96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと 浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 2024-03-13T11:56:54+09:00 reds96 Hatena::Blog hatenablog://blog/11696248318753178132 「戦術的間延び」なのかどうか:J1リーグ2024第3節vsコンサドーレ札幌 分析的感想 hatenablog://entry/6801883189089607441 2024-03-13T11:56:54+09:00 2024-03-13T16:45:54+09:00 www.jleague.jp 文脈とメンバー 開幕2試合で勝利なしの両チーム。さらに今季浦和はPKの1ゴール、札幌はゴールなしとお互いにチーム作りが思い通りに進んでいない中でのゲームです。 札幌はマンマーク強めのディフェンスをすることがリーグ内でも広く認知されていますが、浦和は開幕節で広島と対戦しており、ある意味では対応は予習済み。前節ヴェルディ戦では攻撃面での連携不足が目立ったところ、今節はこれまでの2試合の反省と教訓を活かしてそろそろ攻守のバランスや戦術の表現度を向上させていきたいところ。 一方の札幌は前節鳥栖戦で4-0の大敗を喫しており、攻撃面の向上もさることながら、ホーム開幕戦での守備… <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240311/20240311001252.png" border="0" title="" width="636" height="377" loading="lazy" /></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【公式】札幌vs浦和の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年3月10日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.jleague.jp%2Fmatch%2Fj1%2F2024%2F031001%2Flive%23live" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.jleague.jp/match/j1/2024/031001/live#live">www.jleague.jp</a></cite></p> <h5 id="文脈とメンバー">文脈とメンバー</h5> <p>開幕2試合で勝利なしの両チーム。さらに今季浦和はPKの1ゴール、札幌はゴールなしとお互いにチーム作りが思い通りに進んでいない中でのゲームです。</p> <p>札幌はマンマーク強めのディフェンスをすることがリーグ内でも広く認知されていますが、浦和は開幕節で広島と対戦しており、ある意味では対応は予習済み。前節ヴェルディ戦では攻撃面での連携不足が目立ったところ、今節はこれまでの2試合の反省と教訓を活かしてそろそろ攻守のバランスや戦術の表現度を向上させていきたいところ。</p> <p>一方の札幌は前節鳥栖戦で4-0の大敗を喫しており、攻撃面の向上もさることながら、ホーム開幕戦での守備崩壊は避けたいところだったと思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240311/20240311010524.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>浦和は前節から先発メンバーを2枚変更。前節ボールタッチ一桁に終わったチアゴをベンチに置き、大ベテラン興梠が昨年に続いて第3節でスタメン入り。衰えが否めないとはいえボールキープの技術が高く落ち着きをもたらしてくれる部分に加え、動き出しの豊富さ、タイミングの取り方の上手さ、それらを総じてチームメートからの信頼度の高さがあります。昨年の兄貴からのスタメン変更の時もそうでしたが、チームが上手くいっていない時に頼りたくなる存在なのでしょうし、本人もそのあたりの役回りは自覚しているようで、毎年引退をにおわせつつもこういったところで仕事をしてくれるのはベテランの本懐といったところでしょうか。加えて今節は右WGに前田、左に関根でスタート。前節は発熱の影響でプレーできなかった前田ですが、今節には間に合いました。なんとなく左は松尾を使うのかなと思っていましたが関根をスタメン起用した意図は気になるところです。例えば交代で出てきた時に爆発力を期待できるのは松尾の方だと思いますが、それ以外の部分などなど。</p> <p>対する札幌は先週からミシャが嘆いている通り故障者が多い模様。個人的に近藤友喜に注目しているので出てきてほしかったのですが怪我とのこと。トップに鈴木武蔵、シャドーに小林祐希と帰国選手が前線に並び、左WBに青木・右WBに浅野弟と攻撃的な選手が並ぶ構成となっています。なおGKは菅野・高木の両看板が負傷でJ1初出場となる阿波加が抜擢されました。</p> <h5 id="ゲームの構造">ゲームの構造:</h5> <p>札幌はマークを明確にするためボール非保持時は小林がトップ下の2トップとなり浦和の2CB+アンカーに枚数合わせする形。おそらく浦和はこれをわかっていて、ボール保持時にはオフザボールの動きを大きくすることで札幌の守備陣形を動かそうという意図があったと思います。01:35前後に関根が左から右のハーフレーンまで動いて裏抜けを図ったプレーなんかはそのわかりやすい例ですし、興梠も真ん中で我慢するというよりはサイドに簡単に流れていた印象でした。興梠が流れれば岡村はついていくしかないし、関根のようにサイドを変えるような大きな動きにどこまでついていくべきか馬場が逡巡するようなそぶりを見せるシーンもあったので、こうした動き出しはそれなりに効いていたものと思います。また敦樹や佳穂が深めに降りて札幌の3バックを引き出し、スペースを空けたうえでWGや興梠が裏のボールに走りこむという設計もあったかもしれません。</p> <p>3バックベースで4-3-3にマークを決めるにはサイドのマーク決めが最も重要で、札幌で言えばWBの青木・浅野が浦和のWGをみるのかSBをみるのかで大きく話が変わってきます。開幕戦の広島もそうでしたが、好戦的なプレッシングを掛けたいのであればWBは相手のSBまで出て行く形(=マンマーク)、そうでなければWGのマークに入って5バック気味に守っていく形となります。今節の札幌は一応WBが浦和のSBをマークする意図だったと思いますが、広島に比べればスタート位置が低めかつボールへの反応も緩く、広島戦程浦和のSBがプレーを制限される苦しさは感じなかったという印象でした。こうなると浦和は自陣でのボール保持が安定して相手陣地内で3on3ができる恩恵を享受しやすくなり、浦和のWGに入った時に1on1の勝負が仕掛けやすくなるばかりか、札幌の3バックが大きく割れるので相手の最終ラインに仕掛けるランも出やすくなります。今節は敦樹も佳穂も裏に動き出すことの意識が高かったようで、ゲーム構造と選手の意識の噛み合わせも良かったかもしれません。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="プレスが難しいとなると早めにWBが浦和のWGをケアする5バック体制をとっていたので、同数プレッシングはむしろ行けそうなときだけのオプション扱いだったかもしれない。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240311/20240311011620.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">プレスが難しいとなると早めにWBが浦和のWGをケアする5バック体制をとっていたので、同数プレッシングはむしろ行けそうなときだけのオプション扱いだったかもしれない。</figcaption> </figure> <p>札幌ボール保持時の噛み合わせについて。浦和のプレッシングは意図してか結果的にか左右非対称の形。前田が高めの位置をとって積極的にプレッシャーをかける一方で、関根は下がり目の位置でブロックの一員として振る舞う挙動だったように思います。前節まではIH(特に佳穂)を前に出してボールを追いかけまわすディフェンスをやっていたと思いますが、今節は興梠がスタメンだからか追い回すというよりもミドルブロックで構える形が優先されていた気がします。特に興梠は相手CBをマークするというよりはアンカー役を消すような挙動に終始しており、その分前田が菅⇒岡村と順番に二度追いを仕掛けてCFのような位置まで出て行く動きが多かったです。結果的に浦和のプレッシングは前田と佳穂を2トップにした4-1-2-1-2の形に見えるシーンが目立ちました。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="どこまで狙いかは不明。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240311/20240311224325.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">どこまで狙いなのかは不明。<br />興梠の運動量をセーブしたいという思惑は間違いないと思いますけど。</figcaption> </figure> <p>札幌は駒井がいわゆるミシャ式サリーダで最終ラインに落ちてCB、WBを押し出す形が多かったと思います。荒野と駒井がボール回しの起点になりつつ、小林が若干低めの中間ポジションでボールを引き出す狙いがあった模様。サイドは右WBの浅野がはっきりと高い位置を取る一方で青木はなんとなく低めの位置からプレーをスタートすることが多かったのですが、ミシャ的に考えればもっとはっきり5トップを作る意識のほうが狙いが出しやすかったのではと思います。小林が落ちる⇒浅野が内側に走る⇒大外馬場が高い位置へ出るといった基本的なローテーションも右サイドで多く見られました。左サイドはシャドーがスパチョークであることも含めて連携があまり成熟していないのかもしれません。とはいえ浦和のディフェンスも大した堅さではなく、構造的にチャンネルランに物凄く弱いという懸念点があります。中盤がセットされた状態であればIHが頑張ってついて行くことでなんとかできていた部分もありますが、トランジション起点で浦和のIHがサポートに間に合わない場面ではどうしようもなく無防備です。09:38前後のシーンはまさにトランジション起点のシーンで、セカンドボールを収めた武蔵から浅野にわたって大外に凌磨を引っ張っての1on1。そのまま武蔵がチャンネルに飛び込んだプレーに関根が追いつききらず、不遜も中央のケアのみしていたところをきれいに割られて折り返しからスパチョークがフリーでシュートも枠外という展開でした。札幌としてはこの崩しにはかなりの再現性を期待できたと思います。浦和は基本4-5-1からIHを前に押し出して4-4-2っぽくなるやり方を今季採用していますが、その後ろでチャンネルランに誰がついていくかを決める作業が難しいですね。不遜は中央に下がってCB間を埋める動きが多いですが、そうするとボールサイドのチャンネルランはWGかIHが死ぬ気で下がるしかないので、どっちが対応するにしろ体力的な消耗が激しいし精神的にもつらいタスクになります。普通に考えれば全チームここを狙ってくると思うので対応を用意したいですが、今のところ気合しかなさそうです。今節は敦樹、関根、佳穂がなんとかする形が多かったかと思います。</p> <p>全体としては、先ほど取り上げた09:38以降の時間帯で既に後半ロスタイムみたいなスペースが空いているなど、札幌・浦和ともに間延び傾向があり、前節のヴェルディ戦と比べれば中盤に大きなスペースがありました。その分行ったり来たりの展開は多くなりましたが、結果的には浦和の選手はプレーがしやすそうで恩恵の方が大きかったかなと思います。個人個人の質では浦和に利があるでしょうから、普通に考えればコンパクトでごちゃごちゃしていない局面は浦和有利という理解です。これが浦和の戦術的な狙いだったかかというと断定はしきれないのですが、札幌は最終ラインの設定が低めかつラインの押し上げ意識が低いことに加えて浦和の選手のフリーランの影響を大きく受けており、さらに前線の選手3枚が攻め残り気味、さらにマンマークベースにしては寄せやプレッシャーがどうも緩い…とさすがにボール非保持でのコントロールと規律に問題があり、その恩恵を浦和が受けたのは事実でしょう。札幌はボール保持率で圧倒できていないのにボール非保持の時間帯を軽視し過ぎているという印象で、マンマークだからどうこうのレベルではないのかなと思いました。ミシャの浦和時代はボール保持がかなり安定していたことに加えて撤退守備を採用していたのでここまでカオスになってしまうことはなかったのですけどね。浦和のオフェンスに要所でミスが多く助かっていましたが、もうちょっとちゃんとチャンスをものにできるチームであれば前半で3-0とか4-0が見えてしまうような守備だったと思います。</p> <p>というわけで、一言で言えばあまり締まりのないゲームだったかなと思います。構造としては脆い守備は攻撃で隠したいのに攻撃に迫力がない札幌vsスペースはたくさんもらえるし戦術的な狙いも持っているけど得点を重ねるほどの精度・練度がない浦和という感じだったでしょうか。</p> <h5 id="試合展開先制までのすったもんだ">試合展開①:先制までのすったもんだ</h5> <p>ゲームは開始一分、前田の単騎突破からスタート。3人抜きでゴールに迫るものの左シュートは惜しくも枠外でした。このチャンスは関根が逆サイドから右ハーフレーンに大きな動きで抜け出してボールを引き出しキープしたところからでした。続く03:00前後には敦樹のボールカットから前田へ。菅がオーバーラップを仕掛けたタイミングでのトランジションで前田がドフリー。唯一残っていた岡村に向かって興梠とツーマン速攻を仕掛けたものの興梠へのパスコースは上手く切られており最後はシュートで終わるもGK正面。浦和はこの二本のチャンスでさっさと先制したかったですね。</p> <p>対する札幌は大外のWBにボールを入れる⇒浦和のSBが出てくる⇒CB-SB間にシャドーか誰かが入っていくというシンプルな配置攻撃で反撃。08:20前後で青木⇒スパチョークに入ったシーン(敦樹がプレスバックでなんとか追いつきCKへ)、09:38前後にマイボールのトランジションから武蔵⇒浅野vs凌磨の1on1⇒そのまま武蔵がチャンネルに飛び込んだプレーに関根が懸命に戻ったもののついて行けず折り返しからスパチョークがフリーでシュートも枠外となったシーンなど。続く10:30前後にもトランジションから浅野にボールが入り凌磨を引き出したところに駒井が猛然と走りこんでサポートしますが、これは凌磨がめっちゃがんばって足を残してインターセプト。そのまま前方関根に渡して馬場を振り切り、3トップで3on2カウンターとなりますが中央興梠へのパスは通らず。さらに間延びしたままゲームは続き、11:13には佳穂がターンで二人の間を割って前を向き、前線へのロビングを蹴るも通らず。札幌はピンチをやり過ごすと馬場からロングフィード一本で武蔵が落とし、こぼれ球をスパチョーク⇒小林へ。ミドルもあるかと思いましたがここは佳穂が戻ってちょっかいを出し、小林のファール。お互いボールを奪って前線へ、こぼれ球を拾ってさらに仕掛けるという展開で最初から中盤は省略気味、両陣地ゴール前でのプレーが続きます。13:05前後の浦和のビルドアップでも不遜が溜めて敦樹が降りる⇒前田が裏へランの展開。不遜のロビングは阿波加にはじき返されるもののセカンドボールを敦樹が拾って再び前田へ。岡村との1on1から得意のカットインでゴールを脅かします。浦和はここまでのチャンスで(以下略)。16:00前後のシーンもすごくて、その前のトランジションの流れの中で駒井が前田のマークについたのですが、札幌はマークの修正ができず、中央の佳穂をフリーで放置。佳穂から関根⇒凌磨と渡ってクロスを狙うも馬場が気合で何とかしてCK。これをやり過ごした札幌は18:45前後、大きなサイドチェンジで浅野へパス⇒ヘディングでハーフレーンに小林に落としたところを関根がファールし良い位置でFK獲得も枠外でした。</p> <p>浦和のボール保持をなんとかはめ込みたい札幌ですが、なかなか狩りどころを見つけられず、一方の浦和もボールはまあまあ繋げるものの肝心なところで札幌の粘りを振り切れず。すったもんだあったとしか言いようがない展開を10分くらい続けた後、セットプレーで浦和が先制。ショレから前田への裏のパス一本でCKを獲得すると、前田が意表をついたクイックスタート。不遜が受けるとペナルティエリアすぐ外で少し時間を作り、中央に走りこんだ酒井へ。宙を舞う150kgの質量が乗せられたボールに人類は無力。ドンピシャヘッドが決まりました。その直前のシーンでも不遜キッカーのFKで札幌のFPが9人エリア内に構えた隙を凌磨がついてシュートまで行っていましたし、浦和レッズさんとしては珍しくセットプレーで上手をとった良いゴールだったと思います。</p> <p>先制後勢いに乗りたい浦和は引き続きプレーエリアを前方に置いて攻撃。31:55前後のシーンでも西川から前田へロングボールを蹴っ飛ばし、セカンドボールに敦樹が絡んでヒールから前田がエリア内へ。右足での折り返しは引っ掛かりましたがこのゲームを象徴するようなチャンスメークでした。札幌も34:20前後にこの試合の典型的なチャンスメーク。浦和を押し込んで菅から右サイド大外の浅野へ。ボールが入った瞬間に小林がハーフレーンでフリーでしたので危なかったのですが、ここは使わず降りてきた小林とワンツー。ここも凌磨がなんとか対応して難を逃れます。38:10前後にも札幌。今度は左サイド大外の青木から内側へのスパチョークへのパスから折り返しでした。41分にショレが負傷交代し佐藤が投入されるアクシデントはありましたが、その後は特筆すべきこともなくすったもんだして前半終了。</p> <h5 id="試合展開後半のすったもんだ">試合展開②:後半のすったもんだ</h5> <p>同点に追いつきたい札幌が浦和を押し込んでいく形で後半スタート。ただ浦和も47:42前後の関根の仕掛けからのクロスに興梠が飛び込んだシーンなど見せ場を作ります。さらに48:46前後では西川のフィードを収めた関根が2バックになっていた札幌の最終ライン裏へボールを送り、興梠へ。菅の対応でシュートには至りませんでしたが攻め手としては悪くなかったと思います。札幌は岡村、菅のギリギリの守備対応で何とかしている部分が多く、この二人の貢献は多大でした。特に菅は49:45前後のシーンで見せたチャンネル突撃(これを囮に青木がカットインして惜しいシュートまで)など、攻守にかなり重めのタスクをこなしてくれる存在でリーグ全体でも希少価値が高いと思います。</p> <p>この直後に前田が倒れこんで浦和は2枚交代。前田に代えて松尾を、興梠も下げてチアゴを投入します。この交代は戦術的な理由というよりもコンディションやプレータイムの問題での交代でしょう。ショレが前半で下がっていたので、交代回数の制限の影響もあったはずです。</p> <p>これでWGが右関根、左松尾になると、松尾のターン到来。静止状態からボールを蹴り出して一気に入れ替わった60:53前後、単純なかけっこで馬場を置き去りにした62:30前後の仕掛けなど、前半からスピード勝負の対応に難が見えていた馬場に対して無慈悲な優位を見せつけました。65:00前後のシーンでは佳穂がひたすら松尾に勝負させてましたが、4-3-3を採用する以上相手陣地奥でWGが勝負している状況が一番安定する形なので良かったと思います。69:53前後には得点にならなかったものではこの日最大の決定機。凌磨とのパス交換から抜け出した松尾が切り返して右足クロス⇨チアゴのゴール正面でのヘッドは枠外。これが決まってればチームとしてもチアゴ個人としても乗っていけそうなシーンだったんですが…決めなないとダメでしたね。</p> <p>これをやり過ごした札幌は直後に3枚交替。長谷川竜也(右WB)、田中克幸(右シャドー)、原康介(左WB)がピッチへ。長谷川竜也は髪型が今まで見た中で一番似合ってました。以後、長谷川のところで時間ができる札幌が徐々に浦和を押し込む展開に。長谷川を起点に前の田中、後ろの馬場、さらには駒井あたりが関わって浦和の左サイドを突破しようというプレーが増えたかと思います。これに対し体力的な問題もある浦和は潔くローブロックで対応していくことになりますが、4-5-1ベースでバイタルを埋めるとさすがにポジティブトランジションが厳しく、クリアで逃げるのがやっとという感じに。残り15分さらに攻勢を強めたい札幌は荒野にかえて田中宏武を投入。長谷川竜也がシャドーへ、田中克幸がボランチへ。対する浦和もゲームの締めとして81分に岩尾と大畑を投入。敦樹と佳穂が限界だったようで両IHを下げ、不遜、岩尾、関根の逆三角形に。大畑は左WGに置きました。</p> <p>交代で少し押し返せるようになった浦和ですが、全体的には札幌が押し込んで同点を狙う展開。83:55前後にはエリア内で鈴木武蔵にボールが収まりかけますがここは佐藤が見逃さずにナイスカバーでマリウスとハイタッチ。この流れのCKでエリア内からシュートを撃たれますがラッキーにも枠外。浦和は中盤でボールを受けた凌磨から鋭い縦パスがチアゴに刺さった85:32前後のプレーがありましたがトラップが決まらず。90:23の田中克幸の25m直接FKには少し肝を冷やしましたが、その後はこの試合らしく最後までわちゃわちゃすったもんだして試合終了。浦和レッズは今季初勝利、コンサドーレ札幌は未勝利未得点を継続となりました。</p> <h5 id="感想">感想</h5> <ul> <li>端的に言えば、浦和が勝ったというより札幌が負けた試合でした。ゲームの構造で言及した通り、札幌がかなりスペースをくれたので中盤であまり悩まずにファイナルサードへ到達できたという感じがしました。というわけで、浦和のビルドアップ問題に目に見えるような改善があったのかどうかの評価は次節以降に持ち越しとすべきかと思います。</li> <li>一方で、WGの選手も含めてIHが裏へアクションする意識というのはピッチ上に確かに還元されており、札幌が勝手に下がって中盤を空けてくれただけでなく、浦和の選手のアクションによって札幌の最終ラインを下げさせたということも言えるはず。前線の選手たちのアクションで相手最終ラインを押し下げ、中盤に広いスペースを作るようなゲームができれば、どんなチーム相手が相手であっても中盤に大きくスペースがあるように見えるゲームが多くなっていくのかもしれません。それは単なる間延びではなく、戦術的なアクションによって得られたスペース、「戦術的間延び」と言うこともできます。その影響がどこまでの範囲だったかを見極めるかは観ている方にはちょっと難しいのですが、相手を間延びさせ自軍の攻撃的選手が躍動するスペースを作り出すのがまさしくヘグモ監督のサッカーだと思うので、この点は重要なポイントです。</li> <li>こうした前提があったうえでロングボールで相手をさらに押し込んだり、そのセカンドを前向きに拾って攻撃を仕掛けていくプレーが出れば、チームとして「プレーエリアを前方に置いて相手に圧をかけていく、いわゆる攻撃的なサッカー」のための戦術的基盤を見つけられつつあると評価できそうです。実際に今節の敦樹や佳穂は結構セカンドボールを拾っていた印象で、特に敦樹はオンザボールのプレーが多くなればなるほど迫力が出ますね。</li> <li>IHのパフォーマンスといえば今節は佳穂と敦樹のパス交換など、両サイドのWG-IH-SB以外の三角形の繋がりが意識されていた印象。中盤にかなりスペースがあったのもあると思いますが、例えばIHとSBで作って縦パス⇨興梠が降りてきて受けて、逆サイドのIHに落として前向きで前進という一連のプレーは効果的だったと思います。WGにボールが入るのを待たずにIHから裏へのアクションを始めるところも出ていたし、前節よりも今季っぽい感じにはなっていたと思います。</li> <li>あとは前田が自分から距離のある動き出しをしてくれて、ボールホルダーに「パスを出させる」プレーをしていたのもダイナミズムやバイブスを生み出していくのに交換していた気がします。関根や松尾もマークがついてくるなら逆サイドまで大きく動き出したりしていて、チームとしてマンツー気味のマークへの対応を「学んだ」感じがしたのもポジティブではないかと。</li> <li>あとはとりあえずチアゴがハマればというところですが、今節の興梠の動き出しの頻度やスペースの見つけ方と後半チアゴが出て来てからの動き出しの質を比べると、まあ…という印象。興梠に比べて身体が重たいのはわかりますけど、それにしてもどういうボールを入れたら活きてくるのかまだよくわかりません。まあこれは去年のカンテもそうだったので、早いうちに自己紹介プレーを見せてもらう必要がありますね。カンテもバイタルから意味わからんシュートを決めることでチームメートが「ああこんなかんじね」とわかっていった経緯がありましたし。後半松尾からのクロスがドンピシャで合ったシーンを決めていればチームとしても個人としてもかなり雰囲気が違ったと思うんですが、決められずでした。コメントで興梠本人も言っていましたが、大ベテランがスタメンで60分前後プレーできる試合というのは多くてもあと10試合くらいだと思うので、その間に解決策を見つけたいところです。いや僕は利樹スタメンでもいいですけど。</li> <li>ボール非保持の整理については正直まだよくわからない部分があるのですが、今節のやり方をみるに選手に合わせたタスクを与えているのかなという感じもします。興梠の使い方とか、前田が前に前に出て行くのは彼が攻め残っていた方がカウンターに迫力が出るという意識なのかもしれないとか。</li> <li>こうした中でタスクの隙間を埋める役割として関根や佳穂の存在というのは非常に大きいので、今後も二人はスタメンが続くのかなと思いました。特に関根はIHに入ってからも効果的なプレーを見せていたように思いますし、頼れる選手になったなあという印象。凄く身体が重そうだった2018年からだんだんパフォーマンスが良くなってきて、今季は一番良い関根を観られるのかなと期待したくなります。デビュー時とはもはや違う選手ですが、そこがまたいい。</li> <li>凌磨もパフォーマンスが上がってきている印象ですが、頑張ってクリアして自陣内(何度かは自陣エリア内)に中途半端なボールを落として相手にわたるのが3回4回あったのが怖かったです。ああいうプレーの評価は結果論になってしまうところがありますが、何回も続けているとバチが当たりそうなプレー選択ではありました。攻撃面では頼りになるところが見えてきているので、まだまだ期待。</li> <li>芝のコンディションが非常に悪かったことで浦和の選手だけでなく札幌の選手もプレーがしづらそうでした。芝の育成はどうしても自然や天候相手なので難しいところがあるのだと思いますが、怪我が怖いですね。お互いミドルレンジのボールや浮き玉が多くなったのは芝のせいでしょう。</li> <li>結果的にショレが負傷交代となってしまったのは浦和にとっては非常に痛いですが、昨年4,000分以上プレーしており疲労の蓄積があっただろうし、そうでなくとも今季の守備のやり方を観ていると前後左右に動かされて厳しい局面に晒される回数も多かったので負荷は大きいだろうなと思っていました。なのでショレ・マリウスのコンビだけでは戦いきれないだろうという意味では想定内。これが長引くと問題ですが、ショレなら上手く早めに交代を申し出てくれたと思いたいところ。</li> <li>交代で出場した佐藤は望外に早いレッズデビューとなりました。加入以来ほとんどの試合に出場してきたショレの負傷交代はチーム・サポーター全員にとってショックな出来事だったのですが、佐藤だけはウキウキでピッチに登場してきたので笑ってしまいました。何か具体的に注目すべきプレーがあったわけではないのですが(緊急出場のCBであればそれでOKですが)、空中戦の競り合いはほとんど負けていなかった印象。どこかで一回なぜかマリウスと酒井にも競り勝っていましたが、強みがわかりやすくていいですね。メンタル的にも頼りになりそう。その分の弱点は必ず出てくるはずなので、そこで事故らないかどうか。</li> <li>札幌は今季かなり大変そうなパフォーマンスでした。マンマークで頑張ろうというのはいいのですが、戦術的にも個人の部分でも強度があまり出せていない印象なのが良くないです。開幕戦でやる気マックスの広島を体感したからなのか、札幌の選手の寄せの甘さと間延び感は悪い意味で印象に残りました。最大の特徴とすべきであるオフェンスでも縦パスの入れどころやコンビネーションの発動など狙いがチームとして定まっていない印象。攻守のバランスが悪かったりびっくりするようなリスクオンをするのはミシャの通常運転なので別に心配することではないですが、ミシャが一番大事にしたい魅力的なオフェンスとその構築の部分で完成度がぜんぜんだったのはさすがに厳しいのかなという感想。試合後のコメントでもなんとなくしおらしかったですし、どうしたでしょうね。1トップ2シャドーのところが難しくて全体に迷いが生じてしまっているのでしょうか。</li> <li>その中でも岡村と菅のパフォーマンスは非常に良かったと思います。菅は左利きの武闘派左SBということで希少種なので、海外からも声がかかりそうな気がします。あとシャドーはスパチョークよりも長谷川の方が何か起こせそうな感じがしますが、怪我とかコンディションもあるんですかね。</li> </ul> <h5 id="試合評価個人評価">試合評価・個人評価</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240313/20240313080108.png" border="0" title="" width="880" height="426" loading="lazy" /></p> <p>札幌の方に要因があるような気がしなくもないですが、個の能力や前向きなプレーというのは前節に比べれば格段によく表現されていました。「相手を休ませない」については試合中盤まで、特にスタメンIHが元気なころはプレスバック等球際の攻防で迫力が見えることが多かったですが、いかんせん一発でいって入れ替わられるのが多いのが個人的にどうなのと思ってしまうのと、終盤クリアボールをマイボにできず、ローブロックで防戦一方になってしまったのはマイナス評価です。</p> <p>この評価を考えていて思ったんですが、前田はこのコンセプトにドハマりしている選手なので、彼が目立てばコンセプトの達成度が上がるという話かもしれません。それはそれでいいことなんですけど。チーム戦術的なところでいうと、①相手の最終ラインに影響を与えてラインを下げさせ、②「戦術的間延び」を利用して中盤で自由を得るとともにプレーエリアを前方に置き、③WGの仕掛けを起点にさまざまな選手が入れ替わり立ち替わり相手ゴールにアタックする局面をなるべく多く作り出す、というのが今季の戦術的な方向性と言えるかと思います。ここまでの2節では①、②のところで苦労していましたが、今節は札幌側の問題もあってこの部分の内容が良くなり、③が課題となったという感じでしょうか。今後、どんな相手にも①②の部分を表現しつつ、③の精度も上げていくのがテーマになるかと思います。</p> <p>まあともかく、勝ったことが重要な試合でした。普段文句言いまくってる僕がいうのもアレですが、酒井の得点時のリアクションなんかはチームや彼自身が産みの苦しみに陥っていたであろうことを想起させるものでした。ひとつ前に進めて良かった。</p> <p>最後に、選手別感想は以下の通りです。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240313/20240313115542.png" border="0" title="" width="889" height="1200" loading="lazy" /></p> <p>今節も長文にお付き合いいただきありがとうございました。</p> reds96 なんとかならんのか:J1リーグ2024第2節vs東京ヴェルディ1969 分析的感想 hatenablog://entry/6801883189088117735 2024-03-07T00:54:15+09:00 2024-03-07T11:49:37+09:00 www.jleague.jp 文脈とメンバー J1第2節では唯一の日曜開催となったこのゲーム。他の試合では第1節に勝利した有力チームが軒並み足踏みで全勝チームが消え、J1は早くも混沌とした展開となっています。開幕戦に敗れた浦和はこれに乗じて順位を上げていきたい一方で、5万人を超える大入りの埼玉スタジアム、相手は昇格組、OBが来場しトークショー開催と浦和レッズつらい的に考えれば敗戦率90%以上間違いなし(当社調べ)の嫌なジンクスが重なるゲームでもあります。 新監督の下のチーム作り、特に戦術的な部分でいえば、前節はマンマーク気味に人に来るプレッシングに手を焼きました。一方、今節対戦するヴェルディは… <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240304/20240304155948.png" border="0" title="" width="645" height="379" loading="lazy" /></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【公式】浦和vs東京Vの試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年3月3日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.jleague.jp%2Fmatch%2Fj1%2F2024%2F030308%2Flive%23live%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe></p> <p><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.jleague.jp/match/j1/2024/030308/live#live/">www.jleague.jp</a></cite></p> <h5 id="文脈とメンバー">文脈とメンバー</h5> <p>J1第2節では唯一の日曜開催となったこのゲーム。他の試合では第1節に勝利した有力チームが軒並み足踏みで全勝チームが消え、J1は早くも混沌とした展開となっています。開幕戦に敗れた浦和はこれに乗じて順位を上げていきたい一方で、5万人を超える大入りの埼玉スタジアム、相手は昇格組、OBが来場しトークショー開催と浦和レッズつらい的に考えれば敗戦率90%以上間違いなし(当社調べ)の嫌なジンクスが重なるゲームでもあります。</p> <p>新監督の下のチーム作り、特に戦術的な部分でいえば、前節はマンマーク気味に人に来るプレッシングに手を焼きました。一方、今節対戦するヴェルディは4-4-2ベースのハイラインミドルブロック型のディフェンス。浦和としては開幕戦とは違いアンカーの不遜様を明確に消されることは予想しにくく、その意味でビルドアップ隊に多少の時間があると思われるところ、開幕戦とは少し違った現象が表れそうなゲームです。</p> <p>対するヴェルディは今節こそ久々のJ1での勝ち点、白星を狙うゲーム。開幕戦でみせた4-4-2ディフェンスは浦和と同じく4-3-3を採用するマリノス相手に十分に機能した一方で、先制後なかなか追加点を奪えずに最後はJ1の質と圧力に屈するといった展開でした。特に後半マリノスが4-4-2にシステム変更しがっぷり配置がかみ合うゲーム構造となってから押し込まれ逆転を許したのは気になるところ。若手ばかりのメンバー構成でフィールドの10人はよく走り戦えるメンバーですが、特にCH2枚より前の選手にかかる攻守の負荷が大きく、耐えるばかりでは長期的に難しくなることは十分理解しているはず。今節の浦和は比較的対策のしやすいチームであったはずなので、前節マリノス戦の経験と教訓を活かしつつ勝ち筋を手繰り寄せるのがテーマだったと思います。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="緑背景だと色が潰れてしまう緑チームであった。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240304/20240304222230.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">緑背景だと色が潰れてしまう緑チームであった。</figcaption> </figure> <p>メンバーは図の通り。浦和は開幕戦のパフォーマンスを踏まえて前田直輝が先発かと思われましたがベンチ外。発熱とのことでした。古巣ヴェルディとの埼スタデビュー戦ということで昂りすぎたんでしょうか。「秘密兵器」ソルバッケンがどーーーせいないことは覚悟というかわかってましたが、前田までいないというのは予想外でした。ここまで十数年にわたって浦和レッズさんに関するありとあらゆるバリエーションのつらさを経験してきたつもりでしたが、まだまだ未経験のつらさが世の中にはあるということです。精進します。</p> <p>ということで浦和は前節とまったく同じメンバー。違いはWGの左右で、松尾を左、関根を右でスタートします。ちょっと面白かったのは浦和のベンチで、興梠に加えて高橋利樹がベンチイン。前節マリノスが4-4-2で嚙み合わせてからヴェルディがゲームをコントロールできなくなったところをヘグモ監督が現地で観ていたはずなので、そういうインスピレーションがあったのかもしれません。また戦術的な役割をいろいろと任せられる安居ではなく中島翔哉が2試合連続でベンチ入りしているあたり、ヘグモ監督の選手評価やベンチワークの考え方が垣間見える気がします。</p> <p>一方のヴェルディは前節から両SBを変更。左SBが翁長⇒OKBの同期深澤に、右SBはボランチが本職の稲見⇒山越に。どうも稲見は怪我で離脱みたいで、宮原とともにヴェルディとしては重要な選手が使えないのは痛いところ。翁長と深澤のところはちょっと不明ですが、翁長はもともと攻撃的な特徴が強く前への走力が魅力の選手で、深澤のほうがバランスを取るタイプだと思うので、殴り合い・走りっこをするというよりは浦和の攻撃をしっかり受け止めてから、ということだったんでしょうか。よくわからず。ヴェルディは今季のスカッドにいわゆるドリブラーがおらず、一人でヤードゲインしてくれる選手がいないので、交代による味変に一番向いてそうな選手を切り札的にベンチに置いたということも考えられるでしょうか。</p> <h5 id="ゲームの構造">ゲームの構造</h5> <p>今節は概ねシンプルなゲーム構造となりました。すなわち浦和がボールを保持し、ヴェルディが構えるといった形ですが、浦和が意図的にボールを長く保持したかというと必ずしもそうではなく、かといってヴェルディにあえて持たされたかというと必ずしもそうではなく、強いて言えばボールが流れ着く場所が浦和のCBの足元だったという感じでしょうか。</p> <p>ワイドのWGと内側に立つIHをポイントにサイドの奥を起点に相手ゴールに迫りたい、そのためにビルドアップにあまり人数をかけず、バックラインの4枚+アンカー(とGK)でボールを前進させていくことになっている感じの浦和レッズさんですが、前節に続いて今節もビルドアップで苦労することに。ヴェルディは4-4-2のCHが浦和のIHをケアするような立ち位置をベースに、2トップはナナメの関係を作ってアンカーを消しつつ浦和のCBの横に面をつくって片方のサイドへボール展開を追い込んでいくやり方。両SHは4-2-4になるほど高い位置ではなく、浦和SBにすぐアプローチできる距離感を保ちつつ浦和CBから中央へのパスを消すような立ち位置でミドルブロックを構え、浦和バックラインからの配給がブロックの中に刺さらないように意識している気がしました。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="SHが内側を切りつつSBにすぐ寄せられる立ち位置なのが肝"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240304/20240304224128.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">SHが浦和CB→IHのパスコースを狭めつつSBにすぐ寄せられる立ち位置なのが肝。<br />その代わり、CH2枚の間はわりと割れやすい。</figcaption> </figure> <p>浦和としては2CBとアンカーのところでヴェルディの2トップに対して基本的な数的優位がありますので、前節広島戦のように思いっきり嵌められて選択肢を失う感じはなく、基本的にはCB同士のパス交換でボールは落ち着き、真横まで下がって待つ隣のSBへのパスコースも確保されてはいます。一方でSB以外のパスコースを探すのは結構難しく、自分のところでリスクを取らないのであれば監視されていようとなんだろうとアンカー不遜に任せるか、SBにボールを流していくことになります。</p> <p>大外深い位置でボールを持つことになる浦和SBの視点でゲームの構造を考えると、目の前には近いところで構えている相手SHが迫ってきます。アンカー不遜には多くの場合マークがついており、同サイドのWGは大外に立っているのでパスコースは狭いうえに、浦和WGに対するヴェルディのSBのマークは明確なので最初からWGがフリーで待っていることはありません。前節の反省を活かしてなるべく高い位置で待つIHに差し込んでターンさせるのが理想ですが、ヴェルディのCHコンビが浦和の攻撃面のキモとわかりきっている佳穂・敦樹を見失うわけもなく、そもそもライン設定が高めでコンパクトなブロックの中にパスを付けるのはリスクが高そうです。自分のところでボールを失いたくない浦和のSBとしてはGKなりCBに戻すパスを選択することでこの窮屈さから解放されますので、そういう選択肢をとることになります。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="逆サイドでは酒井⇒関根の選択肢がなくはないが、マークを背負って受ける状況は変わらない。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240304/20240304231223.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">逆サイドでもほぼ対称の構図。たぶんSHが出てきたスペースを使うために、SB→CBに一度戻してワンタッチでWGかIHに刺してみろとか、やり方はあるんでしょうけど。</figcaption> </figure> <p>ここで、最初の状態に戻ります。重要なのは上記のシークエンスを一巡したところで、ほとんどヴェルディのブロックが動いていないことです。従って二週目のシークエンスを開始したところで前提条件が変わりません。従って浦和のバックラインは同じような選択肢をとることになります。そして3週目、4週目、n週目と続きます。このシークエンスの連続の中で、浦和としては動く点Pを用意してヴェルディのブロックをなんらか変形させ、ポジションをずらし、その余波により空いたスペースを活用してボールを前進させることが理想ですが、この試合では動く点Pは見つかりませんでした。両監督に言わせれば、以下のようなコメントになります。</p> <blockquote> <p>ヘグモ監督:インサイドハーフの裏抜けという重要なプレーが少し欠けていたと思います。また、ウイングも背後に向けて相手の脅威になるという場面が少なかったと思います。なので、相手にとって少し守りやすいプレーになってしまったのかなと思います。</p> <p>城福監督:基本的にはわれわれが崩された感覚はなかったです。われわれのブロックの外でサッカーをやらせていて、相手に進入された感覚はありませんでした。</p> <p>(中略)</p> <p>前半、ボールを持たれた時間はあったが、できるだけ高いラインを引きながら、ペナルティーエリアに入らせない中で、そこで耐えていたらわれわれの時間になると思っていました。</p> <p>(中略)</p> <p>前から後ろまで20メートルくらいで守る時間もかなりあったと思う。CBに持ち出されてもラインを下げない。方向を限定させて奪うイメージがあった。</p> <p><a href="https://www.jleague.jp/match/j1/2024/030308/live#coach" target="_blank" rel="noopener">【公式】浦和vs東京Vの試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年3月3日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)</a></p> </blockquote> <p>上記の通り、昨季のスコルジャ・レッズが強みとしていたミドル~ローブロックの考え方とほぼ同じことをヴェルディに表現され、それを崩すことができなかったというのが浦和目線のこのゲームの基本的な構造でした。こんな単純なことなのに…って感じですが、この単純な構造をなかなか解決できなかったのが今節の浦和でした。</p> <h5 id="浦和レッズは何をしようとしていたのか">浦和レッズは何をしようとしていたのか</h5> <p>置いている選手の特徴が違うので当然ながら、左右のサイドで狙いとその表現力に違いがあります。左サイドではビルドアップで如何に気を利かせるかが生命線の佳穂が強めの要求を出し、バックラインから自分に直接入れるか、SBの凌磨にボールを付けてから佳穂、松尾の3人の崩しを意図していたようです。佳穂の狙いは簡単に言えば昨年のサッカーと同じもので、凌磨にボールが入ったところで大外の松尾が引いて相手SBを引き出し、自分がそのスペースに流れる(外側へのランニング)か、ハーフレーンでパスを受けてターン、近くのコンビネーションか逆サイド展開を狙うかという感じ。典型的なのは例えば05:30前後のシーンで、マリウスから松尾へ展開するのに合わせて佳穂が素早く裏抜けを画策。結果的にボールは出てこず、凌磨も上手く絡めたわけではないのですが狙いの一端が出たシーンでした。05:41には左サイドの3人に不遜が絡み、大外の凌磨からパスを受けて松尾とのワンツーからクロス(意図したキックにならず)。他には25:47前後、相手2トップの間を通すパスを受けてターンした不遜から佳穂→松尾に入り、凌磨がフリーラン。若干ぎこちないランニングでしたが松尾の前を佳穂が、後ろを凌磨が追い越し、最後は凌磨のクロスまで。32:11前後にも凌磨がオンボールで松尾が降りたスペースに佳穂の外側へのラン。凌磨は難しい浮き玉を供給したが佳穂が上手く受け、逆サイドフリーの敦樹→酒井へ。他にも左サイド起点でファイナルサードに迫ったシーンは結構多く、特に凌磨、佳穂、松尾の3人で何かしようと言う意図は良く出ていたと思います。ただマークがきれいに外れて思いっきりクロスなりフィニッシュなりに脚を振れる状況というのはなくて、ファイナルサードに辿り着くのがやっとという感じもありました。</p> <p>右サイドのビルドアップはもっと厳しく、敦樹が消されたまま酒井が関根の足元につけ、前を向く余裕のない関根が苦し紛れに何かやるというようなことが起きていました。その中で何かありそうだったのは27:40前後のシーンで、酒井から関根にボールが入る→敦樹がチャンネル抜けから外側へローテ→敦樹のポジションに不遜が前ズレし中盤中央で数的有利(酒井が余り)という形。ただ関根⇒不遜⇒大外の敦樹に入ったところで酒井は反応せず、敦樹はクロスを選択もディフレクトという場面でした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240304/20240304234307.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>両サイドに共通して言えることが2点あります。一つ目はWGにボールが入ったところを起点にIHが裏に抜けるアクションを狙っていたことで、これは後に回しますが結果的には良くない方向に作用したかなと思います。二つ目はSB、IH、WGの3枚に不遜が絡んだところから比較的何かありそうなシーンができているということで、現在のチームではビルドアップの起点である不遜様がさらに崩しにも関わる必要がある模様。CFが降りてきて+1枚になったり、SBがビルドアップに関わった後に崩しにも参加したり、逆サイドのIHやWG(というか川崎における家長)が出張してきて4枚目になるというのはまあまあありがちですが、アンカーが出てくるというのはちょっとユニークです。良いか悪いかと言えばあまり良くないのかもしれませんが、今節の時点ではこれしか引き出しがなさそうなので仕方がありません。ちなみに不遜が前に出るときは逆サイドのIHがアンカーポジションを埋めに行くことになってるはずで、少なくとも佳穂はそんな感じの振る舞いでした。なお、基本的に崩しに関わっていないチアゴは普段何してるのという疑問は持ってはいけません。実際には健気に粛々と裏抜けを画策してヴェルディのCBを引き連れてみたりしていましたが、その影響は誰にも活用されていませんでした。</p> <h5 id="試合展開エネルギーのある立ち上がり">試合展開①:エネルギーのある立ち上がり</h5> <p>前半立ち上がりは浦和がわりと良く、しょっぱな敦樹がこぼれ球を拾ってそのままバイタルに突進したシーン(勢いよく踏み込んだところで足がもつれてましたが)や、01:20前後のショレの縦パスを敦樹がダイレクトで関根にはたいたシーン、01:56前後の酒井の大外からのチャンネルランの狙い、02:10の凌磨⇒佳穂ヒール⇒凌磨前進など、なんかいい感じのボール回しが発生していました。キックオフ直後の時間帯は浦和のモチベーションが非常に高く、一方でヴェルディ側はちょっと噛み合わせを見つけるのに苦労していたというか、浦和のプレーを受けるところから始まった印象で、これはもしかしたら埼スタの浦和レッズ戦初体験の選手が多かったからかもしれません。ただヴェルディの最初のポゼッションで普通に数本パスが繋がってからは全員いい感じでゲームに入っていったような気がします。04:40の浦和ボールのポゼッションでは既に凌磨がヴェルディの右SH山田フーキの寄せに捕まっており、さっそく怪しい感じが出てきます。5分台および08:40前後、09:10前後に左サイド起点のオフェンスがありましたがこれはチャンスにならず。佳穂、松尾のクロスがそれぞれエリア内に合いませんでした。10:27前後にはマリウスの対角フィードに合わせて縦に抜けた関根の鬼トラップからのクロスが無人のファーへ。12:41前後にも左サイドの3枚に不遜が絡んでいって、パス交換を経て佳穂からエリア付近の敦樹へ繋ぐもチアゴへのワンタッチは通らず(ハンド疑惑もOFRは入らず)。13:00のシーンはこの試合では珍しくショレから中央の佳穂へ縦パスが入り、スルーからチアゴの落としで佳穂が前向き、浮き球をスペースへ落とす選択をしますが通らずでした。結果的に全くシュートには至っていませんが、浦和は比較的ファイナルサードにボールを届ける回数があり、球際のバトルでは互角以上に戦えていたことに加えてヴェルディ側も浦和に失点を意識させるような精度あるプレーを見せていたわけではないため、立ち上がり15、6分までのゲームの入りの時間帯は浦和ペースだったと言えると思います。</p> <h5 id="試合展開前半15分後半70分くらいまでの膠着">試合展開②:前半15分~後半70分くらいまでの膠着</h5> <p>何か明確なポイントがあったようには思わないのですが、16分すぎから浦和のビルドアップ不全からのボールロストが数回続き、徐々に浦和のCB2枚およびSBにボールが入ったところからの展開が苦しくなってくるとゲームが硬直気味に。ヴェルディ側が驚異的なプレーを見せたわけではないのですが、だんだんとヴェルディのやりたい内容のゲームに収斂していきます。20:40にスローイン崩れからのプレッシングでショートカウンターが発動し松尾のシュートに繋がりますが浦和のチャンスはそのくらい。ヴェルディのポゼッションの回数が増えていきます。</p> <p>ヴェルディのボール保持は両SB上げ+中央4枚の形。CBは開き、GKマテウスを間に挟むかCHの一枚が降りてビルドアップに関わります。SHとSBのどちらが内側を取るかはその時々で、特に左SBの深澤は高い位置を取る傾向が強かったような気がします。右の山越は選手のキャラクターか気持ち後ろに残り気味でした。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="ああ"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240305/20240305011857.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">シンプルだが整理されている攻め筋。押し込むと技術のあるCHが絡んできて厄介。</figcaption> </figure> <p>24:00には押し込まれたところから見木の強烈なミドルが飛ぶもディフレクト。佳穂を上げて4-4-2に近い形から前に人を出したい浦和のプレッシングですが、ヴェルディのビルドアップをなかなか制限できず、だんだん浦和のプレーエリアが低くなっていきます。それに伴い中盤でトランジションが発生せず、浦和のボール保持はお互いセットした状態のビルドアップが増え、ボールがマリウス・ショレのところで長く滞留するようになり、満足に前に進めない印象が強まっていきます。気持ちよくボールを動かせない中でも25:47前後、27:15前後、27:40前後、28:50前後、31:20前後と形を作ろうとしますが決定機には至らず。特に28:50前後のシーンは流れの中で高い位置に残った凌磨をヴェルディの右SH山田フーキが気にしたことでヴェルディの2トップ脇が空き、そこに不遜が入ってボールを受けて前進⇒凌磨へ展開することで左サイド高い位置に起点が出来ました。凌磨の右アウトサイドでのテクニカルなスルーパスから松尾が勝負の場面は不発でしたが、SHとSBのちょうど間に人が立っているとどうしても対応が曖昧になりがちな4-4-2ブロックの泣き所を突けそうな場面でした。浦和はこういうのを次々のプレーのヒントにできると良かったかなと思います。一方で流れの中で左IHの位置に残った不遜とのローテでアンカー役をやっていた佳穂が潰されてえぐいカウンターを受けた35:01前後のシーンなんかも出たわけですけど。</p> <p>で。38:00前後、森田がコンタクトレンズの付け直し?をしていてヴェルディが一人少ない状態になったにも関わらず浦和がプレスに行かずヴェルディに十分な時間を与えていたシーンから試合は動きます。なんとなく守っていると一枚少ないヴェルディに中央を繋がれ、高い位置に出てきた左SB深澤にクロスをもらう浦和レッズさん。プレーエリアがかなり下がってしまいクリアボールが拾えず、そのまま連続クロスを浴びる浦和レッズさん。右サイドでボールを奪いかけたにも関わらずトランジション失敗で一転あわやのピンチを迎える浦和レッズさん。そのまま連続CKの流れで失点する浦和レッズさんなのでした。切ねえ。まあそもそもゴール一本前のCK対応で敦樹がハンドだった疑惑もありますけど。なんでOFR入らなかったんでしょうね(2回目)。というわけでボール保持のわりに決定機が生まれないもやもやと切なすぎる失点に風邪をひきかけながら前半終了。</p> <p>なんか変えるのかなと思いましたがメンバー変更はなく佳穂と関根のポジションを入れ替えて後半開始。佳穂がWGの位置に入ったことでボール保持局面で佳穂が後ろに降りたり内側に入ったりと少しアドリブをつけるようになりました。佳穂をWGに置いてまで残す意味はよくわかりませんでしたが、キャラクター的に張ってても仕方ないのでこれは佳穂の良い判断。結果的に酒井が前線へ出張ってエリアに近いところでプレーし、迫力を出す効果はあったと思います。49:32前後ではそんな形が表出。佳穂が降り気味で前にスペースを作り、不遜から酒井へスルーパスからクロスでしたが中には合わず。一方IHに入った関根は佳穂よりは足を止めずにプレーしていた印象。51:56の凌磨からのパスに降りた松尾の裏で反応したプレーなんかは意識していたものが出たのでしょう。ただこれも森田がついてきてケアし、特にチャンスにはならず。結局この後の時間帯はしばらく停滞し、CB・SBから先が見つけられない状況は変わりませんでした。</p> <p>浦和は60分に選手交代。チアゴ、関根、佳穂を下げて興梠、岩尾、大畑を投入。ヘグモ監督、開幕戦もそうでしたが後半頭から選手交代するよりは少しやらせてみてからカードを切りたいタイプなのかもしれません。岩尾は左のIHに、大畑が左SBに入るので凌磨が右WGにという変更。ゲームの構造がこの交代で動いたわけではないのですが、大畑が前節に続いて積極的なプレーを見せたのは印象的でした。62:40~には山田フーキを股抜き⇒右足スルーパスで興梠を走らせ、溜めを作った興梠にすぐさま追いついて岩尾からボールを引き取りニアの興梠に低い弾道の左足クロス。ボールは興梠に届きませんでしたが左利きというのも含めて前の選手を使いながら自分も前に出て行く彼のオフェンススタイルはこのサッカーで活かせる特徴なのかなと思います。</p> <p>一方で3人の選手交代やポジション担当の変更で浦和は守備のバランスが曖昧になった部分もあり、ヴェルディも具体的なチャンスを増やしていく展開に。凌磨が今季あまりやっていなかったであろう右WGに入ったこと、左サイドのユニットが松尾と大畑となって守備的な強度が落ちたことでヴェルディサイドからすればサイドに起点が作りやすくなった感覚だったかもしれません。また中央も敦樹を前に出すのか岩尾が出るのか、プレスのスイッチを誰にするのかなどが曖昧だったかも。左サイドのカバーリングをするにしてもIHの位置からチャンネルランをケアしてくれと言われる岩尾さんへの無茶ぶりには無理があるなという感じがしました。</p> <h5 id="試合展開不遜と右サイドの解放">試合展開③:不遜と右サイドの解放</h5> <p>72分に浦和は中島翔哉を投入。ここからようやくゲームの構造が動いていきます。といっても中島の投入というよりはそれと同時にベンチから岩尾に声がかかったことのほうが影響としては大きく、浦和は岩尾と不遜を並べるダブルボランチシステムに移行。敦樹をトップ下に出します。この交代の意図がオフェンスにあるのかディフェンスにあるのかはよくわかりませんが、結果的にはどちらにも良い影響がありました。オフェンスでは74:09に早速一つ形があり、酒井が高い位置をはやめに取って不遜が右SBの位置へ落ちる動き。連動して岩尾が中央アンカーの位置に入ります。凌磨が内側を取ってトップ下の敦樹も前へ入り、ヴェルディの4バックに対して4枚が張り付き、両サイドにSBが余る形を形成。不遜⇒岩尾の中央のパス交換から大外酒井に展開してアーリークロス。結果的にはクリアされてしまうのですが、ニア~中央に3枚、大外に大畑、バイタルに中島、セカンドボールには岩尾が反応できるポジションに立てていましたので厚みのある構成だったと思います。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="何より敦樹が"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240306/20240306024312.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">酒井と敦樹のやれることとやるべきことがマッチして迫力が出るの図</figcaption> </figure> <p>ただこれ、完全に去年の形なんですよね。ボールスキルのあるボランチを右SBの位置に落として酒井を上げるのは昨年の右サイドで敦樹が死ぬほどやっていた(そして僕は敦樹がそのまま後ろ残りするのが気に食わなかった)形です。ダブルボランチにして一発目の保持で全体的に良いバランスができたのはたぶんこの形がなんとなくチームに根付いている部分があるのだと思いますが、それよりもこのシーンを現地で見た瞬間あまりに酒井にできることをさせる使い方として妥当過ぎて(すこは正しかったのだ…)とふるふるしてしまいました。すこを信じろ。あと、ダブルボランチになった瞬間に高い位置を狙った酒井のスタートポジションの空白を瞬時に認知しサイドに流れ、当然のように展開を構成してみせる不遜も信用できます。不遜を信じろ。</p> <p>77:18には右サイドに出たところから前残りした不遜に対して岩尾が縦パス⇒華麗なヒールで敦樹の抜け出し。これもクロスが相手に引っ掛かるのですが、盤面構成と個性の発揮の面ではここまでの時間帯よりもかなり良くなりました。部門間調整業務を岩尾に任せ、解放された状態でふらふらプレーするほうが不遜の質は出しやすいし、敦樹はトップ下スタートで最終ラインに張り付いたほうがポジショニングや相手を引きつけて云々みたいなことをごちゃごちゃ考えなくていい、ということなのでしょう。あとは酒井を後ろに置いておいても意味ないので、ついでに酒井も相手最終ラインにぶん投げとけみたいな。ボランチ2枚ならカバーもなんとかなるやろみたいな。</p> <p>80:18前後のシーンでは不遜が今度は左SBの位置に降りつつハンドサインで大畑を押し出し、ヴェルディの右SHと右SBの間に起点作り。SBが釣れれば中島が内側からSB裏へ抜けるランニングが出るし、その戻しを不遜が受けて逆サイドへ展開しヴェルディを押し込んでいくビルドアップ。この辺りを見ても不遜はゲームがどういう構造なのか、その構造に自分がどんなアクセントを加えられるかを理解してプレーしているのが読み取れます。</p> <p>ただ、直後の81分に不遜が交代。ベンチは利樹を投入し2トップ組成に踏み切ります。個人的にはもう少し4-2-3-1を見たかった気もしますが、プレータイム管理もあるでしょうし仕方ないか。不遜がいなくなったことでビルドアップはまた何もない感じになってしまったのですが、86:18には中島の強引なミドルのこぼれ球が大畑に飛び込んで決定機。右足で撃てればゴールしたと思うのですが、左利きなので仕方ない。ただその流れのスローインから中島クロス、跳ね返りがまたしても大畑に転がり、PK獲得。これをショレが蹴りこんでなんとか同点に追いつき、勝ち点1をかろうじて拾うこととなりました。ヴェルディは最初の大畑のチャンスで動揺したのか直後のスローインへの反応が遅れた感じがします。ボールアウトした瞬間に集中が切れたというか、なんか変な感じに全体が止まってしまいました。前節に続く終盤のピンチで、どうしようヤバいかも!って思ったのかもしれません。</p> <h5 id="感想">感想</h5> <ul> <li>ゲーム全体を見ていくとこのやり方でファイナルサードに迫りたいという形はいくつか披露されていたものの、配置があからさまに4-3-3でギミックも少なく対策されやすい、準備されているところに対してプレーしなければいけない苦しさは各所で指摘されている通りだと思います。</li> <li>ヴェルディはまずはアンカー不遜を消し、IHを消し、SBにマークを付けて浦和のバックラインにボールを持たせてブロックを構えるという別に特別でもなんでもない作戦でしたがそれで問題なかったし、よく機能していました。ただダブルボランチや気の利く運べるSBを擁するチームに2トップ脇を上手く使われると押し込まれそうな感じはあります。これはある程度仕方がないですが。</li> <li>ヴェルディの4-4-2はマリノス戦でもそうでしたが4-3-3に対してSB-CB間のスペースが広く空く傾向にあります。浦和はもしかしたらわかっていた分そこを意識しすぎたかも。佳穂も敦樹もWGに入れてチャンネルに裏抜け、という頭が強すぎたのかなと思います。それ以外の種類の動き出しが少なかったです。あと、同サイドのSB・WGとの関係性を強く意識していることは伝わるのですが、両サイドの三角形がそれぞれ独立してなんとかしようとしている感じはあまり良い印象ではありません。あんなに健気にCBと駆け引きしてみたりしているチアゴのこと、誰か思い出してあげて欲しい。このあたりは監督から言われていることをまず守ろうという意識があるんでしょうけど。本当はいろんな形で三人の関係が作れるはずなのにな、と思いました。</li> <li>特に前半、佳穂がCBからボールが出ないこと、ほしいところで受けられないことにいら立っていましたが、気持ちはわかるんですが、目指すべきところを考えると、たぶんどっちかというと佳穂がまず走って相手を動かしたほうがいいのではという気が。前述の通り、敦樹も含めてWGにつけたらチャンネルを抜けるという意識が強い(そしてよくやっている…これは昨年の仕込みが効いているのだと思いますけど)のですが、どっちかと言うとまずWGにスペースを与えるためにIHが動いてヴェルディのSBを動かさないといけなかったかも。ヴェルディ側としてはSB-CB間が空いていること、そこに走られることは想定内で、CHが頑張ってついてくるところとかもしっかり共有されていたでしょうし、ちょっと違うアプローチがあった方がヴェルディにとっては面倒だったかも知れません。なんなら裏に走るではなく、最初からSB-CB間に立ってしまうという手もあったかもしれません。そうするとSB-IH-WGの3枚でミドルサードを前進する形はなくなりますが、プレーエリアは前に出せるわけで、それはそれでいいのでは。そうなるとほぼミシャの時の415ですけど。</li> <li>前節も書きましたがWGに前を向かせるのがこのサッカーの重要なマイルストーンなので、どの選手もまずはそこにコミットすべきだと思います。方法はロングボールでもなんでも可。佳穂の中にこうやって前進していきたいというイメージがあるのはとてもよくわかるのですが、それが監督の作りたい盤面を実現することに繋がっているのかなというのはちょっと疑問。松尾を下ろして佳穂がSB裏に走って奥を取るのはいいけど、本来は松尾(WG)が相手サイド奥で1on1が第一の選択肢では。これは敦樹も同じで、敦樹に関してはIHの位置でスタートするとそもそも何を基準にどうプレーしたらいいのかよくわかんない感じみたいなので、まだ時間がかかりそうです。できれば同サイドにガイド役が欲しい。</li> <li>ヴェルディのブロックをどうにかするという意味では、一度IHにつけた時に思いっきり寄ってくるヴェルディのCHの食いつきを、落としを受けたバックラインの選手が使いたいというのもありました。ヴェルディのCHが中央にいないならチアゴに縦パスとか。この点は技術というよりもハナからその意識がないような感じなのがつらいところで、バックラインの選手がテンポを変える意識は重要かなと思います。多少組み立てで苦労するのは良いとしても、よっこいしょでやり直して同じ盤面をループするというのは戦術的にもエンタメ的にも良いことがないです。</li> <li>関連して、ヴェルディのミドルブロックの弱みを突くところでラインアップの瞬間はかなり狙えそうでした。例えば28:32前後のシーン、ヴェルディ2トップの正面まで降りて受けた不遜から大外松尾へボールが入るのですが、山越のマークがタイトで前を向けず、後ろ向きのドリブルからバックパスでマリウスへ。現実はここで浦和の保持シークエンスが停滞してしまうのですが、このバックパスの直後ヴェルディの最終ラインはラインアップが揃わずガタガタで、裏にアクションできそうな浦和の選手は少なくとも4人。この瞬間に裏に落とすボールを蹴るだけでヴェルディはかなり困ったような気がします。</li> </ul> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="できたでしょ"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240306/20240306025540.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">松尾にボールが入って後ろ向きにドリブルしてマリウスに戻しただけの場面。裏に落としたらめちゃくちゃコスパの良い状況なのに。</figcaption> </figure> <ul> <li>そういえば、WGの裏にボールを蹴ったらよいのでは作戦は今節ほぼ発生しませんでした。相手のやり方もあるとはいえこの点はがっかり。一本マリウスから関根に良いのがありましたが、4-3-3をやるならサイドチェンジを含めたダイナミックな展開は欲しいところです。</li> <li>それと、シンプルにクロスがファーに流れまくっているのですが、そこになにかあるのでしょうか。僕には誰もいないように見えます。ニアか中央に蹴りこめないもんですかね。それだけでも印象がかなり違うんですが。ファーポスト付近に良いボールが何回か落ちていたのでチームの狙いな気がするんですが、そこに間に合って飛び込んでくれる人はあまりいないという。そもそもクロスが相手に当たり過ぎ問題は、崩しでもっと相手を外せないといけませんねということなのでわかるのですが。</li> <li>74:09前後の不遜と岩尾のダブルボランチにした瞬間に酒井が上がり、右SBのスペースに不遜が下りてビルドアップ隊を構成、最終的に酒井のアーリークロスに到達したシーンが個人的には強烈でした。ヘグモ監督も2節にしてスコの答えに辿り着いたかもしれません。これが天啓となり次節から4-4-2ミドルブロック+ボール保持4-2-3-1で裏抜け連発シュート連打の2022シーズンのレフポズナンサッカーになっても僕はOKです。なんか今季のメンバーならできそうだし。それは冗談としても、4-3-3でずっとやるのかと思ったら最後の方は4-2-3-1や4-4-2を使っていましたし、リーグの環境と選手の得手不得手を踏まえてヘグモ監督のアダプションが少しずつ始まっていくのかもしれません。選択肢にあるなら60分から4-4-2でいいじゃんよとも思いましたけど。とはいえ次節は俺たち青春マンツー野郎ーレ札幌戦なので、少なくとも次節は運用コスト重めのヘビー級スタメンを維持した方が良いのかもしれません。下手に環境に合わせて気の利いたメンバーを選んだ結果、札幌の一人一殺人間魚雷と出合い頭で事故って死の世界線は避けたいところです。</li> <li>前節のチラ裏で今節までヘグモ監督は様子見と書きましたが、結論としてはこの感じのままではそりゃまあ厳しいと思います。ただ今節局面局面でトライしていた選手同士の関係性の作り方や、72分~81分のダブルボランチの時間帯のプレーをみると、固定的な配置と役割にこだわらず、選手たちに「自分ができることはやってもええで」と言えるのであればあまり時間をかけずとも内容がそこそこ改善する感じもします。ただそうすると今よりさらにネガトラに弱くなりそうでもありますけど、CBが保持してその先はまだありませんというよりはよいでしょう。駅だけ作ってみたけど線路はまだない発展途上国の鉄道じゃないんだから、まずはもう少しサッカーがやりやすいようにしてあげるべきなのかなと思ったり。</li> <li>最後に、あまりに浦和側に言いたいことが多すぎてヴェルディへの言及が少なくなってしまった気がしますが、良いチームだと思います。せこさんのやつの順位予想では軒並み最下位予想になってましたが、予算規模はそうだとしても組織として表現できることの精度がビリだとは思いません。ただ時間を作れるドリブラーがいないのは苦しいのでなんとかなってほしい。あと純血の英雄森田がいるからなんでしょうけど見木選手は絶対に本性を隠しているのでもっと偉そうに、千葉時代のプレーをみせて欲しい。森田をはじめレギュラー組に何人か怪我が出たら苦しそうですが、頑張ってください。</li> </ul> <h5 id="試合評価個人評価">試合評価・個人評価</h5> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="ああ"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240306/20240306032158.png" border="0" title="" width="880" height="426" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">毎回思うんですがこの3つのコンセプト、MECEじゃないので使いにくいです。</figcaption> </figure> <p>細かい要素をみれば意図がわかる部分も多いのですが、全体としては解決策を見いだせない時間が長すぎて印象が悪いですね。バイブスが足りない。赤点です。いろいろ見聞きしてるとキャンプで課題がうまく出なくて云々という話みたいですが…えっそういう感じ?という。もっとこう…なんとかならんのか。</p> <p>最後に年末用メモ。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240307/20240307004505.png" border="0" title="" width="882" height="1200" loading="lazy" /></p> <p><span style="color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-size: 16px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;">というわけで、今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。</span></p> reds96 なすすべなしの10分間:J1リーグ2024第1節vsサンフレッチェ広島 分析的感想 hatenablog://entry/6801883189085847882 2024-02-27T06:40:03+09:00 2024-03-07T00:51:36+09:00 【公式】広島vs浦和の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年2月23日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp) メンバーと文脈 2024シーズン開幕!今季は大規模な補強の評価が高く優勝候補としても名前の挙がるレッズですが、開幕戦は同じく評判の高い広島との対戦。今季から広島の新ホームとして使用されるエディオンピースウイング広島に乗り込みました。 浦和が左・広島右でスタート。 浦和のメンバーで意外だったのはWGの配置で、右に松尾、左に関根でスタート。そのほかは左SBに入った渡邊凌磨も含めて事前情報通りかと思います。期待されたソルバッケンは前週あたりから練習をセーブしているような情… <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240307/20240307003655.png" width="960" height="584" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><a href="https://www.jleague.jp/match/j1/2024/022301/live">【公式】広島vs浦和の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年2月23日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)</a></p> <h5 id="メンバーと文脈">メンバーと文脈</h5> <p>2024シーズン開幕!今季は大規模な補強の評価が高く優勝候補としても名前の挙がるレッズですが、開幕戦は同じく評判の高い広島との対戦。今季から広島の新ホームとして使用されるエディオンピースウイング広島に乗り込みました。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="浦和が左・広島右でスタート。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240224/20240224141342.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">浦和が左・広島右でスタート。</figcaption> </figure> <p>浦和のメンバーで意外だったのはWGの配置で、右に松尾、左に関根でスタート。そのほかは左SBに入った渡邊凌磨も含めて事前情報通りかと思います。期待されたソルバッケンは前週あたりから練習をセーブしているような情報が出ておりベンチ外。キャンプでは右WG前田・左WG松尾の序列が高かったようですが本番では関根が抜擢されました。これは直前の練習でのパフォーマンスが高かったことに起因するようです。</p> <blockquote> <p>予想が最も難しいのがウィング(WG)だ。左右のWGをこなす新加入のノルウェー代表MFソルバッケンは、20日の練習で別メニュー調整。ベンチスタート、もしくは大事を取って欠場する可能性があるとみる。右にMF前田直輝、左に松尾佑介がまず考えられるが、今回はあえて左に関根、右に松尾をチョイスしたい。20日の紅白戦でこの形を試した際、右サイドの好連係で崩して相手ゴールに迫り、ヘグモ監督が「エクセレント!」とシャウトした。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【浦和】開幕スタメン&ベンチメンバー予想 ソルバッケンは欠場か…左右WGは関根&松尾をチョイス - スポーツ報知" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fhochi.news%2Farticles%2F20240221-OHT1T51209.html%3Fpage%3D1" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://hochi.news/articles/20240221-OHT1T51209.html?page=1">hochi.news</a></cite></p> </blockquote> <p> </p> <p>一方の広島はオフに補強した大橋がスタメン。そのほかは昨季と変わらないメンバーですがチームとしての積み上げのレベルは高いメンバーでした。</p> <h5 id="ゲームの構造">ゲームの構造</h5> <p>広島の守備隊形は基本的にマンツーマン。アンカーの不遜に対して左シャドーの加藤りくつぎきが張り付き、3-4-1-2に変形します。レッズの3トップは広島の3バックがそのままマーク。自陣の数的同数を受け入れ、序盤から殴り合い上等のプレッシングで勝負を仕掛けます。</p> <p>対して浦和はビルドアップでは手前を使うことを第一の選択肢としつつ、危険であれば3トップに大きく蹴ることも辞さないという形。これはヘグモ監督の前任チームであるBK Häcken(以下「ヘッケン」)の試合でも観られたやり方なので方法論に違和感はありません。自陣で3トップvs3バックの構図になるのは基本的に守備側不利と考えられるので、手前でリスクを負うならば相手陣地でリターンを享受しようというのは狙いとして問題なし。一方で、ロングボールを蹴った先で3トップがそれをマイボールにできるかというのは全く別の問題になるわけですが。</p> <p>今節の浦和はまずここで躓きました。3トップにいくらかボールをつけてもほとんどマイボールに収まらない。広島の塩谷、荒木、佐々木の3バックは全員が国内トップクラスのパワーと守備技術を持つ実力者であり、最初からマークが決まっている単純さも相まって簡単には余裕を与えてくれません。ロングボールで相手を押し込むことが出来なかったことでプレーエリアが低くなり、相手のプレッシングからの逃げ道を失ったことで圧力をもろに受けることになってしまったのがこの試合の根本的な構造だったように思います。逆にいえばここで勝てていれば試合展開は大きく変わったはずです。</p> <p>そもそも、チアゴがそこまで収まらないのはある意味で計算内で、清水時代もめちゃくちゃポストが上手いという印象はありません。ヘグモ的なサッカーという意味でもヘッケンでトップの選手がポストプレーヤーだったわけではないので、トップに収まるならそのほうがいいとしてもそれが必須要素とは思いません。ただ苦しかったのは両WGへ直接出るボールが繋がらなかったことで、例えばヘッケンではトップよりもWGの選手にロングボールを蹴って、そこで収まれば一気にプレーエリアを上げて相手を押し込んでいくという展開が多く見られていました。この点で今節の浦和は関根・松尾の両WGのところに直接入るボールが少なかったし、入っても強力な広島の3バックを抑えてマイボールを確保するというところが出ませんでした。ここで多少ボールが収まらなくても、例えば裏に蹴り続けてワンチャンを狙うとか、そもそも根本的にもう少し収まりの良い選手をWGに配置するとかといったことができれば今節のようなゲームにはならないはずで、相手の最終ラインに直接圧力をかけることが出来れば相手のプレッシングは空転しやすくなるし、そうなればIHやSBが攻撃に関わる時間もできて多彩なアタックが出てくるようになるはず。WGに長いボールが収まる確率とそれを武器にできるかどうかは、今季の浦和がこのやり方を貫くのであれば、どのゲームでも一番最初に確認すべきポイントになるような気がします。今節はなかなかうまくいきませんでしたが、後半は前田が出てきて多少マシになったし、ソルバッケンにも期待できるので今節の出来だけで絶望するものでもないとは思います。</p> <p>浦和のセットディフェンスは4-5-1っぽい形。予想していた通り佳穂がIHの位置から前に飛び出してプレッシングを行う形が良く見られます。昨季はミドル~ローブロックでかなり強固な組織的守備を見せていた浦和ですが、この点も予想通り今季は大幅にパフォーマンスが変わりそう。ミドルブロックを組む際、昨年に比べてセンターバックが左右に飛び出してSBの裏をケアする意識が強く、最終ラインのスライドはかなり大きそうです。基本的にはWGはプレスで前に出るだけで深い位置まで戻ることはなく、相手SBのケアくらいでしょうか。サイド奥の守備はIH、SB、そしてCBのカバーリングで守っていく感じがします。これによってCBがゴール前から大きく動くということは、最も重要な自陣ゴール前の密度やマークの受け渡しに隙が生じやすくなるということなので、基本的には守備強度は落ちるし、失点も増えることになるでしょう。とはいえそのために去年のOKB並みにWGに自陣守備をさせて体力を消耗させるのは本末転倒なので、このリスクの対価は基本的にはWGの攻撃面でのパフォーマンスでペイしてもらうことになります。広島は攻撃時は1トップ2シャドーの形で前線を構成し、シャドー2枚は降りたり相手のSB裏に走りこんだりしてボールを引き出すのが基本的なプレーパターン。従って浦和のCBのサイドへのカバーリングが誘発されやすい戦術だったとも言えるかもしれません。</p> <p>また4-5-1もしくは4-3-3のセットディフェンスはIHの後ろのスペースが肝ですが、今節はここに広島の1トップ2シャドーが上手く入り込んでいて対処が難しかったように感じます。特に加藤が降り気味のポジションにいることが多く、意図的にか結果的にか敦樹の背後で目障りだったシーンが目立ちました。大きな展開で大外のWBへ展開⇒SBが対応のため外へ⇒開いたCBとのスペースにシャドーがランニングのパターンは右でも左でも良く見られ、昨年まではボランチが献身的について行くことで埋めていたチャンネルが広く開いてしまい観ている方としては慣れないリスクに背筋が寒くなるシーンがしばしば。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="チャンネル対応"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240224/20240224230424.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">チャンネルラン対応</figcaption> </figure> <p>浦和がこれを嫌ってWGにWBをマークさせるようにすると一応チャンネルは埋まるのですが、今度は広島の左右のCBに制限がかからなくなるので無制限サイドチェンジのターンになってしまうのが面倒なところ。相手を押し込む意図のフォーメーションなのに自陣にブロックが張り付くのも本末転倒なので、長い目でみればこのリスクはある程度受け入れて、CBの対応力を信じつつCBが流れた分を中盤が頑張って埋めることでケアしていくしかないかもしれません。</p> <h5 id="前半45分---激しく鋭い攻防と構造的不利">前半45分 - 激しく鋭い攻防と構造的不利</h5> <p>ファーストシュートは広島・加藤りくつぎぎ。浦和陣地で発生したトランジションから素早く振り抜いてのミドルシュートでした。広島は昨年も非常にシュート数が多いチームで、戦術的にミドルシュートを多用し、トランジションからの素早いシュートで相手に圧力を掛けていくのがスタイルです。</p> <p>一方の浦和は広島の前への圧力を受けて苦労しつつも、中盤の3枚のテクニカルなボール回しやショレの持ち上がりを使って相手の第一プレッシャーラインを超えることが出来ればチャンスありという感じ。5:13前後のシーンではショレの持ち上がりから相手の最終ライン手前を横切るパスでボールが左に流れると左WGの関根と左IHの佳穂のコンビで近いパス交換。一度は相手に引っ掛かるもののこぼれ球を繋いでエリア内で佳穂が強烈なシュート。広島GK大迫にセーブされるもののこれがこのゲーム最初の決定機となりました。広島の守備は前述の通りほぼマンツーマンなので、チアゴがファーに逃げればCB中央の荒木はそれについて行く他ありません。従ってこの場面のようにWB中野と左CBの塩谷を2o2で剥がせれば相手のヘルプが間に合わない可能性が高く、よりオープンなシュートチャンスが生まれややすいはず。このプレーで得たCKの流れで、素早いネガトラの反応から松尾のシュートが生まれるなど試合序盤はお互いに好戦的ながら互角の試合という雰囲気でした。</p> <p>広島のディフェンスは序盤加藤のマークがすこし曖昧で、浦和GKからのセットしたビルドアップでは不遜をみるものの流れの中では敦樹をみることがあり(2シャドーのイメージ?)、その場合にはボランチの川村が不遜をマークすることも。ここでどっちがどっちをマークするかで不遜が空きやすいのか敦樹が空きやすいのかといった選択肢があったように思います。ただ展開の中で敦樹が前を向いてアクセルを踏めそうなところでソティリウがプレスバックしてきて挟まれるなど、ポイントポイントで自由になる選手ができなかったのは厄介でした。このあたりが広島のクオリティでしょうし開幕戦でモチベーションが高かったというのもあるかもしれません。</p> <p>不遜の圧倒的なボールスキルをベースに圧を受けながらもパスを繋いで前進を図るレッズでしたが、ミドルサードを超えたあたりのパス交換や前進が上手くいかないパターンか、浦和の両SBにボールが入った際に広島のWBのプレッシングを正面から受けてしまいボールを戻すか蹴とばすかを選択せざるを得ないパターンの二つに展開が収斂していくように。普通SBに対してWBがアプローチするにはそれなりの距離を走らないといけないので、時間的な余裕が比較的あるものですが、今節の広島は最初からマンツーマンで後ろの3on3を受け入れているのでWBの初期ポジションが高く、浦和のSBは最初から捕まっているようなイメージだったと思います。さらに広島が序盤ボール回収後早めに浦和のサイド奥(特に右サイド凌磨の裏)に放り込むようなボールを重ねてきたのも厄介でした。これはもしかしたらプレス残りで浦和陣地奥に立っているWBをそのまま活かそうという発想だったかも。別にパス成功率は高くなかったですが、結局浦和陣地奥深くからリスタートなので浦和としてはなかなかプレーエリアが押し上げられなくなります。</p> <p>浦和はCK守備の流れでサイドを変えた松尾が佳穂のパスを受けて左サイドで塩谷との1on1を制し、関根が逆サイドから走り込んでニア合わせたシーンが24:20前後にありましたがこれを大迫がセーブ。続く25:00には相手ミスから得たCKにショレがニアで合わせますがこれも大迫。浦和に流れが傾きそうになると今度は広島がプレッシングから素早い攻撃を見せ、連続CKから浦和ゴールに迫るなど流れを渡さない展開。お互い切り替えが早く球際の強さ・上手さともにレベルの高い展開が続きますが、上記のような流れからセカンドボールを多く拾い、アタックできるポイントも明確な広島に徐々に流れが傾く展開に。33分すぎからは前3枚とWBが攻守に走り回り浦和の最終ライン~中盤に余裕を与えず、こぼれ球を拾ったボランチ2枚に日本代表級の攻撃力がある広島の良さが組織的にかみ合い始め、違う引き出しを開けられない浦和を明確に上回るようになっていきます。</p> <p>浦和は37:36前後に佳穂の上手いタッチから敦樹⇒酒井とつないで中盤の密集を抜け出し、酒井が中に入れたボールを関根が繋いで敦樹にシュートチャンスがありましたが迫力のあるシュートに張らなず枠外。その後もこの試合のテンプレ的な展開が続き、苦しいながらもなんとかHTまで逃げ切れるかなと思った矢先に失点。44分~広島がボール保持で浦和を押し込む展開で、松尾が広島の右WB東の対応で最終ラインまで戻ったところから。一度戻したボールが左CB佐々木に再び戻り、松尾が出られないので敦樹がケアしに飛び出すも、東を経由したパス交換で満田に敦樹の背中を使われ対角のアーリークロス。これに凌磨が対応するもこぼれ球を川村に拾われ、川村⇒塩谷⇒川村のパス交換で川村がフリーに。近くには関根と佳穂が戻っていたものの塩谷から右サイド大外へのパスを予測した二人が二人とも逆を突かれてしまいました。不遜と敦樹でバイタルを埋めていたものの前が開いた川村に寄せることは出来ず、30m超の左足ロングシュートが西川を強襲。西川がなんとか反応したものの弾いたボールは無常にも大橋へ。寝ていた西川も素早く反応しましたが大橋が上に決め、新スタ初ゴール。苦しいながらも拮抗を保っていた浦和には厳しい先制点となってしまいました。</p> <h5 id="後半45分---なすすべなしの10分間と前田直輝による改善">後半45分 - なすすべなしの10分間と前田直輝による改善</h5> <p>後半も大きな構造は変化せずにスタート。浦和陣営が何か変えてくるかなと思いましたが、特にやり方を変えず、むしろ「もっと繋ごう」の指示が出ていたようです。これは前半終了間際の先制点で気分よくセカンドハーフに入った広島にとっては好都合この上なく、広島は前半同様プレッシングでプレーエリアを浦和陣地に押し込んでくる戦い方を継続。浦和は47分あたりのボール回しなど完全にハマった状態で打開策がなく厳しい展開となります。不遜がうまくマンマークから逃れてアクセントを入れられると前進できるのですが、ファイナルサードの崩しが不発でゴール前に良い形で到達できないといった感じ。唯一良かったのは50:50の不遜のシュートシーンくらいでしょうか。この場面では佳穂が降りてかなり苦しい場面を捌き、落としを受けたショレが前進⇒敦樹を経由して松尾の仕掛けから折り返しの形でした。</p> <p>ただ佳穂の頑張りも二度は実らず。52:00前後の浦和のゴールキックからのビルドアップが失敗し、自陣エリア内で強いプレッシャーを受けてコントロールが大きくなった佳穂がこぼれ球を拾った大橋を倒してPK。このPKはソティリウが失敗してくれますが、ゴールキックをそのまま広島に拾われ広島左サイドからのクロスが大橋に合ってゴールを献上。PKのピンチを回避しながらも結局流れをつかみ切れないまま点差は2点に広がってしまいました。失点シーンは流れで不遜が加藤のマークについていましたが、ボール保持者への守備と考えると対応が軽かったと思います。それと個人的には、加藤が仕掛ける前にボールラインに戻れていた酒井がダブルチームで囲んでいればクロスが上がらなかったのではないかという気がします。後ろから東が走りこんでいましたが敦樹がついてきていたし、加藤のキャラクターを考えても不遜が抜かれたカバーリングに入るよりは利き足の面を潰してしまった方がリスクが小さかったかなと。まあこれは結果論です。ゴールエリア内ではマリウス・凌磨に対して大橋、ソティリウの2on2ができていましたが、ファーからマリウスの前に入ってきた大橋への対応が上手くいかずでした。このシーンのみならず加藤がサイドに流れて酒井の裏を使うシーンが結構あったのですが、不遜が対応せざるを得なかったりショレがサイドまで引っ張り出されたりと非常に厄介でした。セレッソ時代(というかおそらくその前)から中央からサイドに流れてのプレーを得意としている加藤ですが、システム上の噛み合わせと相まって浦和にとってはかなり面倒な選手であったと思います。</p> <p>勢いに乗る広島は56:52にも大橋に決定機。こぼれ球をソティリウが詰めますが西川が何とか身体に当ててセーブ。その後浦和は58:27前後の浦和ゴールキックからの右サイドでのビルドアップが捕まり、次のゴールキックは右サイド松尾に蹴ってみたものの何も起きず回収され、59:48は左サイドでビルドアップをしてみたもののこちらでもしっかり捕まってしまい、61:15のゴールキックは左サイド関根に蹴ってみたものの合理的に跳ね返され広島ボールともはや打つ手なし。この2失点目から始まる約10分間の非常に悪い印象がゲーム全体の印象に大きく影響している感じがします。</p> <p>どげんかせんといかん浦和は、佳穂がターン一発で作り出したチャンスを経て66分に選手交代。関根に代えて前田を、敦樹に代えて岩尾を投入します。岩尾はアンカーの控えだけをやるのかと思ったらIHに入ったので、これは少し意外な起用でした。一方の前田はCKのこぼれ球をヘディングでバックパスしようとして満田にプレゼントする極めて浦和的な浦和デビュー。即死級のミスでしたがなぜか助かると、これで完全にフィットした前田が少しずつゲームの空気を変えていきます。68:08には行ってこいの展開で広島の1トップ2シャドーのトランジションが遅れ、瞬間的に解放された不遜からのパスを受けてカットインシュート、71:18にも不遜の裏へのロビングに反応し佐々木に緊急クリアを強いて浦和のプレーエリアを前へ。その後いくつかのピンチを迎えたものの、続く74:40はハーフライン付近からのドリブルでの持ち上がりから仕掛けで鋭いクロスを中へ。期待していたほどきれいに前田までボールをつけられたわけではないですが、やはり一度ボールが入れば迷いなく仕掛けられる圧のある選手というのはこのサッカーには必要だなと思いました。得点には繋がりませんでしたが、広島のペースダウンと相まって50分台の非常に悪い時間帯を抜け出すのには貢献したと思います。</p> <p>76分にさらに交代。凌磨に代えて大畑、チアゴに代えて興梠。77:10には前田の仕掛け⇒クロスから興梠のヘディング。枠外でしたがかなり惜しいシュートでした。このシーンになる前にも2回前田の仕掛けがあったので、彼は投入されてから10分間で5回は仕掛けていることになります。こういう感じでプレーエリアを前に置いてWGが仕掛けまくる展開と言うのがヘグモ監督の目指す姿なのでしょうね。3プレーほど継続して相手を押し込みセカンドボールを拾って攻撃を続けていたこともあり、このシーンではクロスに浦和の選手がエリア内に5枚入っていました。サイドに流れた岩尾のクロスに酒井が飛び込んだプレーを挟んで81分にさらなる交代。松尾に代わって中島を投入。中島が左IH、佳穂が左WGという起用でした。佳穂はWGとはいえプレー自体は中に入ってシャドーのような感じで、中島と中央高めの位置をシェアする感じだったように思います。88:26にはカウンターからドウグラス・ヴィエイラの強烈なシュートを受けますが西川がナイスセーブ。だいぶ強度の落ちた広島を相手にオープンな展開が続く終盤となりましたが、得点も失点もなくそのまま試合終了。A.T.の佳穂クロスからの興梠の合わせ、これで得たCKに対する岩尾のニアヘッドなどかなり惜しいシーンもありましたが、どちらも実を結びませんでした。これで浦和は3年連続で開幕戦を落とし、優勝候補とされる前評判の高いクラブ(浦和、広島、神戸、マリノス、川崎)のうち唯一の黒星スタートとなりました。</p> <h5 id="感想">感想</h5> <ul> <li>基本的にはシンプルな構造のゲームでしたが、シンプルゆえに練度の差が出た形のゲームでした。浦和としては第1節で広島と対戦するのは不運だったか。ハイプレス型3バックで、前三枚+WBがあれだけ頑張れて、後ろ3枚全員がめっちゃ強くて、ボランチに攻撃的タレントが置けるチームというのは他にいないので、噛み合わせ的な相性が最も悪いチームが最初に来たのかも。</li> <li>とはいえ、後半立ち上がりに選手交代も含めてもう少しゲームの構造を動かすような采配があっても良かった気がします。プレス回避が全然出来ていない状況を踏まえて「もっとしっかり繋ごう」の判断がHTになされるのは今後に向けて一抹の不安あり。ただキャンプでも引き出しを小出しにしながら、守破離のごとく形を落とし込もうとしていた感じもするので、今後この辺は動きが変わってくるかも。継続審議でしょうか。</li> <li>戦術的な練度に加えて、広島はここ数年主力選手が大きく入れ替わっていないこともあり、各選手のプレー選択に対する選手同士の理解が深いのだろうなという印象。左右のWBの特徴を活かした攻め筋や加藤のサイド流れを上手く使った前進など、選手の特徴や得意なプレーが戦い方に織り込まれているあたりに完成度を感じました。</li> <li>この点、浦和は戦術的なフレームワークと選手の特徴、得意なプレーやできるプレー、近い選手同士の相性・リンクといった要素の噛み合わせがまだまだ大雑把で、一つのシークエンスの中でもアイデアやいわゆる「画」が一致していないように思えるシーンもしばしば。攻撃時ミドルサードは素早く通過する方がよしとされるサッカーだと思うので、自陣のビルドアップとファイナルサードでの崩しのイメージがそれぞれ醸成されてくれば一段二段と良くなる期待はあります。例えば凌磨なんかはいっそ内側に入れて偽SBをやらせた方が良さが出そうな気がしますし、結果的にはチームにとってもプラスなのでは。監督の持つアイデアを選手の特徴に併せて成型するフェーズが早く来てほしいものです。</li> <li>例えば今節はチアゴが流れの中で良いプレーを見せることがありませんでしたが、WGに一発でつけて収まり前を向ける形があれば彼の決定力やゴール前の存在感ももう少し出てくるはず。エリア内では相手も激しくチャージできないので彼の身体の分厚さがもっと役立つようになりそうです。前田の登場以降酒井の迫力が当社比2.5倍になったことを踏まえても、どちらかのWGに収まりどころを見つければ芋づる式に良さが出てくる感じもします。他クラブで言えば川崎における家長の偉大さを知るみたいな話に繋がるかも。前田で事足りるのかソルバッケンが必要なのか(そもそもソルバッケンがプレーしてくれるのか)わかりませんが、関根だとこの点すこしきついかも。ボールが収まり仕掛けられるWGというのはまた難しいオーダーですが探していく必要がありそうです。ゴリラウインガー急募です。</li> <li>システムの噛み合わせ的な話で言うと、今節の広島のようなプレッシング型3バック(特に全部噛み合わせ3-4-1-2)との対戦ではセオリー通りサイドの枚数的な噛み合わせの影響が強く、相手のWBがこちらのSBに出てくるならビルドアップ勝負(ミドルサードを超えれば浦和のWGが相手WBの背後で3バックに仕掛けられる)、そうでないなら浦和が押し込んでいく形に収斂すると思います。IHが絡めば相手はボランチを動かすしかなく、それが中央での数的優位に繋がるはずなので、そういう意味でもやはりビルドアップの質とWGにいかに収まるかがポイント。対4バックでどうなるかは次節わかるのだと思いますが、4-4ブロックを前提とすればアンカーに一枚つけてくるなら浦和のCBどちらかが一枚余る計算になるので、もう少し落ち着くのかなと予想。</li> <li>一方で、90分を通して負荷がめちゃくちゃ大きいCBのパフォーマンスがどれだけ継続するかはちょっと心配。昨季に比べてボール非保持で運動量的にかなりハードですし、晒されることが増えて精神的にもストレスが多いシーズンになりそう。エースを擁するポジションに大きめの戦術的負担を任せるのはリソース配分としては正しいと思いますが、比較的ゲーム数が少ないとはいえショレとマリウスだけで走り続けるのは厳しいような気もします。不遜のボール保持の質が代えがたいのは言わずもがな、佳穂の役割やレギュラーCBの質を考えると、ビッグスカッドになったとはいえ選手が変わった時に機能性が大きく落ちそうな感じがするのは開幕前にキャスで話した通りの印象がぬぐえません。</li> <li>後は単純に、マンマーク気味に嵌められることが多くなるということは選手個人個人の解決力が試されるわけで、マークが近くにいる状況で各選手がどれだけ解決策を持ち発揮できるかは重要なポイントですね。ポジショニングを含めた技術的な部分もそうだし、今節の広島のように激しくぶつかってくる相手に対する強さも必要かと思います。たとえばショレは、ドリブルでの持ち上がりは別としてビルドアップでハイリスクな選択肢は取らず、わりと相手を引き込む前にパスを捌く印象ですが、このサッカーをやる上ではそこそこのリスクであれば彼が引き受けた上で外し、両脇の選手が相手のプレスの標的にならないようにしてあげないといけないかも。</li> <li>というわけで、実戦を見て確認できた部分が多くあり個人的には収穫大。不安もありますがやりたいことの片りんは見えているので次節までは様子見とします。</li> </ul> <h5 id="試合評価個人評価あとがき">試合評価・個人評価(あとがき)</h5> <p>今季はこれまでよりもフットボール本部が設定したコンセプトを押し出していくものと思いますので、昔やっていた達成度評価を復活させます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240227/20240227000844.png" border="0" title="" width="882" height="430" loading="lazy" /></p> <p>1.と3.については監督の指向もあって、敗戦の割にはやりたいことが見えたのではないかと思います。2.が実質的に戦術的試合展開を左右するポイントになるわけですが、これは広島に軍配。ただ広島程のプレス強度やその後の素早い攻撃を繰り出すチームが他に何チームもあるかというと、…まあ三つ四つはありそうなので、道のりは楽ではないですね。いきなりばちっとハマるとは思っていませんが、優勝するなら早めに成功体験と勝ち点を積み上げるフェーズに入らないといけません。少なくともやりたいことはコンセプトに合っているし、方向性は明確です。昨季の経験を踏まえると開幕2連敗は何としても避けて、ホーム開幕戦で結果を出したいところです。</p> <p>最後に、選手評みたいなものをつけときます。年末の全選手振り返りの材料です。ご参考まで。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240227/20240227011741.png" border="0" title="" width="889" height="1200" loading="lazy" /></p> <p>というわけで、今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。今季何試合書けるかはわかりません(まったく自信なしです)が、今季も楽しみましょう。</p> reds96 2023シーズン全選手振り返り(下) hatenablog://entry/6801883189065450281 2024-02-22T11:49:18+09:00 2024-02-22T13:26:35+09:00 (上)はこちら www.urawareds96.com (中)はこちら www.urawareds96.com 25 安居海渡 出場試合数はチームナンバーワンの56試合ということで最多出場と言われていますが、実はプレータイムは3,865分でナンバーワンというほどではありません。とはいえ、昨年の出場試合数・プレータイムからすれば大躍進であり、チーム内での評価の高さに出場記録が追いついたとも言えますね。 彼のキャリアを切り開いたのはセレッソ大阪戦でのミドルシュートで間違いないですが、ボール非保持時のカバーリングや単純な走力、ボール保持で簡単にボールを失わない手堅さはチームから大きく評価されたポイン… <p>(上)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2023シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2024%2F02%2F21%2F211200" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2024/02/21/211200">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p>(中)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2023シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2024%2F02%2F21%2F213512" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2024/02/21/213512">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p> </p> <h5 id="25-安居海渡">25 安居海渡</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230103.png" border="0" title="" width="1057" height="532" loading="lazy" /></p> <p>出場試合数はチームナンバーワンの56試合ということで最多出場と言われていますが、実はプレータイムは3,865分でナンバーワンというほどではありません。とはいえ、昨年の出場試合数・プレータイムからすれば大躍進であり、チーム内での評価の高さに出場記録が追いついたとも言えますね。</p> <p>彼のキャリアを切り開いたのはセレッソ大阪戦でのミドルシュートで間違いないですが、ボール非保持時のカバーリングや単純な走力、ボール保持で簡単にボールを失わない手堅さはチームから大きく評価されたポイントだと思います。シーズン当初レギュラー格と目論んでいたメンバーが次々と離脱し結果として2列目のやりくりが非常に難しくなったチームにとって、安居がトップ下を中心とした2列目で計算できるようになったのはシーズンを戦い抜く上で欠かせないものでした。スコルジャ監督としても、トップ下の位置でプレーしつつもセットディフェンスではボランチを助けるように降りるカバーリングを行える選手として安居や佳穂は信用できただろうし、佳穂のメンタル・フィジカルの上下動を考えると安居は比較的パフォーマンスの波が小さかったと言えるかもしれません。</p> <p>また、2列目でプレータイムを重ねたことで結果的に信頼されボランチでのプレーが許されるようになったのは本人のキャリアにとってもよかったと思います。柏木か誰かが前線でプレーした後にボランチに入るのはしんどすぎるのでなるべくやりたくない的なことを昔言っていたのですが、安居は今年一回もそういうことを言わなかったのでやはり若さは最強だと思いました。3月の時点ではボランチで入ってもボランチっぽいプレーにならず忘れちゃったのかな?という感じでしたが、4月、5月とプレーの精度が上がり7月にはボランチでのプレーもスムーズになっていたと思います。ボールを持った時に相手の矢印を見てプレーをキャンセルしたり一拍置いてみたり、相手と駆け引きしながらボールを運ぼうとするプレーはボランチ陣の中でもよく出ていました。</p> <p>監督・フォーメーションの変わる来季はまずはアンカー争いに加わることになるかと思いましたが、どうやらIHとしてのほうが出場しやすいそうな気配。流通経済大学時代はアンカーでのプレーが多かったですが、プロでの経験はほぼなし。さらにヘグモ監督の申し子とも言えるグスタフソンの加入も決定しており、競争は厳しいはず。年齢的にも能力的にもベンチに座らせておくのは勿体無い選手なので、IHのポジション争いに参戦することになるのはよくわかります。そう考えると今季トップ下のレギュラー格でプレーしたことは来季のポジション争いに役立つ財産だとも言えそうです。大きなマイナスがない選手なので減点方式で評価していたっぽい感じのあったスコルジャ監督とは相性が良かったと思いますが、現時点では監督によって使いどころや信頼感が結構変わってきそうな選手なので、ヘグモ体制でうまくやれるかどうかは今後のキャリアにも大きく関わりそうな感じがします。</p> <h5 id="26-荻原拓也">26 荻原拓也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230240.png" border="0" title="" width="1054" height="531" loading="lazy" /></p> <p>レンタル修行を経て帰還した選手としては過去にない活躍をしたと言えるのではないでしょうか。安居と同じくプレータイム自体は長くないものの、公式戦53試合に出場し今季のクラブの戦いのほとんどに関わることとなりました。左サイドバックに加えて右サイドバック、左右の前線のポジションでプレーしましたが個人的には右サイドバックでのプレーが最も良かったかも。荻原のプレーの特徴といえば多くの人がクロスを挙げると思いますが、個人的には今季の荻原はドリブルが良かったなと思います。特に左足だけのボールタッチで相手に突っ込んで、ボディフェイントだけで突破していく仕掛けのドリブルは他の選手にはあまりないユニークな武器だった気がします。タッチが細かいわけではないので密集を突破できるわけではないのですが、多少のスペースがあれば縦にも中にも入っていける仕掛けはチームの貴重なオプションでしたし、アタッキングサードでの選択肢やパターンが多くなかったチームにあって自力で鋭いクロスまで持っていける荻原が大畑よりもプレータイムを伸ばしたのはある意味でチームにあっているとも言えました。</p> <p>課題は多くの人が指摘するように守備の部分で、本人は対人強度に自信を持ってプレーできていると繰り返していましたが、1on1の対応はともかくアタックする場所の選択や埋めるべきスペースの判断はまだまだ課題があるよねという感じ。前方のSHがプレスにでた後ろのスペースに思いっきりアタックする時の反応速度は非常に速かったですが、「そこはステイして引き込んでほしい」というシーンも多々あったかなと。幸い横で組むマリウスがカバーリングできるスペースが広いためにそこで解決できる部分も多かったし、チームのやり方としてはそれでよかったのかもしれませんが。シーズンに何度かあった相手チームの逆サイドからの攻撃に対して絞りきれなかったり自分のマークを管理しきれずに動き出しに遅れ、ホールディングでなんとかしようとしてPK献上というのは彼の課題をよく示している現象なのかなと思いました。</p> <p>来季はアキと左S Bを争いつつさらに高いレベルを目指す…というストーリーかと思いきや、12月31日未明にまさかの海外移籍報道。クロアチアの名門ディナモ・ザグレブへのレンタル移籍のオファーを受けて即移籍を決断しました。橋岡がシシンントトロロイイデデンに移籍した時はオギはもう追いつけないかもなあと思いましたが、追いつくどころか追い越してしまうほどのステップアップを実現させるあたりはそういう星の下に生まれているのかもしれません。彼を見ていると苦手をどうこうするより自分の武器を磨き続ける戦略の有効性を確認できる気がします。ヨーロッパでもがんばれ。そしていい感じの時に戻ってきてくれ。</p> <h5 id="27-エカニットパンヤ">27 エカニット・パンヤ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230256.png" border="0" title="" width="1049" height="416" loading="lazy" /></p> <p>浦和レッズ史上初のタイ人プレーヤーとして半年間のレンタルで入団。浦和レッズとムアントン・ユナイテッドとの提携をベースに練習参加をした3選手のうちの一人で、提携による具体的な成果となりました。浦和側としても練習参加等を通じてある程度実力を把握できた上での獲得だったでしょうし、彼としてもチームの雰囲気がわかった上で加入できたのは初めての海外移籍ということも踏まえても良かったと思います。加入当初はなかなかゲームに絡むことができませんでしたが、デビュー戦となったACLグループリーグ第2節ホームハノイFC戦では初ゴールを押し込むなど上々な滑り出し。その後も「確かにこれはチャンスをあげてみたいかも」と思わせるプレーを随所に見せ、半年間のレンタルは一定の成果を挙げたと言えそうです。</p> <p>プレー面で言えばやはりオンザボールの技術が高いのが最大の強みで、ターンから前を向いて逆サイドにボールを展開するプレーなんかはとてもスムーズ。タイに比べて展開が早くスペースのないJリーグではまだ彼のイメージ通りのプレーが多くでている感じではないですが、自分の間や感覚でプレーできるようになればもっと期待できそうだなと思いました。またレッズではまだクリーンに飛んだシュートがないですが、振りの速さやインパクトした音からしていいシュートが飛びそうな感じがあるので、ミドルシュートにも今後期待したいところ。</p> <h5 id="28-アレクサンダーショルツ">28 アレクサンダー・ショルツ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230347.png" border="0" title="" width="1051" height="533" loading="lazy" /></p> <p>愛称とするにはどう考えても大げさな「神」呼びもグッズ制作の後押しかすっかり定着しました。チーム3位のプレータイムは4,519分。しかもリーグ戦は全試合フル出場に加えて7ゴールと獅子奮迅の大活躍。2022シーズンの振り返りで「彼に個人賞をとらせられなかったらクラブの恥」と書きましたが、余裕でベストイレブンに選出され、名実ともにJ1リーグ最強のディフェンダーとなり、日本はデンマークの実質的な支配下となりました。</p> <p>他の選手とは明確に一段階違う総合力をもってあらゆるプレーをこなしてくれるショレですが、相棒にマリウスを得たことは本人にとってかなり大きかった気がします。CB同士のコミュニケーションとよく言いますが、コミュニケーションというより感じ合える、考え方が合う、同じロジックで展開を予測できる選手が横にいることでいろいろとやりやすくなっただろうなと。ただそのマリウスがやってきたことで得意の左CBでプレーできなくなり、ビルドアップ面では若干窮屈そうにしていたり、時々「右でもいいけど左のほうが…ね?いや右でもいいけど」的なアピールをしていたのもよかったです。</p> <p>充実したシーズンだったはずですが、コメンタリーでは時折あまりに守備的な戦い方にちょっと窮屈さを感じている節を感じたりもしました。かなり言葉を選ぶタイプの人ですが、本当はもっとはっちゃけたサッカーが好きなのかなと思ったり。その点あたっキングフットボールを標榜し、文化的素養も備えるヘグモ監督はショレとの相性がかなりよさそう。日本でやり残したことはもはやJ1リーグ優勝とCWC2025の出場くらいしかなさそうですが、少なくともそれまではヘグモサッカーの屋台骨としてチームを支えて頂きたいです。よろしくお願いいたします。</p> <h5 id="29-堀内陽太">29 堀内陽太</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235250.png" border="0" title="" width="1060" height="317" loading="lazy" /></p> <p>浦和ユース出身の新人は今季ルヴァンカップ1試合4分のみの出場。ユースでのプレーを見ると中盤真ん中の何でも屋という感じで明確な武器というよりは総合力で勝負するタイプに見えるので、最初は時間がかかりそう。レンタル移籍するといっても実績がない高卒ユース選手はそもそも行き場がありますかという問題もあるのでなかなか難しいですね。池田コーチとマンツーで練習する姿がよくピックアップされていましたが、この選手をどういう風に育てていくのか、クラブにロールモデルやビジョンがあると良いのですが。早稲田の通信に通う堅実派で取り組み態度は◎なので、クラブが適切な階段を設定・提供してあげることができればうまく育つんじゃないかと思います。本当はこういう選手にこそセカンドチームが必要ですね。</p> <p>オフザピッチでは帯同外となったCWCを僕らと同じように夜更かしして応援する姿やあざとさを通り越してただの子供と思われる年賀メッセージでみんなのバーチャル甥っ子としてのポジションを確立。その生粋のあどけなさで誰彼構わずお年玉を集金して全部NISAでS&amp;P500に突っ込むくらいの抜け目なさも見せてほしいところです。</p> <h5 id="30-興梠慎三">30 興梠慎三</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230409.png" border="0" title="" width="1050" height="534" loading="lazy" /></p> <p>もう最近は毎年引退しようとしている気がしますが、そして我々も「今年はさすが慎三には頼れないだろうな」と思ってますが、結局今季も44試合に出場、プレータイム1,923分と普通に戦力として機能していました。リーグ戦4ゴール、公式戦6ゴールはかつての姿からすれば素晴らしいというほどではないですが、ピッチ上での味方選手からの信頼感はやはり別格のものを感じます。今季は開幕からてんやわんやしたチームを兄貴に代わる緊急登板で「教育」し、ピッチ上に落ち着きをもたらすことに成功。結果的には開幕連敗となりましたが、シーズンの早い段階で慎三を使えばある程度落ち着くとわかったことは非常に大きかったと思います。</p> <p>そしてなによりもACL決勝での活躍。特にアウェーでのゴールはまさに値千金で、彼の好む相手を崩したゴールではなかったですが役者がしっかり仕事をしてくれたのには感無量でした。普段はだるがっていてもやるときはやる、最後には結局頼りになるというのは浦和の伝統に根付くある種のヒーロー像かもしれません。</p> <p>今季終了後もいつも通り「もういいっしょ」状態だったようですが、クラブの要請によりまたしても現役続行。もうここまで来たらCWC2025までやってそうな気もしますが、年齢も年齢ですしさすがにネコ科的な身体の無理も利かなくなってきている感があるので、来季は本当に最後かもしれないなと思いながら応援したいと思います。</p> <p>10点はさすがに頼めないかもしれないけれど、「この1点」を獲ってくれることを来季も期待したいです。</p> <h5 id="31吉田舜">31吉田舜</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235450.png" border="0" title="" width="1052" height="253" loading="lazy" /></p> <p>出場無し。ベンチ入りもほぼなし。まあこれは仕方ないでしょう。わかってて移籍してきたはず。GKトレーニングは見てもいないし詳しくもないので何も言えないですが、着実にレベルアップを果たしている模様。背は低いですが武器のある選手ですし牲川とは違ったタイプで戦力的には良いと思います。佳穂、凌磨とともに前育同窓会の一角を担う来季はプレーが観たいです。</p> <h5 id="35-早川隼平">35 早川隼平</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230438.png" border="0" title="" width="1056" height="469" loading="lazy" /></p> <p>浦和レッズの選手で、2種登録としてトップチームの試合に最も出場した選手は誰なんでしょう?原口元気か山田直輝が早川隼平なのではないでしょうか。もしくは橋岡?ユースの活動にはほとんど参加せずほぼトップチーム帯同となった今季、非常に大きな経験を積んだと思います。特にACL決勝にも出場したのは素晴らしい。Jリーグではゴールを決めることができませんでしたが、ルヴァンではプロの舞台での初ゴールも決めています。</p> <p>プレー面ではいわゆる止める蹴るの技術の高さとアジリティが際立つ選手で、特にワンタッチでのボールコントロールやパスの精度は今後武器になっていくと思います。近年の浦和ではあまり見ることのなかったビタ止めを何度か見せ、一部界隈を唸らせていたのは印象的でした。一方トップチーム昇格時の原口や関根のような相手に向かって行って1on1で抜きまくろうとする感じの選手ではなく、ドリブルで違いを見せた印象はありません。流れの中でスペースに入っていって勝負するトップ下と表現するのがしっくりくる感じで、偏見込みでいえば浦和っぽいというよりセレッソやガンバの下部組織から出てきそうな選手かなと思います。このまま突き詰めていくと南野みたいな感じの選手になるのかなと思いました。起用の妙なのかカンテの周りでちょこまかやっているとお互いにやりやすいようで、相手DFがカンテに注目した時にその隙とスペースを突くみたいなことは意識していたかもしれません。</p> <p>フォーメーションの変わる来季は勝負するならIHでしょうが、プロレベルでIHとしてやっていくにはいろいろな局面でゲームに与えられる影響力がまだ足りないのかなという感じもあり、序列は低いところからスタートしそう。トップレベルでも落ち着いてプレーできた実績はすでに持っているので、ベンチを争うよりはトップ下やシャドーを置いているJ2クラブでじっくり修行をしてもよさそうな気がします。</p> <p>浦和ユースからトップにはまる(そして海外へ旅立っていく)選手の例に漏れず、先輩をいじれる生意気かわいい弟キャラ。まずはミナミーノ師のUSB(うっさいんじゃボケ)並みのネットミームを生み出してドメサカ界隈での存在感を発揮してほしいと思います。</p> <h5 id="40-平野佑一">40 平野佑一</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235503.png" border="0" title="" width="1061" height="412" loading="lazy" /></p> <p>知念や馬渡などと同じくなかなか出場機会に恵まれず、今季はモチベーションを保つのが難しかったと思います。選手として総合力で勝負するよりも「でっこみ引っ込みがあるけれど俺にしか出せない良さを見てくれ」というタイプの選手なので、スコルジャ監督のボランチ像にあまりハマらなかったか、弱みの部分が足切りにあってしまったのかなという印象です。個人的には彼のような強みがユニークな選手が大好きなのでなんとかなれと思っていたのですが、ポジション的にも巻き返しで信頼感を得るのは難しかったかもしれません。</p> <p>来季はセレッソ大阪に移籍し田中駿太や喜田陽、あるいは香川真司あたりとアンカーのポジションを争う模様。これはこれで厳しいポジション争いかもしれませんが、やりようによってはJ1でも十分輝ける選手だと思うので、簡単にJ2に沈まなかったのは良かったなと思います。浦和でのプレーを観れないのは残念ですが、サッカー選手平野佑一が表現する彼の世界観に触れるのを楽しみにしています。</p> <h5 id="66-大畑歩夢">66 大畑歩夢</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230451.png" border="0" title="" width="1056" height="532" loading="lazy" /></p> <p>こんなはずじゃなかった感の凄いシーズンになってしまいました。ライバルの中では一番の若手だったとはいえ明本、荻原、大畑の3人で最も左SBとして実績があるのは彼でしたし、他のポジションへのコンバートや兼任も考えられる二人に対して基本的に左SB一本の選手なのでポジション争いの軸になるのかなと思っていました。</p> <p>出場機会をうまく掴めなかったのには怪我やコンディションの影響が大きかったと思われますが、彼もまた平野と同じように弱みの部分で足切りを食らってしまったような気もします。これまでも大畑はACL等で個人の責任と言わざるを得ないような失点への絡み方を見せていましたが、スコルジャ監督がSBに好んだのは1on1をしっかり守れる選手、少なくとも1on1で後手を取らないような信頼感のある選手。そういう意味で身長的にも気迫の面でも圧の弱さを感じさせる大畑をあまり信頼できなかったのかもしれません。とはいえ諸々の事情でSBが品薄状態だったシーズンでしたから彼の存在にはチームもスコルジャ自身も助けられたわけですが、本人にとっては期待の若手以下ともいえる扱いは不満だったでしょう。</p> <p>2024年はオリンピックイヤーということで、これまで継続して招集されているU-23代表のほうも気になるところ。同ポジションのライバル二人が海外移籍したことで本人も次のステップまでの距離を具体的に掴んだことでしょうし、来季は「日本を代表する」にふさわしい選手となるべくスケールアップに期待したいところです。前線の選手を起点にしたスペースアタックやそこからゴール前への決定的なボールの供給は明確を明確な武器としつつ、それ以外でいかに目立てるか、相手選手や観客の目を引き付けられるかみたいなところに注目したいと思います。頑張れ。</p> <h5 id="監督-マチェイスコルジャ">監督 マチェイ・スコルジャ</h5> <p>誠実公正な受け答え、堅実な戦術、そしてアジアタイトル。僕の知る限り、たった一年間の指揮であることを踏まえるとこれまでで最も浦和サポーターに受け入れられた監督ではないかと思います。着任前から不透明だったACL決勝の開催時期をにらみつつチームを構成し、前任監督の築いた土台を上手く活かしながらより堅実に結果を持ってこられるようチームをアップデートさせ、明確な戦力差があるとされた中でシーズン最大のミッションであった三度目のACLタイトルを確保した手腕は母国でポーランド人で現役最高の監督と称されるだけのものがあったと思います。</p> <p>一方で、5月に一度ピークを迎えるようなチーム作りをしつつ長いリーグ戦でも結果を出すというところまではたどり着けず、またシーズン序盤から選手選考にも偏りが観られたことで特に終盤戦は疲労困憊の主力を送り出すもののパフォーマンスの低下にはなす術なしといった感もありました。