96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

新強化体制発表会見の感想:プロジェクトへの期待と不安、そしてクラブとメディアに期待したいこと。

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新強化体制

1212日、浦和レッズの新強化体制についての会見が行われ、クラブは今後の強化方針を示しました。

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新しい強化体制はこれまでに発表されていたスポーツダイレクター(SD)及びテクニカルダイレクター(TD)の新設だけではなく、フットボール本部を新設する組織改編を含むものとなっています。

まず、この場におります3人のメンバーを紹介させていただきます。私の隣におりますのが、新設されますフットボール本部の本部長・戸苅でございます。同じく新設されます、スポーツダイレクター(SD)の土田でございます。土田の元に新設されるテクニカルダイレクター(TD)として、西野が参ります。

 

2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見
http://www.urawa-reds.co.jp/static/ttt/162829.html

 会見の内容は公式サイトに全文掲載されていますので、まだ読んでいない方は是非読まれることをお勧めします。内容に同意できるかどうかは別として、今後の浦和レッズさんを理解する上で非常に大切な会見であったと思います。また、SD及びTDの役割については、以下の発表も関連します。

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あ、ちなみにそもそも浦和レッズさんってなんでこんな感じになってんの?っていうところから知りたい場合は、だいたい過去15年間の概要と戦略レベルでの浦和レッズさんの迷走と苦悩を僕なりにまとめた以下の記事がたぶん役に立ちますので合わせてお読みください。ただ下の記事はこの記事の倍くらいの長さがあります。

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で、この会見がファン・サポーターにどのように受け止められたのか知りたくて、Twitterでpoll(アンケート)してみました。全部で761件も回答があったということで、みなさんご協力ありがとうございました。あとRTしてくれた皆さん、好きです。

ということで、「どちらとも言えない(結果次第)」という様子見の姿勢が大多数なものの、ポジティブな反応は10%のみと、実にサポーターの10人に9人はこのやり方に不満があるか、少なくとも信じられないと感じているということになりました。ストレートに表現すれば、ファン・サポータとしてはこの会見で語られたことに素直に期待するのは難しいということでしょう。これはなかなか厳しい評価ですが、まあそれだけの失望を買ってしまったこれまでの浦和レッズさん、ということなのでしょう。

人それぞれ感じ方が違うのは当然なので、どの回答が正解かということもないのですが、もし僕がこのpollに投票するならば、僕の答えは「ポジティブ(この方向で良い)」になります。ということでマイノリティですが、がんばってなぜポジティブだと感じたのかを説明していきたいと思いますので、お手柔らかに。

 

長期的方針とチームコンセプト、それらを組み立てる論理的な枠組み

個人的な感想としては、会見の内容はポジティブでした。何故なら、浦和レッズがついに長期的な評価軸を示してくれたからです。これまでも僕は、なるべく中長期的な目線でクラブを、チームを理解したいという気持ちでチームを観てきました。その中で非常に苦しかったのが、自分の好き嫌い以外に、評価軸がどこにもないことでした。クラブが中長期的にどのようにありたいのか、何を目指しているか教えてくれないので、自分だけが中長期的にクラブを観ていきたい、解釈したいと思っても、好き嫌い以外の中長期的な評価軸が何もなかったのです。苦しくてもボールを繋ぐのがチームのためなのか?若手が抜擢されたことをどう評価するか?ミシャが解任されて以降は、目の前で起きているサッカーは「浦和のサッカー」なのか?などなど、疑問が湧いては消え、湧いては消え。ここ数年は、目の前の現象を観察していても、完成度が高いのか低いのか、これで良いのか悪いのかを判断する軸がないために、目の前のゲームとチーム、クラブの将来がどう繋がるのかわからない状態でした。なので、中長期的な進路と目指す姿をクラブにはやく示してほしいとずっと思ってきました。

