96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

チラシの裏:新型コロナウイルスのはなし - 個人レベルの戦略の必要性について考えたこと

みなさんこんにちは、お久しぶりです。

体調はいかがですか?皆さんお元気であることを祈るばかりです。

このブログは基本的に浦和レッズについて語るブログなので、こういう状況では更新することがありません。それは大多数のサッカーブログも同じだと思いますが、みんな一斉に更新が止まるとやはり寂しいものがありますね。Twitterのタイムラインも明らかに人が少ないですし、サッカーという共通の趣味に集まっていた人たちが別々のチャンネルに散っていってしまったような、そんな感覚すら覚えます。

先日東京での一日の感染者数が100人を超えたということで、にわかに「国家緊急事態宣言」が出されるのではないか?首都東京のロックダウンか?という話が語られるようになりました。こういう状況になると無症状にかまけてウイルスを拡散させている若者が悪いとか、いやいや外出自粛を無視して花見をしているのは老人だとか、買い占めがどうだとか、社会の間にコンフリクトが多く生まれてしまいます。未知の危機や問題に直面した時に、それを自分のわかる範囲の問題に無意識に変換してしまうというのは人間の(というか人間の脳みその)性質だと思うので、仕方ないことなんでしょうけど。まああまり生産的なことではないので、それよりも大切なことに目を向けたほうがいいのかなと思います。「それよりも大切なこと」はもちろん自分自身と家族を守ることであって、言い換えればそれは単純にstay homeなわけですが。

そうは言っても、出口の見えないトンネルを歩かされる経験というのはどんな人にも心地よいものではないですよね。stay homeもいつまでやればいいのか?いつになればいつも通りの社会が戻ってくるのか?というのはどうしても気になります。せめて自分たちがどこに向かっていて、今どの地点にいるのかくらいは予見しておきたいですよね。

日本の新型コロナウイルス感染拡大に対する戦略はとにかくクラスターを追跡し根絶するというものでした。つまり感染者は出てしまうけれど、その経路を素早くたどって「感染に追い付けば」いつかは感染をコントロールできるようになる、というものでした。なので日本vs新型コロナウイルスの戦いは、どんなに感染者数が増えていても感染経路が判明し一定程度のコントロール下に置かれていればなんとかOK、そうでなければ非常に危険と言えるのだと思います。

その意味で一日の感染者数が100人を超えたというのは現象としてはとても重要なんですが、それよりも数日前から感染経路が追えない、不明な感染者の割合が増えていたことの方が重大で、その割合が増えれば増えるほど、戦略的な敗北に近づいていると言えると思います。単純な病床数のひっ迫や医療キャパシティの限界は言ってみれば戦術的な問題で、足りないものは足りなくなるので仕方ないです。足りなくなったときに新し病院を建設するとか、無症状者をホテルに隔離できるようにするというのも、戦術的な対処です。一番重要なのはクラスターを追って感染をコントロールする、新型コロナウイルスの感染に鬼ごっこをしかけた戦略自体が失敗に終わってしまうと、戦略の失敗を戦術で取り返すのは非常に困難である、ということなんですよね。つまり、日本の新型コロナウイルス対策は戦略を変えなければいけない時期に来ているのだと思います。

では、この鬼ごっこ戦略の背景にあったものはなんだったか、という話になるんですが、これには政治、経済、医療体制などなどいろいろな状況があってのことだったと思います。日本の医療キャパシティは他国と比べて悪くないですが、公共病院が他国比較で少ないことと、病床数に比してもともと世界トップクラスに衛生的な国ということもあって感染症受け入れのキャパシティが少ないというのが特徴のようですから、医療界としては新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えつつ、少なくとも医療体制を確立させるだけの時間を稼ぐ必要があったのだと思います。国としての医療体制の確保はあらゆる点で政治判断が伴いますが、政治がまず気にするのは経済ですから、経済活動を完全に止めた場合の影響(つまり、1週間の経済活動停止でGDPがどれだけ失われるか)の検討は早い段階で行われていたと思います。その規模の大きさから言って、政治としては感染経路を追いかけられ、感染状況がつかめるのであればなるべく経済活動を制限したくないという意図はあったと思います。また政治的には、人権保護の観点から現行の法体系では完全なロックダウンが実現できないという「足枷」をあらかじめ認知していたでしょうから、そのような議論をする前には必ず現実的な対策でステップを踏まなければいけないという判断もあったはずです。

個人レベル、家庭レベルでの戦略が求められるのではないか

さて、では今後日本の新型コロナウイルス対策戦略はどのような形に変更しなければいけないのか、ということですが、それこそ専門家に任せるしかありません。ある程度の感染を許すがそれをコントロールするという状況が既に失われてきている以上、日本はおそらく何かを犠牲にしてでもこの感染に「対処」しなければいけない状況に入ると思いますので、あとは何を犠牲にするか、という議論になるのでしょう。

一般人として今考えなければならないのは、政府への批判や不信をベースに政府と戦うことではなく、かといってデマや社会的な不安と「自治および正義の精神」で戦うことでもなく、無理やりにポジティブでいることでもなく悲観し絶望することでもなく、それぞれが戦略を持つことだと思います。日本国の感染症対策はある程度の結果(感染の遅延)をもたらしたものの戦略上の損益分岐点を迎えようとしているわけですから、それが悪い方向にブレイクした時のことを考えて個人的な戦略を持っている必要があります。つまり、状況に、新型コロナウイルスの感染拡大に、ありのままに流されてしまうのではいけないということです。

