96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

「意地」:Jリーグ2020 vs横浜FC 分析的感想

中堅以上の浦和レッズサポーターにとっての横浜FC戦というのは、2007年に唯一置き忘れてきたもの、リーグ連覇が手から零れ落ちていったあの日産スタジアムでの記憶とセットになっていると思います。もしくは、同じ年にホーム開幕戦で対戦した際の久保のドラゴンシュートでしょうか。


スーパーシュート~久保竜彦~

そんなわけで対戦回数は2007年の2試合のみにも関わらず何かが起きてきた横浜FCとの13年ぶりの対戦です。

直近の横浜FCの成績は1勝2分け3敗。前節はマリノスとのダービーマッチを0-4で落とし、2連敗中。浦和もFC東京、柏に連敗し、お互いに3連敗は避けたい中での一戦でした。

両チームスタメンと狙い

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スタメン

浦和はスタメンをいじり、再開後ほとんど手を加えてこなかった最終ライン、特にCBを槙野、鈴木大輔のコンビに変更。また柏木もスターティングラインナップに名を連ねており、ここにきてこれまで出場機会の少なかった選手を起用しました。メンバー変更があったことで配置、システムについても様々に予想でき、4-3-3や横浜FCのビルドアップをマンマーク気味に捕まえに行ける5-3-2などの可能性もありましたが、結局は4-4-2でスタート。

浦和のベンチには福島、マウリシオ、伊藤、荻原、柴戸、健勇、武藤。横浜FCのベンチは市川 暉記、田代 真一、武田 英二郎、瀬古 樹、松浦 拓弥、皆川 祐介、草野 侑己。

横浜FCは下平監督の下ポゼッションをベースにゲームを握っていくチームが構築されており、J1でもその戦い方を踏襲していくようです。非常に明確なビルドアップ戦術を持っており、最後方から組み立てて相手を引き出し、アタッキングゾーンではオープンなスペースを前線の選手に謳歌させる戦い方は、GKを使った後方でのパス回しで相手を引き出し、一気にスピードアップして疑似カウンターを仕掛ける片野坂監督の大分のやり方に近いかもしれません。

上記はマリノス戦を少し見ての印象をまとめたものですが、横浜FCのやりたいことの骨格は掴めていると思います。バルトラロールとは何ぞや、ついては後で詳しく見ていきたいと思います。一連のツイートのうちいくつか外れていることがあって、まずは横浜FCは前節CBの中央を務めていた田代がベンチに座っていること、もう一つは大槻監督が引くことなく横浜FCのビルドアップに非常に高い位置からのプレッシャーをかけることを選択したことです。

ゲームの構造:横浜FCのビルドアップを起点にした攻防

そんなわけで、このゲームの構造はビルドアップからボールを運び仕掛けていきたい横浜FCと、それをひっかけてカウンターに繋げたい浦和という構図がゲームの最初から明確であったゲームとなりました。試合開始後30秒、槙野のフィードが横浜FCのGK南まで流れると、早速盤面が浮かび上がります。

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横浜FCのビルドアップ

横浜FCのビルドアップの基本体形はこんな感じ。この場面ではゴールキックではありませんでしたが、ゴールキックの場合でも新ルールによって味方選手がペナルティエリア内に入れるので、同じ形が頻発します。まず3バックの両脇が開き、GKからの横パスを受けられる体勢を取ります。それに合わせて3バックの中央が高いポジションを取り、まるで4-3-3のアンカーのように中央に立ち、GKと3バックでダイアモンドを作ります。この立ち位置とビルドアップでアンカーとして振舞う役割が僕の言うバルトラロールで、ただ僕がそう呼んでいるだけなので正しくは違う呼び方があるのかもしれませんが、キケ・セティエン時代のレアル・ベティスの試合を観ていたら当時3バックの中央でこの役割をこなしていたマルク・バルトラが全く同じことをしていました。ここから、GKは3つのパスコースのどこかにショートパスでビルドアップをスタート。横浜FCの中盤の選手、両サイドのWBと中盤の3枚はほぼ横一列に並び、最初のダイアモンドの3つの頂点のどこからでもパスコースが少なくとも2つ用意されているのがわかります。実際には、アンカー化している3バックの中央、今節では小林が3つ目のパスコースとなるように顔を出すことで、ダイアモンドの関係を維持していく、という仕組みになります。