</p> <p>個人的にはレフポズナンでのサッカーに大きな魅力を感じていたこともあり、特にある程度のリスクを許容しつつも盤面を動かしアクションを増やしていくアプローチがあるかどうかに期待していたのですが、結果的にそれがなかなか表現されなかったのは残念でした。</p> <blockquote> <p>全体としては昨年に比べリスクを許容しつつチャレンジを多くする志向性の転換が肝になるのでは。ビルドアップとプレス重視、立ち位置がどうこうも工夫するという意味ではリカルド体制からの引き継ぎ事項は多いと思うが、プレー選択のメンタリティはだいぶ変わると予想、というか期待。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="すこ観戦会報告書(あるいはスコルジャ監督によるチーム作りの展望について) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F02%2F18%2F093035" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/02/18/093035">www.urawareds96.com</a></cite></p> </blockquote> <p>当然これはACL決勝があるなかで、しかも相手が戦力的に差がありそうなアルヒラルと決まっている中で、守備からチームを構築することを優先した影響が大きいのだと思います。一方で。開幕2試合はかなり前向きの矢印を強調し、堅実とは程遠いバタバタしたサッカーでシーズンがスタートしたことを踏まえると、ACL決勝だけがその要因とは思えないのも事実です。個人的に腹落ちしている仮説としては、やっぱりポーランドの(もしくはスコルジャが経験してきたこれまでの)サッカーとJリーグのサッカーの違いに面食らったところがあるのかなと思っています。エクストラクラサのサッカーを観ると、どのポジションにもフィジカルで選ばれてそうな大柄の選手が多く、プレッシングを受けた相手チームが僕らの感覚ではあまりにも簡単に前線にボールを蹴っ飛ばしてくれるような傾向がありました。逆に技術のある選手がピッチに集うJ1ではもともとせわしなく早い展開が連続する傾向にあり、近年の戦術的・技術的なレベルアップから中途半端なプレスであれば普通に突破してくるチームが多いのが特徴です。ポーランドのサッカーを下に見るわけではないですが、ポーランド基準で十分なプレッシングを仕込んでもJ1ではポーランドほど相手がボールを捨ててくれない、従ってプレッシングを行うB/Cが比較的低く戦術骨子にならないというような状況があったのではないかと思います。</p> <p>またボール保持においてはチームの軸となるCFの人選に苦労し、小粒な2列目の選手を含めて前線に時間を溜める機能が欠落していたこと、前線の迫力を補完するために酒井をビルドアップに関わらせずに早めに前線に上げておいておく戦術を採用したことで結果的にビルドアップの枚数・機能が不十分になったことが影響し、効果的にゲームを落ち着かせることが難しかったようにも思います。これによりプレーエリア(動的な自軍陣地でありトランジションの発生ポイント)を前に出せないとで相手を押し込めなかったことは90分のデザイン、ゲームプランの部分で影響が大きかったはずです。</p> <p>プレッシングが思ったほど機能しないリーグだったことに加えて全体的に相手陣地でプレーすることが困難になってしまったことで、次第に今期の浦和の強みはミドル~ローブロックの強固さに集約されていくことになりました。ここにベストイレブン3人を擁するリーグ最強の守備組織が構築できたことは不幸中の幸いでしたが、それ以上の強みをチームに植え付けるに至らなかったことも事実。イレギュラーな与条件の中アジアタイトルをもたらしてくれたことに感謝は尽きませんが、内容面で期待外れの部分があったのは正直なところです。逆に言えば、浦和で達成できなかったB/Cが高く効率的なプレッシングと、バックスの高いビルドアップ能力に支えられて非常に高い位置に設定できていたプレーエリア(つまり相手を押し込めていたということ)の二つがまさにレフポズナンの強みであり、スコルジャ監督の理想のサッカーを表す方程式に欠かせない係数だったのだと思います。ではそれをJ1リーグの環境でどのように実現するのかというのを見てみたかったのですが、残念ながら個人的な理由で一年での退任となってしまいました。</p> <p>さて、おまけ程度ですがいくつか数字も見ていきたいと思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240221/20240221200609.png" border="0" title="" width="513" height="653" loading="lazy" /></p> <p>まずはリーグ戦の勝ち点推移。赤色の棒グラフは浦和の累計勝ち点で、白は優勝した神戸の累計勝ち点です。赤と黒の折れ線グラフはそれぞれ浦和の各節時点の平均勝ち点と直近5試合の平均勝ち点を表しており、黄色と黄土色の折れ線グラフは神戸のそれに該当します。オレンジの点線は優勝ラインの累計勝ち点70/平均勝ち点2.0と、残留ラインの累計勝ち点40ちょっと/平均勝ち点1.0を示しています。</p> <p>一目でわかるのが開幕2連敗ダメージの大きさで、ぐうの音も出ないほどの結果論ですがこの2試合で勝ち点6を積んでいれば残り5試合(30節)の時点まで神戸とほぼ同じ勝ち点でリーグを進められたことになります。結局32節の神戸との直接対決に負けてしまえば開幕2試合を連勝する世界線でも史実に収束してしまうのですが、そこに至るモチベーションは大きく違っただろし、それゆえに結果も別の方向に転がるかもなと思ったり。他の部分に注目すると、黒い折れ線グラフが示すように浦和が明確に調子を落としたのが20節~23節(8月上旬~中旬)と30節~33節(11月上旬)で、半ば燃え尽きていた11月はともかくとしても、第20節FC東京戦(△)、第21節セレッソ戦(●)、第22節マリノス戦(●)、第23節広島戦(●)の4試合で勝ち点1だった夏場の戦績は非常に痛かったかなと思います。この間に例の天皇杯名古屋戦も挟んでいますし、今振り返るとこの時期は試練でしたね。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240221/20240221201829.png" border="0" title="" width="986" height="340" loading="lazy" /></p> <p>次に毎年同じ項目で記録が残って年別比較に便利な<a href="https://www.football-lab.jp/uraw?year=2023" target="_blank" rel="noopener">Football-Labのチーム単位の各プレー指標</a>を並べてみました。相手と組み合う膠着状態を良しとし、試合をなだめながら進めるリカルド監督が率いていた2021・2022シーズンよりも攻撃回数の指標が悪い(まさかのリーグ最下位)あたりに僕の内容面のがっかり感の根拠がある気がします。チャンス構築率がそこまで悪いわけではないのですが、やっぱり「攻めている」感覚が少なすぎましたね。</p> <p>一方で守備面の指標は軒並みリーグトップクラスで、守る時間が長かったはずなのにチャンス構築率でリーグ2位の成績は強固なブロックを、そして非シュート成功率リーグ1位の数字は最後まで相手を自由にさせない粘り強さと最後の砦となるGKの質を示していると思います。こう見ると結果的には「3年計画」の目指していた浦和レッズのサッカースタイルとは真逆の方向性にチームが積みあがったのがここ3~4年間であり、それなのに思わぬ方向に完成度が高まった結果三度目のアジア王者までたどり着いてしまったのがACL2022の優勝と言えるのかなと思います。少なくともつっちーが言っていた浦和レッズのスタイル、僕が「ネオ速く激しく外連味なく」と呼んだものの表現をピッチ上で観ることはできませんでした。尻よ浮け。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240221/20240221202743.png" border="0" title="" width="764" height="619" loading="lazy" /></p> <p>最後に選手起用の傾向です。別にあえてグラフから読み取ることでもないですが、選手固定の傾向が強まったことを各数値が示しています。まーざっくり言えば、2023シーズンのスコルジャ監督のパフォーマンスはオリヴェイラのアップデート版みたいな感じだったと言えるかもしれません。</p> <p>グラフからも明らかなように、2019年~2021年の3シーズンはプレータイムをスカッド内でシェアし、いろいろな選手を比較的バランスよく起用する方針が続いていたんですが、またひと昔前の固定傾向が復活してきています。これはクラブ編成の実験期間が終わって主力として信頼できる(競争を生き残った)選手が多くの出場機会ともに再強化されてスカッド内の序列が明確化したこと、さらなる結果のために強力な選手が補強されたことで主力とサブの隔たりが深まり、悪循環的にサブの選手を使いにくくなる傾向が強まっているという感じで理解できる気がします。来季のヘグモ監督も結構序列を明確にするタイプみたいなので、この傾向は今後も数年続くかもしれません。ここ10年~20年くらいの経験を踏まえても、何年かこんな感じで主力を固定し、どこかで多くの主力選手が一斉に世代交代して数年間のスカッド実験期間入りというのが浦和の典型的な強化サイクルと言えそうです。まあ優勝クラブの主力依存度が高いのは普通のことで、それ自体が特別悪いとは思いませんが、これをいかに平準化しつつより良い結果を安定的に求めていくかみたいなところがフットボール本部の長期的な存在意義とも言えます。</p> <p>というわけで全体的に見れば、2023シーズンはスコルジャ監督及びコーチングチーム、そしてフットボール本部がその存在価値を発揮し結果を得た良いシーズンだったと言えると思います(リーグであと一歩頑張れば素晴らしいシーズンだったと言えたのですが)。また主力選手を中心に非常に多くの試合、膨大なプレータイムを働いてくれた選手たちにも感謝をしたいです。みんな本当に疲れたと思います。お疲れさまでした。一方で2019年オフから続く浦和レッズさんの構造改革・サッカースタイル改革は内容的には後退し、抜本的なてこ入れが必要と言える状況だったという点は無視できません。スコルジャ監督の退任はあくまでイレギュラーな事情によるもので解任ではないはずですが、ここでよりピュアなアタッキングフットボールの信奉者を迎え入れるのは悪くない選択となったのではないかと期待したいと思います。</p> <h5 id="チラウラー-96">チラウラー 96</h5> <p>はよ書け。こまめに書け。定期的に書け。</p> <p> </p> <p>終わりです。長文にお付き合い頂きありがとうございました。</p> reds96 2023シーズン全選手振り返り(中) hatenablog://entry/6801883189065449274 2024-02-21T21:35:12+09:00 2024-02-22T08:33:48+09:00 (上)はこちら www.urawareds96.com 12 鈴木彩艶 浦和が手塩にかけて育てた未完の大器は今季途中から戦い場をベルギーに移すことに。現在はシントトトトトトロイデンの守護神としてまあまあの活躍を見せているようです。今季のレッズではやはり2番手GKとしてシーズンをスタート。ポテンシャルは誰もが認めるところですが、結局のところ課題は安定感であるというのは変わらずで、出場はルヴァンカップの予選と天皇杯の1試合のみ。ルヴァンカップでは5試合で3失点とまずまずのパフォーマンスでしたが、飛び出し対応の不安定さやキャッチング・フィスティング関係のミスなどは昨年から大きくアップデートされたとい… <p>(上)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2023シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2024%2F02%2F21%2F211200" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2024/02/21/211200">www.urawareds96.com</a></cite></p> <h5 id="12-鈴木彩艶">12 鈴木彩艶</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235758.png" border="0" title="" width="1054" height="415" loading="lazy" /></p> <p>浦和が手塩にかけて育てた未完の大器は今季途中から戦い場をベルギーに移すことに。現在はシントトトトトトロイデンの守護神としてまあまあの活躍を見せているようです。今季のレッズではやはり2番手GKとしてシーズンをスタート。ポテンシャルは誰もが認めるところですが、結局のところ課題は安定感であるというのは変わらずで、出場はルヴァンカップの予選と天皇杯の1試合のみ。ルヴァンカップでは5試合で3失点とまずまずのパフォーマンスでしたが、飛び出し対応の不安定さやキャッチング・フィスティング関係のミスなどは昨年から大きくアップデートされたというほどのものではなかった印象でした。ただ今季を振り返ると選手としての振る舞いはこれまでにも増して堂々としたものになったように思いましたし、ゴールを守るプレーやビルドアップへのチャンレンジに加えて勝ちに行くためのアクションというのは今までよりも出ていた気がします。夏にはマンチェスター・ユナイテッドからのオファーがあったのではないかということで全世界のサッカー界隈を盛り上げ、最後は断ったようですが、彼の夢であるプレミアでのプレー、その過程にあるべき欧州挑戦や代表選出というところを踏まえると、あれは彼なりに浦和の正GKになるための覚悟の振る舞いだったのかなと思います。</p> <p>結局在籍期間中に西川周作の壁を越えることはできませんでしたが、大きな夢のために21歳にしてベルギー移籍を選ぶこととなりました。移籍前の最後の挨拶では彩艶らしく四方のスタンドへ完璧なお辞儀をかまし、非の打ち所がない優等生的作文を披露。欧州挑戦前の挨拶でお世話になった人にまさかの恋人を並べた浦和ユースの大先輩へのリスペクトはないのか、もっと面白くしてくれと僕の中で一瞬話題になりましたが、この人間のでき方こそ彩艶の魅力であります。</p> <p>移籍先のシントトロロロロロイデンでは現役日本代表のシュミット・ダニエルを差し置いて正守護神として構想され移籍直後から順調に公式戦出場数を伸ばしているようで、チラッと観た限りは相変わらず怪しい飛び出しが時々出ているものの、フィジカル攻撃の迫力があるヨーロッパの舞台でも堂々とゴールを守れている様子。クロス対応を数で磨いていくにも、市場価値を高めてステップアップを狙うにも彩艶ほどのスケール感であればあっちの方がいいのかもしれません。不慣れな土地で生活するとはいえ彩艶の場合人間的な心配は一切しなくていいですし、彼ならいつか日本人歴代最強のGKとなって浦和へ帰還してくれルト100%信じられるので、今はこのまま見果てぬ道を突き進んでほしいと思います。アジアカップでも不安定なプレーがいろいろと話題になっていましたが、そんなものはすべて日本人GKとして歴代最高到達点に達するまでの過程になればいいのです。頑張れ。</p> <h5 id="13-犬飼智也">13 犬飼智也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235539.png" border="0" title="" width="1057" height="459" loading="lazy" /></p> <p>昨季負ってしまった左膝蓋骨骨折・膝蓋腱部分断裂の大怪我からの復活を目指す今季でしたが、結果的に浦和ではルヴァンカップに3試合出場したのみ。夏のマーケットで柏への期限付き移籍となり、その後は柏の守備の要として同クラブの残留に大貢献したシーズンとなりました。</p> <p>選手としての特徴やキャリアを通じての経験値なんかは全く問題なかったと思うのですが、フットボール本部は今季プレシーズンに二人目のスカンジナビアンCBとなるマリウスを獲得。この補強はどちらかというと中東移籍が実現間近と報道されていた岩波の移籍を念頭に置いたものだったはずですが、結果的に岩波の移籍は直前で破談となり急転直下の残留、さらにマリウスがチーム加入直後からがっつりフィットしショルツとの最強CBコンビを形成したことで、結果的に犬飼の立場が苦しくなってしまったという感じだったかと思います。フル出場したルヴァンカップ3試合は最少失点で乗り切りましたし、確かに試合勘の欠如を感じなかったわけでもなかったものの全く試合に絡めない状況というのはベテランと呼ばれる年齢に差し掛かった選手にとっては厳しいものがあったと思います。今季の浦和は5月のACLに向けて序盤からチームを固めていく必要がありましたし、スコルジャ監督も結構メンバーを固定して戦うタイプだったので、犬飼にとっては何から何まで自分に流れが来ない状況を感じていたかもしれません。</p> <p>とはいえ柏へのレンタル移籍後はその実力を発揮し、来季は柏への完全移籍となりました。浦和では思ったような地位を築くことができませんでしたが、移籍金を払ってでも柏が獲得したいと思った実力の一端は我々にも見せてくれました。息子さんも生まれたことですしキャリアの集大成はまだまだこれから。来季以降は浦和戦以外で頑張ってください。</p> <h5 id="14-関根貴大">14 関根貴大</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230516.png" border="0" title="" width="1051" height="533" loading="lazy" /></p> <p>在籍通算10年目となる今季は公式戦52試合3,178分に出場。リーグ戦でも32試合に出場とほぼ全ての試合に関わりました。今季序盤は控えが多かったのですが、終わってみれば中盤に加えて右SBでも起用され、結果的には序列を固定的に運用した監督から重宝された選手の一人となりました。</p> <p>リカルドが監督だった2年間を通じてすでにそうだったのですが、最近の関根はもはやステレオタイプなドリブラーではなく、立ち位置やコンビネーションで局面を打破するアタッカーとなっています。浦和のアタッカーの中では内側・外側を器用に、頻繁に使い分けてプレーする選手ですし、トラップやボールコントロールの技術の高さがさまざまな場所、さまざまな状況、さまざまな体勢でのプレーを可能していることも含めて、ドリブラーに見られる我の強さやある種身勝手な決断よりも、気が利いて誰とでも比較的うまくプレーできる選手という印象を強めている気がします。とはいえ、<a href="https://www.football-lab.jp/player/1400040" target="_blank" rel="noopener">Football-Labの数字</a>を見るとドリブルチャンスの数字が高いので、要所で発揮するドリブルの効果はよく発揮されているのかもしれません。</p> <p>今季のアタッカーとしての関根の印象は決定力がほしいよねの一言に尽きます。32試合で3ゴールはチーム最低というほど悪くもないのですが、訪れたシュートチャンスやシュート数の数字を見てももうすこし決められたのではという感じ。特にシュート数は2015年のキャリア最高である44本に近い43本。同年に6ゴールを決めていることを考えても、もう少しゴールを取れたのでは。すっごい簡単なシュートを外しまくった印象はないですが、シュートに力がなかったよねというシーンは結構あったと思います。</p> <p>総じて、こういうところが今後のキャリアに関わってくるだろうというのが僕のここ数年の関根論です。サイドでプレーする際は相方を選ばず、内側でも外側でもそれなり以上にプレーでき、ボールを扱う技術があり、ただ試合を決めるほどのパワーはない。エースとして前線に置くには正直迫力不足だけれども、非常に信頼できるのでピッチには置いておきたい。こうした彼の現在の特性を踏まえると、やっぱりSBとしてキャリアを積めるかどうかは彼のキャリアにとって非常に大きなポイントになるのではないでしょうか。実際にSBとして出場した試合では、たとえばルヴァンカップ決勝とリーグ戦で比較しやすかった終盤の福岡戦を例にとると、今季苦戦したビルドアップがスムーズでゲームが安定したのがよく思い出されるところ。ビルドアップでチームを助けつつ、押し込んだらアタッカーの一枚として崩しに参加するSBの存在は近年のフットボールでは非常に重要ですが、簡単に見つけられるわけでもない中で、A契約に数えなくてもよい生え抜き選手がこの役割をやってくれるのは中期的なチーム強化を考えるとめちゃでかいです。当然守備の基本がなってないとか逆サイドからのクロス対応が厳しいとか弱点もありますが、本人が「あんまりやりたくない」と公言するくらいですからそんなのはあって当然。今浦和レッズに必要なのは、スコルジャ監督がそうしたように、なだめすかしておだてながらSBとしての実績を積ませ、そのうち本人が自覚した時に備えておくことなのだと思います。来季以降もSBでもよろしくな。</p> <p>PS:と思ったらIHでもプレーさせられてるようなので。IHでもよろしくな。</p> <h5 id="15-明本考浩">15 明本考浩</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230543.png" border="0" title="" width="1051" height="531" loading="lazy" /></p> <p>怪我の影響もあって欠場した試合が多いなあという印象でしたが、終わってみれば公式戦41試合2,945分と主力としてまずまずの働き。彼なら55試合4,500分くらいは出場して当然と無意識に思ってしまっているが故に3,000分弱出場しても物足りない感じになってしまうのかもしれません。</p> <p>ただ全体を通してみれば、アキの持っている能力や彼が発揮できる戦術的重要性を踏まえると大成功のシーズンとは言い難いというのもまた事実。今季はSBの一番手としてスコルジャ監督の信頼を得た一方で、ゴール前に絡んでいく良さはこれまでのシーズンほど見ることが出来ませんでした。前線で自ら動き出し周囲と関わりながらゴールにアタックする良さを知っているだけに、後ろのほうでプレーしている姿にもどかしさを感じることもありました。ただACLやCWCでのプレーでも見られたように、相手アタッカーを始末する守備者としての活躍は浦和加入以来最高のパフォーマンス。特にアルヒラル戦でのvsミシャエウやマンチェスター・シティ戦でのvsフォーデンは見応えのあるマッチアップで、完勝とは行かないまでも一度やられてもそこから学習して食い下がることができるメンタル的な強さと身体能力・技術的なポテンシャルの高さは十分見せてくれたと思います。こういう「戦いの中で成長している」的な能力を持つ選手というのは記憶に残るもので、直近では三苫に食い下がった橋岡なんかがこの能力を持っていました。こういうタイプの選手は舞台が大きく、相手が強くなればそれだけ成長してくれるので挑戦させやすいしなんやかんやで頼りになります。</p> <p>ということで2024年はがっつりリーグ優勝に貢献してくれやと思っていたら、まさかの海外移籍。ベルギーのOHルーヴェンは残留を争う下位クラブという立ち位置ですが、逆境でもタフに戦えるアキには逆にやりやすいチームかもしれません。移籍期間が2024年6月末までとなっていることを考えると、まずは半年間でどこまで力を示せるかの挑戦という感じでしょうか。加入直後から一応出場機会を得ているようですので、彼らしい適応力を発揮してほしいと思います。もし夏以降に日本に帰ってくることになれば浦和にとっては強力な補強となりますが、せっかく与えられた挑戦権なのでここはしっかり2024-25シーズンの契約を勝ち取ってほしいと思います。本来J1内定クラスの選手だったのを古巣でデビューするためにあえて栃木に入団したとはいえ、大卒でJ2で一年、J1で三年やってからの海外移籍というのは日本人選手及び北関東地域一帯の地位向上を感じさせる移籍だなと思いました。</p> <h5 id="16-牲川歩見">16 牲川歩見</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230558.png" border="0" title="" width="1057" height="529" loading="lazy" /></p> <p>今季は公式戦3試合に出場。西川の影に隠れながらの存在であることは相変わらずでしたが、公式戦に出場できたことは良かったと思います。プレーの部分では今季見た限りでは別にJ1クラブのGKとしてプレーしていてもおかしくないな、という感想。大柄195cmでありながら足元に来るボールの対処に質がありトラップも柔らかいのがいいですね。パスミスは出るもののSBへのロビングも蹴れるので、J2上位の繋ぎを捨てたくないチームにとっては非常に面白い選手でしょう。J1でもチャンスがあっておかしくない選手に成長しているのかなと思います。</p> <p>ただこれを浦和レッズのGKとしてどうか、という視点でみると全く別の評価になってしまうのが難しいところ。J1ベストイレブンにも選ばれた西川と比較してどうか、という視点でみると、技術もさることながら身体能力の部分で西川に明確に劣るのだなというのがわかります。シュートストップの反応だけでなくクロス・ハイボールへの対応でも反射速度が若干遅く感じますし、それが細かいポジショニングや反応にも影響するのではないかと思います。体勢の立て直しのスピードもジョアン式では非常に重視しているポイントだと思いますが、こういう部分で身体能力オバケの西川周作の壁が高いのではないかと想像します。まあでも195cmの身長とひときわ長い四肢を持つ日本人が180cmの人と同じクイックネスで動けというのは一般的にかなり難しいので、これは致し方ないことかもしれません。一昔前の僕はGKは190cm以上マストでしょ~派だったのですが、西川があれだけハイボールに機敏にアタックできるとなると、身長は185cmもあれば十分で、それよりもクイックネスや反射、空間認知力なんかのほうが重要なのかもなと思ったりします。</p> <p>とはいえやはりスケールのデカさは夢。もう「牲川って大丈夫なのかなあ」という評価ではないと思いますので、来期も来る出番に備えてしっかりと中島翔哉くんの保護者として活躍してほしいと思います。</p> <h5 id="17-アレックスシャルク">17 アレックス・シャルク</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230608.png" border="0" title="" width="1056" height="474" loading="lazy" /></p> <p>ブレダの爆撃機兼浦和の秘密兵器はついに秘密のまま去ることに。今季をもって契約満了による退団が発表されています。</p> <p>今季はプレッシングを頑張るチームになるということでシャルクの活躍の場が広がりんぐするのではと期待が高まりんぐしたプレシーズンからのスタートでしたが、キャンプではやる気があり過ぎて単独プレスをかけた結果背後ががら空きで「そんなプレスじゃ意味ねーだろ」と兄貴に指導されてしまうことも。兄貴も大して変わらないんじゃ疑惑がありますが、そんなことは兄貴には関係ありません。さらにはシーズン中複数回にわたって怪我での離脱があったようで、本人が思い描いた活躍はおろか出場機会を掴むことすらできず、今季も厳しいシーズンとなってしまいました。</p> <blockquote> <p>特に今シーズンは戦線離脱を余儀なくされる期間が長く、前述のG大阪戦でもゴールを奪ったあとに負傷し、しばらくピッチから離れることになった。</p> <p>「今シーズンは、本当に不運でした。自分にとって良い流れになってきたときに限って怪我をしてしまった。怪我をしたら、またゼロから作り直さなければならなくなる。チームを助けることができず残念でした。</p> <p> もしシーズンを通してプレーできていたら、7、8点は取れていたのではないかと思います。そうしたら今ごろは、まだリーグ優勝を懸けて戦えていたかもしれません。自分にとっても、チームにとっても残念だったと思います」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="アレックス シャルクは不運を乗り越え、最後まで全力を出し尽くす「振り返っている暇はありません」(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fnews.line.me%2Fdetail%2Foa-urawaredsnews%2Fhdx2a1xr6dyl" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://news.line.me/detail/oa-urawaredsnews/hdx2a1xr6dyl">news.line.me</a></cite></p> </blockquote> <p>本人が言っていますが、上手く稼働していれば7,8点取れた可能性は十分にあります。というのも、今季は公式戦出場分数603分で5ゴールの成績なのですが、90分あたり直すと0.746点。これは今季のチームで断トツの数字で、2位のカンテ(0.574点)、3位の兄貴(0.504点)以下全然点が取れなかった皆様を大きく引き離しており、出場した試合の相手との力関係云々を置いておけば、チーム随一のスコアリング性能の片りんは見せていたわけですね。ということでこのペースで単純計算するともしシャルクが844分リーグ戦に出場していれば7ゴールした可能性があるし、さすがにこのペースは続かないとして倍の時間がかかっても1,700分弱ですから十分に現実味のある数字です。まあこれはただの数字遊びなのですが、コレクティブでポジショナルとは言い難いもののシュートが上手くゴールが出来そうなポジションにいつの間にか入り込んでいる得点感覚には特筆すべきものがあったと思います。そういえばそれは決めとけというシュートミスが少なかった気がしますし、チームとしてはプレッシングの時に上手く首輪を嵌めるなり仕事の分担を上手く整理するなりして彼のスコアリング性能を活かしたかったところでした。</p> <p>来季は母国オランダに戻るようで、良いキャリアを祈りたいところ。外国人助っ人としての成績は残念ながら及第点とは言えないものの人柄の良さや豪快なゴールと熱いセレブレーションで我々を沸かせてくれた良い選手でした。願わくばもう少し若い年齢で来てくれていたらという気もしますが、それも含めてめぐり合わせですかね。さらば。</p> <h5 id="18-髙橋利樹">18 髙橋利樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230640.png" border="0" title="" width="1056" height="417" loading="lazy" /></p> <p>2022シーズンにJ2を沸かせたロアッソ熊本から今季加入の利樹ですが、今季はなかなか難しいシーズンとなってしまいました。公式戦出場数は26試合とそこそこですが、プレータイム1,061分は今季の公式戦試合数を考えると寂しい数字。特に3月8日のルヴァンカップ第1節アウェー湘南戦に先発しながら開始15分で負傷交代となってしまったのが痛かったように思います。この時期は兄貴と慎三を中心としたCFの序列争いが行われていたものの、兄貴は大黒柱に据えるほどのパフォーマンスを見せておらず、慎三は体力的にフル出場を考えにくい、しかもカンテはちょうど追加登録をしたところで実績もコンディションもまだまだという感じで、実績の面ではライバルに大きく劣るもののフル稼働できる状態の利樹には他にない強みがあり、まずはルヴァンでパフォーマンスを見て選択肢に入れるかどうかという有利ではないもののポジティブな状況だったはずです。それが試合序盤の怪我で吹き飛んでしまい、公式戦に復帰したのが5月24日のルヴァンカップ第5節ですから、キャリアの勝負となる大事な時期を2ヵ月半も飛ばしてしまいました。この間に興梠が3ゴールを決めてチームを助け、強固な守備をベースとしてプレッシングを若干自重するような戦い方にシフトし、一人でなんとかできてしまうタイプのカンテがプレータイムを徐々に伸ばしながらJリーグとレッズにフィットしていくこととなりました。</p> <p>プレーの内容面では走れる選手であること、クロスに身体ごと飛び込めること、また熊本時代に磨いた近い距離でのパス交換に対応できるスキルがあることは彼の特徴としてJ1でも評価できるのではないかと思います。ただそういった点が評価されたのが逆に災いしたのかSHで起用されることが多くなり、大外でボールを受けても単独突破の選択肢の無い利樹はチームのオフェンスに逆にブレーキをかけているような印象に映ることも。スコルジャ監督としては利樹と逆サイドで攻撃を組み立てた際にファーからゴール前に入り込んで第2・第3のストライカーとしてプレーさせる狙いがあったものと思いますが、兄貴にしろ利樹にしろこれはあまり機能していませんでした。熊本のプレーを観ていても、最終的には中央からニアに飛び込んで勝負したいタイプの選手ですし、ちょっと自分の型と役割がマッチしなかっただろうなと思います。とはいえCFで使うにはフィジカルの部分で軽いというか無理を効かせてボールを収めてくれるようなプレーがあったわけではなく、周りの選手も利樹の活かし方をじっくり模索するような余裕もなくという感じで、最前線には独力で何とかしてほしい戦術を採用していった時点でCFとしては努力ではどうこうならないほど難しい立ち位置に置かれてしまったのだろうという印象。ガンバ戦で素晴らしいゴールを決めて以降、秋口からプレータイムを伸ばしたのですが、シーズン最終盤はACL武漢戦の脳震盪でまたも戦線離脱しCWCも経験できず、悔しい想いが募ったことでしょう。</p> <p>監督が変わる来季もスタート地点はあまり変わらず、兄貴、慎三との競争に加えて補強があればどうなるかという感じになりそう。ヘグモ監督のサッカーが上手く機能すればクロスが上がってくる本数は増えるでしょうし、CFはボールを収めるよりも真ん中で相手CBと駆け引きしゴールを狙う仕事が強く求められそう。となると利樹がその仕事一番うまい!というわけではないのですが、年齢的にも働き盛りでハードワークできるCFはなんぼあってもいいので、上手くチームの選択肢に入ってプレータイムを確保して欲しいです。ちゃんと彼らしくプレー出来れば10点は獲れる選手だと思います。</p> <h5 id="19-岩尾憲">19 岩尾憲</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230715.png" border="0" title="" width="1053" height="473" loading="lazy" /></p> <p>公式戦53試合4,176分出場!寿命縮んでないですか?大丈夫ですか?今季はマリウス、西川、ショレに続く絶対的主力として4,000分オーバー四天王を形成。この4人の形成するダイヤモンドが文字通りチームの核となっていました。</p> <p>普段の言動や徳島時代のイメージから知性派と思われることの多い岩尾選手ですが、経歴を見れば北関東の誇る灼熱の都館林市出身で日体大卒⇒湘南とゴリゴリの物理攻撃育ち。特技が封じられるダーマ神殿攻略でも活躍できるモンクとしての本質を示したACL決勝でのパフォーマンス、特にアルヒラルの絶対的バンディエラであるサーレム・アルドーサリを場外送りにした必殺の帯落としには講道館から表彰が贈られるとの噂もあったほどです。噂アカウントが言ってました。またサッカー選手としては単なるビルドアップというよりも浦和レッズのボール保持全般における精神的・戦術的な基準として振る舞い部長不在のビルドアップ統括部を全力で支えたことに加え、個人的にはボール非保持時のカバーリング、特にバイタル周辺を二人のCBとともに埋め続けた働きは素晴らしかったと思います。マリウス・ショレのベストイレブンは二人にふさわしいし彼らの実力あってこそだと思うんですが、多くの場合で二人に加えて岩尾がバイタルをしっかり埋めていたことで自陣ゴールエリア内の強固な密集が維持されていたと思います。あまり言及されませんが、ボール非保持時の働きは彼の選手としての価値を構成する大きな要素の一つだと思います。</p> <p>さて、自由な日陰者の立場を利用して忖度なしで何でも書けるチラウラーとしては、一部界隈を賑わせていた「岩尾それでいいんか」問題について触れないわけにはいきません。要約すると、ビルドアップにおいてなんでもかんでもCBの間に降りて行ってしまう、降りた結果相手のプレッシャーを正面で受け、またチームとして(また岩尾本人もまた)自力で運んでいくプレーに乏しいためにボールが自陣深くで停滞してしまっていた現象の根源が岩尾のプレー選択もしくは実力の限界にあるのではないか、というのが論点だったと思います。個人的にはあの現象は岩尾だけのせいではないと思っていて、例えばマリウスが運んでいけるスペースを使えていましたか、近くの味方に任せていませんでしたかとか、降りるなら降りるでその後の盤面変化を上手く利用するための戦術やガイドラインがベンチから提供されていましたか、とか、もっと言うとSBがもうちょっと後ろに残ってビルドアップに関わるだけでボール回しの枚数的に余裕が出たんじゃないですか、SBさんどこにいましたか等々というポイントは掴んでおくべきなのかなと思います。そういった状況の中で、本人の能力や立場、役割や責任を総合して岩尾が良かれと思って、もしくはそうする以外の選択肢に思い至らずに多くの場面で顔を出していたのが実態であり、その結果ボールを引き取ったはいいが自分で解決する能力はなかったというのが現実なんじゃないかというのが僕の考えです。</p> <p>じゃあやっぱ岩尾のせいじゃんと言われればプロの世界ではそうなのかもしれませんが、考えてみてほしいのは社内外の様々な圧的やディコミュニケーションを繋いで走る一般企業の課長たちの姿です。他の社員は自分の立場ばっかり主張し誰も解決を図ろうとせず、部長はどっかに行ってしまい、気付いて動けるのは自分だけとわかっているので仕方なくボールを拾いに行く、そんなことを5年も10年もやっていれば自らのスキル向上の時間は確保できず、ハナから解決できるなんて思っていない課題の責任者ポジションを与えられ、残業してたら知らないうちに子供は育ち来年から中学受験に挑戦するとか言い出す…これです、これが岩尾がピッチ上で体現していたリアルすぎる課長の姿なのです。こんな会社に長くいても自分の人生が消費されて終わりなのではないかと考えてもおかしくないところ、また転職エージェントがいろいろとスカウトメールを送ってきていたであろうところ、覚悟と愛社精神を持って残留を選んでくれた岩尾課長に感謝です。お疲れ生です。</p> <h5 id="20-知念哲矢">20 知念哲矢</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235653.png" border="0" title="" width="1056" height="318" loading="lazy" /></p> <p>知る人ぞ知る僕の個人的に気になるリストから加入した選手の一人で、個人的にはすごく期待していて好きな選手だったんですが、まさかの公式戦出場なし。浦和レッズは競争が激しく、またスコルジャ監督が主力とサブを明確に仕分けたとはいえさすがにかわいそうというか残念でした。危なっかし所がありつつもリカルドは結構使っていたんですけどね。まあ完全上位互換と言えるマリウスが入団しちゃったどころか合流即フル稼働でチームナンバーワンのプレータイムを稼いでしまったら立つ瀬なしとなるのも仕方ないでしょうか。</p> <p>来期はJ2仙台に迎えられ主力としてプレーできるはずなので、寒いところは大変だと思いますが頑張ってほしいです。</p> <h5 id="21-大久保智明">21 大久保智明</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230727.png" border="0" title="" width="1052" height="533" loading="lazy" /></p> <p>9月及び終盤は怪我による欠場や時間限定出場がありましたが、46試合3,245分の出場と立派に主力としてプレー。浦和内定選手として中央大学に在籍したころから長い怪我と付き合ってきた選手であることを考えるとかなり働いたほうなのかなと思います。シーズン全体としては主に4-2-3-1(4-4-2)の右SHとしてプレーし得意のドリブル突破を武器に多くのチャンスをクリエイトしました。OKBが使えるなら基本的にOKBを使うというところまでスコルジャ監督から信頼され重用されたのは、公式戦通算1得点という圧倒的物足りなさを考えれば立派なことです。シーズン当初は2列目の選手の得点をかなり計算していたであろうスコルジャ監督が(他の選手も大して振るわなかったとはいえ)ここまでOKBを起用しまくった要因を見ていきましょう。</p> <p>ドリブル突破の技術や相手と入れ替わるセンスは言わずもがなの彼の特徴ですが、もう一つの特徴が献身的なランニングです。この二つを掛け合わせると今季のOKBのユニークネスが見えてきます。J1リーグのみの記録になりますが、まずドリブル数はJ1リーグで4位タイの99回成功。上位には156回成功の金子拓郎をトップとして132回成功のカピシャーバ、116回成功のエウベル、OKBと同じく99回成功の紺野和也と続きます。この5人の中で最も走行距離が長いのがOKBで、291.1kmを記録。そのほかドリブル成功数ランキング上位20人の走行距離を調べてプロットすると以下のようになります。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20240221/20240221212845.png" border="0" title="" width="1200" height="520" loading="lazy" /></p> <p>ドリブル回数80回以上に加えて330km以上と別格の走行距離(浦和トップは岩尾の332.9km)をたたき出している森下&amp;武藤の走力とプレー強度には驚きますが(簡単に言えばこれが日本代表海外組レベルの強度ということでしょうか)、ドリブルと走行距離のバランスではOKBもかなり良い線いっています。ドリブルを何度も成功させながら長距離を走り続ける人間の体力的限界を考えると、自身より右上にプロットされる選手がいないOKBはJ1の中ではトップクラスの献身的ドリブラーであると言えるのではないでしょうか。当然、チームのやり方がどうだとかただ走ってればいいってもんじゃないとかそもそも恣意的な数字の紐づけに過ぎないとかといった反論はあるでしょうけど、素人がざっくりと彼の特徴を理解するには面白い試みと思って頂ければ。で、定性的な部分でOKBのプレーを思い出すとこの数字を裏付ける印象はたしかにあって、4-4-2プレッシングの先鋒の一人として相手ビルドアップへのプレッシャーをかけつつ、撤退守備時には4-4ブロックの維持に参加し、場合によっては酒井のヘルプのために5バックを形成したりとたしかにピッチを走り回っていました。味方のカバーのために長距離を走ることをいとわず、それでいて攻撃面では対面の相手を抜き去ってのチャンスメイクを求めるというのはシンプルに要求過多だと言ってしまえばそれまでなのですが、まあここまでやってくれる選手がいれば監督も重用しますよね。逆に言えば、ここまでやる選手がいないと持続しない組織だったんじゃないのとも言いたくなりますけど。</p> <p>ところで来季はCWC前後から引きずっている怪我で出遅れが確定しており、しばらくは調整に専念することになりそう。また攻撃的な4-3-3フォーメーションで固定しそうなヘグモ体制においてはソルバッケンや前田直輝などOKBの攻守にお置ける総合的貢献を全く考慮しないかの如くフィニッシュに関われる攻撃こそ最大の防御系WGが補強されており、厳しい戦いになりそうです。また地味にもったいないのはトップ下のポジションがなくなってしまったことで、個人的には実はOKBはサイドで使うよりも中央で使ったほうがいいのではないかと思ったりしていて、裏抜けの頻度なんかもあって極めて行く価値がありそうだったので残念です。もしかしたらIHでしれっとプレーしているかもしれませんが。</p> <p>イップス的な何かを心配したくなる拒点力になにかしらの改善が必要なことは明らかですが、それ以外の部分ではいわゆる欧州クラスの選手にも引けを取らない魅力を既に発揮できていますので、来季も良いポジションと役割を見つけて活躍してほしいところです。とりあえず怪我治してください。</p> <h5 id="22-柴戸海">22 柴戸海</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230736.png" border="0" title="" width="1051" height="533" loading="lazy" /></p> <p>いやあ、なんでこんなことになったんでしょうか。スコルジャ監督のサッカーと柴戸海のユニークすぎるプロファイルはばっちりフィット間違いなしだと思っていたのですが。今季は24試合出場701分間のプレー。5万分は出場すると信じていた僕が700分(期待の1.4%)のプレータイムで満足できるわけがありません。当然、一番満足できなかったのは本人でしょうけど。痛々しい膝のテーピングをみるに、大事なところでコンディションが上がらずアピール不足となり序列が低下⇒短いチャンスに賭けるもチャームポイントである想像の斜め上を行くポンコツミスで信頼を得られず⇒敦樹の日本代表になるまでの台頭と唯一の中間管理業務(庶務)をこなす岩尾が鉄板となり…という感じだったでしょうか。ポンコツミスがなんだ!ほかに十分良いところを見ろ!と急進的柴戸派が国会議事堂前で座り込みをしたニュースも記憶に新しいところですが、冷静になって考えるとスコルジャ監督は特にボランチの選手を減点方式で採用していたような節があって、柴戸のプレースタイルは許容範囲に収まらなかったのかなと思います。<br />あまりに短い時間しか柴戸のプレーを見ることができなかったので、この僕としたことが今季の彼のプレーがほとんど思い出せません。ただなんとなく思っていたこととして、コンディションの良かった2020年、2021年シーズンに比べてプレーにかなり迷いが見られるのかなというのがあります。中盤に入ってきたボールに対して尋常ではない下半身の推進力から生み出されるキレキレの寄せで音よりも早く相手をぶっ潰すのが彼の真骨頂ですが、今季は一度もこうした寄せが決まらなかったのではないでしょうか。ボールが入ってくるシーンでも寄せが中途半端でしたし、下半身の圧倒的推進力を感じることもできませんでした。ボール保持はどうでもよいとして(どうでもよくない)、彼の最大の武器がピッチでうまく発揮されていなかったのが非常に気になっています。というのも柴戸海という選手は元来、鬼の鋭さの寄せで数的・位置的に不利な状況を球際で強引に解決し、背後や周囲に広大なスペースを空けながらも目の前の相手を100%ぶっ潰しボールをこぼれさせることで未来のリスクを無にしてきた超能力者です。そんな選手が最大の武器である寄せで相手を圧倒できないとなると、単にボールに食いついてピッチ中央でスペースを空けてしまう守備の穴になりかねません。ボール非保持でこそ輝いてきた選手なのに、守備の穴になるとはどういうことやという感じで、下手したら仕事がなくなります。もちろん今季のパフォーマンスは間違いなく怪我の影響であり、コンディションさえ戻ればまた超能力者として飯を食っていけるはずなのですが、他の誰にも真似できないプレースタイルの選手なので、逆に言えば彼もまた普通の選手にはなれないのではないかという心配もあります。</p> <p>そんなこんなで来季は町田に期限付き移籍とのこと。浦和以外のユニフォームを着る柴戸を見るのはめっちゃ寂しいですが、もともと町田JFC出身なのでまったく縁のないクラブに行くことにならなかったのは良かったです。培ってきたJ1経験はもちろんのこと、J1屈指のボールハンターとしての能力が評価されてのオファーだと思いますので、マジでマジでコンディションを戻して上場の活躍をして浦和に戻ってきてください。浦和レッズvs柴戸海には正直興味がありますが、観るのは今年だけで十分です。</p> <h5 id="24-宮本優太">24 宮本優太</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235743.png" border="0" title="" width="1057" height="255" loading="lazy" /></p> <p>どうして…。<br /><br /></p> <p> </p> <p>(下)に続く。</p> reds96 2023シーズン全選手振り返り(上) hatenablog://entry/6801883189063027865 2024-02-21T21:12:00+09:00 2024-02-22T11:47:56+09:00 1 西川周作 37歳となった今シーズンもフル稼働の大活躍。後述するパフォーマンス、リーグ1位の27失点という結果、定性面・定量面のそれぞれで素晴らしい成果を見せた今季は2016年以来7年ぶりのベストイレブンを受賞しました。ジョアンの教えをマスターしたことでGKとしての基本動作にはさらに磨きがかかり、ゴールを守ることに関しては現役のJリーガーのみならず、歴代の日本人GKの中でも屈指のレベルに到達したのではないかと思います。僕はそんなに歴代GKのパフォーマンスには詳しくないですけど。 特に数年前まで弱点とされていたハイボール処理、クロスボール処理は強みと言えるレベルまで昇華され、クロスボールへのア… <h5 id="1-西川周作">1 西川周作</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230814.png" border="0" title="" width="1055" height="530" loading="lazy" /></p> <p>37歳となった今シーズンもフル稼働の大活躍。後述するパフォーマンス、リーグ1位の27失点という結果、定性面・定量面のそれぞれで素晴らしい成果を見せた今季は2016年以来7年ぶりのベストイレブンを受賞しました。ジョアンの教えをマスターしたことでGKとしての基本動作にはさらに磨きがかかり、ゴールを守ることに関しては現役のJリーガーのみならず、歴代の日本人GKの中でも屈指のレベルに到達したのではないかと思います。僕はそんなに歴代GKのパフォーマンスには詳しくないですけど。</p> <p>特に数年前まで弱点とされていたハイボール処理、クロスボール処理は強みと言えるレベルまで昇華され、クロスボールへのアタックは<a href="https://www.jleague.jp/player/400563/#gk" target="_blank" rel="noopener">クロスパンチング率20.2%(リーグ4位)、クロスキャッチ率29.9%(リーグ4位)</a>といった数字に現れており、シュートを止めるだけではなくそもそも撃たせないことで失点のリスクを回避できるようになったのは明確な進化と言えるでしょう。というかこの数字を単純に足すと上がってきたクロスの50.1%は西川が処理していることになるのですが、これって結構凄いのでは。感覚的にもそのくらいは西川がクロスを処理してくれていた気がします。</p> <p>西川の場合技術的にも選手としての実績・格としても到達点が非常に高く、ほとんどポジションを譲らないので比較が難しいのですが、同じ指導を受けている彩艶や牲川のパフォーマンスと比べるとやはりステップや身体の使い方などいわゆるセンスと呼ばれそうな部分で明確な差を感じること多々でしたので、努力は当然としてこの人はそもそもめちゃくちゃ運動神経がいい天才なんだなと認識するに至った今季でした。</p> <p>一方で流石に年齢を感じさせるシーンもいくつかあり、特に代名詞であったキックに関してはだんだんと質が低下しているような気がします。特に感じるのはロングキックの飛距離が落ちてきていることで、当然明確なデータを出すことはできませんが、感覚的にちょっと前は10m〜15mくらい遠くに飛んでいたかなというキックが散見されます。これは単純な筋力の問題かもしれないし、2016年のプレシーズンに手術をした膝の痛みの再発・悪化が影響しているのかもしれません。2015年も確かにパフォーマンスがよくなかったのですが、あからさまに痛がる感じではなかったし当然のように毎試合ポジションを譲る気配がなかったので手術をするほどの痛みを抱えていたことに気づくことができませんでした。柔和な笑顔のイメージがありますが彼はそういう選手なので、もしかすると今季もどこかに深刻な痛みを抱えながらプレーしていたのかもしれません。戦術的な問題なのか本人の考え方なのかピンポイントのフィードを狙う頻度も低下している印象ですし、だんだんとゴールキーピングを最大の武器とするオールドスタイルGKの方向にプレースタイルが傾いているのかなという感じもします。</p> <p>記憶が新しいのと起きたことのインパクト、その結果が凄いので32節ホーム神戸戦の最終局面での攻撃参加とカウンターでの失点(実質オフサイド)、それにまつわる独断行動の是非に言及しないわけにはいかないのですが、まああれは失敗でしたね。あの失点がなければ勝ち点1を積み上げられた可能性は高かったので、結果的に浦和は3位になっていたのではないでしょうか。ただその逆で西川のセーブで拾ってる勝ち点は1どころじゃないと思うので、勝ち点1差の4位を西川のあのプレーの責任にするのは難しいと思いますけど。個人的にはあの時あの瞬間はまだリーグ優勝の可能性があったので、首位相手に勝ち点3を目指すプレーとしては理解できました。正直、リスクがあるといってもあんな風になるとは考えにくいですし。とはいえ西川としても僕としても、「リーグ戦は取りこぼさない者が勝つ戦いである」という認識が甘かったんだなと思い知らされたプレーになったと思います。あそこで西川が上がっていくのはどっちかというとカップ戦ムーブだし、それを上記のように受け入れれた僕もカップ戦のノリであの試合を観ていたし、そもそも伝統的に浦和レッズさんはカップ戦のノリでリーグ優勝しようとしている節があるよねと言われると、正直僕自身も反論できません。</p> <p>さて年齢的はもう引退がちらついてもおかしくないし、引退するなら最後は大分でプレーするのが美しいのではないですかというのは誰もがうっすらと考えることですが、ベストイレブンを受賞されてしまえば文句のつけようもありません。来季も当然のごとく西川がゴール前に君臨することになるのかなと予想します。来季全試合に出場すれば現在588で歴代5位となっているJ1通算出場記録をさらに伸ばし、590の阿部ちゃん、593の中澤佑二を超え歴代3位の622試合出場に到達します。もし来季終了時点でこの622に近い数字まで出場記録を伸ばすことができていれば、翌2025シーズンには歴代2位かつ歴代GK最多631試合出場の楢崎正剛に挑む、まさに歴代最高GKの称号に手が届くところまで到達することになります。</p> <h5 id="2-酒井宏樹">2 酒井宏樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230834.png" border="0" title="" width="1053" height="538" loading="lazy" /></p> <p>全身のあらゆる部位を破壊されながらもキャプテンとして闘い続け、今季は公式戦36試合に出場し<span style="color: #000000;">2,817分</span>プレー。最終的にはルヴァンカップ決勝直後の11月6日に右膝半月板損傷により手術・長期離脱となってしまいましたが、出場試合数・プレータイムともに昨季よりも微増となりました。僕が勝手に名付けたビッグゲームジャンキー(通称BGJ)の異名通り大ケガをしていようとも「俺は今なんだよ」の咆哮で重要なゲームに無理やり出てくる姿は浦和レッズファンにとってはもはやお馴染みとなってしまいましたが、今年もその傾向は変わらず。もうこのスタイルでやれるところまでやり切るんでしょうね。</p> <p>彼のプロフットボーラーとしての美学はそれでよいとして(リスペクトします)、試合に出る以上はそのパフォーマンスと機能性で評価しないと気が済まないのが当チラ裏です。今季も酒井はビルドアップにはあまり関わらず早い段階で高い位置を取るポジショニングをシーズンを通じて取っていましたが、これはあまり効果的ではなかったと思います。環境やら背景やら何もかもが違うレフポズナンと比べても仕方ないのかもしれませんが、スコルジャ監督がポーランドで展開していたサッカーではSBははじめ低い位置でボール回しに加わり、相手のブロックを左右に揺さぶりつつ背後を狙う基盤となる役割が課されていました。この点浦和では酒井がそういった細かい仕事を担わないために他の選手がその分の仕事を引き受けるという状況が慢性的に発生しており、その代わりに高い位置をはじめからとる酒井が崩しの局面でそういったコストがペイするほどの違いを見せていたかというと評価が難しいパフォーマンスだったなという印象でした。例えば酒井を前に置く代わりに最終ラインのビルドアップに敦樹が参加し、ゴール前でのクオリティに限らずチームのダイナミズムを体現するような特徴を持った選手を自ら後ろに残すというのが定番化した現象でしたが、これはリソース活用という意味でどうだったのかなと思います。ここ数年同じことを言っていますが強いチームのSBはビルドアップの局面と崩しの局面で二種類の仕事をこなせる例が多く、それゆえにボール保持の安定と枚数をかけた最終局面の迫力を発揮できるというのがキーポイントだと思いますので、いかに競り合いの強みや前方が開けたときの迫力があると言えども酒井の担う機能の少なさはどうしても気になるポイントでした。昨年も指摘した守備の粘り気の無さというかヤバかったらぶっ飛ばせばいい的な対応はともかくとしても、攻撃面で酒井を活かすために誰かが死ぬという構造と今後も付き合い続けると思うと悩ましいところです。</p> <p>とはいえ、リーグが終了しふたを開けてみればリーグ優秀賞を受賞したうえにベストイレブン投票では57票でベストイレブンに選出された4人に次ぐDF5位を記録。ベストイレブン投票はJ1の選手・監督による投票ですから、現場の感覚としては今季大活躍を見せた並みいる名手と比べても印象的な存在ということなのでしょう。正直なんでこんなに得票数が多いのかわからないのですが、ピッチに立った人間にしかわからない凄みがいろいろとあるのかもしれません。実際に浦和のチーム内のコメントをみていてもロッカールームやピッチ上での雰囲気を作る部分で絶対的な信頼を得ていることが伺えますし、それは数多の経験を重ねた大御所選手だからこその強みだと言えます。そもそも戦術的な機能性は編成上の制約や監督の設計との相性によるものもありますし、監督が変わる来季はまた別の役割が与えられて彼の良さがうまく表現されるかもしれません。今季で言えば<a href="https://youtu.be/imDOBItCxVo?si=ipN4xPAVCczuGixc&amp;t=300" target="_blank" rel="noopener">11節のホーム広島戦でのゴール</a>のように、ピンポイントで発揮される質の高さは持ち合わせていますので、彼の今できるプレーとピッチ上の役割やそのカバーリングが上手く噛み合うことを祈ります。まずはゆっくり休んでください。</p> <h5 id="3-伊藤敦樹">3 伊藤敦樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230853.png" border="0" title="" width="1053" height="531" loading="lazy" /></p> <p>日本代表にも選出され、日本トッププレーヤーの一人として飛躍の年となった今季はリーグ戦33試合2,713分を含む公式戦52試合3,950分の出場。将来が期待される若手の主力という立ち位置から脱皮し、チームのパフォーマンスを目に見えて変えることができるキープレーヤーとして中盤に君臨しました。特に日本代表に初選出される直前の5月31日第11節ホーム広島戦なんかは圧巻の出来で、代表候補のライバル川村拓夢との熱いマッチアップは今季のリーグ全体のハイライトの一つに数えられるのではないでしょうか。</p> <p>これまでも何度か言及してきた通り敦樹の本質的な強みは球際の質にあり、単純な競り合いにおける身体の強さだけでなく高いボールコントロール技術を持ち合わせることでオンザボールのプレーに非常に安定感があるのがユニークネスです。この強みは日本代表に選出されて以来さらに磨きがかかったというか一段上のレベルに達した印象で、相手と対峙した状況、時には複数人に囲まれている状況であっても相手の出方を観察しながらプレーする余裕すら感じられました。こうした余裕は日本代表に初選出された後から特に感じたので、文字通り一段上のレベルを体感したことが要因になっているのではないかと思います。</p> <p>というわけでJリーグレベルではオンザボールにおける心技体を全て持ち合わせる存在となった敦樹ですが、細かい部分では課題が浮かび上がったシーズンでもありました。まずはかねてからずっと指摘されている(というか僕がずっと言っている)オフザボールのポジショニング。特にチームの中の役割を果たすために最初に取った立ち位置をボールの位置と局面の展開に合わせて修正する、いわゆるリポジションの精度と頻度はまだまだ改善余地があると思います。スコルジャ監督がそういう方針だったのもあってチャンネルランからゴール前の局面に顔を出し直接得点に絡んでいくプレーは今季とてもよく見えるようになり、ダイナミックな攻撃への関わりは彼の特徴の一つと呼ばれましたが、その一つ前、二つ前の作りで相手の守備組織を攻撃したり前線の選手の動きを促すようなプレーはできていなかったと思います。まあこの点は酒井が特殊な役割を担っていて敦樹の仕事に影響があったり、主に岩尾と組んだボランチ二人の仕事の分担みたいなところもあったとは思うので、どこまでを敦樹の責任とするかは難しいところでもありますが。</p> <p>さて、一時期はこのオフに海外移籍もあるのではという雰囲気でしたが、終盤は怪我が治りきらず万全とはとても言えないコンディションでプレーしていたこともありとりあえず今冬は残留の方向。コンディションや体力面で問題なければ、そしてオンザボールにまつわる局面であれば心技体のほとんどでJ1トップレベルとなっている存在なので、来季もプレーしてくれるのであれば浦和にとっては心強い限りです。そもそも彼の強みは海外の主要リーグの主力選手はみんな強みとしていそうなものなので、そういう意味でももう少しフットボール選手として総合力をつけてから欧州シーンに殴り込むというのもありかもしれません。それと、オフに一般の方との入籍を発表。おめでとう。</p> <h5 id="4-岩波拓也">4 岩波拓也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230913.png" border="0" title="" width="1057" height="538" loading="lazy" /></p> <p>今季はプレシーズンに海外移籍を模索したものの実現せずキャンプ途中でチームに合流する予想外のスタート。昨年犬飼が補強されたことに加えて今季はマリウスが補強されるなど、ショレの相方のCB枠はフットボール本部の重点課題となっていたのは明らかでしたし、岩波が一番自身の評価の変化を感じていたかもしれません。年齢的にも新しいチャレンジをするための時間が限られてくる頃ですし、海外移籍の画策というのは理解できます。とはいえ結局それが実現せずに実質構想外の立場からシーズンをスタートするのは非常に難しかっただろうなと思います。</p> <p>今季はカップ戦を中心に公式戦22試合に出場。ただしプレータイムは1,463分のみと、これまで主力として4,000分前後プレーしていたことを踏まえれば激減。年齢的にも老け込むには早いので、来季に向けて移籍を模索するのも当然でしょう。パフォーマンスは良くも悪くも岩波だなあという感じで、ビルドアップにおける縦パス、得意の対角フィード、守備においてはシュートブロックのセンスなどは今季出場した試合でも強みとして発揮されていたと思います。ただ対角フィードは今季加入したオギがその可能性を感じられていなかったりしてもったいないシーンもありました。このあたりは岩波自身のプレータイムが多くなかったことで連携が上手くいかなかったかもしれません。</p> <p>いろいろと選択肢はあったようですが結果的には古巣の神戸に戻ることに。神戸は来季ACLEを戦うので、岩波の豊富なアジアでの経験は十分に活かされるものと思います。チームとしても堅く守って前線につけるというやり方が明確ですし、岩波にとってはキックの的が上質なのでやりがいがあるのではないでしょうか。最高のディフェンダーと評価できるわけではありませんが、岩波が所属した2018年~2023年シーズンの6年間は浦和レッズにとって激動の時代であり、監督もプレーモデルも毎年変わるような状況の中で数多くの試合に出場した貢献は非常に大きく、浦和の最終ラインの一時代を担った選手であることは間違いありません。神戸でもがんばれ。</p> <h5 id="5-マリウスホイブラーテン">5 マリウス・ホイブラーテン</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230924.png" border="0" title="" width="1058" height="527" loading="lazy" /></p> <p>今季加入したノルウェー人CBは気品ある風貌には似つかわしくないハードワークでショレと共にチームの圧倒的大黒柱として君臨。全公式戦合計で4,660分のプレータイムは堂々のチームNo.1で、まさに絶対に欠かせない選手として1年間を走り切りました。左利きのCBとしてボール保持面の重要性をよく指摘される印象なのですが、個人的にはマリウスは岩波と同じく最後の砦タイプのディフェンダーだと思っていて、特にエリア内の本当にヤバい局面をなんとかする能力が非常に高かったと思います。相手のシュートをギリギリのスライディングで処理するプレーに何度救われたことか。ショレと共にカバーできる範囲が広い上に自分のエリアに入ってきた相手アタッカーに完全に置いていかれるシーンが少なく、表でも裏でもクリーンかつタイトな寄せで相手の選択肢を奪う技術も高かったです。ただマリウスの今季のパフォーマンスで最も凄かったのは日本サッカー・アジアサッカーへの適応の早さで、3月の時点でもうすでにショレ・マリウスのコンビは盤石でした。CBなので他のポジションよりは対応が容易だったのかもしれませんが、すばしっこいアタッカーの多いJリーグは他リーグとは結構勝手が違ったと思います。夏場は流石に顔がげっそりしていましたし疲れているなあと感じましたが、最後までよくやりきってくれました。</p> <p>逆にボール保持の面では思ったより運んでくれないなというシーンがシーズン終盤に近づくにつれてちらほら。また利き足の問題なのかなんなのか左SBへ渡すパスをすごく出しにくそうにしていて、結果的にマリウスを捨てられるとその先がなくなってしまい早い段階でビルドアップが詰まる場面も。近い距離のパス交換でも一列前の選手がパスを受ける準備が出来ている場面で「もっと寄ってこい!」というジェスチャーを出していたり、西川に戻すパスも右足の方に蹴ってしまったりと細かいところでスムーズにいかないね?という印象もありました。この点で岩尾なり敦樹の最終ラインへ降りるプレーを最も必要としていたのは実はマリウスだったよねという感じもあって、今季の浦和のビルドアップが右に多少偏った原因の一端となってしまったのかなという気もします。対角に蹴っ飛ばすフィードは得意そうでしたが、序盤の神戸戦のような素晴らしいキックの本数が多かったかというとそこまででもなかったですし。前所属のボデ/グリムトではビルドアップに優れたディフェンダーだがパワーや対人対応に難ありという評価だったと思いますが、この辺りはリーグの特性との相対評価で考えるべきなんだろうなと思います。要は相手にパワー系が多ければそういう評価になるし、技術面での要求が比較的高いJでは選手の違う側面が強調されるというか。</p> <p>とはいえ守備者としての実力はリーグ内で一段抜けていることは今季のベストイレブンに選出されたことでも明らか。来季指揮をとるヘグモ監督は今季よりもオープンな展開を意図的に作り出すような雰囲気を感じますし、リスクをとって攻撃的にプレーするにあたって同胞CBへの信頼と期待は極めて大きいでしょう。CWC期間中に息子さんも産まれたとのことで、家族パワーで来季も頑張ってほしいところですが、今季これだけ出場していれば勤続疲労も大きいと思いますので、大怪我だけはしないようにお願いします。</p> <h5 id="6-馬渡和彰">6 馬渡和彰</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235832.png" border="0" title="" width="1057" height="419" loading="lazy" /></p> <p>彼のキャリアでは珍しく2期連続で同じチームに在籍したものの、ほとんど出場機会には恵まれずにシーズン終了となってしまいました。攻撃的な選手だけあって、オフェンス時に特に内側でプレーするときのゴール前に関わる迫力や積極性が彼の武器だったと思いますが、それ以上にビルドアップや守備面での貢献が限定的だったことが立場を難しくしたのかもしれません。同ポジションの酒井との競争という意味でそのようなプレー選択になっていたのかもしれませんが、実際のところ立ち位置の取り方はともかく相手を動かしたり賢く振る舞うというよりはゴール前に関わっていく感じのプレーが多かった印象で、そうなると怪我をしている酒井と比べてもスケール感やチームでの存在感という意味で差を明確にしてしまったようにも感じます。もうちょっと違うアプローチが出来ていればよかった気もしますが、まあもともとあまり起用に振る舞う選手ではないような気もします。</p> <p>浦和では期待されたほどのパフォーマンスを残すことが出来ませんでしたが、僕の印象としてはやはりフィジカル面・メンタル面で主力を張るほどのものを見せられなかった選手なのかなと思います。特に膝の状態はあまりよくなかったみたいですし、そうして出場機会が限られると、平たく言えばモチベーションの面で難しいこともあったでしょう。リカルドのサッカーとの親和性云々というよりも、攻撃的な選択肢の多い選手として高く期待されていただけに、見ている方ももどかしい2年間でした。WBであればもっと大胆に起用されたのかなという気もします。</p> <p>で、来季は松本山雅に完全移籍し、再びJ3からの成り上りをスタートさせるとのこと。これまでの実績で言えば超主力級の扱いをされるでしょうから、試合に関わる中でフィジカル面のコンディションが向上して本来のパフォーマンスを取り戻すことを期待しています。</p> <h5 id="7-安部裕葵">7 安部裕葵</h5> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">♦️Welcome to URAWA REDS♦️<br /><br />安部裕葵選手(24歳)がFCバルセロナ アトレティック(スペイン)より完全移籍で加入することで合意いたしました。<br /><br />♦️詳しくはこちら<a href="https://t.co/rQOKpoO8Nv">https://t.co/rQOKpoO8Nv</a><a href="https://twitter.com/hashtag/%E5%AE%89%E9%83%A8%E8%A3%95%E8%91%B5?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#安部裕葵</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/urawareds?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#urawareds</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%B5%A6%E5%92%8C%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%BA?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#浦和レッズ</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/WeareREDS?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#WeareREDS</a> <a href="https://t.co/u6GPt3UHe5">pic.twitter.com/u6GPt3UHe5</a></p> — 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) <a href="https://twitter.com/REDSOFFICIAL/status/1675686207613980672?ref_src=twsrc%5Etfw">2023年7月3日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p>サッカーD.B.さんのデータは少なくとも公式戦ベンチ入りを1試合はしないと生成されないので、ありません。全選手振り返りも3年目ですが、ベンチ入り1試合もなしで振り返りを書くのはこれが初めてのような気がします。ユース卒の福島竜弥や控えGKでもベンチ入りはあったと思うので、そう考えるとこれまでの浦和レッズさんは選手想いのチームなのかもしれません。</p> <p>高卒で鹿島入りしデビュー後に大きく活躍、ACL制覇・CWC出場を10代で経験しバルサBに入団したところまでは良かったですが、2020年2月に右腿腱断裂、復帰直後の2020年11月に右腿筋肉の怪我、さらに2020年12月に同箇所再受傷。時間をかけて治すも2021年8月に違和感で離脱、2022年2月に右ハムストリングの手術…と腱断裂でバランスが狂ったのを長い間戻せておらず、そのまま流れ着いて浦和レッズに加入という経緯。これが懸念で浦和加入後も試合の準備が整っていないのではないかと思いますが、流石に獲得リスクが大きかったよねという印象です。万全とは言わないまでも怪我を気にせずにプレーできる水準まで戻せれば違いを見せてくれる選手だとは思いますが、結局今季も出場なしでは厳しいところ。来季は2020年2月以来実に4年ぶりのベストコンディションを目指すシーズンとなりそうです。4−2−3−1であれば2列目、4−3−3であればIHもしくはWGでプレーできる選手なので、来年の5月、6月くらいまでにハマってきてくれればいいのですが。</p> <p>ピッチ上では活躍なしに終わった今季ですが、浦和レッズつらい界隈では「ひろきち」というリアルではつけられたことが無いであろうクソダサニックネームと共に躍動してくれました。写真に映るたびに顔が違く見えることを100倍くらい拡大解釈されて毎回大畑と間違われたり、歳もポジションも近い佳穂を煽り倒していそうという生意気っぽい雰囲気のみからきた妄想小ネタを大量生産されたりと本人にはとても見せられない内容ばかりですが、僕たちは面白かったのでOKです。怪我続きとはいえ日本人サッカー選手としては普通に1ランク上の選手だし普通に活躍を期待しているので、来季こそプレーを見せてください。</p> <h5 id="8-小泉佳穂">8 小泉佳穂</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230942.png" border="0" title="" width="1054" height="536" loading="lazy" /></p> <p>今季は試合数が多い分だけ多くの選手に印象深いストーリーがあったシーズンでしたが、その中でも個人的には最も浮き沈みが激しく、濃厚なストーリーの中で成長したなと思うのが佳穂です。公式戦47試合出場、合計プレータイム2,969分は今季のチームでは大して多いわけではないのですが、担っていた役割やピッチ上に及ぼす定性的な貢献度はチーム随一の高さだったと思います。開幕2試合は前向きのプレスを強調しまくった結果バランスがとれずに難しかったですが、その後は周囲とのバランスも見ながら、ブロックが潰れないように佳穂がこまめにそして深く押し上げることでボール非保持の局面でも相手と主導権を駆け引きすることができましたし、前向きに相手に圧をかける守備を最も意図的に実践していたのは佳穂だったなと思います。相手に外されないスピードで徐々に間合いを詰めながら苦しい選択を迫るプレッシングは他の選手にも今すぐ真似してほしい立派な技術だと思います。</p> <p>一方で、ACL決勝の少し前から陥っていたボール保持面での不振はかなり厳しいものがありました。ボールを受けに下がるプレーはリカルドが4-2-3-1↔︎4-3-3の可変を行う上でIH化する佳穂の強みとして重宝していましたが、今季は下がりながら受ける局面やバックパスの場面でミスを連発し即死級のカウンターを何度も招くことに。ボールを扱う技術が生命線である選手がいきなり下手になるとは思えないので、この時期はメンタル的に難しかったのだろうなと思います。僕は「その方向」に発破をかけていた側のファンなのでアレですが、僕が使ってきた言葉で言えば「主人公」を目指す自覚みたいなものに潰されかかっていたんでしょうね。プレシーズンのインタビューでも「今季はゴールを狙う」と強調してましたし、僕たちがいうまでもなく「守備と繋ぎはめっちゃ上手いんだからあとは決定的な仕事を」という言葉は四方八方から投げつけられていたでしょう。全体像をしっかりと把握し論理的に思考を積み上げられる賢い選手なので、本人もこうした期待には大きめの自覚があるようでした。そういうところは大好きなのですが、現実に出せる結果と理想の乖離やACL決勝に向けて高まりまくるプレッシャーのなかでバランスが難しかったのかなと想像します。</p> <p>ここでスコルジャ監督が諦めず、休養を取らせながらチームにうまくチームに戻したのは過密日程を戦うチームにとっても佳穂のキャリアにとっても素晴らしい判断でした。復活後の佳穂は「まずはできることをやる」という趣旨のコメントを多く残すようになり、個人の出来よりもチームのパフォーマンスにいかに貢献するかだけを考えるようにしたようでした。それによってまずは守備の部分でチームを助け、チームからの信頼と自信を取り戻す過程でオンザボールの質も戻っていくという好循環。確かに得点・アシストにおいてはこれまでとそう変わらない数字にしかなっていませんが、定性的な見方をすればシーズン終盤はレッズのフィールドプレーヤーのなかで最も安定感のあるプレーを見せていたと思いますし、何より彼なりのスタイルでチームに貢献し、トップレベルの相手に立ち向かえるという自信がついたように思います。文脈や展開を客観的に捉え、的確なことを言っていたCWCアル・アハリ戦後のコメントなんかを見てもそうした自信を感じますし、本当はこういうことが最初から見えていたし発言できたのに、ピッチ上のプレーや自らの選手としての格が足りない自覚があったことで自分らしいことを言えていなかったのかなとも思いました。苦しいこともあったシーズンだとは思いますが、最後にメンタル面で一皮剥けて、「押しも押されぬ浦和レッズの主軸」感のある選手になってくれたことは非常に嬉しい成長の一つでした。いつの間にかレッズサポーターに対しても遠慮みたいなものがなくなって、大きな舞台に怖いとか緊張するようなことも言わなくなりましたし。</p> <p>とは言え来季は来季の戦いをせねばならんということで、来季どうなるかは不透明です。戦術的要素の強い選手なのでまずはヘグモ新監督の打ち出す方向性を確認しなければなりませんが、4-3-3でプレーするならIHが主戦場になるでしょうか。来季もまた得点など目に見える結果を求められることは間違いないですが、今季の人間的成長を通じて一度クリアに失敗した課題に今度はどのように取り組んでくれるのか期待して見守りたいと思います。</p> <h5 id="9-ブライアンリンセン">9 ブライアン・リンセン</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226230953.png" border="0" title="" width="1052" height="529" loading="lazy" /></p> <p>公式戦37試合に出場と、出オチからスタートした昨季に比べれば登場機会が多くあったシーズンでした。ただプレータイムは試合数ほど伸びず、全試合を合計しても1,519分と主力とは言い難い結果に。開幕戦はスタメンだったのですが、1トップとしてボールを上手く収めることが出来ずに出入りの激しいゲーム展開を招いてしまい、そこに代わった興梠が上手くボールを落ち着かせたことで速攻で序列が入れ替わってしまったのはかなり切ない筋書きでした。試合数がかなり多く2列目にいろいろな選手を起用したことや1トップ頼みでは得点が伸びなかったこともあって左SHで使われたりもしましたが、サイドで1on1を打開するタイプでないのは明らかですし、逆サイドのクロスに入ってきてほしいという戦術的な意図がピッチ上で発現したのは何回だったかという感じで機能せず。プレッシングに強みがある選手という設定になっていますが、本来のポジションでなければモチベーション的にも難しいのかなと思ってしまう試合もありました。</p> <p>とはいえACL2023-24アウェーハノイ戦で見せたゴールのように、鋭く入ってくるクロスを狭いスペースでしっかり合わせる技術や一瞬の動き出しは日本人選手にはなかなかない技術と感覚の良さを感じさせますし、特にオープン気味な展開や相手のマークや目線が自分に集中しない状況であればもっとシュート機会を多く作り出せるだろうと思います。オランダでどういう風に得点を稼いできたか正直よく知らないんですが、2トップで使うか両サイドが相手を崩してマークが順番にずれていくような局面で真価を発揮する選手なのでしょう。そういう意味では今季のサッカーは結果的に「マークが厳しくてもワンチャンなんとかしてくれ」というサッカーになってしまったので、そういう部分の相性も良くなかった気がします。決定力がものすごい選手というわけでもなく、重要なシュートを外してしまうことも多かったですし。使いどころが難しいだけでも外国人選手としては不利なのに、圧倒的な違いを出しにくいというのではなかなかプレータイムが伸びないのも致し方ないかもしれません。そういう意味では、どこかでギリギリのシュートをねじ込むとかしっかりPKを貰うとか、誰にでもわかりやすい結果を連続して出せる時期があるとよかったのですが、怪我もあったようですし運もなかったですね。</p> <p>契約はあと一年、来季も残留見込みということで引き続き個人的には強く期待するのですが、構造的には簡単に大活躍とはいかない雰囲気。スコルジャ・レッズのサッカーよりは明らかにゴールに近いところでの崩しやゴール期待値の高いパスが出てきそうな感じなんで、本人はやりやすいと思うのですが、「上手いけど爆発してくれる感じでもないし絶対的な信頼感はない」というチーム内外での評価を覆すにはやっぱり固め取りが必要になるんじゃないかと思います。来季こそ兄貴のオフ・ザ・ボールでJ1を骨抜きにしてほしい。</p> <h5 id="10-ダビドモーベルグ">10 ダビド・モーベルグ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231211/20231211235858.png" border="0" title="" width="1058" height="366" loading="lazy" /></p> <p>圧倒的クネクネ度のドリブル突破もなりを潜め、最後は消え入るようにギリシャへ期限付き移籍してしまったもうやんですが、やっぱりコロナやなんやらで体調を崩してしまった影響なんでしょうか。怪我ではなかったと思いますが明らかにキレを失っていましたし、ピッチ上で監督の指示を無視して交代させられる姿はなかなかに切ないものがありました。只野想像ですけど、うまくプレーできないストレスがたまっていたのかもしれません。</p> <p>結局移籍先のアリス・テッサロニキでも全く活躍できず、今後は母国クラブに戻る方針の模様。冷たい言い方をすれば素早く損切りしたクラブの判断は正しかったわけですが、サポーター人気も高かった選手なので一抹の寂しさがあります。上手くいかないときに家族と過ごせることは特にヨーロッパの人にとっては大きいでしょうから、うまく復活できるといいのですが。またどこかで会いたい選手です。</p> <h5 id="10-中島翔哉">10 中島翔哉</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226231020.png" border="0" title="" width="1056" height="473" loading="lazy" /></p> <p>まさかの移籍加入でドメサカ界隈を沸かせた生粋のファンタジスタ。移籍がこじれて出場機会を得られていない状況だったので獲得自体は比較的容易だったのだと思いますが、値札が凄い選手なので一体いくらかけたのかお母さん心配です。その辺はポルティモネンセのスポンサーでもあり浦和加入時にも当然のように一緒に写真に納まっていたセレモニーの会長・社長あたりが噛んでるのかもしれませんけど。</p> <p>ベストコンディションとは言えない状況で合流してきているのでそもそもパフォーマンスに大きな期待をしていたわけではないですが、守備的な戦術で戦うしかなかったチーム状況を考慮しても十分なインパクトを残せたとは言えませんでした。ガンバ戦で削られて怪我をしてしまったりと不運もありましたが、格の違いを見せるようなプレーがあったかと言えば別になかったかなと思います。トップ下がもっとオフェンス面で違いを見せて欲しいというのはチームの総意だったと思いますが、日本代表の10番をつけていたころの異次元のキレとキック技術を期待するのはさすがに厳しいのではという印象でした。リーグ最終節札幌戦で初ゴールを決めたのは明るいニュースになりましたが、それでもまだ「これがあの中島翔哉か…!」というプレーは出ていませんし、例えばあと半年一年あればそれが出るのかと言うと…ちょっと疑問。</p> <p>さらに追い打ちをかけるのは監督交代によるシステム変更で、4-3-3で戦う来季はWGもしくはIHでプレーすることが濃厚。WGでプレーするには全盛期のキレが必要でしょうし、IHでプレーするならビルドアップへの関りや守備の負担など考えることが多くなりそうで、トップ下で異次元の技術を見せてくれればよいというオーダーとは役割が違ってきます。敦樹は鉄板として相方には佳穂や関根などいわゆる「わかってる」タイプが使われそうな雰囲気もあるなか、大原で楽しくボール蹴ってるマンからどのような形で脱却し10番ここにありを見せてくれるのか。加入後半年はまだいいとしても一年経っても強みを見せきれていないとなると去就が怪しくなってくるので、来季の前半戦は本人にとってかなり重要になるのではと思います。</p> <h5 id="11-ホセカンテ">11 ホセ・カンテ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20231226/20231226231034.png" border="0" title="" width="1048" height="532" loading="lazy" /></p> <p>退場→主審と握手、何の脈絡のないスーパーゴール、率直で落ち着いた大人のコメント、クセの強い顔芸と幅広い魅力を僕たちに見せつけてくれたストライカー。3月加入で45試合の出場は結構な稼働率ではないでしょうか。チームトップの14ゴールは攻め手を見つけるのに苦労したチームを大きく助けました。プレータイムが2,438分と決して多くはない中で残したことも価値が高く、90分あたりに直すと0.516点と2試合に1点ペースで得点を重ねたことになります(ちなみに、リーグ戦だけに限って言えば0.55点とさらに少しだけ成績が良くなります)。長い手足を使った懐の深いプレーが特徴で、ボールタッチは別に繊細でもなんでもないんですが、なんやかんやでボールキープは結構できていたと思います。ビジョンも広めに持てており、ボールを収めたらワイドの選手をシンプルに使おうとする傾向もありました。ただなによりもシュートのフィーリングが最大の特徴で、特にゴールエリア少し外からのシュートの感覚はこれまでなかなか見たことがないレベル。高さ・幅・ゴールマウスと自分の角度関係を捉えるのが上手いんだと思いますが、右でも左でもゴール幅を広く使ったシュートを撃てるのが大きな強みだったと思います。ユンカーと違って細かいステップでどうこうというのはないのですが、足元に入ったボールもうまくインパクトできるのは凄かったです。</p> <p>ただワントップの選手としてはいかんせん空中戦が強くないというか、あまり好きではないようで頑張りに欠けていた印象。落下点に入るのも全然上手くなかったので、単純に蹴っても何も起きない感じでした。例えば大迫が得意にしているバックヘッドで後ろの選手に流すとか、全部の競り合いに勝つわけじゃなくてもちょっとした工夫ができると選手としてもう一段上がった気もします。でもそこまで出来たらアジアには来なかったかも。観ていた感じ、本当はトップ下でプレーするのが好きなタイプだったかもしれません。ハイボールを収められる選手がトップにいると、その一列後ろで常に前向きにプレーすることで価値が最大化される感じがします。もしくはWGに置いて気づいたら中央に入ってきているような運用もよかったかも。浦和ではそこまで柔軟な起用は出来ませんでしたが、守備でもプレッシングに体力を使ってくれましたしゴールも決めてくれたので十分獲得したかいがあったと思います。</p> <p>誰がどう見ても危険なタイミングで足裏を見せるとか挑発されたら割と素直に喧嘩を買ってしまうとか、危なっかしいところもありましたが全体的には人間性も良く日本にもすんなり馴染んでいたようでしたので、今季限りの引退は非常に残念。ギニア代表にも選出されていながらの引退は早すぎるような気もしますが、ずっと外国でプレーしていたので息子との時間のために引退するというのは説得力がありました。将来はコーチというより代理人業とかをやってそうなので、またどこかで浦和と関わるかもなと思っています。まずは家族の時間を楽しんでください。</p> <p> </p> <p>(中)に続く。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2024%2F02%2F21%2F213512" title="2023シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2024/02/21/213512">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 【2023シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト hatenablog://entry/820878482948273492 2023-07-21T12:00:39+09:00 2023-08-06T01:11:46+09:00 今年もこの企画の季節になりました。今日から2023シーズンの第2移籍期間(夏のウインドー)ということで、僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。前置きは何も思いつかないので、さっそく行ってみましょう。 ★長倉幹樹 :ザスパクサツ群馬 ・OMF/CF/SH・1999年10月生(23→24歳)177cm/72kg・右利き www.football-lab.jp 知ってた案件?期待してたくせに。 限られた戦力であってもチームワークと粘り強い戦術遂行によって期待以上の成果を上げている今季の群馬ですが、その群馬にあって出色のパフォーマンスと重要度を誇っているのがこの長倉です。浦和ユー… <p>今年もこの企画の季節になりました。今日から2023シーズンの第2移籍期間(夏のウインドー)ということで、僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。前置きは何も思いつかないので、さっそく行ってみましょう。</p> <p> </p> <h5 id="長倉幹樹-ザスパクサツ群馬-OMFCFSH1999年10月生2324歳177cm72kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">★長倉幹樹 :ザスパクサツ群馬 ・OMF/CF/SH・1999年10月生(23→24歳)177cm/72kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="長倉幹樹 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1632774%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1632774/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>知ってた案件?期待してたくせに。</p> <p>限られた戦力であってもチームワークと粘り強い戦術遂行によって期待以上の成果を上げている今季の群馬ですが、その群馬にあって出色のパフォーマンスと重要度を誇っているのがこの長倉です。浦和ユースから順天堂大学卒業後、Jクラブ入りが叶わず2022年に関東一部リーグ東京ユナイテッドFCに加入。同クラブで半年間プレーすると、昨季大槻監督から引き抜かれる形で群馬に加入。昨季は後半戦6試合で2得点と結果を残し、ノンプロからやってきた助っ人の活躍はちょっとした話題になりました。</p> <p>そして今季、長倉は大槻ザスパにとっては替えの利かないエース級の存在感を見せています。今季の群馬は4-4-2をベースに保持・非保持それぞれで多少変形しながらプレーするのが基本的な戦術となっていますが、特にボール保持では長倉の存在がチームのパフォーマンスに大きな影響を与えています。基本ポジションは4-4-2の左トップで、チームが3-4-2-1に変形すると左シャドーのような立ち位置に。群馬は左SBの中塩を起点に左でボールをキープすることが多いのですが、相手ボランチの左脇に降りてきてボールを引き出し、高いキープ力で全体が前進する時間を作るプレーができるのはチームで長倉だけ。さらに長倉の場合そこからターンして独力で盤面をひっくり返し、一気に相手ゴールになだれ込むような局面を作れるのが強く、彼がいるかいないかで群馬の相手エリア内への侵入回数は大きく変わっているはずです。</p> <p>彼のプレーで最も特徴的なのは種類が豊富なターンの技術で、特にバイタルエリア付近で見せる股抜きターンは初見殺しのシグネチャームーブ。ほかにもトラップで回転をかけつつ先にボールを逃がしながら反転・加速したり、スペースがない中でも身体の下にボールを収めてターンしたりと、身体ごと潰されなければ高確率でボールを収め、前に進めてくれる便利な選手です。J2でもめちゃくちゃ上手い選手が普通にプレーしている昨今のJリーグですが、彼のようにいろんな種類のターンを平然と繰り出せる選手はあまり多くないと思います。で、これは個人的な想像なのですが、なぜこうしたプレーができるかというと、たぶん彼は全力でプレーをしていないのだと思います。正確に言うと、自分のプレースピードを意識的にコントロールしているのではないかと。保持でも非保持でもそうなのですが、彼のプレーを見るとジョグが非常に多くて、普段の姿にはキレをあまり感じません。ただ必要な局面、特に相手をうまく外せた瞬間やプレスがはまりそうな瞬間にぐいっと加速して、しかもそれが結構速い。40%⇒100%の出力を無段階で変速するような感じで加速するのですが、その使いどころは意識的に選んでいるのではないかと感じます。とはいえプレスバックも含めて運動量も多く、守備での貢献が大きいのもプラスポイント。まとめると、ターンの技術とスピードコントロールの巧みさ+運動量という武器の持ち合わせ方が彼のユニークネスかと思います。</p> <p>ちなみに、シーズン序盤は中盤に降りるだけでなく相手の左SBの裏へ抜け出しロングボールを引き出すようなプレーも多かったのですが、リーグが進むにつれて群馬のビルドアップ手法が研究・対策されてしまったこともあるのか、最近の試合では中盤に降りる頻度と深さが増している印象。このあたりの裏抜けと中盤落ちの頻度やバランスはチームが変わればまた調整されるとは思いますが、もう少しバイタルエリア近くの仕事に集中させることができればわかりやすい数字ももう少し出せそうです。</p> <p>大きな課題としては最近怪我なのかコンディションなのか稼働率に問題を抱えていることで、ここ1,2カ月はいたりいなかったりの状況。群馬としては彼がいないとできないプレーが多くなってしまうのでなるべく使いたいでしょうが、長期離脱となるのも怖いので歯がゆいでしょうね。対戦相手としてはまず抑えるべき選手なので、最近はマンマーク気味に降りるプレーを監視されていたりと厳しいアプローチが増えているというのも一因かもしれません。またターンしてオープンな状況を作り出した後にラストパスなのかシュートなのか、決定的なプレーを完成させる部分のクオリティも、特に上のステージでプレーするなら課題になるかなと思います。このエントリ時点での今季の公式戦の成績は19試合1658分出場で4ゴール。戦術兵器と言えるほど群馬にとって重要な存在なのに、数字上はそこそこの選手という感じです。</p> <p>全体的な印象としては、この夏というよりも今季Jリーガーとしてフルシーズン戦ってみて、その評価でステップアップするのが妥当でしょうか。J1の真ん中以上のクラブでもロールプレーヤーとして十分活躍できると思いますので、大怪我がなければ未来は明るそうです。イメージとしてはセレッソの加藤陸次樹みたいな感じの活躍ができるのではないかと思います。で、レッズへの移籍はどうなんだということですが、貴重なHG対象選手というのが一つポイントです。彩艶と敦樹の海外移籍なんかがあると2024年シーズンに4名必要なHG枠対象選手がひっ迫してしまう(関根、荻原、堀内、早川くんでギリギリ+レンタル組の去就次第)ので、そういう意味でのボーナスポイントもついた獲得というのはあるかもしれません。ただここ最近のフットボール本部の動きをみると、日本人選手は相当の実績(日本代表級)を持った選手を獲得していく方針があるようなので、実績という意味では厳しいところ。編成の全体的な動きの中で優先度が敏感に上下しそうな感じがします。個人的にはこういう選手は手元に置いて損しないと思うので、是非獲得してほしいですが、この夏に動くと群馬がめちゃくちゃに厳しくなるので冬がいいです。</p> <h5 id="藤本一輝-大分トリニータ-WGSHWB1998年7月生2425歳180cm70kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">★藤本一輝 :大分トリニータ ・WG/SH/WB・1998年7月生(24→25歳)180cm/70kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="藤本一輝 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1630138%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1630138/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>今季J2で観た中では、長倉を除けば最も何かを感じたアタッカー。主戦場は4-4-2でいえば左SH、大分のフォーメーションではたまに3-4-2-1の左シャドーでもプレーしていると思います。最大の特徴は左サイドのペナ角付近で繰り出せるアタックの多彩さで、外に張って1on1は朝飯前、内側を取ってターンもできるし、近くの選手とのワンツー・コンビネーションも問題なし、さらには縦にえぐってクロスだけでなく中央に侵入して強烈なミドルありとまさになんでもあり。Football LABのドリブルチャンスポイントは堂々の19/20で、まさに今季のJ2最強ドリブラーの一人と言っていいでしょう。左サイドで攻撃的なプレーであれば本当に何でもできるので、2列目の選手がゴールへ向かう迫力を高めていきたい浦和にとっては気になる存在ではないかと思います。また日本のアタッカー/ドリブラーには珍しい180cmの高身長も大きなポイント。ヘディングがめちゃくちゃ強いというわけではないですが身体は分厚いですし、逆サイドからのクロスに対してゴール前に飛び込んでいくプレーも見せており、スコルジャ監督の下で総合力の高いアタッカーとして育てていく価値がありそうな選手です。浦和に所属した高身長ドリブラーと言えば永井雄一郎や原口元気、汰木康也なんかがいますが、攻撃的なプレーのイメージは浦和時代の元気に近いかもしれません。</p> <p>キャリアは鳥栖のU-15⇒U-18昇格を蹴って藤枝明誠高校⇒鹿屋体育大学。大学時代には<a href="https://youtu.be/3PLzPAlj5So?t=63">天皇杯で名古屋相手に強烈なシュートをぶち込み</a>勝利するなどプロ相手への結果も残しており、プロ入りにあたっては鳥栖からの出戻りオファーも含めた争奪戦だったとのこと。大学3年生の2020年から大分の特別指定選手としてプレーしており、大分では4シーズン目。クラブの昇格有無もキャリアには影響するでしょうが、昨季・今季と出している結果、見せているプレーからしてもそろそろステップアップを意識する頃かなと思います。もともとはトップでプレーしていたみたいですが、この先のキャリアを考えたら左SHを極めていくのが最も到達点が高くなりそうです。見ている感じ、攻撃に関しては裏抜けが多くないくらい(本人も認めるように足元でもらうのが大好き)しか気になるポイントがないですね。</p> <blockquote> <p>「リハビリ中は自分の身体をより自由に思いのまま動かせるように、コーディネーション系のトレーニングを集中してやりました」。その結果、復帰後はより自分の意図する身体操作ができるようになり、ドリブルのキレも増した。同時に復帰後、チームのフォーメーションが4-4-2から3-4-2-1に変わり、藤本は2トップの一角から2シャドーの一角にポジションチェンジしたことも大きかった。</p> <p>「1列下がったことで、新しい自分が見つかりました。FWも全然問題なくやれていたのですが、最前線だと『間で前向きにボールを受ける』ことがあまりないんです。僕は足もとでボールを受けてどうにかするタイプなので、間で受けるとプレーの選択肢が一気に広がるんです。細かいタッチで素早く前を向いて、ドリブルなのかパスなのか、リターンを受けにいくのか判断しやすくなる。これに気づいたことで、よりいい状態でボールを受けるために、常に周りを見ないといけないし、FWの動きを生かすためのポジショニングなどを考えるようになりました」</p> <p> FWで足もとにボールを受けるシチュエーションはどうしても後ろ向きだったり、DFに寄せられている状況が多い。そうなるとトラップをしてから前を向かねばならなかったり、ドリブルで剥がさないといけないシチュエーションが多くなる。だが、シャドーをやることで相手のディフェンスラインと中盤の間で前向きにボールを受けることができる。視野を確保した状態でボールを受ければ、彼ほどの一瞬のスピードと技術を持った選手であれば、選択肢がいくらでも湧いてくる。</p> <p>「分かりやすく言うと、『後出しジャンケン』ができるようになったんです。相手が近づいてきたらシンプルに叩いてまたもらい直せばいいし、相手が来なかったらドリブルで運んで、アクションをさせてその裏を取る。もちろんそれまでも駆け引きはしていたし、相手を見てやってはいたのですが、FWの時は対峙する相手しか見ていなかった。シャドーになって対峙する相手だけではなく、その背後やそばにいる2人目、3人目の選手がどう動いて、何を警戒しているのかが見えるようになったんです。そうなるとプレーの選択肢の幅も判断力も磨かれて行くのが分かるし、どんどん自分の引き出しが増えて行く感覚になるんです。」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="J1数クラブが争奪戦を繰り広げた大学サッカー界屈指の点取り屋、鹿屋体育大・藤本一輝が大分入団内定を掴むまで | サッカーダイジェストWeb" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.soccerdigestweb.com%2Fnews%2Fdetail%2Fid%3D75266" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=75266">www.soccerdigestweb.com</a></cite></p> </blockquote> <p>では課題は何かというと、守備とスタミナかもしれません。前に出ていくプレスは積極的ですが4-4-2ブロックの一角として埋める、ズレる、パスコースを消す、目の前の相手を止めるといったプレーで目を見張るものはなく、特に今の浦和でプレーさせるのであれば最初は穴をあけがちになりそう。大分でも相手のSBやCBにプレスをかけて前に出るもののそのまま3トップのような立ち位置にとどまって背中を使われるシーンが散見されます。ただ逆に言えばそれはアタッカーとして彼がどこでパワーを使うべきかという判断に基づいたものでしょうし、大分でチームから要求されるプレーが浦和とは違うのは当然なので、この点だけを切り取って神経質になる必要はなさそう。むしろかつての汰木がそうだったように、近年の浦和がサイドアタッカーに求める高くて幅広い攻守の要求をこなせるようになることで総合力の高いアタッカーとしてレベルアップする伸びしろとして捉えてもよいのではないかと思います。</p> <p>というわけで、個人的にはこの夏に狙ってみてほしい選手の一番手がこの藤本一輝です。本物が帰ってこないなら和製原口元気にロマンを託しましょう、西野さん。</p> <h5 id="島村拓弥-ロアッソ熊本-SHOMF1999年3月生24歳170cm59kg左利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">島村拓弥 :ロアッソ熊本 ・SH/OMF・1999年3月生(24歳)170cm/59kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="島村拓弥 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1607206%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1607206/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>昨年ほど熊本の試合を観ることは多くないのですが、あれだけ選手を抜かれても(抜かれたからこそ?)また面白い選手が出てくるのが近年のロアッソの充実度、そして大木監督の指導の面白さを示しているのではないでしょうか。熊本の王様・平川怜やU-17の大砲・道脇豊、左利きの右WB大本祐規など面白い選手はたくさんいますが、個人的にビビッときたのはこの島村です。</p> <p>岡山県生まれで京都のU-18からトップ昇格し、岐阜やブラジル、セレッソU-23へのレンタル修行を敢行。しかし芽が出ずに2021年にFC今治へ完全移籍。J3での戦いぶりが認められ今季から熊本に完全移籍。今季すでに22試合に出場しており、杉山が抜けた3-3-1-3の3トップの右での出場が多くなっています。</p> <p>プレー面の特徴は、左利きのドリブル+パス+オフザボール。特にオフザボールのランニングの回数が多く、ボールプレーヤーですがオフザボールでもピッチ上の局面を動かせるのが面白いです。熊本自体が流動的というか、多少ポジションを捨ててでも局面を動かすようなプレーを許容するチームなので、こうした点が島村の特徴にはまったのかもしれません。試合を観ていると中央はもちろん動き出しの流れのまま左サイドでプレーするシーンもあったりします。オンザボールではシーズン序盤はドリブラーだなあという印象でしたが、ここ最近は引いて受けてターンから鋭い縦パスやスルーパスを前線に刺すことも多く、ちょっとプレーが変わってきているかも。わりと厳しめのコースに刺していく攻めのパスが多いのですが、ボールを受ける⇒ターンする/ドリブルで相手を外す⇒縦に刺すまでのテンポが良く、いつ周りの状況を把握しているのか映像だけではよくわからないこともあります。ドリブルはどちらかというとぬるぬる系で小さいフェイントを入れながら相手の足を止めてズレたところを抜いていくのが多く、右サイドの深いところでポケットに侵入していくのが得意な感じ。当然縦から右足でもアシストをつけています。藤本一輝に比べれば万能アタッカーの色が強いですね。</p> <p>これだけ面白い選手がなぜ京都であまり評価されなかったのか、当時のことはよくわかりませんが、今季の活躍はさらなるステップアップを可能にするレベル。攻守にわたってよく走りボールに食らいついていく選手ですし、左利きですがボディバランスが崩れている感じもなくボールを受ける場所によってできないことがあるタイプとも思えないので、「みんなで頑張る」系のチームが攻撃のアクセントを求めて狙うというストーリーがありそうです。ただ前述の通りポジションに縛らずに流動的に走り回らせるほうが気持ちよくプレーできるタイプっぽいので、ポジショナルなやり方を意識しているチームだと彼の良さを活かしきれないかも。それと、たくさん走るが故か体力的な交代が多いと思うので、90分を任せられる選手にはまだなっていないというのもポイントでしょうか。</p> <p>もしも浦和でみることがあるなら右SHでの起用になりそう。いきなりOKBを脅かす選手になるとは思わないですが、OKBのステップアップということがあるならば後任候補としては面白そう。当然、ボール非保持時の振る舞いには入念な仕込みが必要になるでしょうが、オンザボールでもオフザボールでも局面を動かしてくれる選手は貴重だし、前線を縦横無尽に動きながらプレーするアタッカーはスコルジャ監督も好きそうです。最近のJリーグではかなり珍しいクリクリの坊主頭が完全に似合っているので、ビジュアルは絶対にこのままでお願いします。いい選手です。</p> <h5 id="榎本啓吾-藤枝MYFC-WBSH1999年9月生2324歳165cm62kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">榎本啓吾 :藤枝MYFC ・WB/SH・1999年9月生(23→24歳)165cm/62kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="榎本啓吾 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1636234%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1636234/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>今季初めてのJ2リーグを戦う藤枝MYFCの左の翼。藤枝では右WBの<a href="https://www.football-lab.jp/player/1634324/">久保藤次郎</a>のほうが数字的にインパクトのある活躍(今季既に5ゴール8アシスト、ちなみに榎本は2ゴール3アシスト)をしているので注目されていると思います(実際凄いです)が、個人的には試合を観ていて榎本の良さが印象に残ることが多かったのと、久保は名古屋の下部組織出身で名古屋ならWBでそのまま起用可能なため<a href="https://hochi.news/articles/20230720-OHT1T51280.html">どうせ狙ってる</a>と思うので僕としては榎本の方をチョイス。</p> <p>藤枝はクラブ一丸となって自分たちのスタイル構築にこだわっており、基本的には前に前に繋いで攻め込んでいくサッカーを志向しており、特にポジティブトランジションではガンガン相手陣地に雪崩れ込んでいくバイブス強めのサッカーをしています。そんな藤枝のサッカーにあって、榎本は3-4-2-1の左WBが定位置ですが、攻撃時にはほぼ左WG/左SHのような役割でプレーしています。特徴は一言でいえば和製相馬勇紀で、かわいい顔してカットインからパンチのあるキックをぶち込めるのが最大の魅力です。相手陣地でのオンザボールの第一選択肢はほぼ全て"勝負"なので、彼のプレーには百戦錬磨の勝負おじさんたちもにっこり。トップスピードがどうかはよくわかりませんが、加速は間違いなく速いので相手を押し込んだ後の狭い局面でも活躍できそうなのもよいところです。ミドルシュートを積極的に狙う選手で、特にカットインからファーに巻いたシュートはパワーもコントロールも魅力的。本家相馬のように右サイドに回されたりSBまがいのことをやらされたりしても大丈夫かというとそれはない感じですが、少なくとも左WG/SH/WBでのプレーは大丈夫でしょう。藤枝のサッカーはどうしても出入りが多くなり慌ただしいのですが、そんな中で自陣に戻り速攻に加わりと元気に走り回っている選手なので、強度や理不尽を求められる環境でも結構走ってくれそうな気がします。</p> <p>千葉出身でキャリアはジェフU-15⇒U-18⇒東海学園大⇒藤枝。この活躍を見るとジェフサポの皆さん的には帰ってきてくれ!となってそうですが、J1及びJ2上位クラブはしっかり彼のことを見つけていると思うので、夏はともかく今季オフのステップアップの可能性は高いんじゃないかと思います。こういうタイプは控えでもベンチに置いておけば短時間で何か起こしてくれるかも的な考え方ができるので、どういうチームでないと…ということはないですが、イメージしやすいのはやはり3バックを採用するクラブでしょうか。札幌なんかは間違いなく好きなタイプでしょうし、柏好文に「全部突破してくれ」とはさすがに頼みづらくなってきた広島も面白いかもしれません。浦和で彼を見ることがあれば左SHということになりますが、そうなった場合は最近内側で技術を活かす道を見出しつつある関根とは違うタイプの選手として使い分けられることになりそう。走力+突破+ミドルシュートにステータス極振りしてる感じの選手なので、システムである程度助けてあげる必要があるとは思いますが、ハイライト映えする選手でもあると思うので意外とスルスルっとステップアップするかもなと思ったり。最近はカットインをあからさまに切られており苦戦しているシーンも見られますが、ハマったらえぐい系なので、藤枝のようにデメリットを飲み込みつつもうまく活かせるチームで観てみたいです。</p> <h5 id="高橋勇利也-ザスパクサツ群馬-DMFCBSB1999年3月生2425歳181cm72kg左利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">高橋勇利也 :ザスパクサツ群馬 ・DMF/CB/SB・1999年3月生(24→25歳)181cm/72kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="高橋勇利也 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1632246%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1632246/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>敷島にすい星のごとく現れたロマンの塊。このエントリを書いている時点で、今季のスタメン・フル出場は直近の4試合のみ。甲府戦では左CBでの出場でしたが、その前の3試合にボランチとして出場し、ボランチとしてはそれが唯一のキャリアです。それでいてすでに2得点。まさに大槻監督による魔改造がバチバチにハマったと言えます。</p> <p>本職は左SBで、大卒3年目。ファジアーノ岡山U-15⇒東北高校(仙台)⇒神奈川大学というちょっと不思議なキャリアで、群馬に新卒加入するも2021シーズンは9試合、2022シーズンは4試合出場とリーグ戦ではほぼプレーできず、大槻監督就任以来の群馬のゲームは7割以上チェックしている僕もよく知らない選手でした。プレー面の特徴は左利きを活かしたビルドアップが得意なバックスという感じで、出場機会が伸びなかったのはおそらく対人守備や背後への対応、クロス対応あたりに問題があったのでしょう。プロ選手としては線も細いですし、スピードがあるという印象もないので、強度の部分に不安があって使われなかったのだと思います。群馬には今季同じタイプの中塩が加入して登録上左SB⇒可変して3バックの左でビルドアップ係を担っていますが、高橋としてはこの役割が一番やりたい形だったかも。特徴が似ていることに加えてキャリアで勝り、大槻監督が育成時代からよく知る中塩との競争は彼にとって少し厳しかったのかもしれません。</p> <p>しかし!この選手をボランチで使うとどうでしょう!夢に次ぐ夢、とめどなくあふれるロマン!これが夢にまで見た左利き大型ボランチか…と全国中盤真ん中愛好会では話題持ち切りとなりました。スピードや強度の不足は自陣低い位置に引き込んでブロックを張る群馬ではうまく隠せる種類の欠点となりますし、それよりもビルドアップでボールを逃がせる技術の高さが目立ちます。本当にこれまでタッチライン際でプレーしていたのかと疑わしいくらい背後からのプレッシャー感知もよくできていますし、周囲の状況認知にも問題はありません。さらに彼の魅力はよくわからない攻撃参加センスで、ボールを捌いた後にゴール前に飛び込んでいくダイナミックさを見せたかと思えば点を取って帰ってくる。この目に見えるロマン、これこそがこの企画に必要なものです。というわけで実績は0に近いのですが勢いだけでここに選出しておきます。</p> <p>ちなみに、謎の攻撃参加はボランチとしての経験があまりない故に自分が出て行った背後が怖いという感覚が単に薄いだけかもしれません。周囲と協力すればなんとかなりますが、個人で相手からボールを引きはがすような球際の強さも今のところ見られません。とはいえ左利き高身長で技術のあるボランチという属性は非常にユニークですし、さらに後ろのほうで繋いでいるだけでなく前に出て得点に絡めるというのは利き足に関わらず貴重な特徴です。身体なんて今からでもなんとかなるでしょうし、プレー強度はステージとともに基準が上がれば問題なし。となればここは大槻監督の夢見たロマンを引き継ぎ、浦和レッズが責任を持ってこの改造を成功させるしかないのではないでしょうか。</p> <p>まじめな話、大槻監督は今季天笠泰輝をボランチにコンバートして起用してきたように、バイタルより前でフィニッシュに関われる中盤中央というのを模索してきたように感じます。たしかに群馬の試合を観ていてゴール前に絡める迫力あるボランチは欲しいよね、という感覚は僕にもありましたので、このチャレンジには非常に納得感があります。また今季の群馬は右ボランチに左利きを用意することでボール保持の安定を狙っている節もあり、そういう意味での抜擢だったのかもしれません。さすがに3試合2ゴールと結果が出ているのはビギナーズラック的な何かを感じてしまいますが、これまで堅いチーム作りで結果を出してきたもののシーズンが進む中で戦術も読まれ、対策を上回っていく起爆剤が必要なステージに差し掛かっていましたから、高橋のボランチ起用がハマれば群馬のチームとしてのスケールがもう一段大きくなるのではという期待感もあり、今後に注目しています。浦和としても、敦樹が海外に移籍するのはもはやタイミングの問題。大型でボールスキルに優れたBtoBタイプのCHというのは探しても簡単に見つかるものではないので、単純に考えれば外国籍選手の補強というのが手っ取り早いのですが、高橋のような国産ロマンをリストに載せておくのもいいんじゃないかと思います。敦樹と同学年ながら現時点でのキャリアの差は歴然としていますし、もしかしたらそのうちすい星のごとく消えていくかもしれませんけど。</p> <h5 id="東俊希サンフレッチェ広島-WBSHCH2000年7月生2223歳180cm69kg左利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">東俊希:サンフレッチェ広島 ・WB/SH/CH・2000年7月生(22→23歳)180cm/69kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="東俊希 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1618152%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1618152/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>ときめき、それは人の意外な一面を見たときに感じるもの。今季のJ1でときめいた選手と言えば東です。</p> <p>サンフレッチェ広島ユースから昇格5年目の生え抜きで、U-15からU-22まで歴代の世代別日本代表の常連でもあるエリート。もうすぐ23歳で大卒一年目相当の選手ですが既にJ1通算100試合をゆうに達成しており、僕がよく使う基準で言えば次は海外に行くべきレベルのキャリアです。とはいえ、正直言うと僕はあまり彼のプレーがものすごいとかユニークだと思ったことはあまりなくて、クロスが武器で技術はあるけど単騎突破はあまり心配しなくてよいタイプの左サイド、くらいのイメージしかありませんでした。</p> <p>それが今季J1第5節のvs柏戦、マジで驚きました。CHでプレーしてる。そして面白い。もともとキックの種類が多い選手でストレート系のボールも巻いたボールもふわっとしたボールも繰り出せるのですが、特に中盤の真ん中からふわっとした浮き球を前線の裏に落とすプレーを観ていると柏木陽介的なセンスを感じます。狭いところでつけるパスも次のプレーをイメージしながらスムーズに出来ているし、意外性のある攻めたパスが出せて判断も速い。サイドの選手なので真ん中ではターンがどうかなと思うところですが、それも柏戦ではあまり問題にならず、むしろ身体をぶつけられてもボールを隠しながら無理やりターン出来ているシーンもあり、あまり気にしていませんでしたが180cmのサイズがある良さというのも発揮できていたのではないかと思います。左利きらしく逆足でのプレーはあまり回数も精度もありませんが、左足のタッチは変幻自在で足裏、アウトサイドなんでもあり。またボール保持時、特にポジティブトランジションで空いたスペースに入り込んでいくポジショニングはセンス抜群。もともとサイドでも逆サイドまでよく狙ってクロスを供給する選手でしたので、中央でも視野の広さと深さを活かせるのかなあと思わせます。とにかく、左WBとしてピッチの端っこにいるよりも魅力的でユニークな選手に映りました。調べたら昨年からCHで起用されるようになったらしいのですが、全然知りませんでした。</p> <p>ただ残念なことに今季CHとしての出場はそこまで多くないようで、件の柏戦に続く第6節鹿島戦の後半途中まで、その後少し開いて第12節の福岡戦の後半から、続く第13節の神戸戦の前半、さらに開いて第20節の鹿島戦のみとなっているようです(雑な調べ方をしているのでもしかしたらもう少しあるかもしれませんが)。おそらくこれは広島のスカッド事情と東自身の真ん中の選手としての課題の両方が要因で、そもそも広島には川村、野津田の左利きコンビ、松本泰志に加えて大卒ルーキーの山崎大地も中盤で起用されることがあるということで、中盤中央に使える選択肢がかなり多いというのがあります。左利きCHという属性は本来レアなはずなんですが、川村と野津田を擁する広島は贅沢です。彼らを差し置いて中央の経験が少ない東を使うかというと…みたいな感じかもしれません。加えて、広島は対戦相手によってなのか実験なのかいろいろとフォーメーションを変えてプレーするし、そもそも左WBで東より良い選択肢を見つけきれていないという事情もあるかもしれません。</p> <p>東自身の、中央の選手としての課題としてはやはり非保持時のポジショニングがあると思います。ボール保持時のポジショニングと表裏一体の部分があるとは思いますが、無意識っぽくボールに吸い寄せられて局面に食いついていく傾向が強く、特にバイタルを埋める意識は希薄に映ります。まあチームのやり方やその時のボール周辺の状況もあるのですべてダメというわけではないですが、やはり最終ラインの前を盛大に空けたまま放置する傾向があるのは、特に僕が今季の浦和を見ているからかもしれませんがちょっとそわそわします。まあサイドが本職の選手をわざわざ捕まえて中央で埋めるスペースを埋めていないと細かいことを言うのは野暮な気がしますけど。魅力的ならそれでいいんですよ。やってりゃ慣れるだろうし。</p> <p>プレー以外の面では、世代別代表経験も多く10代からJ1での経験を積んでいることからもわかるように物怖じしないメンタリティは強みの一つ。色々見ていると結構強気な発言があったりプレー選択も強気なので、そういう感じなのかなと思います。ただ昨季の7月に<a href="https://www.soccer-king.jp/news/japan/jl/20230221/1740549.html">左下腿コンパートメント症候群と診断され、筋肉壊死の可能性すらあった大怪我から7ヵ月かけて戦線復帰してきた</a>苦労もしているということで、怪我でキャリアにはダメージがあったでしょうがいろんな意味での経験値は積んでいます。そんなわけで、これからいろんなバランスがとれてきて大人になったらもう一段グッと伸びるみたいなことも期待できそうかなあと思ったりします。</p> <p>というわけで、ルーキーイヤーからFKのキッカーを任される左足のキック精度、バリエーション豊かな左足のタッチ、ボールに関わるポジショニングに加えて180cmのサイズもあるということで、左サイドの選手としてよりもCHとしての東にユニークネスを感じています。尖った攻撃センスのある中央の選手として、なんならノリ重視でIHとかトップ下でもいいと思うので、どんな選手になれるのか見せて欲しい、そんな意味での選出でした。