96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

戦略と戦術:何が違い、なぜ重要なのか?

サッカーに関係あるかというと直接はサッカーの話がない記事なのですが、戦略と戦術について語った英文記事を流し読みついでに訳してみましたので、記事の紹介をするとともに記事の一部について訳を置いておきます。

最近のサッカー界は国内外問わずピッチ上の戦術だけでなくピッチ外の経営や人事等を包括した戦略の良し悪し、重要性が広く認知されているところだと思います。とはいえ、戦略論って難しくて、本当に勉強しようとすると学問的な努力が求められます。今回の記事は小難しいことを書いている感じがしますが内容的には入り口の入り口という感じ(10分あれば読めちゃうし)なので、そういう学問的な努力をされている方にはつまらないか、一言も二言も言いたくなる記事かもしれません。まあ言い訳は置いておいて、普段あんまりこういう話題について考えたことのない人には、何かのきっかけになるかもしれません。以前の僕も、戦略と戦術の違いをうまく理解できていなかったし、この記事を読んでイメージが沸いた部分も多かったです。

訳文はそれなりに気を使って作りましたが、素人が趣味でやってることなので間違いがあればどうぞご指摘くださいませ。また、面白い記事なので原文を読まれることをお勧めしますというのと、そもそも元のサイト(ブログ):Farnam Streetはいろいろ面白い記事がたくさんあるので素直におすすめです。全文訳したものもあるのですが、そのままブログに載せるのもアレなので、どうしても全文訳が欲しい方は、個別に連絡していただければ個人的にお渡しできると思います。

 

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https://fs.blog/2018/08/strategy-vs-tactics/

 

 Strategy vs. Tactics: What’s the Difference and Why Does it Matter? / 戦略と戦術:何が違い、なぜ重要なのか。

Strategy and tactics are two terms that get thrown around a lot, and are often used interchangeably in numerous contexts. But what exactly do they mean, what is the difference, and why is it important? In this article, we will look at the contrast between strategy and tactics, and the most effective ways to use each.

戦略と戦術という用語は頻繁に登場し、あらゆるコンテクストの中でしばしば互換的に使われている。しかし、この二つの用語は正確には何を意味し、何が違い、なぜ重要なのだろうか?この記事では、戦略と戦術の織り成すコントラストと、それぞれを最も効果的に活用する方法について見ていく。

We might have strategies for anything from gaining political power or getting promoted, to building relationships and growing the audience of a blog. Whatever we are trying to do, we would do well to understand how strategy and tactics work, the distinction, and how we can fit the two together. Without a strategy we run the risk of ambling through life, uncertain and confused about if we are making progress towards what we want. Without tactics, we are destined for a lifetime of wishful thinking or chronic dissatisfaction. As Lawrence Freedman writes in Strategy: A History, “Without a strategy, facing up to any problem or striving for any objective would be considered negligent. Certainly, no military campaign, company investment, or government initiative is likely to receive backing unless there is a strategy to evaluate…. There is a call for strategy every time the path to a given destination is not straightforward.” And without tactics you become dependent on pure luck to implement your strategy.

我々の身近なところでは、政治権力を得るためや昇進、交際にこぎつけるとかブログの訪問者を増やすためなど、あらゆることに戦略を用意するだろう。ただ何に挑戦するとしても、戦略と戦術がいかに機能するのか、その差異、そしてどうすればこの二つをうまく組み合わせることができるのかについて知っておいたほうが良いだろう。戦略なしでは、私たちが成したいことへの進捗について不明瞭で混沌とした状態になり、人生をさ迷い歩くリスクを冒すことになる。戦術なしでは、我々は希望的観測か終わりのない不満に満ちた人生を運命付けられることになる。ローレンス・フリードマンがStrategy: A History(邦題:『戦略の世界史』)で述べたところでは、「戦略も持たないまま、問題に向き合ったり何らかの目的を達成するために努力したりすることは怠慢とみなされる。当然、どんな軍事作戦や企業の投資、政府のイニシアチブも、評価すべき戦略がなければ支持を得られえないだろう…与えられた目的地への道のりが平坦でないとき、必ず戦略が求められる。」、そして戦術を持たなければ、あなたの戦略実行は運に委ねられる。

To achieve anything we need a view of both the micro and the macro, the forest and the trees—and how both perspectives slot together. Strategy and tactics are complementary. Neither works well without the other. Sun Tzu recognized this two and a half millennia ago when he stated, “Strategy without tactics is the slowest route to victory. Tactics without strategy are the noise before defeat.” We need to take a long-term view and think ahead, while choosing short-term steps to take now for the sake of what we want later.

何を成すにしても、ミクロとマクロ、つまり木と森の視点、そして二つの視点がどのようにひとつとなっているかを見る必要がある。戦略と戦術は補完的な関係にある。二つ揃わなければどちらも機能することはない。孫武は、彼が2,500年前に次のような言葉を残したとき、まさにこれを理解していた:「戦術のない戦略は勝利への最も遅い道であり、戦略のない戦術は敗北の前の雑音に過ぎない。」私たちは長期的な視座で考える必要があると同時に、後に成すべきことのために今踏むべき短期的なステップを選択する必要があるのだ。

 

The Relationship Between Strategy and Tactics / 戦略と戦術の関係

In Good Strategy, Bad Strategy, Richard Rumelt writes: “The most basic idea of strategy is the application of strength against weakness. Or if you prefer, strength applied to the most promising opportunity…A good strategy doesn’t just draw on existing strength; it creates strength.” Rumelt’s definition of strategy as creating strength is particularly important. You don’t deplete yourself as you execute your strategy. You choose tactics that reinforce and build strength as they are deployed. Back to winning hearts and minds – the tactics require up-front costs. But as they proceed, and as the strategy unfolds, strength and further support are gained by having the support of the local population. A good strategy makes you stronger.