対する浦和の守備は、図の通り横浜FCの最初のダイアモンド、GKと3バックのパス交換からボールを追いかけていく形をとっていました。後ろに人数をかけている横浜FCに対して、浦和は4-4-2の形は維持したまま前に出ていくため、根本的に数的不利ではあるのですが、いくつかの工夫と注意で横浜FCのビルドアップ局面における不利(=横浜FCの持つパスの選択肢の数-浦和が潰せるポイントの数、もしくはプレッシングにかけられる人数)をなるべく軽減しようとしていたようでした。

まずスカウティングできていたであろうことは、横浜FCのGKからのビルドアップは高い確率で左サイドへ展開されることです。右CBの星のボールスキルの問題だと思いますが、実際に今節GK南からスタートしたビルドアップは前半だけで11回ほどありましたが、そのうちの9回は直接左CBの袴田へのパスからスタート。残り2回はアンカー化した小林が受けて、そのまま前進が1回、結果的に星へパスが渡ってスタートしたのが1回でした。これまでの横浜FCの試合を全て観たわけではないですが、事前のスカウティングで大槻監督はこの傾向をよく把握していたはずです。それがどの程度選手起用に反映されているかは別として、横浜FCの左サイド、浦和の右サイドでのビルドアップの攻防には浦和側の準備が見て取れました。

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横浜FCのGKビルドアップへの対応

横浜FCが対4-4-2においてボールを運んでいきたいスペースは主に3つで、図で黄色く示した部分、2トップとSHの間、SHとボランチの間、そしてSHとSBの間の大外のスペースとなります。4-4-2で立ち位置を取るとどうしても初期配置で人がいないスペースであり、ここにボールを入れればどこから守備者が来るにせよ組織に穴をあけられるというわけです。

まずは袴田にボールが入ったところから、2トップがボールにアプローチし時間を削ります。そのうえで柏木はCB→WBのパスコースを意識した立ち位置を取り自分の背後にできるSHとSBの間のスペースを消しつつ、自分の左側にできる2トップとSH間のスペースを意識します。ここには手塚が頻繁に降りてきてボールを受けるのと、アンカー化した小林が顔を出すことで横浜FCのビルドアップの最初の出口になります。ここをケアするのは柏木か、2トップが限定できていればボランチが前に出ていく約束になっているようで、主にエヴェルトンがアプローチをしていました。またSHとボランチの間のスペースは、手塚の基本ポジションとなっていましたが、手塚が動くとここに斉藤が降りてきます。ここには鈴木がマンマークで対応し自由にしないという約束になっていたようでした。また、左にボールが出れば簡単には右サイドの大外は使われないため、逆サイドのSHに入った関根は中盤に絞って横浜の右IHのシュンスケナカムラを監視。これで横浜FCの中盤3枚に対して、浦和はボランチ2枚+逆サイドのSHで枚数を揃えられます。これが基本設計で、3つのスペース全てを消すことはできないものの、ボールの行く先をなるべく限定し、その結果ボールが入ってくるスペースには誰がアプローチに行くべきかを整理してきたように感じました。