もちろんいくつか突っ込みどころ、アンビギュアスなところはあるのですが、この会見で、それが出てきました。これで、中長期的な視点でクラブを観察するのに重要な基準ができました。つまりこれからは、クラブが補強をすれば、土田SDの語る『チームコンセプト』にどう合致させようとしているのか、どのような面を期待しているのかを確認すればよいし、来期の試合は3つの『チームコンセプト』がどれだけ表現されているか、その達成度はどの程度か、それが勝ち点と得失点差(+2ケタ達成が目標)を稼ぐことに繋がったかを検証すればよいのです。選手起用も、『チームコンセプト』の実現にどれだけ寄与しているのか、戦術に合っているのかを確認していくことになります。選手個人の評価も、同じ視点を根幹に観ていくことができるようになります。好きか嫌いかだけではない、一つの評価軸ができるだけで、「条件つきの正解」が生まれます。はっきりとモノが言えるなんて、なんと素晴らしいことでしょうか!

良い点はこれだけではありません。27年の歴史の中で、クラブがおそらく初めて主体的に浦和のサッカーを定義しようと試みたことは大きな意味を持ちます。チーム(フットボール本部)が、監督に全てを丸投げにせず、また経営的な事情からも独立して、主体的に自分たちの行く道筋を定めるという新しい挑戦です。経営的意思決定からトップチームの意思決定を独立させる組織に変えたのは、この主体性を担保する―独立してトップチームの最善のために決断できる―組織体制である必要があったのだと思います。まあ実現実問題としては、クラブのキャッシュフローの問題等で経営状況がフットボール本部の意思決定に影響することは想定されるわけで、全く経営から独立するというのは不可能なのですが。ただし、フットボール本部が独立して、現場からの意見を吸い上げつつ主体的に意思決定できるのであれば、それは三菱重工天下り人事に人事や意思決定を左右されるリスクを減らすことになるかもしれません。同時に、クラブに経営幹部を送り込む三菱重工としてもメリットは享受できるかもしれません。フットボールのことはフットボール本部が自主性と責任を持って決めるのだから、三菱重工としてはたとえサッカーを知らなくても経営のプロを派遣すればよいということになるし、トップチームとレディースが一つの事業部として動く分、社長はその他の事業に注力して検討することもできるかもしれません。

最後に、会見をポジティブなものと判断した最大の要因は、答えの導き方、考え方にあります。つまり、クラブが今回はじめて過去の失敗を現実として認めて向き合い、問題点を定義し、それを課題として整理し、課題を解決するための組織を構想し、担当者をアサインし、権限を与え(会見では言及されていないが、権限を与えるというのは一定の予算を付与するということでしょう)、目指す姿を定義し、目標を決め、目標への道筋を提案させ、具体的手法を検討し、期限を切り、それを公開する、そして様々なリソースがこのプロジェクトに有効かどうかを評価するための仕組みと担当者を整理するという、一連の論理的な課題解決、目標達成のステップを踏んでいることが読み取れるからです。この会見で示された長期的な方針は、明らかに論理的な枠組みからアウトプットされています。文字にすると信じがたいのですが、これらのステップのほとんどが、かつての浦和レッズが出来なかった、あるいは見せることができなかったものです。「栄光時代」のゼネラルマネージャーを呼び戻し、「浦和のサッカーは勝つサッカー」と放言し周囲を閉口させたあの時とは明らかに違う道を進もうとしていることがわかります。

 