広島の生え抜きですし別に移籍してほしいとかそういうわけではないですが、一つだけ言わせてもらうと<a href="https://news.yahoo.co.jp/articles/a73005ffd3e7cea26c34ffbf69b7abf6080faed2">大原サッカー場は比較的通いやすい</a>ですよ。</p> <h5 id="西久保駿介-ジェフユナイテッド千葉-SB2003年7月生1920歳178cm67kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;">西久保駿介 :ジェフユナイテッド千葉 ・SB・2003年7月生(19→20歳)178cm/67kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="西久保駿介 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1636240%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1636240/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>まだ前のやつが治ってないのに強行出場して新しい怪我をするビッグゲームジャンキー酒井、左サイドから連れてこられた北関東たち、なぜか評価の低い馬渡、どこまで信用していいかわからない帰ってきたランニングマンを使いまわす今季の浦和レッズの右SB事情ですが、今の選手たちもいいけど来期以降はちょっと新たな可能性を見てみたいと思っているファンは多いことでしょう。</p> <p>ということで右SBは誰かいるかなかといろいろ考えながら今季のJリーグをウォッチしていたのですが、ここではジェフの身体能力お化けをチョイスします。実際のところ、J1・J2を見渡してもユニークな特徴・魅力があって年齢的にも将来性のある右SBというのはそこまで多くありません。経験がものをいうからでしょうか。そりゃいい選手はたくさんいるんですが、じゃあ川崎の山根選手を獲得しようといっても、リアリティというか、ちょうどよく夢見られそうな感じがないじゃないですか。この企画には「そう言われるとなんか獲得したいかも」と思えるラインの現実感が必要なんです。そこで西久保です。</p> <p>西久保は川口市出身で三菱養和⇒ジェフという選手経歴。特徴は何と言ってもスペシャルな身体能力で、走力と跳躍力は特に魅力的。特にヘディングがめっちゃ強く、空中でリアルに停止するタイプのジャンプを見せてくれます。またロングスローが投げられるので、ジェフサポはよく西久保が投げたロングスローを西久保にヘディングしてほしいと夢見ているそうです。残念ながらその夢はかないませんが、言っていることはわかります。SBとしてのプレーはわりとスタンダードで、大外の上下動がメイン。クロスはワイドオープンからアーリー気味に入れる種類のものが多く、千葉のやり方なのか本人の好みなのか深い位置をえぐってのマイナスのクロスはあまり見ないかも。キック精度は若干安定感に欠けますが、うまくミートした時にはかなりいいボールが入ってくる印象。一人で対面の相手を外すキレはあまりないですが、相手陣地ペナ角付近まで毎度毎度詰めてくるタイプの走力は持っているので一生右サイドを上下動をさせるキャンプ用品的なハードユースで彼の特徴を活かしていきたいところ。</p> <p>SBの跳ね返す力、1on1での対応力なんかはスコルジャ体制になって浦和では非常に重視されているところなので、西久保のようなフィジカルと将来性のあるタイプは浦和にとって面白い存在になるのではないでしょうか。「上手くなれ」と「高く跳べるようになれ」でいけば「高く跳べるようになれ」のほうが難しそうなので、高く跳べる人を上手くするというアプローチがあってもいいかなと思います。ロングスローも今の浦和にはない武器ですし、酒井や明本といった良いお手本がいるうちに若手SBを獲得してトップレベルのなんたるやを見せておくのは悪くないのではないかも。ただ浦和レッズさんとしては同世代に下部組織出身で現在明治大学一年、西久保と同じく3月のU-20日本代表トレーニングキャンプにも召集されている稲垣くんがいることも忘れるわけにはいかないので、そのあたりは考えどころになりますけど。何でもできる選手ではないですが、特徴があって面白い選手なのでしっかりキャリアを積んで上に上がってきてほしい選手です。</p> <h5 id="須貝英大ヴァンフォーレ甲府-SB1998年10月生2425歳172cm67kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;"> ★須貝英大:ヴァンフォーレ甲府 ・SB・1998年10月生(24→25歳)172cm/67kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="須貝英大 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1630225%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1630225/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>近年グローバルレベルで最も大きな課題となっているのはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰及び世界的なインフレ、半導体不足、そして雑に使い倒せるSB人材の欠乏であるというのは小学校レベルの常識ですが、その一つはこの須貝英大が解決できる可能性があります。</p> <p>明治大学からヴァンフォーレ甲府に加入し3年目。10月生まれなので今年で25歳になりますが、昨季までに2年間で公式戦68試合出場で6得点、今季もこのエントリを書いている時点では公式戦全試合にスタメン出場し26試合出場3得点と今季中の公式戦100試合・10ゴール達成を目前としています。浦和ファンにとって比較しやすいのは同じく大卒SBの宇賀神友弥で、彼の浦和時代の成績が12年間で361試合出場・24ゴール。ウガくらいの稼働率でウガよりも1.5倍得点能力が高いSBと思えばおおよそ間違いではないと思います。SBだけでなくWBとしての実戦経験も十分にあるのも似ていますね。</p> <p>須貝のプレー面での特徴は上下動を連発でき対人にも強いタフネスはもちろんのこと、両サイドでプレーできる点にあるかと思います。オンザボールで圧倒的に違いを作れるタイプではないですが、ある程度のスペースがあれば両サイドで縦突破を図ることができるので見ていて気持ちの良い選手です。ゲーム中の選手交代に合わせてサイドを変えてプレーすることも多く、甲府の監督としては須貝が両サイドでプレーできることで試合中のサイドの味変を容易にしたり編成上の歪さを吸収させたりと采配の幅が広がっているはずです。今季のプレーを全て観たわけではないのですが、感覚的には左サイドでプレーするときはアタッカーのような位置を取りつつ逆サイドからのクロスに飛び込むためゴール前に飛び込むような意識が、右サイドでプレーするときはよりSB的に内側と外側を使い分けた上下動からのクロスの意識が高いように感じます。ただ、チーム事情や戦術によっては右サイドの低い位置に残って3バックの一角としてビルドアップに参加するパターンがあり、その場合は大きな違いを見せられていない印象。なんでもやってくれる選手だとは思いますが、やっぱり一番の魅力は後ろから空いたスペースに突撃させることだと思うので、J1でプレーしてもらうのであれば戦術的なタスクを山盛りにするのは良くなさそうではあります。</p> <p>ピッチ上のプレー以外の面では、彼のキャプテンシーを語らずにはいられません。以下の記事に詳しく語られていますが、自分にも周囲にも厳しく、普段の振る舞いからチームを引っ張る人間性タイプのキャプテンで、甲府でも試合の状況に応じて身体を投げ出し周囲を鼓舞するなど、まさに「責任」という言葉がぴったりの選手です。</p> <blockquote> <p>「基準づくりは高校生からずっと意識してやっている。周りに指示するためには自分がしっかりやらないといけないし、自分ができていなかったら説得力もなく、みんなもついてこないと思う。自分はどちらかというと、熱くなってチームのボルテージを上げるタイプではない。やるべきことをやってチーム内での基準をつくり、みんなを正しい方向に引っ張っていくというキャプテン像」</p> <p>(中略)</p> <p> 2021シーズン、ヴァンフォーレ甲府でプロサッカー選手としてのキャリアをスタートする。将来、もしキャプテンを頼まれたとしたら?という問いに須貝はこう答えた。</p> <p>「やりたい。他の人にしてくださいとは言わないと思う。もし、やってくれと言われたら、任される以上は自分もやりたいし、チームに貢献したいという強い気持ちもある」</p> <p> 悩むことなく即答した本人から強い意思を感じた。高校時代から時に厳しくチームメイトを鍛え上げ、その厳しさを自らにも与えることでさらに成長し、明治大では強いプレッシャーをはねのけてタレント軍団をまとめ上げた須貝のキャプテンシーは、誰も疑う余地がない。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【インタビュー】「ヒデにならついていく」…タレント軍団・明治大をまとめた甲府内定DF須貝英大、浜松開誠館高時代から続けた主将としての心構え" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fjoy-soccer.com%2Fspecial-hidehiro-sugai-20210110%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://joy-soccer.com/special-hidehiro-sugai-20210110/">joy-soccer.com</a></cite></p> </blockquote> <p>世代的には佐藤亮、森下龍矢、中村帆高、安部柊斗、瀬古樹ら選手の質が非常に高かった世代の一つ下で、同期に小柏剛、常本佳吾、坂本亘基、佐藤凌我、蓮川壮大ら。明治大学サッカー部主将の系譜で行くと俺たちの柴戸⇒俺たちの岩武⇒俺たちの佐藤亮⇒須貝と続きます。もう決まりでしょう。獲得です。とはいえ、大学4年次に他クラブからのオファーもある中で地元山梨を選んだ熱い選手なので、タイミングを考えずにオファーしても移籍は実現しないはず。今季の甲府には十分昇格の可能性がありますし、さらにはACLもあるとなると、夏の移籍はないとして冬ですらステップアップは甲府の状況次第かも。</p> <p>プレースタイル、責任感あふれる人間性、両サイドで使える便利さ、どれをとってもぜひぜひ浦和の男に仕立て上げたい逸材です。甲府の皆さんから愛されまくってるのは知ってますが、君には浦和レッズでJの頂点、アジアの頂点、そして世界に挑むという選択肢もあります。ご検討のほどよろしくお願い致します。</p> <h5 id="安藤智哉大分トリニータ-CB1999年1月生2425歳190cm84kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; background-color: #ffffff;"> 安藤智哉:大分トリニータ ・CB・1999年1月生(24→25歳)190cm/84kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="安藤智哉 2023 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1632199%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1632199/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>圧倒的な肉感、それが長らく日本サッカー界に欠けていたものでした。190cm/84kgのダイナマイトボディにふてぶてほしいプレーの所作、安藤智哉なら日本サッカーに長らく欠けていた圧倒的肉感を補完できるかもしれません。</p> <p>2021年にFC今治でデビューし、昨季はJ3ベストイレブンを受賞。今季から大分トリニータでプレーする成り上がり株です。当然大きな魅力は体格を活かしたパワフルなディフェンス・空中戦なのですが、ボール保持でもオンザボールのプレーを怖がっていない点が特徴的。フィジカル+ボール保持で言えば山形→鳥栖にステップアップした山崎浩介に以前注目しましたが、安藤は山崎の特徴をさらに尖らせた感じと言えるかもしれません。さらに言えばセットプレーではクロスに高い打点で合わせるダンプカーヘッド・ボムを繰り出すなど攻撃面での迫力も魅力。</p> <p>今季は開幕前から注目度が高く、大分関係の記事でも期待されていたのですが、開幕戦で先発したあと数試合は出場なし。経験不足を懸念されたのかと思いましたが、どうやら怪我だったようです。最近は安定してピッチに立っており、下平監督もチームの柱として期待・信頼をしている様子。</p> <p>一方で、今後J1で闘うことを考えた時に不安要素になりそうなのはクイックネス。まっすぐ走るのは速いと思うんですが、方向転換は苦手そう。前に出て一発で外されたり、予想外のプレーをされると即無力化されてしまう傾向があり、テクニカルなドリブラーへの対応がどうかは気になるところ。この辺りは守備者としての経験値みたいなものも関係していそうです。またボール保持を怖がってる感じはしないのですが、パススピードがあまり速くないのと前にスペースがあっても運んだり対面の相手を寄せたりしようとする意識があまり見えないのもプレーするチームによっては重たい課題となるかもしれません。</p> <p>地元は愛知県で岡崎城西高校⇒愛知学院大学と一貫して県内でプレーしており、もしかしたら地元愛が強いタイプかもしれません。タイプ的にも名古屋グランパスさんが気にかけていそうな選手かなと思います。でも名古屋は吉田麻也も気になるでしょうし、名古屋のフロントは悩ましいところかもしれません。もういっそ両方行っちゃえば、という感じもしますけど。闘莉王2世として育ててもいいし、育てるのが面倒くさくなったら肉壁として最前線に置いておくのもいいかもしれません。ボスからの攻撃を全部受け止めてくれそうなので、その間に強力な魔法をぶち込みましょう。夢とロマン、ポテンシャルは計り知れないので、浦和どうこうに関係なく今後が気になる選手です。</p> <p> </p> <p>ということで、今回は9選手を選んでみました。夏、そしてリーグ後半戦を踏まえた冬の移籍市場で彼らのキャリアがどうなっていくのか、今後も見守っていきたいと思います。ちなみにいつか「気になる選手」たちのその後をまとめてみたいなあと思っているので、その話もいつか。</p> <p>それでは。</p> reds96 アルヒラル予習メモ:アジアにおける絶対強者。彼らに「思い出させる」戦いを。 hatenablog://entry/4207112889984537386 2023-04-29T10:16:04+09:00 2023-08-06T01:12:00+09:00 いよいよとなったACL2022Finalに備えて、アルヒラルの予習をしたのでメモしておくものです。 アルヒラルのサッカーの基本構造 直近の試合を文脈込みで見ておこうということで4月のリーグ戦を一応全部観ました。以下はその感想です。ただ日程が厳しいせいかラモン・ディアス監督による豪華メンバーのマネジメントか、結構試合によってメンバーが変わり、強烈な個性を持つ選手が多いゆえに起用されるメンバーによってサッカーも結構変わるので、参考程度になってしまうかもしれません。 基本フォーメーションは4バック+3トップ。中盤の3枚はたいていの場合逆三角形だが、展開によっては2ボランチに見えることも。 得意な攻撃… <p>いよいよとなったACL2022Finalに備えて、アルヒラルの予習をしたのでメモしておくものです。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20191124/20191124184833.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="アルヒラルのサッカーの基本構造">アルヒラルのサッカーの基本構造</h5> <p>直近の試合を文脈込みで見ておこうということで4月のリーグ戦を一応全部観ました。以下はその感想です。ただ日程が厳しいせいかラモン・ディアス監督による豪華メンバーのマネジメントか、結構試合によってメンバーが変わり、強烈な個性を持つ選手が多いゆえに起用されるメンバーによってサッカーも結構変わるので、参考程度になってしまうかもしれません。</p> <ul> <li>基本フォーメーションは4バック+3トップ。中盤の3枚はたいていの場合逆三角形だが、展開によっては2ボランチに見えることも。</li> <li>得意な攻撃パターンはサイドでの2on2か、トップに当ててからの中盤の選手によるエリア内突撃。特にサイドでの2on2の重視はラモン・ディアス監督の色が濃く出ているように感じる。</li> <li>強さの根本は球際の強さ。単純にぶつかり合いに強いということだけでなく、ボールを隠す技術、足先でボールをコントロールして相手のチャージを躱す技術なんかも含めて、とにかくボールをめぐる対人攻防が本当に強い。しかもほぼ全員これが強い。感覚的に、全盛期のレオシルバくらい球際が強い人が常に7人はピッチにいる。つまり、相手からは簡単にボールを奪い、逆に自分たちのボールは簡単に失わないことが彼らのサッカーの根本的な前提となっている。</li> <li>普段のリーグ戦で何が起きているかと言うと、(そもそもサウジリーグのチームは前線に強力な外国人選手を擁するチームが多く、強度的にも気候的にもプレスが得意なチームがほぼないという事情もありそうではあるものの)ヒラル相手にプレスに行っても上記の球際の強さでボールを奪えない、しかも下手に最終ラインをヒラルの前線に晒すと、ロングボールやトランジション一発で最終ラインが化け物アタッカーに晒されて瀕死のピンチに陥ってしまう、従って対戦相手は下手なことはせずラインを下げる。結果的にヒラルがボールを保持して相手を押し込む。ボールと人が敵陣に揃えば、ヒラルは得意のサイドでの2on2もエリア内突入も安定して発動することが出来る。</li> <li>加えて、ボールロスト後のカウンタープレッシングは強くチームに意識づけられており、失ったボールに中盤の選手が襲い掛かるシーンが非常に多い。結果的に一方的なハーフコートゲームを多くの試合で実現し、極めて高いボール保持率を多くの試合で記録することに。</li> <li>というわけで、アルヒラルはリスペクトされることにあまりにも慣れているチームと言える。相手が彼らをリスペクトするのはもはや彼らにとってサッカーをする上での前提とも言える。</li> <li>こうした展開が多いからか、IHの選手は中盤の選手と言うにはあまりにも攻撃的なプレーをする。どのゲームでも前方へのプレーが非常に強く、迫力がある。特に相手のビルドアップへのプレッシングを行う局面では、選手の組み合わせにもよるがトップのイガロを追い越して第一プレッシャーラインを形成し相手ボールに向かっていく。IHを務める選手によっては2枚のIHがイガロと3トップを形成しているかのようなプレッシングを行うことも。その分、両WGの選手は低めのラインで相手のサイドの選手をケアしつつIHのプレッシングを眺めて休んでいる。</li> <li>当然、その裏には弱点となる部分もある。特に前に出たがる中盤の背後のスペースは傲慢な程に空いているように見える。ただしそれはヒラルも織り込み済みで、#20チャンヒョンスを筆頭にCB陣が3バック並みの迎撃を行う。そのためラインは基本的に高め。</li> <li>このように観ていくと、中盤より前の超強力外国人選手が警戒されているものの、#20チャンヒョンスこそがこのチームの構造的な鍵を握っているように思える。フィジカルとアジリティのレベルが高く広大なエリアをカバーできる強みを活かしてスペースが空きがちな中盤の底をサポートしつつ、相手FWの裏抜け対応も請け負い、マイボールで押し込んだ状態ではアンカーと一緒にボール保持をコントロールできる#20チャンヒョンスの縁の下のユーティリティはこのチームに欠かせない。サウジ代表CB陣(サウジの吉田麻也こと#5アルブライヒ、24歳サウジ代表の次世代#4ハリーファ・アル=ドーサリ、青森山田のCBっぽい#70ジャフファリー)も強力ではあるが、#20チャンヒョンスの役割を代替するのは難しそう。</li> <li>ヒラルの失点シーンのいくつかは、こうして迎撃に出るCBが相手FWを潰すのに失敗し、その裏のスペースをさらに突かれたもの。特に#20チャンヒョンスを引き出したうえで外せれば、それは文字通り千載一遇の大チャンス。その一発は確実に決めたい。</li> <li>中盤より前の選手たちは普段前方へのプレーばかりしていればよいゲームが多く、特に試合後半はネガトラ直後のカウンタープレッシングを外されるとあとは最終ラインにお任せモードになる傾向があるものの、さすがに経験豊富な選手が多いだけあって「ここを行かれるとヤバい」というシーンでは持ち前の球際の強度で思いっきりボールホルダーを潰してくる。ということで、アルヒラルは押し込まれてブロックを組むと普通に堅い。</li> <li>単純化して言えば組織力(戦術)の浦和、個人の質のアルヒラルと言いたくなるが、正直#19カリージョや#28カンノといったサボり屋が目立つのとヒラルが前向きにプレーするのが得意すぎるだけで、サウジ代表での頑張りをみてもヒラルの選手の多くはやろうとすればちゃんとできる選手たち。特にボール保持では強度や連続性は別にして取った方が強い場所はちゃんと取ってくる。ただ相手がヒラルをリスペクトして勝手に引いていくので、特に自陣の守備なんかはあまりちゃんとやる必要がないだけにも見える。とはいえ、基本的に自分たちが勝つと思っているので、相手のことは舐めているだろうけど。</li> <li>なお、球際の強さとも関係するが、ファール数はかなり多い。ファールで試合が止まればまたセットして前向きにプレーできるので、ファールはヒラルがヒラルらしいゲームをする上で重要な要素の一つとすら言える。</li> <li>セットプレーはあまり工夫しないように思う。シンプルに質で勝負。僕が観たのがリーグ戦だからかも?ちなみに0-3で完敗したアルシャバブ戦では、エリア内へのクロスと見せかけてバイタルに転がしてミドルを撃つパターンのデザインプレーにきれいに全員外されて失点していた。浦和もナンバープレーは用意しているはずで、どんどんカードを切っていく価値があるはず。前迫さんお願いします。</li> </ul> <p> </p> <h5 id="アルヒラルの主力選手">アルヒラルの主力選手</h5> <p> まずは前線から。</p> <ul> <li>#9イガロ:特徴はビンビンの睫毛。相手を背負ってのポストプレーが強くて上手い。サウジリーグの屈曲なDFも普通に背負われて時間を作られている。あまりサイドに流れたりはしない。クロスへの反応は普通?シュートはもちろん上手いのだけど、そもそもの役割はポストプレーヤーのように感じる。もちろんチームのトップスコアラーなので重要な警戒対象なのだけど、彼の得点を警戒するというよりは、高性能の動く壁として警戒すべきな気がする。彼が時間を作ったりゴール前に構えてマークを集めていることそのものがヒラルにとっては重要なのかも。ともかくこの役割をサウジ人選手は代替できないので、彼はなるべく外したくない。仕事柄ファールされることも多いが、あまりキレたりせず相手選手とコミュニケーションをとるシーンも多く、性格が良さそう。</li> <li>#17マレガ:ビースト。身体の幅と厚みがおかしい。しかも速い。そしてポジショニングや走りこむ場所も良い。大外に張ってロングボールを引き出し起点になるだけでなく、内側に入ってのいわゆるチャンネルランも得意。とにかくこいつに走られると止められない。イガロの代わりにトップに入ったり2トップを組むこともあるようだが、どう考えても右WGでプレーされる方が嫌。普通のSBじゃ轢かれて終わる。唯一、静止から相手を外してどうこうするプレーはあまり得意でなさそうなので、スペースを消したい。ただそうするとラインを下げることになり押し込まれる。後述の右SBアブドゥルハミドとのコンビが凶悪。</li> <li>#96ミシャエウ:小柄なドリブラー。アジリティ・スピードともにハイレベル。ボールが足にくっついてる系の選手で、ギザギザに方向転換しながら相手を振り回して抜いていくのが得意。彼もまた球際の鬼で、コーナーフラッグ付近に追い込まれてもギャギャっと躱してエリア内に入り込んできたりする。マジでなかなか止まらない。両サイドでプレーできるヒラルでは数少ない選手で、ラモン・ディアス監督は好んで使っている感もある。ここ一か月過密日程だったチームで好調を維持している数少ない選手だが、浦和の選手にとってはマレガよりは対応しやすそう。ただエリア内につっかけてきてファール、PKを取れる選手としても重宝されているので、その点は注意。普通に考えてイガロとマレガが優先だが、どちらかがコンディション不良なら選ばれるか。3人目の外国人に彼がなるかというと、どうだろう。</li> <li>#10ビエット:ライン間の魔術師。両WGに加えてトップで起用される試合も。主戦場はどちらか(左が多い?)のWGだが、とはいえサイドに張っていることはほぼなく、だいたい中央に陣取ってイガロの後ろでシャドーっぽくプレーする。ライン間でボールを受けてトラップビタ止めからの素早いターンが得意技。浦和ファン的には武藤っぽい選手と言えばイメージが湧くはず。イガロに当ててエリア内に飛び込んでいくプレーが強い。狭いエリアでプレーできるので、相手がべた引きしてくる展開のゲームでは#29サーレム・アル=ドーサリと並んでヒラルの重要選手となっている。逆説的に言えば、#29サーレム・アル=ドーサリが使えるなら外国人枠の制限がある中でわざわざビエットを使うことはなさそう。</li> <li>#11アル=シェフリ:ヒラルのロマン枠。左WGかトップで起用されていることが多い気がする。184cmの高身長ながら足元でボールを受けるのが好きそうで、左WGでプレーするときは特に魅せプっぽい時がある。ただドリブルや足元の技術は普通に高い。トップでプレーしているときの方がいい選手で、際どい所に飛び込んでくる。リーグ戦では後半60分以降に上記の外国人選手との交代で登場することが多いが、枠の関係があるので決勝では左WGでのスタメンもあり得るか。</li> <li>#29サーレム・アル=ドーサリ:浦和との決勝での対戦も三度目となるヒラルのレジェンド。サウジアラビア代表の10番としても有名で、日本でもアル=ドーサリといえばこの選手を思い浮かべる人も多いはず。既に31歳になっているがトップコンディションなら動きのキレは目を見張るレベル。総合力の高いアタッカーで、特にトップの選手に一度ボールを当ててからエリア内に突っ込んでくるプレーが強力。起用されるなら左WGもしくはIHだが、左WGだとしても中盤に頻繁に降りてきてボールを一度さわり、ドリブルで少し相手を動かしながら展開orトップに当ててという感じでプレーするので、彼がやることはあまり変わらない。カウンタープレッシングの強度が高いのも需要なポイント。スペインで活躍できなかったのが不思議なレベル。2017年決勝は埼スタで退場したが、2019年の優勝で埼スタへの嫌なイメージはもはやないか。</li> </ul> <p>誰も怪我をしていないなら左から#29アル=ドーサリ、#9イガロ、#17マレガが一番厄介ではないかと思いますが、どうなるか。#17マレガが無理なら#96ミシャエウの可能性もあるかも?#11アル=シェフリも少なくとも交代でゲームに出てくるでしょうね。</p> <p> </p> <p>次に中盤。</p> <ul> <li>#19カリージョ:言わずと知れた関根の因縁の相手。髪型がずっと変わらないので見つけやすい。最近の試合は全て右IHで起用されている。前回対戦した時よりも少しからが分厚く大きく、そして重くなったかも。とはいえ重要な一瞬では持ち前の機動力と身体の強さを発揮する。そうでない場面では引いてボールを受けて、やたら浮き球でパスをしている。#28カンノもそうだが、前へのプレーはめっちゃ強いが、保持でボールに寄る以外の後ろ向きのプレーは必要な時だけという感じ。特に非保持では最前線までプレスに出るが、行ったっきりとなることも多い。セットした状態の守備でも目の前の相手はケアするが、スライドはめんどいっぽい。普通に考えて後述の#6クエジャルの方が中盤の構造・安定のために重要な選手だと思うが、この選手の場合中途半端なプレスやチャージは全て無効化してボールを前へ運べてしまうので、浦和が対処できるかどうかという意味では相変わらずきわめて厄介な選手。対浦和ということや、ヒラルが押し込む前提でラモン・ディアスがあえて彼を起用する可能性は捨てきれない。</li> <li>#6クエジャル:元コロンビア代表。イメージは赤ひげの遠藤航。主にアンカーとしてプレー。サイズはないが機動力と球際の強さ・そしてオンザボールの技術を併せ持ち、中盤の底でビルドアップなりプレスに行った選手たちの後始末なりをひたすらこなしている。ただおそらくダブルボランチの一角でプレーする方が得意で、アンカーとはいえIHたちのノリプレスについて行ってかなり高い位置まで平気で進出していくため根っからのアンカーというわけではないと思う。ヒラルの中盤の底はビルドアップがあまり上手くないサウジ人CBの介護をしつつ、前に行ったりボールに寄ったりするIHとのバランスを取る必要がある難しいポジションなので、彼はなかなか外せないんじゃないかと想像するところ。ただ前述の通り試合展開を見越してあえてカリージョを起用して、中盤の底は#8オタイフに任せてしまうという判断もあるかも。南米の選手らしく?相手を見ながらプレーできてずる賢さもあるが、わりとヒートアップしやすい性格。</li> <li>#7アル=ファラジ:左利きのプレーメーカー。この人もヒラル歴が長く、2008年からずっとヒラル所属。埼スタでも何度もプレーしており雰囲気に呑まれることはないはず。4月の試合ではベンチスタートが多かったものの、チームで最も計算できる選手の一人であるはずなので外国人枠の制限がある中ではスタメン濃厚か。ビルドアップで降りるだけでなく前に出て行ってプレーすることも出来る。#19カリージョのような理不尽な前進はないが、より組織的な規律を持ってプレーできる選手なので、見方によってはこの選手が出場している方が良いチームに見えたりする。</li> <li>#8オタイフ:#7アルファラジと並んで中盤の古株の一人。ヒラルの他の中盤の選手と比べると地味な印象だが、ボール保持を安定させるポジショニングやボールスキルは非常に巧。#7アルファラジと一緒にプレーしたときの阿吽もあるので、この二人を起用して外国人枠にカリージョを使い、浦和を殴り続ける作戦が出来るのがずるい。</li> <li>#28カンノ:サウジアラビアのポグバ。でっかくて足が長くて技術がある。プレースタイルはカリージョと似ていて前へのプレーがめっちゃ強いが自陣向きに走るのはめんどい感じ。サウジアラビア代表ではダブルボランチの一角でもプレーしていた印象が強いが、ヒラルではIH専門?ボール保持時のプレー傾向としてボールにめっちゃ寄ってくるパターンと、パラレラ的にサイドに流れて深い位置を取りに行くパターンがある。特にサイドに流れていくパターンで彼にボールが入ると簡単に奪えないので、彼を起点に押し込まれるのが面倒。ガチャっとなっても足先で繋がれて次の選手がオープンになってしまうのが特に嫌。いくら傲慢なヒラルでもカリージョとカンノの同時起用はないのではないかと思うので、彼の出場は間接的に外国人枠をどう使うかに影響を受けそう。とは言えベンチには入るだろうし、無視できない存在。</li> </ul> <p>中盤3枚のフォーメーションなのにこの選手層はただのズル。#29サーレム・アル=ドーサリをIHに使うパターンもあるので、スタメンを読むのは難しいところです。第1戦はホームなので押し込めると踏むのであれば#7アル=ファラジ、#19カリージョ、#8オタイフの3枚が一番浦和にとってやっかいか。これでもカンノをベンチに置いておけるわけで。全く違うパターンでは#29サーレム・アル=ドーサリ、#28カンノ、#6クエジャルというのも強いですね。</p> <p> </p> <p>最終ライン。</p> <ul> <li>#12アル=シャハラニー:激巧アフロ。個人的には#29サーレム・アル=ドーサリと並んでアルヒラルと言えば、という印象の選手。球際の技術がめちゃくちゃ高く、50:50のボールを絡めるようにマイボールにする印象。左利きにもかかわらず右足の使用頻度も高く、キープ力が高い。「預けて前へ」を積極的に狙い、高いクロス精度は何もないところからゴールを生み出すめちゃ面倒な選手。ただ大怪我から復帰している最中でコンディションは明らかに万全ではない。</li> <li>#2アル=ブライク:ブレイクなのかブライクなのか自信がないけれど、この選手ももはやお馴染み。前は右SBだったと思うが最近は左で起用されている?#66アブドゥルハミドが非常に良い選手なので序列的に押され気味なのかもしれない。とはいえ高い攻撃性能に加えてサウジアラビア代表とアルヒラルでの経験値を持ち合わせており、ポジショニングやゲームの読みが上手い。これまでの浦和との対戦でもファールを誘ってゲームを止めたりといろいろやってくる曲者的な側面がある。</li> <li>#66アブドゥルハミド:ヒラルのビーストその2。めちゃくちゃ身体が分厚く、171cmとは思えないほど大きく見えるうえに、加速力もトップスピードも魅力的。プレースタイルは柏時代の酒井宏樹を彷彿とさせるダイナミックな攻め上がりと鋭い右足のクロスが武器。基本的には大外を駆け上がってクロスが得意なはずだが、マレガと組んでいるためマレガの立ち位置に合わせてインナーラップも披露する。低めの位置でボールを引き取ってドリブルでタッチライン際を運んでいくこともできる。まだ23歳で将来性もあり、今回ヒラルの予習をして一番の発見となった選手。#17マレガと彼が組み、下手したら#19カリージョや#28カンノが流れてくるヒラルの右サイドは文字通り化け物の巣窟。</li> <li>#20チャンヒョンス:基本構造のところで触れた通り、アルヒラルの構造上の肝。彼がいるから中盤より前で多少歪な選手配置をしても、IHがプレスでどこかに行っても成立している側面が大きいはず。打撲でコンディション不良の情報もあるが、基本的には出てくるものと考えておくべきか。もともとJリーグでプロデビューしており、2019年のACL優勝メンバーであることから日本人選手との対戦も明確にイメージできているはず。カバーエリアが広いことを逆手にとって彼を引っ張ってその裏を使いたい。</li> </ul> <p>最終ラインは外国人枠対象選手がいないので、単純にコンディションでメンバーを決める感じでしょうか。4月の試合を観た感じでは過密日程の影響か最終ラインの選手もかなり変わっていたんですが、右SBの#66アブドゥルハミドは間違いない気がします。#20チャンヒョンスが使えるならこれも確定で、もう一枚のCBは直近連続スタメンの#70ジャフファリーか、経験をとって#5アルブライヒあたりが組むことになるかという感じ。左SBは第1戦#12アル=シャハラニー、第2戦#2アル=ブライクという使い分けもあるかもしれません。ちなみに#16ナセル・アル=ドーサリという24歳の左利きSBもなかなか良かったです。</p> <p> </p> <h5 id="浦和レッズとの噛み合わせと対策">浦和レッズとの噛み合わせと対策</h5> <p>で、結局戦ったらどうなんのよということで、思いつくままに書いてみます。</p> <ul> <li>浦和のスタメンはいつも通りで、酒井が先発復帰、明本が左に戻ってトップにはまず興梠を先発させると予想。ここまでスタメンを固定してきて、信用できる選手というのはある程度決まっているはず。またすこはACL決勝を、キングファハドスタジアムの雰囲気を知っている選手をまず使うのではないかと予想。</li> <li>ヒラルは#1アルマユーフ、#12アル=シャハラニー、#5アルブライヒ、#20チャンヒョンス、#66アブドゥルハミド、#8オタイフ、#7アル=ファラジ、#19カリージョ、#29アル=ドーサリ、#9イガロ、#17マレガを予想。第1戦ホームということで押し込む前提で#6クエジャルではなく#19カリージョかもなと。</li> <li>#96ミシャエウを左で起用し、#29アル=ドーサリや#28カンノを中盤に置くパターンもあるっちゃある。個人的には#19カリージョが出てくる方が嫌だけど。</li> <li>やはり厳しいのはヒラルの右サイドと浦和の左サイドのマッチアップになりそう。#17マレガだけでも厳しいのに、#66アブドゥルハミドも強力で全く無視できない。しかもこの二人は連携も良い。ということで左サイドのディフェンスは敦樹にヘルプさせようとすると、今度はIHにスペースを与えることに。中盤でボールホルダーが前を向くと速攻で#9イガロに縦パスが入りエリア内突入コンビネーションを食らってしまう。#19カリージョまで出場していたら文字通りてんやわんやになるかも。</li> <li>逆にヒラルの左サイドvs浦和の右サイドはあまり心配が要らない気がする。#96ミシャエウが出てこない限り純粋なWGが大外で仕掛けてくることはなく、中央に入ってきたい選手が前にいて、後ろから左SBが大外を取る比較的単純な構造なので、酒井のコンディション問題があるとはいえヒラルの右サイドどうする問題よりは状況がだいぶましか。ただIHに#28カンノがいると左サイドに流れて起点になるパターンがあるので厄介ではある。</li> <li>#9イガロに単独でやられることはあまり想定しなくてよいと思うので、右サイドの2on2とIHや#29アル=ドーサリを使った中央突破をまずケアしたい。そうなるとずっと4-4-2のブロックで戦うのはあまり効率的ではない。ヒントになるのはヒラルにシュート26本を撃たれながら13本のシュートを撃ち返して結局1-0の勝利を収めたアルバーティンのやり方で、4-4-1-1を基本にしつつトップ下が守備時IHとして中央を埋める変形4-5-1の形。中央に3枚用意しておけばSHがあまりスライドを気にせず自分のサイドの守備に集中できるのが強み。さらにヒラルのIH2枚を中央3枚でケアできるので#9イガロ当てからのエリア内突入攻撃に対してもまあまあ防御が効きそう。ただし、必然的に佳穂を守備時IH的に運用することになるので、プレッシングは諦めることになる。</li> <li>もしくは、より浦和的なのは4-4-2をベースにミドルプレッシングを狙いつつ押し込まれたら右SHを落として5バック(5-3-2)化する形か。押し込まれたら明本を左WB的に運用し、マリウスにいわゆるポケットをケアさせればヒラルの右サイド2on2への対策になるはず。この場合カウンターを頑張ってほしい右SHの立ち位置が下がるのが懸念点だが、いざとなれば5-4-1で固めるところまで変形できるので特に第1戦には向いているかもしれない。</li> <li>いずれにせよ、何かを得るためにリスクをかける必要があるとしても、自陣に穴を開けたら一発で終わる可能性が高いので、少なくとも非保持ではあまり無茶する必要がない構造を用意したい。</li> <li>ヒラルのプレッシングは、誰が出場するかにもよるが前述の通りIHを最前線に出す傾向がある。セオリー通りにいけばIHの背中が空くのだが、ヒラルの選手は全員球際が鬼で相手ゴール方向にプレーするのは大得意なので、対峙する浦和の選手は引きつけるのがかなり怖いと思う。ビルドアップはボールホルダーがどれだけ次の選手に余裕を繋がるかが肝なので、ヒラルの選手の迫力や球際を恐れてしまうとただの爆弾ゲームになってしまうかも。西川を使ってボールをある程度逃がすことができたとしても、うまく外して相手の急所にボールを届けるまでいくかはわからない。ただ少なくともCB2枚だけでビルドアップしようすると簡単に枚数が合ってしまうので、当座のリスク回避で少なくとも岩尾を頻繁に降ろすことになるか。徹底的にやるなら佳穂をボランチまで落としてリカルド式でボールを動かすことになるが、事故ったら大会が終了する恐怖にどこまで立ち向かえるか、メンタルの勝負になるかも。最大の敵は恐れ。佳穂が上手く引き出してボールを逃がせれば、浦和のテンポアップをヒラルは嫌がるはず。</li> <li>ヒラルの選手は自陣ゴール近くで危ないと思うと割と簡単に滑るので、局面の人数が一人か二人少ないくらいならキックフェイント一つで状況が変わる可能性は大。もしくはビルドアップでIHの選手を置き去りされるとその後バイタルのケアが0になりがちなヒラルなので、マイナスのボールから敦樹か佳穂あたりが主人公ミドルをぶち込むのを見るのが俺の夢なんだよ。</li> <li>ヒラルの最初のプレッシングを上手く外せれば、ある程度中盤の底とCBでボールを持てるはず。ヒラルのもう一つの弱点はSBの背後のボールへの対応で、特に枚数が揃っているときは裏抜けに誰が対応するか曖昧になることも多い。基本的に相手ゴール方向に走ることしか考えてない人たちなので、自陣側に走るプレーの精度はそこまで高くない。特に枚数が揃っていると「お前やっとけよ」的なサボり方をする選手もいる。ということは、マリウスや岩尾のロングボールを相手サイド奥に落としていくのは低リスクなわりに面白いチャレンジかもしれない。ただ構えてるところに落としても難しいので、できればビルドアップで相手の中盤を動かしてヒラルのCBに迎撃を意識させてから(相手の最終ラインを少し乱してから)裏に落としたい。</li> <li>とはいえ、押し込まれた展開からのポジトラで安易に繋ぎに行くのは非常に怖い。冒頭に記したようにアルヒラルの選手たちは相手にリスペクトされ、押し込み続けるゲームをすることに非常に慣れていて、カウンタープレッシングの意識と強度は非常に高い。自陣ゴールに近い場所で球際の攻防に持ち込まれるのはなるべく避けたい。特に第1戦はクリア優先でも全然問題ない。ただ、繋げるところも放棄してしまうとヒラルの得意なゲーム展開になってしまうのが悩ましい。</li> <li>また、ファールをされてもあまり気にしないことも重要。ファールの多さは彼らの戦術的要素で、球際に強くいって相手に自由を与えないことが強さのベースであり、結果的にファールになってもゲームは止まるので自分たちはセットした状態からゲームを再開できるという二重にお得な構造になっている。逆にこっちもファール上等で戦って相手をイライラさせるくらいの闘争心を持ちたいところ。お前たちの中に眠る北関東を解き放て、今日がその時だ。</li> <li>いや待て明本、喉輪はだめだ。</li> <li>最後にセットプレー。ファールは少なくない数を貰えるはずなので、何か準備しておきたい。エリア内にフィードと見せかけてグラウンダーからフリックのパターンなんかどうでしょう。逆にCKはあまり期待できないかもしれないけれど。</li> </ul> <p> </p> <h5 id="思い出させる戦い">「思い出させる」戦い</h5> <p>最後に、ちょっとした独り言を。</p> <ul> <li>逃したタイトルに再び挑む時、スポーツの世界では「忘れ物をとりにいく」と言う言葉を使うけれど、では僕たちは2019年の決勝に何かを「忘れて」来たのだろうか?とよく思う。</li> <li>「忘れる」というくらいだから、「本当は持っていたはずだったものを」と言うニュアンスがそこにはあるはず。もしそうであれば、少なくとも僕にとっては2019年のアジア王者のタイトルは「忘れ物」ではない。</li> <li>あのタイトルは逃すべくして逃したもの。当時の僕たちには相応しくなかったもの。悔しいけれどあの第2戦を観たときの記憶を呼び起こしても、今映像を見ても、そう思う。あの年の浦和にはアルヒラルを困らせる要素をほとんど持ち合わせていなかった。あの年のアジア王者のタイトルは「本当は持っていたはずだったもの」ではなかった。</li> <li>では、「忘れ物をとりにいく」戦いでなければ、この戦いは何なのだろうか?</li> <li>上手く言えているかわからないけれど、「思い出させる」戦いではないかと僕は思う。「忘れた」のは僕たちではなく、彼らなのだ。</li> <li>簡単にアジア王者になれるわけではないことを、極東に粘り強く勇敢な赤い悪魔がいることを、埼玉スタジアムが彼らにとって世界で最も難しいピッチの一つであることを、彼らに「思い出させる」戦いなのだ。</li> <li>とはいえ、客観的に観て彼らの方が戦力は充実している。戦力とは資金力だ。選手の市場価値は倍半分、チーム予算は何倍も違う。彼らはアジアにおける絶対強者だ。</li> <li>とにかく彼らはリスペクトされ、支配することに慣れている。まるでサッカーが最初からそういうゲームであったかのように。当然、彼らにはリスペクトが足りない相手を叩き潰すだけの力がある。ゲームを支配するだけの根拠となる強さを持っている。だけれど、リスペクトされたうえで最後まで抵抗され、思い通りにいかない展開は好きではない。</li> <li>2017年のヒラルは油断し、驚き、焦っていた。逆に2019年のヒラルは、リベンジを期して完璧を求めていた。では今回は?彼らは経験豊富だが、勝てる気でいる。なぜなら彼らは強いから。</li> <li>とはいえ彼らが万全ではないのも事実なのだ。普段使える外国籍選手が全員使えず、また4月の過密日程で疲弊し、何人かはそもそもトップフォームですらない。</li> <li>したがって、ホームの第1戦で勝利のアドバンテージを取れなかった時、彼らは2017年の記憶を少しずつ思い出し始めるかもしれない。幸か不幸か、アルヒラルには2017年の決勝を戦った選手も多く残っており、特にサウジアラビア人選手はあまり主力が入れ替わっていない。</li> <li>2017年の嫌な記憶を気にしながら埼スタで2戦目を戦うのは嫌だろう。さらに前半堅い試合になれば、自ずと焦りも出てくる。</li> <li>こうした展開に持ち込むために、浦和にとって何が大事になるか?それは、恐れないこと。彼らの破壊力と強さをリスペクトした上で、彼らにしっかりと抵抗したい。具体的には、ボールを保持したい。ビルドアップから華麗に崩すというわけではなく、ある程度彼らの中盤から後ろを動かすだけでもいい。2019年はボール保持の仕組みが0のまま気合いだけでぶつかったので、ヒラルの優位性だけがピッチに表出してしまった。</li> <li>ヒラルはリスペクトされボールを持ち相手を押し込み続ける展開が一番心地よく弱点を隠せるので、浦和が自ら引いてしまうのは勿体無い。単純に破壊力がエグいアタッカーがいるのでその対策として後ろに枚数をかけるのは良いとしても、マイボールを放棄したら勝負にならない。幸い、ヒラルはネガトラでのカウンタープレッシングは強いもののポジトラから素早くカウンターでゴール前という選択肢の優先度が高くないので、カウンター一発でゲームオーバーになるリスクはそこまで高くない。</li> <li>ただ、サウジリーグを観ていても繋げそうなところでも相手選手がヒラルの選手に寄せられると簡単にクリアしたりしていたので、対峙するとわかる恐怖感があるのかもしれない。この辺は我々による雰囲気作りで浦和の選手たちの闘争心をバキバキにキメきって浦和の男らしく立ち向かわせたいところ。</li> <li>いや待て明本、喉輪はダメだ。</li> </ul> <p> </p> <p>というわけで、楽しみです!</p> <p> </p> reds96 すこ観戦会報告書(あるいはスコルジャ監督によるチーム作りの展望について) hatenablog://entry/4207112889955476545 2023-02-18T09:30:35+09:00 2023-08-06T01:12:14+09:00 夜な夜な開催していた『すこ観戦会』、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。本当はもう少し多く試合を観る予定だったのですが、仕事の都合で時間を捻出できず。ただ楽しかったので満足です。せっかくなのでメモ書きを残しておきたいと思っていたので、ここで供養します。それにしても過去の試合のアーカイブを完璧な形でYoutubeに置いているエクストラクラサ、最高でした。あとおすすめの試合を教えてくれたレフサポの人、ありがとう。 Yes, but sadly many people don't know about that channel, it deserves more subscribers. W… <p> </p> <p>夜な夜な開催していた『すこ観戦会』、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。本当はもう少し多く試合を観る予定だったのですが、仕事の都合で時間を捻出できず。ただ楽しかったので満足です。せっかくなのでメモ書きを残しておきたいと思っていたので、ここで供養します。それにしても過去の試合のアーカイブを完璧な形でYoutubeに置いているエクストラクラサ、最高でした。あとおすすめの試合を教えてくれたレフサポの人、ありがとう。</p> <p> </p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="en" dir="ltr">Yes, but sadly many people don&#39;t know about that channel, it deserves more subscribers. What can I say about coach? He have rules. He is a motivator. On hard moments he can bring all the team on TOP in mind. Before him we ended at 11th place, next season - First Place. :)</p>&mdash; Ominotropeles #KOLEJ8RZ 👑👑👑 (@Ominotropeles) <a href="https://twitter.com/Ominotropeles/status/1615389139506954251?ref_src=twsrc%5Etfw">2023年1月17日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="pl" dir="ltr">Best:<br>Lech - Wisła 5:0 <br>Lech - Śląsk 4:0<br>Lech - Termalica 5:0<br>Piast - Lech 1:2<br>Worst:<br>Radomiak - Lech 2:1<br>Lech - Raków 1:3 (Final Cup)<br>Cracovia - Lech 3:3<br>Wisła - Lech 1:1</p>&mdash; Ominotropeles #KOLEJ8RZ 👑👑👑 (@Ominotropeles) <a href="https://twitter.com/Ominotropeles/status/1615765363613892616?ref_src=twsrc%5Etfw">2023年1月18日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p><br /><br /><br /></p> <p> </p> <h5 id="第33節Warta-Poznan-vs-Lech-Poznan">第33節Warta Poznan vs Lech Poznan</h5> <p><a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/756868673">第1回</a>、<a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/756951355">第2回</a></p> <p><strong>試合展開(レフ目線)</strong></p> <p>前半 PKで失点</p> <p>前半 トランジションからアマラウのスーパーショットで同点</p> <p>前半AT コーナー崩れからエリア外のシュートをイシャクがコース変えて逆転</p> <p> </p> <p><strong>雑感</strong></p> <blockquote> <ul> <li>プレスプレスプレスの序盤。裏返されると当然空く。</li> <li>SHがポジションを変える。前半だけで2回。</li> <li>SHが内側に絞ってプレーする、流動的というか全員真ん中でプレー。</li> <li>裏抜けの意識が高い。狙う場所はチャンネルで明確。</li> <li>5番の左SBは最終ラインに残って3枚回し風味でプレーしている。右SBは大外担当っぽくて上下動がメイン?</li> <li>低い位置でビルドアップする時はSHが開く、ボールが前進すると内側に入って前の2枚とプレーエリアを近づける。その分SBが開く。</li> <li>ネガトラ要員はボランチ1枚、SB、CB2枚の4人?</li> <li>プレスはSHを前に出す。相手が3バックだからかも。ただし逆サイドのSHは大きく絞ってボランチの横。これによりSH-SB間のスペースを横に出て埋めるボランチが空けた場所をケアする。</li> <li>トップ下のアマラウがボランチの位置まで降りて一緒にスペースを埋めているのが興味深い。ボランチは飛び出して狩る前提、それを別の人が埋めるルールか?</li> <li>442のセットになる時は最前線が真ん中を切って横断阻止。これはかなり徹底されたルールで重要。イシャクもアマラウもちゃんとやる。</li> <li>交代で入った右SHは左利き。トップ下に入った10番も左利き。</li> <li>10番が入るとアマラウのやっていたボランチを助けるポジショニングをイシャクがやるように。イシャクはマイボール時トップ、相手ボール時トップ下みたいに見えた。ボランチを助ける役割は気が利く人に任せる?ただ人が変わっても役割を引き継いでいるように見えたから、チームの約束事ではありそう。</li> <li>プレス意識は前半ほどではないが、後半も低くはならない。</li> <li>全体的に蹴っ飛ばすシーンが多いが、おそらくポーランドのサッカーがこうなだけで、浦和でも同じように蹴りまくるとは思えない。</li> <li>交代はおそらく3枚。5枚使い切らないということはメンバー固定気味?</li> <li>シュートがかなり多い、ちょっと空いたら撃つ。</li> </ul> </blockquote> <p>まずは完成形をみてみようということで優勝を実質的に決めた第33節をチョイス。正直これが完成形だったのかと言う部分には自信がないのですが、特徴をつかむには良い試合でした。優勝を決める可能性があるということでモチベーションは抜群。若干不運な失点もなんのその。ボール保持でも非保持でも前へ前へ、ゴールへゴールへプレーすることであっさりと同点に、そして前半終了間際に逆転。</p> <p>特に印象的だったのはとにかくシュートを撃ちまくる一貫したチームの姿勢と、プレッシングの設計。とにかく、雑なのか緻密なのかわからないのが印象的。シュートを撃ちまくる=ボールを失う可能性を高めているということだし、正直シュートセレクションが良いとは感じませんでした。思い切りが良いというよりは無謀というべきシュートが多いくらいだったのですが、一方でプレッシングの設計はリスクを掛けた分のヘッジがちゃんとある。特にSHがプレスに出た際の背後のカバーリングをボランチがサイドに出張ることで行い、その分の中央のカバーリングを逆SHかトップ下の選手にやらせているのは面白かったです。特にアマラウは中央のスペース管理がとてもしっかりしていて大変好印象。アマラウ交代後は人が変わってどうなるかと思ったらエースのイシャクがその役割を引き継いでいたのも良い意味の驚きでした。となると必然的に、イシャク、アマラウ以外も同じようにやってくれるのか?(つまりチームの約束事なのか?)が確認したくなります。今後の要確認事項となりました。</p> <p>ちなみにポズナン・ダービーだったのですが相手チームは下位に沈んでおり、スタジアムの大きさや雰囲気を見てもちょっと格差のある試合だったので、次は上位対決を観ることに。</p> <p> </p> <h5 id="第32節Piast-Gliwice-vs-Lech-Poznan">第32節 Piast Gliwice vs Lech Poznan</h5> <p><a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/757037259">第3回</a>、<a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/757124686">第4回</a></p> <p><strong>試合展開(レフ目線)</strong></p> <p>前半15分 ネガトラ→アーリークロスからわざありヘッドで先制。</p> <p>後半1分 ロングボールにボランチ22が競り合ったがうまく落とされサイド展開→グラウンダーの折り返しを左足で綺麗に合わされて失点</p> <p>後半42分 コーナーからCBが折り返しイシャクが頭で合わせて勝ち越し。</p> <p> </p> <p><strong>雑感</strong></p> <blockquote> <ul> <li>相手は最終順位5位で期待したが、あまり魅力的には映らなかった。</li> <li>相手チームの予想フォーメーションは4411だったものの523を選択。これはレフも予想していなかったのか序盤はハマらない。</li> <li>そんな中高い位置にボールを送り込んでネガトラ発生からの6番のスーパーアプローチからボール奪取。サイドに渡してクロスからゴール。</li> <li>その後30分くらいまでは明確な狙いが見えにくい展開。</li> <li>30分ごろから左SB5番と右SH50番が523の脇を取り始める。ここからレフが試合を「支配」し始める。</li> <li>2の脇でボールを引き取って前へ、相手を押し込んで相手ゴール前にボールを入れ、ネガトラで狩る。もしくは大外から運んで2の脇を取る選手がパラレラで深い位置に侵入。もしくはこのパラレラで相手の2をサイドに引き連れて中央へ刺す。</li> <li>前半のうちに盤面を攻略する修正力、適応力は強いチームの証か。</li> <li>守備の仕組みは33節で観た通り。アマラウ、イシャクの中央埋めが非常に強い。人がボールに出てくるのにブロックに穴が開かない。SHが出る→ボランチがフリーの相手をケアする→トップ下か逆サイドのSHが中央を埋める。3段階のスライドが仕込まれており、単純に攻略できないようになっている。</li> <li>ただし、相手チームの繋ぐ力には疑問。全体的に早めに蹴る傾向があり、プレスにいくリターンは大きい。J1クラブはもっと繋がるので、上記スライドが完成しないと結構剥がされそう。</li> <li>後半開始直後に同点にされてしまいゲームの主導権を渡してしまう。相手が勢い付く。</li> <li>相手が前に出てきたことでかなりオープンに。オープンな展開に合わせてドリブルで前進→縦パスで攻め返すレフ。近年の浦和的には少しコントロールしてほしい展開だったかそんな気なし。</li> <li>前半うまく523の脇を5と50が取っていた立ち位置がオープンな展開もあって消える。</li> <li>15分くらい苦しかったがなんとかイーブンに戻す。SH50が交代し21番へ。</li> <li>7と21のコンビはサイドを変える傾向があるっぽい。</li> <li>プレスは後半も継続。前はボールにプレッシャーを続ける。プレスのスイッチはトップだと思われるが、SHが前に行った時の後ろの連動の方がちゃんと仕込まれているので、スイッチはSHにあるように見える。</li> <li>78分ごろ2枚替え。24→10、6→30。この交代は他の試合でも見られたのでパターン化されていそう。序列を固定する傾向?</li> <li>一人の選手が複数ポジションに入ることがない。この選手はここと決めて運用するタイプ?ただし流れの中でカバーし合う傾向が強く、局面局面で違う役割を果たすことは求められそう。特に2列目。</li> <li>その後さらに交代、83分22→23。ボランチを2枚替えするのは珍しい?ボランチの強度が生命線という認識?逆にいうとトップ、左サイド、最終ラインは代えが効かない感じはある。</li> <li>GK、CBのポゼッション性能は浦和の方が上。結構バタつく。そんな中自分のところで落ち着けられる5番の存在価値はとても高い。</li> <li>浦和の場合はさらに岩尾が出ていればコントロールできるか?岩尾のアジリティやカバー範囲とコントロールどっちを取る?</li> </ul> </blockquote> <p>シーズン終盤の上位対決ということで選んだら偶然前回までの一つ前の節をみることに。レフの方はあまりメンバーが変わっていなかったのでシーズン終盤になってチームは完成しているとみてよさそうな感じだった気がしますが、もしかしたら右SHだけは50番がスタメンだったかもしれません。うろ覚え。</p> <p>この試合はとても有意義で、まず前回発見した守備の仕組み、とくにSHがプレスに出たあとのカバーリングのカバーリングがこの試合でも行われていることを確認できました。少なくともアマラウとイシャクは中盤中央埋めを日常的にやっているっぽくて、特に不満もなさそう。つまり、これはポジションに求められている仕事の一部なのかもしれない、と考えます。もしくはこの二人がこうした仕事をやってくれるからこそスタメンなのか。いずれにせよ、浦和でもハイプレスを増やすと明言している以上、「プレス出るのはいいけど外されたら大ピンチじゃん?どうすんの?」という心配をしないわけにはいかないわけです。こうした漠然とした心配に対して、浦和ではどうかは別としても前職ではしっかり仕組みを用意してエース級の選手たちにしっかり役割を果たさせていたというのがわかるのは大きいですね。一方で同時に強調していたと思われる逆SHの大きな絞りによる中央埋めはあまり精度が良くないというかけっこうサボってるシーンが散見されました。これはトップ・トップ下の人たちがやってくれちゃうからなのか、SH軍団がサボってるからエースたちが仕方なく中央を埋めているのか、そこまではよくわかりませんけど。</p> <p>また、試合を観ている印象としてエクストラクラサのレベル感というか傾向がわかってきました。簡単に言うとプレスを掛けられたら蹴る傾向が非常に強いリーグだと思います。チームによっては繋ぎの仕組みをちゃんと用意しているのですが、ちょっと苦しくなったらわりと蹴っちゃいますね。下手というよりは大柄な選手が多いしあまり小回りが利かない傾向が強いのが理由かも。ともかく、相手が蹴ってくれるならプレスをかける意義は増します。ボールを奪えないにしても、相手が保持をある程度諦めてくれるならほぼプレスは成功だし、なにより繋がれたうえで展開されて思いっきり外されるリスクが低いので、プレスに行く期待値が高いと言えます。そもそもレフの選手がリーグ内で相対的にレベルが高そうというのもありますけど、この傾向はスコルジャ監督がポーランドで成功していた一因のように思いました。</p> <p>で、じゃあJリーグで同じように出来るかと言うと、正直微妙かなと言う感じ。繋ぎはJリーグの上位チームの方がどう考えても上手いので、浦和レッズというチームというよりスコルジャ監督自身がその辺の感覚のアジャストをしなければいけないかも。本人がわりと慎重なコメントをしているのもこの辺の自覚があるからかなと思ったりします。</p> <p>ちなみに、この試合は最初うまく嵌らなかった噛み合わせを前半のうちに解決してボール保持でも試合を支配で来ていたのは好印象。全員ではないですが立ち位置を工夫できる選手がいて(例えば左SBのレボチョ)、盤面を整理する振る舞いを観れたのはレフの印象を良くしました。</p> <p> </p> <h5 id="第21節Lech-Poznań---Bruk-Bet-Termalica-Nieciecza">第21節 Lech Poznań - Bruk-Bet Termalica Nieciecza</h5> <p><a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/757217749">第5回</a>、<a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/757395965">第6回</a></p> <p><strong>試合展開(レフ目線)</strong></p> <p>前半18分 ボール奪取から速攻、アーリークロスが流れたボールを右サイドで拾ってイシャクのヘッド</p> <p>前半27分 10番がエリア内で間合いを図り左側に入れ替わろうとするも身体はブロックされる、そのこぼれ球を走り込んだカミンスキがズドン</p> <p>前半44分 速攻崩れのネガトラでボール回収。カミンスキの仕掛けに5番が裏取りで呼応、SB-CB間に隙が出たところに10番が2列目から飛び込んで左脚を振る。</p> <p>後半10分 エリア外右からセットプレー、二人降りてきてスペースを空け、大外から二人走り込む。こぼれ球が大外のカミンスキに渡って折り返しから16番が詰める。</p> <p>後半40分 自陣左サイドでボールを奪ってロングカウンター。ドリブルで運んでから縦パス、97番が長い距離を走り、大外の50番を空けるニアへのランニング。右サイド2番のアーリークロスを50番が落とし、97番が詰める。</p> <p> </p> <p><strong>雑感</strong></p> <blockquote> <ul> <li>これまで観てきたシーズン終盤の試合とはメンバーが多少異なる。CB18、CH30、右SH23、トップ下10がスタメン。</li> <li>観戦会では初の真っ当な4バック相手の試合。ただ相手は右上がりでCBがずれて3枚回しっぽい作戦。</li> <li>そのためカミンスキのマークが定まらず最初はブレスがはまらない。また23の絞りが甘く飛び出していくCHのスペースが埋まらず最終ラインが晒される序盤。</li> <li>ただ相手のエリア内に人数をかける形はしっかり表現できている。ネガトラは怪しいがプレスをかけて蹴らせて回収はそこそこ機能。エリア内での相手の対応が甘い部分もあり首尾よく2点先取。</li> <li>相手が4◇2なのでレフのCB2枚に枚数があっているが、CHが降りて3枚回しにするような雰囲気はない。</li> <li>30分ごろからカミンスキが前に出て5番が長い距離をカバーするやり方で安定しだす。だいたい30分で相手のやり方に対応し非保持のバランスが取れると支配を支配できるように。フィールド上、もしくはベンチとのやりとりが頻繁にあったようには見えず、試合も大きく止まらない中で目線や相手への適応が前半のうちに見られるのはなぜ?</li> <li>この試合ではCHのエリアのカバーをCBが前に出て対応する場面も。18番の特徴?</li> <li>30番が速攻と遅攻を良い感じでコントロール。その上で前に出ていく動きもこなす。パスを繋ぐ能力もあり良い選手。岩尾はこんな感じの役割をできるかも?</li> <li>カウンターの際の人数がちゃんと確保できている、長い距離のランニングができる選手が多い。</li> <li>4-0で残り10分ほどの場面で74番が投入されたが、ユース上がりのデビュー戦。状況が整えば若手に経験を積ませる起用もするのか?ちょっと意外。</li> <li>トップ下がCHのエリアをケアする挙動はこの試合では見られない。シーズンが深まるにつれて成熟させたのか、イシャクもアマラウもいないので気が効く人がいなかったのか?</li> <li>プレスに行った際もそうじゃない時も最終ライン、特にCBが下がる挙動が早く大きい。結果的に2列目との距離が空いてバイタルが大きく空くシーンが頻出。なんとなくわざとラインを下げさせてる気がする。最終ラインの裏を一発で取られるのを嫌っている?</li> <li>この試合ではCH2枚が両方サイドに出張ったり一枚がプレスに出た時に広大なスペースが中盤にあったりして危なっかしい。トップ下が埋める役割はこの時点ではまだ確立されていない?トップ下の人選によっては浦和でもこうなる可能性があり、Jでは結構危険な気がする。</li> <li>全体的に相手よりもレフの選手の方が上手く、レベル差、クラブ格差を感じる。</li> </ul> </blockquote> <p>いわゆる完成形はだいたいわかったので、今度はベストゲームを観てみようということで大量得点試合を観戦。少し時間を巻き戻してリーグ中盤戦をチョイス。ちなみにエクストラクラサは18チーム制のリーグです。</p> <p>メンバーが終盤戦と多少異なることでピッチ上の振る舞いも少し違った感じに。ざっくり言うと、この時期の試合は終盤に比べて完成度がそこまで高くない印象です。アグレッシブではあるし得点もたくさん奪ってはいるものの優勝するチームには見えませんでした。逆に言えば、レフではいろいろと試しながらシーズンを通じて完成度を高めていったということかもしれません。最初に見た2試合は交代選手やパターンがわりと決まっていた印象でしたが、シーズンを通じてみれば多くの選手にチャンスを与えていたのかなという感じ。最終的には走れて気を使える選手が重宝されている感じがします。</p> <p>この試合はゴールの多さとは裏腹にあまり戦術的な見どころがなかったのですが、チームスタイルの根幹として早めにクロスやシュートに持ち込む部分と、失ってもその後のカウンタープレスで主導権を握っていく部分は発揮されていたと思います。要は攻撃を「多く」したいタイプのチームで、「長く」したいチームだった昨年の浦和とはかなり印象が異なるのではないかと思いました。個人的には「多く」のほうが好きなので、これは歓迎。またハイラインを引いていますが危険な形でパスを刺されたり最終ラインが晒されてしまうような局面では速攻でゴール前に撤退する挙動を見せていたのが面白かったです。これまで観てきたプレスのところもそうですが、第一印象はリスクガン積みで仕掛けていく感じなんですが紐解いていくとリスクヘッジが考えられているのが面白いというか、大味と見せて緻密みたいなバランス感覚がスコルジャ監督の強み・魅力なのかなと思ったり。この辺りは浦和でもぜひ上手い形で表現して欲しいところです。</p> <p>ただやっぱり選手の質の優位性は感じます。レフの選手はリーグ内では相対的に優秀です。これも監督・コーチングスタッフの仕込みなのかもしれませんが、第32節もこの試合も前半のうちに噛み合わせがあっていないのを修正してしまっているのは凄いです。長くゲームが止まった感じはなく、監督もぎゃーぎゃー指示を出していたようには思えないんですけどね。</p> <p> </p> <h5 id="第22節Lechia-Gdansk-vs-Lech-Poznań">第22節 Lechia Gdansk vs Lech Poznań </h5> <p><a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/757933807">第7回</a>、<a href="https://twitcasting.tv/urawareds96/movie/758023064">第8回</a></p> <p><strong>試合展開(レフ目線)</strong></p> <p>86分 コーナーから失点</p> <p> </p> <p><strong>雑感</strong></p> <blockquote> <ul> <li>前節40分で交代したイシャクがベンチ外。アマラウも控えスタート。右SBの2番もベンチで、シーズン終盤はCBで出ていた37が右SBに。CHは6と30のコンビ。トップにはネクストレヴァンドフスキこと97。</li> <li>相手は4231。ボランチが降りて3枚回し、降りたボランチからミドルパスで展開したい気配だが、レフの第一プレッシャーラインを越えられず有効なビルドアップができない。</li> <li>序盤からプレスをかけて主導権を握りサイド攻略からエリア内に惜しいボールを供給するレフ。</li> <li>前半10分までに決定機が4回くらいあったのでは。どれも決められず。</li> <li>37番はどう考えてもCBの選手だがチームの約束であるチャンネルランは忠実にこなす。SHもわりと37のランニングを使う。約束事がしっかりしてる分、誰がやっても同じようにスペースを突き、その動きを使うことが徹底されてる?逆に言えばボールを渡しても多分何もできない選手にも、約束通りの動きならボールを渡す傾向。</li> <li>プレスの精度はともかくCHが出たところを埋めるカバーリングのカバーリングは微妙。真ん中が空くことが多いが最終ラインが迎撃で処理したり、相手のビルドアップが効果的でないこともありピンチは少ない。</li> <li>ボール保持では10番が頻繁に降りるのでその代わりに6番が前線へ出て前の枚数確保に努める。これが終盤の布石に?</li> <li>後半55分あたりの3枚替えから相手がペースアップ。プレス強度を上げてくる。同時にレフは前線に疲れが見え始める。特に右SHとトップ下、CH6番、30番の出足が遅れ始める。</li> <li>レフのプレスはSHが早めに相手のSBを消すことで中央からのプレッシャーを当てる感覚があるが、一手目のSHが遅れるとサイドに逃げられて辛い。</li> <li>さらに相手のボランチにCHが出ていくものの捕まえられないと横断され始める。サイドに大きく動かされると撤退となるのでポジティブトランジションの位置が下がり、間伸びする。ということでレフは被シュートがあからさまに増え厳しい流れに。</li> <li>ここですこ采配。63分に2枚替え。右SHに50番を、トップ下にアマラウを。上記を踏まえるとかなり納得感のある交代。</li> <li>アマラウは出てきた瞬間にこのチームのトップ下としてのプレー理解度の違いを見せつける。守備のカバーリング意識、プレスの出かた、攻撃時の質の高さ。</li> <li>アマラウ起点で2回、50番起点で1回レフに大チャンス。正直ここで決めないのは選手が悪いくらいのチャンスだった。采配は合っており監督としてはチームを勝たせる寸前までは持ってきている印象。</li> <li>その後若干試合が硬直。レフはCHが活性化された前線についていけておらず辛そう。ということで交代するも6番を残し30番クヴェクヴェをベンチへ。22番IN。</li> <li>86分コーナーから失点。ゾーンで3人競り合ったこぼれをボレーで詰められる。失点自体は仕方ない。</li> <li>その後さらに選手交代して追いつこうとするもゲーム終了。レフは攻め手が明確なチームだけにパワープレーはあまり得意ではなさそう。</li> <li>ゲーム全体としては負け試合ではあるもののレフらしさはよく出ており、采配にも納得感があった。上位対決を落としたので痛いが悪い負けではない気がする。</li> <li>SHのとCHの体力がどこまで持つかの見極めはチームにとって重要。そういった意味でもトップ下によるCHのカバーリングは重要なのかも。10番はこれをほぼやらない。6番は前方へのランニング、ゴール前の枚数確保支援の意識が強く、10番が降りた分を埋めていたが終盤は足が止まった。この辺は選手の特性の噛み合わせみたいなところもあるかも。</li> </ul> </blockquote> <p>良い試合を観た後は負けた試合も観てみようということで21節に続いて22節を観戦。ただ内容的には21節よりも面白かった気がします。たくさんゴールに迫ったものの1点が奪えず、罰を受けた形で試合終盤に失点し敗戦というパターンでした。こういうのはどこのフットボールでも同じなんですね。雑感に記載の通りスコルジャ監督の采配は納得感のあるもので、選手交代の直後に出した選手がビッグチャンスを作っていることを踏まえても監督には文句なしという珍しいタイプの敗戦。そもそもこのシーズンのレフはリーグ戦で2回しか負けていないのですが、こういうガンガン行こうぜ系のチームにしては事故的な敗戦が少ないところをみると、こういう感じで監督のバランス感覚や采配で盛り返したり勢いをつけてポイントをもぎ取った試合が結構あったのかなと思わせてくれます。これまで観てきた通りピッチ内での修正力もあるし、監督の采配も打率がいいしとなればそりゃ安定してポイントをとれるわけかな。</p> <p>試合周辺の情報がないのでなぜこの試合でアマラウがベンチだったかはわからないのですが、レフではレベチの戦術理解とゲームへの影響力を示していたアマラウですら出ずっぱりではないとすると、浦和でもローテ気味にいろいろな選手が使ってもらえるのかなと思ったり。レフの場合はシーズン序盤と比べるとGKも変わっているし、最終ラインもポルトガル人コンビの両SBは別格気味とはいえずっと同じ選手がでているわけでもなく。ボランチより前は当然いろいろな選手が出場機会を得ていました。もしかしたらある程度プレータイムをコントロールするタイプの監督なのかもしれません。僕みたいな箱推しファン向きの監督かもなと思いました。幸いなことに今の浦和にはショレやもうやんを除けば良くも悪くも大きなレベル差の無いスカッドがありますから、集めたスカッドの有効活用は期待したいところです。</p> <p>観戦会も7・8回目ともなると、もはやレフの選手に愛着が湧いてきています。個人的なお気に入りは左SBの5番レボチョ、CHの30番クヴェクヴェスキリ、そしてトップ下24番アマラウさんでした。イシャクがエースで彼が収めないと何も始まらないのかと思ったらそこまでではなく、むしろ走れる選手と気を使える選手が上手い感じにバランスをとりながら相手に圧をかけまくるというチームだった気がします。攻撃ではわりと簡単にボールを捨てる(シュートやクロスにチャレンジする)チームですが、その後のリカバリー・カウンタープレッシングはかなり徹底されており、むしろ一回相手ボールになった方が調子が出る感じにも見えます。相手のビルドアップに対するプレッシングとそれに応じたハイラインも、結構隙が大きく見えるのですがその隙をカバーする仕組みとそのカバーをカバーする仕組みにも構想があったりとか。レフポズナンは全体的には雑な感じと見せかけて緻密、ノリ重視と見せてバランス派、週3で焼き肉屋に通ってるけどランチのみ、酒は飲んでも吞まれるな的な感じのチームという印象でした。</p> <h5 id="スコルジャ監督によるチーム作りの展望について">スコルジャ監督によるチーム作りの展望について</h5> <p>ちょっと長くなってしまいましたが、以上が「すこ観戦会」の報告となります。イメージ湧いたでしょうか?本当は浦和のトレーニングマッチとかPSMとかそういうのが見れたらいいんですけど、そういうのがなかったのでわくわくする燃料にでもなればと思います。とはいえもう今日開幕なので、このエントリでイメージを膨らませる必要はないかもしれませんが。</p> <p>最後にざっくり、浦和レッズでのチーム作りの展望を書き記しておこうと思います。正解は一年後。もうだらだら語るのもあれなので、箇条書きで。</p> <ul> <li>全体としては昨年に比べリスクを許容しつつチャレンジを多くする志向性の転換が肝になるのでは。ビルドアップとプレス重視、立ち位置がどうこうも工夫するという意味ではリカルド体制からの引き継ぎ事項は多いと思うが、プレー選択のメンタリティはだいぶ変わると予想、というか期待。</li> <li>まずは相手のビルドアップへのプレッシングの積極性と、特にSHが前に出た後ろのスペースの埋め方、カバーリングに誰が行く設計になってるかに注目。できればカバーリングのカバーリングまで観たいけれど、どうなるか。最初の方は対戦相手を考えてもあんまりうまく出来ないかも。</li> <li>カバーリングのカバーリングまで考えると、トップ下は攻撃だけでなく守備でも重要ポジション。プレスの先頭になるか、後ろを埋めるか刻々と判断しなければリスクヘッジが成立しない。当初はセカンドトップタイプを置くのではという噂があったけれど、どうもセカンドトップの点取り屋ではバランスが悪そう。アマラウが凄いのはチームで最も気が利く選手だったのに点を獲ってチームを勝たせていたこと。というわけで佳穂が真の主人公として覚醒すれば問題なし。</li> <li>とはいえJリーグでは繋げるチームが結構多いので、そもそもポーランドでのレフのように上手くいくかは未知数。ただこの懸念をおそらくスコルジャ監督本人が持っているので、序盤は戦術や采配をJリーグにアジャストさせていくことに力を入れるはず。この辺りに自覚的っぽいところが期待している要因の一つ。</li> <li>レフでのSHは走力とゴールへプレーするエナジーが求められていた感じがあるものの、浦和ではテクニカルなドリブラーが多いのでそこがどうなるか。キャンプではボールと逆サイドのSHが絞ることで中央を埋めるやり方を徹底していたようなので、その辺の完成度がどうか。今まで浦和を観てきた感じでは、そこまで精度が高くなるとは思えないが、上手くやれる選手は信頼されそう。</li> <li>またチームの基本的な約束事となっていそうなチャンネルラン(CB-SB間へのフリーランニング)がどのくらい観られるか。これはわりと早くから徹底されそう。</li> <li>レフはクロスもシュートもかなり多いチームだったが、浦和でもその傾向が出るかどうか。前監督とは志向が真逆となる部分なので選手の中に残っている感覚が強く出て最初はスコルジャカラーに染まり切らないかも。ただシーズンのどこかで吹っ切れていく必要がある。中途半端は良くない。</li> <li>攻め手が雑に見えたとしても、それがカウンタープレッシングのトリガーになるとも言える。トランジションをたくさん引き起こすことでペースを握っていく戦い方がJリーグでどこまで通じるか、浦和の選手がどこまで体現できるか。シーズン単位でも試合単位でも最初の方はやれそうだが、中盤以降どうなるか。夏は監督も警戒している模様。</li> <li>選手起用がどのようになるか。シーズン中でも序列を結構変えるタイプなのか、割と固めちゃうのか。わりと鉄板コースを決めるタイプのようにも見えるので、そこに食い込んでいく選手は誰か。レフではボランチ、SH、トップ下の交代が多く、浦和でもこのポジションの選手は競争が激しくてもわりと出場機会がありそう。というわけで後ろが先に固まるか。</li> <li>ボランチはカバーリング範囲の広さや要求されるアクションの多さからして敦樹・柴戸に期待。特に柴戸には徐々にでも信頼を勝ち得て欲しい。</li> <li>レフを観ている感じだとシーズンを通じて完成度を高めていけるタイプの監督なので、この点大いに期待。シーズン序盤の対戦相手が厳しめなのと、ACL決勝、夏の暑さ。この3点をうまく乗り越えられれば終盤にかけて期待できるのでは。</li> <li>序盤3連勝で始まったらめっちゃ熱い。できれば上位争いをしながら序盤~中盤を進めたい。そのほうがスコルジャ監督の選手のメンタル面へのアプローチなんかの強みが出そう。逆に下から上がっていくのは難しそう。最初に下にいるということは監督のサッカーがJリーグにはまっていないということなので、監督自身が悩みだすかも。</li> </ul> <p> </p> <p>何はともあれ楽しみですね。文字ばっかりですみませんでしたがこのあたりで今回のチラ裏は終わりです。ではまた。</p> <p> </p> reds96 2022シーズン全選手振り返り(下) hatenablog://entry/4207112889948774856 2023-01-17T17:21:26+09:00 2023-08-06T01:12:26+09:00 (上)はこちら。 www.urawareds96.com (中)はこちら。 www.urawareds96.com 24 宮本 優太 ルーキーイヤーで公式戦22試合の出場はならば浦和の大卒1年目としては良いシーズンだった部類に入るんじゃないかと思います。同期の安居がほとんどプレータイムを得られなかったこと、同じポジションのライバルが酒井宏樹、馬渡和彰であることを考えると望外に出場機会を得られたと言えるでしょう。ただ内容的には厳しいものが多かったシーズンでした。 当然思い出されるのは26節セレッソ戦のリスタートお膳立て事件で、あれはチームからかなり怒られたみたいです。あのミスから本人がメンタル的… <p>(上)はこちら。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2022シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F01%2F07%2F160708" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/01/07/160708">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p>(中)はこちら。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2022シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F01%2F17%2F172116" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/01/17/172116">www.urawareds96.com</a></cite></p> <h5 id="24--宮本-優太">24    宮本 優太</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015016.png" border="0" title="" width="1053" height="477" loading="lazy" /></p> <p>ルーキーイヤーで公式戦22試合の出場はならば浦和の大卒1年目としては良いシーズンだった部類に入るんじゃないかと思います。同期の安居がほとんどプレータイムを得られなかったこと、同じポジションのライバルが酒井宏樹、馬渡和彰であることを考えると望外に出場機会を得られたと言えるでしょう。ただ内容的には厳しいものが多かったシーズンでした。</p> <p>当然思い出されるのは26節セレッソ戦のリスタートお膳立て事件で、あれはチームからかなり怒られたみたいです。あのミスから本人がメンタル的にかなり落ちたであろうことは想像に難くありません。ただその前からプレー内容はあまり良くなかったので、あのミスどうこうでなくともパフォーマンス的には期待とは違うシーズンとなってしまいました。彼のパフォーマンスについて何が悪かったかを考えるとき、2つの疑問があります。リカルドが宮本をどういう選手だと思っていたのかということと、宮本本人がどういうプレーで勝負しようと思っていたかです。</p> <p>リカルドは昨季、宮本を内側に立たせるどころかIH化させて前5枚としてプレーさせてる時期が長かったのは<a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182423">ガチ対話で振り返った</a>通りです。宮本が序盤プレータイムを得ていたのは5月21日の第14節ホーム鹿島戦~7月2日の第19節アウェーガンバ戦のあたりで、ちょうどチームとしても松尾・佳穂のプレッシングともうやん・OKBのドリブラーを活かすベストメンバーを見つける直前でした。チームのやり方自体がうまく機能していなかった時期ではありましたが、相手陣内のハーフスペースでボールを受けても何をしていいかわからない感じでシンプルに困っている宮本を見るのはまあまあつらいものがありました。もともとボランチの選手ですがターンが上手いわけじゃないので、それが体力を活かす方向でのSB転向の理由だとするとそんな選手にIH仕事をさせるのは厳しかったなと。まあ、これはそんな起用・戦術を採用していたリカルドの問題であって宮本の問題かというとちょっと違うかもしれないのですが。</p> <p>もう一つは宮本自身の話かつ彼のキャリアを考えるうえで大テーマになりうるもので、彼自身が自分をどういう選手だと思ってるのかは根本的に気になりました。本人は交流もある<a href="https://www.chunichi.co.jp/article/266829">長友への憧れを何度か口にしている</a>し、体力お化けで上下動の豊富な小型SBとしては近いものがあるかもしれません。ただ、その他の要素は決して長友と同じタイプではないのではないかとどうしても感じてしまいます。例えばインテル時代の長友を見ると跳ねるように芝を蹴っていて尋常じゃないバネを感じさせます。ボールや局面への反応も速く、基本的には身体能力が高いのが長友の特徴です。一方宮本はどうかというと、長距離はめちゃくちゃ走れるけれど瞬発力に特別なものは感じません。突破のキレを見ていてもウガみたいな初速が速いタイプでもなさそう。となるとそもそも長友のような前線に絡んでいくプレーは同じようにはできないのではないかと思います。加えて最も違うのはゲーム中のメンタリティで、長友のあの好戦的な前ノリ感はまだ宮本からは感じたことがありません。それどころか昨季の宮本は悪い意味で周りを気にしながら隙間隙間に入っていくようなプレーをしていて、自分の特徴を前面に出しているようには見えませんでした。リカルドのやり方に合わせていたんでしょうが、体力自慢の割には思い切って前に飛び出していく回数も多くなかったです。</p> <p>長友のように何度も上下動ができるSBになるという目標自体は全然悪くないと思うんです。一方で、長友のような仕掛けの能力や瞬発力、エリア内でなぜか仕事をしてしまうような大胆さは簡単に真似できない気もします。それよりは、元々ボランチだったことや大学時代に見せていたプレーからして、最終ラインと3列目を行き来しながら組み立てに関わり、アシストの一つ二つ前のパスを前線に供給するタイプの役割は担っていけるんじゃないかという勝手な期待感があります。こうしたスタイルに何度も上下動できるスタミナをベースとした高頻度のオーバーラップが合わさればかなりユニークな選手になれそうではあるんです。そういうわけで内田篤人のようなSBからの組み立てを勉強したら凄くロマンがあると思うのですが、そもそも本人がどういう選手になろうとしているのか、何を自分のユニークネスとするのかというところが昨季のプレーから見えにくかったのは結構残念でした。</p> <p>ところで、宮本はすでにKMSKデインズへの半年間のレンタルが発表されています。海外経験があまりなかった選手だし浦和でキャプテンをやりたいと公言していたので海外はあまり興味ないかと思っていたのですが、武者修行で色々経験したことが刺激になったのかもしれません。馬渡の残留で右SBは引き続き実力者2名体制なので、まともにやったら3番手になる選手をレンタルに出すのはクラブとしても悪くない気がします。ただ酒井も馬渡も二人とも試合に出続けてくれる選手ではないので、いきなり右SBがスクランブルというリスクもなくはないのですが。宮本本人としては自分の特徴を出さないとやっていけない成り上り上等プロサッカー文化に一度染まるのはいいことなんじゃないかと思います。レベルはあまり高くないかもしれないけど、それだけに自分が違いを見せないといけない部分もありますし。リカルドよりはオーソドックスなサッカーをしそうなスコルジャ体制の方が彼にとってはやりやすいかと思っていたのですが、まあこういう選択肢でもいいのでは。マジ頑張れ。</p> <h5 id="25--安居-海渡">25    安居 海渡</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015032.png" border="0" title="" width="1057" height="422" loading="lazy" /></p> <p>加入前の評判は大学ナンバーワンレベルですぐにプロで通用するとも言われていたのですが、ルーキーシーズンは全くと言っていいほど出番をもらえませんでした。リーグ戦は6試合127分、公式戦全体でも383分のみの出場は完全に思ってたんと違います。チーム内での評価はめちゃくちゃ高くて、いろんな選手が期待の若手に名前を上げていたんですが。</p> <p>リカルドが6番タイプのボランチに岩尾を使えてしまうことで序列・競争が難しくなったと言うのは当然あったのでしょう。信頼感の部分ではさすがに勝負できません。あとはもしかしたら、安居は割とシンプルに前にボールを供給していくタイプなのでリカルドのイメージからすると作り出すリズムが速すぎたりしたのかもしれないなと思います。観ている方としては、というか個人的にはリズムよく前にボールを出していく方が好きなんですが、こればっかりは監督の好みが優先されて当然です。そしてこれに関連してポジショニングの考え方として、流経大時代から安居のプレーはアンカーの位置から始まってボールを出し入れしつつ、最後は自分も前に出ていってプレーする、いわば6番をやりながら8番になる動きを得意としていますが、リカルドからすれば6番は6番で中盤の底を空けないでくれ、という感覚があるのかなと思います。自らの立ち位置を含めた盤面のコントロール能力、全体のバランス感覚の共有と信頼感で岩尾と勝負は厳しかったですね。もしくはリカルドに個人的にめちゃくちゃ嫌われたか。</p> <p>で、気になるのは来年はもう少しチャンスがありそうか?という部分。なんとなく、スコルジャ体制では岩尾よりも序列が上になる可能性を期待してもいいのではと思います。ビルドアップも重要ですが、特にプレッシングで前線についていって中盤を押し上げられるかはボランチ選びにあたって重要になりそうというのがその理由で、全体的にプレッシングはリスク高めでも頑張らせる方向になると思うので、飛び出していく前線に中盤がついていけないと組織が崩壊します。ビルドアップはともかく、前に前に出て行く部分では岩尾よりもさすがに安居のほうが優位かなと。セットディフェンスにおいても広いカバーエリアを担当して球際勝負にも勝たなければいけないと思うので、普通に考えれば柴戸と安居はけっこう評価されそうです。</p> <p>そうすると柴戸と競争になるのかな?とも思いますが、もしくは層が薄い敦樹の方の役割を担うというのもあるかもしれません。ACL・GSで見せたようにミドルが撃てる選手だし、前述の通り6番からプレーをスタートして8番に上がっていく「全部やる」系のプレーは安居の真骨頂。全体的に前重心でゲームをデザインしていきたそうなスコルジャ体制では安居のプレーは重宝されそうな気がします。</p> <p>何にせよ実力・経験・実績を備えた浦和の選手たちがこぞって評価するポテンシャルは間違いないと思いますし、来季こそ活躍が見たいところ。正直リカルドにここまで干された理由はわからないですが、ピッチの外と違ってピッチ上ではかなり頼もしいプレーをする選手なので、そこそこのプレー機会さえあれば大丈夫だと信じてます。マジ頑張れ。</p> <h5 id="26--木原-励">26    木原 励</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20230102/20230102000750.png" border="0" title="" width="1054" height="256" loading="lazy" /></p> <p><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">ここ10年の浦和では珍しく高卒で昨季加入。</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">ルーキーイヤーとなった昨季ですが、プレータイムはACLグループステージでの途中出場だけと全くと言っていいほど露出がありませんでした。</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">顔がいいから露出があれば売れそうだったんですが。</span></p> <p><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">唯一の出場となった</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}"> ACL・GL第6節の山東泰山戦では短いながらCFでプレー。</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">面白かったのは意外とCFとしてこだわりがありそうなプレーをしていたことでしょうか。もっと流れたり降りたりするタイプかと思ったら、上田綺世の動きだしをひたすらオマージュしてたのでちょっと意外でした。あの</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">ボール側に体を開きながら半月状に膨らんで裏に抜けるやつは鹿島のFWが代々受け継いでいる印象なんですが、後で出たインタビューでは実際に上田を参考にして練習してるってコメントもしていました。高校時代、徳島の西野太陽とプレーしていた時はセカンドトップ気味で、結構降りてドリブルとかしてた印象だったんですが、先輩である西野が卒業してからはCFとして勝負を決めるプレーをするように意識づけされていたようです。</span></p> <p><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">そんなわけで公式戦のプレータイムは皆無でしたが、身体も1年かけて厚くなった感じがするし、露出はなかったけど成長はあったんじゃなかろかと思います。</span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">そもそも高校時代の実績は正直地味だし、ポテンシャル採用というか素材として獲った感は強かった選手なので、19歳でいきなりJ1の舞台に立てなかったからと言って悲観する必要は全くなし。まあ、浦和がそういう獲得をして大丈夫なのかという話はあるんですが。</span></p> <p><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">というわけで、来季はJ3長野へレンタル移籍。本格的にプロサッカー選手として継続してプレーするリズムを経験し、選手としての実績積み上げを目指すことになりそう。 </span><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">たくさん走るチームらしいので、得点もそうだけどいろんな仕事ができる選手に成長してほしいです。浦和はこの先しばらくCFへの要求が色々と厳しくなっていきそうだし、数年後に浦和で勝負となると相当プレーの幅を広げないといけないかもしれないので。</span></p> <p><span style="white-space: pre-wrap;" data-tt="{&quot;paragraphStyle&quot;:{&quot;alignment&quot;:4}}">エリア内の動きだしは5月の時点で結構サマになっていたし、じっくり期待します。頑張って。</span></p> <h5 id="27--松崎-快">27    松崎 快</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015132.png" border="0" title="" width="1052" height="477" loading="lazy" /></p> <p>えっ、いたっけ?いたよ。やめとけ。実際、昨季のリーグ戦後半17試合のプレータイムが131分とほぼプレーしていないし、全公式戦合計でも612分しかプレーしていないので印象としては薄くなってしまいます。安居もそうですがリカルドに何をすればこんなに干されてしまうのかってくらい干されていました。もうやんがプレーできない時期とか、もう少し試してみてほしかったんですが。</p> <p>シーズン序盤はレギュラー格としてプレーしていたように見えるし、いくつかかなり惜しいチャンスを決められなかったけれどプレータイムあたりのG+Aの数字は悪くないんですよ。リーグ戦全体のプレータイムが369分しかないのでアレですが、それで1ゴールなので0.244。数字としては佳穂とか敦樹と同じくらいで、質的に通用しなかったということではないと思います。</p> <p>じゃあなんで出場機会が増えなかったのか?これは難しくて、選手によっては公表しない怪我を抱えている場合もあるし、コロナの影響があったかもしれないし。練習態度とかで心象が悪くなる場合もあるから外からはなんとも言えません。フランクフルト戦で久々にプレーを観ました感じ、もしかしたらプレッシングとか単純に闘う部分とかで評価が低いのかな?と思う部分はありましたが、確信的には言えません。</p> <p>とはいえ、昨季台頭した大久保やエース級の活躍をしたもうやんと比較するとなんとなく感じる部分がないわけではありません。同じ左利きのドリブラーでキャラは被りますが、松崎はどちらかというと静止から剥がすというよりターンから仕掛けるのが得意なタイプ。張って1on1を待つよりもライン間でボールを受けてターンからゴリゴリ突っ込んでいく方がイキイキしてる気がします。その点OKBやもうやんは静止からの1on1ができるTHE 仕掛け屋って感じなので、リカルドのやりたいサッカーに向いてるのはこの二人の方だったということかも。</p> <p>そんなこんなで期待と全く違うシーズンを過ごしてしまった松崎。レンタル含めて移籍の噂もあったようですが、どうやら残留の可能性が高そう。少なくとも2年契約でしょうし、昨季序盤のパフォーマンスを考えてもクラブが全く使えない選手と考えているということはなさそう。監督も変わるし夏まで勝負してダメなら夏に整理っていう考え方かもしれません。</p> <p>スコルジャ体制にフィットするかどうかと言う意味で言えば、他のドリブラーよりも得点に関わっていく意識が強いので、監督が気に入りそうなタイプではあります。ただ右サイドをやるならもうやん、OKBとの勝負なので、普通に考えれば簡単な競争でないのは明白。いっそのことトップ下という考え方もあるかもしれないけど、そうすると今度は本業FWの選手たちとの争いが待っています。当然プレッシングの強度とか球際の戦いとか、走れるか・闘えるかというのも見られそうですが、最初から諦めるほどの状況ではない気もします。もうやんの稼働率の話もあるし、チャンスが来た時にどんなインパクトを残せるかどうかが重要そう。これはまあ、誰でもそうなんですが。</p> <blockquote> <p>「ここまでの自分の結果には納得していません。正直、今も昔も毎日のように危機感を抱いています。最終局面で違いをつくり出すところに、僕の価値があると思っています。いままで以上に結果に関わる仕事をしていかないと、プロの世界で生き残っていけません」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="J1初ゴールをマークした松崎快はなぜ、厳しい自己評価を下すのか…「来ただけでは意味がない」(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fu.lin.ee%2FC2tdWpS%3Fmediadetail%3D1%26utm_source%3Dline%26utm_medium%3Dshare%26utm_campaign%3Dnone" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://u.lin.ee/C2tdWpS?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">u.lin.ee</a></cite></p> </blockquote> <p>頑張れ。</p> <h5 id="28--アレクサンダー-ショルツ">28    アレクサンダー ショルツ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015145.png" border="0" title="" width="1055" height="478" loading="lazy" /></p> <p>彼のことを何て表現すればいいのか適切か全くわかりません。神?神というよりは仏、カバーリングとビルドアップに優れた仏。でも洋服の着こなしは基本ダメなのでサラリーマンにはなれなさそう。サッカー選手じゃなければ木こりかメタラー。何の話ですか?</p> <p>今季はあらゆるコンペティションに出場しまくり累計プレータイムは4,000分越え。なにはともあれこれだけ稼働し続けてくれて感謝しかありません。ディフェンス面の最強さ、ビルドアップの安定につながるボール保持・持ち運びに加えて、PKキッカーとして6得点で失敗なし。文句がない。このパフォーマンスでベストイレブンに引っ掛からなかったことは本当に申し訳ない。シンプルにチームとしての結果が足りなかったことが原因です。ごめんなさい。まあ、僕は謝る立場でもないしショレはチームの結果が出なかったのは自分の責任でもあると言うでしょうけど。プレー以外では着実に日本語を覚えてくれて完璧にチームと日本文化に馴染み。メディア対応も丁寧で好感度は高まるばかり。もはや終身契約をさせていただきたいレベルの信頼感があります。</p> <p>怪我さえなければ来季もショレのパフォーマンスは間違いないということで、問題は相方選びになりそう。岩波はカタール・アルサッドへ移籍するものの代わりに元ノルウェーU21代表のマリウス・ホイブラーテンの加入が決定済み。スコルジャ体制へのフィットを考えると、岩波→マリウスは完全にアップグレードになりそう。左利きでビルドアップが得意、スピードがあってハイラインに耐えうる選手で、岩波の弱点だった部分が長所に変わるようなもの。バックライン自体はかなり強くなるでしょうし、スコルジャ監督の指向性にも合致します。</p> <p>ただ、外国人CBコンビはコーチングやコミュニケーションの部分でどうかという心配も。周りでプレーするGKやSB、ボランチは日本人しかいないポジションなので、守備対応の中心となる二人だけが外国人選手で日本人をどう動かすのか?見たいな話は来季出てくるかもしれません。まあ二人とも隣国とは言え海外でのプレー経験はあるので、英語での指示出し、コミュニケーションは問題ないと思いますけど。周りが上手く呼応できるかみたいなところは懸念材料かもしれませんが、能力的にはリーグでも抜けたCBコンビになるでしょうし、いくつか試合を見ている限りはスコルジャはバックラインはまず人をしっかり捕まえて対応することを求めている感じもするので、守備組織どうこうよりも強烈な個人能力をバックラインに手に入れられることを喜べばいいかもしれません。</p> <p>そんな中でショレ個人の来季に何を期待するかと言えば、怪我なく過ごしていただき、日本文化を楽しんで、健康で文化的に4,000分プレーしていただければそれで十分です。来季こそベストイレブンにショレの名前を入れましょう。この選手が日本のキャリアで個人賞をとれなかったら嘘と言うか恥です。クラブの恥。</p> <h5 id="33--江坂-任">33    江坂 任</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015158.png" border="0" title="" width="1053" height="479" loading="lazy" /></p> <p>2021年夏に加入なので浦和でフルシーズンを戦ったのは2022年シーズが始めて。公式戦43試合に出場して2,600分のプレータイム。43試合出場は印象より多いものの、そのわりに2,600分は少ない気もします。昨季の江坂はフル出場が多くありませんでした。前線の選手だから試合中の入れ替えは常ですが、特に後半戦はベンチを温める時間も結構多くなりました。2021年シーズンの後半戦は0トップ起用も含めて試合あたりで多くのプレータイムを得ていたことと比べると立場が悪くなったシーズンと言えるかもしれません。</p> <p>昨季のパフォーマンスでいえば、正直、雑に感じるミスはかなり多かった印象でした。またセットプレーの得点機会を昨季はことごとく外してしまったのも痛かった。うまい合わせでシュートは枠に飛んでいたにも関わらずスーパーセーブにあったり、運もなかったかもしれません。リーグ戦1,939分に出場して2得点のみというのは江坂の実力と実績を考えるとかなり物足りないのが正直なところ。リーグ戦における90分あたりのG+A数は0.139とかなり悪い数字でした。これは前線の選手としては関根に続いて2番目に悪い数字で、敦樹や佳穂、明本どころか松崎よりも明確に下です。アシストが上手くつかなかったというエクスキューズはあるかもしれませんが、持っている得点に係る技術、特にアシストの能力からすれば、期待通りとは言えません。</p> <p>パフォーマンスが上がらなかった理由を考えてみると、そもそも、0トップ向きの選手ではないというのがまずありそうです。動き直しの回数が多いかというとそうではないし、収めるのは上手いけれど一発で彼に預けられるかどうかだけのサッカーではさすがに難しいでしょうし。あとはリカルドのシステムとの相性で、すごく悪いわけではないけど、例えば佳穂が降りてビルドアップに加わる場面なんかでは前線で孤立しがちになってしまいます。一度江坂に当てて前を向いてもらって、周囲の選手が飛び出す形を作れれば彼の能力が発揮されますが、前線の選手が降りてビルドアップに参加する状況では必然的に江坂が使える選手が周りに少なくなります。柏時代にオルンガを、浦和ではキャスパーに供給するパスが素晴らしかった江坂ですが、彼自身がトップで出場することになると江坂のパスの出し先がどうしても減るというのはあったかなと。そもそもトップ下で出場してポジティブトランジションの流れから味方FWへ一発刺すのが強い選手だし、個人で何枚も剥がして曲面を打開するプレーがあるわけではないので、とりあえず江坂に当ててなんとかしてもらおうというのはちょっと要求が厳しかった印象もあります。</p> <p>この辺りのもどかしさがシーズン中にちょくちょく出ていた不満そうというかモチベーションの低下を感じる振る舞いにつながっていたのかもしれないなと思ったり、思わなかったり。自分のプレーが出しにくい環境・構造になっていれば選手は敏感に感じるでしょうし。江坂の場合、そもそも論として期待したよりも2022年シーズンのリカルドのサッカーがクローズド思考で動きが少ないことの方が面白くなかったかもしれませんが。やっぱり局面の移り変わりが多いゲームの方が楽しめそうな選手かなと思います。</p> <p>もう一つテーマだったのはプレッシング・プレスバックの貢献度でしょう。正直これはよくわからない部分もあるのですが。2021年シーズンの後半も江坂ー佳穂コンビはよく組んでいたし、正直そこまで大きな不満はなかった記憶です。キャスパーと組んだ時の怪しさは感じましたが、正直キャスパーの方の責任が大きいのかなという印象でした。ただ今季はあまり良い印象がありません。佳穂のプレッシングのうまさが今季さらに向上したのもあるでしょうし、佳穂・松尾と走れる二人、戻れる二人との比較になってしまったとしまって江坂・キャスパーのコンビが目立ってしまったということなのかもしれません</p> <p>そもそも、「全員で守備をする」というと聞こえがいいですが、ポジティブトランジションで誰がボールを収めてみんなが上がる時間を作るの?という話もあるからなんとも言えない部分があります。江坂が前残りしてボールをキープしてくれて助かるという場面もありました。やっぱり江坂の理想で言えばある程度守備のリスクを負ってでも江坂+1は前で構えてカウンターに備えるやり方が心地よいだろうし、そういう環境を用意しないという意味でリカルドとは相性がよくなかったかもしれません。</p> <p>個人的には彼のゴールに関わる能力はスコルジャ体制で活かせそうだと思っていたので、今季蔚山現代へ完全移籍することになったのはかなり残念。スコルジャはある程度リスクを許容してでもゲームを動かすでしょうし、前線も1トップ+2列目の3枚は流動的に中央でプレーする傾向があるので江坂のパスコースも増えただろうし、創造力や技術は武器になるだろうなあと思っていました。本人としては年齢を考えても海外を経験するならラストチャンスだろうし、オファーがあった中で選んだことなのでしょうけど、シーズン序盤のインタビューでは「海外は考えない」とか言ってませんでしたっけ、と思ったり。</p> <p>ちなみに、移籍する際のコメントが思ったより悪くなくて円満に近い形で退団する雰囲気を出してくれたのは不幸中の…幸いではないけどまあ良かった部分。本当のところは知らないけれど。すごく好きな選手だったので浦和でプレーを見せてくれて嬉しかったです。頑張って。</p> <h5 id="40--平野-佑一">40    平野 佑一</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015211.png" border="0" title="" width="1057" height="417" loading="lazy" /></p> <p>2021年夏に加入して以来「いつそこを見てた」系のパスができるボランチとして、そしてクラブの動画コンテンツで不思議な踊りをする人として熱い人気を博している中堅ボランチ。個人的には水戸時代から相手を見てプレーすることがちょっと他に例がないくらい上手い選手としてお気に入りです。</p> <p>2021年は加入以来ほぼ即戦力としてシーズン後半戦で活躍しましたが、昨季は3月6日の第3節ホーム湘南戦で負傷交代、ACL・GSで復帰するもそこからプレータイムが伸びず、久々にチャンスを与えられた8月6日第24節アウェー名古屋戦でまたも負傷。結局公式戦は13試合607分の出場にとどまり、特にリーグ戦は9試合しか出場できず苦しいシーズンとなりました。</p> <p>当然、ポジション争いを考えれば「岩尾っぽい選手」枠で加入したのにその半年後に本物の岩尾が加入するのは聞いてない案件でしょう。とはいえ平野のプレー選択は結構一発で前の選手を使う判断が多く、相手を見るとは言いつつも、それは相手の隙を突くために相手を見るのであって、ゆっくりと盤面を整える、状況をイーブンにしてゲームを安定させるという志向とは結構違うところがあったので、それを個性の違いとして上手く使っていければ良かったのですが、怪我もあったし使いたいところで使えなかったんだよというリカルド側の言い分もあるかもしれません。</p> <p>そんなわけであまり印象を残せなかった昨季の平野ですが、スコルジャ体制ではこれまでの序列に関係なく競争していけそうな雰囲気。というのも彼のサッカー感とスコルジャ監督の目指す方向性というのがマッチしていそうで、それは昨年の彼のインタビューによく表れています。</p> <blockquote> <p>「相手の前線のフィルターは剥がせていると思うんですが、次のところで少し距離がある。後ろに人数を使っているぶん、前に行ったときに過疎化しているイメージがあるので、前線の個頼みになっている部分がある。</p> <p> 理想をいえば、2センターバックだけでビルドアップして、2ボランチのひとりが前線を助けられるように入っていって、最後で6枚、7枚関われれば、ワンツーだったり、外にボールが入ったときにオーバーラップできたりする。前線の人数を増やすためには下げないで、思い切りのある縦パスを刺して、前の厚みを増やしていきたい」 </p> <p>この発言から2日経ち、平野はさらに頭の中を整理していた。</p> <p>「相手のプレスの波を崩すとき、僕はテンポを大事にしていて。早く前の選手に預けて、のびのびプレーしてもらいたいと思っているんです。あとは前線の選手に任せるというか。ただ、前線の選手たちに各々やりたいことがあるので、そこから各々が早くて、今は敵陣で揺さぶるイメージが少ない。</p> <p> それって過疎化も関係があるけど、そもそも厚みのある攻撃を仕掛けようというイメージがあまりない。味方のいるほうにドリブルして行って味方を使えばコンビネーションも生まれるはずなんですけれど。そこが点の入らない一番の要因かなと思います」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="サブに回っても、ケガをしても、平野佑一が動じない理由「自分に起きた出来事をストーリーとして…」(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fu.lin.ee%2F8f19FnN%3Fmediadetail%3D1%26utm_source%3Dline%26utm_medium%3Dshare%26utm_campaign%3Dnone" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://u.lin.ee/8f19FnN?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">u.lin.ee</a></cite></p> </blockquote> <p>リカルド体制、特に2年目となった昨季ではこうした考え方がリカルドの目指す「長いボール保持による盤面と試合展開の安定」にコンフリクトしたと思いますが、スコルジャ体制では逆に歓迎されそうな気がします。リカルド体制での岩尾がどれだけ信頼され重用されたかを考えても監督の志向とボランチのサッカー観、プレー選択の一致は非常に重要であり選手にとってはアドバンテージになるはず。このあたりを上手くアピールして他のボランチの選手たちとレベルの高い競争をしてくれればと思います。個人的に思い入れの強い選手なので、期待です。</p> <h5 id="42工藤-孝太">42 工藤 孝太</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20230102/20230102000801.png" border="0" title="" width="1056" height="257" loading="lazy" /></p> <p>今季もリーグ戦の出場はなしで、公式戦はACLグループステージの山東泰山戦にフル出場したのみと、出場機会に恵まれないシーズンに。昨年はユースの試合+ルヴァンでの出場といい感じでチャンスを貰えそうな雰囲気でしたが、今年は悔しいシーズンとなりました。試合数が少なすぎて何かを語るのは難しいのですが、去年に比べて身体が分厚くなった感じはあり、ボールを扱う技術にも安定感が増したような感じはあります。公式戦ではないですがフランクフルト戦は左SBとしてプレーし高い位置で仕掛けてクロスを上げるなど意外なプレーも披露してくれました。</p> <p>今季の浦和はショルツ+岩波のコンビが絶対的だったことに加えて同じ左利きでJ2でのキャリアがあり身長も近い知念がレギュラーにチャレンジするという構図でしたので、キャラ被りの工藤にはなかなかチャンスがありませんでした。来季のCBの陣容がどうなるかはまだわかりませんが、工藤に都合よく考えたとしても岩波が抜けて犬飼が戻り、ショルツと犬飼が右利きとして2枚、知念と工藤が左利きとして2枚と4番手として数えてもらえるかどうかという感じでしょうか。来季も劇的に序列が向上することはなさそうな感じなので、レンタルで武者修行が妥当かも。足りないのはやはりタフさになると思うので、ここはひとつg(以下略)</p> <p>とかなんとか言ってたら来季はJ2昇格組の藤枝MYMCに期限つき移籍することが発表されました。藤枝はかなり繋ぎたいチームらしいし自分達の色を出さないならサッカーやってる意味がないくらいの突き抜けた理想主義を掲げるチームらしいので、左利きのビルドアップ型CBの良さを存分に発揮してほしいところ。J2ではまだ厳しい部分もあるかもしれませんが、上手くいけば大きな経験が得られそうです。頑張れ。</p> <h5 id="44--大畑-歩夢">44    大畑 歩夢</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228015223.png" border="0" title="" width="1056" height="416" loading="lazy" /></p> <p>昨季鳥栖から加入の若手左SB。鳥栖のSBといえば中野伸哉くんが有名ですが、大畑も負けず劣らず有望な選手です。今季はリーグ戦22試合に出場し1422分プレー。特筆すべきはベンチ入り回数の少なさで、リーグ戦でベンチに座ったのはたった3回。つまり、使えるならほぼスタメンで使いたいという信頼を得ていたことになります。まあそもそも昨季の浦和は左サイドバックの陣容が心許無く、両サイドができると期待されていた馬渡のコンディションがアレでアレだったりしたために大畑に頼るしかないような状況があったのも事実ですが。</p> <p>パフォーマンスとしてはビルドアップの安定感はポジションを争うライバルの間では頭ひとつ抜けていたかなという印象です。ボールの置き所が良いし、あまりガチャガチャしないのでボール保持の局面では非常にスマートな印象。ただ本人が得意と言っていた前線に駆け上がってクロスなりゴール前の合わせに関わったりする部分はあまり出ず、アシスト数もたったの1と不完全燃焼感は否めません。また守備では激しく鋭く寄せられるのが良さでしたが、ACL準決勝でのPK献上なんかを見ると相手のレベルが上がるとまだ少し苦労するのかなという印象。身体が大きい選手じゃないので、相手のフィジカルレベルが上がって体格的なハンデが大きくなるともっと予測やポジショニングの精度を上げていかないと力づくで攻略されてしまうようなシーンが増えるのかなという印象もあります。</p> <p>とはいえ昨季は加入時点で負傷を抱えておりまともにキャンプもやっていない状態だったので、本人曰くシーズンを半分以上消化する夏ごろまではコンディションが上がりきらないままプレーしていたとのこと。リカルドもそれを踏まえて前半45分だけの出場とするなどプレータイム管理はかなり慎重に行っていたようです。こうした状況を考慮するとキャンプからしっかり準備できる来季はもう一段上のパフォーマンスを期待してもいいのかなという感じでしょうか。<br />戦術面で言うと前5枚に入って早めに高い位置をとる役割よりは、最終ラインに止まってビルドアップに関わりつつ縦パスが入ったタイミングに合わせて一気に前線に絡んでいくプレーの方が得意そう。そういう意味ではリカルドの戦術との親和性は実はそこまで高くなかったのかなという気もします。スコルジャ監督はSBにあまり特殊な役割を求めない印象で、内側に入ってプレーする要求も強くないように思えるので、来季の方が大畑にとってはやりやすいかも。問題はコンビを組むSHですが、これもSHが内側をとってくれる選手の方が大畑は色々やりやすいはずなのでポジティブか。松尾は問題ないでしょうが、シャルクあたりを上手く使ってくれるとワクワクが広がりそうです。<br />かなり大人びたプレーをする頼もしい選手なので忘れがちですが今年22歳になる年でまだ大学4年生相当。そう考えるととてつもないポテンシャルというか対応力ですが、大きな怪我をしないように一歩一歩ハイレベルな経験を積んでほしいと思います。</p> <h5 id="監督リカルドロドリゲス">監督  リカルド・ロドリゲス</h5> <p>すでに<a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182432">ガチ対話でチーム全体のパフォーマンスについての話はたくさんした</a>ので、ここでは割愛。2年目のシーズンは自らの志向をかなり押し出してチーム作りを進めた印象でしたが、なかなか結果には繋がりませんでした。全てが終わった今考えると、リカルド個人は良い人材だと思いますが、プロフェッショナルフットボールがどんどん科学され、知見が深まり専門性が増していく現代においては、リカルドはリカルド個人でなんとかしようとする部分が大きすぎたのではないかという気がします。別の言い方をすればそれは、クラブ自体がリカルド個人でなんとかできる範囲に非常に大きな期待をしていたということでもありますけど。リカルドは就任時に通訳の小幡コーチ以外は徳島から引き抜かず、その徳島でもほとんど単身乗り込んで日本人コーチたちと時間をかけてチームづくりを進めた(そしてそうして日本人コーチにノウハウを提供することも自身の就任の意義とポジティブに語っていた)わけですが、こうしたアプローチはこの先段々と淘汰されるのではないかという気もします。もちろん欧州のトップレベルでも監督+コーチ一人だけの非常に小さなユニットでチームを組んでいる例、そもそもコーチを引き連れないことをモットーにする例もあるとは思いますが、サッカーに限らない話として考えても、それぞれの専門家が結託してチームを作り、長年仕事をすることで経験や言語化されない感覚を共有し、それぞれの専門性を活かして仕事をした方がプロジェクトは早く進むだろうなという感覚はあるわけで。</p> <p>そういう観点でいうと、今後のリカルドのキャリアを考えたときにどこかに、特に欧州のどこかに拠点を持ってチーム・リカルドを立ち上げていくことは彼にとってメリットが大きいのではないかと思います。そもそも監督キャリアはアジアばかりで欧州の感覚からすれば流浪の人という感じでしょうから、これまでは現場で一緒に仕事をして信頼しあえる人材、特にスペイン人人材というのを集めにくかったかもしれませんし。本人の希望キャリアはイングランドでの仕事みたいですが、たとえチャンピオンシップ以下のカテゴリーだとしても単身乗り込んで3年・4年のスパンでチームを作るという感覚は受け入れられにくそうな気がします。人柄は素晴らしいし友達は多そうなんで、良い相棒や参謀を見つけるのが今後のステップアップに重要かもしれません。</p> <p>あとはどうしても戦術やシステムに人を当てはめるタイプなので、大駒の扱い方に難を抱えがちというのは明確に弱点となると思います。しかも欧州レベルでは本人に実績がないので日本よりも難しそう。実績がありロッカールームでの存在感が大きい選手をどのようにチームに組み込むか、もしくは自らの理想とする戦術的機能をある程度妥協しても選手同士のシナジーを発揮させる方向の采配を取り入れられるかどうかなど、言語化・理論化されにくい、いわゆる"ボス"としてスキルというのはもう少し必要なのではないかなというのが正直な印象です。</p> <p>とはいえ、浦和レッズというクラブの経緯を踏まえればビルドアップのみならず現代的なサッカーの常識・感覚にキャッチアップできていなかったチームを預かって、チームを部分的にでもモダナイズさせてくれたことは大きな功績で感謝するばかり。ビルドアップの基盤があるのかないのかはどんなサッカーをするにしてもチームの安定性という意味で重要なポイントになるので、少なくともこの点に関してはリカルド・レッズを少しでも知る人は評価するだろうし、もしかするとそうして少なくともビルドアップの基礎を植え付けてくれ、というオーダーで仕事をとっていくのかもしれません。</p> <p>欧州でキャリアを積んでほしい気持ちもありますが、彼の年代の監督でアジア圏でこれだけ名前が売れている人もなかなかいないので、そう遠くないうちにアジアに帰ってくるのではないかという気がします。それが日本なのか韓国なのかそれとも西アジアなのか、はたまたアジアではなくアメリカなのかわかりませんが、「サッカー未開の地」でビルドアップとクローズドなサッカーを布教する人になっていたら面白いなと思いました。</p> <p>またいつか。