この形を実践する上で、浦和は基本的にボールと逆サイドのCB、つまり多くの場合は星を捨てています。これによってビルドアップ時のボール保持チームの数的優位を少し緩和することができ、横浜FCの狙い目のスペースを簡単に使わせないという狙いを感じました。ただし、厳密に言えばGKが参加している分の枚数は不足しており、またこのやり方ではアンカー化する小林を完全に消すことはできません。実際開始30秒のシーンでも袴田にボールが入った瞬間に興梠が寄せますが小林に顔を出されて簡単に前を向かれてしまい相手の前進を許していましたが、袴田の次のパスコースをめぐる両チームの争いは、結果としては7:3くらいで横浜FCがボール前進に成功していたという感じだったでしょうか。ただ30%もビルドアップを阻止できるというのは浦和にとっては大きく、例えば松尾と手塚が内と外のポジションチェンジをして狙い目のスペースに入ってきた20分のビルドアップでは柏木と橋岡がそれぞれスムーズに対応し、結果的に青木がボールを引っかける、というシーンを作り出せていたと思います。

一方の横浜FCはこうしてビルドアップを狙われることは織り込み済みで、リスク覚悟で繋いできます。佐藤、手塚、シュンスケナカムラの3枚がボール保持を安定させ、浦和が出てきたところを裏返せば一気にゴール前に迫ることが出来るという構造も作用して、このビルドアップの攻防をベースにお互いがゴール前に迫るという構造であったと思います。

ビルドアップにこだわる横浜FC

ゲーム序盤は基本的にお互いがゴールに迫る場面を多く作る形で推移しました。開始2分で松尾がダブルタッチでの突破に柏木がファールをしてFK。浦和も横浜FCが右からビルドアップを始めたところで関根がボールを奪い、その流れからエリア内でショートパスを繋ぎ、走り込んだ青木が興梠にパスを出したものの珍しく興梠が感じておらず不発に終わったシーンが8分。そのまま流れたボールを拾った松尾が長い距離のドリブルを仕掛けたところから斉藤が1on1でクロス、カバーした槙野の手に当たるもノーハンドの判定がその1分後。11分にはまたも斉藤が1on1からカットインシュートを狙い、16分には松尾が高い位置を取ったために左サイドのビルドアップで同数の状況を得た浦和がボールをひっかけてエリア内のレオナルドにボールを届けます。20分にも横浜FCのビルドアップをひっかけ、徐々に浦和のプレスがハマってきたと思われた23分には袴田のフィードから一発で浦和ボランチの背中を取った斉藤へ、その流れで手塚のシュートがサイドネットを強襲。前半の飲水タイムまではお互いの狙いがぶつかり合い、横浜FCのビルドアップ局面で優位を取ったほうが一気に相手ゴールに迫る展開となりました。

オープンな展開を若干嫌っていたのは下平監督のほうで、ボールを保持して落ち着こうという指示の声が何度か横浜FCベンチから聞こえていました。横浜FCは浦和のビルドアップにおいては深追いはしないものの、ビルドアップに参加する2枚のCBは2トップでケアできますし、ボランチが降りてもIHがついて行くことで同数を作り出せます。浦和がボール保持では割と簡単に西川までボールを戻すこともあって、西川に蹴らせてセカンドボールを回収したいという意図があったようでした。ただ中盤での競り合いはコンパクトな陣形を維持できていた浦和に若干分があり、思ったほどボールが保持できなかったというのが横浜FC側から見た今節の前半だったかもしれません。

とはいえ、ゴールチャンス自体は横浜FCがよく作り出しており、飲水タイム後はお互いにセットした状態での攻守が多くなり、浦和の4-4-2に対してWBで幅が使える横浜FCがボールをサイドに振って攻める形を見せていきます。典型的なのは35分のシーンで、佐藤から大外の松尾へパスが通り、松尾のクロスがこぼれると逆サイドからマギーニョがシュート。40分にも右サイドからのクロスにマギーニョが大外から飛び込んで決定機など、セットした守備では左サイドのクロスから山中のクロス対応を誘発してゴールを狙うというのも下平監督の狙いだったのではないかと思います。

