ってよいのではないかと思います。

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曹貴裁オリヴェイラによる戦術戦③

湘南の2シャドー及び2ボランチは、試合ごとに変わるイメージです。3-4-2-1システムをいじらず、またバックラインやWBがめったに(今節のように契約上岡本が出場できないなどで)変わらないことに比べると、2シャドーと2ボランチの中央の4枚の起用法は試合ごとの曹貴裁監督の狙いが最も色濃く反映されるポジションでないかと思います。今節の菊地のシャドーでの起用も同じで、湘南は先制後の20分過ぎから、菊地をボランチに落とした5-3-2で守備をセットし、浦和が使いたい中盤の2on2+森脇の構図を消しにかかります。もしくは、阿部を菊地にケアされるために浦和のIHがビルドアップに落ち、それに湘南のボランチがついていくことで中盤にできるスペースを埋めたかったのかもしれません。ここでも曹貴裁監督が運用するのは菊地の役割で、彼がシャドーとボランチの役割を兼務することで3-4-2-15-3-2にできる中盤のミスマッチを解消しようとしていたのではないかと思います。つまり、こうした運用を試合前から十分に準備した上での起用だったのではないかと思いました。

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湘南が5-3-2でしっかりと浦和の攻撃を受け止めてから前に出る作戦を展開する一方で、先制を許した後の浦和の攻撃と守備はなかなかハマらなかった印象です。攻撃は序盤に飛ばした森脇が、体力的な問題、梅﨑に鮮やかに自分の裏を使われたことに対する警戒、また中盤のゾーンを3枚で見られたことで思うように前進するスペースを失ったこと等で攻撃のエンジンとしての役割を果たし切れませんでした。岩波は山崎に塞がれており、唯一攻撃に出ていく隙を与えられていた茂木のサイドからいくつかのチャンスを作りましたが良いシュートで終わることができませんでした。

より難しかったのは守備のほうで、特に前からはめ込む守備が出来なかったのが浦和にとっては痛恨でした。オリヴェイラ監督就任当初からオリヴェイラ・レッズの強みは一度相手の攻撃を受け止めてから前に出ていく強さだと指摘してきましたが、その根本はしっかりと前線で相手のビルドアップを追いこめているからに他なりません。今節は前からいってもハマらず、そのまま楔を入れられても潰せずで、どうしても深い位置まで侵入されることが多く、守備から攻撃のリズムをつかめなかったことがゲーム全体を重くしたかもしれません。目立ったのは武富が湘南の左CB山根にプレッシングに出て行った後ろを使われる形で、3ボランチの武富がシャドーの用に前線に出る→中盤で2on2ができる(湘南と同じ構図)→菊地が降りてきて受けられる(阿部が潰せない、間に合わない)というものでした。

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前提として主力4人を欠いてスクランブル状態だったこと、武富は本来のシャドーではなくボランチでの起用だったことは十分に酌量する必要がありますが、やはり守備面での武富のパフォーマンスはマイナス面が出たかなあと思います。ボランチの位置からシャドーの動き、役割を果たしていた武富ですが、後ろが連動できない深さとタイミングでプレッシングに出ていくために、中盤のスペースを消しきれない上述の構造を招いていました。ボランチの位置からシャドーの動きをしていたのは攻撃面でも同様で、前半を通じて湘南の中盤が空けたスペースや、後ろからボールが持ち運べたシーンでエリア内に入っていくプレーが多くみられました。守備面と違って攻撃面ではこの動きで彼の良さを出していたと思いますが、一方で試合勘の無さか、オンザボールで違いを作れず、引っ掛けたり外し切れなかったりと、違いを作れなかったのが本人としても悔しかったのではないかと思います。

 

柏木陽介の不在

前半はその後スコアが動かず、後半に。湘南は後半からルヴァンカップMVP級の活躍を見せた金子大毅をボランチに投入。同時に、頭から再び3-4-2-1に形を戻しました。個人的には前半の5-3-2で構える守備と菊地の運用で形を変える守備はよくハマっていたような気がしますが、徐々に茂木が攻め上がりにチャレンジし始めたことに加えて、長澤に2度ほどターンされたシーンなどを不安視したのでしょうか。どのような狙いだったかはわかりませんが、湘南が3-4-2-1に戻したことで、構造が試合開始直後に戻ります。浦和のビルドアップにおいては阿部が余ることができますし、シャドーが中途半端に出てくればその後ろを使いやすいので、中盤でフリーを作りやすいく攻め手が増えていきます。実際、46分には西川からワンタッチを絡めて繋ぎ切って宇賀神の折り返しにエリア内の長澤が空振りで合わせたシーン、48分には森脇がバイタルまで顔を出して左足のミドルが枠外など、徐々にゴールに迫っていきます。