とはいえ、手放しで信頼はできない…人事面の不安は避けられない現実

ここまで会見はポジティブだったと言い張っておいて怒られるかもしれないですが、もちろん不安要素はあります。この「俺たちの浦和レッズ大復活プロジェクト」にアサインされたキーパーソンの3人はそれぞれの役職において圧倒的に経験不足であることは事実ですし、何より2019シーズンに悲惨な成績で残留を争った大槻監督の続投は現状では最大の不安要素です。なにせ、2019シーズンの浦和からは、中長期的なチームコンセプトどころか、目の前の90分+αをどう戦いたいのかすら見えてこなかったのですから。そういうわけで、大槻監督が相手ありきの対処療法的なプランに終始し、自分たちが何をするか、どういうチームなのかという具体的な画を提示できずにシーズンを過ごしたことは、紛れもない事実です。なので、来季またがんばりますと言われて、じゃあ頑張ってくださいとはなかなかなりません。目指すべき方向性や戦術についていくら合意したところで、それを現場に落とし込み、シーズン終了時には方向感のないクラブへの不信を隠さなかった選手たちをついてこさせることができるのか、その手腕について現時点で手放しで信じられると言える人はほとんどいないと思います。

ただ個人的には、人事についてはもう現実を見るしかないのだと思います。たしかに、クラブも最初は新しい監督を招聘することを考えていたと思います。一時期噂があったロジャー・シュミットをはじめ、何人か(明らかに『チームコンセプト』と合っていなさそうな名前も出ていたのが怖いのですが)に打診したというのは尤もらしく聞こえます。それで断られたのか、話にもならなかったのかはわかりませんが、過去27年間戦略レベルで失敗を続けたクラブ、しかも直近のシーズンはギリギリでJ1に生き長らえ、四面楚歌の状態で戦略レベルの未熟さを叩かれまくっているクラブですから、外部の人材からして魅力的なアサインにならなかったのは理解できます。なにより、Twitterでのアンケートが示す通り、結果に対するプレッシャーが厳しいクラブですから、監督をバックアップする立場の強化体制自体に信頼性が確立されていない状況であれば敬遠されるのはなおのこと当然ではないかと思います。

人事といえば、選手の獲得にも同じことが言えます。まだ具体的にオファーを断られてしまったという報道があったわけではないですが、強化体制に信頼性がなく、監督も2019シーズン見ればその手腕が信じがたいという状況で、自分の大切なキャリアをどうするか、慎重になる選手がいるのは当然だと思います。そういう現実は、言ってみれば2019シーズンだけでなく、これまで我々のクラブが決別できなかった性質がもたらした弊害ではないかと思います。なので個人的には、このような状況の中でもっとまともな監督を連れてこいというのも、良い選手を取れというのも、現場からすれば無茶な要求なんだろうなと思ってしまいます。要は、浦和レッズがこれまで認められなかった核心的な課題に取り組むことになったということは、生き残りに対してそれだけの危機的な状況、プレッシャーにクラブが追い込まれているのではないかと思います。

そんなに抜き差しならない状況ならば、なおのことプロを招聘してこいよ、という意見の方ももちろんいるのだと思いますが、このことを、浦和サポおなじみ、MDPの清尾さんがご自身のコラムに書かれていました。

この体制で大丈夫なのか、という懸念が出て当然だ。

 だが、これでスタートしようというときにケチをつける気はない。この3人の体制のどこに期待をするか、と聞かれたら僕は「レッズの失敗を見てきたこと」と答えるだろう。

 戸苅氏と土田氏は92年から、西野氏は93年からレッズに所属していた。93年~94年の最下位時代も、95年の「大宮伝説」も、99年の残留争いと降格も、00年の昇格への苦しみも、全て知っている。西野氏は02年からの「優勝絡み」時代には引退していたが、他の2人はそれも知っている。土田氏は、03年からの「タイトル獲得」がなぜ08年から途切れてしまったのか、その理由についての考えもあるはずだ。また戸苅氏は、強化担当ではないだけに隔靴掻痒の思いをしながら見ていた時期もあるだろう。

 レッズとはまるで違う環境で成功してきた強化の達人みたいな人を呼ぶのも一策だが、レッズの失敗を肌で体験してきた人に、その反省を元にして今度は成功するようにやってくれ、と任せるのも悪くはない策だと思う。特に、今は。一番大事なのは初心を忘れさせないこと、易きに流れさせないことだ。