</p> <h5 id="チラウラー96">チラウラー 96</h5> <p>今季のレビューは最も出来の悪かったルヴァンカップ準決勝第2節ホームC大阪戦のみと期待はずれの結果に。</p> <blockquote> <p><span style="color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-size: 16px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;">レッズが勝負の3年目を迎える来季はACLを含む過密日程への対応が求められることに加え、チームの完成度がこれまで以上に高くなるため勝負を分ける細かい狙いや流れの描写、戦術的配慮の観察をより高いレベルでこなしたいところ。</span></p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(下) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F28%2F182837" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/28/182837">www.urawareds96.com</a></cite></p> </blockquote> <p>と昨オフに言っていたのはなんだったのか?そもそも書いていないとは。</p> <p>言い訳をすると同じような構造・課題を露呈する試合が長く続き、またフットボール本部の目指すコンセプトの体現という意味でもかなり評価が難しい方向にチームのプレーが流れて行ったので書いているとネガティブになり過ぎてしまうという感覚があったのですが、それはそうと記録は残しておいた方が良かったよねという反省もあります。この点はゆうきさんやKMさんが精力的に活動していて今年も二人は凄いなあと思ったのでした。もっと書く人が増えるともっと楽しいのにと思います。みんなに期待。</p> <p>その他のパフォーマンスでは、「個人的に今後が気になる選手」シリーズからは高橋利樹が今季加入し3年連続で浦和の新加入選手を先出しすることに成功し最低限の面目を保ちました。今季も記録を継続することが期待されますが、だんだんと浦和のスカッドも固まってきており、またJ2に有望な若い才能が多く集まる傾向も強まっており難易度は増しています。また「3年計画」の振り返りでは9万字に及ぶガチ対話を書き上げ、マクロな視点、戦略面での取り組みを記録・考察していく面では一定の存在感を発揮したと言えるかもしれません。ただガチ対話シリーズは「長すぎて読んでない」という極めてシンプルな理由で期待したほどのPVを得られず、世間からのリアクションはイマイチ。とはいえこれが「チラシの裏」であり、「チラシの裏にでも書いてろ」と言われそうなことを書きつける場所という意味ではこれは正しい方向性のパフォーマンスであり、これまでで最長の文章量をまとめきったことで今後もニッチな読み物として戦っていく意思を強めたとも言えます。</p> <p>来季は個人的に期待度が高いスコルジャ体制の船出ということで、ゲームの感想を残していくモチベーションも回復していきそう。昨年に引き続きサステイナブルな取り組みをテーマに、マイペースにやりたいと思います。</p> <p> </p> <p>というわけで浦和レッズの2022シーズンに関するチラ裏はこれにて終了。昨シーズンも長文にお付き合いいただきありがとうございました。それでは。</p> reds96 2022シーズン全選手振り返り(中) hatenablog://entry/4207112889948774406 2023-01-17T17:21:16+09:00 2023-08-06T01:12:36+09:00 (上)はこちら。 www.urawareds96.com 12 鈴木 彩艶 世界に誇る未完の大器は昨季も西川とのハイレベルなポジション争いに晒されることに。浦和ではリーグ戦2試合とACL4試合、ルヴァンカップ2試合の8試合にフル出場しゴールを守りましたが、本人としても期待していた出場機会を勝ち取ることはできなかったというのが正直なところでしょうか。クラブとしても彩艶を大成させたいという願いと責任感からジョアンを招聘したと思いますが、それで弱点を改善した西川の壁がさらに高くなってしまうという若干皮肉めいた結果となりました。 彩艶のプレースタイル、特徴を西川と比べると、シュートストップの迫力や反応… <p>(上)はこちら。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2022シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F01%2F07%2F160708" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/01/07/160708">www.urawareds96.com</a></cite></p> <h5 id="12--鈴木-彩艶">12    鈴木 彩艶</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014151.png" border="0" title="" width="1054" height="540" loading="lazy" /></p> <p>世界に誇る未完の大器は昨季も西川とのハイレベルなポジション争いに晒されることに。浦和ではリーグ戦2試合とACL4試合、ルヴァンカップ2試合の8試合にフル出場しゴールを守りましたが、本人としても期待していた出場機会を勝ち取ることはできなかったというのが正直なところでしょうか。クラブとしても彩艶を大成させたいという願いと責任感からジョアンを招聘したと思いますが、それで弱点を改善した西川の壁がさらに高くなってしまうという若干皮肉めいた結果となりました。</p> <p>彩艶のプレースタイル、特徴を西川と比べると、シュートストップの迫力や反応の速さ、届く範囲の広さはサイズの違いもあって彩艶に魅力がありますが、ビッグセーブを繰り出す集中力、1on1に陥った時の駆け引きのうまさや落ち着きは西川に素晴らしいものがあり甲乙つけがたい感じ。ビルドアップでは近いところを使うのは彩艶の方が得意そうというかスムーズにやれていますが、パントキック、フィードを武器にしているのは西川の方でしょう。キックの飛距離は彩艶に軍配が上がりますが、さすがにトッププロのレベルで飛距離が出るだけでどれだけの魅力になるのかという感じは正直あります。昨季差が出たのはクロス対応や前方への守備対応で、西川がこの部分を大きく改善したことに対して彩艶はまだチャレンジしすぎという印象。ゴールにへばりついているよりもサイズとフィジカルを活かしてハイボールにチャレンジすべきだとは思いますが、チャレンジしたのに目測が合っていなかったり無謀なチャレンジになっていたりと言うシーンが目につきました。</p> <p>ただ彩艶の凄いところはメンタル面で、ミスした後のリカバリーの早さ、メンタル的にブレない部分は彼の大きな特徴だと思います。U-23の試合でも飛び出しの判断を間違えながらもすぐにシュートストップに切り替えてセーブを稼ぐなど、局面でみてもゲームを通してみてもミスしっぱなしということがないのは結構凄いことだと思います。若いGKは一発目が良くてもミスをリカバリーができない選手って結構いると思うのですが、さすがにJ1でプレー機会を掴むような選手はリカバリーが上手いし早い。そういう意味では彩艶も良い資質を備えていると思いますし、本人もインタビューでたびたびミスしてもリカバリーが上手くいけば大丈夫と話しているのは頼もしい限り。</p> <p>今季はGKに吉田舜を加えて4人体制となる浦和のGKチームですが、彩艶はレンタル移籍はせずにあくまで浦和で勝負する模様。スコルジャ監督のゲームモデルを素直に解釈すれば高い最終ラインの背後のケアはGKの重要な仕事になりそうなので、シュートストップやビルドアップに加えて単純な機動力、飛び出しの判断なんかも重要な要素になりそう。この部分はリカルド体制ではあまり強調されなかった部分なのでまだなんとも言えませんが、こうした高い要求に応えることができれば彩艶は現代的な素養を備えたGKとして評価も高まるはず。キャリアの到達点としてプレミアリーグでのプレーを目指すと公言している彩艶なので、高い要求にも前向きに取り組んで特大のポテンシャルを開花させてほしいところです。</p> <h5 id="13--犬飼-智也">13    犬飼 智也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014208.png" border="0" title="" width="1057" height="302" loading="lazy" /></p> <p>鹿島から昨季加入のCB。年齢的に岩波と被りクラブとしては岩波の競争相手としてかなりメッセージのはっきりした獲得だったと言えそう。ショルツ不在の開幕節アウェー京都戦は岩波とともに左CBでスタメン出場、前倒しでシーズン2試合目となった第9節ホーム神戸戦〜5試合目となった第10節鳥栖戦にかけては岩波がショルツと共にスタメンを張ったものの、続く3月19日の第5節磐田戦では犬飼がスタメンを奪いショルツとともにプレーしました。ただスタメンを奪った直後の4月2日の第6節札幌戦の後半終了間際に左膝蓋骨骨折・膝蓋腱部分断裂の大怪我で即手術。全治6ヶ月となり公式戦の出場はわずか3試合で早くもシーズンアウトとなってしまい、その後はめっちゃオサレな私生活を見せてくれるインスタが主戦場となりました。そもそもこれまでのキャリアでも大きな怪我をしている選手でクラブもリスクは把握していたと思いますが、シーズン序盤でチームを離脱することになったのは本人にとってもクラブにとっても大きな痛手だったと思います。</p> <p>プレー面の特徴は大きく三つで、ボール保持での落ち着き、ラインコントロールとカバーリングの上手さ(守備戦術)、そしてヘディングの強さ。ボール保持においては岩波に比べてボールを持ちながら体の向きを柔軟に変えられることが印象的で、自分のところでボールを落ち着かせて相手を引きつけられ、ターンも上手いのでボールを循環させボール保持を安定させることができるのはリカルドのチームにとって大きなポイントでした。ライン設定は若干高め。特別スピードがあるという印象はありませんがカバーリングが上手いので味方をボールにぶつけておいて背後をケアする守り方に自信があるのだと思います。そしてヘディングの強さは本人も何度か強調していた通りで、磐田戦ではコーナーから完璧にニアに合わせて浦和での初得点をマークしました。</p> <p>こうした特徴はどれも岩波とは少し違っていて、岩波ほどのフィードやシュートブロックの上手さはないものの総合的には岩波よりもチームに特徴がフィットしていてリカルドは使いたい選手だったはず。若いチームの中では経験も豊富で期待されていた部分は大きかったと思います。クラブとしてはショルツ、犬飼で回しつつ岩波をバックアップに置ける主力級CB3枚の布陣は結構自信ありな編成だったと思いますが、犬飼の怪我でショルツ、岩波がそれぞれシーズン4,000分以上プレーすることになったのは大きな誤算だったでしょう。</p> <p>今季は新監督のもと新たな競争に挑むことになりますが、CBの重要性というか求められるレベルの高さはリカルド体制よりもさらに高く責任も大きくなりそう。なるべく高い位置に組織をセットするので裏のケアは重要ですし、相手の2枚、3枚でのアタックを同数または数的不利の状態でケアしなければいけないシーンも多くなりそうです。そういう意味で編成的にはCBにはお金をかけて質の高い選手を集めておく必要があり、犬飼にスピードを足して左利きという特徴も持たせたような選手であるホイブラーテンが新加入決定。こうなると、昨季クラブが岩波に求めたであろう「実力ある3番手」の立ち位置を今度は犬飼が務めることになるのかもしれません。</p> <p>まずは大きな怪我を連発させないことが何より重要なのであまり急ぎすぎず調整してほしいですが、玄人受けするプレースタイルでファンからも期待されているはずなのでチームに貢献する姿を見せて欲しいところ。頑張って。</p> <h5 id="14--関根-貴大">14    関根 貴大</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014221.png" border="0" title="" width="1058" height="478" loading="lazy" /></p> <p>公式戦45試合出場、合計2,421分のプレーは主力としてまずまずの数字でしょうか。シーズン最後に右膝の遊離体を取り除く手術をしましたが、今季以降のことを考えれば良い判断だったと思います。浦和はこれまでも遊離体の痛みと付き合ってプレーしていた選手が何人かいましたが、悪化するとあからさまにプレーに出るほど影響があるわりに手術するまで怪我として公表されずに見ている方からはわからず、プレーが落ちたとか衰えたとかという批判につながりがちで厄介でした。今季も遅れることなくスタートできるということで、タイミングよく早めに解決できたのはラッキーだったかも。</p> <p>ここ数年、浦和に復帰してからの関根はとにかくずっと悩んでもがいてという印象で、それは今季もあまり変わらず。そもそもデビュー時のチーム状況が非常によく、森脇や武藤のサポートを得て右サイドでの1on1要員としてチーム大きく貢献できていたことでデビューから数年のイメージが良すぎるというのが根本にある気もしますが、欧州挑戦を経て筋肉が増えたからなのか怪我のせいなのか近年は一瞬のキレ、相手の重心をハックして静止からズレを作る独特の1on1もあまり見られなくなり、チームメンバーも大きく入れ替わったことで万能系アタッカー的な立ち位置に収まっている感じがします。こうした悩みというかプレースタイル探しについては本人もたびたびインタビューで口にしており、昨季も以下のような赤裸々なコメントを残しています。</p> <blockquote> <p>「以前よりもパスワークを重視するサッカーになり、自分に足りなかった要素を、自分のものにしたいと思って取り組んできました。その結果、周りを見て適切なポジショニングが取れるようになったと思っていますし、相手のやり方を見て自分のプレースタイルも変えられるようになったと感じています」</p> <p>(中略)<br />「試合に関わっていないように見えてしまうことも多いかもしれないですが、周りを動かすプレーやチームをうまく機能させるプレーができるようになってきた。自分が今、スタメンで試合に出られている意味を考えたとき、そこが強みだとすら思っています。周りを活かすプレーが成長したからこそ、監督に評価してもらえている実感があります」</p> <p>(中略)<br />「今までの自分になかったものを得たぶん、今まで自分が持っていたものを失うじゃないですけど、なくしてしまっているのではないかということに気付いたんです」</p> <p>(中略)<br />対戦相手やファン・サポーターが自分に対してどういうイメージを持ってくれているかを考えたことはありましたけど、チーム内でどう見られているかは考えていなかった。ここ最近、周りを活かそう、活かそうということばかりを考えてプレーしてきた結果、自分を活かしてもらおうとなったとき、個で相手をはがせる選手というイメージの共有ができていなかったのではないかと思ったんです」</p> <p>(中略)<br />「できることが増えたことによって、チームのためにという意識が、自分の頭の中でも大きなパーセンテージを占めていましたが、それを逆転させるくらいのつもりでプレーすれば、周りにも伝わると思うんですよね。イメージを変える作業は、決して簡単なことではないと思いますが、やり続けていかなければ変わらない。」</p> <p><a href="https://u.lin.ee/2c9zi8i?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">「パスが出てこないのは自分の問題」今一度、魅せるために関根貴大が強く決意「イメージを変える」(浦和レッズニュース)</a><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「パスが出てこないのは自分の問題」今一度、魅せるために関根貴大が強く決意「イメージを変える」(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fu.lin.ee%2F2c9zi8i%3Fmediadetail%3D1%26utm_source%3Dline%26utm_medium%3Dshare%26utm_campaign%3Dnone" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://u.lin.ee/2c9zi8i?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">u.lin.ee</a></cite></p> </blockquote> <p>さらにシーズン終了後のインタビューでは</p> <blockquote> <p>「僕が前でプレーしているとき、逆にみんなにそう思われているかもしれませんね。『サイドバックのほうが生き生きしているんじゃない?』って。それはそうなんですよ。違うポジションで少しうまくいったら勢いに乗れるし、長年やってきたポジションでうまくいかなかったら、つらい。だから、ミヤへのアドバイスは、自分へのものでもあるんですよ。自分に返ってくるんです」</p> <p>(中略)</p> <p>「こんなんじゃよくない」</p> <p>「落ち着いてしまうのはよくない」</p> <p>「ピッチ上のことは成長していない」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="子どもだった関根貴大が今、後輩から慕われる理由とは「何でライバルにアドバイスしているんだろう?」(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fu.lin.ee%2F3UxZlzJ%3Fmediadetail%3D1%26utm_source%3Dline%26utm_medium%3Dshare%26utm_campaign%3Dnone" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://u.lin.ee/3UxZlzJ?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">u.lin.ee</a></cite></p> </blockquote> <p>と話していたり。この3年間で内側、外側それぞれのレーンでの立ち位置の取り方やボールの受け方、周りの選手との関わり方はかなり向上したし、左右のサイドで違和感なくプレーができ、切り替えや球際の頑張り、クラブの歴史を知っており埼スタが伝統的に求める熱量の出し方を知っている、これだけでも十分クラブにとって貴重な存在で、なかなか代替できる選手はいないのですが、それでもやはり観る側としても本人としても、ドリブラー関根貴大の残像は無視できないのでしょうね。</p> <p>こうしたある種のエモさとは別に、現実としてはたしかに局面を動かす個人の勝負の部分で物足りなさはありました。<a href="https://www.football-lab.jp/uraw/ranking/">Football Labのドリブルポイントは松尾、大久保、もやんに次ぐ4番手</a>。攻撃ポイントは9番手となっており、ゴールポイントにいたっては圏外と攻撃面でインパクトを残したとは言い難い状況。スカッド事情やリカルドの構想する可変システムの中でSBでのプレー機会を与えられたのも、前目の選手として拮抗したゲームを変えられる選手ではないという評価が透けて見えます。</p> <p>とはいえ僕は個人的に関根がSBをやることにはポジティブで、本人が後ろ向きでないなら今後も試していく方がいいのかなと思っています。ボールを保持して相手を押し込んだ際にゴールを奪い切りたい場面では6枚目のアタッカーとしてSBがエリアの近くで直接得点に関われるかどうかは非常に重要で、そうしたSBがスカッドにいるかどうかはマリノスやフロンターレといった攻撃力自慢のクラブとその他のクラブとの違いとなっていると思います。どんなサッカーをするかにもよりますが、こうした役割をこなせる選手は今のところそうたくさんいるわけではないので、浦和としてはパフォーマンスの良し悪しだけで簡単にカットしたくない人材である関根にこうしたタスクを任せるというのは理にかなっているというか、やってくれるなら助かるのではないかと。当然関根のドリブルでの突破力が今後発揮されていけばそのままアタッカーとして活躍してもらえばいいのですが、もしそうならなかった時に、手詰まりになってただただ出場機会を失っていくよりはポジションを下げて新しい役割を手にするというのは彼本人のキャリアを伸ばすという意味でも便利だと思いますし。当然サイズや守備対応の問題はありますが、少なくともオプションとして持てると面白いのかなと思います。</p> <p>ちなみに、6月26日の第18節アウェー神戸戦でJ1通算200試合出場を達成(まさかのSB出場)。欧州挑戦前の最初の100試合は超特急で達成し、楽しくサッカーをしていたら100試合過ぎていましたという感じでしたが、復帰後の100試合は苦労が多かったかもしれません。ユース出身者の括りで言えばJ1最多出場の記録は宇賀神の297試合が最高。昨今の欧州移籍へのハードルの下がり方を見ていても大台となる300試合達成、さらにその先の400試合に挑めそうなのは今後10年で関根くらいではないかと思いますので、是非とも達成して欲しいところ。次の100試合でどんな関根を見せてくれるのか、彼のキャリアを語る上で非常に重要な挫折である2019年のACL決勝の雪辱を果たす舞台もある今季、サッカー選手として完成されていく関根貴大の活躍を期待したいと思います。</p> <h5 id="15--明本-考浩">15    明本 考浩</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014231.png" border="0" title="" width="1055" height="478" loading="lazy" /></p> <p>昨季は47試合3,059分の出場でフル稼働。2021年シーズンも47試合3,461分の出場だったので、出ずっぱり傾向のあるGK・CBを除けばこの2年間チーム内で最も働いた選手と言えます。明本の場合はたくさんのポジションで起用されるのがやはり大きくて、シーズン最序盤はトップもしくは左SHで出場し、ACL前後からは大畑が離脱した穴を埋めて左SBに回りました。5月はほぼ左SBとして稼働し、6月に入ったあたりでまた左SHや右SHでもプレー。他の選手のコンディションや起用に左右されながらとは言え、リカルドがかなり信頼していたことがわかります。色々なポジションで使えることに加えて、タフな選手なので試合途中の無茶振りも効くのが強いところ。つらいと言いながらやってましたが、トップでプレーした後にSBなんてできないでしょ、普通。これがあるから試合途中のフォーメーション変更もかなり柔軟になるし、ポジションが違う選手同士の交代が可能に。守備的なメンバーから攻撃的なメンバーへの味変をするのにすごく役に立っていたと思います。</p> <p>一方で、7月10日のFC東京戦以降リカルドはベストメンバーとなる11人とシステムを見つけたわけですが、それに応じて明本はベンチスタートが多くなった印象も。大畑が使えない時に左SBで先発する試合もあったのでずっとベンチスタートというわけではないのですが、前線のメンバーが固まったことで若干序列を落とした面はあるかもしれません。こうした競争の厳しさの原因は明らかで、トップやSHで出場していた序盤に決定機をモノにできなかったことに尽きます。後ろのポジションもやっていたとはいえリーグ戦2,099分プレーしてノーゴールなので、前線の選手としてはやっぱり物足りません。京都戦、神戸戦、川崎戦と序盤の勝ちきれなかった試合であともう少しのゴールを決めていてくれたらシーズン全体の情勢もかなり違った気がします。</p> <p>昨季序盤のパフォーマンスで言えば、喉輪事件もありました。正直あの退場で勝ち切れるはずだった神戸戦に引き分けてしまって、メンバー不足で不本意な戦いとなった開幕節京都戦の変な雰囲気を引きずってシーズンを始めてしまった感は否めません。ゲームを見ていれば明本に対するファールのジャッジが相当不利だったことも直前のシーンであからさまに身体に絡みついてイエロー相当のプレーをされていたこともわかるのですが、喉輪で反撃は国道4号線の文化が出過ぎて社会では受け入れられなかったですね。</p> <p>というわけで、明本は出場機会も多かったし貢献度も大きいのですが、チームを一つ二つ上の段階に導くプレーはできなかったという結論になりそう。厳しいですがこれは仕方なくて、やっぱりたくさん出場した選手が責任を負うのは当然のこと。それだけ重要な役割を期待されていたとと言うことでもあります。逆に昨季5点6点と取れていれば代表にどうかって声もあっただろうし、そういう高みに踏み入っていけるかどうかの壁に挑戦できるという意味では充実しているかもしれません。</p> <p>で、来季。スコルジャ監督がどう使うかまだ想像できませんが、どうなるでしょうか。タフでアグレッシブな選手なので基本的に監督が好きそうなタイプではあります。単純に出し得というか出しておけばエナジーを発揮できる便利な選手だし、昨季と同じくいろんなポジションで使われる可能性もありそうです。前線で言うと左SHは松尾が戻りそうだったりで結構競争が激しそうなので、本命不在にも感じるトップ下という手もあるかも。ただそうなるとやっぱり得点に関わる部分で結果が欲しいので、そこは課題になりそうです。なんとなく外国人選手との競争に晒されそうで、一つ一つのプレークオリティの面で要求が一段高くなる年になりそう。ハマればチームの目玉に、ダメなら便利屋に。かなり勝負の年かもしれません。トップでの起用もあるかもしれませんが、どうなるか。</p> <h5 id="16--牲川-歩見">16    牲川 歩見</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014243.png" border="0" title="" width="1056" height="422" loading="lazy" /></p> <p>昨季新加入の195cm大型GK。なんとなく若手感がありますが既に28歳で浦和が7チーム目と結構いろんな経験をしている選手です。ユースから昇格したジュビロでローンに出されまくっていたからなのですが。</p> <p>今季はACLのGS山東泰山戦で後半に28分間出場したのみとほぼ出場なし。ACLでの出場機会も既に大差がついた展開で28分間でまともにプレーしたのは1回か2回だった気がします。たしか試合中に半端ないスコールが降ってほぼ雨に降られただけの人になっていた気がします。</p> <p>と、公式戦ではほとんど見せ場がなかった牲川ですが、PSG戦、フランクフルト戦にはちゃっかり出場し今季日本のチームとは一切対戦していないのにメッシ、エンバペ、ネイマールとは対戦した不思議な選手に。フランクフルト戦は相手のコンディションがかなり微妙でしたが、PSG戦は彼らが来日2戦目だったこともあって壊滅的なコンディションではなく、わりとワールドクラスの攻撃に晒されたと思うのですがしっかり無失点で45分をプレーしました。普通に良いセーブもあったしビルドアップの繋ぎも思ったよりぎこちなくはなかったのでPSG戦を観ていた人は結構好印象だったのではないかと思います。</p> <p>厳しい競争に晒されることがわかっていて浦和に加入した理由はやはりジョアンの指導が魅力だったからのようで、出場機会はなかったものの本人は成長を感じている様子。<a href="https://www.footballchannel.jp/2022/11/26/post485266/3/">シーズンオフのイベントでジョアンが加入直後の牲川のことを「これは冗談なのか?」と言っていた</a>のは基礎のなってなさに絶句したという意味合いだったようですが、逆に考えればこんなぶっちゃけ話をしてもらえるくらいには認められたということでしょうか。彩艶に比べればプレーは安定していると思いますし、このクラブの競争がハイレベルなだけで普通に良いGKなのだと思います。年齢的にもGKとしてはまだまだこれから。日本の公式戦でしっかりプレーを観る機会があればいいなあと思います。</p> <h5 id="17--アレックス-シャルク">17    アレックス シャルク</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014254.png" border="0" title="" width="1053" height="362" loading="lazy" /></p> <p>こちらも昨季新加入。「ブレダの爆撃機」の異名をとったアタッカーで、エネルギッシュなランニングとシュート力が武器。浦和デビュー直後のACL・GS第2戦山東泰山戦で2ゴールを決めたときには逆サイドの展開・折り返しにシームレスに反応しゴール前に飛び込んでゴールを奪い、続いてFKを直接ぶち込んで2ゴールを挙げ大きなインパクトを残しました。一方でリーグ戦では12試合575分の出場と振るわず、ゴールも1つのみ。コンディションの問題もあったようですが正直言ってJリーグへの適応に苦労したシーズンだったように見えました。</p> <p>本人の武器はグリグリとゴールに迫っていくエネルギッシュなランニングと、意外にも?精度が凄い右脚の一振り。そしてACLで見せたようなシュート前の動き出しの良さの部分だと思います。一方で結構トラップが大きめでタッチが細かくないあたりはザ・ヨーロッパの選手という感じ。走りや動き出しはあると思いますが細かい方向転換やアジリティが抜けている感じはなく、全体的に細かい展開が連続するJリーグのサッカーとの相性は微妙なんじゃないかな?というのが個人的な印象でした。実際、ある程度スペースがある局面ではゴールに向かって効果的に動き出してシュートまで持ち込むような姿が見られましたが、狭い局面を任せてもあまりできることはありませんという感じでしたし。</p> <p>スペースと時間がある程度あれば、もしくはファーストタッチがいい感じに決まれば、周囲を使いつつ自分の動き出しの良さも活かしながらプレーできるし、右脚が振れさえすれば高精度のシュートを飛ばせる選手なので活躍のポテンシャルは感じるのですが、リカルドのサッカーではそもそも監督がオープンな展開を嫌う志向でしたのであまり活躍できるシチュエーションが試合の中になかったんじゃないかと思ったり。そういう意味ではスコルジャ体制ではもう少しオープンな状況でスペースを享受できる場面もあるんじゃないかと期待です。ポジションは左SHかトップ下が合っている気がしていて、流動的に中央にポジションを移しながらゴールにアタックするのは最も得意とするところ。昨季はもどかしかったでしょうが、今季はもう少しフィットしやすく、武器を発揮してレッズの攻撃オプションになってくれるのではという期待があります。</p> <p>ちなみに、キャリア晩年は古巣のNACブレダに戻ってプレーしたいようで、NACブレダも同様にシャルクの帰還に期待している様子。引退の準備をする前にぜひにJリーグで一旗あげてください。よろしくね。</p> <h5 id="19--岩尾-憲">19    岩尾 憲</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014305.png" border="0" title="" width="1057" height="480" loading="lazy" /></p> <p>リカルドの「求める全てを持った選手」・リカルドサッカーの伝道師として33歳にして浦和レッズへとたどり着いたピッチ上の哲学者。ビルドアップにおける論理性の高い組み立て、特に味方を使って自分が3手目にオープンになるようなボール回しを一人で実現していく様はまさに異能。中距離・長距離のパス精度に加えてセットプレーでのキッカーもこなし、気づけばリーグ戦29試合2,396分のプレー、全公式戦では43試合3,531分と完全なる大黒柱となりました。</p> <p>僕もそういう傾向があるのでなんとなく感じるのですが、岩尾はたぶん好き嫌いではなくて脳みそが自動的にいろんな事象や経験、観察して見えたものを繋げて無限に思考が続いてしまうタイプの人なんだと思います。それを支えるのはやはり高い言語能力で、徳島時代は岩尾節どころか岩尾ハラスメントと呼ばれていた長文インタビューは浦和でも名物に。常識人らしくうまく言葉を選んだりぼかしたり抽象化したりしているのですが、それでも僕たちのようなチームの状況に少しでもリーチしたい人々にとっては非常に興味深い餌を撒いてくれました。</p> <p>とはいえすべてが上手くいったわけではなく、本人が警戒していたように序盤は「徳島時代のリカルドサッカー」と「浦和のリカルドサッカー」の在り方、ギャップに悩むことに。徳島でやってきたことを知っているから呼ばれたのに、いざ来たら徳島の時と違うことやってんじゃん!という悩みは確実にあったはず。本人も言葉では「徳島と浦和では当然違う」とは言いつつも、彼が経験してきたことを活かしてもらうために呼んだのですからベースは徳島での経験だと思いますよね。いや結構違うんですよじゃないがって感じだったと思います。お疲れ様です。</p> <blockquote> <p>――監督が言うように、チームに慣れるのに時間がかかった、という感覚はあるんですか?</p> <p>「ありますね」</p> <p>――それは、チーム自体に対してですか、それともサッカーのスタイルに対してですか?</p> <p>「すべてですね」</p> <p>(中略)</p> <p>「リカルド監督のサッカーは遅攻で、ボールを繋いで相手を崩していくスタイルですが、それはファン・サポーターから求められているんだろうか、こだわり続けることが正しいのだろうか、と考えさせられた時期がありました」</p> <p> 岩尾がさらに言葉を続ける。</p> <p>「レッズに来るにあたって、『自分はこういうことを求められているんだろうな』とある程度考えを固めてきたんですけど、蓋を開けてみたら、『これはちょっと違うかもしれないな』って。自分が考えていたことと周りが自分に求めていること、自分の特徴や仕事を整理するのにすごく時間がかかったというか、もがく時期がありました……簡単にまとめてしまったので、なんのこっちゃ分からないですよね(笑)」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「このチームに自分がいる理由はなんだろう…」悩み、自問自答を続けた岩尾憲が導き出した答えとは?(浦和レッズニュース)" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fnews.line.me%2Fdetail%2Foa-urawaredsnews%2Fizn4s9caljv3%3Fmediadetail%3D1%26utm_source%3Dline%26utm_medium%3Dshare%26utm_campaign%3Dnone" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://news.line.me/detail/oa-urawaredsnews/izn4s9caljv3?mediadetail=1&amp;utm_source=line&amp;utm_medium=share&amp;utm_campaign=none">news.line.me</a></cite></p> </blockquote> <p>シーズンを消化するにあたって岩尾の中でも「浦和レッズの選手としての自分像」というのが出来上がったようで、それがだんだんとプレーに還元され、そうして新しい岩尾憲が形作られ、そうして結局リカルドが退任するにあたっても浦和でのチャレンジを続けるという決断に繋がったのかな、という気がします。</p> <blockquote> <p><span style="color: #333333; font-family: 'Herlvetica Neue', Helvetica, Arial, 'Hiragino Kaku Gothic ProN', Meiryo, 'MS PGothic', sans-serif; font-size: 16px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;">「自分が一人の選手として、浦和でどうありたいかが僕の中でばしっと固まったというのが大きな要因としてあります。だからこそ、勝ち続けたい意欲がいま強いんです。それはACLでもJリーグでもルヴァンカップでも同じで、まずは次の試合に勝ちたいし、勝つためにどうするか自分で考えて準備しなければいけないので、そこにウエートを置いています」</span></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【浦和】今夜、東アジアナンバーワンへ。岩尾憲の「語り尽くせない」深い思い。「浦和でどうありたいかが僕の中で固まった」 - サッカーマガジンWEB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsoccermagazine.jp%2Fj1%2F17565282" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://soccermagazine.jp/j1/17565282">soccermagazine.jp</a></cite></p> </blockquote> <p>具体的なプレーの面ではやはりビルドアップにおける解決策・引き出しの数は他の選手とは明らかに違いがありました。またリカルドが好むゆっくりとした、時間をかけた前進が出来るのは浦和では岩尾だけだったのかなと思います。平野にしろ柴戸にしろ安居にしろ、岩尾ほど時間をかけて前進できる選手ではなかったのでリカルドとしてはこれまでの経験も含めて信頼感が違っただろうなと。そんなわけで特にシーズン後半は前に出る敦樹とアンカー役をこなす岩尾のコンビが固定され、それにつれて岩尾はかなりタフなシーズンを戦うことに。ACLのタフな戦いはかなりきつかったようですが、それでも大きなけがなくシーズンを走りぬいたことは称賛に値すると思います。</p> <p>こうした経緯や誰もが知ることとなった岩尾のキャラクターや責任感を踏まえると、名実ともにリーダーシップのさらなる発揮が求められそうな来季ですが、スコルジャ体制では監督のサッカーとの圧倒的親和性という大きなアドバンテージを失うことに。彼のプレースタイルの場合年齢は技術や経験である程度カバーできるのでしょうが、明確な弱点としてそもそも足が遅いというのがあるので全体をがっつり押し上げてプレッシングに出る戦術にどこまで対応できるかは未知数。高いポテンシャルを有する安居や無理めな仕事をさせたら日本代表級の柴戸との争いは結構激しくなりそうです。</p> <p>岩尾本人のキャリアに目を向けると、そもそも湘南でプロデビューした際に走るサッカーと特徴が合わず怪我も多く全く目が出なかったという苦い記憶があるはずで、まさかこのキャリア晩年でこういうサッカーをやることになるとは思っていなかったかもしれません。とはいえリカルドが退任する時点で、またフットボール本部が本来目指したいサッカーを実現させる中でこうした齟齬があるのは明らかだったはずで、こうした歪を飲み込んででも岩尾に期待するものがあるからこそ、同時に本人も感じる部分があるからこその完全移籍なのでしょう。ぜひ自信をもって、部長への昇進を狙ってほしいと思います。</p> <h5 id="20--知念-哲矢">20    知念 哲矢</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014320.png" border="0" title="" width="1054" height="479" loading="lazy" /></p> <p>昨季FC琉球からめんそーれした中堅左利きCB。2021年シーズンの僕の注目選手の一人だったこともあり、個人的にはわくわくの新加入でしたが、ふたを開けてみれば公式戦出場はたった12試合、603分のプレーに留まり悔しい結果に。ACLで2ゴール、リーグでも1ゴールと謎の得点感覚を発揮しインパクトを残したものの、特にシーズン前半はリーグ戦のプレータイムが1分のみと全く試合に絡むことができず、犬飼の怪我でCBの選手層が早々に薄くなってしまったチーム状況を踏まえると彼にとってはかなり悔しかったはずです。本格的に出番が回ってきたのはショレが不在だった7月30日の第23節ホーム川崎戦、続く第24節アウェー名古屋戦で、それぞれフル出場。初先発となった川崎戦では若干危なっかしく、また緊張していた感じながらも無難にゲームをまとめましたが、名古屋戦ではエリア内で股を通され失点、前半終了間際に浮き球の処理ミスからカウンターを受けて失点と2失点に絡んでしまい勢いに乗ることが出来ませんでした。</p> <p>本来の彼の特徴はビルドアップの上手さ、特にサイドへの展開の大胆さ・精度の高さと、力強い対人守備なんですが、昨季のプレーは緊張なのかJ1対応に苦労したのか、能力を100%発揮したとは言えないパフォーマンスでした。僕の感覚では70%くらいしか出せていないのではないでしょうか。特にビルドアップにおいてサイドにつけるボールは今季一度も見せることがなかったので個人的には残念でした。コメントではリカルドのサッカーで必要なビルドアップのボールの回し方が琉球時代と結構違ったということを言っていたので、そのあたりの対応力は今後問われるかもしれません。</p> <p>というわけで本領発揮を目指したい2023年シーズンですが、相変わらずセンターバックの競争は知念にとって厳しいものとなりそう。今季新加入となるホイブラーテンは同じ左利きでサイズもスピードも経験も上と完全な上位互換となりそう。クラブとしては左利きCBに質の高い助っ人と中堅日本人選手を擁する陣容は充実していますが、知念にとっては完全に蓋をされる形。ホイブラーテンの稼働率がわかりませんが、場合によっては2023シーズンも出場時間の確保は難しいかも。ショルツが右も左も関係なくできてしまうので、ホイブラーテンどうこうがなくてもショルツ-犬飼のコンビが立ちはだかるというのがただでさえ厳しい競争の難易度を上げています。個人的には期待している選手なので、少ないチャンスを活かして監督の信頼を掴んでほしいところ。</p> <h5 id="21--大久保-智明">21    大久保 智明</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014330.png" border="0" title="" width="1056" height="423" loading="lazy" /></p> <p>プロ2年目となった昨季は公式戦出場35試合総プレータイム1,993分とまずまず。2021年シーズン同様ゴールは物足りないものの、印象的なアシストや突破は多く定性的にはブレイクスルーと言っても良いほどプレーに自信を持てたシーズンだったのではないかと思います。昨季の大久保はプレータイムに大きな特徴があり、リーグ戦のプレータイムの82%が17節以降の後半戦に固まっています。具体的には5月18日の第11節ホームマリノス戦でキャスパーの3点目をおぜん立てした突破(凄く昔のことに感じます)が彼の評価を一段上に押し上げ、6月18日のホーム名古屋戦に初先発、6月26日の第18節アウェー神戸戦でドリブル突破が完全にチームの武器になることを印象付け初めてのフル出場。5月~6月にかけて一気に信頼を掴み、昨季のベストメンバーが固まる中に滑りこんでプレータイムを伸ばしました。</p> <p>面白いのは大学時代の主戦場だった右サイドではなく左サイドでプレーする機会を多く得たことでしょう。リカルドは控え組を多く使う場となったACL・GSの連戦あたりから大久保を左サイドで試しており、地道に左サイドでの起用を続けていました。リカルドにどんな意図があったのか知ることはもはや難しいのですが、こうした起用があったおかけげで大久保はもうやんと共存することが一時的にも出来たわけで、本人がよく言うようにリカルドのおかげで幅が広がったということが言えると思います。ちなみに数試合・限られた時間だけトップ下でも出場していましたが、この経験は今度はスコルジャ体制で生きるかもしれず、右サイドからカットイン主体で仕掛けるだけのドリブラーにならなかったのは彼のキャリアにとっては非常に重要なことだと思います。</p> <p>プレーの面ではやはり最大の武器であり生命線のドリブルがJ1レベルでも十分通用するという自信を得たことが大きいと思います。股抜きや二人の間を割って突破するドリブル、重心の乗っている足のすぐ横にボールを通してすり抜けていくドリブルなどテクニカルにキワキワを攻めていく挑発的なスタイルは面白いように相手選手を引き付けてくれ、しかもうまくいけば集まった相手を一人で料理してエリア内に侵入していけるのは大きな魅力です。</p> <p>逆に課題は突破した後のプレー、特にフィニッシュワークの部分で、今のところプロレベルではインパクトのあるフィニッシュは見せられていないと思います。サイド深い位置からエリア内に侵入して相手守備組織を破壊した後にアシストを供給するというのは海外挑戦前の関根を思い出させますが、ここからさらに一段上に行くには自分でゲームを決めていく能力、フィニッシュワークに残すパワー不足という現実と向き合わなければならないかも。また今季のスコルジャ体制のことを考えればプレッシング強度・攻撃時だけでなく守備時のポジショニング・戦術理解の部分でも後れはとれません。</p> <p>左利きのドリブラーということでもうやんや松崎との競争とみられがちですが、彼の場合は右サイドにこだわらずにプレーできるのが強み。中央でもプレーできる存在として松尾とどちらが価値を示せるかという競争もあるのかなと思っていましたが、報道通り松尾が欧州挑戦を決断する感じになるなら、大久保の爆発への期待感、やってもらわないと困る感は今後も高まるばかりとなりそうです。</p> <h5 id="22柴戸-海">22 柴戸 海</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228014342.png" border="0" title="" width="1056" height="481" loading="lazy" /></p> <p>全世界に4,810万人の構成員を擁するとされる<a href="https://twitter.com/search?q=%23%E6%80%A5%E9%80%B2%E7%9A%84%E6%9F%B4%E6%88%B8%E6%B4%BE&amp;src=typed_query">#急進的柴戸派</a>が激推しする世界で唯一無二の魅力を持つポテンシャルと夢、ロマン、やさしさと愛、戦争のない世界への願いの塊。昨季は公式戦33試合出場1,596分出場となりました。数字が示す通り全く使われなかったかと言うとそこまでではないですが、阿部勇樹の背番号22を受け継いだ生え抜きの26歳としてはリーグ戦1,166分の出場は物足りないところ。2021年シーズンはなんやかんやでリーグ戦30試合1,971分もプレーしているので、期待に反して立場を悪くしたシーズンだったというのが正確な振り返りになると思います。昨季が始まる前の時点ではしっかり主力を張ってくれると思ったのですが、結果的には岩尾がチームとクラブにフィットするにつれて敦樹-岩尾のコンビが明確となり、またリカルド・レッズのベスト布陣が固まると8番として敦樹と勝負するのか6番として岩尾に挑むのか、どちらも柴戸にとっては良い勝負にならなさそうな競争を強いられることになってしまいました。</p> <p>とはいえシーズン序盤はリーグ戦でもスタメン出場を多く勝ち取っており、リーグ戦プレータイムの67%が前半17節に固まっているのが特徴。5月25日の第15節アウェーセレッソ戦あたりから立場が悪くなり始め、7月から調子を上げていくチームとは裏腹にプレータイムを失っていってしまいました。根本的には柴戸どうこうよりも岩尾がフィットしたあおりを受けてしまったということだと思いますが、昨季は全体的に調子が上がらなかったというか、コンディション調整や試合勘の部分で上手くいかなかったのではないかなと言う印象で、2021年シーズン継続的に出場する中で減っていた意味不明なミスや印象の悪い決定的なファール、ミスが今季は出てしまっていました。例えば第10節アウェー川崎戦で川崎の逆転ゴールの起点となった脇坂のターンに一発で置いて行かれてしまったシーンとか、第23節ホーム川崎戦で橘田を倒してしまったPK献上とか。こう見ると両方とも川崎戦なのはただの偶然だと思いますが、ビルドアップや攻撃参加で特徴ある選手たちと競争している状況で失点に直接絡むミスがあったのはリカルドにとっては印象が悪かっただろうなと思います。</p> <p>また、チームのベストメンバーが固まっていくにつれてサブとして出てくる柴戸がレギュラー組にフィットできなかったという話もありそうです。そもそも柴戸のサッカー選手としての最大の特徴は異常な予備動作の少なさで、普通勢いをつけたり重心をスイングさせて身体を運ぶようなシーンを足腰だけで解決することができるのが彼独特の寄せのキレ、そして良くも悪くもガチャガチャした身体操作に繋がっていると思います。この予備動作の少なさは相手からボールを狩る上では凄く大きな武器ですが、なんか最近パス交換とかボール保持で味方に自分のプレーを感じてもらうには不利なんじゃないかと思い初めました。一言でいうと予備動作が少ないが故に味方にもプレーの意図が伝わってないのではないかと。もともと「自分にしか見えてない系」のパスコースを狙うことがある選手でしたが、今季のプレーをみてるとあまり柴戸のプレーは理解されていないのかなと思ってしまうシーンが多くて気になりました。</p> <p>気を取り直して今季に目を向けると、スコルジャ体制で求められる強度の高さやボランチの負担の大きさを考えると無理が効く柴戸はそこそこ評価を受けそう。特にプレッシングに前の選手を出した後に4-2ブロックで相手を凌がなければいけないシーンが結構ありそうで、もっと細かく言えば相手のチャンネルランへの対応はボランチに頑張らせるみたいなところもあるようなので、チームの約束事に忠実な柴戸の良さは発揮しやすそう。問題はビルドアップでの大きな展開や攻撃参加の部分だと思いますが、まだCHをどういう組み合わせにしていくのかははっきり見えない部分もあるので、それはおいおい。</p> <p>個人的には阿部ちゃんの22番は阿部ちゃん以外の選手がつけても上手くいかない印象があるので、柴戸にはぜひこれを打破して柴戸の22番を確立してほしいところ。敦樹が欧州挑戦をするのは時間の問題だと思うので、そういった意味でもボランチの軸となることに期待です。</p> <p> </p> <p>(下)に続く。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2022シーズン全選手振り返り(下) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F01%2F17%2F172126" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/01/17/172126">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 2022シーズン全選手振り返り(上) hatenablog://entry/4207112889948774059 2023-01-07T16:07:08+09:00 2023-08-06T01:12:46+09:00 自分、毎年恒例の全選手振り返り、行きます! 例年通り背番号順、出場記録は例のごとくSoccer D.B.さんのデータを主に参照です。また、既に2023年になってしまったので昨季=2022年シーズン、今季=2023年シーズンのつもりです。誤字や記録の間違いがあればそれとなく教えてください。 1 西川周作 ほぼ全試合に出場。注目された彩艶との正GK争いに勝利した形となりました。最も注目すべきはジョアンGKコーチのもとで進化したクロス対応で、シーズン開幕直後からこれまではステイしていた場面でクロスにアタックするアクションを多く見せ、これまでよりもシュートを打たせる前にボールを処理することができるよう… <p>自分、毎年恒例の全選手振り返り、行きます!</p> <p>例年通り背番号順、出場記録は例のごとく<a href="https://soccer-db.net/team/player.php?te=1008&amp;yr=2022">Soccer D.B.</a>さんのデータを主に参照です。また、既に2023年になってしまったので昨季=2022年シーズン、今季=2023年シーズンのつもりです。誤字や記録の間違いがあればそれとなく教えてください。</p> <h5 id="1西川周作">1 西川周作</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228012937.png" border="0" title="" width="1054" height="478" loading="lazy" /></p> <p>ほぼ全試合に出場。注目された彩艶との正GK争いに勝利した形となりました。最も注目すべきはジョアンGKコーチのもとで進化したクロス対応で、シーズン開幕直後からこれまではステイしていた場面でクロスにアタックするアクションを多く見せ、これまでよりもシュートを打たせる前にボールを処理することができるように。これまでの西川は2021年の天皇杯決勝の失点のようにクロスにアタックせずにゴールを守ろうとした結果ノーチャンスのシュートを撃たれて失点することが多かったのですが、たった1年間、GKコーチが変わっただけでこれだけ対応が変わるのかという驚きを与えてくれました。もちろん決定的なピンチでのセービングはこれまで通りで、ゴールを守るという部分においてはキャリア晩年にして正当進化を果たしたと言えそうです。</p> <p>一方でビルドアップの部分はジョアンが重視していないこともあってかこれまで通りで、回数としては深刻ではないもののアウェー広島戦のビルドアップミスからの失点など時折不安定さを見せることもありました。技術的な部分もそうですが相手のプレスにはまっている時でも繋ぎ倒しにいってしまう判断の部分が大きな課題で、これはもう何年もかわっていないのですが、クロス対応の劇的な改善を見るとこの点もどうにかなるのではないかと期待してしまうところです。というか、一年でこれだけ変わることを見せつけられると、今までのGKトレーニングはどうだったんだろうと思ってしまいます。</p> <p>GKとしての技術的な部分以外では、やはりキャプテンを務めたことで苦労が多かった一年になってしまったといえると思います。本人もいう通り先頭に立って引っ張るタイプではないですし、そもそもGKがキャプテンをやると最後尾からフィールドの10人を統率するのは簡単ではないのだと思います。基本的に昨季のチームは輪を乱すような人はおらず、どちらかというと真面目くんばかりのチームでしたが、そうであるが故に「後ろから支える」系のキャプテンは合わなかったのかもなと思います。練習でも頻繁に別メニューになりますし、やっぱり個人的にはGKをキャプテンにするのは微妙だなと感じました。まあそもそもクラブが他に候補になりそうなまとめ役の選手を放出してしまったというのが根本的な部分で、本人も仕方なく受け入れたという感じでしょうから、キャプテンとしての振る舞いについて西川を強く批判するのは本人にとっては酷かなとも思いますけど。</p> <p>37歳にして選手としての進化を果たした西川ですが、今季もレッズでプレーすることに。現在554試合出場で歴代5位となっているJ1出場ランキングはどこまで伸ばせるでしょうか。立ちはだかる歴代4傑は590試合出場の阿部ちゃん、593試合出場の中澤佑二、631試合出場の楢崎正剛、672試合出場の遠藤保仁となっています。4位はギリギリいけそうでしょうか。ていうかヤットのJ1だけで672試合ってなんなんだよ。平均32試合出場を21年連続ペースだぞ。</p> <h5 id="2酒井-宏樹">2 酒井 宏樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228012953.png" border="0" title="" width="1057" height="526" loading="lazy" /></p> <p>シーズンの出場記録にFIFAワールドカップの記録があるのは新鮮ですね。たぶんこの企画で初めて出ました。おめでとう。</p> <p>昨季はリーグ戦20試合1,534分出場。出場した試合では持ち前のパワーと気合いを発揮し、ACL準決勝のスーパータックルからのアシストを決めるなど印象的な活躍をしてくれました。特に夏場にモーベルグが合流してからは酒井ーモーベルグの右サイドは浦和の明確な強みとなり、ボール保持によるゲームの安定を志向するけれどもパンチ力に欠けた今季のチームにあっては特異なほど個人の力で相手を上回り状況を打破する迫力を見せてくれました。</p> <p>とはいえ、さすがに出場時間が少なすぎるかなという感じ。そもそもケガを押してでもプレーするタイプの選手ではありますが、特に大きな試合、何かがかかった試合では「俺は今なんだよ」という感じであからさまに負荷の高いプレーや体勢的にかなり無理のある相手ボールへのチャレンジを繰り出す印象があり、大事な試合に間に合わせ、勝負どころでパワーを出してはくれるものの、その後はまたケガによる欠場を繰り返してしまうという稼働率の低さは評価が難しい部分。クラブからは唯一日本代表をほぼ確約された立場としてワールドカップを迎えたわけですが、ここでも初戦ドイツ戦で肉離れとなってしまいGS残りの2試合を欠場。本人としては残り少ない現役人生でできる勝負は全てするということなのでしょうが、見ている方としては選手生命をあからさまに削りながらプレーする姿は複雑でもあります。とはいえ日本サッカー界では現在のところトップクラスのキャリアを築いてきたベテランですから、そんな選手が「俺はプレーする、プレー出来る」と言ってしまったらもはや誰にも止められないのでしょうけど。</p> <p>戦術的な働きとしては、上記のようにモーベルグとのコンビでサイドを攻略することに加えて、3枚回しをする際の右CB役としてプレーすることも多かった印象。基本的には頻繁な上下動はもう厳しいのでしょうから、もしかすると本人も3バックの右が一番心地よかったかもしれません。ただ守備者としてのプレーについては僕個人的には納得できないことが多く、特に瞬間的に状況が悪くなった際に無理目のタックルで危険な位置でのファールを献上することがしばしばあったのは印象が悪かったです。体格的にもオーラ的にも多少不利でもボールホルダーに寄せているだけである程度プレッシャーはかかるのではないかと思うのですが、なぜか一発でボールを狩りにいって躱されたり、引き倒したり。それが欧州スタンダードだと言われればそうですかというしかないのですが、実は守備対応がかなり怪しかったよねというのは指摘しておきたいところ。もちろんこれも上記のコンディションとの兼ね合いなのでしょうが、来年はワールドカップも終わって少し落ち着くのではないかと思うので、しっかり休むところから始めてほしいと思います。</p> <p>今季のスコルジャ体制では少しサッカーがシンプルになり、リスク許容度も上がり、酒井の魅力であるパワーや迫力を発揮することが歓迎されそうな雰囲気。従ってコンディションに問題がなければ右SBのファーストチョイスとして君臨してくれるのではないかと思います。</p> <h5 id="3伊藤-敦樹">3 伊藤 敦樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013005.png" border="0" title="" width="1057" height="479" loading="lazy" /></p> <p>大卒2年目の昨季はリーグ戦28試合2,112分に出場。2021年シーズンにルーキーでありながら36試合全てに出場するという大活躍をしたことに比べればインパクトは薄いですが、先発25試合は昨年の24を上回り、ゴール数も昨年の1から4に増加。全体的にはチームの中心としてキャリアの階段をまた一段登った印象のシーズンとなりました。</p> <p>プロデビュー以来リカルドには重用されていた選手でしたが、昨季途中からボール保持時4-3-3のIH役を任されたことでチームにとっては一層重要な選手となり、特にゴール前での崩しに関わる部分での仕事がはっきりしたことでルーキーイヤーに気になったビルドアップ時に無駄に自陣側に残ってしまうポジショニングはほとんど見られなくなりました。清水戦のデュエル勝利からの惜しいミドルなど、敦樹らしい強さ+技術を発揮するシーンが多かったことで選手としての注目度もさらに上がり、時折海外からの関心を示されることもあったようです。</p> <p>一方で出場試合数ベースで10試合近くの減、出場時間数でも微減と昨季はコンディション調整で苦労した感があり、おそらくコロナ罹患の影響だったと思いますが序盤に欠場した試合が多かったほかリーグ終盤には疲労の影響かあからさまに迫力が落ちていた試合もあったので、チームの屋台骨となるには若干物足りなかったとも言えます。昨季の浦和は敦樹が中盤中央〜相手ゴール前で出す迫力が大きなポイントとなっていたために敦樹のコンディションやパフォーマンスとチームの成績が連動していた感もあり、そういう意味では彼のせいとまでは言わないもののチームを優勝させる、優勝争いに導く選手となれていたかどうかという面で来季以降の成長余地を感じさせたシーズンでもあった気がします。清水戦での彼の退場からの同点ゴールを奪われた流れなんかはその典型的な部分でした。</p> <p>デビュー以来常に高い基準のプレーを示し、それに応じて大きな期待を背負っている敦樹ですが、今季のスコルジャ体制でも基本的には評価されそうで、4-3-3ではないもののビルドアップに関わるよりもゴール前の崩しに関わるタイプのCHとして一番手となりそう。昨季の4ゴール3アシストという成績はまずまずといえるものですが、大学の後輩である広島・満田の昨季の活躍を見てももっと決定的な仕事ができておかしくないはず。今季は昨季よりもトランジションが多く出る試合展開になることが予想される中で、敦樹のボックストゥーボックスのパフォーマンスは今季以上にチームのエンジンとして重要度が増すのではないかと思います。</p> <h5 id="4岩波-拓也">4 岩波 拓也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013016.png" border="0" title="" width="1053" height="481" loading="lazy" /></p> <p>本当に本当に本当によく働きました。昨季の全公式戦合計の出場時間はショルツに次いで2位の4,001分。岩波は昨年も4,425分出場しており2年連続の4,000分越えです。過去5年間をみても4,000分越えは西川、岩波が2回ずつ、槙野、ショルツが1回ずつの延べ6人しか達成されていないので、いかにプレータイムが長いかがわかります。昨季は犬飼が加入したことでレギュラー争いが厳しいのではないかと思われましたが、犬飼が大怪我で早々にシーズンアウトしてしまい、結局ショルツと2人で最終ラインを支え続けることとなりました。僕の記憶では岩波は浦和加入以来ほとんど大きな怪我による離脱をしていないのではないかと思いますが、頑丈さは本当に価値です。ビルドアップがどうのとかスピードのないとかボールウォッチャーになるとか言いますけど、いつでも使える状態を維持できる選手はマジで重要ということだけは強調しておきたいです。</p> <p>ショルツがあまりにも素晴らしい性能なので大いに助けられているのは事実だと思いますが、今季はビルドアップで苦し紛れにボールを蹴る回数が少なかった印象。おそらく2021年シーズンと比べてもボールを受けるポジショニング調整は素早く、効率的になっていると思いますし、そもそも苦しい体勢でボールを受ける回数を減らせていたのかなという気がします。昨季はショルツと並びの左右を変えながら2枚、3枚、4枚回しに対応していましたし、中盤への縦パスも随所に見られたのでビルドアップ面の成長があったと言ってよいのではないかと思います。</p> <p>守備面では得意のシュートブロックに加えて、縦パスへの迎撃の部分でも今季は安定していた印象で、縦パスを収められターンされてなすすべなくプレーされてしまうシーンはチーム自体が崩壊気味だった第33節のマリノス戦くらいだったかなと思います。浦和に来た当時の自分の能力を出しきれずに控えめ、中途半端なプレーをしていた頃から比べると3バックと4バックの対応分け、球際、ビルドアップなどさまざまな面で成長したのかなと思います。</p> <p>そんな岩波ですが、今オフでの海外移籍が濃厚でカタールのアルサッドへの移籍が取りざたされています。クラブ内の立ち位置としては実績的にもチームでの経験年数的にも浦和の最終ラインを支える大黒柱的な役割を担っていくべき選手だと思いますが、一方でクラブの目指すコンセプトをゲームモデルに落とし込む作業を突き詰めていけばいくほど求める選手像とは特徴がズレていることが明確になってしまうジレンマもあり、貢献度と反比例するように処遇が難しい選手になっている部分があるかもしれません。使えば使えるのはわかってるんだけど、理想とは違うというか。そういうものが条件提示を通じて選手側に伝わるのかもしれないし、そういうのとは別に岩波本人が海外経験を求めているのかもしれません。そもそも浦和に来た頃は2~3年で海外へステップアップという考えがあったでしょうし。おそらく移籍するんでしょうが、どんな道を行くにしても頑張ってほしい選手。もう十分浦和レッズOBを名乗れるだけのプレーはしてくれたと思います。</p> <h5 id="6馬渡-和彰">6 馬渡 和彰</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013035.png" border="0" title="" width="1056" height="479" loading="lazy" /></p> <p>岩尾とともにリカルドサッカーを知る選手として加入したSBはリーグ戦19試合982分の出場。シーズン全体で公式戦29試合出場はそこまで悪い数字ではないですが、いかんせんプレータイムが伸びなかったのが痛かったですね。おそらくコロナ罹患と左膝?の怪我の影響があったのだと思います。どこかでコロナの後遺症に苦しんでいたという話もあった気がするので(未確認)、本人としても不本意なシーズンだったことでしょう。特に後半戦のプレータイムが180分、全体の18%しかなく、チームが完成していく過程で消えて行ってしまったシーズンとなりました。</p> <p>プレーの内容面では攻撃的なSBとして魅力を発揮していたと思います。特に内側に入って前線の崩しに関わる部分、ボール保持時にポジションを移して前線5枚、6枚を形成するプレーがチームで一番上手かった印象。ビルドアップは普通ですが、とにかく前に関わっていくプレーが上手かったです。SHのポジションを見つつ前線で仕事ができるSBがいなかったのが昨季のチーム全体の破壊力の物足りなさの主要因だったと思うので、この選手がフル稼働していたらリカルド体制2年目の昨年の印象もかなり違ったかもしれません。右でも左でもプレーできることも含めて重要な選手になる素養があったはずだし、そういう意味ではフットボール本部が彼を獲得したことは間違ってはいなかったと思います。フル稼働していたら自分で4点くらいは取っていた気がします。広島戦のロングFKを直接ネットに入れたプレー(結果オフサイドでノーゴール)なんかも武器になりそうでしたし。</p> <p>ただあまり僕自身意識していなかったのですが、かなり厳しい怪我の履歴を持っている選手なのでフィットネスには今後も苦労しそう。ツエーゲン金沢時代には少なくとも2度の大けがを、川崎時代にも左膝を負傷し手術しており、おそらく膝がボロボロなのではないでしょうか。PSG戦でメッシにスっ転ばされて悪い意味で目立っていましたが、あれ以降どうも足腰がグラついてしまい体勢を大きく崩しているシーンが多かった印象です。なんというか弱いとかではなくそもそも力が入っていない感じがしたので結構深刻なんじゃないかと思ったり思わなかったり。この辺が移籍を繰り返している遠因だったりするんでしょうか。フィットネスの状態を知っていると評価が難しくなるし、1年契約が多くなるのも理解できます。とはいえ、2022年シーズン限りで移籍かという噂もあったようですが今季も無事浦和でプレーするようで、まずはフィジカル面で良い準備ができることに期待です。</p> <h5 id="7キャスパー-ユンカー">7 キャスパー ユンカー</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013047.png" border="0" title="" width="1054" height="368" loading="lazy" /></p> <p>良くも悪くもみんなが話題にするのがスターの要件だと思うのですが、そういう意味では間違いなくスター選手としての立場を確立したプリンス。ラーメン屋さんをRBC会員に引き込んだ決定力は本物です。ピッチ上でも持ち前の決定力でプレータイムを考えれば効率よくゴールを決めたと言えると思います。特にACL準決勝延長後半でのゴールはクラブにとって大きな価値があるゴールでした。</p> <p>来日以来圧倒的なスピードと左脚での決定力、裏抜けの上手さが目立っていたキャスパーですが、全北戦のゴールなんかを見てもステップの上手さはもっと注目されても良かったのかなという気がします。ボールに自分の形で合わせられるように歩幅を調整したり、蹴り足を合わせるために早めに0.5ステップ挟んだり、そういう細かい技術が凄く上手くて、それがシュートの瞬間にミスしない要因なのかなと。そうやってシュートの形に入るまでの準備がいいので、シュートの直前にGKと駆け引きする余地が残せて、駆け引きにしても身体が開いた状況からニアに転がすとか、全く同じ体勢で今度はファー上に流し込むとか、GKが反応できないようなゴールを連発できるということかなと。同じようにシュートに関わる一連のプレーが上手い選手では最近はレオナルドがいましたが、レオよりもキャスパーの方が洗練されているというか、来たボールに対して最小限のロスで自分の形を合わせていく上手さがありました。レオはどちらかというとボールを呼び込む段階の準備、スペーシングが上手かったのと、相手の体勢を崩すフェイントが上手かったですね。</p> <p>というわけでストライカーとしては別格の上手さがある選手でしたが、来季は名古屋へのレンタルが決定済み。詳しいことはわかりませんが、出し方を見ても契約切れを待って放出するパターンでしょうね。こういう状況なのでレンタルフィーや給与負担も結構足元を見られたのではないかという気がします。そうまでして放出しなければいけなかった理由はやっぱり「浦和のためにどんな時も走り、闘う」の部分なのでしょう。グロインペインの影響で小回りが利きづらくなったことでプレッシングの頻度や強度にはかなり不満が残りましたし、そうでなくても小さな怪我で途中交代・離脱することが多かったのは事実です。フットボール本部のコンセプトからゲームモデルを落とし込んでいくとどうしてもFWの選手には幅広くタフな仕事を求めることになるので、本質的にはレオと同じくボックスストライカーで「俺の輝く舞台までボールを持ってこい」タイプの選手はどうしても使いにくいところがあります。昨季はなかなかボールが来なかったりリスク回避的に展開が止まるゲームが多くなりあからさまにモチベーションが低下している態度をとることもありましたが、そういう部分も浦和レッズのクラブ理念的には残念なポイント。こういった複合的な理由とスコルジャ監督のスタイルに合わない(監督から残してほしいという要求がない)ことが早めの放出で外国人枠を空けるという判断に繋がるのかなという印象です。こうなるとなんでキャスパーを獲得したのよという話になってしまうのですが、まあわかんなかったんでしょうね。</p> <p>ところで浦和のホーム戦のみ出場不可という珍しい条件をつけたあたりクラブとしてもキャスパーの人気やファン感情はわかっていての決断のはず。本人は見返すしかないし、クラブは彼なしでも点を獲れることを証明するしかないということで、もう簡単には引き返せない決別になりそうです。他のJクラブのユニフォームは着てほしくなかったので残念ですが、これもサッカーですかね。</p> <h5 id="8小泉佳穂">8 小泉佳穂</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013059.png" border="0" title="" width="1056" height="363" loading="lazy" /></p> <p>加入2年目となった昨季は背番号を8に変更。リーグ戦27試合1,662分出場はちゃんとレギュラーの数字ですが、2021年シーズンの34試合2,408分からすると物足りないか。昨季の浦和は前半戦と後半戦で全くプレータイムが違う選手(例えば馬渡や柴戸、大久保など)がいるのが特徴だと思うのですが、佳穂の場合はちょうど50%:50%とシーズンを通じて堅実にプレータイムを確保したと言えます。基本的にはリカルドの好きなタイプの選手というかリカルドと最も志向が合う選手で、ボールキープが上手く、リスク回避的で、論理的に一手ずつ詰めていく選択を好むという意味で監督の理想である「コントロールされたゲーム」の体現者と言える存在でした。</p> <p>プレータイムがあまり伸びていないのは公式戦でのスタメン28回のわりにフルタイム出場が少ないからで、例えばリーグ戦は18回中6回のみ。簡単に言うと75分になる前に交代となることが多いシーズンとなりました。これは体力的な部分というよりもトップ・トップ下の選手の組み合わせの中でプレータイムを分け合うこととなったというべきかなと思います。シーズン中盤以降は佳穂・松尾、江坂・キャスパーのコンビが明確になっていきましたが、どちらかと言えば佳穂・松尾のコンビがゲームの序盤~中盤を安定してスタートさせる役割、江坂・キャスパーのコンビは試合がある程度オープンになる中で決定力を発揮する役割という運用だったかもしれません。これ自体はプレッシングの上手さやビルドアップの循環など、10番の位置でプレーする6番という彼のプレースタイルを効率よく活かせる起用法だったと思いますが、問題は監督が変わる今季でしょう。</p> <p>簡単に言えば昨季の起用法を見ても佳穂にはまだ得点、ゲームを決めるプレーという部分での信頼がありません。2021年はリーグ戦2得点、2022年は3得点という数字が物語る通り「主人公」にはまだなり切れていないのが現状です。僕が加入以来彼に「主人公」という言葉を使うのは、小さくて細い、そして遅い彼が生き残るにはある意味で彼がいないとチームが回らない状況を作らないとやっていけないのではないかと思うからで、志向が合っていたリカルドはいわば守備的な10番としてロールプレイヤー(特定の役割のみを期待する選手)的に重宝していましたが、スコルジャ監督は10番にダイレクトに得点能力を求めそうな感じ。チーム随一のプレッシングの上手さを持っているとはいえやはり序列を決めるのは得点能力、決定機に関わってゲームを決める能力になりそうで、こうした点で勝負できることを早めに見せて行かないと、簡単に言うと守備固めに使われるような選手になってしまいそうで少し心配です。守備固め程度の役割しか果たせないようではフットボール本部が補強を続ける中で居場所がなくなっていくかもしれません。いっそボランチに降りるのも一つの選択肢ですが、そもそもフィジカルのハンデがある上にボランチはボランチで競争が激しいですし、特にセットディフェンスでかなり運動量とタフネスが求められそうなので対応が厳しいかも。</p> <p>一つポジティブな要素になりそうなのはミドルシュートで、両足で強いシュートが蹴れる佳穂のミドルシュートはスコルジャにも気に入られそう。ただ佳穂は以前から「とにかくシュートを撃って終わればOKとは思わない、しっかりとセレクションしたい」という趣旨のコメントを残しており、この点も監督の求める攻撃性とどれだけ合うかという感じでしょうか。プレッシングの上手さは確実に評価されると思うので、これに加えて彼がプレーしないといけない攻撃的な要素を見せたいところ。2023年は思い切ってはっちゃけて今までとは違う好戦的でギラギラしている佳穂に期待してみたいと思います。</p> <h5 id="9ブライアン-リンセン">9 ブライアン リンセン</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013110.png" border="0" title="" width="1054" height="245" loading="lazy" /></p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴と呼ばせて欲しい <a href="https://t.co/1DEEyjqYWj">https://t.co/1DEEyjqYWj</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1547147531770941440?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月13日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">やい関川!おまえなんかブライアン兄貴のオフ・ザ・ボールでけちょんけちょんだからな!って遠くから叫ぶ役やりたい</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1547148651683651584?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月13日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">PSGの得点者なんてわかんないけど浦和は江坂と兄貴にしようかな。</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1550469505528188928?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月22日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">あああああああああああああ兄貴ィーーー!!!!!</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1550800913400356864?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月23日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴…出オチかよ…!</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1550801139003637760?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月23日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">今までただただポジティブに兄貴って呼んでたのにこの一発で一気にネタ臭くなったよなんなんだこれ <a href="https://t.co/WN8U84Ag0S">https://t.co/WN8U84Ag0S</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1550893263506120704?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年7月23日</a></blockquote> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴… <a href="https://t.co/RYThP5hufj">https://t.co/RYThP5hufj</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1557401381249564673?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年8月10日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">はっそうか、兄貴がプレーする可能性があるんですね。もはや考えたこともなかったです。 <a href="https://t.co/4h7x3CxZGz">https://t.co/4h7x3CxZGz</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1568023956606832640?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年9月8日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">あれがショルツモーベルグユンカー<br />君が指差す赤の大三角<br />覚えて試合観る<br />やっと見つけたアレックスシャルク<br />だけどどこだろうリンセン兄貴<br />これじゃまるで出オチ</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1575663147955802113?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年9月30日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴からの柴戸のゴール…だと…?</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1576114261738549248?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年10月1日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴、サッカー上手かったんだな…</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1576120302060175361?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年10月1日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">たしかに。兄貴のここまでのリーグ戦出場時間は88分、得点は0なので90分あたりの得点数は#DIV/0!となってますね。つまり20ゴールを取るには#DIV/0!分必要なので、ルールを変更して1試合を#DIV/0!分にすればOKですね。いけるか…?! <a href="https://t.co/SRGT1HKsLl">https://t.co/SRGT1HKsLl</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1579986511923027968?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年10月12日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴、中3日に耐えられるのか…?まさかマスタードを足に塗ったまま回復しながら試合を…?</p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1580117046334935042?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年10月12日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴は今もみんなの心の中にいるよ⁰ほら こんなにあったかい<a href="https://t.co/rqrJYI9n9P">https://t.co/rqrJYI9n9P</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1602659934910689281?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年12月13日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴カッコイイ!!やっちまって下さいッ! <a href="https://t.co/VzkIOzqdPA">https://t.co/VzkIOzqdPA</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1611322429619724289?ref_src=twsrc%5Etfw">2023年1月6日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">兄貴はまだ本気出してないだけ! <a href="https://t.co/ZI7rXO9Lm5">https://t.co/ZI7rXO9Lm5</a></p> — 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1611379460233625600?ref_src=twsrc%5Etfw">2023年1月6日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <h5 id="10ダヴィド-モーベルグ">10 ダヴィド モーベルグ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013126.png" border="0" title="" width="1058" height="420" loading="lazy" /></p> <p>チェコの名門スパルタ・プラハから加入した左利きのスウェーデン人右WG。デビュー戦となったホーム磐田戦でいきなり単独突破で3人の間を縫ってゴールを決めると続く札幌戦でもゴール。華々しいデビューとなったもののその後はチームが引き分け地獄に苦しむ中で若干トーンダウン。ただ6月26日のアウェー神戸戦では後半終了アディショナルタイムに直接FKをぶち込んで勝利をもたらすと、7月10日のFC東京戦以降チームとして戦い方を見つけた後は絶対的な武器として君臨。終わってみればリーグ戦20試合1,050分のみの出場ながら8ゴールを決めチーム得点王となるなど決定的な仕事ができる存在としてレベルの違いを示したのでした。</p> <p>シュート本数とプレータイムあたりのゴール数はリーグ最上位クラスで、特に左脚を振れる状態にさえ持ち込めれば高確率で枠に飛ばす技術の高さがあります。また1on1であれば確実にズレを作って相手を外すところまでは持ち込めるので、少なくとも一人をヘルプに引っ張り出して相手の守備陣に隙を作り出すことができるのが非常に強く、基本的には出しておけば相手が困るという素晴らしいアドバンテージ性能。SBは特に酒井とのコンビネーションがやりやすそうで、お互い欧州でのプレー感覚があるからなのか酒井のはっきりした動きが合わせやすいようです。これだけの攻撃性能があると守備はサボるのかと思いきや、ブロックに参加すれば相手のSB対応のために5バック気味に帰陣することも厭わないというおまけつき。プレッシングがあまり上手くないのとネガティブトランジションの反応はイマイチですが、勝負を決めるドリブラーとして有能過ぎるのである程度体力をマネージしてもらわないといけない部分もあり、全体的には非常に優秀なアタッカーで戦術兵器と言えるレベルだと思います。</p> <p>問題は稼働率でACL後の怪我?でリーグ戦最終盤の9試合はわずか133分のみの出場とプレータイムを伸ばせませんでした。日本の夏への適応であるとか最後まで頑張ってくれる献身性から来る疲労感とかいろいろと理由はあると思いますが、浦和としては使えればこれだけのアドバンテージを提供してくれる選手にはフル回転して欲しいところ。今季はマークがさらに厳しくなるとは思いますが1,700分くらい出場できれば10桁ゴール+5アシストくらいは目指せるのではないかと思いますので、10番としてはそのくらいの活躍を期待したいところ。スコルジャ体制ではプレッシングの強度が高くなりそうで、わりとオープンな展開が増えそうなので、じっくり休んでから仕掛けるようなプレーが難しくなるかもしれず、どうなるかはわかりませんが。</p> <p>ちなみに家族とともに来日しており奥さんも二人の息子さんも日本を楽しんでくれているようでほっこりします。</p> <h5 id="11松尾-佑介">11 松尾 佑介</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221228/20221228013238.png" border="0" title="" width="1056" height="422" loading="lazy" /></p> <p>仙台大学から横浜FCを経てついに「帰還」したユース出身快速アタッカー。シーズン序盤は出場機会に恵まれず、4月まで出場ゼロ。デビュー戦となった4月2日のアウェー札幌戦も34分の出場にとどまり、この札幌戦を含む5月25日のアウェーセレッソ戦までの8試合は連続で出場したものの231分のプレーと完全にサブ扱い。この間にACLのグループステージがタイで開催され、そこでは相手のレベルがあるにせよ良いプレーでゴールを量産していたのでリーグでなかなか使われないのは不思議なほどでした。結局5月28日のアウェー福岡戦でトップ起用されポジションを変えながらもフル出場。ここでうまくボールを収めつつ最前線からプレッシングを仕掛けていくプレーがハマったことで潮目が変わり、出場時間を延ばすとともにリカルド・レッズの完成版とも言える11人の形が決まったことでチームは7・8月の連勝・ACLへの激闘へと進んでいくことになりました。</p> <p>横浜FC時代は左サイドの大外からグングン加速しつつゴールに向かって直線的に仕掛けるドリブルが最大の魅力でしたが、浦和では少し違った形で能力を発揮することとなりました。持ち前の加速力は裏抜けへのスピードに還元され、ドリブルテクニックはライン間に降りてのプレーに活用されていたと思います。結構意外だったのはワンタッチの落としからのワンツーであるとか周囲とのコンビネーションが結構上手いことで、トップでのプレーは本人も予想外とのことでしたが縦に縦にいくだけのプレーではない選手としての幅を見せられたのは本人にとっても良かったのではないかと思います。</p> <p>ただしリーグ戦1,300分でのプレーで4ゴールというのは本人も満足できていないはずで、シーズン中はつぶれ役、囮役にならざるを得ない現実を自嘲気味に語るシーンもありました。そのせいかシーズンオフのさいたまシティカップでのフランクフルトとの一戦ではターンから中央をドリブルして自らシュートに持ち込むなど本来の松尾らしいプレーをあえて強く見せていた印象で、スコルジャ体勢となる今季は拡げた幅を活かしつつ本来のギラギラした一面をまた見せたいと意気込んでいるかもしれません。</p> <p>実際、スコルジャ体制ではトップにはそれなりに身体を張れる選手が好まれる印象で松尾を最初からトップには数えなさそうな雰囲気があります。おそらく主戦場を左SHに戻し、リカルド体制よりもかなり自由に中央と左サイドを行き来しながらゴールに関わるプレーが好まれそう。松尾の本来的な志向には合っている監督だと思うのでチャンスは大きいですが、他にも関根やシャルク、明本、もしかするとリンセンなんかも左SHの候補となりそうな予感なので競争自体はかなり厳しいはず。左SHを基本にトップ下も含めて前線のポジションを勝ち取るには間違いなくゴールへの脅威とプレッシングをどこまで見せられるかが重要になりそうなので、野望である欧州挑戦を実現させるためにも2023年は勝負の年となりそうです。</p> <p>ってこれで締めようと思ったらベルギーに期限つき移籍とかいう記事が出てきたんですけど大丈夫ですかね????せめて夏、ACL決勝を戦いきるまではプレーしてくれませんか??????え?????</p> <p> </p> <p>(中)に続く。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2022シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2023%2F01%2F17%2F172116" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2023/01/17/172116">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する hatenablog://entry/4207112889946457072 2022-12-27T18:26:43+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 はじめに 浦和レッズの「3年計画」は失敗に終わりました。3年前に高らかに宣言した2022シーズンでの優勝は夢と終わり、優勝チームである横浜Fマリノスとの勝ち点差は29。シーズンで一度も優勝争い(3位以内)に絡むことすらできなかったのですから、ACL東アジア地区で死闘を制し決勝進出を果たしたことも、リカルド監督の下でこれまでの浦和よりもモダンな戦術を浸透させたことも、ましてやコロナや怪我による選手離脱で苦しんだことも言い訳にはなりません。 そもそも、2019年末にフットボール本部体制の発足と土田SD及び西野TDの就任が発表され、「3年計画」が宣言されたときから、この取り組みへの反応は芳しくありま… <h5 id="はじめに">はじめに</h5> <p>浦和レッズの「3年計画」は失敗に終わりました。3年前に高らかに宣言した2022シーズンでの優勝は夢と終わり、優勝チームである横浜Fマリノスとの勝ち点差は29。シーズンで一度も優勝争い(3位以内)に絡むことすらできなかったのですから、ACL東アジア地区で死闘を制し決勝進出を果たしたことも、リカルド監督の下でこれまでの浦和よりもモダンな戦術を浸透させたことも、ましてやコロナや怪我による選手離脱で苦しんだことも言い訳にはなりません。</p> <p>そもそも、2019年末にフットボール本部体制の発足と土田SD及び西野TDの就任が発表され、「3年計画」が宣言されたときから、この取り組みへの反応は芳しくありませんでした。一部のサポーターは即座に横断幕で「3連覇」を要求し、そこまで過激な要求をしなかった多くのファン・サポーターたちも様子見、結果次第で受け入れるかどうか決めるといった姿勢でした。</p> <p>加えて、2022シーズンを以てリカルド監督が退任になったことも「3年計画」の在り方や取り組みへの疑問を噴出させたかもしれません。「3年計画」は継続的な取組であると言ったはずなのに、ここでリカルドを切ってよいのか?リカルドの3年目に期待が出来たのではないのか?そもそも大槻さんに監督を任せた2020シーズンは「実質0年目」で、2023年シーズンを「3年計画の4年目」とすることがフットボール本部の目論見だったのではないのか?そもそも「n年計画」といった時限付きの計画自体が実行不可能なもので、最初からそんな自縄自縛的構造で取り組んだことが間違いではないのか?フットボール本部そのものが能力不足だったのではないか?J2から選手を獲っても優勝は出来ないのではないか?ごちゃごちゃ言ってないで結果出せ、とりあえず土田は辞めろ…などなど。マクロなものからミクロなものまで、約束した結果が出なかったことで様々な厳しい問い・批判に晒されてしまうのは仕方ないと思います。</p> <p>実際のところ、「3年計画」に意味はあったのでしょうか?こんな面倒なこと、やらない方が良かったのでしょうか?そんなことを、僕なり考えていきたいと思います。</p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211120/20211120154453.jpg" width="1200" height="800" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <h5 id="構成">構成</h5> <p>先に断っておきます。書きたいだけ書いたらめちゃくちゃ長くなりました。読みにくくて申し訳ないです。申し訳ないですが、書いてしまったものは仕方がない、なぜならこれは僕のチラシの裏だから。なので、このまま出します。ただせめてガイドになるように、全体の構成をお知らせしておきます。好きなとこだけでいいので暇なときにでも読んでください。</p> <p>1.    はじめに<br />2.    構成<br />3.    浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【時系列編】<br />  3.1.    2019年オフ~2020年シーズン<br />  3.2    2020年オフ~2021年シーズン<br />  3.3    2021年オフ~2022年シーズン</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182441" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【時系列編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182441">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p><br />4.   浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【現場編】<br />  4.1.    適切な戦術を採用したか?戦術は浸透したか?<br />  4.2.    選手起用は正しかったか?<br />  4.3.    選手は期待通り成長したか?</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182432" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【現場編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182432">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p><br />5.    浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【強化・マネジメント編】<br />  5.1.    補強・放出は適切だったか?<br />  5.2.    トップチーム運営は適切だったか?<br />  5.3.    持続的な強化のためのインフラ整備はできていたか?</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182423" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【強化・マネジメント編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182423">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p><br />6.    浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【戦略編】<br />  6.1.    そもそもサッカーの定義が合っていたか?<br />  6.2.    適切な組織体制だったか?<br />  6.3.    この取り組み自体が正しかったか?</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182412" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【戦略編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182412">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p><br />7.    浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【その他・あとがき編】<br />  7.1.    メディア・コミュニケーション<br />  7.2.    サポーターの理解と関わり<br />  7.3.    全体を通じての感想(独り言)、そしてあとがき</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182400" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【その他&amp;独り言編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182400">www.urawareds96.com</a></cite></p> <h5 id="言いたかったこと">言いたかったこと</h5> <p>びっくりすると思いますが、全部で新書一冊分くらいの文字数があります。なので、以下になるべくかいつまんで書いていることをまとめておきます。これだけ読んでくれればOKです。ありがとうございました。</p> <h5 id="時系列編">【時系列編】</h5> <ul> <li>2019年12月12日、浦和レッズのフットボール本部体制が始まった。フットボール本部はトップチーム、レディースチーム、アカデミーまでの各カテゴリーを全て所管し、その中でもSDとTDはトップチームの強化を専門に扱う。</li> <li>土田SDが示した「キーコンセプト」と3つの「チームコンセプト」、すなわち『個の能力を最大限に発揮する』、『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』、『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』への共感がどの程度だったかわからないが、新体制への船出が大きく歓迎されたとは言い難いのも事実だった。特に大槻監督の続投には、浦和での2度にわたる「暫定監督」以外はトップレベルでの監督経験がなかったので、ファン・サポーターとしては内容面への期待ができないことや経験不足を理由に、「優勝を狙うのにこの監督でいいの?」というリアクションになっていた。</li> <li>とはいえ、大槻監督はキャンプを経て、前年とは全く違ったチームおよび戦い方を構築した。土田SDの示したコンセプトに『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』とあった通り、4-4-2をベースにしたプレッシングおよびゾーンディフェンスの導入がその根幹で、さらに大槻監督は「主体的にプレーすること」をキーワードとして強調し、チームカラーの大きな転換を図った。</li> <li>ただ、大槻体制は選手への負荷が大きくシーズンを戦い抜くのが難しいやり方だった。</li> <li>初年度を勝ち点46の10位、得失点差-13で終える。フットボール本部は後任にリカルド・ロドリゲスを招聘。</li> <li>実際には、一部報道に上がったように大槻⇒チョウキジェ氏のバトンタッチを当初から計画していたと思われる</li> <li>一方で、コンプライアンス上の問題があって(もしかすると、クラブそのものよりもスポンサーからのヘジテーションがあったのかも)チョウ氏を招聘できなくなかったとすると、次点の候補があまり揃っていなかった可能性がある。</li> <li>大槻監督の後継としてチョウ氏への監督打診が報道されたのは2020年11月初旬(4日)だが、その直後にクラブ外部(スポンサー企業等)からの懸念やある種の圧力を受けてチョウ氏から次点候補への鞍替えの意思決定をせざるを得なかったとすると、クラブが土田SDの休養を発表した11月20日という時系列は無視できない。考えていた最高の候補者を招聘できなくなったその時には既に土田SDは職務を遂行できる状況になく、更に次点の候補者は不在か決め手なしという状況で、戸苅本部長と西野TDによって後任の選定が行われた可能性がある。</li> <li>リカルド就任に伴う大量放出・大量獲得を行った2020年オフだが、どうも選手獲得の路線が統一できていなかったように思われる。</li> <li>もしくは、単にフットボール本部の積極的な意思としてハイブリッドなスタイルを実現するためにプレッシング寄りとポゼッション寄りの選手を意図的に両方獲得しておいたという見方もできるかもしれない。</li> <li>リカルド初期の自陣からボールを繋ぎつつ相手が前に出てきたスペースをSHの選手やキャスパーが爆走して一気に相手ゴール前に迫るこの頃のサッカーは純粋に魅力的であり、後から思えばこの時期のサッカーがフットボール本部の目指した「ハイブリッドスタイル」に最も近かったと言えるかもしれない。</li> <li>2年目の2021年シーズンは勝ち点63(38試合)の6位、得失点差+7。成績は向上したが、上位4チームの得失点差が軒並み+20以上、神奈川2チームにいたっては+50前後にまで到達しているのに比べ、浦和は7。特に得点数で上位2チームと40点近い差をつけられ、一般的な優勝ペースからも程遠い45得点という結果が2022シーズンに掲げる優勝の公約への焦りを加速させたような気がする。2018シーズン以来の天皇杯優勝とACL2022への出場権獲得で阿部ちゃんを送り出すという美しい終わり方の裏で、圧倒的な攻撃力への課題感は大きかったのではないか。</li> <li>2021年のオフはリカルドのサッカーへの親和性の薄い選手を思い切って放出し、よりビルドアップ耐性の高い選手をスカッドに集めようとした意思が読み取れる。総合すると、2020年オフとは打って変わってフットボール本部の意思として彼らのいうポゼッションスタイルへの傾倒が感じられるオフとなった。</li> <li>2022年は二つの大きな課題にぶちあたった。一つ目はこのチームの戦い方が見付けられていなかったことで、後半戦ほぼ固定だった敦樹・岩尾コンビがなかなか固まらず、リカルドの目指すゲームコントロールと質的・量的に十分な前線への選手配置という部分で問題を抱えていたことが推察される。もう一点は前線の組み合わせに関するもので、江坂が0トップのような形で中盤に降りつつチャンスメイクをする形で戦いつつも、それ以外の選手、つまり中盤前目の選手たちの得点が伸びなかったことが挙げられる。</li> <li>リカルドのサッカーがゲームをコントロールし失点リスクを減らしつつ攻撃していく、つまりある種の均衡状態を意図的に作り出したうえで自分たちだけ勝とうとするやり方を取る中で、彼らがそんなに都合の良い結果をもたらしてくれるだけの選手であったのか?という疑問には向き合わなければいけない。</li> <li>20節以降、リカルド・レッズは「自ら作り出す意図的な拮抗の中で都合の良い結果を引っ張ってきてくれる個の力」をモーベルグ・大久保の二人に見出し、安定したゲームコントロール+得点力という難しい課題を一時的に乗り越えることができていた。また松尾をトップに据える戦い方を取り入れたことで一気に安定して質の高いゲームができるようになった。しかし、この時点ですでに20節を消化していた。</li> <li>ACL全北戦の激闘後、合計7名が新型コロナウイルスの要請判定が出たことでチームにはかなり大きなダメージが出た。全北戦後に4日連続のオフを与えたリカルドの判断は結果的にデメリットが大きくなってしまった。オフのせいで陽性判定者が出たとは言えないが、明確な区切りをつけたことで2ヵ月間の流れを切ってしまった感じはあった。</li> <li>ルヴァンカップ準決勝第2戦を落としたダメージは非常に大きかったと言える。ゲーム開始直後の噛み合わせが全くハマらず、それを修正できなかった点と、成績上のライバルクラブであり現行監督がリカルドよりも遅く就任しているセレッソに、今季の浦和が得意としていた4-4-2⇔4-3-3可変で完成度の高いゲームを披露された。これによってクラブ(フットボール本部)は「結果はともかく、リカルドはチーム作りをよくやっている」という現状維持方向の評価を続けにくくなったと思うし、チーム内部でも最後に残されたタイトルを失ったことでリカルドのやり方への信頼というのが揺らいでしまったのではないかと感じる。正直、この時点でチームの結束は失われていたというか、リカルドの求心力という部分で修復不能な状況が生まれていたのかなという印象。</li> <li>やはり全体としては引き分けが多すぎ、リーグトップの15もの引き分けを積み上げている。得失点差がリーグ4位であることを踏まえても序盤の7連続引き分けやACL後に失速してしまった時期に苦しんだのがこの成績の要因で、スカッドが持つ強さを発揮する形を早く見つけられなかったこと、そしてその形を維持できなかったことが大きな課題であった。</li> </ul> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227135249.png" width="1200" height="482" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <ul> <li>大きなところで言えば、短期的にでも優勝ラインを超えるペースのゲームが出来ていたのは2021年の夏前および秋ごろと2022年の夏ごろしかない。順位が順位なので当然だが、優勝争いをするほどの最大出力を出せていなかった、出せても維持できなかった。</li> <li>リカルドが退任時に言っていたように、今のJ1リーグはこうしたベースが無ければ、爆発力だけでは優勝できないようになっているということかもしれない。それはつまり、強豪チームが固定化する予兆がすでに出ているとも言える。</li> </ul> <h5 id="現場編">【現場編】</h5> <ul> <li>大槻体制の最大の課題は「相手を休ませないプレー」の部分であった。対戦相手との実力・完成度の差はもちろんあるが、例えば4-4-2のSHをWB的に最終ラインまで下げることで5バック化しゴール前を固める戦術を採用した2020年第10節ホーム広島戦(1-0)などは、どちらかというと「こちらが休めないプレー」という感じだった。</li> <li>また、大槻監督の目指すサッカーや対戦相手の分析重視の戦い方の設定手法が、当時の選手たちに受け入れられなかったことは大槻監督にとっては仕事を難しくした要素だった。槙野がコメントしたように「僕たちは今リアクションサッカー」という言葉が出るのはミシャ・レッズの戦い方と美学からすれば理解はできるものの、より抽象的な部分で違うやり方で主導権を握ろうとしているという部分がチームに浸透しなかったのは残念だった。</li> <li>再現性のあるボールの動かし方、崩し方、決定機の創出が出来ないという部分がさらにボール非保持の時間を長くし、ボール非保持の時間が長すぎれば激しくプレッシングにいくこともできず、総合して防戦一方の印象を与えるというスパイラルがあった。こうした物足りなさがポジショナルプレーを導入したいという思惑を強め、リカルドを招聘した要因の一つとなった。</li> <li>一方でリカルド体制でどれだけ「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレー」ができていたかというと難しいところ。結果的に自陣ボール保持率は2020年から2022年にかけて大きく向上(Football LABのチームスタイル指数で46→67、ちなみに2022年の67はリーグの最高値)したわけだが、これによってどれだけ「相手が休めな」くなったか、というとうーんとなる。</li> <li>「平均的なプレーエリアが低くなった」ことについては要素を大きく2点に分解できると思います。一つはボール保持に人数をかけ過ぎていたこと(自陣ボール保持のフェーズで多くの時間を使い過ぎてしまったこと)。もう一つは失敗リスクを回避するプレー選択・志向がチームに蔓延してしまったこと。</li> <li>仕掛ける回数に比してやり直しの回数が非常に多かったこと、その割にサイドチェンジの回数が多くなかったこと、個人で相手を外し相手の守備組織にヒビを入れるプレーがなかなかでなかったことなどが影響し、ボールを下げてボール保持の形を整えようとした結果、ビルドアップの局面に自分たちからまた戻り、改めて後ろに人数を必要としてしまうという構造があった。こうしたやり直し・繰り返しを通じて、2022年シーズンはリーグ屈伸のチャンス構築率(12.1%、リーグ2位)を誇ったものの、こちらが確立の高い攻め手を模索することに時間をかけるあまり、相手はブロックを敷いて構えていれば最も危険なところはケアできてしまう、という現象がリカルド体制のサッカーの典型であった。</li> </ul> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227181926.png" width="1185" height="508" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <ul> <li>2022年シーズンのシュート成功率は10.1%でリーグ8位となっており、2020年~2022年の3年間で最低。</li> <li>全体的にリカルドの考え方は、試合をコントロールしたい⇒失点・失敗リスクを排除したい⇒相手の強みを消したいという思考回路からくる相手に合わせた撤退守備と、試合をコントロールしたい⇒ボールを保持したい⇒ボールを失うリスクを排除したいという思考からくるやり直しの2点に多くのリソースを使い、結果的にピッチ上に相手との安定した拮抗を作り出すことには長けていたものの、それを自ら打破して勝利をもぎ取るところまでは至らなかった、そして、こうしたリカルド志向に沿ったチームを成熟させるにつれて、クラブが求める「前向き・攻撃的・情熱的なプレー」との隔たりが顕在化していった。</li> <li>「採用した戦術はクラブの戦略・目指すサッカーの志向(抽象的概念)を適切に表現(具体化)するものであったか」という問いに対しては、大槻体制ではとくにボール保持面で不十分、リカルド体制ではアプローチが真逆かつ真逆に進む割にはクオリティ不足、という結論にならざるを得ない。</li> <li>「採用した戦術はクラブの戦略・目指すサッカーの志向(抽象的概念)を適切に表現(具体化)するものであったか」という意味では、大槻体制に関しては、シンプルに得失点差がマイナスというのが頂けない。</li> <li>4-4-2を基本としたシステムを整備した一方で、CFは監督の求める多量のタスクとは無縁の点取り屋だったし、ボールと逆サイドのSHにどうやって、どの程度スライドをさせるのか、逆サイドのSBによるファークロスへの対応をどう仕込むのか、センターバック同士の距離感をどのように設定するのかなど、細かい部分で過去6年以上にわたって3バックを基本としてきた選手たちの頭の中を整理するのに苦労したかもしれない。</li> <li>ボール保持においては基本的にはプレッシングで奪ったボールを最速でゴールに結びつける速攻戦術(ファストブレイク)を志向していましたが、4-4ブロックを組みつつもファストブレイクにスピードをもって参加できる選手は多くなかった。</li> <li>大槻体制は新しいコンセプトの浸透という大目標に忠実ではあったものの、戦力を活かすという意味では非常に難しい状況であったし、加えてボール保持の仕組みをうまく仕込めなかったことでゲーム運びの主導権を握れなくなってしまい、選手への負担が非常に大きく、シーズンを走り切り目標を達成するという点では持続性に欠け、適切とまでは言い切れないものだった。</li> <li>リカルド体制では、浦和レッズのボール保持のクオリティは著しく向上した。</li> <li>一方、2021年はボール保持を大事にすることで攻撃回数が減ったにも関わらずシュート数が増えておらず(質の高いポゼッションができておらず相手を崩せていないこと)、2022年はシュート数が増えた(ビルドアップの質が改善した)にも関わらずシュートを決め切れていない。</li> <li>リカルド体制ではフットボールの質は大槻体制よりも間違いなく改善したが、最終的には押し込んだ相手を破壊するだけの武器を見つけられないままリカルドのゲームモデルを貫き、比較的安定したゲームをするが勝ち切れないというチームへと変貌していった。</li> <li>総合すると、大槻体制ではクラブのコンセプトに忠実な戦術構築・勝ち方を目指したが、編成との不整合もあり戦い方が安定せず、ハードに戦うスタイルが裏目にでてリーグに結果を出すには至らなかった。その反省からか戦術的な完成度を重視して招聘したリカルド体制では、リカルドの持ち込んだ戦い方が定まりゲーム内容も向上・安定したものの、逆に自らが作り出した拮抗を打破するだけの破壊力を身につけられなかった、そうした武器を活かす形とリカルドの目指すゲームモデルの間で戦力の効率的な活用ができず、結果が出ない中でコンセプトの不整合が浮き立つようになってしまった。</li> <li>戦力活用と言う意味でいうと、2022シーズンは疑問が多い。新加入選手の多くがプレータイムを確保できていない。特に、既に話題にした通り松尾をもう少し早く組み込めなかったか?という印象は強く、コンディション的な出遅れはあったにしろ序盤~中盤にかけてもったいなかったポイントの一つか。</li> <li>また、選手の特徴を活かしてガラッと戦い方を変えるような部分があまり見られなかった。江坂やキャスパーがプレッシング・ボール非保持の局面での貢献度の低さから最後までうまくチームに組み込めなかったことは2022シーズンに特に顕著だったが、一番上手くて決定力のある選手たちだったので、相手や状況によっては彼らを活かす戦い方を思い切って選ぶような選択肢もあったような気が。</li> <li>またこれに関連して、リカルドはいわゆる大駒選手の扱いに苦労していた気が。江坂、キャスパーがシーズン途中であからさまにチームへの貢献意欲を欠いていたように見えたことが目立ちましたが、酒井やモーベルグも同様に自分のプレースタイルとチームが理想とするバランス感覚との間で葛藤があったと思われる。</li> <li>選手の成長については、2021シーズンの夏の補強で即戦力を多く獲得したこともあって、リカルド体制では選手の成長をどうこうというよりも、選手をどう当てはめていくかという部分にチームの主眼が置かれていったという印象。</li> <li>とはいえ、情状酌量ではないけれど、背景にはコロナ禍とW杯というイレギュラーな事情によってスケジュールが圧迫され、なかなかトレーニングの時間を確保できなかったことは忘れないでおきたい。</li> </ul> <h5 id="強化マネジメント編">【強化・マネジメント編】</h5> <ul> <li>大槻体制の方がフットボール本部の策定したゲームモデルに対する忠実性、ゲームモデルを体現しようとする姿勢において大槻監督はリカルドよりも優れていた。ただし実績はなく、大槻監督で良かったのか?という疑問は理解できる。</li> <li>ではなぜ大槻監督を選んだか?そもそも土田SDのいう「浦和の責任」という言葉から理解する必要がある。</li> <li>根底には、「サンフレッズ」と言われたミシャの時代を起点として外様選手が増え、彼らが中心を担ってからのクラブ内の雰囲気への危機感があったように感じる。もしくは、ひねくれた言い方をすればそれは土田SDの心の中にある「あの頃」への懐古のようなものかも。</li> <li>その良し悪しは別として、土田SDの理想像である空気感、そしてその空気感をベースにするコンセプトの実現には、土田SDが「浦和を背負う責任」と名付けたものをまず取り戻さなければなりません。この責任概念を現場で植え付ける宣教師としての役割こそが、大槻監督には期待されていたような気が。</li> <li>「3年計画」の初期段階として、責任概念を含めてトップチームの雰囲気を変え、「あの頃」に近づけていく一歩目を担うことこそが重要であり、戦術的な部分・ゲームモデルの構築はその先の2次的なタスクだったのでは。</li> <li>大槻体制でベースとなった4-4-2プレッシングという非保持面の武器にリカルドのビルドアップの仕込みを組み合わせようという足し算の発想(=ハイブリット)でのリカルド招聘だったと思うが、サッカーは単純に戦術を足し算すればよいわけではないというのがやはり真理だった気がする。</li> <li>2年間を振り返ると、リカルドもロティーナに近いサッカー観・志向を持っていると言っていいのでは。もちろんボール保持の部分での作りは多少違うと思うが、全体的には不要なトランジションは避ける、下手にリスクを冒さない志向を感じた。フットボール本部の策定したコンセプトには「リスク」という単語が出てきませんが、全体的にはリスクをある程度許容して勝負しにいく姿勢というのが浦和っぽさなのだと思う。リカルド招聘にあたっては、この点のリスクへの考え方がマッチングの際にあまり考慮されなかったのかなという気が。</li> <li>ポジティブに考えれば、リカルド招聘の2年間をもってそういった要素が重要であるという学びを得たし、それを活かしてスコルジャ監督を招聘したのだと言えるかもしれない。</li> <li>コーチング体制は特にリカルド招聘後野心的に。キーワードは理論とテック。前迫コーチの招聘も成功と言える。</li> <li>気になるのは、リカルド体制以降のコーチング体制の若さ、経験の無さ、そして絶対的な人数。特に経験面は、J1リーグやACLを戦い抜く、タイトル争いに最後まで絡んでいく、優勝を争うクラブの高い基準を植え付けるという部分でどうだったのかなという疑問。</li> <li>この指導体制と選手たちを比べると選手のほうが明らかに実績があるので、「指導」という言葉をそのまま捉えたときにどれほど「指導」になったのだろうという素朴な疑問が湧いてくる。</li> <li>2022シーズンはコロナ以外の離脱も多くて、メディカル関係の課題が出たシーズンだった。怪我予防の責任はフィジコ、早期回復、怪我リスクの回避の判断はドクターチームの責任というのが一般的だと思うが、この辺りの原因分析と改善は是非期待したい。特に野崎さんが岐阜に移った影響?</li> <li>毛色が違うのはGKコーチで、ジョアン体制となった浦和レッズのGK陣の取り組みは各所でレポートされている通り。結果的にこれは大成功だった。</li> <li>個人的にはこうした技術向上のためのコーチがチームの中にいてもいいような気がする。例えばGKだけでなくFPでもという発想で、FWはFW特有の動きや技術を指導できる専門の技術コーチがいても良い。技術コーチと書いたのは監督をサポートするコーチとある程度役割を分けてもいいのではないかと思うからで、あえて名前をつけるなら技術コーチと戦略・戦術コーチを用意して、役割分担・棲み分けをするようなコーチング体制も面白い。</li> <li>リカルド体制の感想として、いわゆるポジショナルプレーで成功するにはやっぱり選手の質が必要。僕の理解ではポジショナルプレーは「サッカーの正論」をパッケージしたもので、その成功には「自分たちがミスをしないこと」が前提として内在している。各ポジションに必要な技術を持ち合わせなければポジショナルプレーは実現しないし、それはいわゆる個人戦術をどこまで持ち合わせているかも同様。</li> <li>一方で、浦和レッズを含めて世界の多くのクラブは必要な技術や資質を全て持ち合わせた選手を獲得できない。ういう中で、新卒選手やJ2、J1下位からステップアップしてきた若い選手、実績はあるものの浦和レッズのサッカーに初めて触れる選手に対して、日々のトレーニングで、目指すサッカーに必要な技術を身につけられる・技術を向上させる体制を整備する重要性が高まっている気がする。</li> <li>プロとして生きていく、選手の価値を向上させるための技術や個人戦術を教える役割は少し違う人に任せてもいいのかなと思う。例えばここにクラブに縁のあるレジェンドを招聘してもいいし、ジョアンのように技術体系・指導理論を確立している人を海外から招聘しても面白い。要は監督を補佐する戦略・戦術担当のコーチが決める方向性を尊重できていれば、専門技術は専門家に任せるという考え方でもいいのではないか。</li> <li>補強・編成について考えると、全く動けなかった2019年オフ・2020年夏、大きな入れ替えを行った2020年オフ~2021年オフまで、スカッドが整理できた2022シーズンと分けられる。</li> <li>全体をみれば、その時々で仕方のない放出や獲得失敗があったとはいえ、うまく編成を行ったと思う。なによりスカッドの再編成を進める過程で選手の評価基準を新しくし、コストパフォーマンスを高められたであろうことは特筆されるべきこと。</li> <li>課題としては、そもそもこのバランスの良いスカッドをさらに高めていくのは今後難しくなるだろうということがまず思いつく。今後はなかなか放出が難しくなる(=スカッドの流動性が低くなる)んじゃないかというのが今の想像。</li> <li>3年計画の反省を活かすという意味では絶対的に軸となるトップ、特に仕事量を多くこなせる前線の選手を確保し続けたい。またポジションというよりはその選手の得意な役割が何か、という視点で編成バランスを整えていくというのが持続的な強化には必要かも。</li> <li>また、単純な戦力という意味ではなく、トップチームの選手をひとつのグループとしてみたときに、ベテラン、グループのリーダーを任せられる選手をどう確保し育てていくかという部分はフットボール本部の課題になったのではないかと思う。</li> <li>「持続的な強化のためのインフラ整備」もいろいろと進められた。キーワードはデータ活用とネットワーキング。Wyscout Scouting Arena、TwentyFirstGroup、Transfer Room、欧州サッカー界とのネットワーク強化(海外クラブとのパートナーシップ含む)など。