また同じ時間帯にはGKからのビルドアップの形を少し変え、アンカー化していた小林がエリア内でGKと並ぶような立ち位置からビルドアップを開始する形を試します。

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横浜FCの2つ目のビルドアップ隊形

おそらく、それまでの時間帯で自分たちの基本型に浦和が準備をしてきたことを感じており、少し狙いを外しにかかったのではないかと思います。ここまで深い位置で数的優位を作られてしまうと、浦和にとっては4-2-4のような形で追いかけなければなりませんが、中盤を2枚にしてしまうとそもそものかみ合わせで中盤が3on2になっている部分が表出してしまいます。相手が前に来るのならば後ろにさらに人数をかけて立ち位置と選択肢の多さで上回り、相手を裏返そうというコンセプトの一貫性と、この形にもすぐに対応できるだけの仕込みができていることを思わせるシーンでした。ちなみに45分にもこの形からビルドアップを開始し、下平監督はそれなりの手ごたえを得ていたようでした。

しかし、お互いにゴールに迫りながらも得点はなく、ゲームは0-0のまま後半へ。

柏木の起用が当たった先制点。

後半も前半と構造はほぼ同じ。後半開始5分間の間に両者がCKを獲得するなど、お互いのエリアに迫っていくゲームが続いていました。

均衡を破ったのは浦和。西川のパントキックを興梠が落とすと、ボールは柏木の下へ。柏木は間髪入れずダイレクトで近くのレオナルドへ一度当て、中に入りながらリターンを受けると、このやりとりに横浜FCの中盤3枚全員が寄って足が止まります。同時に斜めにラインブレイクを試みた興梠の動きに合わせて横浜FCの最終ラインは下がっており、ふたつのラインの間にスペースが。そこで関根が柏木からのダイレクトパスを受けて前を向くと、その瞬間に興梠が再び背後へランニング。小林と袴田が興梠に合わせてラインを下げ、星が関根の対応のためにステイして横浜FCの最終ラインにギャップができると、その一瞬を見逃さないのがレオナルド。星の背後へ「く」の字のランニングで入り込み、関根のスルーパスをダイレクトでネットに突き刺しました。

西川がパントを蹴ってからわずか12秒。カウンターからではないものの、横浜FCの守備組織が状況に対応する暇を与えない電光石火の攻撃で浦和が先制点をもぎ取りました。横浜FCとしては、それまでにシュートチャンスを作れていただけに、かなり堪えるゴールだったのではないかと思います。

このゴール、個人的には柏木ありきのゴールかなと思います。3枚のIHの外側を使いたいはずなのでSHの人選には注目していましたが、まさにIHの外側からトップの選手とのパス交換で中央に入り込む柏木の良さが起点となりました。右SHにはいろいろな選手が起用されていますが、こういったワンタッチでのボールのやりとりや、左利きならではの中央に入り込んだ時のプレーのスムーズさは今のところチームでは柏木のみが持つ特性とプレーです。もちろんレオナルドのスペースを見つける嗅覚、1on1を制する決定力、興梠の2度のフリーランも重要でしたが、ボールが足元に入った瞬間に、おそらく考えてはいないともいますが一気にスイッチを入れた柏木のプレーが素晴らしかったと思います。もちろん設計された形ではないと思いますが、柏木を右SHで起用するとこういうプレーが出るようになるというのはチームとしては興味深い発見であり、柏木にしてみれば存在価値を示したプレーだったのではないかと思います。

ここ数試合取れていなかった先制点を得たことで、浦和は戦い方がはっきりしたと思います。基本的には4-4-1-1で中央を固めて、サイドにボールが出れば素早い出足でケア。マイボールでは早めに相手の急所であるライン裏を取り、ボールを失えば素早くボールホルダーを狩りに行く。60分には興梠のアクシデントで健勇が入りましたが、それも守備ブロックと前線のタメを考えれば結果的にはポジティブに作用したのではないかと思います。その後は横浜FCの攻撃を中央を固めて跳ね返し、両サイドがケアしきれなくなればなりふり構わず5-3-2を導入。最後には相手のミスからカウンターで決定的な2点目を奪ってゲーム終了。浦和にとっては、先制点を奪えれば(取られなければ)こういう試合が出来るんだというところを見せることができたゲームだったのではないかと思います。