 よく新内閣が発足したときに、その特徴を表わした「○○内閣」という名前をメディアが付ける。昨日、3人が並んで立っているところを見て「失敗は成功のもと内閣」という言葉が浮かんだ。内閣ではないけど。

 

Weps うち明け話 #996 新強化体制の特徴(2019年12月13日) 

http://www.saishin.co.jp/_news/contents/7139.html

清尾さん曰く、「失敗は成功の母内閣」。これは、上述したような論理的な課題解決ステップの提示と深く関わっていると思います。過去の失敗を現実として受け止め、それを乗り越えるためのこのプロジェクトは、過去の失敗を知っている人間に任せるべきという考え方があったのかもしれません。あるいは、会見で土田SD,西野TDがまだ候補者だった時に経営幹部に対してプレゼンをさせたという経緯から考えれば、この過去の失敗と正面から向き合うような「リボーンプロジェクト」は、過去繰り返された失敗を知る彼らだからこそ提示できたものなのかもしれません。

本当のところは現時点ではわからないし、メディアのプロたちが記事にしてくれるのを期待するしかないのですが、いずれにせよ浦和の27年間を知る最古参をこのプロジェクトにアサインしたという事実はとても重いことです。簡単に言えば、浦和にはもう後がないということだと個人的には思っています。27年間の経緯を知り尽くした人材をアサインした、過去繰り返された失敗と決別するための起死回生のプロジェクト、それが今回の「3年計画」の姿であり、これがとん挫したら何が起こるかなど…簡単には考えられません。そのまま暗黒時代へ沈んでいくか、身売りしてすべてをリセットするかという話になってもおかしくないのではないかと思います。僕はこの「3年計画」は、それほど重いプロジェクトだと思っています。だからこそ論理的に、過去の苦い経験をベースにプロットがアウトプットされ、このプロジェクトを成功させるための枠組み作り・組織作りにクラブが本気で取り組むであろうことに、ポジティブに期待しているのです。

 

クラブに期待したい「誠実さ」

ここまでを纏めると、会見の内容は僕にとってポジティブなものでした。これまでクラブをなるべく長期的で現実的な視点で観てきた身として、そしてクラブの15年間の経緯を自分なりにまとめた結論として、まさに自分が考えていたクラブの本質的な課題にコミットする姿勢が見られたからです。中長期的な戦略と方向性を主体的に定め一貫して実行し内部評価するという意思と仕組みの不足、そしてそれを実現させるための組織や担当者の不足、またそれを納得できる形で公開し説明責任を果たすことが出来ていなかったというクラブの課題について、不十分で曖昧な点を残すものの、論理的なステップの設定をしたことと具体的な取り組みへのコミットメントを打ち出したことは、浦和レッズというクラブが生き残り、また強くある上で必要不可欠なものだと僕は信じています。

一方で、設定したクラブの方向性やチームコンセプトを具体化する実務面において最適な人材をアサインしているのか、必要な選手を確保できるのかという点には大きな不安があるのも事実です。ただ、このプロジェクト自体が過去に繰り返された失敗を乗り越えるためのものであるとすれば、清尾さんが指摘するとおり、「失敗は成功の母内閣」がこのプロジェクトに取り組むべき必然性はあるのかなと思います。もちろん、実際の補強や交渉においては現実的なクラブの評価というものがあり、今までやってきたこととこれからやりたいことを切り離すことは不可能なので、具体的なスカッド整備には時間が必要だと思います。大槻さんの手腕も未知数以下と評価せざるを得ないのが現実です。当然うまくいかないかもしれません。ただ、このプロジェクトが中長期的な視点で取り組まれるべきものであり、それを評価する我々もまた中長期的な目線を理解すべきという前提に立つのであれば、例えばうまくいかず、監督を解任せざるを得ないその時に、この中長期の方向性とチームコンセプトに沿った形での課題の抽出、狙いを持った後任の人選と実際の獲得ができるかどうかというところを見ていきたいと思います。