</li> </ul> <h5 id="戦略編">【戦略編】</h5> <ul> <li>僕はこの点が「3年計画」の成否や結果よりも大事だと思っているのは、「浦和のサッカー」をクラブが主体的に定義するということ。</li> <li>ただそもそも、「浦和のサッカー」に説得力があるのか?という部分も検証されるべきという意見にも一理あり。「お前たちがそのサッカーを目指すのはわかったけど、俺たちはそれに同意していないが?」という人もいて当然。</li> <li>悩ましいのは、2008年以降にファンになり、2007年以前よりも2008年以降、特にミシャの時代の浦和レッズの方に親近感があるサポーターも無視できないほどには多くいるということ。正直、そういった人たちにとっては、いくら「前向きに」という枕詞を付けたとしても、守備から入っていくという根本的な出発点にあまり同意できないのではないか?自陣でのボール支配で相手を引き込み、機能的なビルドアップ、敵陣でのコンビネーションからの美しいゴールを楽しんでいた人たちにとって、ネオ「速く、激しく、外連味なく」がどこまで受け入れられるのか?昨今のポジショナルプレーの流行りも踏まえて、必死に取り組んで目指したサッカーを「これが浦和だ!」と感動してもらえるのか?</li> <li>では、フットボール本部は「浦和のサッカー」を書き換えるべきか?実際のところ、フットボール本部は一度「浦和のサッカー」の定義を口頭で修正している。</li> <li>当初は土田SDが「攻撃はとにかくスピードです」と言い切っていたものを、リカルド就任時の戸苅事業部長のコメントでは「ポゼッションとのハイブリット」という風に説明し直した。これはおそらくリカルド就任に合わせて、当時の課題感に対処するため、リカルド招聘との整合を取るためにこういった言い方になったのだと思うが、これは悪手だった。</li> <li>というか、表現を修正したことよりも、その説明があまりなかったことと、口頭で修正したにも関わらず文言自体は残したことが良くなかった。もし口頭で説明の仕方を変えるだけの危機感があり、その線で監督を招聘したのなら、それも含めて説明して修正すればよかった。</li> <li>最初の理想像は少し尖り過ぎていたと思い至ったので思い切って修正します!と堂々と言えていれば、多少の批判があってもそれはそれで理解されたと思うし、逆にそうしなかったことで、やっていることに本音と建前が出来てしまったように感じる。</li> <li>こうした苦い経験から学ぶことがあるとすれば「浦和のサッカー」の定義の仕方はもう少し考えようがあるのではないか、ということ。</li> <li>重要なのは、このコンセプトにいかに説得力を持たせるか、という部分。コンセプトは選択の原則を示すものだが、「そもそもなぜその選択を優先すべきなのか?」という部分がなければ、コンセプト自体が否定されてしまう。</li> <li>土田SDはおそらく、2007年までの浦和レッズ、特に黄金期のテーゼである「速く、激しく、外連味なく」への回帰への情念(もしかしたらそうした時代へのノスタルジー)をベースとしてこうしたコンセプトを設定したのだと思う。一方で、これまで見てきたとおり、実は今の浦和ファンはそれほどあの時代を懐古していないのではないか?していたとしても、土田SDと同じノスタルジーとモチベーションを持っているわけではないのではないか?という疑問は拭えない。</li> <li>そうすると、「コンセプト」の根拠には、個人の情熱ではなく、ファンやステークホルダー、地域環境も含めたクラブとクラブの周辺全体‐一言で言うと「埼スタの感覚」とでも言うべきものを考慮しなくてはならないのでは。</li> <li>例えば、ここ2年間リカルドの試合を見ていて、狙い通りの拮抗状態を作り出したものの、試合終盤になっても勝つためのリスクを負わない、試合が動かないタイプのゲームは個人的にはあまり好きではないと気づいた。試合を動かさないタイプの選択を続けるとせっかくの埼スタが冷めていく感じがする。やっぱり熱狂・熱量が埼スタと浦和レッズのアイデンティティなので、だったらリスクをかけてでも試合を動かそうよ、となる。</li> <li>雑な案かもしれないが、「攻撃はとにかくスピード」ではなく、「ハイブリットなスタイル」でもなく、「強力なドリブラーによる1on1をたくさん作り出す」が浦和のコンセプトでもいいんじゃないか。その作り出し方は監督によってまちまちとしても、こういうコンセプトなら素直にドリブラーにお金をかけるというのもはっきりする。埼スタを盛り上げるプレーを優先するという考え方をコンセプトに取り入れてもいいのでは。</li> <li>戦略実行体制としてのフットボール本部については、体制が維持され、失敗を分析し、反省を活かし、次のチャレンジに繋がることが本当に大事で、これが担保されればこれだけでフットボール本部体制は半分成功。</li> <li>一方で、この組織体制を維持していればOKかと言うと、そうはならないのではない。具体的に言えば2点、後継者問題と持続的な強化を可能にする仕掛けが必要では。</li> <li>後継者対策として、現在のフットボール本部本部体制の中に将来のSD候補を仕込んで欲しい。浦和のコンセプトの根拠・背景として「埼スタの感覚」がふさわしいと考えると、この「埼スタの感覚」を言語・非言語のどちらでも理解できる人が必要。フットボール本部の中で浦和レッズOBの中でふさわしい人を育成していくべきではないか?</li> <li>持続的な強化を可能にする仕掛けについては、ちょっと夢を語るようなところがあるが、個人的にはトップチーム強化を目的としたセカンド(U-23)チームの設立・運営に思い切って取り組んで欲しい。</li> <li>いいことはいっぱいあるが、大きな問題の一つはコスト。2.4億円くらいが相場だとすると、2022年現在だとトップチームのスター選手2人分の年俸くらいのコストなので、このあたりのB/Cが現実問題としてあるのかも。要は、U-23なんてやったらいいのはわかってるけど、それよりトップチームに人件費を使わないと本末転倒だろ?という感じ。</li> <li>セカンド(U-23)チームの設立にあたっての大きな問題はまだあり、参入リーグの問題とホームスタジアム問題が大きい。</li> <li>いろいろ問題はあるが、売上規模の大きいクラブとして、こうした大きな投資にチャレンジしていくことも日本のリーディングクラブとして価値を高めていくには必要なのでは?浦和レッズのコンセプトを体現する指導者・選手育成の内製化と、登竜門としてタレントプールを広く持ちふるいにかける機能をクラブの中に持っておくことで持続的な強化を可能にし、他クラブが真似したくても真似できない競争上の強みを手に入れたい。</li> <li>最後に、根本的にこのフットボール本部体制と「3年計画」の取り組みが正しかったかについて考える。重要なのは、<br />1.トップチーム強化体制がクラブ経営からある程度独立したこと<br />2.トップチームのあるべき姿・方向性をクラブ主体で決めることにしたこと<br />3.クラブのあるべき姿・強化の方向性を過去の失敗から導いたこと</li> <li>現実としては、近年のJ1リーグは強固な基盤の上にタレントのシナジーが揃って初めて優勝争いができる非常に厳しい競争となっており、そうした要素を持ち合わせる川崎や横浜FMとの差を3年で埋めるのであればひとつも間違いは許されないチャレンジだった。にもかかわらず1年目で監督交代、3年目の夏にラストピースのFWを補強する(そして10分で負傷離脱)という感じではきつかった。</li> <li>おかげで「3年計画」は言い逃れできないレベルの失敗となったが、そうするしかなかったという事情はわかるし、やったことでわかったこともある、という意味で全部を否定するものではないかなという感じ。</li> <li>やっぱり浦和の取り組みはフットボール本部体制を作ったこととこの体制を継続して持続的な強化を達成すること自体が重要なので、この失敗をさらに活かすことが求められるし、そういう意味でフットボール本部のコンセプトと戦術の齟齬が隠せなくなっていたリカルドをスパッと切って、よりゲームを動かしリスクをかけるサッカーをしそうなスコルジャ監督を引っ張ってきたのは失敗を活かすという部分で正しいのかなと思う。</li> </ul> <h5 id="その他独り言編">【その他&amp;独り言編】</h5> <ul> <li>メディアの皆さんにもっとフットボール本部を追求して欲しかったという思いがある。【不定期連載】と題された「土田SDが伝える浦和レッズの今」も2020年8月16日と2020年10月9日の掲載以降ついぞ連載されることはなかった。</li> <li>ファン・サポーターのコミットメントを高めるためにも、フットボール本部のパフォーマンスを監視するためにも、今後も続くフットボール本部の取り組みにあたっては、事あるごとにフットボール本部、特にSDにはオモテに出てほしいし、いろんな言葉を引き出してほしい。</li> <li>受け取る側のサポーターはについては、好きに楽しめばいいと思うけれど、ファン・サポーターが最も影響力を持つのはやっぱり埼スタの空気感を作る部分。コンセプトに関する部分で書いた通り、コンセプトを定めるのはフットボール本部だが、コンセプト自体には共感されるべき根拠がなければいけない。要は、埼スタが好むサッカーを目指すという大義名分がコンセプトの正当性には決定的に重要。つまり、クラブがコンセプト策定の時点でブレないようにするためには、「埼スタが好きなサッカー」をどんどん明確にしていく必要がある気がする。</li> <li>端的に言えば、好きなプレーにもっと盛り上がること、だんだんとそれが明確になることいいなと思う。そういった盛り上がりやリアクションを通じて、クラブが埼スタの好む浦和のサッカーを理解・定義していく、そしてその実現のために監督を呼び、選手を集め、鍛え、ピッチで魅せる、そういう循環を持続的にどんどん進めていけたら、それこそがフットボール本部体制が目指す姿の実現に繋がっていく気がする。</li> <li>フットボール本部の取り組みと「3年計画」については、たしかに上手くはいかなかったけれど、個人的には非常に多くの学びがあった。サッカーについてもそうだし、プロジェクトマネジメントみたいな観点でもそう。フレームワークが合っていても小さな判断ミスや見込みの甘さ、キーパーソンの離脱、もっと理不尽なところ言えばコインの裏表みたいなところで結果は変わってしまうし、リンセンの獲得タイミングの判断のように、間に合うけれどベストではない選択肢VS間に合わないけどベストな選択肢みたいな究極の決断をしなければいけないこともある。こういう決断を正解にしていくのがプロジェクトリーダーの資質なのでしょうし、長期のプロジェクトを観ていく面白さなのかなと思った。</li> <li>この先は、埼スタが求める興奮を論理的に作り出す取り組みのさらなる推進と、それがゴリゴリ実を結んで埼スタがスペクタクル大量生産工場になるのを期待。</li> </ul> <p> </p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【時系列編】 hatenablog://entry/4207112889946463310 2022-12-27T18:24:41+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 3 【時系列編】 「3年計画」について考えるにあたって、この3年間で何が起きたかをまずは確認していきます。記憶を掘り起こしながらなので濃淡は出てしまうと思いますが、なるべく丁寧にこの3年間のストーリーを追っていきましょう。 3.1 2019年オフ~2020年シーズン フットボール本部の誕生 それでは、私の方から経緯についてご説明させていただきます。私は2年前のシーズンに副社長として浦和レッズに参りました。その際、4月に新しい強化本部というものの体制を構築して、副社長という立場で強化本部長を拝命いたしました。それ以降、今年からは代表になりましたけれども、クラブの一番大事な根幹である強化のところを… <h4 id="3--時系列編">3    【時系列編】</h4> <p> 「3年計画」について考えるにあたって、この3年間で何が起きたかをまずは確認していきます。記憶を掘り起こしながらなので濃淡は出てしまうと思いますが、なるべく丁寧にこの3年間のストーリーを追っていきましょう。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220825/20220825214751.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="31--2019年オフ2020年シーズン">3.1    2019年オフ~2020年シーズン</h5> <p><strong>フットボール本部の誕生</strong></p> <blockquote> <p>それでは、私の方から経緯についてご説明させていただきます。私は2年前のシーズンに副社長として浦和レッズに参りました。その際、4月に新しい強化本部というものの体制を構築して、副社長という立場で強化本部長を拝命いたしました。それ以降、今年からは代表になりましたけれども、クラブの一番大事な根幹である強化のところをずっと見てきた、という経緯がございます。そういった意味でも、責任をずっと感じて仕事をしてきたわけですが、代表といたしまして、これから浦和レッズを本当に強い、私が2年前に来たときに最大の目標として掲げたFIFAクラブワールドカップの優勝というものにチャレンジしていく、そういった強化の体制というものを考えたときに、今回、今までにない新しい発想で、新しいことをやっていける、そういったメンバーを集めることにしました。</p> <p>(中略)</p> <p>一番大事なのは、これまでのいろいろな歴史を踏まえて、我々ができなかったことを自覚して、それをどういうふうに実現していくんだ、というところを具体的にお示しすることだと思っています。それをこの何日間、何週間、もっと言いますと私自身はこの夏ぐらいから、来シーズンに向けた浦和レッズの新しい体制、そういったものを考えてまいりました。それは私だけではなく、浦和レッズの幹部が全員集まって議論をして、浦和レッズのサッカーってなんなんだ、ファン・サポーターのみなさまが求めているものはなんなんだ、どうやって実現するんだ、そういったことを考えてまいりました。それを実現していくのが、私の仕事です。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F162829%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/162829/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> 2019年12月12日、2020シーズン新体制発表記者会見での立花社長の言葉です。2008年のフィンケ氏招集以来、育成、継続性、そして「レッズスタイル」へのコンプレックスに苦しんできた浦和レッズの迷走のストーリーについては<a href="https://www.urawareds96.com/entry/2019/06/05/114833">以前まとめました</a>が、いわばこれは、そうした歴史への現体制からの、クラブの迷走を最も知る人たちからのアンサーでした。</p> <p> ここから、浦和レッズのフットボール本部体制が始まりました。フットボール本部はトップチーム、レディースチーム、アカデミーまでの各カテゴリーを全て所管し、その中でもSDとTDはトップチームの強化を専門に扱う役職という建付けです。これまでは社長直下に強化部長(GM)を置く体制を取ってきた浦和レッズにとって、経営から分離したトップチーム強化専任担当を置くこの体制は全く新しいチャレンジでした。ここで最も強調されたのは、土田SDの言うところの「浦和レッズの抱える課題」への挑戦、「一貫したコンセプト」を持った強化です。</p> <blockquote> <p>土田SD</p> <p>「これからトップチームの方針を話す前に、浦和レッズの課題を話したいと思います。この現実を直視することが、まず我々に求められていると思います。我々が抱えている課題は、一貫したコンセプトの不在です。そのチームの柱となるべき一貫したコンセプトがないため、監督選び、選手選びの基準、サッカーのスタイルがその都度変わり、短期的な結果を求め、求められ、今まで来ました。『浦和レッズのサッカーは何なの?』と問われたとき、答えられない自分がいました。これからはチームの方向性を定めて、来シーズンからスタートすることが最も重要だと考えています。</p> </blockquote> <p>この「一貫したコンセプト」の肝として謳われたのが、かの有名な「浦和の責任(浦和を背負う責任)」でした。これが一体何なのかはこの時点では曖昧であったものの、とにかく形としてはキーコンセプトの元にトップチームを一貫して強化していくという枠組みが示されました。そして同時にここから3年でJリーグ優勝を狙う、「3年計画」も併せて披露されました。</p> <blockquote> <p>来季から、3年の計画をつくりました。基礎づくり、変革にはある程度の時間が必要となります。一方で、常に結果を求められるクラブであることも理解しております。しかしここで目先の勝利だけを追い求めると、今までと同じことの繰り返しとなります。ですので2020年は3年改革の1年目として、変革元年としました。キーコンセプト、チームコンセプトを浸透させながら、ACLの出場、シーズン終了後、得失点差プラス2桁以上が目標となります。</p> <p>(出典同上)</p> </blockquote> <p> 一方で、この新体制への船出が大きく歓迎されたとは言い難いのも事実でした。土田SDが示した「キーコンセプト」と3つの「チームコンセプト」、すなわち『個の能力を最大限に発揮する』、『前向き、積極的、情熱的なプレーをすること』、『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』への共感がどの程度あったかは別として、大きくは監督人事の問題でしょう。フットボール本部は、2020年シーズンの監督として前年途中から指揮を執っていた大槻監督の続投を示しました。一方で大槻監督は前年14位でのJ1残留を実現したもののサッカー的には大きな見どころがなく、基本的には前任のオリヴェイラ氏のフォーメーションを引き継ぎ、モチベーターとして戦うタイプの監督に思われました。しかも浦和での2度にわたる「暫定監督」以外はトップレベルでの監督経験がなかったので、ファン・サポーターとしては内容面への期待ができないことや経験不足を理由に、「優勝を狙うのにこの監督でいいの?」というリアクションになっていたのだと思います。こうした背景から、フットボール本部体制そのものや「3年計画」の是非は、とにかく結果が出るかどうかを重視して様子見する、といった受け入れ方をされていました。</p> <p> さらに輪をかけて期待感を削いだのがこのオフの編成オペレーションの物足りなさでした。新加入は新潟から完全移籍で獲得したFWレオナルドと能力不明のオーストラリアU-23代表トーマス・デン、伊藤涼太郎のレンタルバック、高卒で獲得した武田英寿のみ。毎年5人~10人の選手を獲得してきた浦和レッズの新加入選手会見にはレオナルドと涼太郎しか参加せず見たことがないほどスカスカで、取材する方も取材を受ける方も微妙な空気感だったのが印象的でした。これは新体制発表会見で示されたとおり既存の選手のほとんどが複数年契約を結んでおり、出せる選手がいないので新しい選手が獲れないという制約からきたものでしたが、新しい体制の船出としてはかなり寂しいものでした。</p> <p><strong>新しいレッズの戦い方と不自由な編成</strong></p> <p> とはいえ、大槻監督はキャンプを経て、前年とは全く違ったチームおよび戦い方を構築していきます。土田SDの示したコンセプトに『攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること』とあった通り、4-4-2をベースにしたプレッシングおよびゾーンディフェンスの導入がその根幹で、さらに大槻監督は「主体的にプレーすること」をキーワードとして強調し、チームカラーの大きな転換を図りました。浦和はこれまで伝統的に3バックで戦うことが多く、特に5年半に及んだミシャ体制では一貫して3-4-2-1をベースにしたボール非保持時5-4-1の撤退守備を敷いていました。ミシャのサッカーの実現を最優先しミシャのリクエストに応えるばかりか、獲得選手の選定から交渉までミシャに頼っていた2017年までの浦和レッズは、当然ミシャの戦術に合う選手を獲得していました。その後堀監督によって4バックが一時導入されるも主力選手には大きな変化がなく、大槻監督の前任で鹿島では4バックベースで3連覇を達成したオリヴェイラをもってしても、選手に適性がないということで4バックの導入を諦め3バック(5バック)ベースでチームを構築することを選んだほどでした。こういった背景がある中での大槻監督による4-4-2ベースのプレッシングの導入はかなり新鮮でしたし、実際に2020シーズン開幕戦のルヴァンカップ仙台戦はプレッシングを積極的に仕掛け5-2で大勝。リーグ開幕戦の湘南戦も課題を露呈しつつも3-2で勝利を掴み、なかなかの滑り出しで「3年計画」をスタートさせました。ただ残念ながら、コロナ禍による緊急事態宣言・それを受けたJリーグの4か月間にわたる中断によって良い流れで試合を続けられないどころか、選手たちが集まってトレーニングを行うことすらできないような状況が訪れてしまいます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200712/20200712180801.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> この期間にトレーニングを積んでプレッシングやビルドアップの連携を高められたらよかったのですが、大槻レッズにとってはむしろコンディション調整が難しい期間という側面が大きかったかもしれません。またこの中断によって夏場以降のスケジュールが詰まってしまい、連戦が増えたことでプレッシングをかけて試合を支配するという作戦を続けていくハードルも高まりました。第4節のホーム鹿島戦に1-0で勝利したまではよかった大槻レッズですが、続く第5節アウェーFC東京戦は先制点を許してしまったことでボールを握らされてしまい、注文度通りカウンターから失点し0-2敗戦。続くホーム柏戦でもクロスから先制点を許した後カウンターから崩れる形で0-4敗戦。この柏戦はピッチ上で声を掛け合う姿すらなく、戦術的に新しいチームとなり選手起用もミシャ時代からは変わったものの、リーダー不在で苦しい時間を耐えきれないチーム、といった感じでした。</p> <p> その流れが変わったのが続く第7節アウェー横浜FC戦で、ここで大槻監督はこのシーズン初めて槙野を先発起用。この試合でチームを鼓舞しつつ安定したパフォーマンスを見せた槙野は、その後の試合でもスタメン・レギュラーとして起用されるようになっていきます。槙野に関しては当初、4バックへの慣れやビルドアップ面での物足りなさから世代交代を意識する論調が強く、大槻監督もそういった意味でトーマス・デンや鈴木大輔、岩波に期待して彼らのプレータイムを伸ばしていきたいという思惑があったはずです。一方で、個人的にはこの経緯は彼の経験や守備者・ピッチ上のリーダーとしての振る舞いがチームに与える影響が戦術的な要素を上回った事例として印象深いものがありました。<br /> シーズン中盤にかけての浦和は爆発的に良いゲームができたわけではなかったですが、「3年計画」の初年度としてはそこそこのパフォーマンスを披露。ターンオーバーを試みたアウェー名古屋戦でCBの強度が足りずに2-6の大敗を喫するという謎の大事故がありましたが、1週間後のホーム広島戦ではPKで先制後80分間近くを5バックで守り切る振り切った戦い方で勝ち点3をゲットするなど、選手への負荷は大きかったもののなんとか踏ん張る戦いを続けていました。17節の川崎戦で0-3の敗戦をする直前の時点で16試合で勝ち点27の5位は初年度としては立派な成績でしたが、得失点差が-4であったことはゲームの内容が伴っていないにも関わらず勝ち点を得ていたという意味で歪だったとも言えるかもしれません。</p> <p> このシーズンの中盤でポイントになったのは第19節の横浜FC戦・第20節のFC東京戦、第21節の名古屋戦のホーム3連戦で、特に横浜FC戦では前半ボールを持たされたことに対して、このシーズン初めて大槻監督が柏木陽介をボランチ起用した後半が印象的でした(前半は右SH起用)。それまでの柏木はかたくなに右SHで起用されており、おそらくこれはプレッシングに出た際のカバーエリアの狭さや単純なスピード・インテンシティといった明確な弱点が大槻監督の目指す戦い方にフィットしていなかったことが主な理由だったと思われます。ところが露骨に「浦和にはボールを持たせておけばOK」という戦い方を選ぶチームが増えてきたことや、川崎戦に敗戦して以降中位に順位を落としたことで目標のACL圏から遠ざかる危機感もあったのか大槻監督がこの試合でついにボランチ柏木に手を付けたのでした。結果、これまで四苦八苦しながら取り組んできた、「正しい立ち位置を取る」とか「最終ラインからボールを運んでいく」とかそういった試みを全てぶっ壊し、彼のスペシャルな展開力・構成力に依存した柏木陽介のサッカーが展開され、結果的にボール保持の内容が大幅に改善するという、彼のあまりの影響・引力の大きさに<a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/162829/">僕は発狂した</a>のでした。</p> <p> 続くFC東京戦も同じような展開でゲームを落とし、名古屋戦はPKの判定に泣きビハインドを盛り返せないまま3連敗。続く鳥栖戦でマルティノス⇒汰木のスーパーカウンターが決まり勝利してからは良い流れだったので、この3連戦で勝ち点0に終わったのはかなり痛かったと思います。また、ここまで我慢して取り組んできた新しい浦和のサッカーが柏木陽介のCH起用一発でひっくり返った印象を与えたのもチーム作りを考える点では非常に興味深い出来事でした。</p> <p> その後27節にマリノスにまたも2-6大敗してしまいますが、それまでは-7あった得失点差を0に戻すなど上向きな試合を続けていました。ただ結果的にマリノス戦の大敗で目標としていたACL圏内・得失点差+10以上という定量目標が両方とも達成困難になってしまい、その後は選手のモチベーションを維持できずにプレッシングのキレがなくなり、対して強くもないブロック守備で相手の攻撃を受けてしまう展開となり、内容体に見せるものがほとんどない形で最後の5試合を1分け4敗。最終的な結果は勝ち点46の10位で得失点差は-13。フットボール本部が掲げた目標からは非常に遠い結果で「3年計画」の初年度を終えました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227123856.png" border="0" title="" width="835" height="1200" loading="lazy" /></p> <p>最後の5試合はどうしてもシーズンの印象に強く影響してしまうので、この5試合の虚無感は大槻体制を評価する上では厳しいものになってしまいました。選手側としてもかなりキツい思いをして戦ったシーズンになったでしょうし、いくらフットボール本部のゲームモデルに近くとも、この戦い方でシーズンを戦い抜くのは厳しいという印象となってしまったことはシーズンを通した評価としても必然なのかもれません。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200216/20200216135938.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="32--2020年オフ2021年シーズン">3.2    2020年オフ~2021年シーズン</h5> <p><strong>理想的ではなかったバトンと政権交代</strong></p> <p> そうした中で、フットボール本部は大槻監督の後任としてリカルド・ロドリゲスを招聘します。ただ実際には、一部報道に上がったように大槻⇒チョウキジェ氏のバトンタッチを当初から計画していたと思われます。ボール保持の局面にこだわらず、アグレッシブにボールを追いかけ、ダイナミックなプレーで見るものに訴える志向のサッカーこそ「ネオ・速く激しく外連味なく」のイメージに近いと考えるのが自然です。クラブ(土田SD)が理想と描くスタイルにマッチするサッカー観とそれを実現した実績を持ち、浦和レッズとも縁があるチョウ氏招聘をして3年計画を推進するというのが土田SDの青写真ではなかったかと思います。</p> <p> 一方で、コンプライアンス上の問題があって(もしかすると、クラブそのものよりもスポンサーからのヘジテーションがあったのかもしれませんが)チョウ氏を招聘できなくなかったとすると、次点の候補があまり揃っていなかった可能性があります。あまりにもチョウ氏が完璧な候補だったために、次点の候補の選定が難しかったということかもしれませんし、このような事態を全く想定していなかったのかもしれません。そのような状況で、土田SDが休職状態にあったのも3年計画の方向性に大きな影響を与えたのではないかと思います。大槻監督の後継としてチョウ氏への監督打診が報道されたのは2020年11月初旬(4日)でしたが、その直後にクラブ外部(スポンサー企業等)からの懸念やある種の圧力を受けてチョウ氏から次点候補への鞍替えの意思決定をせざるを得なかったとすると、クラブが土田SDの休養を発表した11月20日という時系列はあまりにも示唆的です。整理すると、考えていた最高の候補者を招聘できなくなったその時には既に土田SDは職務を遂行できる状況になく、更に次点の候補者は不在か決め手なしという状況で、戸苅本部長と西野TDによって後任の選定が行われた可能性があります。もしくは、このポイントを転換点として土田SDとも合意の上でフットボール本部の意思決定を(一時的にでも)西野TD中心に進めていくという応急処置が行われたか。ここで無視できないのが、リカルドが退任時に話した「土田SDと西野TDのサッカー観に違いがある」という言葉です。</p> <p> 土田SDが「ネオ・速く激しく外連味なく」を浦和のサッカーと定義する一方で、西野TDはもう少しモダンな(流行りの)ポジショナルプレー的アプローチに魅力を感じていたのかもしれません。近年のイングランドプレミアリーグの2強と言えるマンチェスター・シティとリバプールのサッカーが、真逆とも言える出発点からビルドアップとプレッシング、遅い展開と早い展開を使い分けるように収斂していったように、結局はプレッシングだけで90分を戦い抜くことはできないのだから、2020シーズンの課題であったビルドアップ関連の部分を構築できる監督の優先度を上げてみようという判断があったような気がします。つまり「ネオ・速く激しく外連味なく」を純粋にプレッシング+カウンター特化のスタイルとして解釈するか(土田流)、プレッシングだけでなくビルドアップも兼ね備えた万能型のチームを構築する中で「速く激しく」の部分を強調していくか(西野流)の違いと言えるかもしれません。実際に、ここで「西野流」と名付けた考え方はリカルド招聘時のリリースで明確に打ち出されています(コメント自体は戸苅本部長のものですが、リカルドのコメントを踏まえても、その後の発信量からしても西野TDが主導した、もしくは深く関わった考えであったと考えても大きな問題ではないと思います。)</p> <blockquote> <p>【戸苅 淳フットボール本部本部長コメント】<br />「2020年の課題と、2022のリーグ優勝を視野に、監督の選定を行いました。2020年に掲げた『即時奪回』『最短距離でゴールを目指す』サッカーに、常に『主導権』を持ち、より『攻撃的』で、ハイブリッドなサッカースタイル(カウンタースタイルとポゼッションスタイル)を実現することを目的に、リカルド ロドリゲス監督を招聘することにしました。チームの成長とともに、選手の成長、チームスタッフの成長、クラブの成長、そして、監督自身の成長を、クラブ主導で、監督の力を借りて実現していきます」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="リカルド ロドリゲス監督就任のお知らせ | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F171009" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/171009">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> ここにある「ハイブリッドなサッカースタイル(カウンタースタイルとポゼッションスタイル)を実現する」の文言はかなり象徴的です。「3年計画」立ち上げ時に土田SDが自ら「攻撃はとにかくスピード」と言い切ったものを、ポゼッションへの取り組みを以て塗り替えるものです。個人的には、こうした意思決定が行われた2020年11月初旬~下旬の3週間ほどの間に、フットボール本部は実質的に(そして一時期的に)静かなる政権交代をしていたのではないかと理解しています。</p> <p> こうした「政権交代」の直後から、クラブは2019年オフに実行できなかった大幅なスカッド改造を実施していきます。</p> <p><strong>ねじれる編成</strong></p> <p> 主な放出はマルティノス、エヴェルトン(レンタル終了)、岩武、鈴木、武富、長澤、青木、橋岡(レンタル放出)。さらにレオナルドが2月に中国からの高額オファーを受けて移籍、さらには柏木の電撃退団という事件もありました。若手では荻原のレンタル移籍に加え、石井、池高、大城のユース組も引き続きスカッドには加えないという判断。主力級だった選手を多く放出した一方で補強も大きく動き、金子、小泉、田中達也、塩田、明本、西を移籍市場で獲得したことに加え、内定していた大久保が正式加入、流経大からは伊藤敦樹、青森山田から藤原優大、さらにユースから福島竜弥を加えました。</p> <p> ここでポイントなのは、どうも選手獲得の路線が統一できていませんね?ということです。例えば明本や金子大毅はプレッシングに重点を置きトランジションが多発するサッカーを志向するのであればわかりやすく良い買い物ですが、リカルドを登用した最大の理由であるポゼッションスタイルとの融合というテーマに合っているとは思えません。田中達也は大分では逆サイドで作った攻撃(クロス)を大外からゴール前へ飛び込んで仕上げるプレーや、縦へのスペースがある中での突破に魅力がある選手でしたが、『状況に応じて適したプレーを繰り出す』サッカーを体現する器用さを持ち合わせてはいませんでした。小泉佳穂は少し難しくて、結果的には最前線のプレッシング要員としてチーム随一のパフォーマンスを出していますが、基本的にはポゼッション寄りの選手。西大伍も走り回るサッカーよりもしっかりと繋ぐサッカーで力を発揮する選手でしょう。</p> <p> もちろん目指すスタイルがあったとして、例えばプレッシングをやりたいから10人全員犬走りできる選手を集めようというわけではないと思いますが、どうもプレッシング最優先なのかハイブリッド路線でいくのか、選手獲得の基準が二つあるような、そしてそれらがねじれているような印象を受けます。とはいえこうした違和感の要因を推測するのは難しくて、前述した「政権交代」の時期が11月の下旬までかかっています。11月下旬にはもう現場では選手獲得のオペレーションが始まっているでしょうし、それまでに積み上げた獲得リストから大きく外れた選手補強が出来なかったのではないかいう見方もできれば、実際には「政権交代」はもっと前から予定されていて、もしくは「政権交代」の影響は選手獲得オペレーションにはあまりなくて、単にフットボール本部の積極的な意思としてハイブリッドなスタイルを実現するためにプレッシング寄りとポゼッション寄りの選手を意図的に両方獲得しておいたという見方もできます。この辺りは外側からはわからないので多くのことを言えないのですが、フットボール本部(戸苅・西野体制)の意図は別にしても、リカルドとしては最初からやりにくさやもどかしさがあったと考えるのが自然かなと思います。それを象徴するようなコメントが最後の最後で、2022年最終節に本人から出てきていました。</p> <blockquote> <p>(今日の引き分けで今シーズン15引き分けとなり、これはサガン鳥栖と並んでリーグ最多だった。負け数は川崎フロンターレと1試合しか差がないが、勝てなかった試合の差で勝ち点差が開いている。どういうところが足りなかったと感じているか?)</p> <p>「まず、ここまでチームを構築していく時間、プロセスが違うと思います。彼らはそもそもタイトル争いをしていて、そこに至るまでに年月をかけて細部を構築していったチームです。そこが違いだと思います。</p> <p>選手たちのプロファイルで、チームを一つ構築していく上でどういったスタイルがあるのか、それに合ったプロファイルの選手はどういった選手たちなのか、というところからまずは始めていかないといけませんでした。実際に構築していく中で、いい選手か悪い選手かという話ではなく、適切な選手なのか、そうではないのかというところが非常に大事な点だと思っています。そういった点ではメンバー構成のところでシーズンのはじめに、我々がこのスタイルをやっていく上で適切な選手を見つけていけたのかどうか、今いる選手が悪いと言っているわけでは全くないのですが、そこが果たされていたのか、それに関しては、タイトルを獲る横浜F・マリノスや川崎フロンターレと、我々との差だと思っています。やはり、プロセスが最大の違いなのかなと感じます。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="リカルド ロドリゲス監督 福岡戦試合後会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F193239%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/193239/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> リカルドはこう言っていますが、実際のところフットボール本部としてはこれでもそこそこがんばったのかなとも思います。強度高くプレッシングを行い相手から時間を奪いカウンターを繰り出しつつ、マイボールになればゲームを落ち着けてコントロールもできると言えば聞こえが良いですが、「どのこだわりも捨てない」というのは要すれば「予算を用意する」ということです。リカルドが求めていくポジショナルプレーに対応しつつ、ボール非保持では激しくプレッシングに出ていくスタイルを体現できる選手はどう考えてもJリーグでは限られています。筆頭は例えば川崎時代の田中碧や同じく川崎の脇坂といった選手たちでしょうが、そうした選手を引っ張ってくるのは非現実的ですし、しかもコロナ禍で大打撃を受けた経営上の制約もあるわけです。そうした中で、制約から導き出されたのは、おそらくプレッシングかボール保持か、どちらかの能力を期待できる選手をうまく組み合わせようということだったのではないでしょうか。</p> <p><strong>スペインの風と完成度への焦り</strong></p> <p> ともかく、こうして2021シーズンが開幕し、浦和はリカルド・レッズとしてシーズンを戦っていくこととなります。開幕戦となったFC東京戦が象徴的でしたが、前年にあれほど苦労したビルドアップの局面を敦樹や佳穂のボールプレーによって円滑化し、相手陣内まで整理されたプレーで前進していく姿は2020シーズンと比べて目覚ましい進化を予感させました。加えて、2021年4月1日に獲得を発表したキャスパー・ユンカーが26日に合流すると爆発的なスピードと決定力で得点を量産。さらに5月末にはアレクサンダー・ショルツが合流し懸念であったCBの質を大きく向上させました。プレッシングという点では大きな積み上げがなかったものの、自陣からボールを繋ぎつつ相手が前に出てきたスペースをSHの選手やキャスパーが爆走して一気に相手ゴール前に迫るこの頃のサッカーは純粋に魅力的であり、固まらないSBの人選や中盤でアンカーとして振る舞える選手の不足、ワイドアタッカーの質の不足を感じることがあったとはいえ、後から思えばこの時期のサッカーがフットボール本部の目指した「ハイブリッドスタイル」に最も近かったと言えるかもしれません。吹き抜けるスペイン由来の上昇気流に乗りたい浦和は夏の移籍市場でも積極的に補強に動き、6月には酒井と江坂の日本代表級のタレントを、8月にはほとんど一目ぼれで掘り出し物アンカーの平野と欧州帰りの秘密兵器木下を獲得。さらにスカッドを強化したわけですが、ここでも酒井はダイレクト志向・フィジカルに強みのある選手、江坂はともかくとして平野は完全にビルドアップスタイルへの適正が強い選手と2軸を感じさせます。木下はなんで獲得したのかよくわかりませんが、空中戦を得意とする前線の選手がいなかったので、そのあたりの補強を目論見たのかもしれません。</p> <p> 夏の中断期間を挟んで2021シーズン後半の浦和は8月9日の札幌戦を落としたものの以降10月2日の神戸戦まで約2ヵ月間無敗。内容的には苦しい試合も多かったものの、ビルドアップの改善が進み、獲得した江坂が16戦で5ゴール1アシストという結果以上にゴール前での決定機創出に力を発揮したことで良いペースでポイントを積み上げていきました。一方で、リーグは圧倒的なペースで勝ち続ける川崎フロンターレの独壇場の様相を呈し、同じ競争をチームビルディングから始めている浦和には勝機なし。5位-6位を定位置として走り抜いたものの、ACL圏内となるリーグ戦3位以内には勝ち点10届きませんでした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227123655.png" border="0" title="" width="686" height="1200" loading="lazy" /></p> <p> ただ、チームにとって勝ち点の差よりも深刻な課題と捉えられたのは得失点差であったと思います。上位4チームの得失点差が軒並み+20以上、神奈川2チームにいたっては+50前後にまで到達しているのに比べ、浦和は7。特に得点数で上位2チームと40点近い差をつけられ、一般的な優勝ペースからも程遠い45得点という結果が2022シーズンに掲げる優勝の公約への焦りを加速させたような気がします。2018シーズン以来の天皇杯優勝とACL2022への出場権獲得で阿部ちゃんを送り出すという美しい終わり方の裏で、圧倒的な攻撃力への課題感は大きかったのではないかと思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210522/20210522174136.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="33--2021年オフ2022年シーズン">3.3    2021年オフ~2022年シーズン</h5> <p><strong>ポゼッションスタイルへの傾倒</strong></p> <p> 続く2021年オフの浦和はまたも積極的な補強を敢行。リカルド・ヴォルティスの核であった岩尾憲の獲得(レンタル)をはじめ、松尾、松崎、モーベルグのWG勢、馬渡、大畑、犬飼とビルドアップに対応できる・してきた実力者、左利きのCBとしてJ2で印象的な活躍をしていた知念、GKにサイズ・ポテンシャル大の牲川を獲得。新卒で安居、宮本、木原をポテンシャル採用。総勢13名の新加入とフットボール本部は狂ったように選手を貪りました。一方で放出も派手で、功労者の槙野・宇賀神を筆頭に出場時間が得ていた山中、汰木を放出し、加入したばかりの西大伍、田中達也、木下も容赦なく放流。レンタル中だった伊藤涼太郎、池高暢希、大城蛍の満了(橋岡は完全移籍)、現役引退を決めた阿部、塩田はともかくとして、興梠、健勇、石井(レンタル継続)、福島、藤原(レンタル継続)、武田(レンタル継続)、金子、荻原(レンタル継続)と期限付き移籍を含めると2021シーズンに浦和レッズでプレーした18選手を放出とスカッドの半数以上を入れ替えました。この中で、おそらく汰木と興梠はフットボール本部的にはチームに残す考えがあったのではないかと思いますが、とはいえ大半はフットボール本部の意思での放出であり、メンバーを見るとリカルドのサッカーへの親和性の薄い選手を思い切って放出し、よりビルドアップ耐性の高い選手をスカッドに集めようとした意思が読み取れます。その意味では西大伍の放出は若干雰囲気が違いますが、酒井の獲得でプレータイムが少なくなっていたので、本人の意思があったかもしれません。総合すると、2021年オフは前年オフとは打って変わってフットボール本部の意思として彼らのいうポゼッションスタイルへの傾倒が感じられるオフとなりました。この背景を推測すると、2021シーズンの目標であった「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得」と、「チームコンセプト、スタイルの浸透・成長」が十分に達成できなかったことを踏まえ、リカルドをサポートする意味でも監督の欲する選手をスカッドに集めようという考えがあったのかもしれません。また天皇杯決勝のメンバーが全て残留していうることを踏まえると、スカッドの厚みという部分を意識したとも受け取れます。</p> <p> 実際に2022シーズンは各ポジションに比較的バランスよく戦力が配置されており、ボランチは岩尾を入れて5枚、SHは充実の6枚(モーベルグ、松尾、松崎、関根、大久保、シャルク)、CBもショルツを筆頭に岩波と犬飼が競争し、知念と工藤孝太が左利き枠で2ポジションに5枚と編成上のバランスは上々でした。懸念点はトップで、コンディション不良があったキャスパー以外に本職CFがいない状況でしたが、計画外と思われる興梠放出があったなかで、後にリンセンの獲得が半年遅れの2022年夏でしか実現しなかったが、それをわかっていて意図して決断したことがわかっています。</p> <p> こうして満を持して優勝を目標とするシーズンに臨んだ浦和でしたが、序盤から躓くこととなります。</p> <p><strong>コロナ禍と長引く答え探し</strong></p> <p> 川崎とのスーパーカップでは敦樹を左SH起用し中盤のディフェンスに参加させる作戦で内容が伴った2-0の勝利をあげて期待感を抱かせたレッズでしたが、直後にチーム内でコロナ感染者が複数発生し一気にピンチに。京都戦では使える人は総動員という形でユースの早川くんをベンチ入り、安居をトップ下でスタメン起用するといういきなりのスクランブルスタートとなってしまいました。この試合をウタカの一発で落とすと、その後も内容的には十分勝利の可能性を見せながらも神戸戦の明本、ガンバ戦の岩尾の連続退場で勝ち点を落とし続け勢いに乗れず、続く川崎戦にも力負け。湘南戦でやっと初勝利を果たしましたがその後は鳥栖に0-1でまたも勢いに乗れず。モーベルグのデビュー戦となった磐田戦は4-1で快勝しついしついに勢いに乗ったかと思えば、4月2日の第6節札幌戦からはACLを挟んで6月18日の第17節名古屋戦まで9試合・2ヵ月以上リーグ戦の勝利を掴めませんでした(7連続を含む8分1敗)。この序盤~中盤にかけてのレッズの戦いぶりには大きく2点ポイントがあったと思います。</p> <p> まずはこのチームの戦い方が見付けられていなかったことで、この時期の起用を見ると退場やコロナの影響もありますがボランチの選手を固定できていません。2022シーズンのリーグ戦総出場時間が1,166分だった柴戸は17節までで786分プレーしており、この時期に出場が固まっています。後半戦ほぼ固定だった敦樹・岩尾コンビがなかなか固まらず、リカルドの目指すゲームコントロールと質的・量的に十分な前線への選手配置という部分で問題を抱えていたことが推察されます。</p> <p> もう一点は前線の組み合わせに関するもので、根本的にはCFがいなかったということになるのですが、江坂が0トップのような形で中盤に降りつつチャンスメイクをする形で戦いつつも、それ以外の選手、つまり中盤前目の選手たちの得点が伸びなかったことが挙げられると思います。もっともこれは序盤~中盤に限らず、シーズン全体を通しての課題と言えるかもしれませんが、おもに1・2列目で出場していた選手のうち、関根、シャルク、江坂の90分あたりのゴール+アシスト数値はそれぞれ0.112、0.157、0.139となっており、つまりこの3人は得点に直接的に関わるのにリーグ戦9試合フル出場が必要というペースでした。こうした数字は、たしかにいろいろと考慮すべき状況や背景があるはいえ、比較的マシだった佳穂の0.271、明本の0.214、松尾の0.268という成績と併せて、前線を担った選手たちのクオリティ、特にゴールを奪う部分の質が足りなかったのではないか?と考えるのが自然なものだと思います。試合を見返すと実はチャンス自体は結構作れていたり、惜しいシーンはあったりするので、リカルドがシーズン中に何度か言及したように得点期待値という意味ではリーグ内で優秀な数字が出ていたのですが、それにしてはあまりにも得点数に繋がらなかったというのが現実的な評価になると思います。それが身長や体格の問題なのか、技術の問題なのか、それともチャンス自体の質なのかという議論はあるのでしょうが、リカルドのサッカーがゲームをコントロールし失点リスクを減らしつつ攻撃していく、つまりある種の均衡状態を意図的に作り出したうえで自分たちだけ勝とうとするやり方を取る中で、彼らがそんなに都合の良い結果をもたらしてくれるだけの選手であったのか?という疑問には向き合わなければいけないのだと思います。ちなみに、リーグ戦中盤には既にキャスパーも戦列復帰を果たしており、5月以降何度かまとまった出場機会がありました。キャスパーは当然ゴールに関わる部分では別格の質を持っていて、90分あたりのゴール数+アシスト数は0.573と高い数値になっています。言い換えれば2試合に1点は得点に関わってくれるということですね。とはいえもちろんこの数字はキャスパーがやっていない仕事を差し引いて考えなければならず、チームとして重視したいゲームのコントロールのためのプレッシングやビルドアップでの貢献は限定的でした。このように見ていくと、リーグ戦序盤はそもそも戦力が揃わない中で昨年のやり方を踏襲しつつ戦ったものの退場や決め切れないシーンが響いて出遅れ、中盤は求めたい仕事をしてくれるが決定力がない選手たちと、求めたいことは軒並みサボるけれども決定的な仕事だけはしてくれるキャスパーの融合やバランスに苦労し、それぞれのコンディションも上がり切らないまま、チームが迷走気味に引き分けを重ねてしまった時期と言えるかもしれません。</p> <p><strong>ドリブラーという答え</strong></p> <p> その後、チームは第17節名古屋戦の3-0勝利以降、18節神戸戦に勝利し、続く19節・20節を引き分けたものの21節・22節・23節を3連勝とし6試合を5勝1分けで走り抜けます。この突然のペースアップにあるのは二人のドリブラーの存在で、モーベルグはシーズンで2回だけのフル出場を20節・21節で記録するなど存在感を高めました。また大久保もこの間にフル出場3試合を含む428分(平均61分)の出場と勝利に貢献。この間のリカルド・レッズは「自ら作り出す意図的な拮抗の中で都合の良い結果を引っ張ってきてくれる個の力」をモーベルグ・大久保の二人に見出し、安定したゲームコントロール+得点力という難しい課題を一時的に乗り越えることができていたのだと思います。ちなみに、モーベルグの90分あたりのゴール数+アシスト数は0.771でチームトップ、大久保は0.405とこちらはチーム3位・日本人選手トップとなっています。まあこういう数字は結果論なのでなんとでも言えるのですが、この二人を組み込む形を見つけたことでチームに安定感と勝ち切る強さを両立できたと言っても大きく間違ってはいないと思います。モーベルグは今季のリーグ戦通算出場時間の約60%が後半戦、大久保に至ってはなんと82%が後半戦に偏っており、二人ともそれぞれの事情があるとはいえ、結果が出なかった前半戦のグループを素早く改善できなかった、別の言い方をすれば固執してしまったことは2022年シーズンの結果に大きくつながっていると言えるのではないでしょうか。</p> <p> チームの形と言えば、ACLグループステージ前後で良いパフォーマンスを見せていた松尾の起用が前半戦にあまりにも伸びなかったことも気になる点でした。ACL後はシャルクとキャスパーを中心とした起用が続き、松尾は交代要員でした。7月6日のホーム京都戦でスタメンに定着するまでに、ACLのGS明けの5月から数えると9試合かかったわけですが、例えば5月28日のアウェー福岡戦でスタメン起用したタイミングから松尾をトップにした布陣に固定できなかったのかなという疑問があります。福岡戦から数えると4試合で、しかもその4試合は2勝2分なので勝ち点を落とした感覚はないですが、パフォーマンスの良さがスタメン変更にすぐに繋がらなかったのはリカルドの何らかのこだわりによるものかもしれません。結果論に過ぎませんが、松尾と佳穂の2トップによるプレッシングによるゲームコントロールは今季のポジティブな発見の一つでしたので、この形をもっと早く見出し、試すことができなかったのは残念でした。このあたりはキャスパーの得点力を活かしたいという思惑や、トレーニング中のパフォーマンス、松尾をSHでチームに組み込もうとした等いくつか考えられる要素がありますが、リカルドが退任決定後に「もっとはやく4-3-3の形を導入できていれば」と発言していた後悔に松尾のトップ起用が遅れたことも含まれるのかもしれません。</p> <p> ともかく、大久保とモーベルグをサイドに組み込み、敦樹と佳穂がIH役となる4-3-3ベースのボール保持と、松尾をトップとして佳穂との2トップをベースにした4-4-2プレッシングのボール非保持がチームの骨格として固まったのが7月10日のFC東京戦でした。酒井の戦列復帰も相まってこの前後からチームは8月25日のACL準決勝全北戦まで非常に安定したプレーを見せました(8月6日の第24節アウェー名古屋戦のみターンオーバーで0-3敗戦)。この間、24節名古屋戦を除くと全ての試合で得点し、複数失点は全北戦のみ。リーグ戦は名古屋戦以外の全ての試合に勝利し、ルヴァンカップとACLを含めるとこの間7勝2分1敗(全北戦を引き分け扱い)とリカルド体制最高の2ヵ月間を過ごしましたが、FC東京戦の時点で既に21節となっていたことを考えると、チームの基本となるやり方を見つけるのに20試合も必要だったのか、とも思ってしまいます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220825/20220825201357.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p><strong>再びのコロナとリカルド体制のターニングポイント</strong></p> <p> ACL全北戦の激闘後、8月30日にスタッフ1名、9月1日、3日、4日、5日にそれぞれ選手1名、7日にさらに選手2名の合計7名が新型コロナウイルスの要請判定が出たことでチームにはかなり大きなダメージが出てしまいました。陽性判定自体は仕方ないのですが、全北戦後に4日連続のオフを与えたリカルドの判断は結果的にデメリットが大きくなってしまいました。オフのせいで陽性判定者が出たとは言いませんが、明確な区切りをつけたことで2ヵ月間の流れを切ってしまった感じはありました。たしかに全北戦は延長までもつれた激闘でしたし、中2日で3連戦を戦った負担は大きかったはずで、7月末~8月中旬も連戦だったことを考えれば選手側も連休を要求していたはずですが、ACL期間中は移動もありませんでしたし、最小限のオフで流れを切らないマネジメントもあった気がします。選手起用に制限が生じたこともあってかリズムが落ち、柏戦では4-1の大勝を収めたものの30節湘南戦までの4試合を1勝2分1敗。この間のトピックとしてはシャルクを試していることで、後半戦はこの4試合だけ出場がありました。リカルドとしてはここで停滞しつつあるチームの起爆剤となってほしいという期待があったのかもしれませんが、残念ながら不発。そんなこんなで、チームは今季のレッズの最後のターニングポイントとなるルヴァンカップ準決勝・セレッソ戦へと進んでいきます。</p> <blockquote> <p> このセレッソ戦、特に第2戦の0-4敗戦は単純な負けとは異なる、リカルド体制の継続に負の方向で大きなインパクトを持つものだったと考えています。</p> <p>「この試合の敗戦は浦和レッズにとって非常にショッキングなものとなりました。それは単にルヴァンカップの決勝進出、タイトルの可能性を逃したと言うことだけではなくて、既にこの「3年間」の大目標である2022シーズンのリーグ優勝がなくなっている現実を見た時に、「ここまでやってきた道の先に優勝があるのか?リカルドにこの先も任せるべきなのか?」という疑念を具体的に抱かせてしまう内容の敗北であったという意味で、です。」</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="残りの試合で疑念を晴らせ:YBCルヴァンカップ2022準決勝 2nd leg vsセレッソ大阪 分析的感想 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F09%2F27%2F215403" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/09/27/215403">www.urawareds96.com</a></cite></p> </blockquote> <p> 第2戦のレビューで僕はこのように書きましたが、ゲーム開始直後の噛み合わせが全くハマらず、それを修正できなかった点と、成績上のライバルクラブであり現行監督がリカルドよりも遅く就任しているセレッソに、今季の浦和が得意としていた4-4-2⇔4-3-3可変で完成度の高いゲームを披露された点において、この敗戦は非常に厳しかったです。</p> <p> これによってクラブ(フットボール本部)は「結果はともかく、リカルドはチーム作りをよくやっている」という現状維持方向の評価を続けにくくなったと思いますし、チーム内部でも最後に残されたタイトルを失ったことでリカルドのやり方への信頼というのが揺らいでしまったのではないかと感じています。僕としては当時、出来るだけ前向きな立場で「残り5試合で戦えることを示してほしい」という締め方をしましたが、正直、この時点でチームの結束は失われていたというか、リカルドの求心力という部分で修復不能な状況が生まれていたのかなという印象です。フットボール本部がどの時点でリカルドと袂を分かつことを決めたのかはわかりませんが、直後の広島戦で1-4大敗を喫してから、リカルドはキャスパーやリンセンを起用し、プレッシングの精度や貢献よりも単純な破壊力やスキルに期待しているような戦い方でスタートするようになりました(第33節マリノス戦は3バックでマンツーマンに近い形を採用)。これがどういう考えのもとの決断なのかよくわかりませんが、10月31日の「監督職を解除」というリリースの後、試合前の11月4日の会見で</p> <blockquote> <p>「ゲームプランははっきりしています。浦和レッズが最も良い姿を見せたころの姿を取り戻すというところで、このスタイルに適した選手たち、しっかりと走って、努力し、このエンブレムのために頑張れる選手たちでいきたいと思っています」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「ファン・サポーターの方々や選手たちが楽しめる試合にしたい」リカルド ロドリゲス監督(定例会見 11/4) | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F193157%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/193157/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p>と発言し、最終節の福岡戦では松尾・佳穂の2トップに戻したことを考えると、セレッソ戦の0-4、広島戦の1-4大敗の後、自らの続投を賭して結果を求めに行く中で、「スタイルへの適正」だとか「しっかりと走って、努力し、このエンブレムのために頑張れる」という部分をある程度捨ててでも能力の高い選手を起用するやり方を選んでいたのではないかと邪推してしまいます。もしくは、チーム内で(コーチングスタッフの中で)リカルドが自らのやり方にこだわり、明らかに個人能力の高い選手たちをチームに組み込めていなかったことに対して意見がある勢力があったのかもしれません。このあたりは中の人にしかわからないことなので僕の妄想に過ぎないのですが、リカルド体制の継続の危機にあたってチームの戦い方がこれまでにないほどに大きくブレたことには何等かの示唆があるのだと思っています。もっと言えば、リカルド自身が最良と考えるやり方で戦っても最後の福岡戦に勝つことができなかったというのもまた、この体制での到達点がどこにあるかを示すものだったのかもしれませんが。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227141348.png" border="0" title="" width="838" height="1200" loading="lazy" /></p> <p> ということで、2022シーズンは結局「3年計画」の目標は達成されず、それどころか初年度の成績を下回る勝ち点で終了となってしまいました。これにより「3年計画」で掲げた「2022年シーズンでのリーグ優勝」は達成されず、「3年計画」の夢は終わりました。やはり全体としては引き分けが多すぎ、リーグトップの15もの引き分けを積み上げています。得失点差がリーグ4位であることを踏まえても序盤の7連続引き分けやACL後に失速してしまった時期に苦しんだのがこの成績の要因で、スカッドが持つ強さを発揮する形を早く見つけられなかったこと、そしてその形を維持できなかったことが大きな課題であったと思います。</p> <p><strong>優勝との差、プロセスの長さ、ベースの高さ</strong></p> <p> ここで、この3年間を俯瞰してみましょう。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227135249.png" border="0" title="" width="1200" height="482" loading="lazy" /></p> <p> 縦軸が平均勝ち点(左)及び累計勝ち点(右)、赤線は獲得勝ち点/試合数で、勝ち続けていれば3.0で天井に張り付きます。黒線は直近5試合の平均勝ち点を出したもので、短期の調子を表すものです。後ろの白いのは累計勝ち点ですね。オレンジの線2本は優勝ライン(平均勝ち点2.0)及び残留確実ライン(平均勝ち点1.3≒累計勝ち点40くらい)です。大きなところで言えば、短期的にでも優勝ラインを超えるペースのゲームが出来ていたのは2021年の夏前および秋ごろと2022年の夏ごろしかありませんでした。順位が順位なので当然ですが、優勝争いをするほどの最大出力を出せていなかった、出せても維持できなかったというのがこの図が示す純然たる事実です。また、すべてのシーズンで最終5戦の成績が悪く、右肩下がりで終わるシーズンが続いていることもファン・サポーターの心情としてはつらいものがあります。リーグ戦が消化試合となると全体的に緩むというか、熱量が出せないで微妙なゲームをしてしまうという傾向が浦和レッズにはあるのかもしれません。</p> <p> 大槻体制とリカルド体制で特徴的なのは、チームの戦績の傾向が全く逆ということです。大槻体制はシーズン序盤に調子がよく、後半になるにつれてモメンタム(短期の調子・黒い線)が下がっています。これは大槻監督のゲームモデルが単純にタフなので、選手の体力が残っており・コンディションが比較的良い序盤に調子がよく、後半になるにつれて疲れていくということかもしれません。また、比較的単純なゲームモデルなので相手に対策されやすくなるということも言えると思います。最後の5戦が散々なのは、ここまで観てきた通り大槻監督の求心力の低下という面が大きいとは思いますが。</p> <p> 逆にリカルド体制はシーズン後半に入ったところが最もモメンタムが高く、序盤~中盤にかけてのチーム作りの成果を後半にかけて発揮し、戦績が徐々に上向いていくのがわかります。これは西野TDがどこかで言っていた通り、リカルドのサッカーには時間がかかるというのが根本的な要因になると思います。とはいえ、降格ペースのスロースタートを2年連続で続けていることは見逃せません。特にリカルド2年目となった2022年シーズンの序盤の失速はフットボール本部にとっても予想外だったとは思います。2021年シーズンの夏までに大補強を済ませ、満を持して2022年シーズンに臨んだはずがシーズン中盤まで降格ペースを引っ張るようでは期待外れと言わざるを得ません。</p> <p> ちなみに、各年の優勝チームと戦績を比べると下図のようになります。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227142547.png" border="0" title="" width="1200" height="482" loading="lazy" /></p> <p> 2020年、2021年の川崎は論外の強さとしても、やはり優勝チームとはベースの強さが一段も二段も違ったことがわかります。短期の線(青)で見ても、優勝チームは降格ペースに足を突っ込むことはほぼありません。この差は根本的にはやはりミシャ体制が崩壊して以降なかなかチームとして戦い方を固定できず、ボール保持時のプレー原則などチームで共有されたものがほとんどない状態からの3年計画のスタートは苦しかったというのが大きな要素なのでしょう。</p> <blockquote> <p><span style="color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;"> 正直なところ、浦和レッズが今タイトルを獲れるかと言えば、そうは思いません。タイトルを獲るために必要なプロセスがあった先に、タイトルはあると思います。では、タイトルを獲っていく上で、我々がどう進んでこられたか、はじめることができたかを、もう一度振り返らないといけないと思います。メンバーのところは先ほど話した通りですし、シーズンでのいくつかの問題点、アクシデントもそうです。そしてどういった選手が加入してくるか、いつ加入してくるかも、我々が届かない理由の一つだと思っています。</span></p> <p><span style="color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;"> まず、タイトルを目指すにあたって、我々が川崎フロンターレとの29ポイントの差、これを現実的にどう埋めていくのかが果たされたのかと言われれば、決してそうではないと思っています。もちろん、どういうふうにそこを縮めていくのかを分析し、それを遂行するべきなのですが、分析が正しくできていない、現実的ではないところだったと思います。もちろん掲げるにあたって、私もその場所にいましたし、どういうふうに目指していくかという話もしました。誰かではなく自分も含めて、一つ大きなクラブとしてのミスだった、その期待値設定がよくなかったと思います」</span></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="リカルド ロドリゲス監督 福岡戦試合後会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F193239%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/193239/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> リカルド自身がこういうことを言うのがどうかという話を置いておけば、彼の指摘しているのはまさに今僕たちがみているものなのでしょう。別の言い方をすれば、今のJ1リーグはこうしたベースが無ければ、爆発力だけでは優勝できないようになっているということかもしれません。それはつまり、強豪チームが固定化する予兆がすでに出ているとも言えます。そうであれば、僕たち、そして浦和レッズは今の歩みを止めることはできません。目標の未達・失敗という事実を受け止め、トピックごとにさらにこの3年間と現体制の仕事ぶりを整理していきましょう。</p> <blockquote> <p><span style="color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;">この2年間、選手たちが見せてくれた努力に感謝します。そして初日から愛情を持って受け入れてくれたフロントを含めたクラブのスタッフに感謝しています。リーグで優勝することはできませんでした。しかし、それもプロセスの結果として勝ち取るものだと思っています。非常にいいチームがたくさんあり、成熟したチームが多いJリーグで優勝することは簡単ではありません。多くの正しい判断を下しながら勝ち取るものだと思っています。</span><br style="box-sizing: border-box; color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;" /><br style="box-sizing: border-box; color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;" /><span style="color: #000000; font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', メイリオ, Meiryo, sans-serif; font-size: 15px; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial; display: inline !important; float: none;">今季は補強での不運も含めたさまざまな問題があったシーズンのスタートでした。そして、このプロセスを私も一緒に続けていきたいという気持ちはありましたが、クラブがこのように判断しました。受け入れていますし、尊重する判断です。そして、浦和レッズの将来の成功を祈っております。浦和での2年間は幸せでした。</span></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="リカルド ロドリゲス監督 最終戦セレモニーあいさつ | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F193250%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/193250/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> </p> <p>続く。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【現場編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182432" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182432">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【現場編】 hatenablog://entry/4207112889946620567 2022-12-27T18:24:32+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 4 【現場編】 ここからはトピックごとに振り返っていきます。基本的には現場~マネジメント~戦略まで、少しずつ視座を上げて振り返っていきます。というわけで、まずは【現場編】です。 ここではいわゆるピッチ上の話をします。競技面の責任は基本的に監督・コーチングスタッフと選手にあります。彼らが何を見せてくれたか、現場での取り組みは適切だったか、特に戦術面の完成度はどうだったか、戦力をうまく活用できたか、そして選手の成長を期待通り促せたかといった部分を観ていきます。その結果として、数値目標としての勝ち点・得失点差は達成されたか、もしくはどの程度目標に近づけたかが基本的な評価の軸となります。 とはいえピッ… <h4 id="4--現場編">4    【現場編】</h4> <p>ここからはトピックごとに振り返っていきます。基本的には現場~マネジメント~戦略まで、少しずつ視座を上げて振り返っていきます。というわけで、まずは<strong>【現場編】</strong>です。</p> <p>ここではいわゆるピッチ上の話をします。競技面の責任は基本的に監督・コーチングスタッフと選手にあります。彼らが何を見せてくれたか、現場での取り組みは適切だったか、特に戦術面の完成度はどうだったか、戦力をうまく活用できたか、そして選手の成長を期待通り促せたかといった部分を観ていきます。その結果として、数値目標としての勝ち点・得失点差は達成されたか、もしくはどの程度目標に近づけたかが基本的な評価の軸となります。</p> <p>とはいえピッチ上の事象はただの成果に過ぎないので、この部分を評価するには本当は日々の取り組みも含めて検討しなければなりません。残念ながらコロナ禍の中、そして監督の考えもあってか浦和レッズはほとんどトレーニングを公開しなかったので、3年間の取り組みはほとんど公表・報道されませんでした。記者の方々ですら見ていない部分なので、部外者である一ファンにはいっそうどうしようもありません。きっと内部ではこの点も検証されていると信じて、僕は好き勝手に書いちゃいます。個人の感想です。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220410/20220410130727.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="41--適切な戦術を採用したか戦術は十分浸透したか">4.1    適切な戦術を採用したか?戦術は十分浸透したか?</h5> <p><strong>二つの観点</strong></p> <p>まず、適切な戦術であったかどうかは以下の2つの観点から評価するのが良いと思います。</p> <blockquote> <p>A)採用し(ようとし)た戦術がクラブの戦略・目指すサッカーの志向を適切に表現(具体化)するものであったか<br />B)採用し(ようとし)た戦術の完成度は十分だったか、求める結果に繋がっていたか</p> </blockquote> <p>こうした論点設定が必要な理由は、極論を言えば、一定の方向性を持っていても、目の前の相手に勝てないのであればそれはただのロマンだし、目の前の相手に勝てればやり方はなんでもいいというなら、こんな面倒な手続きを踏んで計画なんてものは宣言しなくてもよいから、ということになります。浦和レッズさんはどちらも追いかけていきたいし、そうすることで「強くて魅力的」なクラブになりたい、というのがそもそもの目的なので、この2点を確認しなければなりません。</p> <p> というわけで、まずは<strong>A) クラブの戦略・目指すサッカーの志向(抽象的概念)を適切に表現(具体化)するものであったか</strong>についてみていきます。</p> <p> まず経緯の振り返りからわかるのは、フットボール本部は2020年11月を境に一時的なステルス政権交代をしていたっぽいですね、ということでした。さらにリカルド就任を境にクラブの強化方針は徐々にリカルドが結果を出せるようなチームを編成するよう傾倒してきたと僕は考えているわけですが、(建前だとしても)フットボール本部は「3年計画」で目指すサッカーを変えませんでした。</p> <blockquote> <p> 攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレー<br /> 個の能力の最大限発揮<br /> 前向き・攻撃的・情熱的なプレー</p> </blockquote> <p> 文言は変えずに解釈を変えることで運用するというのは日本的というか社会主義的というかちょっとズルいような気もしますが、とはいえ大きな枠組みは変えていないのですから、この枠組みに対して適切な戦術が示されたか・構築されたかを見ていきましょう。今回の場合途中で監督交代をしてしまっているので、当然それも考慮する必要があります。</p> <p><strong>大槻体制</strong></p> <p> まずは大槻体制ですが、大槻監督によるサッカーはマジで本当にサポーターの印象が良くなくて、観るべきところは何もない暗黒時代かのように語られることもありますが、今回の論点からすれば評価を必要よりも下げる必要はないのではないかと思います。高い完成のサッカーであったとは言い難いものの、大槻監督のサッカーはコンセプトへの取り組み、特に「攻守に切れ目のない」、「個の能力の発揮」、「前向きなプレー」といった部分への取り組みを強く感じさせました。とにかくプレスとポジティブ・トランジションを頑張ろうという意気込みは凄く伝わってきました。</p> <p> 一方で、大槻体制の最大の課題は「相手を休ませないプレー」の部分であったと思います。対戦相手との実力・完成度の差はもちろんありますが、例えば4-4-2のSHをWB的に最終ラインまで下げることで5バック化しゴール前を固める戦術を採用した2020年第10節ホーム広島戦(1-0)などは、どちらかというと「こちらが休めないプレー」という感じでした。もちろんプレスがハマり相手が困っていたり、対応をしてこなかったりした試合、特にホームの雰囲気も含めて相手を飲み込むことができた試合では「相手を休ませない」をうまく体現できていたと思いますが、そうしたゲームモデルをを試合を通じて表現できたのは2020年第24節ホームセレッソ戦(3-1)など本当に数えるほどの試合数しかなかったのが現実でした。</p> <p>また、こうした大槻監督の目指すサッカーの裏・表や対戦相手の分析重視の戦い方の設定手法が、当時の選手たちに受け入れられなかったことは大槻監督にとっては仕事を難しくした要素でした。槙野がコメントしたように「僕たちは今リアクションサッカー」という言葉が出るのはミシャ・レッズの戦い方と美学からすれば理解はできますが、より抽象的な部分で違うやり方で主導権を握ろうとしているという部分がチームに浸透しなかったのは残念でした。</p> <p> こうした課題の構造としては、そもそも得点をたくさん奪う戦い方ではないので、まずは失点しないような意識が高かったこと、一方でファーストディフェンダーとなるCFにプレッシングを頑張れる選手がいなかったこと、このジレンマからプレスがハマらない場面が多かったこと、すると失点回避のためにセットディフェンスが下がり気味になること、セットディフェンスが下がってしまった際にポジティブトランジションでクリアボールを収めてくれる選手がいなかったこと、ビルドアップの試行回数が少ない中でボール保持を危険なシュートに繋げられなかったこと、再現性のあるボールの動かし方、崩し方、決定機の創出が出来ないという部分がさらにボール非保持の時間を長くし、ボール非保持の時間が長すぎれば激しくプレッシングにいくこともできず、総合して防戦一方の印象を与えるというスパイラルがあったとは思いますが、こうした物足りなさがポジショナルプレーを導入したいという西野路線の思惑を強め、リカルドを招聘した要因の一つとなったと思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200829/20200829192855.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p><strong>リカルド体制</strong></p> <p> 一方でリカルド体制でどれだけ「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレー」ができていたかというと難しいところです。特に2年目となった2022シーズンはクラブの目指す方向性よりもリカルド自身の志向が強くピッチに現れていたように思います。ボールを失うリスクを回避し、ミスしない可能性の高いプレーを選択する中で前進を図る形のボール保持が増えました。結果的に自陣ボール保持率は2020年から2022年にかけて大きく向上(Football LABのチームスタイル指数で46→67、ちなみに2022年の67はリーグの最高値)したわけですが、これによってどれだけ「相手が休めな」くなったか、というとうーんとなります。ちなみにこの点、クラブによる振り返りでは以下のように反省されています。</p> <blockquote> <p> 今シーズンを振り返りますと、主要な課題が三つあったと考えております</p> <p> 一つは、ディフェンスラインを含んだチームの平均的なプレーエリアが非常に低かったこと。そして次に、アクティブ(能動的)な守備を前線の高い位置から仕掛けることができていなかったこと。最後が、相手ゴール前でのプレーの質(決定力)です。</p> <p> 失点数を低く抑えることはできましたが、その守備の手法は、自陣ゴール前での人数が整った状態での守備の固さによるものであり、「受け身の守備」であったと言えます。結果として、低いプレーエリアで引いて守ることが多くなり、選手個々の能力もあり失点を少なくすることができましたが、攻撃への接続(ポジティブトランジション)という点に課題が残りました。</p> <p> アクティブな前線からの守備については、一つ目のプレーエリアの課題と密接に関係しますが、相手に攻めこまれてもゴールを決めさせない「ゴールマウスを守る守備」ではなく、相手が体制を整える前にこちらから仕掛けて「ボールをアグレッシブに奪い返す守備」を多くすることで、ゲームの主導権を握り、より相手陣内でプレーする時間を増やすことができる。チームとしてはそのような主導権をもったアクティブな守備を志向しましたが、この点についても達成度は低いと評価をせざるを得ないパフォーマンスでした。</p> <p> 最後に、相手ゴール前でのプレーの質(決定力)です。この課題にはいくつかの原因がありますが、選手編成における課題、チームとしてのリスクのかけ方、個性の発揮の3つが課題としてあげられます。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="ファン・サポーターのみなさまへ「2022シーズンおよび3年計画の振り返りと2023シーズンに向けて」 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Fclubinfo%2F193326%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/clubinfo/193326/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> 明確には言及されていないのですが、これらの課題は実質的にリカルド体制、特に2022シーズンを念頭に置いたものだと思われます。このうち、「平均的なプレーエリアが低くなった」ことについては要素を大きく2点に分解できると思います。一つはボール保持に人数をかけ過ぎていたこと(自陣ボール保持のフェーズで多くの時間を使い過ぎてしまったこと)。もう一つは失敗リスクを回避するプレー選択・志向がチームに蔓延してしまったことです。</p> <p> ボール保持に人数をかけ過ぎていたことは、リカルド就任以降徐々に改善がなされましたが、2022シーズンの優勝という時限を考えると十分な速度で向上が図れなかったという結論になると思います。2021シーズンの開幕戦、FC東京戦で既にみられていたように、ボランチが降り、トップ下が降り、といった形で中央の選手が順々に自陣に下がってボール保持を安定させるという手法がこの2年間の浦和では頻繁に見られました。根本的にはこれはGK+最終ラインのビルドアップ能力の向上が十分に実現できなかったということにつきると思います。例えば2021シーズンのショルツの加入、2022シーズンの大畑の加入などで徐々に改善されましたが、2022シーズンの目玉補強の一人であった犬飼の故障と2022シーズンの全休により、思い描いたほどのスピード感での発展が見られませんでした。GKも西川のとてつもないキック精度=ビルドアップの上手さではないということを再確認するここ数年になったのかなと思います。ボールを運んだ後も、仕掛ける回数に比してやり直しの回数が非常に多かったこと、その割にサイドチェンジの回数が多くなかったこと、個人で相手を外し相手の守備組織にヒビを入れるプレーがなかなかでなかったことなどが影響し、ボールを下げてボール保持の形を整えようとした結果、ビルドアップの局面に自分たちからまた戻り、改めて後ろに人数を必要としてしまうという構造があったと思います。こうしたやり直し・繰り返しを通じて、2022年シーズンはリーグ屈伸のチャンス構築率(12.1%、リーグ2位)を誇ったものの、こちらが確立の高い攻め手を模索することに時間をかけるあまり、相手はブロックを敷いて構えていれば最も危険なところはケアできてしまう、という現象がリカルド体制のサッカーの典型であったように感じます。そのうえで、浦和レッズが構えた相手をどれだけ攻略できたかというと、ゴール前でのコンビネーションの構築は期待ほど見られず、個人の質で状況を打開するにもそれができた選手はモーベルグくらいで、彼のコンディションとパフォーマンスに依存したというのが現実でしょう。実際に2022年シーズンのシュート成功率は10.1%でリーグ8位となっており、2020年~2022年の3年間で最低となっています。</p> <p> 失敗リスクを回避するプレー選択がチームに蔓延してしまったことは、問題としてより根本的なものでした。上記のようなボール保持面でのやり直しの多さ(ボールを失うリスクを回避する志向)は選手の一つ一つのプレー判断にも影響を与えたでしょうし、ボール非保持、守備の局面においてもリスクを回避したがる傾向があり、クラブが総括したように「受け身の守備」にまわる時間は多かったと思います。例えばリカルドは自陣でのセットディフェンスにおいては、自陣サイド奥にボールが入った際にSBをあまり出さずにSHを戻して対応させる形を好んでおり、これによってSB-CB間のスペースを空けないようにすることや最終ラインのスライドを最小化してファーサイドへのクロス対応を安定化させていましたが、同時に一度自陣に押し込まれると5-3ブロックのような形で組織がつぶれてしまい、ゴール前の最終ラインにボランチだけでなくSHも吸収されて適切な前残りがなくなりボールを奪ってもその後相手陣地に前進できない傾向がありました。つまり、守備組織を低くまとめるこのやり方は、一度相手からボールを奪ってもポジティブトランジションへの移行を成功させづらく、スピード感と迫力が出ないという問題と表裏一体、トレードオフの関係にあり、これがクラブ総括にある「攻撃への接続(ポジティブトランジション)」の課題の一因となっていたように思います。論理を持ち出すまでもなく、ゴールを奪われなければ負けはしないし、相手のストロングをしっかりケアしていくことも必要ですが、リスクを回避するリカルドの志向が、クラブの目指したいもの=トランジションでの迫力の実現からチームを遠ざけていたことは否めません。</p> <p> 全体的にリカルドの考え方は、試合をコントロールしたい⇒失点・失敗リスクを排除したい⇒相手の強みを消したいという思考回路からくる相手に合わせた撤退守備と、試合をコントロールしたい⇒ボールを保持したい⇒ボールを失うリスクを排除したいという思考からくるやり直しの2点に多くのリソースを使い、結果的にピッチ上に相手との安定した拮抗を作り出すことには長けていたものの、それを自ら打破して勝利をもぎ取るところまでは至らなかった、そして、こうしたリカルド志向に沿ったチームを成熟させるにつれて、クラブが求める「前向き・攻撃的・情熱的なプレー」との隔たりが顕在化していった、とまとめられるのではないかと思います。逆説的に言えば、クラブが目指したサッカースタイルは大きなリスクはケアしつつも中・小レベルのリスクを意図的に受け入れることでアグレッシブなバイブスをピッチ上に生み出そうとするものだと思います。結局のところ、浦和レッズさんはオープン志向のコンセプトなのにクローズドな志向の監督を呼んできたということですね。</p> <p> そうした意味で、「採用した戦術はクラブの戦略・目指すサッカーの志向(抽象的概念)を適切に表現(具体化)するものであったか」という問いに対しては、大槻体制ではとくにボール保持面で不十分、リカルド体制ではアプローチが真逆かつ真逆に進む割にはクオリティ不足、という結論にならざるを得ない気がします。俯瞰してみると、2020年シーズンから2022年シーズンにかけて比較可能な形で指数が出ているFootball LABの数値は以下のように推移しています。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227021041.png" border="0" title="" width="1185" height="508" loading="lazy" /></p> <p> これをみると、リカルド体制となって以降浦和はリーグの中で相対的に「攻撃回数」が少ないチームとなり(ポゼッションあたりのボール保持時間・パス回数を増やし)、「チャンス構築率」(「攻撃」のうち「シュート」まで至った回数)をリーグ上位にまで高めたものの、シュート成功率が下がったことでボールを保持しチャンスを作ったほどの対価を得られることができなかったとわかります。決定力の部分はまた別に振り返るとして、やはりこのアプローチはクラブが目指したい「アクティブ」「アグレッシブ」なプレーから遠ざかった印象を与えていたと言えそうです。ただし、ポゼッションあたりのボール保持時間・パス回数を増やしたことで、被攻撃回数をリーグ最少まで減らしているのは見逃せません。とはいえ被チャンス構築率の数字があまり改善していないので、ボールを保持されると押し込まれチャンスを作られてしまう傾向があったのも事実と言えます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210327/20210327145129.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> 次に、 <strong>B)採用し(ようとし)た戦術の完成度は十分だったか、求める結果に繋がっていたか</strong>について検討します。</p> <p><strong>大槻体制</strong></p> <p> 大槻体制に関しては、シンプルに得失点差がマイナスというのが頂けません。1試合あたりの平均失点1.6は目標であるACL圏に到達するには守備の穴が大きかったことを示していますし、平均得点1.2はリーグの強豪を名乗るには恥ずかしい数字です。この点、やはりあまりにもスカッドと親和性がない中で戦っていかなければいけない部分に難しさがあった気がします。4-4-2を基本としたシステムを整備した一方で、CFは監督の求める多量のタスクとは無縁の点取り屋でしたし、ボールと逆サイドのSHにどうやって、どの程度スライドをさせるのか、逆サイドのSBによるファークロスへの対応をどう仕込むのか、センターバック同士の距離感をどのように設定するのかなど、細かい部分で過去6年以上にわたって3バックを基本としてきた選手たちの頭の中を整理するのに苦労したと言えます。</p> <p> ボール保持においては基本的にはプレッシングで奪ったボールを最速でゴールに結びつける速攻戦術(ファストブレイク)を志向していましたが、4-4ブロックを組みつつもファストブレイクにスピードをもって参加できる選手は多くありませんでした。さらには、ファストブレイクが成り立たず、ビルドアップが必要になる場面では原則として相手のディフェンス組織が空けているところ、空いているところに人を立たせることでボールを必要なだけ繋いていくことを求めていましたが、こうした原則論を選手と共有するやり方は、度重なる迷走で土台がぐらついていた浦和では難しすぎたかなという気もします。雰囲気としてはビルドアップ時に相手チームのプレッシング枚数に対して+1を作るとか、ハーフスペースをトップ、SH、SB、ボランチの誰かが取ることで内と外を使ったコンビネーションを出したいとかいった狙い目はありましたが、刻一刻と状況が変わる中でスムーズな連携を表現するには至らずでした。</p> <p> そもそもプレッシング・インテンシティ重視の采配をしていたので、全体的に運動量・強度の高いプレーができる選手が重用されましたが、そういった選手たちが「うまい具合に空いているとこに立ってボールを前進させつつファイナルサードではコンビネーションを出してゴール前に侵入しよう!」と言われてどれくらいやれるのかなという感じはしましたし、選手たちも実際あまり自信がなかったからこそ柏木がCHで起用された際には柏木依存が即座に発生してミシャサッカーに非常に近いものが表出してしまったのかなという気がします。こうした部分で戦術浸透には苦労しましたし、相手が3バック(5バック)を採用すると自分たちが立つべき「空いている場所」を見つけることができずに攻撃が停滞してしまうなど明らかな苦手傾向もありました。</p> <p> 目の前の相手に勝利する、という観点で言えば大槻さんは勝負師でした。分析出身の監督らしく、彼は明らかに相手に対して対策を準備するタイプの監督ではありましたが、同時に「相手に勝つには何かを犠牲にしなければいけない」という感覚を持っている人なのではないかと思います。例えば相手の攻撃的SBの裏を取るために、こちらも守備に難のあるマルティノスを同サイドで起用するとか、相手がWGに強みを持っていてもSHを容易に下げずに、逆にボールが入る前に潰すために前に出てボールを入れさせないといった具合に勝負所で時間限定ながら大きなリスクを負っていくタイプの采配が多かったと思います。それが毎回毎回結果に繋がればいいですが、こうしたリスクテイクの部分で困った結果になった試合も多かったのもシーズンを難しくした一因だったかもしれません。</p> <p> また、大槻体制はあまりにも大槻さん本人の求心力に依存していました。やはりシュートまでの形を作れなかったことでボール保持をシュートで終れず、ネガティブトランジションが多く発生したことは体力的な部分のダメージを蓄積させたと思いますし、大槻さん自身が賭けている「勝つためのリスク」に対処するのは結局選手たちなので、キツいはキツいですよね。2020年の浦和レッズは選手たちが非常にキツそうにしていたのが非常に印象的でした。そうした部分を大槻さんの言葉の力で補って走らせていた部分が大きかったと思うのですが、目指すものや懸かっているものがないとなかなか人は頑張れません。そういう意味で2020年は残り5節の時点から優勝争い、ACL争い、残留争いの全てに関係が無くなった後のレッズが急激に走れなくなり、ボールを大して動かせないにも関わらずプレッシングも微妙な非常に中途半端なチームになってしまったことはある意味で必然かなと思います。しかも、この印象があまりにも悪くてやってきたことがほとんど否定されてしまうような評価になってしまったのは不運でした。</p> <p> まとめると、大槻体制は新しいコンセプトの浸透という大目標に忠実ではあったものの、戦力を活かすという意味では非常に難しい状況であったし、加えてボール保持の仕組みをうまく仕込めなかったことでゲーム運びの主導権を握れなくなってしまい、選手への負担が非常に大きく、シーズンを走り切り目標を達成するという点では持続性に欠け、適切とまでは言い切れないものだったと思います</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200221/20200221205524.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p><strong>リカルド体制</strong></p> <p> 続いてリカルド体制ですが、大槻体制とは打って変わってボール保持の安定を非常に強く意識したサッカーを展開しました。戦術的には4-2-3-1をベースとし、4-4-2ゾーンディフェンスを引継ぎつつボール保持の原則を明確化してチームに落とし込むという考え方だったと思います。このアプローチと積極的な選手獲得によって浦和レッズのボール保持のクオリティは著しく向上しました。一方でそれが求める結果に結びついたかというと難しいところで、2021年は試合数が42試合あったなかで勝ち点63。これを34試合に直すと56なので、大槻体制からの勝ち点の積み上げは10のみ。得失点差の改善が顕著(-12→+7)なことはポジティブですが、それも2022年には34試合で勝ち点45の得失点差+9に留まり、得失点差は微増したもののリーグの戦績としては初年度の大槻体制の結果すら下回ることとなってしまいました。大きなところで原因を探ると2021年はボール保持を大事にすることで攻撃回数が減ったにも関わらずシュート数が増えていないこと(質の高いポゼッションができておらず相手を崩せていないこと)で、2022年はシュート数が増えた(ビルドアップの質が改善した)にも関わらずシュートを決め切れていないこととなります。特に2022年のシュート成功率が期待ほど高くないこと(10.1%でリーグ8位)は印象としてもわかりやすいです。ハイライトを見返してもあとは決めるだけのチャンスを10本近く外しているはずですし、リカルド自身もリンセンの加入時に以下のようにコメントしています。</p> <blockquote> <p>「前からチェックして獲得したい選手でした。今回のウインドーでやっと実現しました。シュート力がありプレスもかけることができ、複数のポジションをこなすことができます。他の選手とどんな試合でも、時間帯によっても共存できる選手です。ゴール期待値がリーグ2位の浦和はチャンスをたくさん作っていますから、そこで足りないゴールを彼が決めて、浦和レッズをより危険な存在にしてくれることを期待しています。」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「J1リーグで3連勝し、上位に近づくきっかけにしたい」リカルド ロドリゲス監督(定例会見 7/1) | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F187892%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/187892/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> まあ、リンセンはデビュー戦で10分プレーして怪我したんですけど。</p> <p> CFが機能したか否かで言えばキャスパーの問題もありました。GKとの1on1など自分のタイミングでシュートできる状況において極めて高い決定力を示しているキャスパーですが、股関節の怪我もあって2022年は特に急加速・急停止・方向転換のキレが失われ、本人も意図的にそういった動きを避けてプレーしていたように思います。プレッシングへの参加がかなり気まぐれで、時には堂々とサボるようになったのも怪我の影響なのかどうかは定かではないですが、「しっかりと走って、努力し、このエンブレムのために頑張れる」という部分でリカルドの評価がイマイチだったことは想像に難くありません。</p> <p> 一方で、キャスパーの決定力をチームの武器と考えたときに、リカルド側で何かできたのかという部分もあると思います。例えば相手が前がかりになるゲームでは初めからある程度引き込んでキャスパーのロングカウンターを狙うような割り切った作戦を選ぶとか。ただそういうことを簡単にしないのがリカルドなのでしょうし、そもそも2022シーズンの終盤戦はキャスパーを軸に前線を組みましたが大した結果はでませんでした。キャスパーが圧倒的な決定力を持つにも関わらず戦術的な大黒柱となれなかった要員は、彼の非常にピーキーな性能のせいでもあるでしょう。圧倒的な加速とスピードに加えて、シュートの直前の数歩のステップが抜群に上手くGKと駆け引きしながら能動的にシュートコースを選択できる(撃たされた形のシュートが少ない)技術の高さを併せ持つ稀有な選手ですが、ハイボールへの興味はあまりないし、ポストプレーで時間を作ることも上手くはありません。また動き出しの回数が多くなくボールを引き出すアクションが連続しないので相手に引かれてゴール前のスペースがなくなるとボールを受ける回数が極端に減るという特性もあります。</p> <p> こうした中でビルドアップの質が上がるにつれて相手のリスペクトもあって押し込む展開が多くなり、「コンプリートな試合」を目指すリカルドの方針からもプレッシングの重要度が高くなる中で、最も決定力のあるCFを使いにくい状況が増え、さらにシャルクが結果を出せなかったことで代替案が松尾となり、リンセンも起用できないので2列目に得点力のある選手が足りなくなったという流れも見て取れます。CFがゴールを取れないなら2列目が得点できればいいのですが、2列目は2列目で守備やチームプレーへの貢献と破壊的な決定力をシーズンを通じて両立できた選手がおらず、モーベルグや大久保といった光明はあったものの、彼らを使う形を見つけるのに2022年の7月まで時間を使ってしまいましたし、怪我やコロナでの欠場にも悩まされてしまいました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210522/20210522165709.jpg" border="0" title="" width="1200" height="798" loading="lazy" /></p> <p> まとめると、リカルド体制ではフットボールの質は大槻体制よりも間違いなく改善しましたが、最終的には押し込んだ相手を破壊するだけの武器を見つけられないままリカルドのゲームモデルを貫き、比較的安定したゲームをするが勝ち切れないというチームへと変貌していきました。モーベルグの活躍もありチームが波に乗った時期もありましたが結果的には優秀なチャンス構築率(2022年リーグ2位)を活かすことができず、負けなかったというよりは勝ち切れなかった結果として勝ち点を伸ばすことができず、リーグ優勝はおろかACL出場圏の目標も達成することができませんでした。</p> <p> 総合すると、大槻体制ではクラブのコンセプトに忠実な戦術構築・勝ち方を目指しましたが、編成との不整合もあり戦い方が安定せず、ハードに戦うスタイルが裏目にでてリーグに結果を出すには至りませんでした。その反省からか戦術的な完成度を重視して招聘したリカルド体制では、リカルドの持ち込んだ戦い方が定まりゲーム内容も向上・安定したものの、逆に自らが作り出した拮抗を打破するだけの破壊力を身につけられなかった、そうした武器を活かす形とリカルドの目指すゲームモデルの間で戦力の効率的な活用ができず、結果が出ない中でコンセプトの不整合が浮き立つようになってしまったということが言えると思います。</p> <p> 3年計画の観点からは、どちらの体制でもクラブの目指す戦い方で結果を出すという部分で成功することができなかった、特にリカルド体制では結果的に出来上がった戦術がコンセプトからも外れてしまったというのは取り組みの継続性の部分で大きな反省点となってしまったと思います。</p> <h5 id="42--戦力は十分に活用できたか">4.2    戦力は十分に活用できたか?</h5> <p> まずは全体の話ですが、浦和は2016年(ミシャ体制の全盛期)に最も選手固定が酷く、出場時間上位の11選手で全体の出場時間のおよそ80%を占有していました。オリヴェイラ体制を例外とすれば、ここから徐々に(出場時間上位選手による占有率は下がっていく傾向にあります。この理由は様々ですが、基本的にはスカッドを入れ替えていくにあたって選手の序列が崩れたというのと、ミシャやオリヴェイラのようなメンバー固定傾向がかなり強い監督から一般的なレベルまで選手間のプレータイム共有率が下がってきているという見方があると思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227021344.png" border="0" title="" width="1169" height="961" loading="lazy" /></p> <p> このままでは普通の話ですが、もう少し細かいところにも面白いポイントはあります。このグラフで面白いのは白い実線グラフで、プレータイム上位12番目~16番目の選手の平均プレータイムを示したものです。この12番目~16番目の選手のプレータイムが高いシーズンは、ターンオーバーを多用しているか、シーズン途中で主力の交代(序列の変化)があった傾向があります。例えばリカルド初年度となった2021シーズンのプレータイム上位12番目~16番目の選手はキャスパー、ショルツ、江坂、酒井、田中達也となっており、夏場に獲得した選手が後半にまとまってプレーしたことでこのような順位になったということと、逆にそうした選手に序列を奪われた選手がこの位置に落ちてくるという傾向が出るように思います。序列があまり動かなかった2022シーズンの同じ線が全く違う傾向を示していることと合わせて理解すると面白いと思います。こうみると、大槻体制に対して2021年の編成大改造・序列の変化を経たリカルド体制のほうが若干選手を固定する傾向にあったというのがわかるかと思います。</p> <p> <strong>大槻体制</strong></p> <p> それでは体制別に戦力活用についてみていきます。まずは数字を見た方がいいと思うので、リーグ戦のプレータイムをまとめたものを見てみましょう。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227021535.png" border="0" title="" width="1200" height="648" loading="lazy" /></p> <p> もはや懐かしいですね。橋岡がレッズでシーズン2,700分以上もリーグ戦に出ていたとは。それはそうと、このシーズンの特徴は出場時間2,000分以上の選手が4人しかいないことでしょう。これは2016年以降で一番少ない数字です。ちなみに迷走気味だった2019年も同じく5選手しか2,000分以上出場した選手がおらず、逆に多いのは2016年でなんと上位11人が全員2,000分以上出場という狂った成績を残しています。</p> <p> トリビアは置いておいて、この年の戦力を見ると、印象としては選手への期待度と実際の出場時間で大きな誤差をあまり感じません。ファブリシオの出場時間が少ないですが、プレッシングを積極的にかけたくて、SHには死ぬまで走ってほしいサッカーでファブリシオをどう使うかは非常に難しかったですね。唯一マウリシオは個人的にはもっと使ってほしかったですが、日本人CBを重視していた感もあり、出場機会が失われてしまいました。まあ本人は娘さんに会いたかったみたいなので、ポルトガルでプレーできて幸せそうですが。というわけで、選手起用については大槻体制には結構納得感があったのではないかと思います。振れ幅はどうあれやりたいサッカーの方向性は単純明快でしたし、どういう選手が必要なのかという部分でもわかりやすかったかなと思います。そういった波に乗って柴戸や橋岡がチーム内で大きな役割を担ったこともそうですし、汰木がテクニカルなドリブラーから走れるSHに進化したことも大槻体制の成果と言えるのかなと思います。</p> <p> 一方で、そういった若手の起用があるということは、実績も経験も実力もあったと思われる選手たちに合った戦術ではなかったということです。これはスカッド自体の問題でもありますが、出場機会を得ていない中堅選手が非常に多いです。特に鈴木大輔や武富などほとんど試合にも出られずパフォーマンスも残せずという選手が出てしまったのは、仕方ないにしろ戦力活用という面では残念でした。</p> <p> それと残念だったのは、頑張り重視のサッカーをしていながら期待の若手にあまりチャンスを挙げられなかったことでしょう。強度の問題があったのはよくわかりますが、それにしても伊藤涼太郎や荻原にはもう少しチャンスがあっても良かったはず。ポジションによってチャンスの得やすさが変わる、またそもそも選手の実力が最も重要とはいえ、どうせ「初年度」という位置づけで戦うシーズンなのであれば、我慢して若手にプレータイムを与えるという采配も出来たはず。このあたりは真面目さ、目標へのコミットメントが強い大槻体制ではマイナス評価なのかなという気もします。ただそもそもスカッドに中堅が多すぎて扱いきれてなかったという線の方が強いですけど。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20201212/20201212185322.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p><strong> リカルド体制</strong></p> <p> 続いてリカルド体制となる2021年シーズンですが、まず特筆すべきは夏に獲得した選手の出場分数です。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227021901.png" border="0" title="" width="1200" height="681" loading="lazy" /></p> <p>2021シーズンはリーグ戦が38試合ありましたので他のシーズンとの単純比較はできませんが、ショルツ、江坂、酒井、平野の4人が1,000分以上出場しておりシーズン中の戦力強化が顕著だったシーズンと言えると思います。またトリビアレベルではこれまで毎年リーグ戦出場試合数・分数がトップだった西川が彩艶の台頭によってその座を岩波に奪われたことが大きな出来事でした。</p> <p> 2021シーズンの選手起用はこうした新戦力の起用があった点が特徴でしたが、全体的な選手選考にあまり大きな疑問はなかったように思います。これまでの主力で出場時間が比較的短いのは宇賀神、武藤、阿部、興梠あたりですが、後ろ二人は怪我がありました。個人的にはウガと武藤にはもう少し役割があった気がしますが、ウガは逆サイドで西をビルドアップの重要機能として位置づける戦術から左SBが前に出て得点関与できる個人能力を求められたことで、武藤はリカルドがトップ下に降りてボールを受ける役割を与えた影響からライン間で受ける選手がSHになったためになかなかプレー機会を得ることができなくなりました。ただ二人ともまったくプレー機会がなかったわけではなく、宇賀神は815分、武藤は757分のリーグ戦出場でしたから、競争を勝ち抜くほどの違いを出せなかったという言い方もできるかもしれません。</p> <p> 武藤の出場機会にも関係しますが、個人的に2021シーズンで印象に残っているのは武藤をトップに、佳穂と武田をIHに起用した4-1-4-1システムです。このシステムで戦ったのは2021年シーズン第7節の鹿島戦~第9節の徳島戦の途中までと2試合ちょっとだけでしたが、リカルド体制の2年間で個人的に最も感心させられました。このシステムの肝は2枚のIHの機能性で、ビルドアップを循環させるために頻繁に自陣に降りる佳穂をトップ下からIHに予め半列降ろし、その相方にトップ下としてもサイドハーフとしてもボランチとしても中途半端な特徴だった武田を抜擢。武田が状況に応じて中盤のあらゆるポジションに入り込みその時々の状況に応じて振る舞いを変えることで中盤~前線の枚数不足を解消し、最終ラインを経ずにサイドを変えてSBの攻撃力をも活かすという設計となっていました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227021959.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>J1レベルではフィジカル的にも持っている武器としてもどう考えても中途半端な選手だった武田を「状況によって様々なポジションを全部やる中盤のオールラウンダーとしての役割」で抜擢し機能させたことは「戦力の活用」という観点で本当に素晴らしい采配だったと思います。武藤の0トップ気味の運用で中盤がさらに厚くなり、柴戸に割り切ったアンカーワークをさせることで最終ラインを重くし過ぎないことも良い方向に向き、鹿島戦、清水戦と良い形で勝利を奪えていたので、当時はこの形がチームのスタンダードになるのではないかという気さえしていました。ただ残念ながら徳島戦で武田が負傷したことでとん挫してしまいます。武田にもチームにもマッチしていたやり方でしたが、武田と同じ役割をできる選手が他にいなかったのは決定的な欠点でした。徳島戦では武藤がIHの代役になったのですが、動き過ぎてしまい上手くいかず。このパフォーマンスが武藤のことを1.5列目~2.5列目の選手と目していたリカルドの評価を下げてしまった感があり、武藤にとっては不運だったかなと思います。しかも武田が怪我から復帰する頃には夏の戦力補強で大きく序列もやり方も変わり、ついにこの4-1-4-1はお蔵入りとなりました。</p> <p> 2021年シーズン後半は新加入選手を戦力に組み込みながら戦い方を広げていく期間となりました。強度の面で若干の不安があったもののボール保持時には完璧なフィットを見せていた平野をはじめ、ショルツ、江坂、酒井の加入は単純なスカッドの質の向上に繋がったと言えます。キャスパーと江坂のコンビではプレッシングの強度に問題が出るという欠点はこの時から既に垣間見えていましたが、江坂をワントップに置くシステムを使うなどして佳穂のプレータイムが確保されたことで大きな問題にはならなかった印象です。</p> <p> 酒井の加入は最終ラインに力強さを加え、リカルドが描いていた4バックベースでスタートしつつどちらかのサイドを高く上げて3バック化してボールを保持する形を実践するには都合が良かったはずです。一方でシーズン序盤に浦和のビルドアップ構造を支えてきた西のプレータイムが酒井加入と同時に激減し、ビルドアップや立ち位置の上手さとよりも酒井のフィジカルを活かしたシンプルなプレー志向に変質していったのは若干不思議でした。シーズン序盤まではいろいろな形を試しつつ試合状況に応じて立ち位置を変えながらボール保持を目指す戦術的に凝った戦い方だったのが、夏以降に強力な個を持つ選手たちが加入したことで仕組みの部分をシンプルに、特定の形を固めるようなアプローチに変わったような印象がありました。この違和感は続く2022シーズンに引き継がれることとなります。</p> <p> 2022シーズンは戦力の活用という意味では疑問の残るシーズンになりました。プレータイムを俯瞰して観ると、新加入選手の多くがプレータイムを確保できていないことがわかります。そもそも2021シーズンの夏までにチームの根幹を編成し終わっていたということを前提に考える必要があるとはいえ、2022シーズンの新加入で主力級として文句なしの活躍をしたのが岩尾だけと言うのは寂しい結果といって差し支えないと思います。犬飼は怪我さえなければ相当なプレータイムを確保していたはずなのでかなりもったいないと言えますが、それを差し引いても新戦力をうまく活用できなかったという評価は否めないのではないでしょうか。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227022318.png" border="0" title="" width="1200" height="606" loading="lazy" /></p> <p> 大きな要因としては、【時系列編】でも確認した通り、リカルドが2021年からの流れで3バックに固執した時間が長くなりました。既に話題にした通り松尾をもう少し早く組み込めなかったか?という印象は強く、コンディション的な出遅れはあったにしろ序盤~中盤にかけてもったいなかったポイントの一つかと思います。</p> <p> もう一つは松崎の序盤以降の使われなさで、開幕から5節までで231分出場とそこそこの出場機会を得ていたにも関わらず、そこから最終節までの29試合で138分しかプレータイムを得られなかったのは単純に不思議です。たしかに重要な決定機逸はありましたし、守備の面や戦術的な動きに不安があった可能性はあるのですが、それにしてもここまで飼い殺しにしなければならない選手だったかな?という印象です。短い時間なので参考程度とはいえプレータイムあたりのゴール+アシスト数では関根よりも明確に良い数字を出しており、スターターに選ばれないとしても交代要員としてすら計算できなかったことについては単純に理由が知りたいところです。もしかするとトレーニングであまり良い印象を残せなかったのかもしれないし、性格面やいろいろな事情でチーム内の立ち位置が良くなかったのかもしれません。</p> <p> 同じく期待の度合いやチーム内での評価からして不思議なほどプレータイムが得られなかったのは安居ですが、こちらは相手が岩尾ということもあって圧倒的に信頼度に違いがあったことが想像できます。とはいえ展開や作戦的に岩尾である必要がない場面でも岩尾を引っ張っていた印象が強いので、チームマネジメントの観点からももう少し岩尾のプレータイムは安居に分配できたと思います。平野についてはコンディション不良や怪我があり、しかもタイミングが悪く使えるようになったと思ったらまた離脱という感じで終盤戦に突入してしまったので運もなかったかなという印象です。</p> <p> このほかにリカルド体制で指摘すべきことといえば、選手の特徴を活かしてガラッと戦い方を変えるような部分があまり見られなかったことになると思います。江坂やキャスパーがプレッシング・ボール非保持の局面での貢献度の低さから最後までうまくチームに組み込めなかったことは2022シーズンに特に顕著でしたが、やはり一番上手くて決定力のある選手たちだったので、相手や状況によっては彼らを活かす戦い方を思い切って選ぶような選択肢もあったような気がします。全部が全部彼らのためのやり方を選ぶ必要はないのですが、戦術が選手を選ぶか選手が戦術を選ぶかみたいなところでチーム内で最も個性がある選手たちとの不和・モチベーション低下が見られた気がするのは戦力活用という面では残念でした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221105/20221105150739.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> まとめると、リカルド体制での戦力活用はやはり上手くいかなかったなという印象です。体制序盤はチームビルディングの初期段階だったこともあってか戦い方の選択も柔軟で、武田を抜擢したように見ていて感心するような起用もあったのですが、チームの完成度を高めていくためか選手の配置や戦い方を定めるにつれて選手への信用度に差がつき、メンバー選考も固定化していきました。勝つ確率を上げる、最も完成度の高いチームで戦うという観点でいえばこれは普通のことですが、当初の「相手をみて最適な戦い方を選んでいく」チーム作りという意味では期待と違うやり方が強まっていった気がします。またこれに関連して、リカルドはいわゆる大駒選手の扱いに苦労していた気がします。江坂、キャスパーがシーズン途中であからさまにチームへの貢献意欲を欠いていたように見えたことが目立ちましたが、酒井やモーベルグも同様に自分のプレースタイルとチームが理想とするバランス感覚との間で葛藤があったように感じます。大雑把に言えばこのあたりにも「リスクを回避する(ボール保持を長くし、相手のボール保持に対応することでゲームを膠着させる)」と「攻撃的にプレーする」のズレが根本的な原因として横たわっており、この感覚の差が起用法やプレー選択のズレとなり、傍から見ると戦力を持て余しているような印象を与えたのではないかと考えます。</p> <h5 id="43--選手は期待通り成長したか">4.3    選手は期待通り成長したか?</h5> <p>最後に、現場の成果として選手の成長について振り返りたいと思います。</p> <p><strong> タフであることが前提だった大槻体制</strong></p> <p> 大槻体制で特に成長が顕著だったのは汰木でしょう。もともとはテクニカルなドリブラーでサイドでボールをもらってのチャンスメイクは凄く上手いけどすべてのシュートが枠から外れる、みたいな選手でしたが、大槻体制の特に中盤以降はスピードを生かして大槻レッズのポジティブトランジションの急先鋒となっていました。ボールを奪った瞬間に縦に飛び出せる反応の良さと、ボールを受けた後に見せるドリブルのキレは間違いなく当時の浦和の武器でしたし、彼の場合はボール保持をする場面でも元々の良さであるサイドに張ってサイドチェンジを受けて勝負に加えて内側に入ってターンして運ぶであったり、大槻監督が各局面で求めるプレーを高次元でこなせる選手として重宝されたと思います。正直加入した時点ではこんなに走れる選手だとは思わなかったのですが、負荷の高い役割をしっかり受け入れて取り組んでくれて本当に助かりました。結局浦和からは移籍することになりましたが、大槻体制、そしてリカルド体制を経ていたからこその神戸移籍であり、高く評価されたのではないかと思います。</p> <p> また関根も内側・外側でのプレーを求められて昔のトップ下でのプレーを意識しながら大外1on1廃人からの脱却を図りました。本人は悩みながらやっていたようですが(というか戻ってきてからの関根はほぼ常に悩んでいるのですが)これもその後のリカルド体制のプレーに繋がっているのではないかと思います。</p> <p> 主にボール非保持の場面での取り組みが印象的だったのはレオナルドでした。最初は「プレッシングとか雰囲気っしょ?」みたいな感じでプレーしていましたが、2020シーズンの終盤はしきりに首を振って後ろの守備構造を気にしながらプレッシングのタイミングを計り、ボールにアプローチする角度を意識しながら寄せていたのが良かったです。どうしてもアンカー番を忘れるというか意図的にサボって攻めに転じやすい場所にいようとするところはありましたけど。</p> <p> 中盤より後ろの選手ではやはり柴戸が上げられます。2019年シーズンは全く彼らしくない中途半端なアプローチを躱されて失点の起点になったあたりから完全にオリヴェイラの信頼を失っていましたが大槻体制でダイナミックな守備と異常な無理の利き方、カバー範囲の広さを買われてプレータイムを大きく伸ばし、J1の環境に慣れたことで選手としての注目度が上がっていきました。そうして試合に出る中で徐々にボール保持の局面に関わることが増え、オンザボールの技術の向上・アンカーワークを基礎を身に着けていったと思います。</p> <p> また橋岡はユース卒としては久しぶりに即J1に適応し、こちらもめちゃくちゃに無理の利くタフさを大槻監督に買われて足が攣っても無視して使われていました。橋岡はユース時代CBをやっていましたが大槻監督は基本的にSBで起用し、当初はオンザボールでほぼ何もできないのではないかと思われる出来でしたが徐々にクロスの精度を上げていき、日本では珍しいタフガイSBとしての評価を得たのかなと思います。今もベルギーでSB・WBを主戦場としているのを見るとやはり身長184cmで海外に出て行くならSBだよね、という考えもあったのかもしれません。</p> <p> こう見ていくと大槻体制における選手の成長というのは、全く違う特徴を持っていた選手がゲームモデルに求められるタフさや規律を身に着けた成長と、もともとタフで無理が利く選手が試合経験を積む中でボール保持での技術を少しずつ身に着けていく成長という大きく二つのタイプがあったように思います。逆にこの二つのタイプに当てはまらない選手は苦労したなという印象が強く、SBで何度か使われたもののタフさを見せられなかった岩武や守備の部分の貢献を示すことが出来なかった涼太郎・荻原・武田などはあからさまにプレータイムを得られませんでした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200801/20200801205426.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> <strong>成長が見えにくくなってしまったリカルド体制</strong></p> <p> リカルド体制においてはやはりオンザボールに特徴ある選手が多く出場機会を得ていきます。筆頭は新卒ながら2021年シーズン36試合2,265分プレーした敦樹で、開幕スタメンを掴むと恵まれたフィジカルとオンザボールの質の高さを見せてシーズンを通じてレギュラーの座を守りました。敦樹の活躍は2020年シーズンの柴戸と被る部分があって、監督の理想とするサッカー・求める役割と自身の特徴がマッチしたことで出場機会を多く得て、ゲームの中で新しいプレーを身につけて行くパターンで成長機会を得たと思います。敦樹の場合は大学でCBをやっていたこともあり2021年シーズン当初~中盤まではビルドアップでの後ろ残りが非常に多く、いくらリカルドのサッカーが自陣ボール保持に人数をかけるとはいえ不要なポジション(具体的には左SBのカバー)に残って前に関われないというポジショニング上の課題がありました。プロでの敦樹の最大の特徴は球際の強さとオンザボールでの高い技術という相反する強みを持ち合わせることだと思うのですが、これを活かすのであればボールが来ず局面が発生しない場所にいるのは非常にもったいないわけです。これが改善され始めたのは2021年シーズンの中盤戦以降で、8月25日の第26節ホーム広島戦(駒場)では縦関係のボランチの前になった敦樹が平野からの縦パスを受けて相手の最終ラインに対してプレーするシーンがはっきりと形になりました。このプレーに関するエピソードは俺たちの飯尾篤史さんによって明かされています。</p> <blockquote> <p>ある日の練習では、林舞輝コーチから声をかけられた。</p> <p>「ライン間で全然ボールがもらえてないねって言われたんです。それで、いろいろ映像も見たりして、こういうボールのもらい方がいいって。それから練習で意識して取り組むようにしています」<br />8月25日のサンフレッチェ広島戦で平野のパスを引き出す際の、伊藤のバックステップによるポジション取りは、そうした意識の賜物だったのだ。</p> </blockquote> <p> これぞまさに成長。実際2022シーズンは敦樹を前に押し出してIH/シャドーのようにゴール前の局面に絡ませる戦術が「最も良い形」として結果に繋がりましたし、このエピソードは敦樹とチームの成長にとって重要な一歩を共有してくれていると思います。敦樹のこの話に留まらず、柴戸、明本、関根といった選手たちが同様に立ち位置への理解を深めていきました。