3つのコンセプトに対する個人的評価/選手個人についての雑感

それでは採点。

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は5.5点。とくに先制点のシーンは柏木、関根、興梠、レオナルドの個性が良く出た素晴らしいゴールだったと思います。献身的な運動量でスペースを埋め続けた青木と、ポジティブトランジションではボールを運び、最後にはゴールまで奪ってみせたエヴェルトンの活躍も良かったと思います。やはり青木と組ませるのはエヴェルトンのような運べる、攻撃に関われる選手がよさそうですね。そして何よりチームを鼓舞し続けた経験豊富なCBコンビの活躍なくして、無失点でゲームを締め、先制し前向きに相手の攻撃を跳ね返すという自分たちの展開に持ち込むことはできなかったのではないかと思います。ちなみに、今節はこれまでとは見違えるほど西川の声が出ていたのが印象的です。ラインを上げる指示やサイドに出ていく選手、スペースを埋めるところなど、前節の中村航輔に影響されたんじゃなないかと思うほどの気合の入り方でした。

個人の能力の最大化というテーマについて思うのは、このチームは文字通り大槻監督のチームだなということです。今節のように個人能力が発揮されたのも、やはり戦術的な噛み合わせで負けなかったからこそだし、これだけのプレーを見せてくれる選手をしっかり起用したからこそ。今後も監督同士の戦術的な準備のせめぎあいをベースにして、選手の質を輝かせて勝つというのが浦和の勝ち筋になるのではないかと思います。スケール感は違うけれど、バルサというよりレアルのサッカーみたいな、そんな感じと言えるでしょうか。戦術的であることがともすればボール保持の仕組みが洗練されているかどうかで評価されがちな気がする昨今のJリーグにおいては、こんなやり方のチームもあって良いのではないかと、個人的には思います。今のところ。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は7点。やはりここも声やコミュニケーションの部分で、特に先制点を奪った後、交代選手を含めてゴールを奪いに来た横浜FCの攻撃を跳ね返し続けることができたのは前節までの反省が効いたのかなという印象です。槙野が以下のようにコメントしていますが、前節までに感じていたコミュニケーションや鼓舞する声、ピッチ上のリーダーシップといった課題をチーム内でも認識し、これまで出場機会のなかった選手がチームにエネルギーを注入してくれたというのは、これからの今季の戦いに非常に良い影響を与えると思います。槙野のクロス対応には安定感がありましたし、鈴木はボール保持において相手2トップの脇からIHの脇までドリブルで持ち上がっていくプレーでビルドアップに貢献していたと思います。

「チームがピッチのなかで少し元気がない。声が少ない、コミュニケーションをとっている姿が少なかった。そこを今日は西川(周作)選手と鈴木大輔選手と一緒に、90分間声を出す。我慢するところは我慢する、盛り上げるところは盛り上げると、徹底して試合前に話し合いました。それを貫くことができ、難しい時間帯もありましたけど、そこで踏ん張れたことが、レオナルド選手、エヴェルトン選手の得点に繋がったかなと思います」

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やっぱり今節くらい声を出し合って鼓舞しあわないとだめなんじゃないかと思います。もし今節負けていたらと想像するもあれですが、観ていて今日は戦ってるなと感じられましたから、負けたとしてもこのテーマには一定の評価が出来たと思います。これをスタンダードにしてほしいですが、それを考えると岩波はこの部分で改善が必要だし、トーマスやマウリシオを起用するにしてもリーダーシップを発揮できるCBを相棒に使いたくなるなあという感じです。大槻監督は分析畑で論理派ですが、こういう部分は凄く大事にする気がするので、来週以降のゲームでCBの起用がどうなるか、注目してみたら面白い気がします。そういう意味で、今節のCBコンビのパフォーマンスは、序列が上がるとか下がるとかではなく、評価軸そのものを考え直させるようなものだったと思います。槙野の言葉を借りれば、「意地」を見せてくれました。「浦和を背負う責任」、ちょっとは感じさせてくれたんじゃないかと思います。