とはいえ、もちろん感染拡大を個人の努力で防止することは不可能なので、どのように感染リスクに対処するか、という戦略を組み立てる必要があります。戦略策定に究極的に重要なのは目的の設定ですから、妥当な目的を検討しなければいけません。僕が設定するとすれば、ここで妥当な目的は、「このコロナ禍の生活への影響を最小限に過ごすこと、そして家族の誰かが感染しても全員無事で生き残ること」とします。もちろん感染しないことが最高なのですが、国の戦略が転換点にある以上リスクは高まるばかりですし、感染リスクはもう0にはなりませんから、感染した時にいかに安全に事を運ぶかが重要です。自分や家族の誰かの体調が悪くなったときにどのような行動をとるのが最善か?隔離するスペースは確保できるか?自宅療養になった場合に感染リスクを最小化するために何をするか?解熱剤は用意してあるか?会社や身内への連絡や連携はどうか?などなど。活動自粛に合わせてこれくらいの対応を想定しておいて、自分のリソースを何にどう振り向けることができるか、何ができて何ができなくなるかは想定しておいた方がいいのではないかと思っています。

Jリーグ新型コロナウイルス

Jリーグのほうは、神戸の酒井高徳をはじめとして何名か感染者が出てしまっているものの、概ねここまで良い危機対応が出来ているような気がします。もちろん良い危機対応とは、アジア最高峰のプロサッカーリーグとしての社会的責任を自覚したうえでのリスクオフということになりますから、リーグの対応が正しければ正しいほど見切り発車の可能性は低くなるわけで、それだけ再開は遅れますし、悪ければすべての試合を消化できなくなる可能性が高まるので、ファンとしてはもどかしい気持ちもあるのですが。

リーグに倣って浦和レッズさんもスケジュールを頻繁に変更しており、かなり柔軟な対応が出来ていると思います。一週間単位のスケジュール変更を一か月、二か月と重ねていく事務的な辛さは想像に難くありませんが、こうも長く続くと、興梠がコメントしていた通りキャンプで作り上げてきたバイオリズムは役に立たなくなってしまうでしょうね。

新型コロナウイルスの影響によりチームは2週間、チーム活動を休止することになりました。沖縄キャンプから体を作ってきて、これから試合、という状況まで体を追い込んできた中で長期の休止は準備としてはすごく難しいです。だからといって中途半端に外に出て体を動かしたりすることも違うと思っています。みなさんにもできるだけ家にいて、家でできることをするということを勧めたいです。新型コロナウイルスの問題は一人ひとりが真剣に向き合わないと終わらないことだと思います。」

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もう一つの懸念は経済的な問題で、既に世界中の飲食店やサービス産業は活動自粛の影響を受けて壊滅的な売り上げ減は避けられないでしょうし、欧米で放映されているような事業者補償が日本でどれだけスピーディに、包括的に実施されるかは正直疑問です。サッカーに関係しているところで言うとスタグルにいつも出店されている企業さんが生き残れるかどうかは結構心配です。Jリーグやクラブが旗振り役になって、それぞれのサポーターが支援できるようなスキームが作れればいいのではないかと思いますが、なかなかそういうのは難しいのかな。そもそも飲食物だと簡単に宅配というわけにもいかないのだろうし、ただ募金して関係ある企業さんに配分しようという活動もいろいろな面で大変なのかもしれません。家に引きこもっているばかりではストレスが溜まるし、許されるならお金を使いたいという気持ちはこれからだんだんと高まっていく気がするので、ここに何か良いアプローチを見つけ出したいですよね。

エンターテイメント産業の一種としてプロスポーツ界、つまり僕たちの浦和レッズを含めたクラブそのものが受ける経済影響も間違いなく甚大なものになるでしょう。村井さんは日本のクラブは一つも潰さないようにすると宣言していた気がしますが、現実的には自力で生き残れるのは一部のクラブだけで、多くのクラブがリーグからの支援を受けなければ生き残ることはできないような状況が続くのではないかと思っています。JリーグDAZNからの放映権料を骨格とした成長戦略を描いていたはずですから、Jリーグの中断期間が長引いて最終的に予定していたスケジュールをこなせないとなったときに、DAZNとリーグの間でビジネス的にどのような交渉が行われるかはかなり大きな問題になりそうです。今のところはそのような議論はされていないようですが。

というわけで、いろいろ心配もあるのですが、個人的にはこういう社会的な経験はリーグやクラブが100年続いていく上では必要なものだと思うし、今はすべてが正解かはわからないけれど、それぞれのクラブにこの経験が蓄積されていくことが長期的な日本サッカーのサステイナビリティに寄与していくような気もします。テレワーク関連のテクノロジーとか生活スタイルだって、皮肉ですがこういうパニックだから一気に浸透するという側面もあるでしょうし。こういう変化に柔軟にキャッチアップしていくのは結構重要だと思います。

とにかく今はこの混乱をクリアして、自由な生活が戻ってくるのを待つしかありません。株の世界では常々、「戦争は買い」、つまり戦争による混乱の後は必ず大きな成長が待っているとされていますが、新型コロナウイルスとの戦いがまさに「戦争状態」であるなら、この時にこそパワーアップして、将来の力強い成長を果たしたいものです。

 

というわけで、今日のチラ裏でした。みなさんご健康にお気をつけて。

また次回!