</p> <p> もう一人、自らの突破力をチームの武器としてリカルドに使わせるまでに存在感を高めた大久保は素晴らしかったと思います。モーベルグと並んで大久保のドリブルはチームが拮抗状態を打開するための貴重なツールとなっていましたし、出場機会を得るにつれて2022シーズン序盤から指示されてきた中央でのプレーもどんどんスムーズになり、大外からの1on1だけではなく中央で相手のディフェンスを複数人集めていくようなプレーも出せるようになっていきました。敦樹と並んで大久保の存在感の高まりというのはリカルド体制の大きな成果と言えます。</p> <p> こういったポジショニングや戦術理解・個人戦術の部分での成長がリカルド体制での選手の成長のポイントであった一方で、2021シーズンの夏の補強で即戦力を多く獲得したこともあって、リカルド体制では選手の成長をどうこうというよりも、選手をどう当てはめていくかという部分にチームの主眼が置かれていったという印象もあります。2022年シーズンはオフの大編成でさらにこの傾向が強くなり、ボランチに岩尾を獲得したことなどでプレーさせながら成長を促すという部分はあまり強調されなかった印象です。つまり、あらかじめ提示された形に対してできる選手を嵌めていくので、選手の成長がチームに与える幅の広がりのようなものは感じにくかったのではないかと。さらに2022年シーズンは【時系列編】で振り返った通り「チームのベストな、軸となる戦い方」が定まるのが遅く、シーズンの半分をなかなかうまくハマらない状態で探り探りプレーしてしまったことも選手の成長に影響を与えたと思います。</p> <p> 2022年シーズンのことを言えば、そもそもコンディション調整に苦しんだ選手が多かったというのも苦しかったポイントになるでしょう。こうしたことを踏まえてリカルド体制を全体的に振り返ると、基本的な立ち位置の取り方や安定したボール保持への貢献など一定の選手の成長があったものの、途中からは選手の成長を感じることが少なかったというのが正直な印象になります。</p> <p> とはいえ、情状酌量ではないですが、背景にはコロナ禍とW杯というイレギュラーな事情によってスケジュールが圧迫され、なかなかトレーニングの時間を確保できなかったということがあると思います。2020年シーズンの降格なしという救済措置の影響で2021年シーズンのJ1チームが増えたこと、2022年のW杯対応のための日程前倒し、根本的にコンディションを維持できない選手がいたこと、そして大規模な補強と、じっくりとグループの練度を高めていく作業に集中出来ない中で2022年シーズンの優勝という目標に向かって仕事をしていたリカルドからすれば、選手の成長が限定的だったんじゃないかという評価は受け入れがたいというか、言いたいことがたくさんあるかもしれませんが。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210403/20210403152956.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> というわけで、「選手の成長」という観点で言えば、この3年間の成果はちょっと中途半端であったと思います。完成度はどうあればやっていたことは大槻体制の方がシンプルでわかりやすく、また補強も少なかったことで今いる選手を伸ばしていくことに注力できた側面があり、全ての選手ではないですが出場機会を得た選手がプレーの中、または大槻監督の要求に対応する中でプレーの幅を拡げるような部分がありましたが、1年しか体制が続かなかったので大化けというのはなかったと思います。リカルド体制では2年間戦いましたが様々な要素から選手の成長への注力は限定的になったんじゃないかと感じます。外部要因も多いので現場の力不足と言えるのかはわかりませんが、「3年計画」で一貫した強化・ゲームモデルの実現を目指すというところから抱く期待感とは少し違う結果でした。</p> <p> この選手の成長という観点は「3年計画」が終了した後も継続的に優勝争いをするチームを作っていくという意味で重要なので、クラブには是非チーム作りの重要な指標として現場のパフォーマンスを計ってほしいところです。当然試合に出られる選手が成長していくのが真理なので、すべてを計画的に進めるのは無理ですが、後で考えるコーチング体制の強化なんかも含めて、ゲームモデルを上位とした一貫した取り組みの効果として内部での選手の育成・成長・スカッドの発展に繋がる仕組みを持てると理想的だなと思います。理想的には監督が提示する枠組みの中に留まらない選手の成長を今度は監督の方が活かして提示すべき形自体を調整していくという戦い方の変遷というのがあるべきだと思います。</p> <p> </p> <p>続く。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182423" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【強化・マネジメント編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182423">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【強化・マネジメント編】 hatenablog://entry/4207112889948518342 2022-12-27T18:24:23+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 5 【強化・マネジメント編】 3年計画及びフットボール本部の取り組みとのガチ対話はついにマネジメント編に突入です。いよいよ主役と戦えると思うとワクワクします。今回で見ていくのはまさにフットボール本部のパフォーマンスです。特に、フットボール本部が現場に影響を及ぼすコーチング体制の整備、スカッド編成・補強、そしてチーム強化インフラ・ツールについてみていきます。 5.1 コーチング体制は適切だったか? 大槻体制の意味と監督交代について 「3年計画」の達成にあたっての監督選びという点で、フットボール本部の選択は適切だったでしょうか。これまで見てきた通り、大槻体制には大槻体制の、リカルド体制にはリカルド… <h4 id="5--強化マネジメント編">5    【強化・マネジメント編】</h4> <p> 3年計画及びフットボール本部の取り組みとのガチ対話はついにマネジメント編に突入です。いよいよ主役と戦えると思うとワクワクします。今回で見ていくのはまさにフットボール本部のパフォーマンスです。特に、フットボール本部が現場に影響を及ぼすコーチング体制の整備、スカッド編成・補強、そしてチーム強化インフラ・ツールについてみていきます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200712/20200712171957.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="51--コーチング体制は適切だったか">5.1    コーチング体制は適切だったか?</h5> <p><strong> 大槻体制の意味と監督交代について</strong></p> <p> 「3年計画」の達成にあたっての監督選びという点で、フットボール本部の選択は適切だったでしょうか。これまで見てきた通り、大槻体制には大槻体制の、リカルド体制にはリカルド体制の欠点がありました。ざっくりとみていきます。ファン・サポーターの中にはおそらく、「3年計画」を大槻体制でスタートしたこと自体が間違いだったという意見の方がそこそこいると思います。この点にはある面で同意できて、ある面でそうとも言えないと思います。これまで見てきたとおり、フットボール本部の策定したコンセプトに対する忠実性、コンセプトを体現しようとする姿勢において大槻監督はリカルドよりも優れていました。それはレッズ在籍期間が長くクラブの雰囲気や大切にすべきものを感覚的に理解していたこともあるでしょうし、彼本人のサッカー観としてフットボール本部のコンセプトに近い部分を持っていたということもあったと思います。もちろん監督としての実績はJ1レベルでは評価できるものではなかったので、この点で「3年後の優勝を目指す」とした計画の先導者としてふさわしかったのかという疑問は真っ当でしょう。その一方で、競技面以外でフットボール本部が大切にしたと思われる評価軸を踏まえると、大槻体制からのスタートの意図が見えてくる気がします。<br /> フットボール本部体制の発表会において土田SDが特に強調していたのは、「浦和を背負う責任」という言葉でした。あまりにキャッチ―かつクセが強い言葉だったので一瞬でミーム化し僕も散々この言葉で遊びましたが、振り返ってみるとこの言葉は土田SDにとって心の底から重要な概念だったのだと思います。</p> <blockquote> <p>(土田SDにお聞きします。コンセプトをお示しいただいたが、これまで具体的に戦い方がどう違ってくるのか?あと、大槻監督が続投することについて、コンセプトが共有できたからだと思うが、どういう点でコンセプトを共有できて、どういうことを期待するか?)</p> <p>土田SD<br />「まず、どういうコンセプトを共有したか、ということですが、チームづくりの上で一番ベースとなる『浦和の責任』、そこに関して大槻監督は、浦和を理解し、浦和レッズを理解し、浦和の責任という言葉の意味を本当によく理解してくれている人だと思っています。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F162829%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/162829/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> 雑な解釈かもしれませんが、この言葉には「サンフレッズ」と言われたミシャの時代を起点として外様選手が増え、彼らが中心を担ってからのクラブ内の雰囲気への危機感があるように感じます。もしくは、ひねくれた言い方をすればそれは土田SDの心の中にある「あの頃」への懐古のようなものかもしれません。特に2007年くらいまでの浦和は高卒・大卒の生え抜き選手が多く、選手やクラブとサポーターの距離感もかなり近かった牧歌的な時代でしたから、それが今の時代の感覚で良いにしろ悪いにしろ、「あの頃」と現状のレッズ、それぞれの持つ浦和の街との空気感の違いを感じていたのではないでしょうか。そうした流れを「あの頃」に引き戻そうとしたときに、その抽象的で感覚的なゴール・理想像を描いて組織を引っ張っていける人材は多くありませんから、そうした感情のある自分がやってやろうという意識がフットボール本部の設立そのものにあったような気もします。そうすると、その良し悪しは別として、土田SDの理想像である空気感、そしてその空気感をベースにするコンセプトの実現には、土田SDが「浦和を背負う責任」と名付けたものをまず取り戻さなければなりません。この責任概念を現場で植え付ける宣教師としての役割こそが、大槻監督には期待されていたような気がします。</p> <blockquote> <p> 選手に伝えたときの選手の状況、はっきり申しまして、この言葉の意味、重さ、理解していない選手がいるのは事実だと思っています。それは先シーズンまで私がピッチの上で仕事をしていても感じてきたことでもあります。でも、浦和レッズの選手である以上、そこを感じてプレーしなければいけない、そこは分かっていながらも理解しきれていない選手がいるのは事実だと思っています。</p> <p> でもこれは、選手だけのことだけではないと思っています。実際私は、Jリーグがはじまり今まで浦和で過ごさせていただきました。その中でこの浦和レッズというクラブが、だんだん浦和との距離感が空いてきているのではないかと感じています。選手は、現場は、クラブの鏡だと思っています。選手にも要求します。浦和をもっと知ってほしい、理解してほしい。この浦和の責任というものがどういうものなのか。でもそれは、クラブがまず浦和をもっと大事にしなければいけないのではないか、そこも本当に見ていかなければいけないところだと思っています。そしてこれからチームづくりを進めていく上で、そこの理解ができない選手、そういう選手がいてはいけないクラブ、チームだと思っています。時間はかかるかもしれません。けれど、ここのところだけは、常日頃から選手に伝えていきたいことだと思っています。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F162829%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/162829/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> こう考えると、あの当時フットボール面だけで大槻監督よりも優秀な候補者がいたとしても、大槻監督が選ばれる理由もわかる気がします。もしかしたら普通に他の候補に断られたから消極的に大槻体制を選んだのかもしれませんが、そうだとしても大槻監督に期待したことの輪郭は見えてきます。つまり、「3年計画」の初期段階として、責任概念を含めてトップチームの雰囲気を変え、「あの頃」に近づけていく一歩目を担うことこそが重要であり、戦術的な部分・コンセプトの実現はその先の2次的なタスクだったのではないでしょうか。当然、競技面での成功だけを考えればこれは悪手です。フットボール本部体制において監督はコンセプトを実現する現場の技術マネージャーですから、クラブが大事にすべき理念や精神性の浸透には本来責任がないはずです。「3年後の優勝」を掲げた点からしても、それにふさわしい専門家を招聘するのが筋のはずです。ただまあ人間がやる組織はつまるところウェットだし、ゲームモデルの根拠として概念的な感覚や価値観・歴史的な経緯に根差す哲学が考慮されるべきことを踏まえてもそういう考え方もあるのかなという感じもします。逆に言えば、こういうめちゃくちゃ人間くさい理想像こそ、これだけの組織体制改革のモチベーションになるのかなという感じがしますし、土田SDだからこその発想だとも言えます。おそらく理想像としては大槻体制においてこうした責任概念を植え付けたうえで、2年次以降にコンセプトに沿ったゲームモデルのより高度な実現を目指すという流れを考えていたのでしょう。そうした思惑に反して、おそらく起きていた「ステルス政権交代」の影響もあり、リカルド体制が実現します。</p> <p> この頃フットボール本部を率いていたと思われる西野TDとしては、クラブのコンセプトへの自らのサッカー観の注入をもくろんだのかもしれません。リカルド就任時に暗に言及している通り、大槻体制でベースとなった4-4-2プレッシングという非保持面の武器にリカルドのビルドアップの仕込みを組み合わせようという足し算の発想(=ハイブリット)でのリカルド招聘だったと思いますが、やっぱりサッカーは単純に戦術を足し算すればよいわけではないというのが真理なのでしょう。このあたりは正直フットボール本部の見込みの甘さがあったかなという感覚は否めないし、反省すべき点として挙げられると思います。リカルド就任時に書きましたが、</p> <blockquote> <p> ここで問題になるのは、本当にチーム作りは足し算なのか?ということでしょう。サッカーにおいて攻守は一体、表裏をなすものなのだからどちらかだけということはないわけで、ディフェンスが出来たから次オフェンスね、とはならないのではないかと思います。例えばわかりやすいのは今季でセレッソ大阪の監督を退任するロティーナのサッカーでしょうか。彼のセットディフェンスの強固さは大雑把に言えば一列前の選手が後ろのラインの隙間を埋める原則を徹底しているからこそ。前の選手が後ろのラインを埋めるわけですからボールを奪っても前で待つ選手は少なくなっているわけで、だからこそトランジションからの速攻が比較的少ないというサッカーをしていると思います。ついでに言うと、そこまでしっかり守っているのに攻め込んでからのカウンターで失点したら意味がないし、早く攻めれば早くボールが戻ってくるわけで、計算外が増えるオープンな展開を起こさないようにあえて攻守においてトランジションをなるべく避けるサッカーになっているということだと思います。だから彼の4-4-2ブロックや論理的なゲーム構築の手腕は間違いないとしても、もっと攻撃的に、プレッシングからポジティブトランジションで仕掛けていこうと考えるとトレードオフでセットディフェンスの方に影響が出て、そうなるとロティーナに任せた意味はなんだっけ?となりそうです。この意味で、ロティーナが良い4-4-2ブロックを構築できるから大槻監督の次の監督に、という意見は、トランジションの強度で勝つことを重視している今の3年計画的にどうなのかなーと思っています。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="チラシの裏:大槻監督退任と3年計画の継続性はどう説明されるのかについて考えたこと - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2020%2F11%2F26%2F221044" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2020/11/26/221044">www.urawareds96.com</a></cite></p> </blockquote> <p> なんか、まさにこうなったなあと。この時はロティーナの名前も出ていたのでロティーナと書いていますが、2年間観てみて、リカルドもロティーナに近いサッカー観・志向を持っていると言っていいのではないかと思いました。もちろんボール保持の部分での作りは多少違うと思いますが、全体的には不要なトランジションは避ける、下手にリスクを冒さない志向を感じました。フットボール本部の策定したコンセプトには「リスク」という単語が出てきませんが、全体的にはリスクをある程度許容して勝負しにいく姿勢というのが浦和っぽさなのだと思いますし、フットボール本部も言外に意識していた要素だと思います。リカルド招聘にあたっては、この点のリスクへの考え方がマッチングの際にあまり考慮されなかったのかなという気がします。たしかにビルドアップの仕込みと言う意味では飛躍的に進歩したし、リカルド自身もプレッシングをチームの武器として重要視していたと感じますが、もう少し抽象的なレイヤー・サッカー観の部分でリスクに対する考え方、アプローチの仕方にフットボール本部のコンセプトとのずれがあった気がします。もしかするとリカルドとしては「もっとプレッシングに行きたかったけど選手がなかなかついてこなかったのよ」と言いたいのかもしれませんし、そうであればそれはそれで編成面でのフットボール本部の反省ということになるのでしょうけど。ポジティブに考えれば、リカルド招聘の2年間をもってそういった要素が重要であるという学びを得たし、それを活かしてスコルジャ監督を招聘したのだと言えると思います。実際スコルジャ監督のサッカーを観ているとリカルドほど整った守備組織でのセットディフェンスを強調していないように見えますし、シュートの数も非常に多く、整った状態をあまり意識せず、リスクに寛容な雰囲気を感じます。そういう意味では大槻体制・リカルド体制を経てのスコルジャ体制というのは、これまでうまく監督の志向・実力とフットボール本部のコンセプトを合わせられなかったという意味でのブレが改善されてきたのかなと感じています。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200801/20200801175719.jpg" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p><strong> もう少し強化してよい気がするコーチング体制</strong></p> <p> 次にコーチングスタッフですが、そもそも論として、ここまで見てきたとおり大槻体制→リカルド体制という大きな方向転換がありましたので、コーチング体制もそれぞれの体制によって各監督に合わせた人選を行ったという部分があります。大槻体制ではヘッドコーチの上野さんが特に攻撃面で主体的な役割を果たしていたようですし、工藤コーチや山田コーチといった以前から浦和で(そして大槻さんと)長く仕事をしてきたコーチ陣が脇を固めていました。リカルド体制ではリカルドの通訳兼コーチとして小幡氏を招聘し中枢に据え、さらに分析担当に林舞輝さん、守屋優馬さんを抜擢するなど理論とテックを使いこなす新世代を登用し考え方を大きく変えていこう、欧州スタンダートの考え方を取り入れようという思惑が強く出ていました。2022シーズンからは徳島からさらに前迫コーチを引き抜き、特にセットプレーで新しいアイデアを取り入れることに成功。常にというわけではないもののセットプレーの質が高まったと感じる部分も多くあり、この点は新しい取り組みの成功例と言えると思います。分析も含めて監督を補佐する役割を担うコーチング体制については内情がかなりわかりにくいので評価が難しいですが、基本的には監督が仕事をしやすいメンバーを揃えるというのが重要だと思いますので、監督一人だけ連れてきてあとはクラブが選んだメンバーと「はじめまして」からで優勝してください、という形にしなかったのは悪くなかったと思います。浦和は伝統的に過去と現在を繋ぐ役割としてOBの内部育成を続けていますが、この枠が平川さん一人だったことも最低限の措置として納得できるものなのかなと思います。</p> <p> 逆に気になるのは、リカルド体制以降のコーチング体制の若さ、経験の無さ、そして絶対的な人数でしょうか。若いからダメという気はないのですが、小幡さんは加入時33歳でJ1リーグでのトップチーム経験は徳島での2020年のみ、前迫コーチも加入時32歳で小幡さんと同様2020年の徳島での経験のみ、平川コーチは極めて豊富な選手経験を持つもののワンクラブマンでコーチとしてのキャリアは2019年からスタートという指導体制だったので、J1リーグやACLを戦い抜く、タイトル争いに最後まで絡んでいく、優勝を争うクラブの高い基準を植え付けるという部分でどうだったのかなという疑問があります。ここ10年くらいの浦和は基本的にイイ奴が多いチームでコーチ陣と選手の対立があるような話はあまり聞きませんが、この指導体制と選手たちを比べると選手のほうが明らかに実績があるので、「指導」という言葉をそのまま捉えたときにどれほど「指導」になったのだろうという素朴な疑問が湧いてくるのは事実です。</p> <p> 人数に関しても多ければ良いという話ではないと思いますが、この3年間の優勝クラブであるフロンターレとマリノスのコーチング体制を見ると、フロンターレは監督の下にコーチ4名、GKコーチ1名、フィジカルコーチ1名、アスレティックトレーナー5名の体制、マリノスはヘッドコーチ1名、アシスタントコーチ3名、フィジカルコーチ1名、コンディショニングコーチ1名、GKコーチ2名、アナリスト3名の体制、広島も監督の下にヘッドコーチ及びコーチ4名と、どちらも浦和よりも多少分厚いコーチング体制を有しています。レッズは主要スタッフ以外は公表していないのでコーチング体制全体の大小というのは比較できないのですが、個人的にはコーチングスタッフはもっと多くていいのではないかという感覚があるので、今後どうなるか見ていきたいと思います</p> <p> それにしても2022シーズンはコロナ以外の離脱も多くて、メディカル関係の課題が出たシーズンだった気がします。怪我予防の責任はフィジコ、早期回復、怪我リスクの回避の判断はドクターチームの責任というのが一般的だと思いますが、この辺りの原因分析と改善は是非期待したいところです。例えば、浦和で言えば長年コンディショニングトレーナーとして信頼されていた野崎さんが岐阜に移ったことでやっぱり影響があったのか?は気になります。たぶんしばらくほとぼりが冷めないと正直な感想は出ない気がしますが。</p> <p> 監督に合わせたコーチング体制の整備とは少し異なる観点を感じるのはGKコーチに招聘したジョアン・ミレッさんだと思います。GKコーチはこれまで長く土田SDが務め、その後は日本代表での活動経験が豊富であった浜野さんを登用してきたポジションです。これまでの2名はわりと保守的・日本サッカーのスタンダード路線の指導だと思いますが、ジョアンに関しては高度に言語化された独自の理論を徹底して刷り込むタイプでかなりの攻めた人選です。ジョアン体制となった浦和レッズのGK陣の取り組みは各所でレポートされていますが、結果的にこれは大成功だったと思います。西川のクロス対応はこれまでと打って変わって積極的になり、セービングの回数自体を減らすアプローチでピンチを未然に防ぐ守備ができていたと思います。そもそもジョアンの登用は将来有望な素材である鈴木彩艶を育成するためのものだったと思いますが、ジョアンの教えで実績ある西川が更に進化し、彩艶の超えるべき壁が高くなってしまった感があるのは皮肉ですが。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200829/20200829193907.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p><strong> 「サッカーの正論」と「浦和らしさ」を繋げるコーチング体制?</strong></p> <p> 余談ですが、上述のコーチングスタッフの数や質の話と併せて、個人的にはこうした技術向上のためのコーチがチームの中にいてもいいような気がしています。例えばGKだけでなくFPでもという発想で、FWはFW特有の動きや技術を指導できる専門の技術コーチがいても良い気がします。技術コーチと書いたのは監督をサポートするコーチとある程度役割を分けてもいいのではないかと思うからで、あえて名前をつけるなら技術コーチと戦略・戦術コーチを用意して、役割分担・棲み分けをするようなコーチング体制も面白い気がします。</p> <p> リカルドのサッカーを見てきて思ったことですが、いわゆるポジショナルプレーで成功するにはやっぱり選手の質が必要です。僕の理解ではポジショナルプレーは「サッカーの正論」をパッケージしたもので、その成功には「自分たちがミスをしないこと」が前提として内在している気がしています。要は、正しいポジションを取って正しい動きをしても、パスがずれたら、トラップミスでボールが2m転がっていったら、左回りでターンするべきタイミングで右回りのターンしかできないなら、左足でパスすべきところで左足が動かないなら意味がないわけで、つまりは各ポジションに必要な技術を持ち合わせなければポジショナルプレーは実現しないし、それはいわゆる個人戦術をどこまで持ち合わせているかも同様です。</p> <p> 一方で、浦和レッズを含めて世界の多くのクラブは必要な技術や資質を全て持ち合わせた選手を獲得できません。特に、日本で最もコロナ禍による入場料減の悪影響を受けた浦和レッズさんは選手獲得にあたってコストパフォーマンスをすごく意識するようになったと思いますし、一昔前のように選手獲得のために法外な条件をバンバン提示するというようなこともやっていないはずです。そういう中で、新卒選手やJ2、J1下位からステップアップしてきた若い選手、実績はあるものの浦和レッズのサッカーに初めて触れる選手に対して、日々のトレーニングで、目指すサッカーに必要な技術を身につけられる・技術を向上させる体制を整備する重要性が高まっている気がします。</p> <p> 「3年計画」の浦和でいえば、加入した選手のできることが増えていく、トレーニングを通じて成長するという部分は正直あまり見られず、どちらかというと試合に出場を続ける中でタフさを増していった選手がいた大槻体制と、選手の特性と監督の選択する戦い方がフィットしていくに連れてパフォーマンスを上げた選手がいたリカルド体制という印象でした。断定的には言えばないものの、もしこれが日々のトレーニングを通じて技術を向上し選手の選べる選択肢自体が増える、監督の採用する戦い方に対応できる選手が増えていく環境になれば、もっと効果的に戦えたのではないかと感じるわけです。そしてそうだとすると、そうしたニーズに対して、プロ経験がない理論派戦術コーチを中心とした体制は適切なのか?となるわけです。もちろん戦術導入や対戦相手の対策にはいわゆるデスクトップコーチの方が優れている場面もあるでしょうし、何より監督の補佐をする立場の人材は監督が認めた人であるのがベストです。ですが、プロとして生きていく、選手の価値を向上させるための技術や個人戦術を教える役割は少し違う人に任せてもいいのかなとも思います。例えばここにクラブに縁のあるレジェンドを招聘してもいいでしょうし、ジョアンのように技術体系・指導理論を確立している人を海外から招聘しても面白いと思います。要は監督を補佐する戦略・戦術担当のコーチが決める方向性を尊重できていれば、専門技術は専門家に任せるという考え方でもいいのではないかと。こうした体制で選手を育てる中で、現在のGKチームが実行しているようにそうした専門家たちのノウハウをクラブに蓄積し、クラブ自体が選手の技術を向上させられる組織として積み上げていく、そうして長期で見ると、「浦和レッズらしい」FW、MF、DF、GKを自前で育成できるようにする。そういった取り組みにチャレンジするのも今後に向けて面白いのかなと個人的には感じたシーズンでした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200221/20200221182509.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="52--補強放出は適切だったか">5.2    補強・放出は適切だったか?</h5> <p> フットボール本部は平たく言えば強化部ですから、スカッド編成オペレーションは中心的活動の一つと言えます。監督選びの時点で上記見てきたようなブレが起きてしまったため、編成オペレーションにも必然的に影響を与えたはずです。一部は【時系列編】で既に言及していますが、特に補強・放出がどのようなものであったか、それぞれの効果や狙いがどうだったかを振り返りましょう。</p> <p> なお、これ以降は「冬の補強⇒夏の放出・補強⇒冬の放出」をワンセットとしてみていきます。理由は単に当該年度の成績を参照できるサイクルがこれだからです。本当は冬の放出・補強⇒夏の放出・補強で見るべきなんでしょうけど。</p> <p> <strong>思い通りに動けなかった初年度</strong></p> <p> 2020年シーズンはフットボール本部体制初年度ということで編成オペレーションに非常に苦労したオフとなりました。獲得できた選手はトーマス・デン、レオナルド、伊藤涼太郎(レンタルバック)、武田英寿(高卒)のみ。フットボール本部体制及び「3年計画」のスタートとしてはかなり寂しい成果で、新加入選手発表記者会見に参加したレオと涼太郎が二人で握手する写真がミームにならなくて良かったなと思いました。結構シュールでした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227024815.png" border="0" title="" width="1200" height="126" loading="lazy" /></p> <p> この年の編成オペレーションは「複数年契約の選手が多く動きにくい」ために小規模にとどまったというまとめ方をされるのが一般的だと思いますが、僕の過去の記録を見返すと、意外といろいろと声をかけていたみたいで、結構報道が出ていました。当時大分の小塚和季(後に川崎)、当時湘南の杉岡大暉(後に鹿島⇒湘南)、当時鳥栖の原輝綺(後に清水)にアプローチを仕掛けた報道があったのですが結局誰も来ませんでした。この時点では浦和がどういったサッカーをやっていくか判然とせず、大槻監督の続投もかなり後ろ向きに捉えられていましたので、やはり交渉の中で優位性を発揮できなかった、選手にとって魅力的な移籍先と思われていなかったことが大きな敗因だったと思われます。選手選考的には2021年シーズン以降の補強と同じく若くて有望な選手を獲得したいという意向は見える気もしますが、「どこでどんな活躍をしてほしいか」という具体的なビジョンはややぼやけていたかもしれません。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227024533.png" border="0" title="" width="900" height="1200" loading="lazy" /></p> <p> 2020年シーズンのスカッドを俯瞰してみると、上図のようになります。後付けでスカッドがどうだったか話すのはズルい気もしますが、結果論としては以下のようなことが言えると思います。</p> <ul> <li>最も負荷がかかるSHの層が薄く、しかも走れるタイプが関根と汰木しかいない。</li> <li>一方でFWの層が異常に厚い。これはそもそもFWとして獲得していない選手のポジション(主に3-4-2-1のシャドー)がなくなったため。</li> <li>CHは実力者が揃うが、エヴェルトンと長澤はIHがベストポジションで柏木は戦術上使いにくい、阿部は怪我。となると運用が難しかったかも。</li> </ul> <p> 全体的にはやはりやりたいサッカーと編成の親和性を確保できなかったということになりそうです。</p> <p> 編成が上手くいかなかった2020シーズンですが、この年からの戦力整理(放出)は相当なスピード感を持って実行されました。まずは夏にマウリシオ、ファブリシオをレンタルで放出。シーズン終了後のオフにはエヴェルトン、長澤、青木、岩武、鈴木大輔、武富、福島と中堅選手を一気に放出。長澤の移籍がフットボール本部の意向通りかは微妙なところですが、前体制で獲得した「名前のある」選手たちをほぼ一掃することとなりました。このオフから基本的にフットボール本部は出場時間が少ない中堅選手はほとんど放出しており、なかなか容赦のない編成方針になったなという印象でした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025356.png" border="0" title="" width="1200" height="333" loading="lazy" /></p> <p> 上記の出場機会のない中堅選手とは毛色が違った放出選手が橋岡(⇒シントトロイデン(レンタル)とレオナルド(⇒山東泰山)、柏木(⇒岐阜)でした。橋岡はリーグ戦出場時間がチーム2位、レオナルドは同6位でチーム得点王、柏木は出場機会に恵まれませんでしたがチーム内での存在感・選手からの信頼が非常に厚い主要選手でした。海外挑戦、高額オファー、規律違反と三者三様の別れとなりましたが、おそらくこのどれもがフットボール本部の想定外だったはずです。この3人を含めた総勢15名の登録選手放出が、続く2021年シーズンに向けての大量の新加入選手の枠を空けることとなりました。</p> <p> <strong>大編成を行った2021シーズン</strong></p> <p> 2021年シーズンは大量補強を実行。新卒や夏のウインドーでの獲得を含めると合計17選手を獲得しました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025500.png" border="0" title="" width="1200" height="371" loading="lazy" /></p> <p> 冬の移籍市場では明本、佳穂、田中達也、西、金子、塩田、敦樹(新卒)、大久保(新卒)、藤原(新卒)、福島(昇格)、そしてキャスパー・ユンカーを獲得。キャスパーは別格として、J1リーグでキャリアを積んできた選手は西と塩田のみ、塩田は第3GKという特殊な役割を期待していたことを考えると、「名より実」という方針とともにコストパフォーマンスを相当意識した選手選考であったと思います。コロナ禍による入場者数の壊滅的な減に起因する売上の大幅な減少という現実的な制約があったとはいえ、これは前任の強化体制を反面教師にした方針なのだろうなあと思います。実際2018年、2019年の浦和の補強で、加入したシーズンからレギュラーに食い込んで戦力となったのは外国籍選手を除くと岩波と山中くらいで、リーグ戦に600分前後しか出ていない選手でもゴリゴリの長期契約を持っているような状態だったのではないかと思われますので、2020年シーズン前に編成に苦労したフットボール本部が前体制の「反省」を踏まえるのは非常に納得感がありました。加えて、J2で既に評価を高めていたリカルドが監督に就任するということで、選手としても興味を持って浦和の話を聞いてくれたという側面もあったと思います。前年は異なりこのオフでは選手獲得に苦労しているという話はほとんど聞かれませんでした。</p> <p> ただし、西野TDがインタビューに答えている『Jリーグ新戦術レポート2021』を読むと、この時点でもまだ「3年計画をたてた2年目の今年(2021年)は、正直に言って選手の入れ替えがあまり出来ていませんでした」とあります。そうした問題意識からか、フットボール本部は夏のウインドーではさらに積極的に動きました。獲得選手は酒井、江坂、ショルツ、平野、木下。このうち木下を除く4人は夏加入でシーズンの出場時間が1,000分越えで後半戦は完全な主力として活躍しました。江坂は「アクシデンタル」、平野は「もういっちゃおう」という感じで計画外だったようですが、この2021年夏の補強で現在のレッズの根幹が固まることとなりました。こうした動きには、『Jリーグ新戦術レポート2021』で西野TDが明かしている通り、2021年の夏に大規模なスカッド編成を行ったのは2022シーズンの優勝を見据えて、という意図があったようです。</p> <blockquote> <p>西野 リカルドのサッカーには選手たちに落とし込む時間が必要です。そこから逆算して、来期のJリーグで優勝するために、2022開幕前の冬に仕上げるのではなく、半年早い夏のマーケットで動いてチームを仕上げていこうと思ったからですね</p> <p><a href="https://amzn.to/3YLYeoJ">https://amzn.to/3YLYeoJ</a></p> </blockquote> <p> これ、個人的には凄く勉強になりました。たしかにそうだよなと。夏に獲得する選手は即戦力でそのシーズンに活躍することを求められるのは当然ですが、次のシーズンにスムーズには入れることもアドバンテージです。もちろん前提として次のシーズンもほぼ同じ体制で進めていくことを決められる場合に限りますが、こういった意図での獲得は「先」を見据えている感じがして新鮮でした。この夏の動きは戦力補強の面以外にも、ファンを惹き付けるという意味でも有効だったと思います。江坂獲得の際に「獲れたらいいねリスト」の存在が明らかになるなど、数年ぶりに浦和界隈で補強に夢が抱けたこともあり、この辺りからフットボール本部の取り組みが浦和を取り囲むステークホルダーに認められたのではないかと思います。</p> <p> 結果的に2021年シーズンのスカッドは以下の通りとなりました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025626.png" border="0" title="" width="900" height="1200" loading="lazy" /></p> <p> 昨年に引き続き出入りが激しいのは最前線で、トップ・トップ下の選手は夏に4選手、冬にも興梠と木下を放出したので合計6選手を放出しています。健勇のレンタル移籍は本人の希望があったようですが、全体的には最前線で軸となる選手を決め切れなかったのが3年計画の傾向としてありそうな気がします。これは興梠の後釜が決まらなかったという見方もできるでしょうし、もう少し戦術的に見れば大槻体制にしろリカルド体制にしろ、プレッシングでチームに貢献しつつ、ボールを収め、引き出し、そしてゴールを決めることを要求するわけでトップの選手に求める役割の多さ、重さが関係しているかもしれません。トップ下の選手も同様で、技術や特徴の差はあれどプレッシングとビルドアップ、チャンスメイクの3点を上手くこなせる選手が誰だったかという部分で佳穂が重用された印象があります。比較的安定的にレベルアップしていたボランチから後ろとポジションと比べると前線に必要な選手を揃えられなかったというのはフットボール本部体制の課題として一つあったのかもしれません。</p> <p> 2020年シーズンの課題であったSHの層の薄さは明本の獲得でかなり軽減された感がありました。明本はSBでの出場機会もありましたし、フットボール本部としては期待以上の活躍をした選手だったことでしょう。他方リカルドのサッカーに魅力を感じていることを公言していた田中達也がビルドアップの安定にあまり貢献できずいまいちフィットしなかったのは誤算だったかもしれません。トップの選手がなかなか定まらない中で、2列目の選手の得点力というのはこの年のリカルド・レッズの大きな課題となりました。</p> <p> たくさんの補強があるということは放出も同じようにしなければならないということで、この年は放出も非常に派手でした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025813.png" border="0" title="" width="1200" height="391" loading="lazy" /></p> <p> 夏に完全移籍となった武藤に続いて、槙野、宇賀神が契約満了での放出、さらに阿部の引退でミシャの時代を知る選手はほぼ一掃されました。さらには2021年に加入したものの酒井の加入で出場機会が限られてしまった西、同じく2021年加入の田中、さらには山中、汰木とリーグ戦のプレータイムが上位11以内だった主力も容赦なく契約満了に。出場機会を得られていなかった金子やトーマス、木下も問答無用でバスから降ろされ、冬だけで総勢11名を放出、2名の引退、夏も含めると前年以上の18名の放出と大ナタを振るうこととなりました。余談ですが放出選手のうち汰木と山中は獲得時or契約更新時の年俸査定が高すぎて、フットボール本部からは良い条件を提示できなかったのかなと思っています。これだけの選手を入れ替えた浦和レッズですが、全体としてはトップチーム人件費は減少傾向にあります。2022年のデータがありませんが、汰木・山中が加入した2019年シーズンは32,28億円でしたが、2020年31.19億円、2021年30.89億円と続きます。キャスパー、酒井、ショルツ、江坂といった選手を抱えながらこうした動きになっているのは高額なブラジル人選手の放出に加えて中堅日本人選手の年俸見直しも一因となっているのかもしれません。</p> <p> <strong>バランスは良かったが課題も残った2022シーズンの編成</strong></p> <p> フットボール本部は2022年シーズン前のオフも18名の大放出と同時に大補強を敢行しました。ただこのオフも前年同様日本人選手はコスパ路線を継続し、加入13名のうち新卒が3名、J2からの獲得が3名。J1に定着しているクラブからの補強は鹿島から犬飼、鳥栖から大畑のみでした。目玉となったのは徳島から加入の岩尾と横浜FCからの松尾の獲得でしたが、この2名は降格クラブからの引き抜きとなりました。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025912.png" border="0" title="" width="1200" height="314" loading="lazy" /></p> <p> 補強の狙いを考えるとコストパフォーマンスを意識しつつ放出した選手の穴埋めを行ったと思われるのが松尾、大畑の二人でそれぞれ汰木と山中に対応しそうです。サイドからの得点力の強化とビルドアップに貢献できる左SBという狙いが透けて見えます。またここにきてリカルドのサッカーを経験している岩尾と馬渡の獲得というのも特徴的で、優勝を目指し1年で結果を出さなければいけない中で素早くフィットできる人材を確保したいという意図があったかもしれません。他にはバックラインの強化をかなり意図していたのが伺えます。左利きの知念、そして年齢的にも岩波ともろにかぶる犬飼の獲得はショルツを中心に、よりビルドアップを強化していきたい(リカルドのサッカーを根底から追及したい)という意図が色濃く出ています。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20221227/20221227025942.png" border="0" title="" width="900" height="1200" loading="lazy" /></p> <p> 結果としてスカッドは上記のような形に。2021年シーズンを見たあとだからかもしれませんが、めちゃくちゃすっきりしていてポジションのバランスが取れています。シーズン中の選手入れ替えは行われず、リンセンを獲得したのみでした。利き足のバランスも良く、2020年の雑然としたスカッドと見比べれば一貫した編成の威力がわかります。2列目の破壊力もモーベルグを獲得したことでしっかりケアされています(実際の稼働率は十分とは言えませんでしたが)。</p> <p> 一方で補強と編成の課題が尽きることはなく、2022年シーズンもいくつかの課題がチームの戦いぶりに影響を与えました。</p> <p> 結果論ですが、迷走したのはやはりボランチ、トップ、そしてSBの人選だったかなと思います。ボランチの肝として岩尾を獲得したのはかなりアイコニックで、シーズンを通じて出場分数4位(これは完全に出ずっぱりだった西川、ショルツ、岩波の次で、新加入選手1位)と大黒柱として活躍した岩尾でしたが、彼の加入と活躍によって中盤の底に入るタイプのボランチを持て余してしまったのは編成上の不都合だったかなと思います。柴戸、平野、安居が岩尾に次いで同じ役割を得意にする一方で、ボックストゥボックスで前に出る8番タイプのボランチは敦樹のみ。結果的に敦樹が岩尾に次ぐチーム5位の出場分数を確保したのは敦樹本人にとっては素晴らしい経験になったと思いますが、チームとしては敦樹のコンディションに全体のパフォーマンスやダイナミズムが引っ張られる傾向があり、かといって敦樹の役割を誰も代替できないという困った状況も生まれてしまいました。リカルドがそうしたように形を重視するのであればポジションというくくりではなく役割でスカッドを編成する必要があったし、リカルドに素早くフィットすることを期待して岩尾を獲得したのなら岩尾の後ろに3枚選手が控えている編成はどこかで解消すべきだったような気がします。</p> <p> トップの人選についてはいろいろなところで指摘されている通りで、開幕時点でコンディション不良のキャスパーと木原のみのスカッドは優勝争いを考える上では非常に苦しかったと思います。編成的にはシャルクをトップに考えていたのかもしれませんが、やはり仕事量の多さに対応しきれていない感がありました。そもそもシャルクについてはボールコントロールやプレーの連続性の部分で細かい展開が連続するJリーグに向いていないような印象があり、事前のスカウティングでJリーグ適性を評価しきれていなかった感がありますが。というわけで、前年終盤に江坂の0トップを開発済みだったのと、リンセン獲得時に以下のようなコメントもあったのでリカルドを含めた総合的な判断だったとは思いますが、結果的に2020年から続く「軸となるトップの選手の獲得」という課題を目標年度まで引きずることとなってしまいました。</p> <blockquote> <p>(西野TDに質問です。今季のメンバーリストを見たときに最前線でプレーできる選手の人数が少ないと多くの人が感じていたと思うが、リンセン選手はできれば1月の段階で獲得したかったのか?それとも戦っていくなかで今このタイミングで欲しいということになったのか?)</p> <p>「難しい質問ですね。昨年の夏から追い続けていました。この冬のマーケットで違う選手を獲得するか、この夏にリンセンを獲得するかという難しい決断がありました。結果的にリンセン選手を夏に獲得するということを冬に決断し、本人を含めた交渉を続けてきました」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="ブライアン リンセン 加入会見 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Ftopteamtopics%2F188493%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/188493/">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> このコメント、前年夏の移籍で2022年に勝つための戦力を整えたことと若干矛盾するような気がします。リンセンの他には結局広島に加入したピエロス・ソティリウの名前が出ていましたが、浦和がどちらか選べる状況だったのであればわざわざ夏までリンセンを待つ決断はどうだったのかなと思ってしまいます。合流直後の怪我がなかったとしても夏にリンセンが加入して間に合った感じはなかったですし。単純にソティリウを選ばなかった理由があったんでしょうけど、結果論としてはトップの補強が遅れたことはシーズンを難しくしてしまいました。そもそも幅広く重いタスクをこなせる仕事量の多いトップの選手というのはなかなかいないのですが、それをしっかり確保していくことこそ編成の役目なわけで、この点は後回しというか最後まで課題として残った感があり、それが3年計画の進捗にもろに響いた形になりました。</p> <p> SBについては単純に怪我やコンディション不良で起用できない選手が多かったし、そうした状況を解決するのも監督の技量のうちだと思っているので全てを編成の責任を追及するのは無理がある気もしますが、結果的にはリカルドが2022シーズンの序盤にこだわったSBを前線にあげて前の5枚に組み込むサッカーをやるにあたって適任者を用意しきれなかった感はあります。酒井のプレースタイルは後ろから勢いをつけて上がっていく迫力を活かすのがベストなので最初から前の5枚には組み込めないし、我慢して使うことになった宮本も明らかにシャドーの仕事には困惑していました。馬渡はかなり上手くやっていたと思いますが、馬渡が期待通り稼働できない状況を解決する戦力を保有できていたかと言うとそうではなかったねと。結局リカルドはSHとして決定的な仕事に関われていなかった関根のSBへのコンバートをシーズン後半に摸索していましたが、これこそリカルドは早い段階で前、内側で仕事ができるSBが欲しかった証明になるような気もします。マリノスであれば小池龍太、川崎であれば山根や登里のようなタイプのビルドアップに関わりつつボールが前進した後は前線で前の5枚・6枚を構成できる選手というのが、軸になるトップ、敦樹の競争相手とともにリカルド・レッズに欠けていたピースというのが個人的な感想です。</p> <p> ということで補強についてまとめると、全く動けなかった2019年オフ・2020年夏、大きな入れ替えを行った2020年オフ~2021年オフまで、スカッドが整理できた2022シーズンと分けられると思います。全体をみれば、その時々で仕方のない放出や獲得失敗があったとはいえ、うまく編成を行ったと思います。FWが間に合いませんでしたが2022シーズンの最終的な編成のバランスは悪くなかったですし、なによりスカッドの再編成を進める過程で選手の評価基準を新しくし、コストパフォーマンスを高められたであろうことは特筆されるべきことだと思います。</p> <p> 課題としては、そもそもこのバランスの良いスカッドをさらに高めていくのは今後難しくなるだろうということがまず思いつきます。上手く選手が活躍して海外移籍となり、その穴をさらにポテンシャルの大きな選手で埋めていくことができれば理想ですが、実際にはなかなか放出が難しくなる(=スカッドの流動性が低くなる)んじゃないかというのが今の想像です。まあそもそも浦和はリーグ内の立ち位置からして商売上手にはなれないので、その辺は割り切って満了放出すればよいのかもしれませんが。次に、3年計画の反省を活かすという意味では絶対的に軸となるトップ、特に仕事量を多くこなせる前線の選手を最低2名は確保し続けたいところです。どんなサッカーをするにしても現代サッカーでは需要が高いし、何よりフットボール本部のコンセプトの実現には点を取るだけではない9番が必要になると思います。ここは監督が誰であれかなり気合を入れた方がいいポイントのように思います。あとはポジションというよりはその選手の得意な役割が何か、という視点で編成バランスを整えていくというのが持続的な強化には必要かもしれません。直近ではやはり敦樹の競争相手、ボックストゥボックスをダイナミックにこなせる選手はもう一人必要じゃないかと思います。SBもできればいろいろなタイプを揃えたいところですが、このあたりは監督とのコミュニケーションの中で半年・一年かけて狙いを定めていくことになるのかもしれません。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200823/20200823183823.jpg" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p> 最後に、単純な戦力という意味ではなく、トップチームの選手をひとつのグループとしてみたときに、ベテラン、グループのリーダーを任せられる選手をどう確保し育てていくかという部分はフットボール本部の課題になったのではないかと思います。戦術的なマッチングの悪さから槙野や宇賀神を放出することになったのは理解できますが、ベテランの役割、リーダーシップの部分を西川に一任したのはかなり荷が重かったと思います。GKはやはりFPとは同じ目線になれないし、ピッチの端っこから全員を鼓舞するにも現実的には限界があるはずです。西川の性格的にも熱く引っ張っていくというよりは後ろからしっかり支えていくタイプでしょうし、多くの選手が変わる中で苦しいときにチームを焚きつける役割が足りていなかった印象は否めません。そうした不安もあって2022シーズンは岩尾を獲得したのでしょうけど、本人こそが浦和との融合に非常に悩んでいたというのが現実でしょうし、精神的な部分で優勝を争えるほどのグループができていたかというとできていなかったという結論になると思います。この点はおそらく今後も簡単には解消されないはずなので、現時点で在籍期間の長いFPである関根や柴戸に期待されていくのかもしれませんが、そういえば圧倒的な経験と浦和レッズへの熱い思いを併せ持ちチームを焚きつけるプレーと基準の高さを示せる選手と「必ず帰る」と約束したような………</p> <h5 id="53--持続的な強化のためのインフラ整備はできていたか">5.3    持続的な強化のためのインフラ整備はできていたか?</h5> <p> 「持続的な強化のためのインフラ整備」というとなんのこっちゃという感じですが、要は浦和レッズの様々な取り組みが属人的にならないように、必要なシステムや機能をクラブに導入できたか?ということです。これは、「3年計画」に留まらない浦和レッズの強化という意味ではこの点は凄く重要です。例えば今の土田SD・西野TD体制がいつか終わるときに、後任の人がまた全然違う考え方を持ち込むのはどうかと思うし、もっと言えば忌まわしきナントカ修n(ただし、nは任意の漢数字とする)みたいな人がきて全部ぶっ壊されたら最悪です。まあそんな人が要職についてしまったらインフラ整備をしたところで止められないんですけど。まあとにかく、「3年計画」の期間中にどんなインフラ整備が行われたかについてみていきます。</p> <p> <strong>Wyscout Scouting Arena</strong></p> <blockquote> <p> 浦和レッズのテクニカルディレクター、西野努氏によれば、以前は才能ある選手を見つける方法として、主にエージェントに依存する傾向にありました。 「エージェントは海外のサッカー選手との契約に関して非常に強みを持っていますが、エージェント自身のビジネス上の利益を追求しています。」と西野氏は語ります。 「クラブとして、オファーのあった選手を私たち自身で評価し、その選手が私たちのチームを強化してくれるのかを確かめ、そしてデータで裏付けた最終決定を行いたいのです</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="ケーススタディ:浦和レッズのゲームチェンジャー:パレットスカウト" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fjp.hudl.com%2Fja%2Fcase-study%2Furawa-reds" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://jp.hudl.com/ja/case-study/urawa-reds">jp.hudl.com</a></cite></p> </blockquote> <p> まずはWyscout Scouting Arena。世界中の試合や選手の映像を見られるサービスとしてWyscoutはサッカー界では結構有名ですが、Wyscoutを提供するHadlのクラウドサービスですね。要はWyscoutの選手データをサービス側でパッケージして提供してくれて、それをスカウティングチームで共有してクラブ独自に評価できますよという話だと思います。浦和ファン的に面白いのは西野TDが「以前はエージェントに依存する傾向にあった」とぶっちゃけていることですが、もう一つ面白いのは以下の部分です。</p> <blockquote> <p> 「まず、ポジションごとに浦和レッズの選手プロファイルを設定しました。次に、そのプロファイルに基づいてスカウトスタッフがビデオを視聴し、最終的にその情報はクラウドを介して簡単に共有されるのです。現場へ視察に行った後にも、このスカウティングエリアにレポートを作成しています。」と西野氏は説明しました。「Wyscout Scouting Areaはコミュニケーションツールでもあり、選手についての考えを共有し、それをビデオで裏付けて、チーム内でディスカッションを始めることができます。」</p> </blockquote> <p> ここでいう「浦和レッズの選手プロファイル」というのは要するに「浦和レッズ的にはこのポジションならこういう選手を評価したい」ということでしょうね。もっと別の言葉で言うなら「浦和レッズとしてはこのポジションはこういうことができる選手を集めたい/探したい」になるでしょうか。このあたりのプロファイリングを監督に依存し、選手探し、獲得交渉を代理人に依存していたのが以前の浦和の姿だと思うと、わりとびっくりしますね。そりゃ「クラブの主体性」がキーワードになるよなと。それでも選手が獲得できていたし、良い選手も獲れていたというのがまた怖いところですが。ともかくこのようにしてクラブが選手選考の基準を持ち、それをもとに選手の情報を得るツールを手に入れ、スカウティングチームで情報を共有しながら選手発掘・獲得を進められるようになったというのが重要なポイントです。インフラがあればそれでいいわけではないですが、こうしたインフラはしっかり運用・維持できていれば「高く評価したが実際はハマらなかった選手」のデータも集まって将来の教訓になるでしょうし、せっかく導入したなら長く使ってみてほしいところです。</p> <p> ちなみに、ファンの立場でもこの「浦和レッズの選手プロファイル」を持てていればクラブがどんな選手を狙うのかは結構推測できます。探すものがわかっていればそれっぽいものを見つけられる、という言い方でもいいかもしれません。まあもちろん監督が変われば多少は探すべきものも変わるし、もしくはその時の編成にも影響されるでしょうし、クラブとしてもいろいろと経験を積み上げて「プロファイル」自体がアップデートされていくでしょうから、完璧に追いかけるというのは難しいのですけど、やってみると面白いのでお勧めです。</p> <p> <strong>TwentyFirstGroup</strong></p> <blockquote> <p> Working closely with the club’s technical director, we built a model to capture the club’s playing style requirements so they could assess target players and head coach candidates.</p> <p>(クラブのテクニカルディレクターと緊密に連携し、クラブのプレースタイルの要件を把握するモデルを構築し、ターゲットとなる選手やヘッドコーチ候補を評価できるようにしました。)</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="Urawa Red Diamonds Data-driven decision-making" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.twentyfirstgroup.com%2Fportfolio-item%2Furawa-red-diamondsdata-driven-decision-making%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.twentyfirstgroup.com/portfolio-item/urawa-red-diamondsdata-driven-decision-making/">www.twentyfirstgroup.com</a></cite></p> </blockquote> <p> こちらは選手や監督のパフォーマンス評価にデータ活用をしようという話ですね。このTFGというのはいわゆるコンサルで、サッカーならサッカー、他のスポーツなら他のスポーツに関連するビッグデータを持っていて、それを元にデータをごにょごにょしたり評価モデルを作成したりいろいろやってくれるみたいです。Wyscout Scouting Arenaでは実際のプレー映像や生のプレーデータを取得・共有できるようになっていましたが、こちらはより定量的な評価を行うツールとして使っている感じでしょうか。あまり多くの説明は書いていないのですが、気になるのは以下の部分です。</p> <blockquote> <p>IMPACT<br />Following our analysis on the club’s shortlist of candidates, Urawa Reds hired Ricardo Rodriguez as head coach in December 2020. They also followed our advice on which weaker-performing international players they should release, in order to improve results for the 2021 season.</p> <p>(インパクト<br />浦和レッズは、候補者リストの分析に基づき、2020年12月にリカルド・ロドリゲス氏をヘッドコーチとして採用しました。また、2021年シーズンに向けて成績を向上させるために、成績の悪い外国人選手を放出すべきとのアドバイスも参考にしました。)</p> </blockquote> <p> リカルド招聘の際にもアドバイスを活用していたんですね。おそらくいろいろと候補がいる中で、当時の浦和の課題感に対する得意分野や戦術の傾向がマッチするというアドバイスが出たんでしょうね。ただ、これまでに議論してきた通り、僕は個人的にはリカルド招聘はフットボール本部のコンセプトを実現するのにベストな選択肢だったとは思いません。結局フットボールは足し算ではないということなのですが、このあたりは「データや評価モデルをどのように活かしていくか」という意味で今後積みあがればいいのかなと思います。最終的には全部できるチームが最強だし、予算さえあればそういう方向で監督を選ぶことになるはずなので、結局は指導力とか決断力とか、データ化しにくい部分で決めることになりそうな気もしますが。そもそも編成・コーチング体制・選手の責任をどのように分解して「監督のパフォーマンス」というのを定量化するんでしょうね。これには単純に興味があります。</p> <p> ちなみに、選手評価にはこうした一定の評価モデルを構築しておくやり方はすごく役立つと思います。吐き出されたものに納得感があって、評価モデルを意思決定に反映させる手続きが組織の中にインフラとして構築されていれば、極論、担当者が変わっても一定の質が保たれるわけなので、持続性と言う意味では強力ですね。</p> <p> <strong>Transfer Room</strong></p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="Football's Transfer Marketplace | TransferRoom" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.transferroom.com%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.transferroom.com/">www.transferroom.com</a></cite></p> <p> こちらは西野TDが『Jリーグ新戦術レポート2021』で活用していることを明かしていたサービスで、クローズドなクラブ間ネットワークみたいです。売り出したい選手のプロファイルを作ってプラットフォームに流すと、登録しているクラブのダイレクターが直接それを確認してそのまま直接話が出来るということですかね。登録しているクラブが全て明かされているわけではないですが、メガクラブから各国の有力チームが結構揃っている印象です。このサービスは英語ベースなので日本のクラブには結構ハードルが高そうですが、地理的にも人脈的にも欧州・アフリカ圏とのコネクションが限られてしまう日本のクラブにこそ必要なものという気もします。実際、コネクションづくりを目的にしたオンライン会合もあるようで、浦和もこうしたコネクション作りがこのサービスを使っている目的の一つのような気がします。フットボール本部体制以降欧州からの獲得にこだわっている浦和レッズさんですが、このあたりの欧州コネクションは将来的に結構武器になりそうな気がします。観客者数で言えばすでに欧州中堅国のリーグより規模が大きくなってきていますし、少子化と言えど人口規模から言えば成長余地もそこそこあります。徐々に競技レベルへの偏見が取り払われれば欧州中堅レベルの選手は今後も結構流れてきそうですし、しばらくはJリーグは欧州から監督を輸入せざるを得なくなるはずなので、監督との親和性という意味でも欧州の選手を狙っていくのは理にかなっている気がします。</p> <p> <strong>欧州サッカー界とのネットワーク強化</strong></p> <p> 最後はアナログですが、欧州のプロスカウトとのネットワーキングも意識して構築していると『Jリーグ新戦術レポート2021』のインタビューで明かされていました。主に浦和OBを軸にネットワークを広げているようですが、これもTransfer Roomと同じで欧州とのネットワーク構築が肝なんだと思います。こうやってみてみるとフットボール本部はマネジメント面で欧州意識が非常に強くなったと言えそうです。この流れが面白いのは今獲得している欧州出身選手が今後浦和レッズのアセットになってくれるかもしれないということですね。どの選手もいつかはクラブを離れるわけですが、正式にクラブとの繋がりがなくなったとしてもスカウティング面で情報をくれるとか、そういうゆるい繋がりを維持できていると今よりもさらに安定して質の高い選手を確保できそうですし、ミスマッチングも予防できそうです。そうして浦和に良い感情を抱いてくれるOBを欧州にどんどんばら撒いて行けば、それがまた将来浦和に返ってくる…そんな感じで積み重なると良いのですが。</p> <p> 海外とのネットワーキングと言えば、フットボール本部の創設と「3年計画」に先駆けて、2019年にフェイエノールトと戦略的パートナーシップを締結しており、キャスパー獲得の際にメディカルチェックをフェイエノールトの施設で行ったことが話題になりましたが、各国の中堅~上位クラブとのこうしたパートナーシップも今後増えていくのではないかと思います。実際に2022シーズンは長谷部繋がりでフランクフルトとも同様にパートナーシップを締結しましたし、徐々にこうした関係を強めていくことにも期待したいところです。</p> <blockquote> <p>【マルクス クレッシェ スポーツ執行役】</p> <p>「今回、私たちが浦和レッズとパートナーシップを結んでいますが、スポーツ面だけではなく、さらにサッカーという科学の面、指導という科学の面に関しても、いろいろな情報交換ができればと思っています。関心があるのは、それぞれのチームにとってどのように若い選手を育成しているかということがあると思います。レッズのみなさんがどうやって選手を育てているか、また私たちがどうやって選手を育てているか、お互いに情報交換ができればと思います。さらにレッズとの関わりを通して、ぜひ日本市場を見てみたいと思っています。また、日本の若い選手たち、タレントのある選手たちがたくさんいますが、そういった選手たちが将来ドイツに渡ってプレーしてくれるようになってくれたらと思います。選手に限らず、監督やコーチとの情報交換、また経験の交換という形もあったらいいと思います。お互いにとって利益になる形でいろいろなことができればと思っています。また、サッカーというスポーツはいろいろな形で発展していきますが、それに対していろいろなことをこのパートナーシップを通してできればと思っています。私たちにとって非常に貴重なパートナーシップを結べたと思いますし、長い期間、続いていくことを願っています」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="フランクフルトとのパートナーシップ締結会見に立花洋一代表、西川周作が出席 | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawa-reds.co.jp%2Fclubinfo%2F193592" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawa-reds.co.jp/clubinfo/193592">www.urawa-reds.co.jp</a></cite></p> </blockquote> <p> だらだらと振り返りましたが、まとめます。まずコーチング体制が適切だったか?についてですが、これは今後に向けて改善の余地があるし、改善されていくと思います。少なくとも監督選びの迷走感はスコルジャ招聘によって一定の解が出るはずです。個人的には、当初の「速く・激しく・外連味なく」路線に回帰していくのではないかと予想しています。ただそもそものコンセプトにも若干の修正が入りそうな気もします。いずれにせよ監督選びについては不本意ながらフットボール本部にノウハウというか教訓が積みあがったと言えるので、それをどう活かすかが重要なのではないかと。加えて、コーチングスタッフの強化はぜひお願いしたいポイントで期待しています。浦和レッズらしい選手を内製的に育てていけるのが理想ですね。</p> <p> 補強・放出といった編成オペレーションについては、いくつかの明確かつずっと考えていかなければいけない課題はあるものの、概ね良いオペレーションが出来たと思います。特に選手の評価軸が改善され、スカッドのコストパフォーマンスが向上したと言える部分は大きかったかなと思います。とはいえ補強の打率自体が7割8割になっていくのは難しく、また監督や他選手とのシナジーもあることなので、今後もじっくり成果を見ていく必要があるのかなと思います。加えてここ数年はかなりテクニカルにスカッド編成を行ってきた半面、選手間のリーダーシップを誰に任せるかというウェットな部分が弱まっている感じもするので、それをどう補っていくかも重要な課題になりそうです。<br /> 最後に強化体制を持続的なものにするためのインフラ導入ですが、これは非常に精力的に取り組んでいて、組織の仕事のやり方自体が大きく変わったのだろうと想像できます。こうした取り組みがうまく積みあがることが前提ですが、フットボール本部がこうした正のスパイラルを回していけるようになれば、それ自体がフットボール本部体制を守ることになるし、そうしてクラブが持続的な強化を続けていくことを期待しています。</p> <p> </p> <p>続く。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182412" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【戦略編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182412">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【戦略編】 hatenablog://entry/4207112889948519036 2022-12-27T18:24:12+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 6 【戦略編】 いよいよ振り返りも最終局面です。フットボール本部を組織したことも含めて、「3年計画」を含む浦和レッズの新たな取り組みの戦略性についてみて行こうと思います。 6.1 そもそもサッカーの定義が合っていたか? これまで主に現場での取り組みについてみてきましたが、最後にそもそも論をしていこうと思います。「3年計画」の取り組みにあたって大事なことはいろいろありますが、アイコニックな部分は「浦和のサッカー」を定義したことだと思います。西野TDが各所で発言している通り、「自分たちの目指すサッカー」をクラブが主体的に定義したことで、浦和レッズの強化活動は根本的に変わりました。強くなるための活動… <h4 id="6--戦略編">6    【戦略編】</h4> <p>いよいよ振り返りも最終局面です。フットボール本部を組織したことも含めて、「3年計画」を含む浦和レッズの新たな取り組みの戦略性についてみて行こうと思います。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200801/20200801182435.jpg" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <h5 id="61--そもそもサッカーの定義が合っていたか">6.1    そもそもサッカーの定義が合っていたか?</h5> <p> これまで主に現場での取り組みについてみてきましたが、最後にそもそも論をしていこうと思います。「3年計画」の取り組みにあたって大事なことはいろいろありますが、アイコニックな部分は「浦和のサッカー」を定義したことだと思います。西野TDが各所で発言している通り、「自分たちの目指すサッカー」をクラブが主体的に定義したことで、浦和レッズの強化活動は根本的に変わりました。強くなるための活動の主体がクラブであると決まれば、監督が替わると目指すべき理想像自体が変わり、それによってクラブの選択ひとつひとつが変わり、体制や時代を超えて一貫した取り組みができず、長期的に競争力を積み上げられないことで相対的にクラブが弱くなるというこれまで浦和に蔓延っていた悪循環から抜け出せる(はずな)わけです。僕はこの点が「3年計画」の成否や結果よりも大事だと思っていて、だからこそこれまでの議論も、結果や見た目の良し悪しはあるとしても、取り組んでいるサッカーが「浦和のサッカー」という理想像に対してどうか?という視点を意識してきました。</p> <p> ですがそもそも、「浦和のサッカー」に説得力があるのか?という部分も検証されるべきという意見にも一理あります。「お前たちがそのサッカーを目指すのはわかったけど、俺たちはそれに同意していないが?」という人もいて当然だと思います。簡単に言えば「浦和のサッカー」が目指すところは前向きな守備からの素早い切り替えによってレッズがオープンスペースを活用して攻められる状況を作り出し、スピード感をもって相手ゴールに迫るサッカーと言えると思います。これを僕はネオ「速く、激しく、外連味なく」だと理解していますが、これは大雑把に言えば、この考え方や理想像は2007年までの浦和レッズの歴史の流れを汲んだものだろうなと思うからです。これまで唯一のリーグ優勝を成し遂げた2006年の浦和レッズと、伝統的にドリブル勝負や身体のぶつけ合いで盛り上がると言われている浦和レッズサポーターの志向に沿った考え方です。ただ一方で、2008年以降の浦和はいろいろな失敗や、監督のカラーによる「ブレ」はあれど、基本的にはボール保持を通じた試合支配を目指し、それを「攻撃的」なサッカーだと呼んでいました。基本的にはこの期間に長期的に目指すべきサッカーの定義なく、戦い方を監督に丸投げして監督をフルサポートすることで「迷走」したのが今のフットボール本部体制に繋がっているわけですが、それでもそのやり方で一定の結果を出したのも事実で、何より悩ましいのは、2008年以降にファンになり、2007年以前よりも2008年以降、特にミシャの時代の浦和レッズの方に親近感があるサポーターも無視できないほどには多くいるということです。正直、そういった人たちにとっては、いくら「前向きに」という枕詞を付けたとしても、守備から入っていくという根本的な出発点にあまり同意できないのではないかと思います。自陣でのボール支配で相手を引き込み、機能的なビルドアップ、敵陣でのコンビネーションからの美しいゴールを楽しんでいた人たちにとって、ネオ「速く、激しく、外連味なく」がどこまで受け入れられるのか?昨今のポジショナルプレーの流行りを踏まえても、必死にプレスに取り組んで守備からカウンターを目指したサッカー展開したとして、「これが浦和だ!」と感動してもらえるのか?正直、誰も断定的に肯定することはできないのではないでしょうか。</p> <p> さらに言えば、「3年計画」の中の3年間でも大槻体制→リカルド体制のブレを許容してしまったことも問題をややこしくしそうです。どう考えてもチームの完成度が高かったのはリカルドのほうでした。ですがリカルドの理想はリスクを回避し意図的に拮抗を作り出すことを「ゲームの支配」とする点でネオ「速く、激しく、外連味なく」とは相容れません。【現場編】で見た通り、リカルドは攻撃(ボール保持)を「長く」することでゲームの安定を図り、ゲームをコントロールすることを目指しましたが、フットボール本部が現時点で掲げているコンセプトは攻撃を「多く」することに主眼を置いていてるように読めます。この「長く」することと「多く」することの違いは、「攻撃的」という言葉でまとめるとわかりにくいですが本質的には真逆であり、サッカーのスタイルを考える上では凄く重要なのかなと思います。もちろんリカルド自身はできる範囲で浦和的なサッカーを表現しようとしたとは思いますが、根本的な価値観の違いがあったのは明らかです。こうした混ざりきらない部分を認知していたかどうかは別として、応援するファン・サポーターが大槻体制とリカルド体制を見て、どちらに魅力を感じるのか。記憶が新しい分、もしかしたらこちらの方が重要かもしれません。要は、これからもクラブは「リカルドのサッカーの方が良いサッカーだったんじゃないの?」という声と戦うことになるのだと思います。</p> <p> では、フットボール本部は「浦和のサッカー」を書き換えるべきでしょうか?実際のところ、フットボール本部は一度「浦和のサッカー」の定義を口頭で修正しています。当初は土田SDが「攻撃はとにかくスピードです」と言い切っていたものを、リカルド就任時の戸苅事業部長のコメントでは「ポゼッションとのハイブリット」という風に説明し直していました。これはおそらくリカルド就任に合わせて、当時の課題感に対処するため、リカルド招聘との整合を取るためにこういった言い方になったのだと思いますが、これは個人的には悪手だったと思います。というか、表現を修正したことよりも、その説明があまりなかったことと、口頭で修正したにも関わらず文言自体は残したことが良くなかったと考えています。もし口頭で説明の仕方を変えるだけの危機感があり、その線で監督を招聘したのなら、それも含めて説明して修正すればよかったと思います。個人的には「攻撃はとにかくスピードです」を実現するための努力(編成や監督に与える時間)が十分だったのかという思いもありますが、それはいったん置いておいて、「攻撃はとにかくスピードです」では結構難しいかも…と思うなら、そう説明して欲しかったです。説明して、最初の理想像は少し尖り過ぎていたと思い至ったので思い切って修正します!と堂々と言えていれば、多少の批判があってもそれはそれで理解されたと思うし、逆にそうしなかったことで、やっていることに本音と建前が出来てしまったように感じます。実際、リカルドは1年目、2年目と進むにつれて自分の理想に近いチームと戦い方を整備していきました。これはリカルドの立場からすれば当然のことです。それはいいとして、リカルドを後押しする立場のフットボール本部は、自分のやりたいことと真逆に突き進む人を応援しなければならないジレンマを抱えることになります。結局リカルドは期待した通りの結果を出すことができず、フットボール本部はリカルドを続投させないという形でこのジレンマから手を引いたわけですが、逆にリカルドが結果を出していたらフットボール本部はリカルドとの旅を続けることにしたのかどうかには少し興味があります。何が言いたいかというと、こうした苦い経験から学ぶことがあるとすれば、「浦和のサッカー」の定義の仕方はもう少し考えようがあるのではないかということです。</p> <p> 浦和レッズさんが「3年計画」を策定する少し前にJリーグ界隈でコンセプトの設定・定義が重要であるという話が盛り上がったことがありました。おそらくポジショナルプレーが広く理解され始めたころだったと思います。で、このコンセプトというのはチームが選択すべきプレーとその選び方に原則(基本的な優先順位)を示し、パッケージ化したものと言えると思います。例えばボールを奪えたらとりあえず前に蹴るのか、後ろに戻して保持しようとするのか、選択肢は選手にあるけれど、うちのチームとしては前に蹴ることを優先しよう、そしてそれに合わせて、他の選手はこういう動きを意識しよう、というような具合です。で、フットボール本部が「浦和のサッカー」と言っているものはつまりは浦和レッズのコンセプトを設定しようという試みだと思いますが、重要なのは、このコンセプトにいかに説得力を持たせるか、という部分です。コンセプトは選択の原則を示すものですが、「そもそもなぜその選択を優先すべきなのか?」という部分がなければ、コンセプト自体が否定されてしまいます。では、何を根拠にコンセプトを設定すればいいのでしょうか。土田SDはおそらく、2007年までの浦和レッズ、特に黄金期のテーゼである「速く、激しく、外連味なく」への回帰への情念(もしかしたらそうした時代へのノスタルジー)をベースとしてこうしたコンセプトを設定したのだと思います。一方で、これまで見てきたとおり、実は今の浦和ファンはそれほどあの時代を懐古していないのではないか?していたとしても、土田SDと同じノスタルジーとモチベーションを持っているわけではないのではないか?という疑問は拭えません。加えて言えば、リカルドが赤裸々にも明かしたように、フットボール本部内部でも土田SDと西野TDで好みが違うみたいでした。まあ、土田SDと西野TDは(その時々で実権をどちらが握っているかという話はあれど)上司と部下の関係ですし、プロとしてやっていますから個人の志向があってもフットボール本部として一致団結していればいいのですが、ファンはそうはいきません。特に負けているとき、上手くいかなかったときに、監督や選手の実力がやり玉にあがるのであればまだいいですが、設定した「コンセプト」自体への疑い・反発が出てきてしまうと致命的です。継続的な取り組みの軸そのものが疑われるということですから、ここがブレたらグダグダです。</p> <p> そうすると、「コンセプト」の根拠には、個人の情熱ではなく、ファンやステークホルダー、地域環境も含めたクラブとクラブの周辺全体、一言で言うと「埼スタの感覚」とでも言うべきものを考慮しなくてはなりません。感覚とは何かというと、僕は好みだと思います。雑駁に言えば、埼スタが好むものはなにか、ということになると思います。ただ、「何が好きですか?」という問いかけをしても意外と「好き」の輪郭は見付けられないので、例えば僕は、「嫌い」なものをみつけて一つ一つ排除して、残ったものを大事にすればいいのではないかと思います。例えば(結局これは僕の感想になってしまいますが)、ここ2年間リカルドの試合を見ていて、狙い通りの拮抗状態を作り出したものの、試合終盤になっても勝つためのリスクを負わない、試合が動かないタイプのゲームはあまり好きではないと気づきました。引き分けるくらいなら負けてもいいとは言いませんけど、試合を動かさないタイプの選択を続けるとせっかくの埼スタが冷めていく感じがします。やっぱり熱狂・熱量が埼スタと浦和レッズのアイデンティティですから、だったらリスクをかけてでも試合を動かそうよ、と思うことは多々ありました。</p> <p> もう少し具体的なプレーで言えば、やはり1on1の勝負を避けるのは同じく好まれない選択肢だと思います。行けと。20年以上かけて育成された勝負おじさんの要求は高いんです。他にはなんでしょうね。マイボールの時間が短いのもあまり好まれない気がします。ただGKを使ったビルドアップにこだわるのもあまり良しとされないかも。プレッシングに行かないことに腹を立てるというのはあまり聞いたことがない気がするので、実はプレッシングはあまり重要ではないかもしれません。逆に、トランジションが遅いのは結構ストレスになってそうです。こんな感じで、何が嫌いなのかを見つけていくと、「埼スタの感覚」の輪郭が浮かび上がってくるのではないかと思います。これをうまく言語化して、これを根拠に「浦和のサッカー」、つまり浦和レッズのコンセプトを組みなおすという作業に取り組んでもいいのではないでしょうか。雑な案かもしれませんが、「攻撃はとにかくスピード」ではなく、「ハイブリットなスタイル」でもなく、「強力なドリブラーによる1on1をたくさん作り出す」が浦和のコンセプトでもいいんじゃないでしょうか。その作り出し方は監督によってまちまちでしょうけど、こういうコンセプトなら素直にドリブラーにお金をかけるというのもはっきりします。その他には「トランジションを多発させ切り替えの速度でゲームを支配する」とか、もっとどストレートに、「浦和の責任」の次に「埼スタを盛り上げる」とか入れてもいいかもしれません。これは近いことがオリジナルの定義にも入ってますが。</p> <p> まあとにかく、「そもそもサッカーの定義が合っていたか?」という論点についてはもう少し改善をしてもいいのではないかという気がしています。そしてそのポイントは「埼スタの感覚」の輪郭を抑えて、それを根拠にコンセプトを構築していくことにあるのではないかと感じた3年間でした。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200216/20200216134357.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="62--適切な組織体制だったか">6.2    適切な組織体制だったか?</h5> <p> <strong>フットボール本部体制には自信を持っていいのでは</strong></p> <p> 戦略面の振り返りなので、組織体制とは、クラブの組織体制のことを指しています。トップチームの体制についてではないことにご留意ください。で、クラブの組織体制というとまずはフットボール本部体制そのものの評価になります。言わずもがな、フットボール本部体制は「3年計画」の取り組みの主体・主役です。彼らがいなければ「3年計画」は成り立たないどころか、始まりもしませんでした。なので、良し悪しの前にこの体制は大前提として不可欠なものでした。加えて、「3年計画」の失敗の後もフットボール本部体制が維持され、キーパーソンである土田SD・西野TDともにクラブに残って仕事を続けてくれそうなことは素晴らしいと思います。「3年計画」そのものよりもフットボール本部体制が維持され、失敗を分析し、反省を活かし、次のチャレンジに繋がることが本当に大事なことですから、体制の維持によってこの部分が担保されたことは本当に喜ばしいし、これだけでフットボール本部体制は半分成功です。もちろん、成功しなかったもう半分はフットボール面での結果が足りなかったことになるのですが、今のところ浦和レッズさんに関してフットボール本部よりも期待できるチャレンジャー、取り組みの主役は見つかりません。なので現時点では、チームの崩壊・クラブの降格危機のような事態を招かない限り、現在のフットボール本部を維持し継続的にチャレンジを積み上げてもらうのがクラブにとっての最善手であると思います。その意味での信任はファンからもされていると自信を持って良いと思います。</p> <p> では一方で、この組織体制を維持していればOKかと言うと、そうはならないのではないかと思います。具体的に言えば2点、後継者問題と持続的な強化を可能にする仕掛けについて議論したいと思います。</p> <p> 後継者問題は比較的わかりやすいと思います。人間いつかは組織を去るわけですから、後継者が必要です。外から見ているとわからなかったのですが、実際にフットボール本部に何人のスタッフがいるんでしょうか。スカウトチームは西野TDの下に新卒担当2名、国内のプロ選手担当が3名のチームらしいのですが、その中に、後のSD・TD候補となる人がいるのでしょうか。個人的には、特にSDには浦和を知っている人で繋いで欲しいと思っています。これまでに議論してきた通り、浦和のコンセプトの根拠・背景として「埼スタの感覚」がふさわしいと考えると、この「埼スタの感覚」を言語・非言語のどちらでも理解できる人が必要だと思います。そのうえで、サポーターやステークホルダーに対してトップチームの長期的な取り組みの責任者(顔)としてコミュニケーションができる人がふさわしいと思います。そのためには当然プロとしての経験や実績・強化担当者としての経験も必要だと思います。そう考えると、浦和レッズOBでふさわしい人をフットボール本部の中で育成していくべきではないかと思います。感覚、名前、顔、経験、すべてを揃えた人材はその辺から勝手に生えてはきません。野生のSDはいないんです。絶対に自分たちで仕込んだ方が良いと思います。そういう意味で、現在のフットボール本部本部体制の中に将来のSD候補を仕込んで欲しいというのが僕の意見です。</p> <p> 一方で、TDはトップチーム強化に関する技術的な部分を統括しSDを補佐する役割ですから、専門的な勉強をされた方を外部から招聘するというのも面白いと思います。なんならJ1のライバルクラブから引っ張ってもいいくらいです。現実的には次期SDとなる人がTDの椅子に座るのかもしれませんが、浦和を知っていて顔になれる人と専門家といった役割分担も面白いのかなと思います。正直、SDはその時が来れば自ら役を降りることで責任を取る必要があるポジションだと思います。それはシーズンの成績・結果もそうですが、編成に大失敗したり、長期的な取り組みが立ち行かなくなったり、浦和のコンセプトが否定されたりするときです。それはいつ来るかわからないので、その時に適切な人が後を継げるように、早いうちから手元で育てておくべきだし、そこまで織り込んでこそ長期的かつ持続的な強化に資すると言えるのではないかと思います。</p> <p> <strong>現状の19歳以降の育成には不便が多い</strong></p> <p> 持続的な強化を可能にする仕掛けについては、ちょっと夢を語るようなところがあるのですが、個人的にはトップチーム強化を目的としたセカンド(U-23)チームの設立・運営に思い切って取り組んで欲しいと考えています。<br /> 今の日本サッカーには間違いなく18歳~23歳の育成機能が欠けています。浦和も伝統的に新卒選手の育成が下手で、高卒選手の育成なんかほぼ諦めているのではないかと思うことすらありますが、これは他のJ1クラブでも似たり寄ったりの状況だと思います。浦和の場合ユース上がりの選手ですら満足に育成できておらず、20代前半で海外に引っ張られるほどのポテンシャルを持った選手がモノになったくらい(育成したというより使ってたら勝手に育ったというべきかも)ですが、個人的にはそもそもJ1の舞台はもはやユースを卒業したばかりの18歳の「こども」が簡単に適応できるレベルではなく、適切にJ1と育成年代の溝を繋いで経験を積ませてあげなければ選手が育たないという状況になっていると思います。</p> <p> こういう話になるとまず「多少我慢して育成のために選手を使わないと伸びないのだから、そうしないのが悪い」という話が出てきますが、J1を戦うトップチームは「結果を出す場」ですから、育成のために若手を使うというのは優先順位の低い選択肢です。たとえ育成のため、経験のためという理由で起用するにしても、その分プレータイムを失う選手たちが納得するような競争を経ていなければ、育成が果たされても分厚い戦力を維持することはできなくなります。そんな余裕はたいていのクラブではありません。そもそもビッグネームを獲得できないので若手を使いながら戦うしかないクラブがうまく選手を育てて売っているのが育成型クラブとして話題になりますが、これもそうするしかないからやっているだけで、より高い結果を求めるのがクラブの本来の姿なはずです。</p> <p> 加えて、浦和の場合はフットボール本部の抱える構造的ジレンマについても考える必要があります。物事に絶対はないにしろ、フットボール本部主導のコンセプトに沿った編成・補強が上手くいけばいくほど、浦和レッズは若手の使いどころがなくなるはずです。当然、23歳までに海外に引き抜かれるような逸材については例外でしょうが、そういった選手は何もなくとも勝手に育っていきます。ここでいうのは、例えば手塩にかけてやっとプロにチャレンジできそうなユース卒の有望選手や、高卒・大卒で獲得した期待のルーキーレベルの話です。フットボール本部は自らが策定したコンセプトの実現に最も期待できる監督を連れてくるので、基本的にフットボール本部と監督の選手の好みは合うはずで、補強の打率はこの体制で経験を積めば積むほど良くなっていくはずです。フットボール本部は継続的な優勝争いができるスカッドの実現のため選手を補強するでしょうから、若手が入り込めるようなスカッドの隙間はどんどんなくなっていきます。こうなると、いくら有望な選手でも、チームの指導を十分に受けておらずやり方が身体に染みついていない、実戦経験が足りていない選手はなかなかチャンスに恵まれず、生え抜き選手が育ちません。するとどうなるかというと、有能なフットボール本部はこうした選手を放出し、さらに強いスカッドを求めて代わりの選手を連れてきます。要は、「浦和の責任」を表現し強く愛されるチームを実現するためのフットボール本部体制は現状、そうした責任概念を最も理解できているはずの生え抜き選手に非常に厳しい体制と言えます。それなら、下部リーグで浦和レッズのコンセプトをみっちり叩き込まれて実戦経験も積んだ選手の方が可能性はありそうです。</p> <p> ではどうするかを考えると、現在のところレンタル移籍を活用することと大学に進学させ育った選手を回収することが主な対策になっています。なぜこれらの手法が持続的でないのか、なぜわざわざセカンドチームを作らなければならないのか、そのポイントは育成の主体性です。</p> <p> レンタルにしろ大学進学にしろ、クラブとしては一定期間選手の育成・指導を外部に委任することになります。ここに持続性がありません。基本的には保有元のクラブはレンタル先を自由に選べない(需要のある選手にしかオファーが来ない)ので、この選手にはこういった指導をしたいと思ってもその通りの移籍先がなければそれはかないません。外部に出せば、指導どころか起用法すら指定できません。</p> <p> 浦和レッズで言えば矢島慎也が岡山でボランチを任されてプレータイムを確保しましたが、浦和にとって矢島はトップ下で勝負させたかった選手でしょう。当時のレッズには柏木と阿部がいましたから、外でボランチをちょっと覚えてきても勝負になりません。実際、トップ下で何度か起用されたものの上手くいかなかった矢島は「環境を変えたい」と言い残してどこかに移籍していきました。矢島はその後の所属チームでIHとしてしばらく活躍していましたし、矢島にとっては岡山での経験はかけがえのない素晴らしいものだったと思いますが、それがレッズのためになったのでしょうか。</p> <p> この例は極端かもしれませんが、レンタル移籍が意外と不自由なものであることはもっと認識されるべきだと思います。レンタル移籍先での指導方法、起用法、日々の体調、筋力の状態、練習環境、メディカルのレベル、先輩・後輩、生活環境、どれも指定できません。満足にモニタリングもできないと思います。知らない土地で一人戦ってくることでタフになる?その通りですが、それが第一かつほぼ唯一の選択肢でいいのでしょうか?浦和はこの5年間で7人のユース卒選手(直輝と岡本を含んでいます)を完全移籍・契約満了で放出していますが、全ての選手がレンタルを一度(一年)以上経験していました。それどころか、浦和が保有していた期間全てでレンタルされていた井澤のような例すらあります。そうしてレンタル移籍をこれ以上ないほど活用して、そこでポジションを取っていた選手もいて、それでも戻して使えないのは、レンタル「だけ」で育成することの難しさ・現実味の無さを示してはいないでしょうか。レンタルがダメなのではなく、若手のレンタルに頼るのはおかしいのではないでしょうか。全クラブの統計はとれませんが、レンタル移籍を活用して若手を育成し、しっかり自クラブに戻してレギュラーとして使えた例は、全体のどのくらいの割合なんでしょうか。</p> <p> こうしたレンタル移籍の不便さがある中で、浦和を含めたJクラブが18歳~23歳の育成において大きく期待しているのは大学サッカーでしょう。浦和で言えば宇賀神、敦樹、松尾も直接ではないですが大学サッカーにうまく育ててもらって浦和に戻ってきた選手の一人です。浦和に限らず近年のリーグ全体での大卒選手の活躍を見ても、現在のところ大学サッカーに育ててもらうのがこの世代の育成において最もまともな方法だと思います。</p> <p> では、大学サッカーに育成を任せることの何がいけないのでしょうか?基本的なリスクはレンタル移籍と同じで、外部組織に所属させるのですからその組織の育成方針に任せるほかなく、細やかなモニタリングもできません。加えて、大学サッカーではほとんどの場合卒業まで4年間プレーするので、4年間その大学のサッカーに染まります。自クラブの育成方針(それすらない場合もあることには目を背けつつ)と大学の育成方針に整合がとれていればよいですが、そうでない場合はどのように育つやら。さらに、特に強豪大学のサッカー部は大変な大所帯です。別に競争が激しいのは問題ありませんが、たくさんプレーさせるために外に出したのに、1、2年は雑用でほとんどプレーできませんでしたって、それって…みたいな。また進学する大学によっては環境が悪かったり、関東大学一部リーグと北海道学生サッカーリーグ1部や東北学生サッカーリーグ1部の競争力の差をどう考えるのか?みたいな話もあります。北海道一部なんて、得失点差+70のチームと-94のチームが同居してるわけです。仕方ないことですが、それって…みたいな。まあ松尾は東北一部の仙台大学で育った選手なので、あまり関係ないのかもしれませんが。それと、そもそも論で言えば松尾の有名なエピソードにあるように、大学はプロ養成機関ではないという話があります。</p> <blockquote> <p> 松尾はスポーツ特待生で入学していない。「プロになるために大学に来ました」と面談でまなじりを決したら、大学は学びの場です」と気勢をそがれた。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="消えかけた異才、大学に救われ 横浜FC・松尾佑介㊥" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQODH282HG0Y1A220C2000000%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH282HG0Y1A220C2000000/">www.nikkei.com</a></cite></p> </blockquote> <p> まあこれはある意味ネタですが、「大学は学びの場です」というのはまさにその通りで、建前だとしても優先順位第一位は学問になりますよね。普段はあまり気にならないと思いますが、例えば在学中の選手を特別指定してトップチームで起用したいときに、自由にスケジュールを調整できるのか?といったところで問題が出るのだと思います。せっかく大学に通っているのに、プロになるために卒業できないという状況は学生も避けたいでしょうし。途中で引っこ抜きにくいというのは大学に育成を外注する小さなデメリットかもしれません。言い換えれば、根本的に一度保有権を完全に手放すこと自体に不便さがあるということですね。</p> <p> こうしたデメリット・不便さがありながら外部での育成に期待するのは、そうせざるを得ない状況があるからでしょう。「10代の選手の多くは正直試合に使えるレベルになくて全くゲームをさせられないし、かといってチームのトレーニングだけでは育てられない。ただ無為に時間を潰すよりはいい。」という話なのだと思います。それが現実。それはわかりますが、せっかく監督より上位の取り組み主体を組織し、コンセプトを作って継続的な強化を始めたというのに、そしてその結果として近い将来どんな選手が自分たちに必要かも定義できていくというのに、肝心の育成の総仕上げを外注しなければならないって、あまりにももったいなくないでしょうか。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210327/20210327145051.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> <strong>実際のところ、セカンドチームを作れるのか?</strong></p> <p> ここまで一貫した活動の流れができたのですから、将来を担う選手も主体的に育てたい!そうです。セカンドチームを作りましょう、18歳から23歳くらいまでの選手を17人~25人保有し、練習生なんかを受け入れながら活動しましょう。たくさん試合経験を積めるし、日々のコンディションや成長をモニタリングできるし、トップチームが使ってない時間にトレーニングインフラも借りちゃいましょう。契約?契約はC契約並みでどうでしょうか。必要に応じてトップチームに特別指定できるといいですね。時々トップチームの選手のコンディション調整の相手になりましょう。WIN-WINです。いいことしかありません。</p> <p> すみません、嘘つきました。いいことばかりではありません。大学に行けば取得できた学卒のステータスがなくなる?確かに。じゃあ資格学校や専門学校とスポンサー契約を結んで受け入れてもらいましょう。23歳までにサッカーでトッププロを目指しながら手に職をつけられる環境ならどうでしょう。これでトップクラスに辿り着かなかったとしても人生転落の心配を軽減できます。サッカーに費やす時間はどんなに長くでも一日6時間くらいでしょうから、3時間×週4日は勉強しても大丈夫でしょう。週12時間×52週間×18歳~23歳までの最大5年間で3,120時間確保できます。3,000時間が税理士試験合格の目安らしいです。十分すぎる。給料もらってこれなら大学でドイツ語や古典政治学の授業を寝てるよりはマシじゃないでしょうか。遊べない?プロの世界で上目指したいんだろ?</p> <p> 次はコストですね。セカンドチームを満足に運営するには相応のコストが必要になります。ネット情報だと社会人関東1部リーグの南葛FCの2021年の運営費が1億7000万円くらいとのこと。南葛FCは有名選手が多いですが「選手営業」という契約形態を多用しているらしく、厳密な意味でプロ選手を抱えているわけではないようです。</p> <blockquote> <p> 2021年の年間運営費は1億7000万円。今季は3億円近いレベルまで上乗せする見込みだ。この金額は関東1部の中ではもちろん上位だが、J3のクラブに比べれば、そこまで資金力があるとは言えない。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「キャプテン翼」の南葛SCが体現するすごい経営" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Ftoyokeizai.net%2Farticles%2F-%2F587207" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://toyokeizai.net/articles/-/587207">toyokeizai.net</a></cite></p> </blockquote> <p> 僕がレッズの決算情報から概算・推定したセカンドチーム運営費用がだいたい3億円くらいだったので、1.7億円というのはだいぶ(選手人件費の分?)切り詰めている印象なのですが、例えば間をとって2.4億円くらいが相場だとすると、2022年現在だとトップチームのスター選手2人分の年俸くらいのコストという感じでしょうか。これ、まあまあリアルな数字ではないでしょうか。今のレッズで言えば酒井宏樹とショルツを放出する代わりにセカンドチームで若手を育てますという決断をするかどうかと考えると、難しい問いですね。基本的にサッカークラブ(特にJクラブ)の経営はチーム人件費にいくら投入できるかが正義です(人件費と順位に強い相関がある)から、年間2.4億円をいつ成果が出るかも不確実な育成のために使うなら、スター選手を獲ってきてトップで結果を出した方がチケット収入・グッズ収入等の波及を含めると優先されるでしょうし、サッカークラブとしてまともです。2016年~2020年にJ3リーグへのU-23チームの参入が認められた際に浦和も含めてそこそこの数のクラブが検討したようですが、U-23参入の特例がなくなった後にJ1クラブでまともにセカンドチームを運用しているクラブがないのは、このあたりのB/Cが現実問題としてあるのかもしれません。要は、U-23チームをやったらいいのはわかってるけど、それよりトップチームに人件費を使わないと本末転倒だろ?という感じでしょうか。年間5,000万円くらいでなんとかなるなら別の判断もあるでしょうが、2.4億円だと年間で勝ち点5前後に換算できそうなので、下手したら残留・降格やACL出場権内に入るか入らないかに関わるかもしれません。</p> <p> セカンド(U-23)チームの設立にあたっての大きな問題はまだあります。参入リーグの問題とホームスタジアム問題です。前述のJ3参入の特例は東京五輪に向けたU-23世代の強化という大きなテーマがあり実現しましたが、今後はリーグが各クラブを支援してU-23チーム保有を促し、U-23リーグを設立するといったような動きがない限り、各クラブが独自にU-23チームを運営する必要があります。そうすると現在の日本のサッカークラブのヒエラルキーに則って、おそらく浦和レッズセカンドはさいたま市の第1種市民リーグ3部南部からスタートすることになると思います。そこから、市民リーグ2部、1部、埼玉県2部、1部、関東2部、1部と、JFL直前に到達するまでにまともにやったら最短で7年。正直U-23でJFLを戦うのはかなり厳しいと思いますので、中期の目標を関東1部or2部としてもU-23チームの第1期選手(18歳)は埼玉県リーグを戦っているうちに23歳を過ぎてしまいます。これで育成になるんですか?というのは結構厳しい問いかけです。実際、育成で有名なライプツィヒはU-23チームを2017年に解散しており、現在はU-17チーム及びU-19チームのみが活動しています。これを復活させようという動きもあったようですが、一度解散したチームをゼロから作り直すにはカテゴリーを上げるのに時間がかかりすぎるということでなかなか進展していないようです。</p> <p> JクラブのU-23チームということで参入リーグに特例が適用されれば素晴らしいですが、どのみちU-23年代に見合うレベルのリーグでプレーし続けられるのか?という課題は出てきます。関東1部で戦えたとしても、関東1部とJ1の舞台には雲泥の差があるでしょうから、U-23を経てもトップチームの強度やレベルに適応するのに選手が苦労してしまい、結果として育成打率が下がるのではセカンドチーム保有意義にも疑問がつきそうです。U-23からトップチームに選手を送り出せなければ意味がありませんから、しっかりと運用できるようになるまでに10年単位で効果をみていく必要が出てくるでしょうし、その活動を続けていくのは簡単ではないでしょう。</p> <p> ちなみに、U-23チームの解散にあたってライプツィヒは大きく二つの理由を明かしています。一つはセカンドチームを3部で戦わせれば、相手チームの(ガチ)サポーターからの厳しいプレッシャーに晒されてしまうこと、そしてもう一つはスタジアムの問題で、トップチームの本拠地は大きすぎて使用できないにも関わらず、サブスタジアムを使おうとすればセキュリティー対応等のインフラ整備にコストがかかりすぎるということ。結局、ドイツ有数の育成クラブであってもセカンドチームを保有する構造的課題は日本と変わらない様です。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="RB Leipzig hat seine U23 aus Angst ums eigene Image aufgelöst" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.focus.de%2Fsport%2Ffussball%2Frb-leipzig-loest-u23-auf-nachwuchsboss-gesteht-entscheidung-fiel-aus-angst_id_7114946.html" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.focus.de/sport/fussball/rb-leipzig-loest-u23-auf-nachwuchsboss-gesteht-entscheidung-fiel-aus-angst_id_7114946.html">www.focus.de</a></cite></p> <p> 浦和でもこのスタジアム問題は課題になると思います。浦和には幸いにして比較的使いやすい駒場スタジアムがありますが、駒場はレディースの本拠地でもあり、Weリーグの日程にスタジアム使用がかなり制限されます。県リーグレベルであればレッズランドを使ったりできるのかもしれませんが(すいません基準は調べてません)、セキュリティや試合後のケアなどを含めて多少のインフラ整備が必要になりそうです。<br /> と、ここまで現実問題を考えてきましたが、普通に考えたら難しいですね。ただそれでも僕はセカンド(U-23)チームの保有にはチャレンジしてほしいと思っています。というか、保有しないとフットボール本部の取り組みの持続性を担保できないと考えています。18歳~23歳の間の選手を主体的かつじっくりと育成できているクラブがほとんどないという現状を打破するには、他のクラブが簡単には手を出さない(出せない)やり方が必要なのだと思いますし、もしJリーグがU-23チームの保有を各クラブに推奨し、制度上の特例も含めてU-23カテゴリーの強化に動いたときに、素早く反応できるだけの投資をしておくのは競争上重要です。加えて、選手の育成だけでなく指導者の育成の場を確保できるという点は無視できないメリットだと思います。いつかの夢であるレジェンド指導者の育成・登用を考えても、若手指導者のチャレンジ・評価の場としてのセカンドチームは保有したいところです。他所に放り出して結果出してこーい方式もありですけどね、時間のある指導者なら。</p> <p> というわけで、想定2.4億円のコストをどうカバーするのかという大きすぎる壁はあるものの、事業規模30億円の2.4億円と80億円の2.4億円の負担感は全く違います。売上規模の大きいクラブとして、こうした大きな投資にチャレンジしていくことも日本のリーディングクラブとして価値を高めていくには必要なのではないでしょうか。浦和レッズのコンセプトを体現する指導者・選手育成の内製化と、登竜門としてタレントプールを広く持ちふるいにかける機能をクラブの中に持っておくことで持続的な強化を可能にし、他クラブが真似したくても真似できない競争上の強みを手に入れたいところです。<br /> だいぶ余談が長くなりましたが、フットボール本部の組織体制の在り方に関する振り返りとしては以下の通りです。フットボール本部が存在すること自体がこの先の浦和レッズ強化の根幹であり、軸です。この体制ができて本当によかったですし、「3年計画」の失敗は残念ですが、失敗にも関わらずこの体制が継続されることは非常に素晴らしく、浦和レッズにとって重要です。</p> <p> 一方で、この体制を持続的なものにするために、フットボール本部内部で後継者の育成が必要だと思います。そして大きな夢として、フットボール本部の作成したコンセプトの体現者をより主体的に育成できるような体制、具体的に言えばセカンドチーム(U-23)の設立・運営にチャレンジして欲しいというのが僕のまとめです。</p> <h5 id="63--この取り組み自体が正しかったか">6.3    この取り組み自体が正しかったか?</h5> <p> 最後に、根本的にこのフットボール本部体制と「3年計画」の取り組みが正しかったかについて考えます。フットボール本部体制についてはこれまで見てきたとおり、本当に素晴らしい取り組み(組織体制)だと思っています。改めて整理するとフットボール本部体制の意義は大きく以下の3つになると思います。</p> <ol> <li>トップチーム強化体制がクラブ経営からある程度独立したこと</li> <li>トップチームのあるべき姿・方向性をクラブ主体で決めることにしたこと</li> <li>クラブのあるべき姿・強化の方向性を過去の失敗から導いたこと</li> </ol> <p> 1.はレッズ特有の問題ではなく、たいていのJクラブが抱える問題でもあると思いますが、経営規模的には中小企業レベルのJクラブではどうしてもトップの経営責任がダイレクトに問われる構造があります。Jクラブにおける経営は利益創出よりもいかにトップチームの人件費(強化費用)を捻出し結果を出したかということが問われますから、限られた予算の中で周辺事業のリソースをうまく管理しつつトップチーム強化を果たすために、社長がダイレクトに強化に関わる例が多くなるということだと思います。ただ法人としてのJクラブは、歴史的な経緯からも現実的な運営資金の提供という意味でも母体となる親会社(もしくは責任会社)の影響を強く受けており、経営者はいわゆる天下りで任用されるという現実もあります。その中で何が起きるかと言うと、サッカーの専門家ではない経営者がリソース管理の文脈から強化に(深く)関るか、もしくは右腕として連れてきた強化担当者(いわゆるGM)に強化を任せるといったことが起きます。別にそのどれも上手くいけばそれでいいのですが、問題は社長にはたいてい任期があり、社長交代と同時にまた体制がリセットされてしまうということです。また右腕としての強化担当者の選出においても中長期的な安定よりも短期のうちにいかに到達点を高くできるかという側面が強調される傾向があると思います。こうした構造に対して、フットボール本部体制の良い(はずの)ところは、ある程度独立した組織として、トップチーム強化の責任を負うことができるという点です。雑な言い方をすればトップチーム強化から社長を締め出せます。フットボール本部は社長から配分されたリソース(予算)の中で最高の結果を出す責任を負います。従って社長は十分なリソースを配分すれば、その時点でクラブ経営者としての責任を果たすことになります。その先に深く立ち入る必要は基本的にありません。こうすることで、フットボール本部の体制が安定さえしていれば、社長が交代してもトップチーム強化に大きな影響はない(はず)です。余談ですが、これは逆に、フットボール面の知見をあまり気にせずに社長人事ができるというメリットももたらします。要は経営のプロは社長、トップチーム強化のプロはSDと言う風に専門家を配置して役割分担できるということでもあります。当然、フットボール本部長やSDといった幹部人事に社長が関わるので、この人事がダメならダメなのは従来の体制と同じではあるのですが。</p> <p> 2.についてはレッズ特有とは言わないまでも、過去のレッズの苦い経験を踏まえると重要なポイントです。これまでのレッズの迷走や強化方針のブレは昔さんざん書いたのではしょりますが、クラブとして目指すべき方向性を見つけられなかったこと、3年以上監督を継続したことがなかったこと、「継続性」に対する反省からミシャを招聘したものの主体性のなさからミシャにチーム作りを丸投げしたこと、その後ミシャとの別れと共に再び迷走が始まったこと、こういったストーリーと経緯を経て、「主体性」をクラブが持つ、フットボール本部が持つという明確な意思と「決め」はこの体制の肝でした。</p> <p> 3.については上記2.と関連していますが、清尾さんが「成功は失敗の母内閣」と書いた通り、得てして過去の失敗を顧みずに大きな言葉と目標を並べがちだった浦和レッズのフロントを見てきた土田SDだからこそ、こうした体制を発案できた、実現できたという事実を評価すべきかなと思います。そういうわけで、フットボール本部体制を組織したこと自体は浦和レッズにとって非常に重要なステップであり、この体制を発展させていくことこそが過去の経緯を踏まえると正しい道のりであると思います。J1リーグの成績としては今のところ結果が出たとは言えませんが、「フットボール本部」という名前ごと持っていった磐田など、同じような問題を抱える他クラブからもこの体制は参考にされているようなので、外部からも一目置かれる取り組みとなっているのではないでしょうか。</p> <p> で、問題は「3年計画」の方ですね。よく言われるように、3年という時限を切ったことで無茶な動きをせざるを得なかったのではないか、というのはその通りだと思います。できれば時限を切らずに一歩一歩進めたかっただろうし、チームの基盤がないところから3年でJ1優勝を果たすのは正直言って無謀な目標だったという結論になるでしょう。そもそもフットボール本部体制の取り組みは最高到達点を高くするためのものではなく、持続的に良い結果を出し続けるためのものですから、「3年後のJ1優勝」という到達点を目標に示したことで取り組みの意義、狙い自体が少し誤解されてしまったという面もあるように感じます。だから本当は、時限を切らずにフットボール本部体制の取り組みをスタートできたら理想的だったとは思います。とはいえ、プロサッカーは勝負の世界。結果がほとんどすべてです。「浦和を知っている」フットボール本部体制だからこそ、目に見える結果を約束しなければ取り組み自体が受け入れられないだろうという意識があったと思いますし、時限を切ることが正しかったかどうかの前に、そうするしかなかったという側面が大きかったのかなと思います。</p> <p> 現実としては、近年のJ1リーグは強固な基盤の上にタレントのシナジーが揃って初めて優勝争いができる非常に厳しい競争となっており、そうした要素を持ち合わせる川崎や横浜FMとの差を3年で埋めるのであればひとつも間違いは許されないチャレンジだったと思います。にもかかわらず1年目で監督交代、3年目の夏にラストピースのFWを補強する(そして10分で負傷離脱)という感じではきつかったですね。フットボール本部体制自体は素晴らしい枠組みなのですが、中身は強化体制としての経験・実力の不足が否めなかったと思いますから、こうした失敗を飲み込めるような時間軸で取り組めると良かったと思いますが、逆に言えば3年で優勝というプレッシャーがあるからこそ背伸びして取り組み、成長できたという考え方もできるかもしれません。</p> <p> そういえば、3年計画の一年目が大槻さんの続投だったこと、大槻さんの仕事が「ゼロにならす」仕事だったというコメントがあったこともあって、大槻さんは実質0年目説がよく出ていましたが、クラブが簡単にこのように計画目標を延期しなかったことは潔かったかなと思います。おかげで「3年計画」は言い逃れできないレベルの失敗となりましたが、グダグダせずに次に進めるわけですし。ちなみに、実質0年目説の通り「3年計画」の4年目をやりたいのであれば、そもそものコンセプトの修正もセットであるべきだったと思います。まあそれはそれで、「3年計画」の取り組みを1年で諦めることになるので、そもそも自分たちでぶち上げた計画を速攻で否定することになり、存在意義自体が問われる事態となりそうな気もしますが。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200221/20200221183943.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> そういうわけで、「3年計画」自体が素晴らしいかというとそうではないと思いますが、そうするしかなかったという事情はわかるし、やったことでわかったこともある、という意味で全部を否定するものではないかなという感じです。</p> <p> やっぱり浦和の取り組みはフットボール本部体制を作ったこととこの体制を継続して持続的な強化を達成すること自体が重要です。3年計画の歩みを観てきた通り、継続的な強化のベースがなければ優勝が難しいリーグで我々は戦っているからです。だから今後この失敗をさらに活かすことが求められるし、そういう意味でフットボール本部のコンセプトと戦術の齟齬が隠せなくなっていたリカルドをスパッと切って、よりゲームを動かしリスクをかけるサッカーをしそうなスコルジャ監督を引っ張ってきたのは失敗を活かすという部分で正しいのかなと思います。最高到達点としてのJ1優勝をいつ達成できるかというのは正直わからないし、現時点でも川崎や横浜FMとの取り組みの差はまだ大きいとは思いますが、持続的な強化を実現するためには正しい道のりを歩んでいると思います。そういう意味でこの取り組みは正しいと信じていますし、引き続き応援していきたいと思います。</p> <p> </p> <p>続く。</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2022%2F12%2F27%2F182400" title="浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【その他&amp;独り言編】 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2022/12/27/182400">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 浦和レッズの「3年計画」およびフットボール本部とガチ対話する【その他&独り言編】 hatenablog://entry/4207112889948519331 2022-12-27T18:24:00+09:00 2023-08-06T01:09:51+09:00 7 【その他&独り言編】 これで最後、もうここまで読んでいる人はいない気もしますが、「3年計画」の外側の存在についても少しだけ触れていきましょう。そして最後に、あとがきのようなものを書いておきます。 7.1 メディア・コミュニケーション 「3年計画」が発表されたとき、僕はクラブ周辺への期待として以下のように書きました。 なぜ我々はこのようなやり方を選ばなければいけないのか。クラブがやろうとしていることは具体的にどういうことなのか。ファン・サポーターに何を観てほしいのか。目の前の結果を、長期的な方針とチームコンセプトに照らしてどのように評価するのか。なぜ我慢するのか。なぜ我慢を求めるのか。90分… <h4 id="7--その他独り言編">7    【その他&amp;独り言編】</h4> <p>これで最後、もうここまで読んでいる人はいない気もしますが、「3年計画」の外側の存在についても少しだけ触れていきましょう。そして最後に、あとがきのようなものを書いておきます。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220825/20220825201048.jpg" border="0" title="" width="1200" height="798" loading="lazy" /></p> <h5 id="71--メディアコミュニケーション">7.1    メディア・コミュニケーション</h5> <p>「3年計画」が発表されたとき、僕はクラブ周辺への期待として以下のように書きました。</p> <blockquote> <p>なぜ我々はこのようなやり方を選ばなければいけないのか。クラブがやろうとしていることは具体的にどういうことなのか。ファン・サポーターに何を観てほしいのか。目の前の結果を、長期的な方針とチームコンセプトに照らしてどのように評価するのか。なぜ我慢するのか。なぜ我慢を求めるのか。90分の試合を、長期的な方針とチームコンセプトに照らしてどのように評価するのか、個々の選手のパフォーマンスを、どのような基準でどのように評価するのか、それはなぜなのか。一つ一つの打ち手は長期的な方針とチームコンセプトをどのように表現するものなのか。こういったことを、しつこいくらいに、事あるごとに説明し、オモテに出て、ファン・サポーターと共有し続けなければいけません。</p> <p> 何故なら、少なくともこれから3年間は、クラブが描いたストーリー・脚本に沿ってクラブが進んでいくからです。進む道を選ぶのはクラブです。クラブが主体的にチームコンセプトを定めてチーム作りを実行するということは、チーム作りの意思決定や結果に対する説明責任をクラブが負うということになります。おそらくそれは土田SDであるべきだと思いますが、このプロジェクトの責任者は、事あるごとにクラブの意思を説明する義務があります。なので、現場は監督の職掌範囲という前提の下ではありますが、土田SDにはいろいろな場、ツールを使って広くクラブの問題意識や意思を発信していくべきだと思います。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="新強化体制発表会見の感想:プロジェクトへの期待と不安、そしてクラブとメディアに期待したいこと。 - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2019%2F12%2F14%2F095233" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2019/12/14/095233">www.urawareds96.com</a></cite></p> </blockquote> <p> まあちょっと僕の要求は高すぎるというかそこまで開示はできないかなと今読むと思いますが、言っていることはそこまで間違っていないと今でも思います。【不定期連載】と題された「土田SDが伝える浦和レッズの今」も2020年8月16日と2020年10月9日の掲載以降ついぞ連載されることはありませんでした。