さて、経営から独立した意思決定を前提に、中長期的で主体的な方向性やチームコンセプトの設定、それを実行する組織と担当者の整備、期限つきの目標設定と評価プロセスを導入することにした浦和レッズさんですが、この「Urawa Reds: Reborn(2020年1月公開開始予定)」を進めていくためには、もう一つ変わってほしい部分があります。それが、ファン・サポーターとの関わり方です。

例の記事で考察した通り、これまでの浦和レッズは結果へのプレッシャー、育成や継続性へのコンプレックスといったものに対処するため、後から考えれば主体的とは言えない形でのクラブ運営を行ってきました。その結果は、27年間クラブに関わってきた戸苅本部長や土田SDが自ら断じた通り「一貫したコンセプトのなさ」という言葉に集約され、その時々で全く変わるサッカーの内容と強化方針、評価軸に、クラブも、ファン・サポーターも振り回されてきました。一貫したものがない中で、唯一まとまりを保てるのは勝利であり、「短絡的な結果」でありました。しかし、これからは違います。少なくとも、2023年までは違わなければいけません。クラブは自らの過去を否定し、新しい、長期的で一貫した取り組みにチャレンジすることを宣言しました。このような取り組みを宣言する以上、時には結果よりも、自分たちの長期的な方向性、チームコンセプトに照らした選択をしなければいけないことがあるとクラブは覚悟しているはずです。では、ファン・サポーターはどうでしょうか。土田SDが語り掛けた言葉は、我々にどのように届いているでしょうか。

最後に、ファン・サポーターのみなさまにお伝えしたいことがあります。今、説明させていただきましたが、みなさまのご理解とご協力があって、初めて達成できる計画だと思っています。時間がかかることですし、数々のハードルが予想されます。みなさんと一緒に、強いチームとすばらしい浦和レッズをつくっていきたいと思っています。一緒に戦ってください。よろしくお願いいたします。

 

2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見
http://www.urawa-reds.co.jp/static/ttt/162829.html

まあはっきり言って、こんな最後に取ってつけたようなお願いじゃ全然響いてこないですよね。実際、761人が回答して90%ははっきりとネガティブな態度か、少なくともまだ信用できないという態度なわけです。会見の内容をポジティブに捉えている僕ですら、新体制を信頼しきっているわけではありません。ではクラブが信用を得るには、どうすればよいのでしょうか。

一言で言えば、「誠実さ」が問われるはずです。では、「誠実さ」とは何でしょうか。世の中、誠実であれと頻繁にオーダーしてくる割にその定義は曖昧なんですよね。お前の言う誠実ってなんなんじゃと言いたくなります。で、僕は、誠実さを示すにはストーリーの共有と実行の姿勢が重要だと思います。

ストーリーの共有とは、過去から現在、そして未来へ繋がる時間軸と経緯が自分たちにもたらす影響、そしてその影響を受けている自分たちの状況と意思決定について、自分の言葉で説明するということです。なぜ我々はこのようなやり方を選ばなければいけないのか。クラブがやろうとしていることは具体的にどういうことなのか。ファン・サポーターに何を観てほしいのか。目の前の結果を、長期的な方針とチームコンセプトに照らしてどのように評価するのか。なぜ我慢するのか。なぜ我慢を求めるのか。90分の試合を、長期的な方針とチームコンセプトに照らしてどのように評価するのか、個々の選手のパフォーマンスを、どのような基準でどのように評価するのか、それはなぜなのか。一つ一つの打ち手は長期的な方針とチームコンセプトをどのように表現するものなのか。こういったことを、しつこいくらいに、事あるごとに説明し、オモテに出て、ファン・サポーターと共有し続けなければいけません。