しかし、試合開始直後と同じ構造ということで、湘南側も同じくトランジションから攻撃機会を得ることができる展開に。55分〜56分にかけて、坂のドリブルでの持ち上がりを機に攻守転換が5回連続。最後はファールでリスタートになったボールを阿部がクイックリスタートしたものの、ボールを出した先の長澤が主審と被って転倒、そのこぼれ球を最後は菊地に繋がれて痛恨の2点目を献上してしまうことになりました。

最後寄せきれなかったのは茂木ですが、失点の根本は阿部のミスでしょう。浦和としては攻め手が出来るのは良かったのですが、激しくなるトランジションをコントロールすることが出来なくなってしまいました。トランジションが連続して続く展開の中で、少し集中力が切れたかもしれません。意外と早い展開は心地よいので、リズムで進めてしまうということは阿部ほどのベテランでもあり得るのだと思います。個人的には、この場面で盤面全体をコントロールできる柏木の不在を強く実感しました。いない選手を嘆いても仕方ないのですが、やはりゲームコントロールの部分で柏木の果たす役割は非常に大きく、ほかの主力級と合わせて不在が響いてしまうのは仕方ないことかと思います。

失点直後の60分、浦和は森脇と橋岡のポジションを入れ替えて森脇をWBに。森脇の運動量を考えて、最初から高い位置に置くことで森脇をもう少しピッチに残すための配置換えだったのではないかと思います。同時に、武富に替えてアンドリューを投入。武藤がピッチに残っていましたが中盤に降りた様子はなかったので、ここで浦和も3-4-2-1システムへと移行しました。先述の通り武富のパフォーマンスはボランチとしてはイマイチでしたが、シャドーとしてはオンザボールで違いを作れなかったものの良いスペースには入っていました。シャドーが出来た瞬間に60分で交代させられるのは彼としても本当に悔しかったと思います。試合勘があれば十分前線のオプションになり得る選手だと思うのですが…。

 

ビハインドの展開で可能性を見せた茂木力也と柴戸海

ミラーゲームとなったことでお互いの狙いは同じで、シャドーがついてこれない中盤のスペースを使いつつ、サイドを起点に組み立てることで相手をスライドさせ、バイタルが空けばそこを使うという構図になっていきました。一方でなかなか湘南ゴールをこじ開ける絵は描けず、70分にはガス欠気味だった森脇を替え、浦和は柴戸投入。ここで阿部を最終ラインCBに降ろし、岩波を右CB、橋岡が再びWBと配置を動かしていきます。

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この時間帯良かったのが茂木力也で、2点を失ったこともあってか前半は遠慮気味だった攻め上がりを頻繁に見せるようになっていきます。59分にはビルドアップで岩波から預かったボールを簡単に前へつけると、そのままハーフスペースを駆け上がり中盤の2on2に参加、最後は橋岡の惜しいクロスにつなげました。67分にも同じくインナーラップ、72分は宇賀神に預けてオーバーラップ。そして76分には、右サイドで起点になった長澤からのパスをバイタルで受けて武藤へパス。武藤のヒールを受けた興梠がターンからゴールを決めて一点を返しました。このシーンでも、茂木が後ろから中盤に参加することで山根をエリア内から引き出し、山根が出ていった分中央の坂が興梠のケアに入るのが遅れたことで、興梠にターンの余裕が出来ました。興梠のシュートに一番近くで詰めており、ゴールからボールを拾い上げた茂木の積極的な攻め上がりが繋いだボールがこの得点に繋がったことは、彼のチャレンジが報われた結果と言っても良いのかなと思います。

ゴールの直後にオリヴェイラ監督は武藤に替えてズラタンを投入。追いつくためにパワープレーをというメッセージでしたが、結果的にはあまりうまくハマりませんでした。普段やらない策なので、後ろも上げるタイミングと狙いどころをハッキリできなかったかもしれません。ラインを押し下げるズラタンの裏だとか、ズラタンに注意が集まったところでサイドの裏に流れるアンドリューだとか、興梠がセカンドボールを拾えるような位置どりについてから上げるだとか、パワープレーにもいろいろと工夫のしどころはあると思うのですが、天皇杯でも使う可能性があるのでいくつか整理しておいてほしいところです。今節橋岡が中盤のスペース目掛けて放り込んでいたことは、疲れのせいだと信じたいのですが、どうだったでしょうか。

ということで、時間は無情にも過ぎていきました。結果としては試合はこのまま終了し、1-2で敗戦。鹿島が勝っていたためにこの試合に勝っても結局同じだったのですが、この敗北でリーグ3位の可能性は潰えました。主力4人を欠く状態ではやはり厳しかったというのが正直なところですが、一方で印象的なプレーもありました。一つは前述の後半の茂木の積極性、もうひとつは70分に投入された柴戸のプレーぶりです。