土田SDの体調不良の影響だとは思いますが、フットボール本部としてこのような発信は引き継いで欲しかったと思います。ただもしかしたら、リカルド体制において徐々にフットボール本部のコンセプトとピッチ上の挙動の乖離が明らかになっていくにつれて、論理的に語れば語るほど自己否定になってしまうという側面が強くなってきて発信ができなくなったのかもしれません。そういったこともあり、もしかすると、スポークスマンのような役割を西野TDが担っていた、ということなのかもしれませんけどね。</p> <p> そういう意味では、メディアの皆さんにもっとフットボール本部を追求して欲しかったという思いもあります。これもコロナの影響等々で難しかったのだとは思いますが、もうちょっと言葉を引き出してほしかった。例えば核心的な部分には触れないまでも、フットボール本部の取り組みを別の側面からもっと引き出すことでファン・サポーター・ステークホルダーをもっとこの取り組みに巻き込んでいく、応援してもらえるような空気感を醸成するということにチャレンジして頂けたら良かったです。LINEニュースで無料とは思えないほど質の高い選手のストーリーを共有してくれた原田さん、飯尾さん、菊地さん、杉園さんには本当に感謝ですし、事情を多面的に解釈しつつ冷静な筆致でレッズをレビューしてくれた轡田さん、沖永さんの文章にもとてもお世話になりました。その一方で、フットボール本部から引き出される情報はやっぱり物足りなかったし、フットボール本部からの回答がある意味で逃げのようになったとしても核心的な問いをぶつけることで全体のリテラシーや意識が高まっていくこともあったんじゃないかと。とはいえ、自分がその立場にいたら相手にとって耳が痛い指摘をぶつけていくことのハードルの高さはよくわかるところではありますけど。そういうわけで、今後も続くフットボール本部の取り組みにあたっては、事あるごとにフットボール本部、特にSDにはオモテに出てほしいし、いろんな言葉を引き出してほしいと思っています。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200712/20200712180621.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <h5 id="72--サポーターの理解">7.2    サポーターの理解</h5> <p> では受け取る側のサポーターはどうだったのかという話ももちろんしなければいけません。とはいえファン・サポーターは母数が多すぎて統一された意見はないし、それぞれの美意識や優先順位、楽しみ方に合わせて楽しむだけなので、フットボール本部の取り組みに直接的に貢献することは難しいのかなと思います。そりゃみんなこの取り組みの価値を理解して我慢して後押ししてくれれば僕としても嬉しいけれど、俺たちは金払ってるんだから今目の前の試合でいいとこ見せろというのはめちゃくちゃに正論だし、選手個人ファンだから…という距離感でも自由です。</p> <p> ただ、こうなったらいいなということはもちろんあります。ファン・サポーターが最も影響力を持つのはやっぱり埼スタの空気感を作る部分です。コンセプトに関する部分で書いた通り、コンセプトを定めるのはフットボール本部ですが、コンセプト自体には共感されるべき根拠がなければいけません。要は、埼スタが好むサッカーを目指すという大義名分がコンセプトの正当性には決定的に重要だと思います。つまり、クラブがコンセプト策定の時点でブレないようにするためには、「埼スタが好きなサッカー」をどんどん明確にしていく必要があります。埼スタとは、つまり僕たちです。とはいえファン・サポーターで好きなサッカー総選挙はできないと思います(できたらそれはそれで面白いですが)から、何を指標にするか、それはやっぱり埼スタの盛り上がりだと思います。端的に言えば、好きなプレーにもっとみんなが盛り上がることで、だんだんとそれが明確になるといいなと思っています。僕だったらゲームを落ち着かせるようなサッカーよりもお互いに殴り合うサッカーの方が好きなのでそういうプレーに盛り上がりたいですし、そうじゃない人もいると思いますが、そういう人は好きなプレ―に盛り上がればいいと思います。そういった盛り上がりやリアクションを通じて、クラブが埼スタの好む浦和のサッカーをフットボール本部が理解・定義していく、そしてその実現のために監督を呼び、選手を集め、鍛え、ピッチで魅せる、そういう循環を持続的にどんどん進めていけたら、それこそがフットボール本部体制が目指す姿の実現に繋がっていく気がします。</p> <p> 極端なことを言うと、こうした取り組みの中では、選手が個人的に「こういうサッカー、プレーがしたい」という部分、選手の好みは別に尊重する必要はなくて、大枠で言えばそれよりも埼スタが喜ぶプレーこそが重要なはずです。埼スタが喜ぶプレーを、体系化したコンセプトに沿った戦術をピッチ上で実践するのが選手なので、プレーの選択・味付けの妙は選手の価値ですが、選手が埼スタの好みと違うプレーをするならばそれに対して埼スタはもっとリアクションしていいと思うし、逆にプレーが失敗しても埼スタが好むプレーにチャレンジしたなら盛大に盛り上げてノせる、そんな関係ができると、この取り組みによって形作られる浦和のサッカーが明確になっていいなあと思います。どんなプレーに盛り上がるかは人それぞれですが、人それぞれでいいので良いプレーにはガンガンリアクションする埼スタにならないかなあと思ってます。当然、埼スタでリアクションをするためには埼スタにいないといけないので、要はスタジアムに来ることがクラブへの貢献になるわけです。普通の話に着地しました。ただ、「良いプレー」に的確にリアクションできると選手たちもテンションが上がると思うので、やっぱりサッカーを観ていく中でファン・サポーターもサッカーを知っていくことは重要だとも思います。基本は好き嫌いで十分だとも思いますけど。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20200221/20200221210314.jpg" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <h5 id="73--全体を通じての感想独り言そしてあとがき">7.3    全体を通じての感想(独り言)、そしてあとがき</h5> <p> このセクションに辿り着くまで、一番最初から数えると9万字近くのボリュームの文章を書いているのですが、全部読んでくれた人がどれくらいいるのでしょうか。新書がだいたい10万字らしいです。執筆作業じゃねーか。もう誰もついてきていない気がします。全部読んでくれた人にはハイボールを驕りたい。むしろ驕ってほしい。無駄な文字数はもうやめて、締めの独り言を書いていきます。</p> <p> 今回の振り返り、いままでいろいろと自分の中で考えていたことをいろんなところから引っ張り出してほとんど全部ぶちまけました。やっぱり「3年計画」と時限が切ってあると、とりあえずその結果が出るまでは応援に徹しようという思いがあって、なかなか厳しいことやネガティブなことは書きにくいなあというのがこの2、3年感じたことでした。まあそれは結局どのシーズンも同じかもしれませんが。ただこうして「3年計画」が終わったことで、まず「失敗しました」というところから始められたのはひとつ良かったところかなと思います。定量的な結果もそうですし、やっぱりリカルドのサッカーがフットボール本部のコンセプトからだんだんと遠ざかってしまったあたりは強く反省されるべきことだと思います。そういう定性的な部分も含めて、「3年計画」の取り組みは失敗したと思います。とはいえ、チャレンジしなければ失敗もできないわけで、さらに言えば、「3年計画」は失敗したけれども、その失敗も加味したとしてもフットボール本部の取り組みは正しい道のりを目指していると思うわけで、「3年計画」の失敗の後もフットボール本部の取り組みが続くことは素晴らしいことです。結果的に「第2期3年計画」が示されなかったことは、時限を切って取り組む難しさというか目標達成のために無理がでてしまう部分を教訓にしたのだと思いますし、それも含めてクラブにとっての学びは大きかったよなと。当然、「3年計画」の初期段階からこんな時限を切ったやり方はしなくてよいのに、という意見の人にとっては歯がゆい3年間だったでしょうけど。そういうわけで、これまでも書いた通り、僕の感想としては「3年計画」は失敗だったけれどフットボール本部の取り組みには大賛成で、またリーグを獲れない3年間だったけれどチャレンジしてくれてよかったと思う3年間だったということになります。</p> <p> もう一つ、個人の好みの部分で言えば、僕はちょっとリカルドのサッカーをあまり好きになれなかったです。全部が全部ではないですが、じっくり見てみて、やっぱりゲームが落ち着くのは好きじゃないなと。これは僕が浦和ファンだからなのかもしれませんが、エンターテイメントとして、興奮を得るためにスタジアムに来ているのだと考えたときに、いくら勝つ確率が高くてもゲームが膠着するのはもったいないというか。これはもしかしたら単純にサッカーの完成度の部分で足りなくて、リカルドが見せたいスペクタクルを選手が表現できなかったというだけかもしれませんけど。そういう意味では僕、あまり我慢強くないのかもしれません。今年はほとんどレビューを書けませんでしたが、昨年からあまり変わらない構造・展開・課題が続くように感じてしまったのもその理由です。もちろん細かい部分をみれば向上した部分、昨年にはなかった機能性とか、いろいろあるんですけどね。大枠の部分や志向の部分で、個人的にはあまりリカルドと合わなかったなーと今感じています。でもよく考えると志向的に近いロティーナのサッカーはわりと好きで観ていたので、リカルドのサッカーそのものが好きになれないというよりは、「浦和のサッカー」として好きじゃない、ということかもしれません。実際ビルドアップの機能性作りとか、立ち位置をあれこれしたりするところとか、戦術的なギミックは観察していて面白かったし、勉強になりました。シンプルに言えば、良い監督だと思うし感謝もしてるけど、浦和の監督をやるならもっと殴り合ってほしかった、という感じでしょうか。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210227/20210227152714.jpg" border="0" title="" width="1200" height="800" loading="lazy" /></p> <p> ただ、勝つことを考えればこのアプローチが論理的に確立を高めることはよくわかります。そりゃこれだけゲームをコントロールする術を持っていて、選手がそれを実行できて、拮抗状態を作っておきながら都合よく自分たちだけ殴れる個人の質があれば強いとねと。こう考えるとロティーナはセレッソ時代に坂元を使えてラッキーでしたね。あれだけ1on1を制してくれる選手がいれば、自分から拮抗状態を作ってもやっていけます。</p> <p> 逆に言えばリカルド・レッズはやっぱり拮抗を破壊できる個人の質を確保するのに苦労したし、その点、結果が出なかったことは編成の反省と言えるのかもしれません。ただね、トップチームの強化アプローチで言えばセレッソの強化部と浦和のフットボール本部はまあまあ似ていて、アプローチは合っていたと思うんですよ。それで結果が出なかったのは確率の問題のような気もするし、その確率を上げたいならコストをさらにかける必要がある。そう考えると、正論を突き通していく手法はやはりコスパが悪い、なんてことも言えるかもしれません。じゃあコスパの良い手法はなんですかと言えばやっぱりそれはリスクをとることで、リスクをとってコストパフォーマンスを最大化するという意味で近年最強のチームはマリノスということになると思います。2021年度に勝ち点79を獲ったチームの人件費が25億円ちょっとですからね。川崎は同年36億円、浦和も30億円かけてます。今年の人件費はマリノスもさすがにもうちょっと上がっていると思いますが、やっぱりリスクを取りながらコストパフォーマンスを追求していくやり方は正論を突き通す代わりにコストをめちゃくちゃ要求するポジショナルプレー正統派へのアンチテーゼになるんじゃないかと思います。サッカー界に大小いろいろなヒエラルキー構造がある以上、ポジショナルプレー原理主義的な勝ち方は正論を突き通すだけのリソースなしには実現しないのではないかと。</p> <p> ちなみに、近年のJで最強のチームである川崎は、賞金・分配金・移籍金で得た資金も使ってますが、資金よりも時間を使った強化で強くなったチームだと思います。風間教祖が授けた技術的な基準の高さをクラブ内に残し、維持したことで選手を育った選手が彼らの強さの基盤でした。そうして時間をかけて作り出した黄金期を謳歌していた近年の川崎ですが、もしこのサイクルが終わったときに、次世代をまた時間をかけて育てるのか、その意思を持ち続けられるのか、川崎についてはその辺りに興味があります。もし次の黄金期を迎えるにも時間というリソースが十分に必要なら、それは川崎のサイクルは一周が長いということになります。それはそれで面白いですが、一度強くなった後に長く我慢するのは大変ですからね。抽象的な話なので間違っているかもしれませんが、こういう風に考えると、浦和が目指していく強化の路線はマリノスに近いのかなという感じがします。お金は使うけれど、コンセプトとしてはリスクを賭けてコストパフォーマンスを最大化する、その結果成績の安定感はないかもしれないけれど、ベースだけは作っておきあとは爆発力で結果を出す、そんな感じの取り組みになっていくのかなと思います。良いか悪いかは知りませんが、個人的にはこの方向性は結構納得感があります。浦和は会長マネーもスマホゲームマネーも使えないし、かといって時間をかけてじっくりサイクルを回す手法も似合いません。マリノスも鋭い補強はするけど放出も結構してて編成サイクルが短い印象で、雑に言えば欧州的という括りで浦和も似ていくのかなと。まあ、どうなるか見てみましょう。</p> <p> 話は戻ってフットボール本部の取り組みと「3年計画」については、個人的には非常に多くの学びがありました。サッカーについてもそうだし、プロジェクトマネジメントみたいな観点でもそうです。フレームワークが合っていても小さな判断ミスや見込みの甘さ、キーパーソンの離脱、もっと理不尽なところ言えばコインの裏表みたいなところで結果は変わってしまうし、リンセンの獲得タイミングの判断のように、間に合うけれどベストではない選択肢VS間に合わないけどベストな選択肢みたいな究極の決断をしなければいけないこともある。こういう決断を正解にしていくのがプロジェクトリーダーの資質なのでしょうし、長期のプロジェクトを観ていく面白さなのかなと思いました。こういう見えにくいポイントを多くの人がわかるようにメディアが翻訳・紹介してくれると、強化担当者の実力みたいなものが広く評価されるようになって、Jクラブの強化・戦略面での競争もいっそう質が高くなるのかなという気がします。それはそれで面白いですよね。</p> <p> そんなわけで、僕の「3年計画」もこれでいったん終了です。いろいろあったけれど、総じて興味深く、面白かったです。ただあまり楽しくはなかったかな。この先は、埼スタが求める興奮を論理的に作り出す取り組みのさらなる推進と、それがゴリゴリ実を結んで埼スタがスペクタクル大量生産工場になるのを期待します。まあ来年以降の話はまた来年ということで、ここまでまとまりのない超長文にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。</p> <p>それでは。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20191124/20191124181939.jpg" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p> </p> reds96 残りの試合で疑念を晴らせ:YBCルヴァンカップ2022準決勝 2nd leg vsセレッソ大阪 分析的感想 hatenablog://entry/4207112889921972929 2022-09-27T21:54:03+09:00 2022-09-27T21:57:39+09:00 書くたびにお久しぶりと挨拶している気がするので、もう言いたくないのですが、久しぶりに試合の感想を書いていきます。この試合は浦和にとっては本当にショックな結果となってしまったのですが、「この試合で何が出来なかったか」を残しておくことは、もし浦和レッズがこの方向性で進み続けるなら超えるべきハードルとして将来にも役立つと思うからです。 というわけで、ざっくりした内容になるかもしれませんが見ていきましょう。 両チームのメンバーと嚙み合わせ 浦和ベンチ:牲川、知念、宮本、馬渡、柴戸、江坂、ユンカー セレッソベンチ:清水、船木、清武、中原、ブルーノメンデス、パトリッキ、北野 試合前の予想は浦和4-2-3-… <p>書くたびにお久しぶりと挨拶している気がするので、もう言いたくないのですが、久しぶりに試合の感想を書いていきます。この試合は浦和にとっては本当にショックな結果となってしまったのですが、「この試合で何が出来なかったか」を残しておくことは、もし浦和レッズがこの方向性で進み続けるなら超えるべきハードルとして将来にも役立つと思うからです。</p> <p>というわけで、ざっくりした内容になるかもしれませんが見ていきましょう。</p> <p> </p> <h5 id="両チームのメンバーと嚙み合わせ" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">両チームのメンバーと嚙み合わせ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927210845.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>浦和ベンチ:牲川、知念、宮本、馬渡、柴戸、江坂、ユンカー</p> <p>セレッソベンチ:清水、船木、清武、中原、ブルーノメンデス、パトリッキ、北野</p> <p> </p> <p>試合前の予想は浦和4-2-3-1に対してセレッソ4-4-2。これが今シーズン4度目の対戦ですが、前回対戦で不在だったキムジンヒョンが戻ってきたくらいでお互いのスタメンにほぼ違和感はなしでした。もちろん関根が右SBでスタメンだったことは浦和にとってはイレギュラーと呼ぶべきものかもしれませんが、リーグでの対戦で宮本のパフォーマンスが良くなかったので、馬渡のコンディションなんかを考えるとこういう起用になるんでしょうね。個人的には、現時点での完成度は別として関根が右SBでプレーできるようになることは彼にとって重要だと勝手に考えているので嫌な印象はないのですが、まあこの話は別の機会に。</p> <p>で、試合後の記事でわかったことですが、実際にはセレッソはこの試合に4-4-2では臨んでいませんでした。もちろん非保持時は4-4-2をベースにプレスをかけていたのですが、チームとしてもボール保持時は4-3-3で整理していたとのことです。</p> <blockquote> <p>「今回は完全に4-3-3で整理してやろうと入った試合でした。おっくん(奥埜博亮)との距離も近いし、(松田)陸くんと3人でローテーションしながらいい距離感でプレーできて、1点目もおっくんとの距離が近かったからスペースに相手が食いついたと思います」</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【C大阪】毎熊晟矢&為田大貴の両翼が生き生き!「何も迷うことはありませんでした」と浦和に自信の大勝! - サッカーマガジンWEB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsoccermagazine.jp%2Fj1%2F17573151" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://soccermagazine.jp/j1/17573151">soccermagazine.jp</a></cite></p> </blockquote> <p>現地で見ていて、僕が気になったのはまさしく奥埜の立ち位置でした。試合の立ち上がりからセレッソのボール保持の際に明らかにサイドの崩しに関わる選手が一人多いように感じたのですが、それが奥埜のIH化だったわけです。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927211607.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>浦和はおそらくセレッソの4-3-3基準でのボール保持に対して準備をしていなくて、もしかしたら予測すらほとんど出来ていなかったかもしれません。ピッチ上では4-4-2ベースで奥埜の対面となる岩尾が当然ながらいち早くこれに気づき、影響を受けていました。2枚のボランチの片割れとしてプレーするときよりも明らかに高い位置に立つ奥埜のマークに岩尾が引っ張られており、これによって浦和は中盤の真ん中のケアを敦樹一枚でしているような状態で守っていました。もっとも岩尾が奥埜のケアをしていることで目に見えるディフェンスの決壊が起きたわけではなく、手薄になった中央をぶっちぎられるということはありませんでしたが。結果的にIHとしてプレーした奥埜はこの試合で先制点の崩しに関り、アウェーゴール数で有利に立つことで浦和にこの試合での3得点を要求することになる追加点を自ら奪うことで試合を早々と決定づけてしまいました。とはいえ、浦和がこの試合で全く主導権を握れないままに2失点を喫した理由は奥埜の立ち位置そのものというよりも、セレッソの4-3-3の機能性が全体として素晴らしかったということになると思います。この機能性については少し後に回しましょう。</p> <p>浦和ベンチとしてはセレッソが4-3-3で試合に入ることに対して確信的な準備をすることは難しいとしても、こういう可能性に備えて守り方やゲームプランを準備しておくことは必要だったかなという気がします。このシステムに素早く対応してゲームを落ち着かせることができなかった、そうして試合時間が経過するごとにこのシステムが刺さる自信と勢いを増していくセレッソをコントロールすることができず、1失点はまだしも2失点目を早いうちに取られてしまったことが浦和にとっての根本的な敗因と言えるのではないかと思います。</p> <h5 id="セレッソ4-4-24-3-3の機能性">セレッソ4-4-2⇒4-3-3の機能性</h5> <p>この4-4-2ベースの4-3-3化は浦和が連戦連勝で非常に調子が良かった8月に基本として使っていたシステムで、浦和では敦樹が前に出て下がり目のトップ下(この試合ではセレッソ上門、浦和では主に佳穂)とIHの役割を担うわけですが、選手の特性がハマっていれば大きなポジションの移動もないので比較的採用しやすい可変システムだと思います。中盤でビルドアップに関わったりターンができる上に守備時に2トップとしてプレッシングをこなしてくれるトップ下と、ブロックを形成した際に中央で守備を担いつつゴール前に進出する推進力と攻撃センス・技術があるボランチがいればいいわけなので、導入コストが比較的リーズナブルで、そのうちどのチームも基本動作としてこのシステムを持っているのが当たり前ということになるかもしれません。逆に4-3-3ベースのチームがボール非保持時だけ4-4-2でブロックを形成するというのもそこまで珍しくないですし。何が言いたいかというと、これくらいの変化には素早く対応できないといけなかったね、という恨み節になってしまうのでこれくらいにしておきます。</p> <p>余談ですが、似たことをやっているとは言えセレッソのスカッドでは両SBにチーム内でも経験豊富で戦術的な武器となれる選手がいるのに対して、この試合の浦和には酒井も大畑もおらず、彼らがいないとSBの質で攻守の違いを作れていないというのは大きな違いとして認識しなければいけません。川崎を見てもマリノスをみても、破壊力のある攻撃を繰り出せるチームはSBがもたらす+1が攻撃の質を大きく上乗せしているというのは事実だと思いますので、浦和レッズのチーム作りにおいてもSBの攻撃面の質というのは大きなテーマだと思いますが、この点についても今回の本筋とは違うのでまたいつか。</p> <p>具体的にセレッソの4-4-2⇒4-3-3システムになぜここまでやられてしまったかを見ていきます。前述の通り、結果に繋がったのは奥埜の立ち位置とプレーでしたが、全体の構造として、そして全体を構成する部分の要素ひとつひとつをして、浦和はセレッソの4-4-2⇒4-3-3の機能性に全く対応できず、上回られてしまいました。</p> <p>まず重要なのはここ数試合対戦するたびにほぼ完ぺきなプレーをみせている鈴木徳真のアンカーワークの質と、戻ってきたキムジンヒョンを加えたセレッソのビルドアップ隊への規制がほとんどできなかったことになると思います。試合後のコメントで佳穂が言っていた通り、ここで規制が全くかからなかったことが浦和の勝ち筋を霞ませてしまいました。やっぱり調子が良かったときの浦和は松尾と佳穂のプレッシングで相手のビルドアップに制限をかけて、残りの8人が予測を持って前向きに圧をかけることでペースを掴んでいくのがパターンでしたし、リカルドもそれが生命線と感じていたからこそ7月~8月にかけてスタメンを固定気味にして起用していたと思います。実際に走っていた松尾や佳穂からすると、長い距離を追い回してもキムジンヒョンのところでぽーんと簡単に逃げられる上に正確に配球されてセレッソの前進が始まる=自分はブロックまで早く戻るためにまた走らないといけないという状況にされてしまうと、さすがに精神的にきつかったでしょうね。</p> <p>さらに浦和にダメージを与えたのが、セレッソから見て守備から攻撃に切り替わった瞬間に裏へのフルスプリント・アクションを繰り返していた加藤陸次樹や為田の仕事ぶりでしょう。このアクションに浦和の最終ラインが引っ張られてしまい、大きくラインを下げさせられてしまいました。試合序盤に多くみられたように、浦和からみて攻撃から守備に移るネガティブトランジションでのボール奪還プレッシングは現在の浦和の基本的な戦術で、ゲームの流れを引き寄せる大事な要素です。ただ相手の強度の高い裏へのアクションで浦和の最終ラインが引っ張られると、ボールに寄せて一気に奪いたい中盤から前との距離が開いてしまいます。また、カウンタープレッシングが発動しない場面でも、こうして下げられた最終ラインは浦和の2トップとの距離を空けてしまい、浦和の2トップがセレッソのビルドアップ隊を捕まえるためにかなり長い距離を追い回して頑張っても、後ろの8人が遠すぎてどうにもならないという以下同文。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927213111.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>こうして後ろと前の距離感が大きく開いたことで、IH化するセレッソの上門と奥埜のプレーエリアが広がり、そこに入れ替わりに落ちてくる加藤や為田といった選手のプレー効果も増していきます。セカンドボールを浦和側に拾われたとしてもバランスが整っているのはセレッソのほうなのでゲームの主導権争いで基本的な優位が取れますし、浦和の2トップがプレスに出て、さらに最終ラインと中盤の4-4が下げられたことで生まれたスペースでアンカー役の鈴木徳真がフリーでプレーできる優位性も生まれます。1失点目は奥埜を使ったワンツーと見せかけて鈴木徳真が関わって裏へのパスを出すことでサイドを攻略し、2失点目は一度詰まらせたサイド攻撃をこの状態で悠々とプレーする鈴木徳真にやり直されてしまったことでクロスまで持っていかれてしまいました。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="ちなみに1失点目も浦和の2トップが鈴木徳真をマークできずフリーでプレーされてしまった。"> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927213950.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <figcaption class="mceEditable">ちなみに1失点目も浦和の2トップが鈴木徳真をマークできずフリーでプレーされてしまった。</figcaption> </figure> <h5 id="浦和は何ができたなかったのかまたはすべきだったのか">浦和は何ができたなかったのか、またはすべきだったのか</h5> <p>で、噛み合わせや構造上かなり不利な試合をさせられたというのはわかったので、浦和はどうすればよかったんだい!という部分ですが、身もふたもないことを言えばこのセレッソの構造に付き合わないという選択肢がまず考えられると思います。どうせ規制できないなら無駄に相手を追いかける必要はないわけですし、よく考えると試合が始まる前はアウェーゴール差で浦和が有利なのですから、点を取らないといけないのはセレッソの方です。だったらセレッソが突っ込んでくるのを待てばいいじゃないと。で、プレスに行く必要がないなら別の選手が使えるじゃないと。それはもちろん江坂とキャスパーのセットなわけですが、後半の苦し紛れとも言える4-3-1-2システムを無理やり機能させていた彼らの個人の能力というのはやっぱりセレッソにとっても警戒対象だったと思います。変なことを言えば、浦和が松尾・佳穂のメンバーで試合に入った時点でセレッソの小菊監督は賭けに勝っていたというか、4-4-2⇒4-3-3可変を採用すると決めた時点でセレッソは最終ラインの前のスペースが一時的にでも鈴木徳真一人になるリスクを負っていたわけで、ここでボールを受けた江坂がひらりと前を向いたらどんな試合になったかなと考えてしまうわけです。</p> <p>でもわかりますよ、リカルドはそういうゲームはしないんでしょ。もしかすると、ここ2シーズン小菊さんに散々上手を取られて苦杯を舐めさせられていたし、それ以前に小菊さんのサッカー観というか彼がつくるチームへの親近感・リスペクトもあっただろうし、正面から倒したかったんでしょ。もしくは、こんな形で圧を掛けてくるとは思ってなかったんでしょ。それでいいかは別として、現場責任者の監督が戦い方を決める特権を持ってますから、こういうことはリカルドの裁量と責任で決めてもらうしかありません。</p> <p>ではもうちょっと現実に即して、キックオフの後に何ができたかを考えてみましょう。まずは相手の4-4-2⇒4-3-3可変に気づきます。そこからですよね。先制点が入るまでの23分間、そして致命的な2失点目までのその後7分間。このどこかで浦和側の戦術的なアクションが必要でした。ひとつあるとすれば早い段階で佳穂を落とし4-5-1でセレッソを迎え撃つ形に変えることでしょうか。これはおそらくここまでのリカルド・レッズでは一度も採用していない方法なので現実味があるかと言われれば微妙ですが、少なくとも相手の4-3-3可変に対して中盤の枚数を揃えて対処するということで、先手を取りに行って後手を踏むみたいな状況にはマシな形で対応できたかもしれません。もしくはなんとかして5バックにしてしまうことですかね。大久保を左WBに、佳穂を中盤に落として松尾と松崎の2トップで5-3-2ブロックを作るとか。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927214618.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>どれもこれも守備的なやり方なので、もうちょっと違う目線で違うやり方を考えるなら、左SB役の人選変更はあり得るかもしれません。これは浦和のビルドアップの局面で頻発していたポイントの改善が目的です。浦和が最終ラインでボールを保持している場面ではセレッソは前4枚が一気に距離を詰めてきます。浦和のボール保持の仕組みは岩尾がアンカー気味になる形がメインで佳穂と敦樹がそれぞれ左右のヘルプに入りますが、高いラインを維持するコンパクトなセレッソは中盤のスペースも消しています。ということは裏を狙いたいわけですが、最終ラインには当然時間がありません。従ってできればボールを逃がした先のSBから縦にボールを動かしたいのですが、左利きの明本にボールを預けても、ゴール方向から来たボールを左足で前に蹴るには山中並みのアウトサイドキックで蹴っ飛ばすしかないので難しいです。実際明本はうまくトラップして身体を入れたりタッチライン側にターンしたり相手にぶつけてスローインにしたりと頑張っていましたが、前にボールを出せたのは1回あるかないかではないかと思います。この裏で、実は明本がボールを受けた瞬間、一列前の大久保や松尾はずっと、前に出るセレッソの右SB松田の裏へのアクションをしていました。特に多かったのは大久保が降り気味に松田を引っ張って松尾が抜けるパターンだったと思いますが、タイミング的にここには明本からダイレクトでボールを出さないと間に合いません。ミシャの時代に槙野がウガを走らせていたアレです。アレじゃないと無理なんですが、残念ながら一回も出ませんでした。もしアレが出せていれば、その成功確率はともあれ、松尾がサイドに抜けて相手のプレスから脱出できるばかりか、構造上セレッソの守備の要であるヨニッチをサイドに引っ張れますので、その後のクロスや崩しにも多少期待ができたかも。浦和がセレッソ戦で苦労する要素の一つとして、ヨニッチを外せない、超えられないというのは結構大きいと思いますので、槙野のアレを使いたかったですね。</p> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220927/20220927215115.png" border="0" title="" width="1200" height="900" loading="lazy" /></p> <p>具体的にどうするかと言うと、例えば敦樹か岩尾を左SBの位置に落として、その分は佳穂をボランチに落として大久保を内側に入れるとかで対処できそうですね。ちょっとポジション移動する選手が多いので試合中に実践するには準備が必要そうですが、とにかく受ける側の松尾や大久保は狙いを持ってアクションできていたので、ボールを供給する側の仕組みに工夫ができればなあと思って試合を見ていました。</p> <p>2失点後についてはあまり語る必要はないと思います。あの2点目が決まってしまって有利だったはずの対戦で3点が必要になってしまった時点で浦和としてはゲームが絶望的に難しくなり、正直万事休してました。とはいえ後半の4-3-1-2システムはカウンター対策を無視すれば何かが起きそうなロマンがあったし、後半から出場してチーム最多のシュートを撃ち、右SBに移れば大外ランから惜しいクロスを供給した馬渡のパフォーマンスは素晴らしかったです。ただPSG戦以来ずっと出場するたびに球際の攻防で膝から崩れるように倒れているので、足腰の筋肉や身体のコーディネーションがトップパフォーマンスから程遠いのだろうなあということも容易に想像できました。あと、どんなに失点しても声で鼓舞し続けたゴール裏の皆さんは素晴らしかったです。最後の方は「俺たちはやりきったぞ、お前らはどうなんだ」って言うための意地かもなって感じもしましたが、それもまた浦和らしいし。</p> <p>まとめると、浦和はゲームに臨む時点で状況を活かした作戦を立てることができませんでした。つまり、戦術パッケージを選ぶ時点でリスクが高いかそもそもハマらない間違ったチョイスをしてしまいました。これは結果論としても、それを把握した時点でやり方を変えるという部分で不足があり、連続失点で早々にゲームを壊してしまいました。これまでのリカルド・レッズを観ていても、作戦が上手くハマらない時に一度相手に合わせてでも相手の勢いを受け止めてゲームのコントロールを取り戻し、そこから次の手を考えるというような戦い方が正直あまり得意とは思えません。この点は今後も闘うことになるのであろうセレッソとの対戦はもちろん、「リーグで勝ち続ける」ことを考えた時に必ず対峙することになる準備した作戦がハマらないことはあるはずなので、なるべく早くチームとして身につけたい要素かなと思います。加えて、ボールを繋いで相手陣地に前進していくという部分でも、ボトルネックをなるべく早く解消する戦術的対応策(例えば左SBに右足で裏に蹴れるような選手を配置するための可変)をより多く備えておくことも必要だと思います。それと、試合後の岩尾のコメントでは、「セレッソのプレスのスピードに対して浦和のポジション取りのスピードが遅れた、また個で剥がす部分が出なかった」という趣旨のコメントがありましたが、これを突き詰めると、かの風間八宏教祖のトメルケルを突き詰めるというところに繋がってくると思います。</p> <blockquote> <p>「ピッチの中で打開策は探していましたが、相手のプレスが整理されているところも含めて、なかなか穴を見つけられませんでした。相手を見てポジションを取るスピードよりも、相手のプレスのスピードのほうが速かった。自分たちがポジションを取ることに時間をかけてしまって、それ故にハマってしまったわけです」</p> <p><a href="https://news.yahoo.co.jp/articles/2b4e2cfd1a27210dfb5982dfb51ff245e9d1d3ea">&#x3010;&#x6D66;&#x548C;&#x3011;&#x5CA9;&#x5C3E;&#x61B2;&#x306F;&#x300C;&#x3053;&#x308C;&#x304C;&#x73FE;&#x5B9F;&#x300D;&#x3068;&#x30CF;&#x30FC;&#x30C9;&#x306A;&#x81EA;&#x6212;&#x3002;&#x5FC5;&#x8981;&#x306A;&#x306E;&#x306F;&#x300C;&#x7D71;&#x4E00;&#x6027;&#x300D;&#x300C;&#x6642;&#x9593;&#x304C;&#x306A;&#x3044;&#x4E2D;&#x3067;&#x500B;&#x3067;&#x30BA;&#x30EC;&#x3092;&#x751F;&#x3080;&#x4F5C;&#x696D;&#x300D;&#xFF08;&#x30B5;&#x30C3;&#x30AB;&#x30FC;&#x30DE;&#x30AC;&#x30B8;&#x30F3;Web&#xFF09; - Yahoo!&#x30CB;&#x30E5;&#x30FC;&#x30B9;</a></p> </blockquote> <p>奇しくも教祖はこの試合の解説をしていたわけですが、浦和に対してしっかり「ボールが止まっていない」と指摘されていました。こういうサッカーをやる以上、彼が指摘するような個人技術・個人戦術の向上もこれまで以上のペースと徹底を以て突き詰めていかないといけないんでしょうね。この部分は確かに改善の余地があると思います。</p> <h5 id="残りのシーズンをどう過ごすのかそれに意味はあるのか">残りのシーズンをどう過ごすのか、それに意味はあるのか</h5> <p>最後に軽く、今シーズンの残りの話を。この試合の敗戦は浦和レッズにとって非常にショッキングなものとなりました。それは単にルヴァンカップの決勝進出、タイトルの可能性を逃したと言うことだけではなくて、既にこの「3年間」の大目標である2022シーズンのリーグ優勝がなくなっている現実を見た時に、「ここまでやってきた道の先に優勝があるのか?リカルドにこの先も任せるべきなのか?」という疑念を具体的に抱かせてしまう内容の敗北であったという意味で、です。やはり掲げた目標が達成できなかったという現実がある中で、「ある程度はできた、できるようになった」というだけでは説得力はありませんし、この試合でできなかったことのほとんどは、リカルド・レッズの強みだと思われていたことなのです。強みだと思っていた部分が明確に通用しなくて、それでいいのかよとなるわけです。</p> <p>「3年計画」そのものへの賛否や納得感は人それぞれなので、サポーターの総意というものはないのかもしれませんが、とはいえクラブが主体的に「浦和のサッカー」を定義しようとし、様々な理論やアプローチを用いて持続的に、体系的に強くなろうとしているこの取り組みには一定の意味があるはずで、そうであればこの流れを守るために、クラブは、そして個人事業主としてのリカルドはここまで取り組んできたサッカーとこの道の先にある浦和レッズに未来と可能性があるということを最低限示さなければなりません。そういう意味で、似たような志向を持ち、現在の監督就任からの経過時間もほぼ同じチームに手も足も出ず、シーズン4回戦って一回も勝てず、ベンチワークもピッチ上の質も足りないまま負けてしまったこのゲームのショックが大きいわけです。</p> <p>大袈裟に言えば、このままでは「似たような時期から似たようなことを始めたチームに強みと思っていた部分で明確に勝てていなくて、このペースでやってたら何年かかるの?このペースではダメなのでやり方を変えるべきなんじゃないの?」という意見を抑え込めません。もちろん小菊監督のセレッソはロティーナ時代のエッセンスを多分に引き継いでいるので実質は同じ取り組み期間ではないとか、浦和は主力をうまく戦力化できない事情があったとか、いろいろと議論になりそうな要素はありますが、それはリーグ優勝を目指すならどのシーズン、どの時期でも飲み込んで勝たなければいけないもの。そういう意味で、今季の浦和はこういうチームには、こういうチームにだけは勝たなければいけませんでした。少なくともこうした大敗はすべきではありませんでした。取り組みのスタートで明らかに遅れをとっているクラブや方向性・カラーが全く違うクラブにはともかく、似たことを同じくらいやってきた競争相手に負けると、これでいいのかという疑念はどうしても生じてしまいます。</p> <p>なので今シーズンの残りの試合は、リカルド・レッズが間違っていないこと、この先に可能性があること、今季は、このセレッソ戦では難しかったとしてもチームが強くなるペースは十分に早いこと、要約すれば、「このチームがちゃんと闘えること」を示す戦いにしなければいけないと個人的には思います。違う言い方をすれば、一つでも高い順位とか勝ち点がいくつとか、そういう数字での比較ももちろんですが、定性的に「このチームは、リカルドのサッカーはちゃんと闘えるし強くなっているので大丈夫です」というメッセージを内外に発せられるかどうかが大事なのではないでしょうか。そのために必要なのは、対戦相手への準備だとか、作戦が外れた時の修正だとか、状況に対応するための戦術の引き出しとか個人の技術とか、このエントリでここまで見てきたような要素を残りの試合で強みとして見せていくということでしょうし、今季ここまで目立てていないながらも可能性のある選手を見出して使っていくということでもあるかもしれません。</p> <p>そんなわけで僕としては、今シーズンの残り5試合は消化試合になったとは言え浦和レッズのこの先数年にとって非常に重要というか、いくつかの未来への枝分かれになるような5試合になるのではないかと思います。そのどれが良い未来で悪い未来なのか、どうなれば一番良いのかはもちろんわかりませんが、この道を進みたいのなら、ここから5試合の内容と結果は決定的に重要になるのではないかと考えてしまうのです。そして残りの対戦相手である広島、鳥栖、札幌、マリノス、福岡はどのチームも御しがたく、そうしたテストをするのに十分すぎるほどの対戦相手だと思います。</p> <p> </p> <p>というわけで今回のチラ裏はこのへんで。またそのうち。</p> reds96 「レッズファミリー」という言葉への小さな違和感の話 hatenablog://entry/4207112889913127356 2022-08-29T22:35:49+09:00 2022-08-30T14:35:50+09:00 「レッズファミリーが一丸となった勝利」 2022年のACLは物凄い闘いでした。ラウンド16からのノックアウトステージは日本が立候補したことで埼玉でのセントラル開催、しかも一発勝負での決着となり、浦和にとっては非常に有利なレギュレーションでしたが、それでも全北との準決勝は近年稀に見る熱いゲームとなりました。韓国勢とのPK戦になったというのもありますけど、ほんと、15年ぶりくらいの熱気だったと思います。 で、そんな熱戦を伝えるためにメディアによく使われたのが「レッズファミリー」という言葉です。いや、別にいいんですよ。「ファミリー」と呼ばれたくないというわけではないし、全北戦にあたっては、会見でリカ… <h3 id="レッズファミリーが一丸となった勝利">「レッズファミリーが一丸となった勝利」</h3> <p>2022年のACLは物凄い闘いでした。ラウンド16からのノックアウトステージは日本が立候補したことで埼玉でのセントラル開催、しかも一発勝負での決着となり、浦和にとっては非常に有利なレギュレーションでしたが、それでも全北との準決勝は近年稀に見る熱いゲームとなりました。韓国勢とのPK戦になったというのもありますけど、ほんと、15年ぶりくらいの熱気だったと思います。</p> <p>で、そんな熱戦を伝えるためにメディアによく使われたのが「レッズファミリー」という言葉です。いや、別にいいんですよ。「ファミリー」と呼ばれたくないというわけではないし、全北戦にあたっては、会見でリカルドが「ファミリア」と言う表現を使ったことがメディアのワードチョイスに影響を与えたのかもしれないし、そもそも「一致団結」を表現するリーズナブルな手段ですから、毎回毎回「ファミリー」と呼ばれることに難癖つけたいわけではないんです。これは、『ただ僕の感覚でいえば「ファミリー」という言葉は浦和レッズ全体の、もっというと埼スタの雰囲気の根っこにある感覚、PRIDE OF URAWAに表現される感覚とちょっと違う気もしてしまうのですよ』というだけのことなんです。誰かを説教したいわけじゃないんです。そう、これはチラシの裏なんです。読まれなくても大丈夫なんです。</p> <p>というわけで、言いたいことは下のツイートでざっくり書いてしまったんですが、たぶんポイントは「街」感だと思ってます。</p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">なんか、ファミリーって人間にフォーカスしてますよね。そこに「街」を感じないのが引っかかるなと思ってます。浦和の場合、クラブよりも大きい浦和の街とか地域としての浦和がまずあるのが大事な気がするので、なんとなく浦和ファミリーと言われると気持ち悪い気もします… <a href="https://t.co/JSkddFebCn">https://t.co/JSkddFebCn</a></p>&mdash; 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1564196622233264129?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年8月29日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p>クラブだけじゃなくサポーターも一体になったコミュニティや、関係者の連帯を表現するときに使われる「ファミリー」という言葉ですが、やっぱり言葉の意味合い的にも人間をフォーカスしている言葉ですよね。美しい言葉だと思うし、「立場を超えて繋がろう」的なメッセージには便利だと思うんですが、浦和を語る時にはやっぱり「街」や「地域」が意識されてほしい気がしています。</p> <p> </p> <h3 id="浦和という街のサッカーの歴史の延長線上で">浦和という街のサッカーの歴史の延長線上で</h3> <p>成り立ちの細かい話は別にしても、浦和レッズというクラブは「サッカーの街・浦和」を背負い、代表するんだという意識が強いと思うんですよ。だからこそエンブレムに鳳翔閣が描かれたのだと思うし、サッカーに対するこの土地の歴史や地域の盛り上がりこそが、お荷物時代の浦和を熱く支えたということもあったでしょうし。例えば清水エスパルスとの「王国」に絡んだ煽り合いなんかはこの感覚が強く出ているなと思うところで、これは「浦和レッズ」と「清水エスパルス」のライバル関係というより、浦和の街と清水の街とか、もっと具体的には浦和と名のつく高校と清水と名のつく高校が選手権優勝を争った歴史やライバル関係みたいなものを意図的に引き継いだものだと思うわけです。そういうレッズに限らない「浦和サッカーの歴史」みたいなものをひっくるめてPRIDE OF URAWAが成り立つのだと思うし、逆にいうと「クラブとしての浦和レッズだけのプライド」って感覚は個人的にはあまりなかったりします。いや、ACLなんかで浦和レッズというクラブが積み上げた名前と歴史はもちろんあるんですけど、そういったものと浦和の街、地域としての浦和を切り離す感覚がないというか。そうやって不可分なものとして、浦和という街のサッカーの歴史の延長線上で、サッカーの街・浦和を今現在一番目立つところで代表してきた、していくのが浦和レッズ、みたいな感覚なのかもしれません。</p> <p>少し話は逸れますが、僕が浦和レッズにハマったきっかけもこの感覚に繋がっています。自分ではバスケをプレーして、野球もよく観ていた僕でしたが、いわゆる推しチームは特にありませんでした。こういう性格なのでどこか一つのチームを応援するのに根拠が欲しくて、たぶんなんのゆかりもないものに人生の時間をどっぷり使うことに抵抗があったんだと思います。なんとなくで応援しても、すぐ飽きそうだし。プロ野球では埼玉には西武ライオンズがありますが、僕の当時の狭い地元感覚では所沢には縁がなかったし、ロッテの2軍が浦和で活動していると言ってもロッテは千葉のチームだったし(そもそもマリーンズって。海ないし。)、バスケを観ていてもNBAはおろか日本の実業団クラブにも「思い入れの根拠」はなかなか見つけられなくて、なんとなくそんな感覚があったときに自分の育った街にある「浦和レッズ」が凄くしっくりと僕の中にハマったんでしょうね。「そうか、浦和育ちでなんやかんやサッカーが身近な人生送ってきたんだから、浦和の街にあるレッズを大事にすればいいんじゃん」みたいな。もしかするとこの瞬間は僕にとって「浦和育ちの自分」というアイデンティティの発見でもあったのかもしれません。こういうこと言うと土地としての浦和にあまり縁がなくてもレッズを応援してくれている方々を下に見るように取られるかもしれませんが、そういうことではなくて、あくまで僕の中の「思い入れの根拠」に「レッズが浦和にあること」が凄くハマったという話なんですけど、伝わりますかね?特定の試合の思い出とか、特定の選手の活躍とか、そういった何かしらの「思い入れの根拠」があれば、別にその上下は関係ないと思いますので気を悪くしないで欲しいのですが、その時には海外サッカーも多少追いかけていた僕は「海外の100年以上の歴史があるようなクラブのファンは街や歴史のことを歌うよなあ」っていうのがすごく印象に残っていて、なんだかそこに、土地との縁、積み上がっていくもの、自分の帰る場所みたいなものを感じて憧れていたのかもしれません。これって、海外の古い建物を残していく文化への憧れにも近いですね。当時(もしたかしたら今でも)Jリーグのクラブには歴史があまりなくて、平成初期感のあるビジュアル的なセンスとかを含めてなんだかプラスチック製のような印象を持つ人もいるかもしれませんが、でもあの時の僕には「自分が育った浦和の街を代表するクラブを応援していくって、海外の人たちが100年歴史を見届けてきたのと同じことじゃん!」みたいなポジティブな感覚がありました。そういうわけもあって、僕の中ではレッズが自分の街、浦和の街にあることはすごく重要で、「サッカーの街・浦和」が行政の作ったキャッチフレーズだとしても、なんとなく浦和レッズは浦和という土地と不可分だし、「俺の街の」浦和レッズなんですよね。だからこそ、「街」を感じにくいくくりに小さな違和感があるのかもしれません。時々浦和がめちゃくちゃ無様に負け続けていたりサッカー的に全然面白くなかったりフロントが迷走してると愛想を尽かしてしまう人もいますけど、僕があまり浦和レッズのファンなんかもう辞めた!と思わないのはこの感覚のせい、もしくはそのおかげだろうし、「俺の街の」浦和レッズという、自分の人生との不可分な接点を持っていることは今のところ「思い入れの根拠」としてよく機能しているなと思います。だって強くても弱くても「俺の街の」クラブであることは変わらないし(いや強い方がいいんですが)。裏を取るとこういう感覚でサッカーに入っているから海外の特定クラブを応援できないし、サッカーより浦和レッズが好きとか言うんでしょうね、僕。</p> <p> </p> <h3 id="ファミリーという言葉のそこはかとない暖かさ">「ファミリー」という言葉のそこはかとない暖かさ</h3> <p>で、話は戻って「ファミリー」への違和感ですが、もっとイメージしやすいものに、クラブやチームとサポーターの関係、もしくはサポーター同士の関係性もあるかもしれません。すっごい雑にいうと、「ファミリー」って言葉ほど仲良くないですよね、僕ら。仲良くないっていうか、もっと殺伐として、闘争心が前面に出てますよね。「ファミリー」という言葉のそこはかとない暖かさ、包み込むような感覚みたいなものが、僕の感じた小さな違和感のひとつなのかもしれません。暖かさとか、通り越しちゃって熱いし。なんていうか…「群れ」…みたいな…?スポンサーをまとめる言葉とか、トップチーム、レディース、育成年代までのチームや内部の人たちをまとめる言葉としてはいいと思うんですけどね、「ファミリー」。サポーターをまとめて「ファミリー」と公式に呼んでいるクラブもありますが(名古屋とか)、浦和はちょっとその感じとは違いますね。海外のクラブはどうしてるんですかね。リバプールのKOPみたいなのつけばいいんですけどね。意識して真似するとダサいので、何もなくていいんですが。</p> <p>こういう関係性をどんな言葉で表すのが正解なのか、今のところあまり思い付かないのですが、こういう感覚もひっくるめて「浦和」の一言で済ませるのが便利だなあと思います。違う言い方をすると、「浦和」という言葉には、歴史を含む土地の名前としての浦和であったり、単純にクラブのことであったり、選手たちが集合写真を撮っている後ろで「まだ何も達成していない!」と喝を入れるキマり気味の熱量であったり、数々の情けない姿や敗北であったり、それでも次の勝利のために平日夜に集まって歌いながらジャンプしたり夢中で手拍子したりするこのコミュニティのありようみたいなものが包含されているなあと思うわけです。だから僕がもし「みんなが一つになったなあ」と思ったら、シンプルに「浦和一丸」という言葉を使うような気がするわけです。</p> <p>そんなわけで、思うままにこんな文章をiPadで打ち込んでいたら、画面をチラ見した妻に「何その画面、文字ばっかで気持ち悪い…」と言われました。終わります。さようなら。</p> <p> </p> <blockquote> <p><span style="color: #ff0000;">※追記</span></p> <p>エントリをTwitterに落としたら思ったよりも反響が大きかったので、変に荒れる前に気づいたことを。</p> <p>いろいろ感想を貰って、僕と同じ感覚の人もたくさんいて安心したのですが、「こういう意見は分かるけど土地や街の話を持ち出されると気後れしてしまう」とか「下手すると排他的になってしまう」というご意見も見つけました。これ、そうかもしれません。もちろん僕にそんな意図はなかったのですが、言わんとしていることはともすれば純血主義者っぽく読まれかねないなと後になって思いました。浦和という土地と縁があって浦和レッズを応援できている自分はある意味で幸運だと思うし、書いたことを撤回するつもりはないのですが、同時に排他的な考え方にならないように気を付けないといけないし、何より浦和レッズの持続性のためにも「外から来た人」を僕たちの仲間として迎え入れる精神は大事だなと思いました。でもやっぱりその時にも、浦和レッズだけじゃなくて浦和という土地と繋がっている浦和レッズを感じて欲しいというのも本音ですが。もちろん浦和育ちの人のためのクラブという押しつけをしたいわけじゃないし、そもそもどんな土地も来る人を拒むことはなくて、このエントリは『「ファミリー」という言葉に引っ掛かったことをきっかけに、あっ僕って「クラブと地域」という視点を大事にしてるんだな、と気づきました』というだけの話なんですけど。もしかしたら僕の題名のつけ方が悪くて、言葉遣いに文句を言いたい人の文章と思われてしまうところがあったかもしれないので、その点は反省です。</p> <p>そんなことを書いていたら、「土地との縁は薄いかもしれないけど君も浦和レッズを応援する俺たちの一員だね」というもっと大きくてもう一段高い場所からコミュニティをまとめる言葉として「ファミリー」をあえて使うならそれもありなのかなとも思いました。なんとなく、一周回った感があれば。そういう意味では、こういう生々しい感覚の話をして一周して戻ってくるのにも多少の意味があるかな?とも。</p> <p>まあ、所詮チラ裏なんで気を悪くしないでください。よろしくです。</p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">大事にしたい人だけがひっそり大事にしていればよいってやつですね、きっと。 <a href="https://t.co/3LR88YYEIM">https://t.co/3LR88YYEIM</a></p>&mdash; 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1564469714134257665?ref_src=twsrc%5Etfw">2022年8月30日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> </blockquote> <p> </p> reds96 【2022シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト hatenablog://entry/13574176438104117941 2022-07-01T12:16:32+09:00 2023-08-06T01:13:02+09:00 さあ今季もやってきました。僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。今年の夏のウインドーは7月15日から8月12日まで。夏の移籍はスピード感と勢いが大事なので、乗り遅れないようにしっかりと備えておきたいところ。とはいえ今季は浦和以外の試合をあまり観ていないので、今季はこいつだろ!という選手を外しているかもしれませんが、あくまで僕が観た中でのものですので、そういう理解でお楽しみいただければと思います。ちなみに去年のリストはこちら。 www.urawareds96.com 記載ルールは昨年と一緒で、★がついている選手は特に気になっている選手でございます。なお、昨年までに選んだもし… <p>さあ今季もやってきました。僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。今年の夏のウインドーは7月15日から8月12日まで。夏の移籍はスピード感と勢いが大事なので、乗り遅れないようにしっかりと備えておきたいところ。とはいえ今季は浦和以外の試合をあまり観ていないので、今季はこいつだろ!という選手を外しているかもしれませんが、あくまで僕が観た中でのものですので、そういう理解でお楽しみいただければと思います。ちなみに去年のリストはこちら。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【2021シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F08%2F12%2F193758" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/08/12/193758">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p>記載ルールは昨年と一緒で、★がついている選手は特に気になっている選手でございます。なお、昨年までに選んだもしくは別途言及してきた選手は選ばないことにしました。引き続き大注目の選手はいるのですけどね、町野とか、鳥海とか。</p> <p> </p> <h5 id="後藤雅明-モンテディオ山形-GK1994年5月生28歳191cm83kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">後藤雅明 :モンテディオ山形 ・GK・1994年5月生(28歳)191cm/83kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="後藤雅明 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1604772%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1604772/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>今季からモンテディオの守護神として素晴らしいパフォーマンスを見せている中堅GK。大卒なのでプロ6年目となるわけですが、良い経験を積んでおりもはやJ1で通用する選手になってきているのではないでしょうか。191cmのサイズは日本のGK新時代のスタンダートを満たしていると言えますし、安定したシュートストップに代表される守備能力も魅力ですが、モフモフスキー監督の下ボールを保持しポジショナルの要素を盛り込んだサッカーをみせている山形にあって、ビルドアップでも貢献できるGKとなっているというのが付加価値の高さでしょう。</p> <p>これはGKに限ったことではないですが、ビルドアップに貢献できると言ってもいろいろとタイプはあるもので、足元の技術がめちゃくちゃに上手くてFPのようなトラップを披露できるタイプとか、フィードが非常に上手いとかですが、後藤を観ていていいなと思うのは中距離の浮き球を味方につける能力ですね。特に右サイドから戻ってきたボールを左サイドにダイレクトで展開するキックが上手く、ハーフラインを超えない微妙な位置に降りてきた味方選手に正確にボールを届けてくれるのはプレス回避を設計するにあたって非常に心強いです。J1だとキムジンヒョンが上手いあのキックが出来る選手ですね。</p> <p>年齢的には若干高めですが、GKというポジションであれば全盛期はこれからでしょうし、賞味期限はまだまだ長そうです。体格・守備面・ビルドアップ・そして経験値と各能力のバランスが取れたGKはレアだと思うので、金沢から今季移籍したばかりですが今年のオフにJ1ステップアップがあっても驚かないかなという感じです。</p> <p> </p> <h5 id="野澤陸--ヴァンフォーレ甲府DF1998年12月生23歳185cm80kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">★野澤陸 : ヴァンフォーレ甲府・DF・1998年12月生(23歳)185cm/80kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="野澤陸 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1632206%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1632206/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>甲府は昨シーズンからとても面白い選手がたくさんいて、個人的にはよく観るチームであります。現在はJ2で十桁順位に甘んじておりますが、自動昇格争いを繰り広げる上位3チームとの勝ち点差ほどタレントの魅力に差があるとは思えないチームです。</p> <p>鳥海、長谷川、須貝、宮崎などなど良い選手はたくさんいるんですが、今回ピックするのはDFラインの野澤陸。3バックの左CBとしてプレーしていますがもともとはFWだとか。流行りの左利きではありませんが、柔らかい右足のフィードに加えて、最終ラインからどんどん運んでいけるプレーが魅力的。ふてぶてし気味の佇まいがどことなく岩波に似ている気がしますが、岩波よりも機動力は上ですね。ボールプレーが上手なことに加えて、自分の周囲のスペース認知が上手そうに感じます。ボールを運んで前線に出て行ってもばたつかない印象があるのは、元FWというところが影響しているのかな?と思ったり。</p> <p>一方で守備者としての経験値はもう少し必要でしょうし、激しいトランジションや単純なスピード勝負への対応などまだよく観れていない部分もあるので、年齢を考えてもこの夏もしくは今シーズンのオフにどうこうという感じではないかな?という印象。とはいえ大卒選手なのでステップアップの道筋が見えれば決断は早いかもしれないので、3バックをメインに運用しているチームか、浦和のように4バックと3バックを行き来したいチームにはお勧めされそうな選手。メンタル面がわかりませんが厳しい先輩かショルツみたいな真のプロフェッショナルの横で成長させてみたくなります。浦和でみてみたい選手の一人。</p> <p> </p> <h5 id="川井歩-モンテディオ山形DFMF1999年8月生22歳177cm65kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">川井歩: モンテディオ山形・DF/MF・1999年8月生(22歳)177cm/65kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="川井歩 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1605454%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1605454/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>広島ユースから昇格したものの広島ではチャンスをつかめず、レノファから今季山形に移籍してきたサイドプレーヤー。シーズン当初は出場機会を掴めていなかったようですが最近よくプレーするところを見ます。U-18代表にも選ばれていた選手なので、育成年代では知る人ぞ知るエリートかも。川村拓夢と同期。基本はSBの選手だと思ってるんですが、合ってますかね?</p> <p>彼の魅力は何といってもパスを前につけながら自分がどんどん前に上がっていくプレースタイルで、まるで右SHがもう一枚プレーしているようなクオリティのオンザボールの質を期待できます。ボールの持ち方が中盤の選手っぽいんですよ、観ればわかる。で、前にボールを当てつつサイドの高い位置まで侵入し、最終的には精度の高いクロスで仕留めるのが得意なプレーではないかと感じます。特に外側にこだわるでもなく内側に入っていけそうな雰囲気も出しているので、「そういうチーム」で良さを発揮できるタイプかも。攻撃面で凄みが出てくれば右SBとしては川崎の山根とか、馬渡のような雰囲気・系統の選手になりそうな予感。</p> <p>そういう選手なので、やはり懸念は守備になりそう。ダメという印象はいまのところないですが、ポジショニングが怪しいシーンは散見され、そのせいで遅れた対応から外されてしまうことがあるのは改善点かも。今シーズンも序盤は「モンテの至宝」半田陸のサブ扱いという感じで、出場機会を掴んだ第6節以降はプレーが認められたのか左SBとしてながら半田と同時起用されるようになり、その後は半田がいなければ川井を右SB、半田が使えれば半田を右SB、川井を右SHとする運用もみられるように…という感じで、右SHでも使われているところをみると、チーム内でも守備よりも攻撃の選手という評価のようです。個人的には彼は右SBを極めたほうがキャリアの天井が高い気がするし、後ろからボールを運んで攻撃にアクセルを入れられる選手はユニークだと思うので、期待しています。</p> <p>あとは、ボールスキルや推進力があるとはいえ置いておけばビルドアップを作ってくれるタイプではなく、右SHとしても対面の相手をベリベリ剥がしてくタイプの選手ではないと思うので、使い方と戦術のマッチングが重要かもしれません。この意味では山形は彼にとって良いチームに思えますね。</p> <p> </p> <h5 id="新保海鈴-テゲバジャーロ宮崎DFMFWG2002年8月生19歳171cm64kg左利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">新保海鈴: テゲバジャーロ宮崎・DF/MF/WG・2002年8月生(19歳)171cm/64kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="新保海鈴 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1630110%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1630110/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>本企画では初めてJ3からの選出。とはいえレノファ山口からのローン移籍中なのですが。柏のU-12/U-15、セレッソU-18を経てセレッソU-23でプレーした後レノファへ移籍。レノファでは3試合しか出ていないみたいなので、ここまで所属したクラブの選手という印象はあまりないかもしれません。田中隼磨とMALIAの息子という覚え方をしている人もいるかもしれませんけど。</p> <p>左利きの左サイドで、左SBの印象が強いのですが直近の試合では左WGでもプレーしている模様。濃い目の顔面には似つかない(失礼)テクニカルかつ懐の深いボールの持ち方が特徴の左利きで、キープ力があり組み立ての上手さが目立ちます。なんならちょっとしたエレガントさも感じます。ボールを保持し人数をかけたアタッキングに力を入れているテゲバにあってもビルドアップでボールを落ち着かせ相手を外しながら組み立てていけるのは面白い存在です。</p> <p>試合を観ている感じ、スピードに特徴を感じたことはないのでSBをやるなら弱点になるかも。WGで出ていた試合を観ても大外に張るというよりはガンガン中央に入ってプレーしていたので、加速力で勝負するような選手ではないかなという感じ。ただ走り回る感じの走力はあるし、スペースを見つけて入っていく能力はあると思うので、年齢を考えても今後数年でどういう役割と戦術の中であれば自分の強みを相手に押し付けられるかを見つけられるか、またはそれを提供してくれるチームに行けるかどうかが重要になりそう。ポジショニングを学んだらIHとかでもロマンを感じられそうですが、前の方にいると動き回りそうなので逆に難しいか。なんか特殊な指導理念と指導テクニックを持ったコーチに魔改造してもらったら覚醒しそうな選手。湘南とかにぶち込んでみたい。</p> <p> </p> <h5 id="長峰祐斗-ツエーゲン金沢DF2000年3月生22歳175m67kg左利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">長峰祐斗: ツエーゲン金沢・DF・2000年3月生(22歳)175m/67kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="長峰祐斗 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1635025%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1635025/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>なんかSB多いですね。特に意図しているわけではないんですが。この選手は埼玉平成高校→拓殖大学→金沢特指→金沢内定の大卒ルーキー。埼玉平成高校では川崎の佐々木旭と同期かつ、ということは埼玉県の高校サッカー時代に安居と同じ代で競ってますね。左利きの左SBで、基本的には左脚一本でプレーする選手です。右脚?体重を支えられればいいんだよ、的な。当然左のキックは質が高く、サイドの選手としてスピードもそこそこ、そしてSBとしては175cmの身長もまあまあな安心感です。</p> <p>アーリー気味の位置からえぐいポイントに落としてくるクロスが最大の武器なんですが、拓殖大時代はパスサッカーをするチームだったそうで、ビルドアップへのかかわりも好きな様子。バックラインでボールを受けて素早くルックアップからの左脚でのフィードや縦パスなどの配球はなかなか良いです。さらにプレッシャーが近いところでの味方との近い距離での繋ぎもこなれ感があり、しかもロングスローも投げられるとくればSBとして求めたい攻撃ツールは一通り備え付けのコスパ物件というわけです。</p> <p>ただ、まあルーキーなのでチームの序列とか経験とかいろいろあるんでしょうけど、金沢ではまだ彼のポテンシャルを全て発揮していないのではないかなーと思う節もあります。堅めのオーソドックスなチーム戦術を否定するわけではないのですが、隣でプレーする左CBの松本が長峰を押し出してくれるわけではないし(どちらかというとファイタータイプの松本のビルドアップを介護するために長峰は低めの位置に留まる傾向があるように思います)、その結果左SHを内側にしまって長峰を高い位置に押し出す形もチームとして狙ってはいるんでしょうが回数をもっと増やせそうな気もします。別にフィードも上手いのでいいんでしょうけど、凄いクロスがある君が最終ラインからボール配球してるのもったいなくない?と。基本的には山中、永戸と同じタイプのポケモンなので、こういう選手は戦術で彼らの強みを尖らせてあげるのがいいというか、サッカーファンとしてはそうしたユニークネスが見たいんですが、マルチツールでバランスが取れているが故にマイルド感のある本人とオーソドックスなチーム戦術が彼のポテンシャルに対してちょっとした制限になっているかもと思ったり思わなかったり。</p> <p>というわけで、チーム戦術に思いっきり組み込んでバキバキに尖らせたらどうなるか見たいので、J1組ならマリノスさんとか京都さん、昇格候補組なら新潟あたりが彼のポテンシャルを解放してみて欲しい気もします。派手なキャリアはないですがいい選手です。</p> <p> </p> <h5 id="河原創-ロアッソ熊本MF1998年3月生24歳169cm65kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">★河原創: ロアッソ熊本・MF・1998年3月生(24歳)169cm/65kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="河原創 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1629412%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1629412/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>全国津々浦々のセンターハーフをついつい探しては品定めしてしまう日本中盤真ん中愛好会の皆様、お待たせしました。今季のJ2ボランチセレクションは熊本からのご紹介です。</p> <p>この選手を語るにはまずロアッソ熊本が今年やっていることを紹介した方がいいんですが、まずはフォーメーション表記が3-3-1-3です。もっと言うと、実際プレーしている選手たちは5-1-1-3みたいな感覚ではないかと思います。この5-1-1-3の運用についてだけで結構なボリュームの記事になるネタ(話題)だと思うんですが、ざっくり言うとトータルフットボール的なとんがった思想を感じさせる5-2-3の亜種と言えばざっくりとしたイメージがつかめるかもしれません(?)。この5-1-1-3のアンカー(?)を務めているのが24歳にしてチームのキャプテン、今季のJ2リーグのMFでは唯一ここまでフルタイム出場の河原創です。</p> <p>試合を観るとわかるんですが、熊本は表記上そうなっているというわけでなく、思ったよりも5-1-1-3でサッカーをしてます(マジで一回観て欲しい)。そうすると何が起こるかと言うと、まあアンカーの河原の周囲が空いてきます。もちろん最終ラインからの迎撃であったりトップ下やWGの選手が中盤に戻っての守備参加もあるわけですが、瞬間的にバイタルエリアというか中盤の大事そうなスペースほぼ全てが河原のワンオペになるシーンが当然出てきます。これをカバーするのが彼の仕事なんですが、まずこの理不尽な状況と仕事量に対して文句も言わずに(いや言ってるかもしれないけれど)毎試合フル出場しているのが凄い。そして、瞬間的ワンオペ状態でもなんとかしている彼のポジショニングと寄せの早さ、思い切りが凄い。しかもどっしり構えるタイプではなく割と動き回るタイプで、動きの連続性も高い。身体がめちゃくちゃ強いというわけではないので寄せたところで奪えないというシーンもあるのですが、それでも立派な仕事量です。で、彼の最も価値があるところは、こうした守備面での良さに加えてビルドアップや攻撃のシーンにもしっかり関わっていける総合力ではないかと思います。ビルドアップのスタートポジションは基本的には相手2トップの背後で、ボールを受けてからのターンもスムーズ。近くの選手に預けてリターンをもらってという細かいパス交換も冷静に対応できますし、機を見ればポジションを捨てて(いいのか?)前線に絡んだり、WGの背後を走ってサポートからクロスというプレーもあります。さらには今季直接FKも決めているというまさに何でも屋。とりあえず置いとけばいろんなことをやってくれるので、厳しい日程でもフルタイム出場させてしまう熊本ベンチの気持ちはよくわかります。</p> <p>惜しむらくは身長が低いことで、浦和でいう柴戸や敦樹のようなダイナミズムとフィジカルを兼ね備えるスケールの大きさはありません。逆に言うと一定程度の技術があってしっかり動けるうえでの体格の良さは若くしてJ1で期待されるかどうかの重要なポイントなんでしょうね。とはいえ中盤の人事・経理・財務・総務・広報・企画課長的な使い勝手はJ2どころか日本でも有数のレベルではないかと思いますので、いわゆる主任系ボランチの次世代としてJ1中下位チームからのスカウトメールでビズリーチの通知が凄いことになっていそう。なお、顔は新卒2年目なのに名刺にマネージャーって書いてある中堅不動産会社の営業っぽい感じで、なんとなくガンバにいそうな感じがします。この選手はこの夏にステップアップしてもおかしくないと思います。</p> <p> </p> <h5 id="神戸康輔-栃木SCMF2000年3月生22歳170cm63kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">神戸康輔: 栃木SC・MF・2000年3月生(22歳)170cm/63kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="神戸康輔 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1635530%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1635530/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>「かんべ」と読みます。あだ名はべーちゃん。神戸(こうべ)出身で大阪桐蔭から立正大学を経てプロ入りしたルーキーです。今季の栃木は植田啓太(fromマリノス)や谷内田哲平(from京都)など中盤前目にヤングでテクニカルなタレントをレンタル補強しており、例年ほど耐えて蹴ってに全振りしていない感じなのですが、そうした傾向にマッチしているんじゃないかなーと感じさせるのがCHとして出場機会を掴みつつあるこの選手です。170cmと身長は低いものの、運動量と正確な繋ぎが強みで、セカンドボールを拾って動き回りながら少ないタッチ数で縦に斜めにパシパシパシパシパスを繋いでいく選手という印象。レジスタというほど盤面をコーディネートしている感じはしないのですが、リンクマンと呼ぶにはふさわしいのではないかと思います。前に後ろに顔を出しながらじわじわと流れを引き寄せていくプレーが面白いです。ポジション的には2枚のCHの片割れとしてだけでなく、5-1-2-2のアンカーとして出場した試合もあり、危なっかしい感じはあるのですが割と成立させているのでチーム内でも結構やれるのでは?と思われ始めている最中ではないかと思います。</p> <p>というのも彼、まだリーグ戦では8試合しか出場がなく、5月にやっとデビューしたところから徐々にプレータイムが増えている状況。面白い選手なので期待していますが、最初からJ1でデビューできたのにわざわざ自分が育った栃木でキャリアをスタートさせた明本のように大卒1年目のオフにステップアップというのはないかなという感じ。現在はJ2で確固としたキャリアを持っている佐藤祥と交代しつつ起用されているので、しばらくは学びの時間かもしれません。</p> <p>弱点はやはり身体面で、セカンドボール回収部隊としては有能ですが彼自身がハイボール勝負を担当するのは厳しいところ。かといって0.5列前のIHで使うには個人として局面でどれだけできるかという課題がありそうで、このままだとステップアップするには若干使いにくいか。この感じでプレー出来ていれば試合の経験値はたまっていくと思うので、リンクマン+何かを表現してくれる選手になればJ1が見えてきそうな予感です。</p> <p> </p> <h5 id="名倉巧--ベガルタ仙台MF1998年6月生24歳168cm61kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">名倉巧 : ベガルタ仙台・MF・1998年6月生(24歳)168cm/61kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="名倉巧 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1504389%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1504389/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>あれ?長崎にいなかったっけ?と思ったらレンタル移籍したんですね。仙台って氣田も長崎からですよね。あ、そういうこと?という話は置いておいて、名倉はFC東京U-15深川から国学院久我山、卒業後にFC琉球でプロデビューした選手で、深川では小泉佳穂の二つ、安部柊斗の一つ下。そこまで尖った選手ではないですが、右利きながら逆足のキックもうまいので、なんとなく佳穂と系統が近いかもしれません。</p> <p>基本的に、名倉はスペース認知と周囲の選手を動かし使うことに長けた希少価値の高い選手ではないかと思います。仙台では基本的に右SHで出場しているんだと思いますが、やっていることは右IHですね。基本的に右のハーフスペースを出入りしつつ、ビルドアップの状況に合わせて降りたり裏に抜けたりしているので、チームとしての約束もそうですが、本人も「そういう」意識でプレーしているのだと思います。アタッカーという感じではないですが後ろでプレーする右SBが大外でボールを持てば間髪入れずに相手のSB裏へ走りこみチャンスメイクをするなど相手の急所を突く意識が高く、またそれを可能にする走力やアジリティも備えているように見えます。ボールの位置と展開に合わせてアクションを取ることに長けた、プレービジョンの部分に強みのある選手という印象です。中盤に降りて相手のブロックの隙間でボールを待っている様がなんとなくありし日の香川真司に見えたり、見えなかったり。逆脚精度も非常に高く、玄人好みな選手かも。</p> <p>ボール保持に関わる局面での魅力が大きい選手ですが、この先キャリアを作っていくにあたっては対面の相手を独力で剥がせるかどうかだとか、攻守のトランジションでかなり働けるだとか、もう一味欲しいかもしれません。身体能力は高そうなプレーをしていますが、体格的な優位性はないので、やっぱりチーム戦術やゲームの展開の中で二つ以上の役割をこなしてくれる選手になると重宝されていくのかなと。もしくは、これは小泉佳穂に僕がよく言うことですが、チーム全体のメンタリティにポジティブな影響を与えるようなプレーをしてムードを持ってくるとか、得点に絡んで直接的にゲームに勝たせてくれる主人公的な仕事が出来るかどうかであるとか。上手いし賢い選手なんだろうなあとは思うし、その魅力もよくわかるんですが、J1でバリバリやるにはプレスを仕掛けて奪いに行って一発で躱されるとかあっさりファールしちゃうとか、プレーになんとなく漂う淡泊な感じを払拭して欲しいところです。</p> <p>仙台がJ1に復帰できればクラブとともにJ1挑戦というのが最も良いシナリオなんでしょうけど、もう一工夫でJ1の上位チームでプレーしていそうな画が見えてきそうな選手です。ここまで書いて思いましたけど、「古巣」のFC東京が狙う可能性も高そうですね。</p> <p> </p> <h5 id="三戸舜介-アルビレックス新潟FWMF2002年9月生19歳164cm60kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">★三戸舜介: アルビレックス新潟・FW/MF・2002年9月生(19歳)164cm/60kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="三戸舜介 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1622196%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1622196/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>今季5月の月間MVP(J2)、先日のU-23アジアカップに出場したU-21日本代表にも選出されており、ルーキーシーズンだった昨年から印象的なプレーを見せていたので今更感はありますが、どうにかして赤いユニフォームを着せたい日本人アタッカーの一人です。</p> <p>FootballLABのプレー偏差値でドリブルチャンスが20と上限値をたたき出している通り、一級品のクイックネスで突破を図るプレーが魅力的ですが、個人的には彼の最大の違いはキックの能力で、振りが小さく速いことに加えてインパクトの上手さが異常で、パワーシュートは日本人というよりヨーロッパか南米の選手ですか?という破壊力と精度。しかも右脚も左脚も関係ないというロマン、最高です。さらに、こういうえげつないキックを持っている選手というのは得てしてそのキックを繰り出すだけのスペースを自分で作り出すのが上手くないという傾向があるかなと思うのですが、この選手は周りが作ってくれたオープンを活かすだけでなく、ドリブルで相手を外して自力で脚を振れるのがスペシャルではないかと思います。</p> <p>なお、もともとは左サイドでプレーしていた選手だと思いますが、今季は右サイドでのプレーがほとんど。とはいえ流れの中でトップ下の位置に入ってプレーしますし、狭いスペースでのコンビネーションも対応可能。なによりどの位置でプレーしていても変なクセや制限を感じないというか、得意な型への固執を感じさせないくらいいろんな状況に自然と対応しているのが凄みかなと思います。</p> <p>U-15からすべての年代の日本代表に継続して選出されている逸材であり、ポテンシャルを発揮できるよう身体づくりを待ちましょうというレベルでもないので、このまま試合経験をしっかりと詰めればいつかは海外に出て行くべき選手だとは思いますが、その前に浦和で同世代の彩艶や工藤とともにアジアを制してみるのはどうでしょうか。最高だよ、アジアの戦い。</p> <p> </p> <h5 id="高橋利樹-ロアッソ熊本FW1998年1月生24歳182cm76kg右利き" style="border-bottom: 2px solid black; clear: both; margin: 1.3em 0px 0.8em; line-height: 1.5; font-size: 16.5px; color: #3f3f3f; font-family: -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Helvetica Neue', 'Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', '游ゴシック Medium', meiryo, sans-serif; font-style: normal; font-variant-ligatures: normal; font-variant-caps: normal; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: start; text-indent: 0px; text-transform: none; white-space: normal; widows: 2; word-spacing: 0px; -webkit-text-stroke-width: 0px; background-color: #ffffff; text-decoration-thickness: initial; text-decoration-style: initial; text-decoration-color: initial;">★高橋利樹: ロアッソ熊本・FW・1998年1月生(24歳)182cm/76kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="髙橋利樹 2022 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1629414%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1629414/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>FWの選手は誰を選ぼうかかなり迷って、ヴェルディの佐藤凌我とかジェフの櫻川ソロモンとかそれこそ小川航基とか、いろいろと候補はいたんですが、ここはやっぱり僕らしいチョイスをしようということでロアッソから二人目のご紹介です。</p> <p>さいたま市出身で埼玉栄から国士館大学に進学ということで、われらが明本考浩と大学の同期であり平野の後輩ですね。何かと浦和に縁がありそうなキャリアがすでに良い感じです。プレースタイルは長身ながら走り回ってプレスをかけられるリカルド好みのハードワーカーで、ポストプレーもしっかりこなしてくれます。熊本に縁がある長身ハードワーカーと言えば巻誠一郎さんですが、彼なら正統派巻二世としてオシムさんも認めてくれるかもしれません。</p> <p>前述の通り熊本のサッカーはかなり尖っているのですが、高橋自体はそこまで不思議な役割を担っているわけではありません。とはいえ仕事量は非常に多く、ブロックを組む時は基本的に前残りしてクリアボールを死ぬ気で収め、プレスを仕掛ける局面では先頭として走り回り、必要であればプレスバックもガンガンこなしてくれます。加えて熊本は構造上サイドからの前進が多いので、上がってくるクロスのほぼ唯一のターゲットである必要がありますし、ボール保持時はポジションチェンジが非常に多いので状況に応じて中盤に降りてプレーする場合もあります。それだけの仕事をしながら現時点でJ2で5位の7得点というのは立派な数字ではないでしょうか。僕の印象では長身プレーヤーって意外とヘディングが上手くないというか、身体的な特徴をめいいっぱい活かす動き出しやポジショニングが上手くない印象なんですが、彼の場合は期待通りゴール前でポジショニングの駆け引きをしつつ頭でねじ込むようなゴールを決めているのも良いところですね。あと、ゴール後の喜び方がストレートに熱いのが良いです。</p> <p>これで身長があと5cmあればいきなりJ1でプレーしていたかもしれませんが、J3からのたたき上げで成果を出してきた彼のキャリアそのものが魅力になるかもしれません。182cmの身長はJ1では破壊的な武器にはならないでしょうし、J1ではさすがに決定力やオンザボールの技術で課題が出てくるでしょうが、ゲームに関わるトータルの仕事量多さは他のストライカーにはない特徴なので、得点数だけを伸ばしている選手とは一味違った需要が見込めそう。特に近年の浦和の場合はリカルドの好みや要求として仕事量を求める傾向にあると思うので、こういったユニークな選手はさっさと確保しておきたいところです。リンセンやユンカー、シャルクがいる中で彼にとって今年の夏や冬が最適なタイミングなのか、そもそも浦和が魅力的な移籍先なのかという話はありますが、他のJ1クラブの色がついたり、変な長期契約で移籍に支障が出ないうちに呼び込みたいなあと思います。西野さん、どうっすか。</p> <p> </p> <p>ということで、今季の気になるリストは上記10選手をリストアップしてみました。夏、そしてリーグ後半戦を踏まえた冬の移籍市場で彼らのキャリアがどうなっていくのか、ひっそりと見守りたいと思います。へんなジンクスがつくのは嫌なので、各選手におかれましてはお願いですから怪我だけはしないで頂きたいです。それでは。</p> <p> </p> <p> </p> reds96 【お題で書く】サイドアタッカーに順脚を置くことのメリットデメリットについて。なぜリカルドは順脚を置きたがるのか【1,500字】 hatenablog://entry/13574176438058190609 2022-01-30T15:17:32+09:00 2022-01-30T15:18:21+09:00 お題で書くシリーズ、第2弾。お題を思いついた人はPagefulで投げてください。 今回のお題 サイドアタッカーに順脚を置くことのメリットデメリットについて。なぜリカルドは順脚を置きたがるのか。1500字程度でお願いします 時々話題になりますね、これ。早速いってみましょう。 書いたもの 「自分は右サイドを主にやるんですが、右サイドからのドリブル突破やチャンスメイクを見てほしいです」 大久保智明の加入会見での一言である。彼は、右サイドでプレーする左利きのアタッカーであったが、浦和加入後は左サイドでのプレーが目立つ。彼が右サイドでプレーしていたことを知っている人には疑問に思う点もあるだろう。なぜ右サ… <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220127/20220127005330.png" alt="f:id:reds96:20220127005330p:plain" width="1200" height="1200" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p>お題で書くシリーズ、第2弾。お題を思いついた人はPagefulで投げてください。</p> <h5>今回のお題</h5> <blockquote> <p>サイドアタッカーに順脚を置くことのメリットデメリットについて。なぜリカルドは順脚を置きたがるのか。1500字程度でお願いします</p> </blockquote> <p>時々話題になりますね、これ。早速いってみましょう。</p> <h5>書いたもの</h5> <p>「自分は右サイドを主にやるんですが、右サイドからのドリブル突破やチャンスメイクを見てほしいです」<br /> 大久保智明の加入会見での一言である。彼は、右サイドでプレーする左利きのアタッカーであったが、浦和加入後は左サイドでのプレーが目立つ。彼が右サイドでプレーしていたことを知っている人には疑問に思う点もあるだろう。なぜ右サイドでのプレーの方が得意なはずの大久保を左に置くのか?<br /> 結論から言えば、僕はリカルドが利き足でアタッカーを選んでいるわけではないと思っている。だが、利き足とのサイドの関係を整理するのはより深い理解に役立つはずだ。<br /> サイドアタッカーはその持ち場の性質上、プレーする方向が限られている。基本的には縦に行くか、中に行くかだ。数年前までは、中に行く逆脚の選手が重宝されていた。ロッベンやリベリがそうだ。彼らの最大の強みは中へのプレーに破壊力があることだ。ゴールを守る相手DFから遠い利き足から直接シュートを狙うことができるし、クロスやパスもゴールに向かっていく危険な軌道のものが出しやすい。一方で、順脚の選手は縦に突破したあとは利き脚が相手から遠い脚になるので、右脚のクロスや折り返しのボールが出しやすく正確になるメリットがある。<br /> これを前提にすると、リカルドが順脚アタッカー使う時、基本的に縦に突破した後のプレーが期待されていると想像できる。これはおそらく、ポジショナルプレーの目指すところとも関係している。ポジショナルプレーが狙うのは相手に複数の選択肢を突きつけ、先手を取り、確率の高い勝負をすることだ。そうであるなら、ゴールデザインも確率を重視したい。<br /> サッカーで最も簡単なプレーは正面から来たボールを蹴り返すことだ。つまり、ゴールポストの脇からのマイナスの折り返しはゴールの確率が高いはずだ。マイナスの折り返しをサイドアタッカーに求めたいとなれば、中に入って自らゴールチャンスを創出しようとする逆脚アタッカーよりは順脚アタッカーの方が都合がよい。こうした論理で順脚アタッカーが好まれるのではないかというのが一つの説明だ。<br /> もう一つ仮説を挙げるとすれば、SBとの関係性を考えることになる。逆脚アタッカーたちが大活躍していた頃、SBの仕事はもっぱら守備とオーバーラップであった。今風に言えば、大外レーンの上下動だ。中に入っていく逆脚アタッカーと大外を駆け回るダイナモは相性抜群であり、これ以上ない組み合わせにも思えた。ところが、最近はSBが内側のレーンを使うことが珍しくない。これは攻撃のためだけでなく、ボールを奪われた後の速攻防止の意味でも合理的で、ポジショナルプレーの代表的な駒使いとなっている。問題は、SBが内側を取るなら、サイドアタッカーは中に行くべきではないということだ。ここにも順脚アタッカーの都合の良さを見つけられる。<br /> とはいえ、実際のところ、リカルドの采配に上記の傾向を感じることは確かだが、それだけとも限らない。昨年は逆脚の汰木が左サイドのファーストチョイスだったし、右サイドの関根は順脚だが中に入っていける選手で、実際に内側でも多くプレーしていた。これは、サイドの采配が利き足だけの問題ではないということを示唆している。汰木は縦突破からマイナスの折り返しをよく供給していたし、選手起用では攻守の立ち位置の習熟度や強度における関根の強みも考慮すべきだ。大久保に関しては、総合的に関根をピッチに残したいので、左に置いて縦突破を期待したという側面もあっただろう。結局のところ、順脚・逆脚の議論は本質ではなく、表面上そう見えている模様のようなものだということだ。</p> <p> </p> <p>1,499字。</p> <p> </p> <p>最初何も考えずに書いたら3,000字くらいになったのでかなりきつかった。ちょっと詰め込み過ぎ感があるけど、良い訓練になりました。</p> reds96 【お題で書く】ACLの外国人枠は3で既に埋まっているが、それでもなお外国人FWが必要であるという理由【1,000字】 hatenablog://entry/13574176438056993472 2022-01-27T00:12:57+09:00 2022-01-30T15:18:30+09:00 お題で書くシリーズ。今年からはじめました。お題を思いついた人はPagefulで投げてください。 今回のお題。 ACLの外国人枠は3で既に埋まっていますが、それでもなお外国人FWが必要であるという理由を800字以上1000字で書いてください。 書いたもの もし外国人FWが必要だという命題を置くなら、その理由は大きく分けて以下の3つの視点から考えられると思う。 戦力としての質 選択肢の豊富さ コストパフォーマンス まずは質だ。たしかにFWがエースと高卒ルーキーだけでは心許ないので、FWは欲しい。ただ質が伴っていない選手を獲得している余裕は色々な意味でない。これはFWに限らず今季の編成からも明白なク… <p> </p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20220127/20220127005330.png" alt="f:id:reds96:20220127005330p:plain" width="1200" height="1200" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p>お題で書くシリーズ。今年からはじめました。お題を思いついた人はPagefulで投げてください。</p> <h5>今回のお題。</h5> <blockquote> <p>ACLの外国人枠は3で既に埋まっていますが、それでもなお外国人FWが必要であるという理由を800字以上1000字で書いてください。</p> </blockquote> <h5>書いたもの</h5> <p>もし外国人FWが必要だという命題を置くなら、その理由は大きく分けて以下の3つの視点から考えられると思う。</p> <ol> <li>戦力としての質</li> <li>選択肢の豊富さ</li> <li>コストパフォーマンス</li> </ol> <p> まずは質だ。たしかにFWがエースと高卒ルーキーだけでは心許ないので、FWは欲しい。ただ質が伴っていない選手を獲得している余裕は色々な意味でない。これはFWに限らず今季の編成からも明白なクラブの方針だろう。最初から控え用の選手ではなく、使える選手を獲得しなければならない。試合に出られない選手はこのバスには乗れない。<br /> 次の視点は選択肢の数だ。当然ながら、日本人選手が多く所属するJリーグのクラブはほぼ編成を終えている。契約を更新したばかりの選手が我々の選択肢になることは希だし、そうするために何か無理をする必要があるだろう。また選手獲得にあたっては当然質を重視したいところだが、せっかくここまでクラブの目指すサッカーに合わせた選手を集めたのに、少ない選択肢から無理に帯にも襷にもならない選手を選ぶのも危険だ。そんな中で、海外でプレーする外国人選手は今まさに移籍を真面目に検討する時期であり、選択肢が比較的豊富であるから、必然的に外国人選手は無視できない。<br /> 最後にコストパフォーマンスだ。ここまで読んで、選択肢の少なさには同意しつつも、とはいえ海外でプレーする日本人FWがいないわけではないという人もいるだろう。しかしどうだろう。例えば鈴木武蔵を3億円で買って、年俸1億円を払うことは今の浦和にとって理に適う買い物だろうか。同世代にはエースのユンカーがいる。そうした中で、少ない選択肢から無理をしてコストパフォーマンスの悪い選手を買う必要があるだろうか。ACLの枠に影響しないというだけでは、難しいように感じる。<br /> そもそも、今季のACLは変則的な日程で集中開催されることになる。長いシーズンのうちACLを実際に戦うのは4月中旬からの2週間と8月の2週間のみだ。勝ち上がっても合計4週間のみの大会のレギュレーションに、シーズンを最優先に戦うチームの編成をどこまで合わせるべきなのかは、一旦落ち着いて考えても良いかもしれない。<br /> 総合すると、状況を鑑みるに外国人FWが必要だというだけの理由はなくもないように思う。ただ僕は、「ACLの外国人枠は3で既に埋まっているが、それでもなお外国人FWが必要である」とは今まで一度も言っていない。</p> <p> </p> <p>984字。</p> <p> </p> reds96 2021シーズン全選手振り返り(下) hatenablog://entry/13574176438046191007 2021-12-28T18:28:37+09:00 2023-08-06T01:13:19+09:00 (上)はこちら www.urawareds96.com (中)はこちら www.urawareds96.com 22 MF 阿部 勇樹 このエントリを書くのに各選手の出場記録を改めて確認するんですが、リーグ出場620分で3得点ってすごくないですか。まだやれるんじゃないですか。と、言ったところで引退の事実が変わるわけもなく、レジェンドがまた一人去る寂しさは拭えません。 今季は開幕スタメンを含む公式戦20試合出場、スタメン11試合。昨年コンディション不良でシーズンのほぼ全てを棒に振ったことを考えれば、今季はプレーをたくさん見せてくれたことに感謝です。ただ、現実的にはトップリーグでのプレーを通年で続… <p>(上)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F26%2F182123" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/26/182123">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p>(中)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F27%2F180902" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/27/180902">www.urawareds96.com</a></cite></p> <h5 id="22MF-阿部-勇樹">22 MF 阿部 勇樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226015643.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226015643p:plain" title="" width="705" height="244" loading="lazy" /></p> <p>このエントリを書くのに各選手の出場記録を改めて確認するんですが、リーグ出場620分で3得点ってすごくないですか。まだやれるんじゃないですか。と、言ったところで引退の事実が変わるわけもなく、レジェンドがまた一人去る寂しさは拭えません。</p> <p>今季は開幕スタメンを含む公式戦20試合出場、スタメン11試合。昨年コンディション不良でシーズンのほぼ全てを棒に振ったことを考えれば、今季はプレーをたくさん見せてくれたことに感謝です。ただ、現実的にはトップリーグでのプレーを通年で続けるには限界に近かったかも。いつもピッチ上の違和感を探して試合を観ている僕は「違和感を全く見せない」阿部ちゃんのプレーがあまり頭に残らないという弱点があるのですが、今年はさすがに攻守に重ためのプレーが目につくシーンもありました。特に今季のチームはCHにビルドアップの能力と中盤でのインテンシティと運動量の両方が求められていたこともあって、チーム内で戦術理解や若手のフィットが進んだ中盤以降はコンディション不安もあってか明確に出番を減らしてしまい、本人としてもプレーヤーとしてはやりきったという感じがあったのかもしれません。</p> <p>とはいえ序盤戦はCHやバックラインでスタメン出場していましたし、リカルドも阿部ちゃんのビルドアップの能力を信頼しているという趣旨の発言をしていましたから、選手として晩年になってもやはり技術やこれまでのキャリアで培ってきたものは失われないのだなと。昨年の終盤に出場機会を得た際も美しいほどにシームレスだった守備ポジションの取り直しやカバーリングは(昨年の他の選手たちの4-4-2ブロックの熟練度と比べると)感動的ですらありましたし、ここであえて言うまでもなく、サッカー選手として伝説級の実力者でした。</p> <p>なんやかんやで最後は千葉に帰って引退するのかなと思っていたので浦和での引退は少し驚きましたが、それだけ浦和での日々を大事に、このクラブの選手であることを重く考えていてくれたんだなとも思いました。引退後は指導者の道に進むということで、おそらくJFAの新制度も活用して数年以内にS級を取得するのではないかと思いますが、立場は違えど浦和に残ってくれるのかどうかが気になるところ。JYに所属している息子を直接指導なんてことはないと思いますが、いつかまた良い形でトップチームに関わってくれると嬉しいです。お疲れ様でした。今まで本当にありがとう。</p> <h5 id="24MF-汰木-康也">24 MF 汰木 康也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226015920.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226015920p:plain" title="" width="702" height="241" loading="lazy" /></p> <p>加入3年目の今季は公式戦46試合に出場(先発31試合)しキャリアハイの出場試合数を記録したものの、Jリーグでのプレータイムは1,706分と昨季に比べ微減。トータルで言えば悪くないものの、完璧なブレイクスルーを果たしたかというと難しいというシーズンだったでしょうか。ただ、昨季1,770分プレーして1得点だった得点はほぼ同じプレータイムで4得点に増加。ネット広告なら当社比400%増!!とデカデカと赤字で書かれること間違いなし。アシストも4つ記録して合計8点(昨年は1ゴール3アシスト)に直接的に絡んだのはこれまでの上手いけど…な汰木と比較すれば大きな成長といえます。今季は相方となる左SBがなかなか決まらず、山中、明本そして宇賀神といろいろなパートナーと仕事をしたのも彼にとっては良い経験になったのではないかと思います。</p> <p>とはいえ、ACLでの戦いに加えリーグ優勝を目指す来季は更なる個人能力の強化が必須で、リーグでは浦和のビルドアップの熟練度を警戒して初めから引いてくる相手も増えることが予想されるため、特にサイドには理不尽な個を置きたいという考えがフットボール本部にはあるはず。昨年ルーキーながら7得点を上げついに来季の帰還が発表された松尾や、主に右サイドでプレーしていたもののJ2で点に絡む能力の高さを示してきた水戸の松崎、もしくは外国人選手の補強があった場合は、これまで以上に厳しいプレータイム獲得競争に晒されるかもしれません。若手ドリブラーの出世番号である24番を受け継ぐという意味ではこの2年間悪くない活躍をしてくれたと思うので、27歳になる来季はそろそろがっちりと主軸を任せられる活躍を、つまりは得点に絡む力をさらに伸ばして欲しいところ…と下書きしていたのですが、神戸移籍が発表、とても残念です。契約更新のタイミングでの移籍みたいなので、神戸の評価額(提示年俸)が無視できないほど良かったか、浦和の提示額があまり満足できるものではなかったのかもしれません。ていうか<a href="https://www.change.org/p/%E6%B5%A6%E5%92%8C%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BA%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE-%E6%B5%A6%E5%92%8C%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BAgm%E4%B8%AD%E6%9D%91%E4%BF%AE%E4%B8%89%E6%B0%8F%E3%81%AE%E8%A7%A3%E4%BB%BB%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%99">しゅーたん</a>が最初に提示した金額が高すぎて今のクラブ財政ではあんまり昇給提示ができないとかじゃないの?ねえ。</p> <p>山形時代のひたすらオンザボールのチャンスクリエイトだけはできるという選手から攻守に、そして裏に走れるSHになった昨季、内・外の立ち位置やビルドアップの出口としての振る舞いが洗練され、さらに効果的にプレーが出来るようになった今季と、浦和では悪くない時間を過ごしたと思いますが、超満員のスタジアムで彼のチャントを歌ってあげられなかったことは残念。去年と今年のパフォーマンスはそれに値したと思います。</p> <h5 id="25GK-塩田仁史">25 GK 塩田仁史</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226191238.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226191238p:plain" title="" width="704" height="241" loading="lazy" /></p> <p>40歳にして浦和加入という珍しいキャリアとなった大ベテラン。</p> <p>今季公式戦での出場はなかったもののその人間性やプロフェッショナリズムで多くの選手に良い影響を与え、チームを支えてくれていました。なかなかお目にかかる機会が多くありませんでしたが、一方でクラブのアパレルモデルとしてはチーム屈指のイケオジとしてMVPクラスの活躍でした。今季限りでの引退をシーズン後に発表しましたが、最後の決断ですら阿部、槙野、宇賀神に気を使って一人ひっそりと発表する始末で、どこまで人間が出来ているのですかと言いたくなります。</p> <p>来季は浦和でアシスタントGKコーチに就任という話もありますが、真偽はいかに。もしGKコーチの道を進むのであれば、現役最後の年を恩師である浜野GKコーチと過ごせたことは本人にとっても良かったでしょう。それにしても「アシスタントGKコーチ」って浦和ではあまり聞いたことがないので、いろいろとそれくらい評価されているってことかもしれないですね。</p> <h5 id="28DF-アレクサンダーショルツ">28 DF アレクサンダー・ショルツ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226021008.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226021008p:plain" title="" width="701" height="242" loading="lazy" /></p> <p>酒井と並んで夏加入の目玉となったデンマーク人DFは浦和レッズ今季最高の補強になったのではないかと思います。</p> <p>189cmと長身ながら機動力に優れ、高いラインを敷いても全く不安を感じさせない素早く広範囲にわたるカバーリングで最終ラインを支えるだけでなく、必要であればドリブルで高い位置まで持ち上がり、サイドを使えるのであれば速く正確なパスで相手のブロックの脇へとボールを付けるなど攻守両面において一人で浦和のサッカーを1段、2段とレベルアップさせてしまいました。特にショルツの両隣でプレーした選手、特に岩波や山中はそれぞれの弱点を補い、長所を活かしてくれる存在として有難く感じていたはずです。今季の公式戦出場は後半戦のみの23試合でしたが、それでもプレーの質は格の違いを思わせるほどで、来季フルにプレーできればベストイレブンの有力候補となりそうです。</p> <p>これだけハイレベルなパフォーマンスを見せてくれたのは間違いなく日本に早く馴染めたことが大きな要因のはずで、柔和な性格に加えて来日前から夏目漱石や村上春樹の小説を嗜み来日前から日本語の勉強に取り組むなど日本文化に興味津々。元々読書家かつ絵画のコレクションもしているなど文化的教養がめちゃくちゃ高い人なので、日本での生活も楽しんでいる感じですしリフレッシュの方法もたくさん持っていそう。人間性でも競技面でも完璧に信頼できる男にとって怖いのは怪我だけでしょう。</p> <p>唯一欠点というか期待と違ったと言えるのは『闘将』として激しく周りを鼓舞するようなプレーヤーではなかった点くらいでしょうか。顔も厳ついし刺青だらけなので安易にラベリングされた面もあるのでしょうが、実際の彼は恵まれたフィジカルをベースに知と技で冷静に戦うチームプレーヤータイプのように感じます。サッカーの質を上げるという部分では全面的に信頼できるものの、裏を返せばチームが上手くいかない場面を一人でひっくり返していけるような選手ではないので、リーダーシップは日本人選手が担っていく必要がありそうです。とにかく怪我無く、長く浦和でプレーして欲しい選手です。</p> <h5 id="29MF-柴戸-海">29 MF 柴戸 海</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226021241.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226021241p:plain" title="" width="702" height="235" loading="lazy" /></p> <p>今季開幕当初は「柴戸はビルドアップ出来ないので出場機会が激減する」とか「リカルドのサッカーには合わない」とかさんざんなことを言われていましたが、4月に入ると無事に覚醒、今季は公式戦43試合出場(先発33試合)となりました。</p> <p>春先まであまり試合に絡めなかったことや途中の怪我による離脱でリーグ戦は1971分のプレーだったものの、9月以降は完全にCHのファーストチョイスに。誰の目にも明らかなのはビルドアップへの関わり方の進化で、相手の2トップの背後に立ちボールを引き受けてからのターン、ひとつ前の列へボールを運び出し、センセーショナルではなくとも確実に水を運んでいくパスなどがわかりやすかったですが、一番は相手の出方を見ながらプレー出来るようになったことが素晴らしく、これには<a href="https://twitter.com/search?q=%23%E6%80%A5%E9%80%B2%E7%9A%84%E6%9F%B4%E6%88%B8%E6%B4%BE&amp;src=typed_query">#急進的柴戸派</a>もニッコリ。まあ未だにガチャガチャはしてはいるんですが、もともとデビュー戦でルーレットをかましたり突然浮き球をボレーでサイドチェンジしたり自陣バイタルエリアで寄せられた時には本能的にダブルタッチで脱出したりと足元の技術が全然ないとは思えなかったので、個人的には余裕を持てればこのくらいは出来るはずだよね、という気もします(ひいき目)。本人によるとこうした余裕の要因はポジショニングが良くなった、どこに立つべきかわかってきたことだそうで、「立ち位置」で解放されるとここまで変わるんだぞという良い例になったのかもしれません。</p> <p>というわけでボール保持においてもチームに貢献できるようになった柴戸ですが、ボール非保持時の良さも相変わらず。相手に寄せる瞬間のクイックネスと脚の伸びは他の選手にはない彼のアイデンティティであり、実は180cmと身長が高い方であることを地上戦に活かしている珍しい例でしょう。進化した柴戸の良さはデータにも表れていて、<a href="https://www.football-lab.jp/player/1617891/">Football Labのプレー指標のデータ</a>で「ビルドアップ」11、「ボール奪取」16、「カバーエリア」13の合計40(MAX60)を超えるCHの選手はシミッチの45(同12,18,15)のみ。恣意的な指標の組み合わせかつチームスタイルに大きく左右されてしまう数字を比べているだけではありますが、ビルドアップ貢献+ボール狩りをさせるならリーグトップクラスの仕事量が期待できる選手になりました。</p> <p>来季は新加入選手にポジション争いの深刻な対抗馬がおらず、敦樹とのプレータイムの共有はあるとしても怪我さえなければ柴戸の仕事を奪うことができそうなのは期待の新加入である安居海渡が覚醒した場合くらい。今季終盤に柴戸と敦樹を起用し、ボランチをあまり動かさず中盤に残すことでセカンドボール争いやトランジション対応を強化する布陣を敷いたことでチームが安定したことを踏まえても、来季も引き続きチームにとって重要な選手となるのではないかと思います。今後への期待という意味ではピッチ外の部分、キャプテンシーの発揮がテーマになると思いますが、明治大学時代は「自分は引っ張るタイプではない」と副主将を務めていたというメンタリティがどう変わっていくか、それが振る舞いとしてどのように現れるかに注目です。</p> <h5 id="30FW-興梠-慎三">30 FW 興梠 慎三</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226021758.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226021758p:plain" title="" width="702" height="242" loading="lazy" /></p> <p>ここ数年の浦和を支え続けてくれた大エースですが、今季は公式戦すべてを合わせても1,000分に満たないプレータイムと思うように稼働できず苦しいシーズンとなってしまいました。リーグ戦は20試合に出場とそこそこ出ているように思えますが、スタメンはたった3試合のみとそもそもチームの構想に入れていなかった印象です。</p> <p>昨季の終盤から動きの連続性が出なくなっており、局面局面でのボールキープや展開、シュートの技術など個別のプレーは衰えを感じさせないにしても試合全体の流れに何度も顔を出すようなことはもう難しいのかなと思わせるシーンもしばしばでした。ただ終盤戦は時間限定ではあるもののコンディションが上がってきているのではないかと思わせる試合もあり、大原ではかなり良いプレーが出来ていた様子で、来季はもう少し期待できるかも。そもそも過去3年くらい無茶な働かせ方をし過ぎた反動なのかもなとも思います。</p> <p>アジアの戦いを控える来季こそ完全復活しまたゴールを量産して欲しいのですが、どうやら札幌からの熱烈なオファーにかなり気が向いている様子。キャリアの終止符を意識せざるを得ない成績となってしまった今季ですが、最後はもう一度ミシャのもとに行くのか、浦和の男であり続けてくれるのか。もちろん心の底から残ってほしいのですが、これまで浦和にもたらしてくれたこと、怪我を抱えながらも常にゴールという結果で浦和を助けてくれたことを考えれば、浦和を好きでいてくれるなら彼の好きなようにしておくれとしか言えないかなあとも思います。</p> <h5 id="33MF-江坂-任">33 MF 江坂 任</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226022104.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226022104p:plain" title="" width="702" height="350" loading="lazy" /></p> <p>まさかの電撃加入で夏の移籍市場最大クラスのサプライズとなった和製プリンス。</p> <p>関西出身ですが群馬、大宮、柏と関東圏のクラブでのプレー経験に加え、今季のレッズは流経大出身者が一大派閥だったこともありチームに馴染むのは非常に早かったようでした。昨季の柏でのオルンガとのコンビネーションに代表される通り、時間と最低限のスペースさえあれば自力でのターン、必殺のスルーパス、キープしてのサイドへの展開、シャドーストライカーとしての仕上げ仕事など、チャンスクリエイトからフィニッシュに絡むまであらゆるプレーがハイレベルにこなせるハイスペックな10番で、西野TDが語った通り「獲れたらいいねリスト」に載っていたとしても、普通は獲れない選手のはずでした。移籍は柏でネルシーニョ監督とうまく折り合っていなかったのが理由のようですが、浦和に来たからこその決勝戦での先制、そして意外にも彼にとって初の主要タイトルとなる天皇杯優勝があったかと思うと、上手くいかないなら思い切って環境変えた方がいいぜ!という考え方にも説得力が出てきます。巡り合わせですね。個人的には<a href="https://www.urawareds96.com/entry/2020/12/26/220844">去年のJ1ドラフト</a>でオルンガの外れ1位で指名した選手でしたので、浦和で見れることになったのはとても嬉しかったです。</p> <p>シーズン通算ではJリーグで7得点(浦和で5得点)3アシスト、天皇杯とルヴァンカップで1ゴールずつと現役日本代表の選手としてはやや物足りなかったものの、特にリーグ戦の中盤~終盤にかけて小泉との2トップもしくは江坂をワントップにおいたいわゆる0トップシステムを採用した試合も多く、彼が最も輝くであろう最終ラインにゴリゴリ圧を掛けてくれるストライカーとの併用、つまりユンカーとの2トップもしくは江坂トップ下での起用が限られていたことは考慮が必要でしょう。ただ、じゃあこれが来季は解消されるかというとそうでもなさそうなところがややこしいところで、ユンカーが通年稼働出来なかったのが根本的な原因ではあるものの、おそらくリカルドはユンカー+江坂のユニットではボール非保持時のプレッシングの精度に物足りなさを感じているはず。小泉はその点プレッシングの回数・距離・追い込み方の全てで二人を上回っており、ボールを相手から取り上げたい展開においては小泉を使いたいという判断があったとしても納得できます。かといって江坂を使いたいのでサイドに置くと、今度は本職サイドの選手に比べて縦突破の可能性が制限されてしまう上に中央からサイドにボールを展開して自分がゴール前に入っていくという江坂に最もやってほしいプレーから遠ざかってしまうというジレンマもあり、江坂・小泉・ユンカーをどのように共存させるかというのは答えのないパズルのようなもので、リカルドが今季終盤苦労したテーマの一つかなと思います。この3人の使い分けや共存に関してはボール保持においてもジレンマがあり、江坂と小泉は二人とも中盤に降りて一度関わるタイプ、ユンカーは最終ラインのギャップが出来るのを待って自分が一番ゴールできるタイミングで動き出すタイプと、最初に囮になって裏に抜けていくタイプの選手がどの組み合わせでも足りていませんでした。これについては明本をSHで起用し江坂の代わりに最前線での無限裏抜けの刑を命じることによってある程度の解決を見ましたが、ここをどう解決していくかは来季も重要な戦術的テーマになるのではないかと思います。そういう意味で、補強で前線の選手の獲得がある気がするのですが、そうなるとユンカー・江坂ですら競争に晒されるということで、観ている方は楽しいですが本人は大変ですね。</p> <p>ちなみに、こういったジレンマの中でも江坂本人はしっかり持ち味を出してくれており、0トップ戦術の中で相手に囲まれながらも高質なテクニックでボールをキープしトランジションを成立させるなど本来期待したいプレーとは多少異なる場面でもよくやってくれていました。無理げなシーンでもボールを収めてチームの戦術を一人で支えるというのはさながら浦和加入当初の興梠のようにも見え、それがいいか悪いかは別にして和製興梠のような立ち位置に今後収まっていくかもしれないなと思ったりもしてしまいます。