何故なら、少なくともこれから3年間は、クラブが描いたストーリー・脚本に沿ってクラブが進んでいくからです。進む道を選ぶのはクラブです。クラブが主体的にチームコンセプトを定めてチーム作りを実行するということは、チーム作りの意思決定や結果に対する説明責任をクラブが負うということになります。おそらくそれは土田SDであるべきだと思いますが、このプロジェクトの責任者は、事あるごとにクラブの意思を説明する義務があります。なので、現場は監督の職掌範囲という前提の下ではありますが、土田SDにはいろいろな場、ツールを使って広くクラブの問題意識や意思を発信していくべきだと思います。ただ、一部で大槻監督がこの会見の場にいなかったことが指摘されていますが、この場はあくまで新強化体制について語る場なので、個人的には大槻監督は来季の体制が固まってシーズンが始まるときにでもしっかりしゃべってもらえれば良いのかなと思います。

実行の姿勢はもっとシンプルです。決めたこと、説明したことはしっかりと実行する。約束を守る。そして実行したらしっかりと周知する。まあ、どんなに上手に、頻繁に説明したところで、実行が伴わなければクラブが暗黒時代に沈むだけなのですから、これについてはJust Do itで終わりです。Just Do itは僕より伝えるのが上手な人がいるので、この仕事はプロに任せたいと思います。


Shia LaBeouf Just Do it! :::日本語字幕::: シャイア・ラブーフの激励

メディアに期待したい「姿を問う」姿勢

最後に、メディアの役割について。ぼくは20年くらい浦和に住んで、同じかそれ以上の期間レッズに関する報道を見てきて感じてきたことなのですが、これまでは中期的な方針まで監督に丸投げするとか、クラブが明確なコンセプトを示していないということもあったのか、はたまた取材の現場の事情なのかはわかりませんが、どうしてもサッカーの話は監督に集中してしまい、クラブの人間はオモテに出てこないという状況だったように思います。

これを、ぜひ引っ張り出して頂きたい。もちろん90分+αの間ピッチ上で起こることは監督の責任範疇ですが、中長期的なプロジェクトという意味では、これからはクラブも主体です(というか最初から本質的に彼らが主体なのですが)。これからは、彼らが直接説明しなければいけないことがあるはずです。良し悪しや好き嫌いはあるとしても、クラブがあり方を変えようとしているのが今なので、是非このチャンスに土田SDに事あるごとに話を聞きに行って頂きたいと思います。そうして「SDはトップチームのダイレクターなんだから中長期的プロジェクトの観点からアカウンタビリティを果たすのは当たり前ですよね〜」という雰囲気を浦和に作って頂きたいです。だいたい、今回の会見の内容ですらまだまだわかりにくく、ピンと来ていないファン・サポーターも多いはず。「浦和の責任」とか、説明用のガイドライン冊子でも作って駅とか市役所とかに置いておいたほうが良いと思います。

もうちょっと真面目なことを言えば、クラブが何かを決めたときには、なぜそのような決断になるのか?なぜそのような判断をしたのか?という理由の部分をもっともっと掘り下げて欲しいし、クラブの決断や判断ひとつひとつが土田SDの説明する中長期のコンセプトに合致しているか、ピッチ上の現象が、大槻監督に求められる3つのチームコンセプトの観点から満足されているかというところを可能な限り評価してほしいと思います。そのようにしてメディアのみなさんが我々ファン・サポーターと共同で、クラブがこのプロジェクトを成功させるために「あるべき姿」を果たしているかどうかを監視する枠組みを機能させることでこそ、ファン・サポーターを含めて、内も外も全部ひっくるめた意味での浦和レッズは、「自分たちが今何をやっているか、どこにいるのか」を歴史上はじめて認識できるようになるのだと考えています。

どんな場所に行くにしても、道のりと時間、そして必要な速さを知らなければいけません。それらを知るには、まず目的地と、次に現在地を正確に把握していることが必要だと思います。

 

今回も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。