また、前向きなプレーという意味では、横浜FCがGKからのつなぎに強いこだわりを持つチームであったことも影響するとは思いますが、彼らが使いたいスペースを事前に整理し、前から嵌めつつ潰すべきスペースと潰すべき人を明確化させた大槻監督の対策も作用したと思います。どれだけ選手に気合が入っていても噛み合わせで外されてしまえば空回りするばかりなので、この点は事前の戦術準備の勝負で負けなかったということかなと思います。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は6点。基本的に横浜FCがボールを保持し、浦和がそれを嵌めようとする展開の中で、もちろん突破されてしまう場面もありましたが、何度も何度も同じポイントを使われて相手がリラックスしてボールを前進させるというようなシーンは作らせなかったと思います。前半途中で下平監督がビルドアップの形を変えたことも浦和のプレッシャーを感じていたからでしょう。また、これまで見られなかった浦和側の意識付けとしては、自分たちがボールを失った瞬間に、相手のボールホルダーとその次のパスを受ける選手まではゲーゲンプレス(カウンタープレス)を行ってネガティブトランジションでボールを即奪還するという狙いが見られました。相手がGKからビルドアップする際に前から嵌めに行く姿勢はこれまでも観られましたが、ゲーゲンプレスを意識付けさせていたのは今季初めてではないかと思います。今のところ浦和はボール保持で素晴らしい仕組みがあるわけではないのでボールを失う回数も多いでしょうし、自陣に構えたところからカウンターを狙うだけでは限界がある中で、この取り組みは前向きに評価できるのではないかと思います。「攻守に切れ目のない、相手を休ませない」というテーマの評価においては今後もこの取り組みが継続されるかは注目していきたいと思います。

横浜FCの選手で言うと、やはり斉藤光毅と松尾祐介の二人は目立ちましたね。降格のない今季のリーグ戦でのびのびとJ1の選手たちとやりあえる環境は彼らの成長にとっては最高なのではないかと思います。松尾はプレースタイル的にも浦和に来たら相当愛されると思うので、土田SDよろしく頼みます。また同じくレッズユース出身で横浜FC一筋の佐藤謙介も素晴らしいパフォーマンスだったと思います。あと5歳若ければミシャが取ったかもなあみたいな。個人的に凄く応援している選手なので、ケガなくJ1を戦い抜いてほしいです。最後に、今後の移籍市場的に注目度が高そうなのは袴田裕太郎。明治大学で岩武と同期だった選手でキャリアはまだまだこれからですが、左利きのディフェンダーの重要性が高まっているJリーグにおいてはビルドアップを重要視するJ1上位クラブが注目する存在になっていくのではないかと思います。あれだけ蹴れる、遠くを見れる選手は貴重で、本職はSBですが、身長は183cmと問題なく、これまでもプレー経験がないわけではないのでCBとしてキャリアを築いていく可能性もあるのではないかと思います。

チームとしての横浜FCは、ビルドアップを貫く姿勢や、それを実践できる選手など魅力に詰まったチームでしたが、15本のシュートを放ちながらブロックされたものが4本、枠外が9本で枠内シュートが2本だけという部分に課題が出たような気がします。本当は膠着した展開では一美になんとかしてほしいのでしょうが、彼に決定的な場面が訪れることはありませんでした。このスタッツを考えても、今日は槙野と鈴木がしっかり跳ね返し、抑えてくれたということなのかもしれません。CBのポジション争いは群雄割拠に突入する予感です。

ということで、ファストブレイクから先制点を奪い、最後は守り切ってとどめを刺す狙い通りのゲームで3連敗を回避し、なんとか上位に留まることが出来た今節でした。

長文にお付き合い頂きありがとうございました。