96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

全国高校サッカー選手権を観に行ったはなし

継続して2種年代を観察しているわけではないので、別に詳しくもなんともないのですが、駒場やら埼スタでこの時期にサッカーをやっているとわかると吸い寄せられてしまう病気を患っています。でも浦和の人ってこういう人多そう。つまり、ただの日記。

 

国学院久我山 0  - 1 昌平

寝坊したので前半は観ていません。(おそらく前半から引き続き)結構堅い内容でしたが、最後の最後で昌平の一年生、篠田くんがエリア内中央で受けて左足を一閃。ラストプレーで先制するという「持ってる」感満載のゴールでベスト8に駒を進める結果になりました。

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決勝ゴールの瞬間。

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セレブレーションのえげつない青春感。

非常にテクニカルで簡単にボールを手放さない昌平高校を牽引していたのは10番でキャプテンの須藤くんとFWの小見くん。ともに2年生ということに驚きです。続く等々力での準々決勝でおそらくこの年代最強の青森山田の前に散る結果となりましたが、来年は文字通り彼らの年になるのではないかと思います。

国学院久我山はボールを保持される我慢の展開でしたが、サイドに起点を作られてもエリア内に侵入されても最後にボールを絡めとる守備は良かったなーと思います。あとで記事を読んで知りましたが、CBの子が出場停止だったんですね。苦しい試合でしたが立派な試合でした。個人的にはGKの村上くんが印象に残った…と思ったら彼も2年生でした。2年生すごい。

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"11番のSB"山本くん。コーチを務めるお兄さんと臨んだ選手権の舞台でした。

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試合後。刹那感。

 

富山第一 1 – 4 青森山田

浦和内定の武田英寿を擁する青森山田の注目度はさすがの一言で、あわよくば試合の間に良い席を取れるかなと思ったのですが余裕で無理でした。全然空いてないし誰も立ち上がらず、当然のごとく2試合をはしごする駒場の住人達。そりゃそうか。

普段の富山第一を全く知らないのですが、4-4-1-1の青森山田に対し富山第一は5バックで自陣を固める作戦。試合序盤は5-4-1に見えたんですがもしかしたら最初から5-3-2だったかもしれません。

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富山第一はユニフォームがかっこいい。

青森山田は静かな立ち上がり。昌平のようにテクニカルにボールを支配するのかと勝手に想像していたらゴリゴリにソリッドなチームでまず驚きました。2種では常識なんだろうか。まず目についたのは両サイド、11番の後藤くんと8番の浦川くん。直線的で力強いランが印象的な後藤くんに対して、8番の浦川くんはもっと頭と脚を使うタイプにみえました。こういう個性が分かれる両サイドは好みです。時間の経過とともに存在感を発揮したのは7番松木玖生くんと6番古宿理久くんの中盤コンビ。特に1年生で「山田の7番」を背負う松木くんはモンスター級の存在感で、CHながらサイドへのサポートや前線への飛出しなど、積極性とアスレチック、そして上級生に交じっても全く遠慮のなさそうな大物感を醸し出していました。と、印象も固まる前にロングスローヵらあっさり松木くんが先制ゴール。5バックを敷いて前半0-0がプランだったであろう富山第一としてはこの時点でかなり厳しい試合展開となってしまいました。

松木くんに目を奪われた僕ですが、さすがに試合を見ていると山田システムにも理解が深まってきます。技術と運動量のある両サイド、そして異様なポテンシャルを発揮する松木くんという個性的な中盤を統べていたのは6番の古宿くん。横浜FCのJYから山田、そして卒業後は横浜FCへの「帰還」が内定している選手で、それも納得のコントロール。セットプレーのキッカーとしてこの試合でもアシストを決めた通り技術は申し分ないのでしょうが、それ以上に個性豊かな中盤と圧倒的な個を見せつけるエース武田英寿を繋いでいるのは彼だったのではないかと思います。下級生の松木くんがあれだけのびのびとプレーできるのも、そのポテンシャルを自由に発揮できるだけの土壌が古宿くんのポジショニングによって整備されているからではないかなと思ったり。プロ入り後は下平さんの指導をうけるわけですが、キックの精度など技術的な要素に加えてチームの重心としてふるまえそうな戦術理解面での才能も感じました。アスリート能力がよくわからなかったけど、今後注目。