Good Strategy, Bad Strategy(邦題:『良い戦略、悪い戦略』)において、リチャード・ルメルトはこう記している「戦略の最も基礎的な考えとは、弱点に対して強みをぶつけることである。または、こう言っても良い。強みを最も期待できるチャンスに使うこと…だと。良い戦略とは、単にすでにある強みを利用するだけのものではない。良い戦略とは、強みを作り出すのである。」ルメルトによる、強みを作り出すという戦略の定義は特に重要である。戦略を実行するにあたって、自身を消耗させてしまっては意味がない。展開されるにしたがって強みを作り出し、強化するような戦術を選ぶのだ。敵国の文民のこころと思想を勝ち取る戦略の話に戻ると――ラジオ放送にしろ病院の建設にしろ、戦術には先行投資が伴う。しかしそれら戦術が進行し、戦略が展開されるに従って、地域の人々の支持を得ることで強みが強化され、戦略は加速していく。良い戦略は、あなたを強くするのだ。

 

A Few Words on Tactics / 戦術についての簡単な説明

The word “tactic” comes from the Ancient Greek “taktikos,” which loosely translates to “the art of ordering or arranging.” We now use the term to denote actions toward a goal. Tactics often center around the efficient use of available resources, whether money, people, time, ammunition, or materials. Tactics also tend to be shorter-term and more specific than strategies.

「戦術」という言葉は古代ギリシャ語の”taktikos”に由来し、その意味は大まかに言えば「秩序と配置の芸術」と訳される。我々は現在、この用語を目標に対する行動を表すのに用いる。戦術は、資金、人、時間、戦力、物資など、利用可能なリソースの効率的な使用を中心とするものである。戦術はまた、戦略よりも短期間で具体的なものであると言える。

Many tactics are timeless and have been used for centuries or even millennia. Military tactics such as ambushes, using prevailing weather, and divide-and-conquer have been around as long as people have fought each other. The same applies to tactics used by politicians and protesters. Successful tactics often include an ‘implementation intention’—a specific trigger that signals when they should be used. Simply deciding what to do is rarely enough. We need an “if this, then that” plan for where, when and why. The short-term nature and flexibility of tactics allow us to pivot as needed, choosing the right ones for the situation, to achieve our larger, strategic goals.

多くの戦術は時代を超越したものであり、何世紀も、時には1,000年以上の時を超えてさえ使われてきた。待ち伏せや天候の利用、各個撃破といった軍事戦術は、人類の闘争の歴史と同じく存在しており、政治家や抗議者によって使われる戦術にも同じことが言える。成功する戦術にはしばしば「実行意図」――その戦術がいつ実行されるべきかを示す特定のトリガーが実装されている。単に何をすべきか決断するだけではほとんどの場合不十分で、我々は「もしこうなら、次はこう」といった計画が、いつ、どこで、そしてなぜといった要素と共に必要となる。戦術の短期的であるという特徴やその(実行するかしないかの)柔軟性は、状況に応じて適切な戦術を選択し、必要に応じて行動を起こし、より大きな戦略的目標を達成することを可能にするのだ。

If you don’t have a strategy, you are part of someone else’s strategy.”

— Alvin Toffler

もしあなたが戦略を持たないのであれば、あなたは誰かの戦略の一部となっている。

―アルヴィントフラー

 

96の感想とか

要は設定したゴールや目標の達成までの計画を戦略と言い、その達成手段や具体的なステップを戦術と呼ぶということで大まかには問題ないと思います。ただし、戦略で大事なのはまずゴールの設定で、自分たちが何を成し遂げたいかを明確にしないとだめですよ、というところでしょうか。それが明確で(また現実的で)あるならば、その実現のためにどのようなリソースをいつ、どうやって、どこに投入するかを考えていけるということですね。戦術についてはちょっと説明のボリュームが少ないような気もしますが、より具体的で短期的な計画が戦術であるというのが説明でした。また、実行意図という言葉が出てくるのですが、主体が意識的に発動させるかどうかを選択でき、どの戦術を使うかを選ぶこともできるというのが重要な気がします。あと、「戦術」という言葉は古代ギリシャ語の”taktikos”に由来し、その意味は大まかに言えば「秩序と配置の芸術」と訳される、という部分、なんかポジショナルプレーが感じられるのが面白いです。この辺を掘っていくのがよさそうな感じ。

さて、最近いろいろごちゃごちゃしている浦和レッズさんですが、僕の印象では戦術はいろいろ持っているけど、戦略は曖昧な部分も多くて、それはやっぱり明確なゴールを設定しきれてないんじゃないかなあと思う次第です。リーグ優勝、アジア優勝、地域に愛されるクラブとか、美辞麗句はあるんですけど、それって鹿島だってガンバだって川崎だって名古屋だって同じこと言うよねというか。そう考えると、孫武が言ったという、「戦略なき戦術は敗北の前の雑音に過ぎない!」という言葉は結構ゾッとさせられるものがあります。逆に言えば、このゴールが明確であれば、集客や金策、人事の戦術であるとか、ピッチ上でボールを持つか持たないかというのはその都度「意識的に」選択していけばいいのかなと思ったりもします。

監督交代を含めた浦和の現状(というか、現在だけでなく10年以上前から続く過去から現在の問題)については、また別の記事でまとめて考えてみたいと思っているところです。「なんで浦和はこうなんだ!」を考えるにあたって、戦略と戦術という言葉自体について考えてみるのも良いかと思い、記事にしてみたのでした。まあ、正直浦和以外にも同じような課題を抱えている組織が世界中にかなりあって、結構そんなものだとも思うんですけど。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。