これまでの柴戸は、リーグ戦では勝っている状態で守備固めに投入されるばかりで、プレーも必然的にミスを避ける、安全側を見るようなものが多かったように思います。しかし今節では0-2で負けた状態での出場ということで、より攻撃にも出て行く意識が見られました。茂木もそうですが、0-2で安全にプレーしていても仕方ないという状況がそうさせたのかもしれませんが、二人ともプレッシャーのかかる場面でもボールから逃げず、受けては前を向いてプレーし、なんとか状況を変えようとしていた姿を見られました。これまでは持ち出せるところで持ち出さない、見えているはずなのに出さないというプレーがあった柴戸ですが、今節は惜しかった一本を含む3本のシュートを放つなど状況を変えるために積極的にプレーしていました。彼はまずは守備の選手であることは当然ですが、オンザボールのスキルがあるので前に出ていける選手になるべきだと思います。その意味では前にチャレンジした柴戸と茂木のプレーは、高く評価するかは別としても前向きであったと思います。

これでリーグからのACLは消えてしまいましたが、天皇杯を残す上に、次のFC東京戦がリーグ賞金圏内の5位を決する戦いになるなど、幸いにして消化試合ではありません。湘南相手に今季ダブルを食らう痛い負けでしたが、この試合で得たものを活かすためにも前向きに次の試合に臨むことが重要ではないかと思います。

平川が試合後に今シーズン限りでの引退を表明したこともあり、今シーズンをどうしても最高の形で終わらせたい浦和。あと3つ、決勝戦の意識でファン・サポーターも乗り込んで行きたいところです。

 

余談:湘南ベルマーレについて

残留に向けて貴重な勝ち点3を手に入れた湘南ですが、またしても曹貴裁采配がハマった感があります。特に菊地の使い方というか役割の任せ方は人選も含めて良い設計でした。ちなみに、10数分単位で頻繁に立ち位置を修正していた前半に比べて、後半は金子を投入した以外は同ポジションの体力的な交代で、守備のセットも3-4-2-1を変えなかったように見えました。結果的にはルヴァンカップよろしくトランジションからの得点(決勝点)を奪って守りきっての勝利なので正解だったのでしょうが、前半あれだけ動かしたのになぜ後半は3-4-2-1を維持したのかは気になるところです。とくに終盤ピッチを見つめる曹貴裁監督は、まるで選手を試していたかのように見えました。

湘南の安定の根源は何と言っても最終ラインの確立が大きくて、とくに坂のパフォーマンスは相変わらず出色でした。ポスト遠藤航という触れ込みになっているようですが、遠藤よりももっとCBですね。身長はありませんが、プレーを見ている限りJ1レベルでは空中戦に問題がないというのは強みです。一方で、個人的に湘南にとって最も重要と思うのはトップの山崎で、曹貴裁監督にとっては3-4-2-1をやる上でどうしても必要な、機動力のあるポストマンをようやく手に入れたという感じでしょうか。サイズがあって体を張れる上にワンタッチの落としが上手いというのはここ最近のJ1の日本人FWには同じタイプが少ないのではないかと思いますので、その意味では意外と一番替えが効かない人材かもしれません。また、今回の記事では中央の攻防ばかりを取り上げましたが、それは両サイドのマッチアップで終始均衡が保たれていたからで、どことなくキャラが被っている橋岡との同世代マッチアップを楽しんでいた杉岡はもとより、右WBに抜擢された石原も良い出来だったと思います。宇賀神が対応に苦労していましたが、普段相手にバチバチ行って相手のリズムを崩す宇賀神がそのままいつも自分がやっていることを石原にされてしまったという感じだったかもしれません。ただ、今節は珍しく武藤がイライラしていましたが、湘南は全体的にアフター気味、もしくは純粋に遅れ気味のチャージが散見されたのも事実でした。

さて、今節の湘南で最も注目すべき点は、ゾーンで追い込んでいく守備、もしくは待ち構える守備など、プレッシング一辺倒ではない守り方で勝った点でしょう。ルヴァンカップではポジショナルプレーのマリノスvsプレッシングの湘南という構図が語られましたが、曹貴裁監督の目指すスタイルがプレッシング一辺倒ではないことの良い証明になった試合かと思います。また攻撃面でも、今節は後方から持ち運びが出来た場合は両WBはバックステップで幅をとるプレーが頻繁に確認できましたし、長いボールをWBにつけるにしてもこぼれ球をハーフスペースで拾えるようにシャドーやボランチ乗選手が予め寄っているなど、華麗なパス回しとまではいかないもののポジショナルプレーの原則を適用していると思われる攻撃がいくつか見られました。またワンタッチパスもそうですが、山根や坂など後ろからドリブルで運べる時はどんどん運んでいくことで陣地を取っていく、ラインを超えていくプレーがあるのは湘南のユニークな点と言えるかと思います。

これらを踏まえると、最終節の結果が出る前で残留が確定しない厳しい状況ではあるものの、残留を果たし上述の選手たちの契約を残すことができれば、曹貴裁監督の湘南は来季もまた面倒な相手になりそうな予感がします。もちろん、万全で戦う来期は浦和が勝ちますが。

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。