浦和サポーターとしては最も気になるエース武田くんは、思ったよりもアタッカーでした。チームでの役割もあるのでしょうが、基本的には4-4ブロックの前に位置し、守備を助けながらポジトラの出口としてふるまう役割。線が細いからか脚が長いからかわかりませんが、カモシカ的な佇まいが印象的。とはいえプレーに弱弱しさは全くなく、ボールキープと単独ドリブルで前進していく推進力は別格感もありました。押し込んでのプレーではワンタッチで落としたりと個人突破にこだわる感じがない一方で目立った見せ場もなし。ちょっと情報が少なく浦和でのプレーまではなかなか想像できませんが、イメージは若いころの中村俊輔+若いころの長谷部。ただ推進力はあるものの仕掛けて3人躱すという感じはなく、プロではもう少しボールを散らしたりラストパスを出したりという仕事になりそうな感じもあり、そうすると役割的には柏木に似ていくかもしれません。

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FKのフォームには中村俊輔を若干感じたり、感じなかったり。

結果としては王者・青森山田がセットプレーで4得点を奪うむちゃくちゃいやらしい強さを発揮したのですが、富山第一も最後まで流れからのゴールを許さず、後半には準備してきたであろうセットプレーから一矢報いるなど彼らが積み上げてきたものは見せたのではないかと思います。セットの守備はしっかりと構築できていただけに、終盤まで0-0で時計を進めたかったところでしょう。

ただ5バックの宿命でもありますが、ポジトラ~オフェンスに関しては特別なものは見せられなかったのが正直なところ。そんな苦しい戦況ではありましたが、富山第一11番の碓井くんは奮闘していたのではないかと思います。ネット情報では身長180cmとなっていましたが、178cmとなっている青森山田・古宿くんや武田英寿と比べてもう少し大きのではないかと思わせる躯体で、その一方でサイドに流れたり起点となるために中盤に下がったりと機動力のあるプレーが面白かったです。終盤は5-3ブロックから前線に良いボールが供給されず、時間がなかったこともあって下がり目の位置からバックヘッドでゴール前へボールを送るだけになってしまいましたが、体格と機動力を活かして起点になるプレーを極めたら面白いのではないかという印象を持ちました。イメージとしては、湘南→名古屋へ移籍した山崎凌吾みたいな感じでしょうか。チームの役割からかゴール前へ迫力をもって飛び込むプレーは見られませんでしたが、動き回りつつ起点になって、展開したボールをゴール前で迎えてズドンとか出来るようになると非常に魅力的だなあと思いました。

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富山第一・碓井くん。ぜひサッカーを続けてほしい。

というわけで、試合は青森山田の圧勝。王者たる強さはスラムダンクの山王的な風格を感じます。流れで崩せなくても左右の高性能キッカーからフィジカル優位を押し出してセットプレーからもぎ取れてしまうのは強い。先制のロングスローもあるし、あらゆるプレーでプレッシャーをかけられる対戦相手はやっててかなりキツいのではないかと思います。加えて、後半に失点した際に、すぐさま11人で集まって認識共有をするのも素晴らしい。コミュニケーションをリードしていたのは3番のCB神田くんだったと思いますが、青森山田はいちいち選手のキャラクターが立っているのも魅力的ですね。

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CB神田くんを中心に失点後の認識共有。強いチームはよくしゃべる。

優勝するかどうかはわからないけれど、この青森山田を見れたのはとても良い経験だった気がします。メンバーを覚えていたら将来いろいろと驚きがあるタイプのチームだったかもしれません。

というわけで、瑞々しい高校生の戦いを観た後は、地元の連中とがっつり飲んで帰りました。よい正月休みでした。ちゃんちゃん。

 

 今回もチラ裏にお付き合い頂きありがとうございます。また次回!