またJリーグ公式のデータでは1試合平均のチャンスクリエイト回数がリーグ2位と定義がよくわからないものの立派っぽい数字を残しており、願わくば来季は上記の戦術的なジレンマを解消し今期以上の活躍を、そしてその結果としてW杯に絡んでいく活躍を期待したいところです。</p> <h5 id="34DF-藤原優大">34 DF 藤原優大</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226185538.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226185538p:plain" title="" width="703" height="200" loading="lazy" /></p> <p>高校サッカー界の帝王青森山田のキャプテンが武田に続いて2年連続で加入。最大の武器はヘディングの打点の高さで、ジャンプ力だけでなく空中で頭をねじ込んでいく技術というかセンスというか気合も持ち合わせているのが特徴です。</p> <p>ここ10年、15年くらいの浦和レッズはなかなか高卒選手を試合で使うことが出来なくて、DFの選手だと2年くらいは平気でベンチ外のまま放置されてしまうかもなと心配もしたのですが、リカルドの方針なのかルヴァンカップであっさりデビュー。ただデビュー戦で左眼窩底骨折の大けがを負ってしまうなどあまり運は良くなかったですね。</p> <p>浦和では2試合しか観ていないのであれですが、守備の面ではまだしもビルドアップ、特にパススピードはまだまだJ1で通じるまでに時間がかかりそう。見えているところやボールの持ち方は良いと思うので、少し時間がかかるかもしれませんが引き続き期待です。相模原に行ってからは同時期に大量に補強された選手たちの中でも真っ先に試合に絡み、17試合中16試合をスタメンで戦うなど貴重な経験を積めたと思います。J2では空中戦の強さはすでに際立っていたように思いましたし、チームを残留させることは残念ながら出来ませんでしたが彼にとっては良かったと思います。</p> <p>来季はJ3相模原への育成型期限付き移籍延長が発表済み。一時噂の出た湘南や大槻さんが就任したJ2群馬などもあり得るかなと思いましたが、10代のCBが試合経験を確保するためにはカテゴリーはあまり気にしていられないかなという感じもするので悪くないのでは。「海外には興味がない、浦和を強くしたい」と言い切ってくれる誇りある選手なので、着実にステップアップして浦和の最終ラインを10年安泰としてください。</p> <h5 id="36DF-福島竜弥">36 DF 福島竜弥</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226185546.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226185546p:plain" title="" width="700" height="200" loading="lazy" /></p> <p>彩艶とともに昇格を果たしたユース出身の生え抜きSB。左利きでスピードがあり、対人バトル大歓迎のガツガツ系SBなのですが、顔面のインパクトは控えめというのがポイント。</p> <p>ルーキーイヤーの今季はルヴァンカップで3試合217分出場で、横浜FC戦では鋭いクロスからプロ初アシストも記録。縦へのスピードある攻撃参加から鋭いクロスを供給する姿は先輩である荻原と山中のハイブリッドといった感じで、今季のトップチームで目立った印象を残したかというとそうではないものの、トップ昇格しただけのポテンシャルは十分に有しているように思います。</p> <p>他の22歳以下の選手と同じく来季はルヴァンカップのグループステージに参加しないため出場機会を確保することが難しく、さらに同年代・同ポジションでJ1経験を積んでいる大畑歩夢の鳥栖からの完全移籍加入まで決定済み、さらに松原后の獲得もあるか?!という状況なので出場機会確保は厳しい状況。シーズンレンタルで修行を積むのが得策のように感じますが、サイドに槍を置いて素早く仕掛けつつ守備でもガンガン対人勝負を求める監督のいるチーム、例えば大槻さんが就任した群馬とかどうでしょうか。と思ってたらJ3相模原に育成型期限付き移籍することが発表されました。がんば!</p> <h5 id="37MF-武田英寿">37 MF 武田英寿</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226023136.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226023136p:plain" title="" width="702" height="231" loading="lazy" /></p> <p>プロ2年目となった今季はキャンプから状態が良かったようでシーズン序盤に4-1-4-1システムのIHとしてポジションを掴むなどリーグ戦8試合に出場。特に7節鹿島戦、8節清水戦あたりはチームが軸となる戦い方を見つけたかにも思われた時期で、その中心としてスタメン出場していたので期待感も高まっていたのですが、結局はその後怪我で出場機会を失い、FC琉球へレンタル移籍、J2で修行を行うこととなりました。</p> <p>琉球でのプレーはあまり観ていないのでがっつり省いてしまうとして(出場していきなりゴールを決めたのは見ました)、浦和での今季を振り返ると非常にもったいなかったなと思います。シーズン序盤の段階では4-1-4-1のIHをうまくこなせる選手は小泉以外には彼だけで、SHとしてはスピード不足、トップ下としてはプレッシャーに負けてしまう、かといってボランチでは強度不足で使えないというものすごく中途半端な選手だったことが逆に功を奏して、IHの位置をスタートに状況に応じてトップ下になったりSHになったりボランチのように振る舞ったりする役割がハマっていました。もちろん強度不足の感は否めなかったのですが、左利きの中盤ということもあり少なくともチーム内でユニークな存在になってはいたので、このまま出場機会を積むにつれて強度が追いついてくれば…という感じだったのですが、徳島戦で負傷離脱。帰ってきた後はダブルボランチのシステムが定着し始めており、そうなると居場所を失ってしまうよなと。</p> <p>来季について考えても、補強を経てかなりソリッドな陣容になり、プレーモデルも安定しつつある今の浦和に帰ってくるとしても競争相手は江坂や小泉となるので簡単にチャンスは得られなさそう。彼らと比べたときのユニークネスは左利きということですが、リーグ優勝を目指すチームではどうしても足りない部分が気になってしまいそうです。チャンスがあるとすれば4-1-4-1システムをもう一つの基本システムとして使っていく場合ですが、その場合でも江坂、小泉に加えて敦樹や安居、もしかすると関根との競争が待っているという感じなので、ここは潔くもう一年レンタルで実戦経験を積むべきかも(12月26日に大宮への期限付き移籍が発表となりました)。J2であればテクニックで明確なアドバンテージが取れそうな感じでしたので、まずは年間を通じて攻守に貢献する部分を学びつつ、身体を作る作業が必要かもしれません。もともとシュートが凄く上手い選手ですしFKも蹴れるので、特に試合を決める部分を発揮できるようになれば期待感が上がってくると思います。</p> <h5 id="40MF-平野-佑一">40 MF 平野 佑一</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226022656.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226022656p:plain" title="" width="704" height="268" loading="lazy" /></p> <p>ほぼ無名のJ2リーガーから半年間で「浦和レッズの頭脳」と評されるようになるほどの大飛躍を遂げたレジスタ。</p> <p>水戸時代の彼を皆さんより一足早く彼を見つけられたことは僕のちょっとした自慢になりましたが、それは当然僕の目が良いのではなく、彼がそれだけの違いを水戸で見せていたからに他なりません。一方で本人も素直に認めていることですが、彼がこの一年間ですさまじい成長を遂げたのかというとそうではなく、彼がこれまで培ってきたプレーと浦和に足りなかったプレー、あるいは求められるプレーががっちりハマったことが大きな要因であり、またボール保持時のプレーを生命線とする選手にとって周囲に立つ味方選手の技術や動き出しの質が高いことは大きな助けになったと思います。</p> <p>夏の加入ということで浦和では公式戦20試合、リーグは13試合1,003分の出場となっていますが、水戸でのプレータイムを合わせるとJリーグ32試合2,622分出場と圧倒的なキャリアハイ。特筆すべきは浦和ではリーグ戦13試合のうちすべてがスタメン出場であることで、特にゲームのリズムを作る、ビルドアップの場面でチームの目として相手の形や出方を探るという部分でリカルドから高い信頼を得ていたことがわかります。</p> <p>実際に今季の浦和では平野の役割を代替できる選手はいませんでしたし、リーグ全体を見渡してもこれほど露骨に相手を見てプレーしているのがわかる選手というのは非常に少ないので、希少価値の高い選手を確保できたという意味でも良い補強でした。ただし、普通のクラブ、これまでの浦和であれば今後も平野は安泰なので来季も怪我無く頑張ってくださいなのですが、我々はガチで3年計画をやっているのでそうはなりません。なんと希少なはずの「チームの頭脳」になれる選手、しかもその代表格とも言える岩尾憲に獲得の噂があるとのこと。もしこの補強が実現すれば来年は岩尾とのレジスタ2枚体制で厳しい日程を戦っていくことになるのだと思いますが、その中で経験豊富な岩尾から何を学び、彼自身かどう進化していけるのか、そして未経験ゾーンの厳しさである通年のJ1+アジアの戦いの中でタフさをどう身に着けていくのかに注目したいと思います。</p> <p>ちなみに冷静でロジカルなプレーとは裏腹に謎のダンスを踊ったり相手にビルドアップの狩りどころにされると来るとわかってるのにあえて向かっていったりと、実は調子が良くて負けず嫌いなパーソナリティの面も徐々に出てきているので、来季はさらなるキャラ立ちにも期待です。</p> <h5 id="41MF-関根-貴大">41 MF 関根 貴大</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226022923.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226022923p:plain" title="" width="706" height="237" loading="lazy" /></p> <p>浦和に復帰して以降ずっとそうだったように、今季序盤も悩みながら、もがきながらプレーしているのかなという印象だったのですが、終わってみれば公式戦51試合出場、リーグは36試合2,233分プレーとまさに主力として戦い抜いたシーズンとなりました。特に後半戦は連戦でもスタメンで出ずっぱり、走れなくなるまで毎試合出し尽くすようなプレーをしており、彼のタフさや戦える部分は直接的に結果を争う場面で非常に頼もしかったと思いますし、そういう存在になってくれたことは選手が多く入れ替わるクラブ状況の中で浦和らしさを担保するという意味でも重要だったように思います。</p> <p>昨季から大外レーンだけでなく内側に入ってトップ下のように振る舞うプレーには取り組んでいましたが、今季はその方向性がさらに強まり、右サイドをスタートポジションとするものの前後左右に顔を出していたのが印象的。ビルドアップの出口としてハーフスペースの入口でボールを引き出し、ターンから相手の最終ラインに仕掛けつつラストパスを狙うプレーは関根らしさ×リカルドらしさの最大公約数のようにも感じました</p> <p>リーグでの3ゴール3アシストは本人の納得できる基準とはほど遠いとは思いますが、守備や球際での戦い、年の近い新加入選手たちとのコミュニケーションなど数字には現れない部分での貢献が大きかったシーズンであり、本人もそうした部分に重みとやりがい、役割を感じ始めているのかなという気がします。天皇杯では「自分はどうでもいいし形もなんでもいいからゴールが決まって勝てばよい」と言った発言も出てきていて、チーム内での立場の変化が言動から良く感じられたのが今季の後半戦でした。浦和版ミシャサッカーの形成期にデビューし、関根のプレーがその完成に大きな役割を果たしたという経緯を踏まえても、その時代の兄貴分たちが次々とチームを離れることが決まっていく中で感じているものは大きいはず。26歳、Jリーグでは6シーズンしか戦っていないにも関わらず既にJ1通算183試合出場とキャリアの面ではベテランに近い立ち位置であり、ACL4大会出場の経験値を踏まえても来季は名実ともにチームを引っ張る活躍が求められてしまいます。個人的にはあまり背負いすぎて欲しくはないのですが、「試練は乗り越えられる者にしか訪れない」という言葉が真であるならばこれもまた必然なのかもしれません。</p> <h5 id="42DF-工藤孝太">42 DF 工藤孝太</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226185555.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226185555p:plain" title="" width="705" height="279" loading="lazy" /></p> <p>シーズン開始時から2種登録選手としてトップチームに帯同し、4月にルヴァンカップでデビュー、18歳の誕生日を迎える前の5月にトップチームへの正式昇格を決めた期待の左利きDF。今季後半は全く出番なしでしたが、世代別代表にはコンスタントに招集されておりキャリアのスタートとしては今季はまずまずのシーズンだったのではないでしょうか。</p> <p>180cmの身長は現代のCBとしては大きくなく身体もまだ出来ていないものの、得意のビルドアップには自信をもって取り組めていたのではないかと思います。近年欧州の戦術トレンドへのフォローが強まっているJリーグでは左利きでビルドアップに貢献できるCBの市場価値が高まっていることもあり、浦和としてはじっくり育てて長く使っていきたい選手だと思いますが、同じく左利きのCBでボランチ出身、サイズ感も似ている知念が完全移籍で加入ということもあり、来季はレンタルの可能性も考えられそう。個人的にはJ2でもJ3でも構わないのでシーズンを通してプレーできるチームで頑張ってほしいのですが、例えばg(文字数オーバー)</p> <h5 id="背番号なしチラウラー-96">背番号なし チラウラー 96</h5> <p>3年計画の2年目、リカルドを監督として迎え本格的な変革となる今季を記録すべくモチベーション高く臨んだものの、シーズン中盤にかけて同じようなゲーム展開、同じような構造のゲームが続いたチームの失速とプライベートのバタバタを言い訳にチラ裏が停滞。一度止まってしまった歯車を再起動させる強い気持ちを持ち続けることができず、チームが大きくバージョンアップした終盤はツイッターで躍動するもついにチラ裏は放置し続け、シーズントータルとしては責任を果たしたとは言えず期待外れの結果に。いろいろとそれっぽいことを言っていますがチラ裏を書いていない試合はほとんど忘れていますし、そもそもチラ裏を書かないチラウラーに何の価値があるのかは疑問です。浦和レッズブロガー界隈では毎試合レビューをアップできたりいろんなデータを上手にまとめたり論理的な考察を書ける優秀なプレーヤーが着実に増えており、来季はさらに厳しい競争に晒されることになりそう。一方で現地観戦はホームのほぼ全試合+天皇杯終盤戦に参戦とそこそこの成績を残しており、また写真もクオリティはともあれたくさん撮ったので活動の幅は若干拡がったか。</p> <p>独自の情報によると来年は人生的にいろいろあるためこれまでとは違ったスタイルでの応援を余儀なくされてしまいそうですが、それを逆に活かしてチラウラーとしての活動を増やしていくことが期待されます。レッズが勝負の3年目を迎える来季はACLを含む過密日程への対応が求められることに加え、チームの完成度がこれまで以上に高くなるため勝負を分ける細かい狙いや流れの描写、戦術的配慮の観察をより高いレベルでこなしたいところ。これまで得意としてきた長文を好きなだけ書いて読者に投げ付けるスタイルは本人の身体への負担も大きくコンディション面の不安も指摘されているため、サステイナブルなチラ裏スタイルを構築できるかが最も重要なテーマになりそうです。</p> <p> </p> <p>というわけで、2021シーズンも皆さんお疲れさまでした。今年も長文にお付き合い頂きありがとうございました!良いお年を!</p> reds96 2021シーズン全選手振り返り(中) hatenablog://entry/13574176438046184801 2021-12-27T18:09:02+09:00 2023-08-06T01:13:33+09:00 (上)はこちら www.urawareds96.com まだまだいくぞ! 11 MF 田中 達也 片野坂監督の下大分で輝き、ポジショナルプレーへの理解もあるアタッカーということで浦和に辿り着いた今季、背番号11を与えられリカルドの下でプレーすることに対しモチベーションはマックスだったはずですが、リーグ戦1,024分の出場に留まってしまい期待とは違うシーズンになったかも。一方で途中出場22試合ながら公式戦41試合に出場とゲームには多く絡んでおり、リーグ戦における4ゴールは明本、汰木と並んでチーム3位タイと一定の貢献は出来ていたと思います。 この選手に関してはチームが特徴を十分に発揮させてあげられ… <p>(上)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(上) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F26%2F182123" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/26/182123">www.urawareds96.com</a></cite></p> <p>まだまだいくぞ!</p> <h5 id="11MF-田中-達也">11 MF 田中 達也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226005852.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226005852p:plain" title="" width="705" height="243" loading="lazy" /></p> <p>片野坂監督の下大分で輝き、ポジショナルプレーへの理解もあるアタッカーということで浦和に辿り着いた今季、背番号11を与えられリカルドの下でプレーすることに対しモチベーションはマックスだったはずですが、リーグ戦1,024分の出場に留まってしまい期待とは違うシーズンになったかも。一方で途中出場22試合ながら公式戦41試合に出場とゲームには多く絡んでおり、リーグ戦における4ゴールは明本、汰木と並んでチーム3位タイと一定の貢献は出来ていたと思います。</p> <p>この選手に関してはチームが特徴を十分に発揮させてあげられなかった気がしていて、ポジショナルプレーへの理解があるといっても彼が最も得意なのは大外レーンに陣取っての幅取り、仕掛け、そして大外からエリア内に爆走してのフィニッシュといったプレーで、誤解を恐れずに言えば彼はアタッカーというよりは大外レーンにいるフィニッシャーと言う感じ。もちろん大外レーンでの縦への仕掛けからのクロスも武器として持ってはいますが、今季の浦和のSHは大外に張っているだけでなく内側のレーンに入ってトップ下のように振る舞うプレーやビルドアップの出口やサポートとなるためにIH的な役割を担うことも求められており、そうした器用さを持ち合わせていないことからチームにとっても本人にとっても「思てたんと微妙に違う…」という感覚があったかも。とはいえ相手との嚙み合わせやゲームプランの関係で彼の前にスペースが広がっていて大外からの仕掛けを存分に発揮出来るゲームや、逆サイドで上手く相手のラインを突破して右サイドから中央に飛び込んだ田中がゴールを狙うというシーンでは大分時代と同様の輝きを発揮しており、要は彼が一番出来ることだけをさせてあげる状態に出来なかったなと。</p> <p>「ファンだった」と公言していた元祖田中達也のクラブでのプレーは100%期待通りではなかったかもしれませんが、キャリアの最も良い時期に「浦和の11番」であったことには本人も満足しているはず。大分時代に8ゴールを奪った能力が今季突然落ちたわけではなく、成績が下降した原因もはっきりしているので、既に移籍が発表された地元福岡では大分時代に近い活躍が期待できるかも。そもそもやってほしいこととのミスマッチがあったにしては活躍してくれたと思いますし、短いキャリアの中での決断として個人的には移籍にも納得できるかなという感じです。ACL要員として残ってくれたら頼もしかったですが、福岡がJ1にいるうちに戻りたいという気持ちもあるんじゃないかと思います。最後の挨拶も誠意があったし、個人的には後腐れなし。また会おう。</p> <h5 id="12GK-鈴木-彩艶">12 GK 鈴木 彩艶</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226010247.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226010247p:plain" title="" width="704" height="242" loading="lazy" /></p> <p>ついにヴェールを脱いだ浦和の至宝。19歳のGKがルーキーイヤーで公式戦15試合出場は本当に立派です。5月初旬のアビスパ福岡戦での西川のパフォーマンスの悪さからチャンスを掴み、J1では6月20日の湘南戦まで6試合に連続出場。約6週間の短い間でしたがスタメンGKとしてどのような準備が必要か、コンディショニングやメンタル面の準備をどのようにすべきかキャリアの早い段階で経験できたのは大きな財産になるのかなと思います。</p> <p>プレーではセービングの際の身体の反応の速さに加えてビルドアップの面でも恐れずにボールをもらい相手の2トップの間を通すパスも出せていたので期待以上。単純に身体が大きいので威圧感もありますし、クロスに対する飛び出しの判断も改善の余地はありつつも他の若いGKに比べれば無茶なものは少なかったのではないかと思います。ただ依然壁として立ちはだかる達人西川との差はやはりコーチングや無駄のない動き、プレーの連続性の部分で、そうした経験値が出場試合の勝率に現れてしまった部分も多少あるかも。引き続き精進が必要でしょうが、そういった部分に絶対的な理論を有しているジョアン・ミレッのGKコーチ就任はかなり大きいかも。クラブも彩艶というとてつもないポテンシャル、そして後に続くであろう生え抜きGKの石井や川崎を潰してはいけないという覚悟があるのかもしれません。</p> <p>なるべく多く実戦経験を積ませたいのでJ1で使ってくれそうなところがあればレンタルもあり得るかも。ただ来季はACLもあるので、基本は西川との競争を継続させるのでしょうか。</p> <h5 id="13MF-伊藤涼太郎">13 MF 伊藤涼太郎</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226191434.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226191434p:plain" title="" width="706" height="236" loading="lazy" /></p> <p>ミスターポテンシャル山田暢久とミシャ・ロマンチスト・ペトロヴィッチがその才能に惚れ込み高卒で獲得した和製ファンタジスタ。これまでもレンタル移籍を繰り返し、そのたびに愛媛へのレンタルをきっかけに成り上った森脇にあやかって46番をつけていた健気な選手ですが、勝負の年と意気込んでいたであろう今季もシーズン途中から水戸へのレンタルという結果に。水戸ではそれなりに活躍しており、特にリーグ終盤戦は複数ゴールも決めて勢いに乗ってきた印象でしたが、来季は新潟に完全移籍となるとのことです。</p> <p>各所で何度も話している通り涼太郎の最大の特徴は高いレベルのテクニックと身のこなし、そしてアイデアの豊富さとその実現力ですが、一方でゲームに入ったファーストタッチが乱れるとそのまますべてのプレーがガラガラと崩れていくというとんでもないムラッ気も持ち合わせており、浦和で活躍したい、このゲームが勝負だと意気込むが故なんでしょうがパフォーマンスの波が激しく、歴代監督としては守備での貢献の小ささもあって使いにくかったかもしれません。リカルドのサッカーではスタートの形がどうあれいわゆるシャドー的なポジションでボールを受ける選手は重宝される傾向があるので涼太郎もチャンスがあるかなと思いましたが、総合的には難しかったんでしょう。</p> <p>僕は個人的に、「プロ選手として大成するには決めなければいけないゴールがある」と信じているのですが、残念ながら彼はそれを決めることが出来なかったかもしれません。思いつく最大のチャンスは昨年の第6節ホーム柏レイソル戦で、オルンガのゴールラッシュを食らってレッズが完全に沈黙してしまった試合ですが、後半途中から出てきた涼太郎がバイタルエリアに陣取ると山中からの縦パスをヒールで興梠にフリック、浮き球で返ってきたボールをボレーしたものの中村航輔のセーブにあってしまったというシーン。あれを決めていれば涼太郎の浦和でのサッカー人生が変わったんじゃないかと未だに思ってしまいますが、もしこれから涼太郎に「そういうシーン」が訪れるなら、次こそは必ずそれをモノにして這い上がってきてほしいと思います。間受けからのターンをビシバシに決めてからのドリブル、いつ見ていたのかわからないタイミングで出せるサイドへの展開、振りが小さく予備動作の少ないシュートと「漫画ですか?」と言いたくなるようなロマン溢れるプレーと「何か一発やってくれそう」感で全てのサッカーファンを魅了できる能力があるはずなので、新天地ではある意味でリラックスして、伸び伸びとえぐいプレーを連発して欲しいです。頑張って。</p> <h5 id="14FW-杉本健勇">14 FW 杉本健勇</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226114205.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226114205p:plain" title="" width="1055" height="406" loading="lazy" /></p> <p>今季当初は興梠のコンディション不安もあってFWのファーストチョイスとして稼働。シーズン当初のビルドアップが安定しなかったチームにおいて浮き球のキープ力は緊急脱出の手段として非常に役立っていました。ただ重用されていた2月、3月のリーグ戦6試合で1得点と成績が伸びず、キャスパーが加入してからは一気にベンチ要員に降格。第8節の清水エスパルス戦でのセンセーショナルなゴールやルヴァンカップ横浜FC戦の2得点で存在感を増していくかと思われましたがその後はまとまった出場機会を確保できず、まさかのマリノスへのレンタル移籍となりました。</p> <p>成績面を改めてみても出場試合数のわりにプレータイムが伸びておらず、その傾向はマリノスでも変わらないため「90分プレーするための移籍」という言葉を聞いても虚しさが募る感は否めず、これだったらレッズで頑張っても良かったんじゃないの?と思ってしまうところ。ただ本人の立場に立って考えると浦和に移籍して以来なかなかまとまった活躍が出来ていないし、どうしても水が合わない感じがしたのかもな、とも思います。浦和には彼が調子を掴むまで待っている暇はないし、そもそも契約期間の稼働と活躍具合を考えればすでに十分時間を与えていたわけで、本人がそういう感じならクラブとしても置いておいても仕方がないという考えもあったかも。クラブとしても興梠ら中心選手たちとしても健勇に爆発してもらって浦和のこれからを任せたいという期待があったはずなので、お互いにもどかしい感じがあったかもしれません。</p> <p>来季浦和に残るかどうかは全く不明ですが磐田がレンタルでのオファーを提示したとのこと。浦和も木下がああいう感じなので仕事ができる日本人FWは確保しておきたいはずですが、今季途中でのマリノスへのレンタル移籍は「浦和を背負う責任」をキーワードに掲げるクラブとしては看過できなさそう。どのクラブであれプロファイルの良さとポテンシャルに見合う活躍が出来るといいんですが、今季開幕戦でも勢いに乗れそうな素晴らしいゴールにオフサイドがついたり、なんか風水的な何がかよくない気がするので、玄関の位置を変える、改名する、10万円の壺を南向きに置くなどの解決策をお勧めします。</p> <h5 id="15MF-明本-考浩">15 MF 明本 考浩</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226010456.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226010456p:plain" title="" width="702" height="242" loading="lazy" /></p> <p>もう最高です。昨季のJ2リーグで最も好きだった選手が浦和に加入し、さらにシーズンを通じて素晴らしい活躍をしてくれました。今季は公式戦47試合に出場し、昨季ルーキーながらエースとして大活躍した栃木での公式戦出場試合数を更新。リーグに限っては33試合2,581分のプレーで堂々のチーム3位。上には岩波と西川しかないので、定量的に言えば今季新加入選手の中で最もチームに貢献したと言っても過言ではないと思います。</p> <p>リカルドのサッカーに合う特徴を持っている個人昇格選手の活躍が注目された今季ですが、明本の特徴はあきらかに小泉や平野とは違います。どちらかといえば昨季の浦和のサッカー、大槻監督の目指したネオ「速く、激しく、外連味なく」に近い特徴を持っており、ピッチ上の国道4号線を爆走しまくる無尽蔵のスタミナとバリ高いインテンシティ、何度倒れても関係なくプレーを続けてくれるガッツの申し子のような選手で、ビルドアップでの振る舞いで複雑なことが出来たりユニークなスキルを持っているわけではありません。こういうタイプをリカルドがどのくらい使うのだろう?という疑問もあったのですが、現実には上記の通りリカルドは明本を重用し、トップ、左SH、そして左SBの3つのポジションで起用されました。こうした複数ポジションでプレーできたことが彼のプレータイムをここまで押し上げた要因なんでしょうね。</p> <p>で、基本的に彼が今季こなしていた役割ですが、トップもしくはSHであれば無限裏抜け作戦の決行とボールを奪われた際の強度マックスプレッシングの実行、そして前進されたらすぐに戻っての守備ブロック参加。左SBであればボール保持の度に前線まで上がってSHと連携してのサイド攻略とボールを奪われた際の強度マックスプレッシングの実行、そして前進されたらすぐに戻っての守備ブロック参加。…ほぼ同じことしかしていない!そう、別に器用な選手ではないのです。だがそれがいい。チームにエナジーを与えてくれる選手は大事です。酒井とともに両サイドにゴリゴリできる選手がいたことは非常に重要で、彼らがいなければ今季の浦和は肝心なところで戦いきれずに神経質にボールをこねるばかりのチームと言われていたかもしれません。</p> <p>一方で来季は左SBに同じく球際で闘える上にモダンなサッカーへの相性も良い鳥栖の大畑が加入し、前目のポジションで勝負することができそう、というかそれを期待しています。どこがスタートポジションでも彼の良さは変わりませんが、無限裏抜けは今季のチームでは明本だけができるプレーでしたから、硬直しがち(江坂のレビューで後述)な前線を来季もバチクソに活性化して欲しいところ。アジアの舞台でのフィジカルバトル要員としても期待されることでしょうし、要するに来季も今季のパフォーマンスの継続が求められます。ただ逆に言えば彼の伸びしろはどこなの?というのが問題で、来季はそれが何なのかを探すシーズンになりそう。前線で使われるなら得点でしょうし、左SBであればクロスからのアシストなど、選手としての格を上げていくには各ポジションで求められる数字の面にもこだわっていきたいところです。ただもしかすると、槙野や宇賀神の後を継いでチームのムードメーカーとしてチームの雰囲気を作っていくことが最も重要かもしれません。</p> <h5 id="16FW-木下-康介">16 FW 木下 康介</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226012038.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226012038p:plain" title="" width="707" height="202" loading="lazy" /></p> <p>夏加入の大型逆輸入FWということでロマンは無限大でしたが最終兵器は最終兵器のままシーズン終了。リーグ戦2試合17分の出場で何かを語るべきかどうかと思いますが、海外でのプレー、浦和でのプレーを観た感じ、そして育成年代では何も考えずに好き放題プレーしていたと本人が語っていたの踏まえても、日本のトップレベルでプレーする準備はできていなかった印象です。</p> <p>生き残る道があるとすれば役割に徹する形でキャスパーがあまりやらないサイドに流れての起点作りにこだわることかなと思いますが、機動力があるようにも思えず難しそう。190cmの高さは魅力ですが、個人的にはレンタル移籍等も含めて出場機会を確保しコンディションを上げるとともに武器となるプレーを見つけていく作業が必要な気がします。リーグ最終節のMDPでは「戦うための身体づくりをしている」という趣旨のコメントを残しており、もしかしたらコンディション的に万全じゃなかった可能性もあるので、来季いきなり真の姿に覚醒して突如ハーランド化してくれてもいいです。</p> <h5 id="17MF-伊藤-敦樹">17 MF 伊藤 敦樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226012415.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226012415p:plain" title="" width="705" height="242" loading="lazy" /></p> <p>今季公式戦53試合に出場で3ゴール、特にリーグでは36試合2,265分間のプレーと圧巻のデビュー。数字だけでなくプレー内容を見てもとてもルーキーとは思えず、当チラ裏では伊藤選手を実務経験7年目相当と認定し表彰致します。</p> <p>特に素晴らしかったのは攻守におけるボール周辺のプレーの質の高さで、182cm78kgの恵体で球際のフィジカルバトルに勝利し、オンザボールでは質の高すぎる足元の基礎技術を活かして相手の出方を見ながら前進し的確にパスを繋ぐなど、もはや出し得状態。浦和JY時代から大学までのキャリアの中でトップ下→ボランチ→CBとポジションを下げながらピッチ中央あらゆる高さでのプレーを経験してきたこともCHとしてのプレーに落ち着きと質をもたらしているようで、必ずしも芽が出ていたとは言い難かった育成年代時代の苦労がプロデビュー後に報われるという美しい成長曲線を辿っているようにも思います。</p> <p>チームのビルドアップが整理されたシーズン半ばには本来もっと前に人数を掛けられたにも関わらず必要以上に後ろに残ってしまう微妙なポジショニングが目立ち始め、盤面把握と立ち位置の取り方は前でも後ろでもプレーできる彼の良さを最大限発揮するには大きな課題になってしまうかなと感じることもありましたが、終盤戦にかけては徐々に前に出てビルドアップの出口兼チャンスメーカーとなる半トップ下ロールへのチャレンジを見せてくれるようになるなど、課題克服能力も高そうな感じ。また今季これだけの活躍をしてなお最適なポジションが未だ見つかっていない感すらあり、CB起用を期待する声もある様子。たしかに流経大3年・4年時にCBとしてプレーしていたことや、この敦樹を差し置いて流経大のCHに君臨していた安居海渡の来季加入もあるため可能性は0ではありませんが、個人的にはCHもしくはIHでなんでもやらせて体格・技術・戦術眼を兼ね備えたリーグ最強のミッドフィールダーとして大成してほしいところです。</p> <p>これだけのスケールの能力を23歳の若さで見せているだけに当然海外のスカウティング網にも既に捕捉されており、海外記事では注目の若手としてスタッツが紹介されるなど現スカッドでは近い将来の海外移籍の可能性が最も高い選手の一人でしょう。とはいえ少なくともあと2年くらいは浦和レッズで、彼のぷにぷにのほっぺに詰まったポテンシャルとロマンを堪能させて頂きたく、多少なら痩せてもいいけど頼むから怪我だけはしないでください。</p> <h5 id="18MF-小泉-佳穂">18 MF 小泉 佳穂</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226013148.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226013148p:plain" title="" width="702" height="243" loading="lazy" /></p> <p>僕はJ1クラブのサポーターとしてはそこそこJ2もチェックしている方だと思うのですが、この選手は完全にノーマークでした。</p> <p>大きくない、足も速くない、しかしまさかの完全両利きかつ鬼のボールキープ力。相手に体をぶつけられるのと同時にボールを自分が飛ばされる方向に逃がしてコントロールし、深追いしてくればターンで外す。プレー方向は360度で予測不可能、ボールが奪えないでいると浦和の選手がポジションを整えてプレスがかからない…。逆脚精度が高いだけでなく両足を使うための身体操作が左右遜色なく出来ているのが彼のスペシャルな特徴で、右回りのターンも左回りのターンも普通に出来てしまうのはちょっと異常です。利き手利き足があるように体を回しやすい向きもあるでしょ、普通。そして前を向けば元祖切替し(しかもどちらの脚でも切り返しが深い!)で相手を外し、パンチ力のあるミドルも両脚で撃てる。さすがにボール非保持では役に立たないかと思いきや攻守の切り替え意識が抜群に高く、パスコースを切りながらのプレスも上手い。極めつけは攻守に走り続け、球際バトルは大歓迎という心と身体のインテンシティ。何個特殊能力ついてんの?その特殊能力どのイベントでついたん?教えてくれ。お前のサクセスストーリーは俺のやつと違いすぎる。というわけで、リカルドサッカーへの高すぎる適正を開幕から示し、一気にこのチームの「論点」となったシーズン序盤はまさに衝撃的な印象を与えてくれました。</p> <p>シーズンを通しても大きな離脱をせずにJ1初挑戦にして公式戦47試合出場、リーグ戦は34試合、チーム4位の2,408分のプレーで「J1の強度でやれるんか」論を一蹴し、本当に立派なパフォーマンスだった今季なのですが、これだけできるとさらに多くを求めてしまうのがサポーターの、いや人間の性。あえて課題を出すとすれば試合を決定づけるプレーの部分で、トップ下を中心として2,000分以上リーグに出場して2ゴール5アシストは優勝を目指すチームの中盤前目の選手としては不足しています。もちろん彼のトップ下やIHとしての仕事はビルドアップの逃げ場として3列目に降りていく役割も大きく、ボールが来るのを待って決定的なシーンを作るのが仕事という伝統的なタイプのトップ下とは全く違うのですが、彼が今後補強を重ねていくであろうチームで生き残っていくためには、自分で試合を決めていくという野心めいたプレーがもっと必要になると思います。シーズン中の疲労と相まってこの部分がフォーカスされた中盤戦~終盤戦の時期は小泉自身ある種の壁を感じていたかもしれません。</p> <p>というのはおそらく、そうしなければ彼が守備的な使われ方をする選手になってしまうのではないかと思うからで、実際に今季終盤のリカルドは彼の良さを主にディフェンスに活かしていました。たしかにボールキープの上手さも攻守の切り替えの早さもプレッシングの上手さも自分たちに優位な形でゲームを安定させるのに非常に助かるポイントで、監督の立場からすれば、勝利を目前にしてオープンな展開にならないようにゲームを落ち着かせたいところで彼を投入したくなる気持ちはよくわかります。それが上手にできる選手がいるかいないかはチームにとって大違いで、それが序盤の衝撃そのものなのですが、こうした良さを監督に便利に使われてしまえば、彼ほどの選手が守備固め要員に成り下がってしまうかもしれません。つまり、そうならないためには彼が試合を決めていく、チームに不可欠な選手なんだと見せつける必要があるはずで、こういった考えから僕は彼がこのチームの主人公にならなければいけないと思っています。</p> <p>インタビューを読んでいても自分に厳しく謙虚に思考を積み上げていくタイプのようですが、謙虚な思考と現実的な思考は別物なので、「現実的に」自分がチームを勝たせなければいけないという思考、そういった決意と野心から出てくるプレーが来季はもっと見たいです。今季我々に衝撃を与えてくれた彼の元々の良さに加えて、リスクをとってでも前に、ゴールにプレーする主人公の姿に期待してます。</p> <h5 id="19MF-金子-大毅">19 MF 金子 大毅</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226013529.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226013529p:plain" title="" width="704" height="241" loading="lazy" /></p> <p>個人的には明本と同じくらい期待していたのですが、ふたを開けてみれば公式戦19試合の出場に留まり、リーグ戦ではたった447分のプレーと相当悔しいシーズンになってしまいました。僕としてもこの結果はかなり残念でしたが、一方で思ったよりもリカルドのサッカーに染まれなかった、染まらなかったなという印象もあり、相性というか考え方の部分で馴染み切らないところがあったのかも、と思います。せめて出場機会がそれなりに確保できれば違ったと思うのですが、シーズン中盤からは柴戸がリカルドのサッカーにフィットしたことで苦しい立場に追い込まれてしまったかも。タイプが似ているので被るのではないかと心配されていた柴戸と金子ですが、結果論で言えばリカルドの求めるサッカー、自分の良さと必ずしも一致しないサッカーを求められたとしてもそれに染まってやり切ることが出来るかどうかがその後を分けたということもできるかもしれません。</p> <p>2018年にはじめて観たときから彼のプレーが大好きだった僕としては彼のトランジション耐性、具体的に言えば局面が攻から守に局面が移った瞬間に強度高くボールに寄せられるところ、そしてボールを奪ってから自ら攻撃に転じることが出来るところにすごく期待していて、さらに大学を中退し20歳でプロデビューしていることからキャリアと印象に比べて若い選手というのが最大の魅力と思っていました。2018年のルヴァンカップ決勝で見せたような強度の高い展開への耐性に加えて、リカルドからボール保持時の振る舞いをじっくり学ぶことでパーフェクトに近いCHになれるのではないかと期待していたのですが、もしかしたら本人にはそんなに悠長にやっているつもりはなくて、試合に出られないくらいならもっとダイレクトなサッカーの中で自分の良さを活かしていくほうがイメージしやすのかもな、と思います。そういう意味では監督が大槻さんのままだった方が活躍したかもしれませんし、京都で恩師であるチョウキジェ監督の下プレーしようと思うのは自然かなとも思います。できればレンタルで浦和に籍を残してほしいんですが、難しいですかね。京都に移籍して1年、2年キャリアと経験を積んで、レベルアップした後に鹿島とか行かれるのが最悪なんですが、なんとか今から阻止できないでしょうか。なんなら海外に行ってもらってもいいんですけど。そのあたりだけ、よろしくお願いします。</p> <p>と思っていたらレンタル移籍での京都加入が発表されてました。ナイス。必ず戻ってきてくれ。</p> <h5 id="20DF-トーマスデン">20 DF トーマス・デン</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226014036.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226014036p:plain" title="" width="704" height="270" loading="lazy" /></p> <p>怪我に泣かされることになってしまった今シーズン、出場は9試合のみ、リーグではたった2試合157分の出場と完全に不本意なシーズンでした。ただ自身にとって最大のテーマであった東京オリンピックにはオーストラリアU24チームのキャプテンとしてグループステージ全3試合に先発し、初戦アルゼンチン戦の金星に貢献しMOMを獲得。残念ながらグループステージ突破はなりませんでしたが、この大会に出場出来なければ何のために日本にチャレンジしに来たのか、となってしまうところでしたからその点はよかったのかなと思います。</p> <p>CBとしてはスピードとカバーリングが持ち味でビルドアップにも問題なく関わることが出来る選手で岩波とはタイプが逆の存在ということで待望論もありましたが、グロインペインの影響でコンディションが整わず、母国メディアへのインタビューでは怪我への対処についてレッズのメディカルチームとの意見の対立があったことを明かしており、今季は出場機会を得られなかった以上に苦しい状況だったのかもしれません。昨年から出場したときのパフォーマンスは悪くなく期待も十分にされていたと思いますが、なかなか連続稼働が出来なかったことが大きかったか契約満了に。</p> <p>満足のいく治療が出来ないままでの満了宣告ということでかなりショックだったようですが、一方で日本でのプレーを希望しているとのこと。良い選手なのでそれに見合うキャリアを歩んでほしいのですが、一方で脚が長すぎて日本人選手の細かいアジリティについていきずらそうなところもあり、本当にJリーグと相性が良いのかなと思う部分も。個人的にははやめに欧州挑戦した方がいいのでは、と思わなくもありませんが、これからも頑張って。</p> <h5 id="21MF-大久保-智明">21 MF 大久保 智明</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226014307.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226014307p:plain" title="" width="705" height="244" loading="lazy" /></p> <p>中央大学3年次に加入が内定し同時に特別指定、昨年も継続し特別指定に登録されていたため一応3年目。とはいえ過去2年は怪我やなんやかんやでほとんど合流していなかったので実質というか普通のルーキーシーズンとなった今季だったのですが、公式戦27試合に出場とまずまず。ただし先発は11試合、リーグ戦のプレータイムは725分で1ゴール0アシストと、10ゴールを目標にぶち上げていた本人にとっては物足りなかったことでしょう。</p> <p>大学時代は左利きの右WGとして暴れていたこともあり関根と右サイドを争うのかなと思いきや、リカルドは左サイドで重用。例えば最近の統計データをベースにした戦術議論ではゴールポスト脇までサイドの選手が侵入してからのマイナスのクロスでシュートを狙う形のゴール期待値が高く、一つの狙いにしたいために順脚のアタッカーを置くべきという考え方があるなど、いろいろと理由はあるのでしょうが、もう少し右サイドで思うままにプレーさせてみてほしかったなとも思います。主にロマン的な意味で。</p> <p>彼のプレーの功罪というか特徴は天皇杯決勝の最後の時間帯によく表れていて、守備時のボールへの寄せややりきる部分は甘いものの、前向きにプレー出来さえすれば果敢に仕掛けてFKやCKを獲得してくれるといった感じ。序盤から中盤にかけては緊張や遠慮もあったのかおっかなびっくり仕掛けていく感じがありましたが、終盤、特に初ゴールを獲ってからは相手に向かっていくプレーに自信が出てきたのかなという印象でした。川崎戦での0-5負けなど悔しい記憶が多かったシーズンだとは思いますが、ポテンシャルは大きく、特に36節の横浜FM戦など相手のSBが上がった背中を使って高いラインのCBに仕掛けていくという戦術的に求められた役割と彼の良さがマッチしたゲームでは良いプレーが出来ていたと思います。終盤になるにつれて無駄な動きも少なくなって攻守に頑張りが発揮できるようにもなっていました。</p> <p>期待感は大きいものの、一方で来季は水戸のエースで大久保と同じく左利きの右WG松崎快の加入が決定的となっており、外国人選手の補強の有無や関根が左右どちらのサイドでプレーするかにもよりますがサイドの選手は全般的に仕掛けだけでなくゴールへの貢献を強く求められ、競争も激しくなりそう。いろいろなタイプの選手と競争することになるはずなので、左利きにプラスして彼だけの特性・特徴をアピールできるかが問われそうです。</p> <p> </p> <p>まだまだ続く!</p> <p>(下)はこちら</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(下) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F28%2F182837" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/28/182837">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 2021シーズン全選手振り返り(上) hatenablog://entry/13574176438046172137 2021-12-26T18:21:23+09:00 2023-08-06T01:13:42+09:00 今年は誰にも頼まれていないのに書き始めてしまいました。今年は比較的書きやすかったですが全員分書くのは相変わらずつらかったです。 出場記録は例のごとくSoccer D.B.さんのデータを主に参照(アシスト数はJリーグ公式)です。間違っていたらそれとなく教えてください。 1 GK 西川周作 J1では新星・鈴木彩艶に6試合ゴールマウスを明け渡すことになったものの、中盤戦以降のゴールを守り続け、天皇杯では1失点で優勝を果たすなど守護神健在をアピール。公式戦41試合出場はこれまでの西川の実績を考えれば決して多くありませんが、出場時の勝率56.1%は非常に良い数字ではないかと思われます。ただプレー面ではビ… <p>今年は誰にも頼まれていないのに書き始めてしまいました。今年は比較的書きやすかったですが全員分書くのは相変わらずつらかったです。</p> <p>出場記録は例のごとく<a href="https://soccer-db.net/team/player.php?te=1008&amp;yr=2021">Soccer D.B.</a>さんのデータを主に参照(アシスト数はJリーグ公式)です。間違っていたらそれとなく教えてください。</p> <h5 id="1GK-西川周作">1 GK 西川周作</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211225/20211225235315.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211225235315p:plain" title="" width="1059" height="427" loading="lazy" /></p> <p>J1では新星・鈴木彩艶に6試合ゴールマウスを明け渡すことになったものの、中盤戦以降のゴールを守り続け、天皇杯では1失点で優勝を果たすなど守護神健在をアピール。公式戦41試合出場はこれまでの西川の実績を考えれば決して多くありませんが、出場時の勝率56.1%は非常に良い数字ではないかと思われます。ただプレー面ではビルドアップで判断ミスから苦しい場面を自ら招くなど、「ビルドアップに対応できるGKですか?」という部分を問われるとそうとも言えないと思わせる場面も多く、またゴールを守るという部分でもすさまじいダイナミックさを見せてくれる彩艶との比較では保守的な飛び出しの判断を気にする人もいたかもしれません。実際のところ将来性やポテンシャルを評価に入れれば世界に出て行くべき才能を持つ彩艶を使う選択肢は現実的になってきており、西川にとっては来季は今季以上に競争に晒されるシーズンになりそうです。</p> <p>一方で、現時点でJ1通算522試合出場で歴代7位、阿部が引退したことで来季は現役選手としては遠藤保仁に次いで2位となる経験値は他の選手にはない武器となっており、特に自分の守備範囲にボールが飛んできたときの処理ミスの少なさ、ボールをはじいた後の対応などのレベルは年々上がっている印象。槙野が攻撃的なプレーをある程度捨ててまで守備者としてのプレーに注力しプレースタイルを年々変えていったように、西川もまた浜野コーチの就任以降「目に見えない技術」を極めようとしているのかなと思います。特に素晴らしいのは守備時のコーチングで、特にショルツ加入移行は最終ラインからのコーチングの声がかなり減ってしまったレッズにあって西川のコーチングが果たしていた役割はかなり大きいと思います。相手がビルドアップをしている段階でボールと逆サイドのSHに対してポジションを修正するよう頻繁に指示していた声をどれだけの人が意識して拾っていたかはわかりませんが、片方のサイドで前進してくるボールを追いながら逆サイドの味方の立ち位置を調整できるGKは4-4-2をボール非保持時の基本的な配置とするチームでは本当に貴重で、3バックで守るチームに長くいた西川にとってはここ数年の大きな成長なのかなと思います。そういった細かい部分、目に見えない部分での彩艶との差はまだまだ大きく、来季も今季並みの出場機会を勝ちとれれば達成できる曽ヶ端準のJ1通算533試合越え、歴代5位の記録までは現実的に目指すことが出来るのではないかと期待しています。世代交代の波を感じつつありもしかしたら移籍もあり得るかと思いましたが、天皇杯優勝後に残留宣言で一安心。</p> <h5 id="2-DF-酒井-宏樹">2  DF 酒井 宏樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211225/20211225235630.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211225235630p:plain" title="" width="706" height="271" loading="lazy" /></p> <p>夏の移籍で名門マルセイユから電撃加入した現役日本代表は今季公式戦18試合に出場。ヨーロッパのカレンダーから一年半休みなし、しかもA代表の活動に加えオリンピックの活動もあるなかで18試合中17試合の先発出場は立派なものです。ピッチ上では持ち前のタフさを活かしてワールドクラスの球際の戦いを披露し右サイドのボスゴリラとして君臨。特に天皇杯準決勝セレッソ戦での間一髪スライディングなど、いざという時に無理をきかせてチームを救ってくれるあたりはさすが経験豊富な選手という感じでした。また攻撃面でもJリーグFC東京戦や川崎戦ではエリア内まで侵入してゴールを決めるなど攻守にアグレッシブなプレーで若くテクニカルな選手が多かった今季のレッズにパワーを積み上げてくれたのはリカルドにとっても大きかったでしょう。レッズの選手としてプレーした試合では2回しか負けておらず、出場試合の勝率63%は酒井以外の要素も大きいとはいえ化け物クラス。</p> <p>一方でとある記事によればイニエスタを抑えて今季のJリーグでナンバーワンだったと言われる市場価値(約8億円)に見合うパフォーマンスを発揮していたかと言われると微妙なところで、特に柏時代の彼の代名詞でもあるオーバーラップからの高速クロスを浦和で披露してくれるチャンスは多くありませんでした。これは酒井本人の問題と言うよりも浦和の戦術とスカッド構成によるところが大きく、例えば右SHに田中達也を起用すると香車2枚でお互いに使いたいスペースやプレーを制限してしまった感じがあり、もう少し器用な関根と組んでもお互いに自分のアクションで目の前の相手を剥がしに行く選択肢を取ってしまうのかシンプルなコンビネーションでサイドの深い位置を抉るようなシーンはあまり作れていませんでした。受け手が酒井であれば何をするかバレバレのワンツーでも相手を引き倒してクロスまでいってくれそうなものですが、結局は酒井が気を利かせたかインナーラップからエリア内に突っ込み関根のクロスに飛び込んでいくような動きをするようになり、「たしかにすごい迫力だけど俺たちはこれが見たかったんだっけ?」と、ふとした時に思い返してしまうこともしばしば。僕なんかはこの半年間、10年前の記憶を引っ張り出しては「レドミさえいれば…!」と思い続けたわけですが、とはいえこれは逆に言えばこれはチームと酒井にパフォーマンスの伸びしろが残されてるということとも言えます。守備面で明らかに後ろが空いてしまうのにボールに飛び込んでいくような、酒井高徳氏の言うところの『欧州のサッカー』ムーブの修正も含めて、Jリーグにアジャストしたうえで欧州クラスの個人の質を発揮する姿を来年は見せて欲しいところで、もちろん本人もそのつもりでしょう。</p> <p>来季の不安要素としては下手をすると今季以上に苦しいことになりそうな日程への対応で、天皇杯優勝の代償とも言える短すぎるオフの後にいきなりスケジュールされているA代表の活動に加え、浦和でもACLによる国際移動があるほか、W杯の開催のために11月で終了となる詰め込み式Jリーグおよびカップ戦を一人で戦い抜くのはほぼ不可能と言えます。そういったこともあって同じポジションにリカルドのサッカーを知っておりレギュラーとして十分起用できそうな馬渡を獲得したのでしょうけど、本人の性格的にはすべての試合に出たいはず。高いレベルの競争は歓迎ですが、今季もあまり休んでいないので、疲労と怪我だけには注意してほしいところです。</p> <h5 id="3DF-宇賀神-友弥">3 DF 宇賀神 友弥</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211225/20211225235819.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211225235819p:plain" title="" width="708" height="246" loading="lazy" /></p> <p>「結局は宇賀神」伝説も今季でついに終焉。ユース出身選手の大卒カムバックルートを開拓してからはや12年。もしかすると2012年オフのボーフムからのオファーを断ったあたりからワンクラブマンとして浦和で現役生活を全うする夢を描いていたのではないかと思いますが、こんな終わり方とは僕も想像していませんでした。目標と語っていた平川のJ1リーグ通算336試合出場まであとたった43試合、通算300試合を祝うまであと一歩の通算293試合。せめてあと1年か2年、本人がもうだめだと言うまでやらせてあげたかった。</p> <p>とはいえ、戦術的な理由での放出には納得できるところもあるのは事実で、全盛期のような初速の速さを活かした静止からの仕掛けは既になかなか見ることがなくなっており、サイドの高い位置に彼を置いたところで次に何が起きる?というと難しい部分は間違いなくありました。両SBをこなせるといっても現役日本代表の酒井を獲得できるクラブですから、「こなせる」というだけではなかなか難しいわけで、戦術眼の良さや経験があるとはいえサイドの選手に求められるフィジカルやテクニック面での優位性を発揮できなくなりつつある選手が生き残っていくのは難しいのでしょう。その意味では、昨年の大槻監督やリカルドが彼に対してボランチへの挑戦を考えさせるような声掛けをしていたことはある意味で彼の生き残りの道を提案したものだったのかもしれません。周りを動かし、バランスをとるのが自分の長所と言い切っていただけに、サイドにこだわらずに生き残るのも良いのではないかと考えたのかなと…。まあ、最後は本人が決めることなんですけれど。<br />チームを作り上げる、選手同士の人間的関係性を繋ぐという意味では苦労人らしく厳しいことも言えるし励ますこともできる貴重な人間だと思いますが、プロはやっぱり必要としてくれる場所でプレーするのが一番だと思います。どうやら移籍先として柏木も所属するJ3岐阜が上がっているようですが、個人的にはカテゴリーを問わず若くて活きが良いけど経験不足な選手が多いチームでまとめ役になるのが一番良いのではないかと思います。<br />最後の挨拶で浦和のGMになると高らかに宣言した通りいろいろな経験をしていつか浦和に帰ってきてほしいですが、今の浦和にはGM職はなくフットボール本部長、SD、TD体制となっているので、ウガの言っていたGMは僕の知っているGMではないかもしれないとちょっと不安になっています。ゲームマスターとかかな。</p> <p>天皇杯準決勝のミドルシュートは本当にしびれました。まだまだ頑張ってね、ウガ。ありがとう。</p> <h5 id="4-DF-岩波-拓也">4  DF 岩波 拓也</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226000442.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226000442p:plain" title="" width="704" height="246" loading="lazy" /></p> <p>新背番号として4番を背負った今季はキャリア最多の54試合出場、そのうち先発48試合、Jリーグではチームトップの3,253分出場と主軸中の主軸としてシーズンを全う。最大の武器である右足からの高精度フィードでアシストを記録するだけでなく公式戦2得点、リーグ戦ではプレータイム3,000分越えでイエローカード3枚のみ、ファールによる与PKなしと、総じてCBとしては十分以上の活躍を見せたと言えるのではないでしょうか。特にショルツが加入して以降はビルドアップや裏抜け対応への不安などがカバーされたことで安定感が増し、これまでよりも積極的にボールを持ち運ぼうとするなどリカルドのサッカーを体現する上で重要なプレーへのチャレンジも見られました。</p> <p>一方で周囲の評価がいまいち突き抜けないのはどうしても弱点や短所が目についてしまうからで、特にビルドアップで窮屈なプレーが多く見られてしまうのはリカルドのチーム作りを考えても気になってしまうところ。高精度のフィードを持っていることは紛れもない事実なのですが、だからといって相手を見ながら左右・そして手前と奥のスペースへのボールの蹴り分けや、相手が寄せてくる勢いを利用していれ違ったりそこから逃げながらボールを前に運んでいく身体の使い方、さらにはそうしたプレーをシームレスに発動するためのボールの受け方、体の開き方、ボールの置き所など、ビルドアップに必要なプレーが上手いわけではないため、窮屈な場所にトラップしてしまい選択肢を失ってボールを捨てるしかなくなるようなシーンもしばしば。蹴れるということがビルドアップできるということではないという典型的な例とも言えるかもしれません。</p> <p>こうした部分をリカルドや優勝を狙うフットボール本部が見逃がしていくわけもなく、来季は鹿島から同年代の犬飼智也の獲得が決定済み。来季は今季以上に激しい競争に晒されることになりそうですが、一方でゴール前でのシュートブロックは非常に上手いですし闘える選手なので経験ある守備者としては重宝されそう。努力の選手らしく課題に向き合ってレベルアップを図っていけば、クラブが期待しているであろう次世代のリーダーとしての存在感を高めていけるかもしれません。</p> <h5 id="5DF-槙野-智章">5 DF 槙野 智章</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226000825.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226000825p:plain" title="" width="704" height="246" loading="lazy" /></p> <p>天皇杯決勝での劇的なゴールで有終の美を飾ったのはさすがの一言。あのシーンで次のプレー、自分のプレーをイメージできるのは普通の選手、というか普通の人間ではないでしょう。在籍10年を迎え、完全にベテランの域に達した34歳は今季公式戦に45試合出場。シーズン終了前に契約満了が発表となり、本人も大変ショックだったようですが、たしかにリーグ戦2,305分の出場で契約を切られるというのはなかなか受け入れがたい部分があるかなという感じ。プレー面では相変わらずリーグ最強クラスの対人性能を発揮し、昨年に続いて新しいサッカーに取り組むチームを前向きで大きな声と雰囲気づくりで引っ張り続けてくれたことに加え、ショルツ加入にともなってベンチに座る機会が増えた終盤戦は槙野大作戦の主砲としてまさかのロスタイム弾でチームに貢献するなど、ピッチのどこにいても「槙野だなあ」と思わせる活躍をしてくれました。</p> <p>ただ戦術的な役割に目を向けると、ビルドアップでの貢献が限定的で、特に序盤は結果的にボランチが最終ラインに降り、空いたところに小泉が降りとビルドアップに人数をかけすぎてしまう遠因になってしまった感はありました。結局夏の補強で加入した平野やショルツがこうした課題を改善していくことになるのですが、ショルツと比べるのは多少酷とはいえ、チームの求める戦術的要件の変遷に彼の能力が間に合わなくなってきてしまったなかで、高年俸を負担しきれなくなってしまったというのがクラブ側の事情でしょうか。</p> <p>ピッチ上の仕事という意味ではこの10年本当によく働いてくれたと思いますし、特に2016年以降チームの中の立ち位置が変わり、自身のプレースタイルも変えていく中でグループのリーダーとしての振る舞い、CB的なCBへの変化が見られたと思います。おそらくリーグ優勝を逃し続けたことやハリルホジッチとの出会いもあって勝つために何が必要なのか、チームに結果をもたらすために何をすべきなのかにフォーカスしていったのかなと思います。チームの方向性が迷子になった近年、ピッチ上の踏ん張りや選手たちの結束で何とか戦えたきたのは彼が親しみやすさを発揮して新加入選手をグループに取り込み、積み上げてきたコミュニティの力に拠るところが大きく、それがクラブが今新しいチャレンジを出来ている土台になったという意味で非常に重要であるのはリカルドも度々言及しているとおり。ピッチ外のことを含めて好き嫌いの分かれる選手でしたが、僕は本当によくやってくれたと思うし、特に昨年の横浜FC戦での振る舞いなど本当に苦しい場面でチームを助けてくれたことはもっともっと評価されて良いと思います。いつも言ってますけど、好き嫌いとは別の次元で良い悪いを判断すべきであるなら、間違いなく良い選手でした。</p> <p>来季は神戸でプレーすることが決定済みですが、ひさしぶりに外から見る槙野がどんな感じなのか、楽しみなような、怖いような。</p> <h5 id="6DF-山中-亮輔">6 DF 山中 亮輔</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226001203.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226001203p:plain" title="" width="707" height="240" loading="lazy" /></p> <p>在籍3年目となった今季は公式戦34試合に出場。リーグ戦24試合1,711分のプレータイムは悪くない数字ですが、絶対的主力かと言われれば微妙な立場というのが率直な今シーズンのまとめ方になるでしょうか。</p> <p>相変わらず精度と期待感がバグっている左足からのクロスは健在で、特にキャスパー加入以降は理不尽なクロスから理不尽な合わせでの得点への期待感が突き抜けていましたが、実際のところはあまりこのパターンの得点は見られなかったかも。シーズン中盤には左SB明本が機能してしまい出場機会を失ったことに加えて、終盤では怪我もあって思ったようにプレータイムを伸ばせなかったことは本人にとっても悔しさがあるでしょう。ショルツが加入してからは守備面のサポートが手厚くなり、ビルドアップ時においても相手のSHとSBの間で浮くポジションを取っている山中に速いパスが出るようになったことでついに弱みを消して強みだけを発揮することができるようになるかと思いましたが、その割に存在感を強められなかったような気もします。ちょっと不幸だったのはいわゆる0トップシステムを採用したときの典型的な不都合として裏を狙う選手がいないために相手を間延びさせられず自陣に選手が集まってしまうという状況がありましたが、こうなった時に山中がサイドでボールを貰っても当然ゴール前にはまともに人がいないわけで、山中が超絶クロスを上げたとしても合わせる人がいないんじゃねえ…というシーンが出てしまっていたことでしょうか。これは彼自身に非があるわけではなくて、ビルドアップに人を使いすぎるとその先で武器を持っている選手が活かしきれませんよという話で、今季の浦和の大きな教訓となったんじゃないかと思います。チームとしてもう少し彼を上手に使える仕組みが出来れば良かったんですが、逆に言えば、4バックで戦うこと、ボールの出し手を用意すること、ビルドアップの仕組みを整備して彼を解放し、そしてクロスの的をゴール前に置いておくこと、さらには守備時のサポートを用意するなどたくさんの要件を揃えなければその強みが発揮されないというのが彼の難しさなのかなというのがこの3年間の感想で、そりゃ出しておけば死ぬまで走って戦って無限に裏も取ってくれる明本のほうが使いやすいよ、という感じ。結局のところ破壊力は半端ないけれど使いこなすには準備が必要という意味では上級者武器であり、浦和には彼をスカッドに組み込むのはそもそも難しかったかもしれません。</p> <p>というわけで来季はセレッソ大阪に移籍し心機一転を図ることが決定しており、上手く使いこなしてくれれば夢とロマンの詰まった凶悪な左足を元気にぶん回す姿が来年も観られるかもしれません。頑張って。</p> <h5 id="7FW-キャスパーユンカー">7 FW キャスパー・ユンカー</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226001533.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226001533p:plain" title="" width="708" height="245" loading="lazy" /></p> <p>移籍加入前はかなりゴタゴタしていましたがいざチームに合流すると圧倒的なスピードと決定力、ストライカーらしいポジショニングでゴールを量産。リーグ戦で9ゴール、ルヴァンカップで4ゴール(得点王)、天皇杯で3ゴールと大会を問わずゴールを決めまくり、最強の美貌と相まってリーグを代表するアイドルプレーヤーとなりました。</p> <p>ただし怪我での離脱など稼働率が上がり切らなったのが玉に瑕で、リーグ戦では21試合1,302分の出場のみ。これで9ゴールは十分凄いのですが、彼の実力なら2,000分プレーして15ゴールくらいの成績は求めたいところでしょうか。プレーの面では加入前の予想通り思考回路がストライカーだなという印象で、基本的には自分がファーストアクションを起こすというよりは他の選手に反応した相手DFの隙をついてフリーになるのが好きな様子で、そういう意味でごちゃごちゃ動き回って無限に裏を取って相手の最終ラインをかく乱してくれる明本との2トップで出場した試合が最も楽しそうでした。相手とのギャップ、もしくはよーいドンの状態を作れれば爆発的なスピードで相手を寄せ付けずにフィニッシュできるというのがレオナルドとの大きな違いですが、ビルドアップで何かをする選手ではなく、自分がシュートを撃つためにプレーしているという点ではレオナルドと近いものを感じます。つまりは使いやすいFWというわけではなく、彼の良さを活かすためのパーツがいくつか必要なんだろうなあというのが個人的な印象で、ノーマークで特徴がバレていなかった春先はともかく、夏場に入ってくるとコンディションの低下とともに初見殺しがきかなくなって得点ペースが落ちたのは必然だったかなと思います。</p> <p>こうした活躍の波はキャスパー自身の問題だけではないのでなんともいえないところですが、来季はチームとして彼をどう活かすが、そのために彼にボールを届ける形をいかに設計し実践するかがチームとしてのテーマの一つになりそう。「わかっていても彼にボールが入るのを防げない」状態を作れるかどうかに注目するとともに、彼がコンディションを通年維持してくれるかどうかもチームの成績に大きく関わりそう。えっ欧州移籍?ちょっと何言ってるかわかりません。</p> <h5 id="8DF-西-大伍">8 DF 西 大伍</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226002717.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226002717p:plain" title="" width="702" height="243" loading="lazy" /></p> <p>加入前はサイコパスとかなんとか言われてましたが、実際に見てみると何回かこの人変だなと思いました。でも別にピッチ上でウサギを捌いていたとかピッチ脇のボトルの水を全部ボールボーイにぶちまけるとかマッチアップの相手選手のかかとを90分間で30回以上踏みつけるとかそういうことはなかったので、多分何も考えずに周りに右倣えするのが好きではない、自分自身のキャラづくりを楽しんでいる人なんだなという印象でした。</p> <p>プレー面では今季公式戦33試合出場、Jリーグでは25試合1,754分プレーと思ったよりまとまった時間をプレーしていました。酒井加入後はどうしても右SBのポジションを奪われてしまいましたが、序盤~中盤にかけてビルドアップがぎこちなかったチームを持ち前のテクニックで支えてくれていた感じでしょうか。いろいろなポジションが出来るという評価をされる選手ですが、個人的にはこの選手はやはり右SBでプレーしてこそだなという印象で、いわゆる偽SB的なタスクはまだしもボランチでの起用にはあまり期待しすぎるべきではなかったかなという感じ。あくまで異常に器用な右SBとしてプレーしてもらっているときに彼のユニークネスが発揮されるので、それが一番良いと個人的には思います。特に相手のスペース管理が甘い場合は内でも外でも空いているスペースに侵入して決定的な仕事が出来るのが強くて、ルヴァンカップ川崎戦での活躍に代表されるような攻撃面での貢献に助けられました。一方で守備時のインテンシティやトランジション対応は年齢のせいかプレースタイルのせいか強みにならなかったので、チーム全体として6人も8人もテクニカルな選手はおけないよという現実に照らすと、今後どこまで彼と冒険できるのかは不透明かもしれません。</p> <p>来季はACLも含めて日程がタイトなためどこかでのらりくらりとやり過ごすようなサッカーも必要になりそうなので、あと1年レッズでプレーして欲しいと思っているのですが、どうでしょうか。</p> <h5 id="9FW-武藤雄樹">9 FW 武藤雄樹</h5> <p><img class="hatena-fotolife" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20211226/20211226121557.png" border="0" alt="f:id:reds96:20211226121557p:plain" title="" width="708" height="272" loading="lazy" /></p> <p>今季も適正ポジションがあるかどうかわからないところからスタート。本人は近年SHとして使われながらもFWで勝負したいと言い続け、でも結局ちゃんとやってくれるからSHで…と言う感じで便利使いされてしまっていたこともあり、勝負の年とは思っていたはず。シーズン序盤は4-1-4-1システムの0トップ役として出場機会を掴むなど先発出場も多く、いけるかなと思ったんですがキャスパー加入後はやっぱりSHをやっていたりと思うようにいかなかったか。献身的で技術があり、動き回れて間でも受けられるシャドーとして完璧な選手なんですが、それゆえにシャドーのポジションがないとなかなかプレーがハマらないというのは今季もあまり変わらなかったかもしれません。いくつか惜しいチャンスはあったと思うのですが結局浦和でも柏でもゴール0ということでかなり悔しいシーズンになってしまいました。ていうか柏でもあまり出場できていないしゴールもなかったんですね。</p> <p>浦和としては一時代の終わりをかなり意識してしまう今季となりましたが、武藤には特別な思い入れがありますので、個人的には柏でもう一花咲かせて満足したら現役Jリーガーで最もリクルートスーツが似合う選手として法人営業かなんかで浦和に帰ってきてほしいと思います。</p> <h5 id="10MF-柏木陽介">10 MF 柏木陽介</h5> <p>浦和では今季出場なし。彼については事の直後に<a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/03/12/204637">エントリ</a>を書いているので、そちらをご参照ください。</p> <p> </p> <p>続きは(中)で。</p> <p><iframe class="embed-card embed-blogcard" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="2021シーズン全選手振り返り(中) - 96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.urawareds96.com%2Fentry%2F2021%2F12%2F27%2F180902" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.urawareds96.com/entry/2021/12/27/180902">www.urawareds96.com</a></cite></p> reds96 サッカーを観る目を養うためのとっかかりの話 hatenablog://entry/13574176438031016156 2021-11-09T00:07:36+09:00 2021-11-09T01:08:01+09:00 お久しぶりです、96です。チラ裏は一度スイッチがオフになるとしばらく書くのがおっくうになってしまうのですが、今年はもはや書いていない期間の方が長くなり、本当に自分はあんな大量の文字をタイピングしていたのかと疑わしいほどになってきました。という話はおいておいて、そういえば先日こんなリクエスト/質問があったのを思い出しました。 一言じゃムズいから、ちょっと待ってね。たぶん、何が強い動きかを知って、なんでそれが強いかを知って、その動きのトレードオフを知って、「じゃんけんみたいじゃん」ってなれば良いと思うのですが、これだけだと分かりにくいと思うので。 https://t.co/MiBmFjzqzd— … <p>お久しぶりです、96です。チラ裏は一度スイッチがオフになるとしばらく書くのがおっくうになってしまうのですが、今年はもはや書いていない期間の方が長くなり、本当に自分はあんな大量の文字をタイピングしていたのかと疑わしいほどになってきました。という話はおいておいて、そういえば先日こんなリクエスト/質問があったのを思い出しました。</p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">一言じゃムズいから、ちょっと待ってね。<br>たぶん、何が強い動きかを知って、なんでそれが強いかを知って、その動きのトレードオフを知って、「じゃんけんみたいじゃん」ってなれば良いと思うのですが、これだけだと分かりにくいと思うので。 <a href="https://t.co/MiBmFjzqzd">https://t.co/MiBmFjzqzd</a></p>&mdash; 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1452627236608102408?ref_src=twsrc%5Etfw">2021年10月25日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p>これ、時々聞かれるのですがそのたびに「そのうち書く」みたいな逃げ方をしていつも書いていないのが心の中の埃となって積もり始めてきたので、ついに書くことにします。どこまで面白い話になるかは別として、「僕はこんな風に観てきたから、こんな風にとっかかりを見つけられるかもよ」という話になればいいなあと思います。</p> <h5>「観る」ことを分解する</h5> <p>こういうhow to みたいな話をするときに、まず重要なのはゴールの設定です。要はこのhow toを取り入れて、何が出来るようになるか、という部分の認識のすり合わせですね。</p> <p>で、僕はサッカー観戦の話をするときに「観る」という字を意識的に使っているのですが、その「観る」をうまく分解できたら認識のすり合わせに役立つかもしれません。<br />「観る」と言う字を意識的に使うのは、僕にとってサッカー観戦というのは「観察する」行為に近いものだからです。つまり、両チームの振る舞いを観察しているということなんですが、この「観察」と言う言葉はなるべく大事にしたいと思います。辞書で意味を調べてみると、</p> <blockquote> <p><strong>かん‐さつ〔クワン‐〕【観察】</strong> の解説<br />[名](スル)<br />1 物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること。「動物の生態を―する」「―力」<br />2 《「かんざつ」とも》仏語。智慧によって対象を正しく見極めること。</p> </blockquote> <p>こんな感じらしいです。1の意味がここで言う「観察」ですね。ポイントは2つあって、「状態」、そして「変化」になりそうです。サッカーの試合に限らずですが、何かを見て理解しようとするときに、「状態と変化に注意すること」はとっても大事なので、ここを重要ポイントにするのは結構良さそうです。</p> <p>では一方で、2の「正しく見極める」という意味はどうでしょう。個人的にはここまでの意味を持たせると、ちょっと傲慢かなと思います。サッカーの試合においては、(応援の力が~みたいな話をいったん脇に置いておけば)あくまで僕ら観戦者はゲームの外側にいる存在です。外側からどれだけもっともらしく見えても、実際のことは中にいる人しかわかりません。浦和で言えば今季加入した平野が「いつそこ見てたの?!」みたいなパスを出して、それを僕たち外野が「平野の視野は素晴らしい!うんたらかんたら!」みたいな風に絶賛するわけですが、いざ本人に聞くと「(予測に基づく)マグレです」みたいな回答をすることもあるわけで、外側から「正しく見極める」というのはかなり難しいし、そこまでできると思ってしまうのはちょっと傲慢と言えるかもしれない、と思ったりします。余談ですが、こういう考えがあるので僕のチラ裏はよく「~だったかもしれません」みたいなすっごく微妙な語尾で終わることが多いです。だって本当のところはわかんないんだもん。</p> <p>というわけで本題に戻ると、このエントリを読んでも「今の場面はこうである!」とはなかなか言い切れないかもしれません。というか、言い切らない方がいい気がします。だけど、「客観的に観た結果、こういう状態がこういう変化をしたっぽいよね」みたいなことが出来るようにはなりたいなあと思います。それでは中途半端ではないか!と言われそうですけど、そこから先、自分の経験や知識からして間違いないと思えば言い切ってしまってもよいと思います。それに対して「いや違うねん、それはな」みたいな感じで反論があればそれはそれで面白いし、そういう議論を誰かとするときに最低限状態と変化が客観的に捉えられるようになればそれで十分以上ではないでしょうか。僕も実際、Twitterで話すときは文字数を理由にがっつり言い切ったりするので、観えた先のことは成り行きに任せましょう。</p> <p>というわけで、先に進みましょう。「状態と変化」をがんばって見つけようということはわかったので、今僕たちはそれが出来るようになりたいわけです。状態と変化を比べたとき、「変化」を見つけるのはなんとなく難易度が高そうなので、まずは「状態」から攻めましょう。「状態」をどうやって捉えるか?がまず最初のポイントです。</p> <h5>「状態」を捉えよう</h5> <p>なんかまだまだ抽象的な話が続くな~って感じですが、もう少しお付き合いください。「状態」を捉える時に、まず何をするか?の話です。</p> <p>僕自身のことを振り返ってみてもそうなんですが、ここがたぶん最初に躓くところだと思います。「戦術わかりません」と自己申告するかどうかは別にして、だいたいの人が「状態」をわかってません。というか、知らないんです。特にサッカーをプレーヤーとしてやってこなかった人はここが大変です。今目の前で起きているゲームがどういう「状態」か、テレビで映っている局面がどういう「状態」か、感覚的な手掛かりがないので、その良し悪しを判断できないわけです。僕がサッカーを観始めたころに一番もやもやしたのがここでした。とはいえ、もちろん、明らかにわかるところもあるんです。例えばカウンターや裏へのパス一本でFWの選手が抜け出してGKと1対1の「状態」とか。これは明らかに点が入りそうで、自軍が攻めであれば大チャンスだし、自軍が守りであれば大ピンチです。それはわかります。だから声が出るし、おしりも浮くわけです。問題はこんな感じで誰の目にも明らかな「状態」になる前、もっと欲を出せば、2つ前か3つくらい前にそれを感知して「ふむふむ」みたいなことを言いたいわけです。ただこのとっかかりがないわけです。</p> <p>別のスポーツの例で恐縮ですが、野球はこの点結構わかりやすいのでいいですね。例えば1ボール2ストライクの場面。ストライクが3つで打者はアウトですから、今この打者には後がありません。あと1球ストライクが入ると自分はこの打席では死んでしまうので、なんとかバットに当てたいわけです。いいところに来た球を見逃すのは基本的にあり得ません。なので、打者はバットを振りたい。対するバッテリーにとっては、まだ1ボールなのでフォアボールまであと2回は遊べます。というわけで、めっちゃ打ちに来る打者相手に打ちやすいところに投げる必要はありません。例えばストライクと見せかけてボールになるような変化球とか、ストライクゾーンの枠ギリギリの際どい球とか、リスク高めの配球を選べます。つまりこの1ボール2ストライクという状況は、バッテリー有利な「状態」。なんなら、次にどんな球が投げられるかまで予想できそうです。しかも、野球はこうした「状態」が段階的に変わります。同じ場面で投手がボール球を投げたとして、次の「状態」は2ボール2ストライクになるわけです。この「状態」はあと1球ボールだとフォアボールが近づいてきて投手側もヒリヒリしてくるので、バッテリーの有利感が少なくなってくるわけですが、要は野球は投球ごとに「状態」がはっきりと、紙芝居的に変化するので、みんな「あ~今こういう状態だから、こっちが有利」とか、「あ~次こういう状態になると不利だから、今のうちから…」なんでことを言いやすいわけです。これが、サッカーにはないのが問題です。</p> <p>サッカーの話に戻ると、野球のようにプレーのフェーズ分けが段階的でないので、「状態」が刻一刻と変化します。しかもその変数はお互いのチームの選手合計22人+ボール。22人と一つのボールがどこでどうしているかがお互いに影響し合って、ピッチ上の「状態」が目まぐるしく変化するので、いつなにがどうなったか、次になにが起こるのかを追いかけるのが難しい。いわんや、『2つ前か3つくらい前にそれを感知して「ふむふむ」みたいなこと』を言うなんてめっちゃムズイ。そもそも「2つ前か3つくらい前」って、何基準の「2つ前か3つくらい前」なんだよ、となるわけです。</p> <p>僕が躓いたのもまさにこの点でした。例えば任意の再生時間でDAZNを一時停止したとして、「この状態ってどっちが有利ですか?」みたいなことを誰かに聞きたくてしょうがなかったのを覚えています。僕は父親が野球好きだったのもあって小学生くらいまでは野球をほぼ毎日観ていましたから、野球なら一発で分かるわけですよ。ノーアウトランナー2塁、カウント3ボール1ストライクで打者3番ならまあ明らかに攻め側有利、みたいな。こういうの、サッカーにもないんか!というのが、当時の僕のもやもやなわけです。</p> <p>で、答えに入っていくと、サッカーにも「こういうの」はあります。というか、あると思います。ですが、野球の「状態」とは違うものとして現れます。それは流動的で、グラデーションで、見つけたときにはまともなコメントができないくらい一瞬の出来事として現れます。「じゃあムズイじゃん!」というのはそうなんですが、気を付ければ見つけられるレベルの特徴もあるので、全然無理ってわけでもありません。その特徴は「基本的にいるべきところに人がいないこと」です。サッカーは11人で埋めるには広すぎるフィールドで行うスポーツです。なので、そもそも完全防備は難しいです。そういうわけで、サッカー何百年の歴史を端折ってしまうと、だいたい2パターンの守り方が定着しました。3バック(5バック)と4バックですね。中盤や前線の枚数がどうのこうのはこの際置いておくとして、3バック(5バック)と4バックにはそれぞれ人が立つべき位置があります。ここからはわかりやすく4バックで話を進めましょう。</p> <p>4バックは文字通り4人でGKの前に立つフォーメーションですが、真ん中担当のCBが2枚、左右のサイド担当のSBで構成されます。ざっくりいくと、4バックで守るとき、真ん中担当のCBが真ん中にいなければヤバいです。真ん中担当は二人でなんとかするべという約束なのに、ひとりいません。つまり、カバーしたいエリアの半分はカバーできません。失点する可能性が倍!(当社比)ヤバいです。こういうのを見つけて行けば、「良い状態」「悪い状態」がわかってくる、というわけです。</p> <p>そんなことはわかるよと言われそうですが、僕はわかってませんでした。というか、今そこにいる人が本来そこにいるべき人か、元々のポジションがどこかわかってませんでした。これ、結構サッカーを観てる人でもそうなんじゃないかと思います。そのくらい、サッカーは変数が多くて場面が一瞬で変わるし、そもそもボールを追いかけているとボールから5m離れた人が誰かもわからなくなるスポーツです。そうかも…と思いませんか?「OK、じゃあわかってないかもしれないのは認める、どうすりゃわかるようになるのよ」と話が進むと嬉しいのですが、いいですかね。CBがいるべきところにいない理由、それは、「ぜんぜんわかってない」か「いるべきところを捨ててでもやらないといけないことがある時」です。つまり、「そもそも役割をわかってない」場合を無視すれば、何か役割があってそのCBは持ち場を捨てているわけです。例えば、典型的なのは、SBのカバーです。自分の隣のSBの選手がどっかに行っていて、サイドから攻められてるけど誰もいない!という時に、CBは持ち場を離れていきます。ゴール前で待ち構えるよりも、サイドで先に相手の選手を潰した方が良かったり、潰せそうなときですね。あとは、ロングボールの競り合いやなんやで中盤のプレーに参加している時なんかもそうです。こうやって横に行ったり前に行ったりして、持ち場にいない選手がいるときは何かが起きそうなときです。つまり、僕たちが観察すべき「状態」とは、「みんなが持ち場にいるかどうかチェック」に近い、と言えないでしょうか。こう言い換えると、なんか出来なくはなさそうですよね?</p> <p>ちなみに、CBが横に行ったり前に行ったりするとやべー「状態」になるので、それを嫌うチームもあります。そういうチームはどうするかというと、いくつかパターンがありますが、例えばSBがどっかに行っていてサイドがら空きでヤバい時はボランチの選手が死ぬ気でサイドを埋めろ!というルールを採用していたりします。2020年の大槻監督のレッズはこれでしたね。こうすると、CBが横に出て行かなくてもボランチが命を削ってスペースを埋めてくれるので、CBが動かず真ん中の守備が安定します。ただ、ボランチが疲れますし、間に合わないと「あーどうしようこの場面授業でやってない!」ってことになりがちです。もしくは、ボランチの命を削るのは嫌だし、めっちゃ動けるCBが俺達にはいるぜ!というチームもあります。そういうチームがどうするかというと、CBが横に出てもいいけど、空いた真ん中だけはボランチが速攻で下がって埋めよう、みたいなルールにすることもあります。どっちかというとこっちがオーソドックスな方法かもしれません。ただ、このルールはボランチがサボると破綻します。サボるというか、CBが横に出て行ったことで空くスペースはその時その時の相手の動き方や相手の位置で違うし、それはたいてい一瞬のことなので、どこを埋めるべきかの判断が求められます。この判断が難しい時があるし、判断ができても埋めるべきポイントが物理的に間に合わない場所だったりします。ちなみにちなみに、「そもそもなんでSBはどっか行ってるんだ」という話ですが、これにもいくつかあります。わかりやすいのはいわゆるオーバーラップの直後、前に攻めに出て行った後に戻ってこれないパターンです。もしくは、相手がサイドに3枚も4枚も選手を集めて、マークの数が足りねえ!ってなってるかもしれません。もうわかると思いますが、今僕が例示したようなルールや動き、その一つ一つが戦術と呼ばれるものです。というか、僕はそう理解しています。その動きに名前があってもなくても、いろいろなやり方とメリデメ(サッカーは基本的に11人vs11人のゲームなので、メリットしかない動きはほぼない)の中で、誰がどんな動きをするか、どんな理由で誰が持ち場を離れて、そのカバーをどうするか、その動き一つ一つ、もしくはそれらがパッケージになったものが戦術と呼ばれるもので、その結果として僕たちが探すべき「基本的にいるべきところに人がいない」場面=「状態」を生み出すわけです。逆から言えば、良いにしろ悪いにしろ何かしらの「状態」=「基本的にいるべきところに人がいない」場面を見つければ、その周辺や一瞬前にはどちらかのチームが採用している戦術がその因果としてあるはずです。これが、ぼくの考える「観る」ということの一端です。</p> <h5>「状態」を知ろう</h5> <p>なんとなくわかってきた!と思ってもらえればいい感じなのですが、どうでしょうか。どんなものが観るべき「状態」かわかったところで、もう少し踏み込んでいきましょう。「みんなが持ち場にいるかどうかチェック」をすればいいことはわかりましたが、とはいえサッカーの試合はほとんど止まりません。しかも放送される試合映像はたいていピッチ全体を映してくれません。「みんなが持ち場にいるかどうかチェック」をしたいのに、「みんな」がそもそも画面にいない!という問題がよく起こります。「でも試合は進んでいるし、俺たちはそれについてドヤ顔で語りたい!」そう、この夢が消えることはありません。なので、なんとかしましょう。一番良いのは現場でサッカーを観て、好きなところを好きなだけ注目することなのですが、そうもいかないので、武器を使います。それは、知識と経験です。</p> <p>上述の通り、あるチームが採用している戦術の結果として僕たちが探すべき「基本的にいるべきところに人がいない」場面=「状態」が生み出される、というのが僕たちの理解です。つまり、そのチームがどんな戦術を採用しているのかわかれば、その結果として生み出される「状態」もある程度想像がつきます。例えば、SBにオーバーラップをガンガン仕掛けさせるチームだと知っていれば、じゃあそのSBが帰ってこれない時はどうしているんだっけ?どういう「状態」になるんだっけ?と言う風に確認を事前にしておけば、該当する「状態」を素早く認知できるかもしれません。そうして事前に確認しておけば、あっSBがオーバーラップしたということは、その後に起きるのは…という風に展開を先読みできます。しかも良いことに、いくつかの戦術はメリットにバリエーションがあっても、デメリットは同じようなものであったりします。例えば、SBが前方中央に上がっていくインナーラップと、追い越していくSHの外側を走るオーバーラップのように。メリットはそれぞれですが、大きなデメリットは要はSBが前にいて帰ってくるのに時間がかかるということです。つまり、戦術の数ほど見つけるべき「状態」のパターンは多くない可能性があります。もしくは、代表的な戦術のメリデメ、誰かどこに動くかが頭に入っていれば、見つけるべき「状態」にアクセスしやすくなるかもしれません。つまりは、そうした戦術と「状態」の因果関係を知識として、もしくは経験として知っていれば、ピッチ上の「状態」を速攻で脳内検索して理解できるかもしれない、というわけです。</p> <p>もう明らかですが、これがサッカー経験者とそうでない人をわかりやすく分けているポイントではないかと思います。本人が言語化できているかは別として、サッカー経験者であれば戦術(もしくはチームのルール)とその後に引き起こされる「状態」の因果と、その良し悪し(ヤバいとかツラいとかイケそうとかイケなさそうとか)を体感的に理解できています。もっというと、どんな「状態」の時にそれに関わる選手たちがどんな感情か、次にどこを見るか、何が出来て何が出来ないかということも類推できます。それが言葉や体系的な知識になっていなくとも、感覚的にそういうことがわかるのは、「観る」上でとても大きなアドバンテージです。というわけで、あなたが経験者ではなくそういった体感的なものがないのであれば、やはり多くの試合をみて、戦術と「状態」の因果を知識として習得していく必要があると思います。逆に言えば、サッカー経験者であっても体感的な理解を言語化出来なかったり、戦術と「状態」の因果を認知出来ていなかったりすると「わかるけど言葉にはできない」という状況になるのかな、という気もしますが。</p> <p>で、「じゃあどうやって勉強すればいいんだい!」というのは、その人によっていろんなやり方があると思います。ひたすらに試合を観まくることで無意識にパターン認識が出来るような人もいるでしょうし、本やらブログやら動画やらで予習するのが合っている人もいると思います。なんでもいいんですが、個人的にはある程度の予習をすることが良いと思っていて、代表的なサッカーの動きをいくつか調べてから実際に映像で確認すると楽なのかなと思います。代表的というのは、オーソドックスなものとも言えるし、その時流行っていてよく試合で見かけるようなもの、とも言えますね。</p> <p>ところで、その予習にもポイントがあって、その戦術や動きのメリットとデメリット、その後どんな「状態」が引き起こされるのかをよく想像するようにしておくと理解が深まると思います。戦術解説って、メリットとかその効果だけを強調したり、動きのバリエーションが成功したときだけのワンパターンだけでその後の尻ぬぐいをどうしているかとか、上手くいかなかったときのリスクみたいなものに触れていないものもあるので、できれば自分でそこまで意識を向けておくと、実際にゲームを観たときに「状態」を認知しやすくなって、予習の効果も出やすいのではないか、と思います。その試合で起きたことの説明をするだけなら「この戦術でこんな凄いことが起きます!」というのでいいんですけど、実際に自分も「状態」を探せるようになりたい!と思った時には、なんかこの説明だけじゃ足りないかも…というのがよくあるので、足りない部分は想像力でカバー!みたいなことも必要かなという気がします。ちなみに僕自身は想像力でいろいろカバーしたなという気がしていて、それはそれで良かったこともあります。例えばさっきのCB周りの話なんかがそうですが、ある「状態」に対応するために誰かがある種のルールや決まり事に沿って動くので、次の「状態」を作り出します。そうするとその「状態」に対応するために次の動きが起きて…と、選手が物理的に対応できなくなるか、ルールによってゲームが止まるまで動き(戦術)と「状態」の連鎖が続きます。ということは、サッカーのルールと「選手が物理的に対応できなくなる」範囲さえしっかりと認識できれば、自分の脳内でもある程度ゲームを動かすことが出来ます。そうやってボードを使うなり、Tacticalistaで遊ぶなり、プリントの裏に落書きするなりして自分でゲームを動かしていくと、一つの動き(戦術)のメリデメからたくさんの動き(戦術)に理解を派生させられるわけです。もしかしたらこうやって手と脳みそを動かしてみることも予習には効果的かもしれません。</p> <p>「選手が物理的に対応できなくなる」話が出たので、ついでに「状態」を知ることについて大事なことを付け足しておきます。ここまでみてきた動き(戦術)と「状態」の因果関係は、選手の物理的な対応限界によって繋がれています。つまり、予想した因果関係が合っていても、実際に選手が思った通り動けなければその因果関係は現実にはなりません。しかもやっかいなことに、選手の物理的な対応限界は選手それぞれです。あの選手ならできるけれどこの選手ではここまでできない、ということが往々にしてピッチ上には起きています。この点をよく理解しておかないと、当該選手ではとうてい対応できないプレーを戦術側から要求する、みたいなことが起きてしまいます。いわゆる頭でっかち状態なんですが、僕たちのようなただのファン同士の議論では、この点が置いて行かれることがよくあるので注意だと思います。逆にこの辺りをうまく理解して、それでも成り立つ戦術のパッケージを設計するのが監督やベンチの仕事でしょうし、それが出来るのが結果を出せる戦術家ということかもしれません。逆に、選手の対応限界に配慮するあまり戦術的な設計がおろそかにされるパターンもある気がしますが、それはそれということで。別の見方をすると、そうした対応限界の差が選手の価値を決めているという言い方も出来ます。技術的にであれフィジカル的にであれ、他の選手よりも対応限界が広く、難しい、もしくは大きな負荷のかかる戦術に対応できるのは間違いなくその選手の強みです。好きな選手・嫌いな選手は独断と偏見で決めればよいですが、ある一定の前提を置いて良い選手・悪い選手について議論するときには、こうした戦術と「状態」の因果を繋ぎ、戦術を成立させられる能力があるかないか、というのは大きな評価軸として持っておけると良い議論ができるような気がします。</p> <p>関連して重要な話として、ピッチ上では選手の対応限界=能力のほかにも、選手のその瞬間の「状態」をも理解する必要があります。いかに能力がある選手でもその瞬間、その場面には間に合わないとか、利き足にボールが来なかったとか、ある選手は癖で身体を捻る時は必ず右回りになってしまうとか、そういった細かい選手の「状態」をピッチ上の「状態」と合わせて考えられると、より実際に近くもっともらしい説明が作れるのではないかと思います。どこまで細かく観るか、観られるかはその時々ですが、自分の経験や感覚からそういった細かいポイントを説明できるようになると、「状態」を理解する解像度が上がり、因果関係として存在する戦術への理解も深まっていくという好循環が生まれるとか、生まれないとか。</p> <p>さて、こうしてみていくと、「戦術を語る」とか「戦術的に観る」ことにおいて非常に大事なポイントが浮かび上がります。それは、そのチームや選手をちゃんと理解していないと語れないことが多いということです。このエントリの序盤で話したような「みんなが持ち場にいるかどうかチェック」くらいの話であれば、自分のよく知らない世界のどこかのサッカーであってもある程度認知・説明が出来ると思います。ピッチの大きさは世界中でほぼ変わりませんし、選手たちの人間としての対応限界も一部の超人を除けばある程度の範囲、いわゆる常識に収まっていきます。</p> <p>一方で、より解像度を上げて、ある局面でのプレーの良し悪しについて語ろうとすればするほど、選手の能力や「状態」、チームとしての約束事の優先順位、はたまた前回対戦時のトラウマや前節の結果といったその試合のピッチ上の情報だけではわからない細かいことを考慮しなければいけなくなります。そもそも全世界の選手の能力や聞き足を頭に入れるのも不可能なのに、いったいどうやってそんな細かいところまで語りつくせるでしょうか。というわけで、もしあなたが「サッカーをより深く語りたい、でも知ったかぶりはしたくない」と思うのであれば、まずはひとつのチーム、もしくはリーグに集中して、一定期間継続して情報を仕入れることをお勧めします。例えば僕は浦和レッズについては10年以上ほぼすべての試合を観戦しているのでだいたいのことは理解していますが、プレミアリーグやセリエAについては全然わかりません。なので、浦和レッズの戦術話なら細かいところまで考慮して話せるのですが、海外リーグについては全然語れません。もちろん僕も世界中のサッカーをドヤ顔で語りつくせる人になりたいのですが、残念ながら全部を追いかける時間もモチベーションもないので、海外サッカーについては「すげー」しか言わない人になっています。そんなのは俺の目指す姿ではない!と言われれば頑張れとしか言えないのですが、現実的なところでは自分が好きなチームを一つか二つ、しっかり追いかけるのが限界ですし、そうするのが効率が良いと思います。「観る」ことの精度を上げていく意味でも、自分がわかっているチームや選手の試合であれば、ピッチ上で意識して拾う情報が約半分(相手チーム分+その試合の噛み合わせ特有の事象くらい)となるので、脳みその負荷も減りますし、解像度高く戦術と「状態」の因果を考えられるので理解を深めるのに良いと思います。逆に言えば、世界中のサッカーを観まくっていてあらゆるチームや選手について解像度高く語れる人は、かけている時間とモチベーションがヤバいです。何かを犠牲にしなければ時間も情熱も確保出来ないと思うのですが、一体何を犠牲にしているのでしょう、本当にヤバいですというのは、こんなに文字数を使わなくても普通にわかることでした。</p> <h5>「変化」を捉えよう</h5> <p>さて、書きたいことをベタ打ちしていたら案の定文字数が心配になってきましたが、辞書によると観察の定義が「状態」と「変化」を客観的に捉える、ということは忘れていないでしょうか。「状態」とその周辺の話についてはあらかた話したので、「変化」についてちゃちゃっとみていきましょう。</p> <p>ここまでで、サッカーにおけるゲームは動き(戦術)とその結果として生み出される「状態」の連鎖であり、その連鎖はルールや物理的な対応限界に制限されるまで続く、と定義してきました。ある動きが戦術的なものであるかどうかは別として(選手のとっさの対応もゲームを構成する重要な要素)、この定義である程度ゲームの構造を示すことができるとしましょう。そうすると、最初の方に出てきた「2つ前か3つくらい前」という感覚的な表現もなんだかわかってきた気がします。要はこの連鎖を素早く見極めて、その先どこに繋がっているかを予測できるようになれば、リアルタイムでゲームを理解できるだけでなく、その先に何が起こりそうかですら、ある程度の精度で予見できるようになってくるわけです。こうなると、ゲームを観るのが「追いかける」ではなく「出迎える」感覚に変わってきます。要は、答え合わせに近いような、自分の理解しているポイントが実際のゲームでどう現れるかを確かめる、という感じです。こうなると、「変化」を捉えるところにまで脳みそのリソースを使えるようになってきそうです。</p> <p>ここでいう「変化」として、大きく2つの要素をみておきましょう。改めて確認すると、「サッカーにおけるゲームは動き(戦術)とその結果として生み出される「状態」の連鎖であり、その連鎖はルールや物理的な対応限界に制限されるまで続く」ということでした。変化の要素としては、このうち「動き(戦術)」と「物理的な対応限界」になると思います。ルールはさすがに試合中には変わらないでしょうし。で、「動き(戦術)」側の箱にはフォーメーション変更とか、対応の見直し(戦術修正)とか、そんな要素が入っています。「物理的な対応限界」はつまり選手のことで、選手が変われば対応限界、つまり体力とか足の速さとかテクニックとか身長とか利き足とかそういった要素を変えられます。そんなこんなでいろんな要素がありますが、各要素の捉え方は基本的にはこれまでみてきたような「状態」を捉えることとやることは同じなので、How toの部分はバッサリ割愛。予習がちゃんとしていれば割と気づきやすいものが多いはずです。</p> <p>ここでみておきたいのは、「変化」のタイミングとその断定についてです。「変化」を捉える上でとても難しいのは、「本当に変わったかどうか」の見極めだと個人的には思います。サッカーは「状態」が流動的に、グラデーションのように、一瞬で起きるスポーツですし、一つ一つの動きがすべて戦術的に規定されたものではなく、選手の思いつきやとっさの感覚で出るプレーもあります。従って、「あっ対応が変わった!!!」と興奮しても同じような場面で元の対応に戻ったり、その後10分同じようなシーンが出てこなかったりします。1回だけ違う対応が出てきてもその1回で変えたと断定するのは強引な気がするし、あの選手のことだから気まぐれでやったら上手くいったパターンかも…みたいなもやもやを抱えてゲームを観ていくことになるわけです。これ、正直僕の中にも答えはないのですが、自分の中では僕は「時間帯やタイミング」、「人」、「2回連続」で判断するようにしています。</p> <p>「時間帯やタイミング」についてはそのまんまで、HTや飲水タイムの直後の対応の変化は意図的な変化である可能性が高いですね。これは普通の話。「人」については、これもそのチームや選手を知っていればこその方法ですが、どのチームにも戦術的なかじ取り役や他の選手では代替できない役割を担っている選手がいることが多いので、そのような選手に注目します。例えば今の浦和レッズではビルドアップのかじ取り役は平野佑一が担っているわけですが、これは彼の認知力やパスのスキルが浦和の戦術と「現象」の因果を強く支えている、と言い換えられます。そういうわけで、彼のような選手が何をするか、何を出来るかはチームにとって非常に重要なので、彼の動きやプレー選択が大きく変われば、チームとして目指している「状態」が少し変わったのかもしれない、と考えることができます。「現象」の側から見れば、彼の立つ場所が変わっていればそれは戦術的変化が引き起こしているのかもしれない、という塩梅ですね。チームの中でも特有の役割を担っている選手が特定できていれば、その選手を手掛かりに全体の戦術の変化を読み取るのは便利な方法だと思います。書いてしまうと当たり前のことなんですが。で最後に、「2回連続」。これは感覚的な話になってくるのであまり自信がないのですが、サッカーで2回連続似たようなプレーや「状態」が起きることってかなり少ないと思います。それこそ、意図して(戦術的に)起こしていなければ22人+ボールの変数の中で2回連続同じことが起きる確率は少ないのではないでしょうか。もちろん相手との力関係もあるのでなんとも言えない部分は残りますが、他の要素とも総合して、「2回連続」で似たような「状態」が観測できれば何らかの「変化」を疑う、と言う風に僕は観ています。</p> <p>「変化」を読み取ることはサッカーを観るうえで非常に難しい要素の一つなので、無理して「変化」を探すことをしなくても、後から「あ~あそこだったのか」という感覚でも良いような気が個人的にはしています。特にこういう観察方法にチャレンジする段階では難しいと思いますし、後から理解できればそれで十分ではないでしょうか。余談ですが、どんなにサッカーを観ていても確信をもって「変化」したと言い切れない部分はどうしてもあります。だからこそ、プロの記者さんたちも試合後のインタビューで監督に直接「変化」について裏を取っているのではないでしょうか。聞かないとわからない「変化」があれば、聞いても腑に落ちない「変化」もあって、そもそも「変化」が良いこととは限らないということも含めて、試合を観ているときはあまりこだわり過ぎず、かといって重要なもの、明らかなものは見逃さないように、というくらいの感覚が僕にはちょうど良いので、ファンとしてはこのくらいかな、と自分で納得しています。もちろんプロの分析スタッフやコーチ、監督を目指すという人であれば、その変化をリアルタイムで、より早く、より正確に見抜けるようになる必要があるのでしょうけど。<br />ちなみに、ファンとして観ていて面白い「変化」といえば、選手の成長だと思います。今まではここがこの選手の対応限界だったのに、個の試合では立派に役割がこなせている!とか、まだ出来ていないけれど、やろうとしていることはわかる!とか。ゲームを観察するという意味の「変化」とは少し違いますが、ファンとしてはゲームをよく理解することで選手の成長を解像度高く観察できるようになるのは幸せなので、そういう意味でも観察的に試合を観ることは面白いです。</p> <h5>おわりに</h5> <p>というわけで、「観る」ということ=「観察」の定義、「物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること。」に沿ってつらつらと書いてみました。なんとなく僕の感覚が分かってもらえるとよいのですが。</p> <p>このエントリを読んでも「なるほど!ポジショナルプレーにおける3-2ビルドアップの潮流と功罪ついて完全に理解した!!!」とはならないのが申し訳ないところですが、そもそも「観る」「語る」という行為にハードルを感じていて、特にサッカー経験もあまりなくてとっかかりがわからない、と言う状態の人に向けて、「何がどういう構造でどういう仕組みになっているからどこをどう観察すればとっかかりになるかもよ」という記事が世の中になかなかないなあと思っていたので、そんな風に読んでもらえると書いてよかったなと思います。「なんだこんなもんか」と思った人は、それでOKです。あとはどんどん語って、文字にしてください。良いと思った悪いと思ったで十分です。戦術語りをオタクの特権にしてはいけません。田舎のかーちゃんも戦術を語る、アルゼンチンのようになりましょう。</p> <p> </p> <p>一発書きなので後で図を入れてみたり修正したりするかもしれませんが、今回のチラ裏はこのへんで。それでは。</p> <p> </p> <p> </p> reds96 【2021シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト hatenablog://entry/26006613796578039 2021-08-12T19:37:58+09:00 2023-08-06T01:13:59+09:00 久しぶりに何か書こうと言うことで、去年から個人的に作っている気になる選手リストをまとめます。去年は「レッズに来て欲しいな~」という意味でまとめてました(実際、金子選手と明本選手がリストの中からレッズに加入)が、今年はあまりそういうことは考えずに、純粋にJリーグを観ていて気になった選手を挙げていきます。とはいえ、良い選手だから目につくわけで、浦和に来てくれたら嬉しいのですけど。というわけでいってみよう!ちなみに、★つきの選手はイチオシで、取り上げる順番は適当です。 ★平野佑一 : 水戸ホーリーホック⇒浦和レッズ・MF・1996年3月生まれ(25歳)175cm/68kg・右利き www.footb… <p>久しぶりに何か書こうと言うことで、去年から個人的に作っている気になる選手リストをまとめます。去年は「レッズに来て欲しいな~」という意味でまとめてました(実際、金子選手と明本選手がリストの中からレッズに加入)が、今年はあまりそういうことは考えずに、純粋にJリーグを観ていて気になった選手を挙げていきます。とはいえ、良い選手だから目につくわけで、浦和に来てくれたら嬉しいのですけど。というわけでいってみよう!ちなみに、★つきの選手はイチオシで、取り上げる順番は適当です。</p> <p> </p> <h5 id="平野佑一--水戸ホーリーホック浦和レッズMF1996年3月生まれ25歳175cm68kg右利き">★平野佑一 : 水戸ホーリーホック⇒浦和レッズ・MF・1996年3月生まれ(25歳)175cm/68kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="平野佑一 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1611262%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1611262/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>いきなりレッズに来てるじゃねえか!ということで、2021年夏の移籍は僕自身とてもびっくりしました。今季の開幕直後の水戸の試合を眺めていて、その時はたしか4-1-4-1っぽいフォーメーションで戦っていたと思いますが、アンカーとしてビルドアップからアタッキングサードに入っていく部分をうまくコントロールしていた姿が目につきました。中盤底のパサータイプの選手はそこそこ見かけますが、彼が良かったのは明らかに相手を見てプレー出来ていた部分です。相手が中途半端に寄せてきたり、自分の前を空けていれば積極的に自ら持ち上がり、そのまま最前線やライン間の選手に縦パスを刺せるのが普通の"散らし屋"とは一味違う部分です。先日の加入会見でも、簡潔な受け答えの中で自分なりの考えや信条をしっかりと示しており、聡明な選手だなというのがよくわかりました。守備の部分もハードに闘えていましたので、J1の強度や間合いに慣れれば問題ないと思います。</p> <p>浦和では阿部、柴戸、敦樹に来期加入の安居に加えて本職ではないものの小泉、来期加入の宮本とCHでプレーできる選手は数多くいるのでライバルは多いですが、ボールスキルは敦樹、トラップ・ターンとキープは小泉、潰しなら柴戸、カバーリングなら阿部というように平野にはレジスタとしてボール保持でチーム全体のリズムをコントロールできる強みがありますので、上手く使い分けが出来れば良い気がします。ただ敦樹、安居あたりの今後の成長によっては直接的なライバルとなり、プレータイムを取り合うかもしれません。ちなみに、学年的には柴戸と同期、大学は国士館で明本の先輩です。活躍が楽しみ。</p> <p> </p> <h5 id="池田樹雷人愛媛FCDF1996年9月生まれ24歳186cm82kg左利き">★池田樹雷人:愛媛FC・DF・1996年9月生まれ(24歳)・186cm/82kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="池田樹雷人 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1500496%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1500496/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>チームは低迷中の愛媛FCですが、最終ラインを支える池田は大きなポテンシャルを見せつけている気がします。186cmの大型左利きCBでまさにロマンの塊といったステータスの選手ですが、プロ入り後は結構苦労していて、三菱養和ユースから加入したセレッソ大阪ではU-22Jリーグ代表チームやU-23チームでJ3を戦うも伸び切らず、バンコクグラスFCにローンの末2018年に愛媛に完全移籍。さらに愛媛から長野へのローンも経験しており、キャリアとしては紆余曲折を経て今に至るという感じでしょうか。</p> <p>縦パスへの迎撃性能が高くハイボールの競り合いに強いのはもちろんのこと、ビルドアップでも左足から強いパスを同サイドに付けられるのは魅力的だと思いました。これだけのロマン要素があれば上位クラブが放っておくことはないと思うのですが、もしかするとラインコントロールや裏抜けへの対応など、細かい部分に弱点があるのかもしれません。あまり多くの試合を観たわけではないので、あんまり語れないのですけど。</p> <p>今年25歳となる年齢はCBとしては遅すぎることもないですし、そろそろJ1リーグで戦う準備が出来ているのかなと思います。</p> <p> </p> <h5 id="鈴木唯人清水エスパルスMF2001年10月生まれ19歳175cm66kg右利き">鈴木唯人:清水エスパルス・MF・2001年10月生まれ(19歳)・175cm/66kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="鈴木唯人 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1629432%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1629432/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>このリストでは珍しいJ1所属選手です。市立船橋からエスパルスに加入したホープはこれまで約50試合に出場と10代の選手としてはかなりの経験を詰めていると思います。主に中盤の前目でプレーし、相手が近くにいる状況でボールを受けても上手くターンして一枚剥がして前を向くというプレーが魅力的で、浦和レッズ的に言うと異常な逆脚精度をなくした代わりに体格を二回り大きくして推進力をオンした小泉佳穂みたいな感じ…と言えるかもしれません。</p> <p>時々試合を観ると一枚剥がして局面を変えておお!とうならせるものの、最後の部分でパスが繋がらないとか、仕上げ切れないというシーンも結構あって、実際にリーグ戦のゴールはここまでたったの1つだけ、カップ戦を入れても3ゴールと結果を出す、チームを勝たせるという部分で苦労しているみたいです。とはいえまだ19歳のパリ五輪世代ですから、今後の可能性は十分以上。2プレー、3プレーと連続して強度を出せるようになってくると、自然とポテンシャルに見合った成績を残すようになるような気がします。パリ五輪前後で海外に行くような選手になるのか、国内移籍を挟むのか、清水の至宝となっていくのかわかりませんが、個人的に好きな選手なので要注目です。</p> <p> </p> <h5 id="西村恭史ギラヴァンツ北九州MF1999年11月生まれ21歳185cm78kg右利き">西村恭史:ギラヴァンツ北九州・MF・1999年11月生まれ(21歳)・185cm/78kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="西村恭史 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1617962%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1617962/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>ここからしばらく北九州の選手が続きます。個人的な趣味です。小林監督リスペクトです。とはいえ西村は清水からの育成型ローンで加入している選手なので、実質清水の選手なのですが。</p> <p>興国高校出身らしくテクニックに長けたボランチですが、185cmの長身が彼のユニークネス。中盤でボールを捌くスキルに長けていて、ワンタッチのやりとりもできるしサイドも見れているしと彼もまたロマンの塊。ただ北九州では後で紹介する井澤とのポジション争い等があるのかプレータイムがあまり伸びておらず、絶対的な存在になるにはおそらくトランジション耐性や戦う部分、刈り取る部分を伸ばしてかないといけないのかな?という感じもします。ただ見ている感じだと寄せられて体勢が崩れてもパスを味方に繋げるし、身体操作に大きな問題がある感じはないのですけど、それもオンザボールの話だからかもしれません。何かと敦樹と重なるタイプの選手で、敦樹と同様にポジショナルな立ち位置を取る部分でももうちょっとやれるなあと思うところがあり、もう少し実戦経験が必要かも。ていうか、清水は自分のとこで使えばいいのにと思う選手です。</p> <p>ちなみにエスパルス時代にはCBへ、北九州ではトップやトップ下へのコンバート未遂を経験しているということで、将来的には真ん中全部やれる系として高秀先生2世の道もあるかもしれません。</p> <p> </p> <h5 id="井澤春輝ギラヴァンツ北九州MF1999年6月生まれ22歳178cm73kg右利き">井澤春輝:ギラヴァンツ北九州・MF・1999年6月生まれ(22歳)・178cm/73kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="井澤春輝 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1612654%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1612654/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>浦和ユースからトップ昇格したものの一年目から徳島にレンタルされ、いきなりの大怪我。岩尾が君臨する中盤では使ってもらえるはずもなく、徳島での2年目のシーズンもほとんど出番がないまま翌シーズンはJ3鹿児島にレンタルされるも、ここでも十分な出番はなし。しかし、キャリアもここまでかと思われたJ3最終節にボランチでスタメン出場するとついに真価を発揮。中盤中央からサイド、裏と長短のパスを蹴り分けビルドアップを支配できるポテンシャルを見せると、そのプレーが小林監督の目に留まったか、はたまた元浦和の天野コーチに拾われたか北九州へ"個人昇格"。今季はここまでリーグ戦11試合に出場するなどJ2でも戦えることを示しています。</p> <p>元々ボールスキルがある選手でしたが、北九州でのプレーを見るとチームが目指すトランジションの多く速い展開の中で身体を張ったプレーが出来ているのが印象的で、その分ファールもしていますが小綺麗な技巧派に収まらない雰囲気が出せている気がします。まだまだ経験値が必要なことは間違いないですが、プレー中178cm以上に大きく見える背筋の伸びた姿勢からは大器晩成の言葉が脳裏によぎったり、よぎらなかったり。ボールスキルや視野の取り方はJ1でも通用する気がするので、それをベースにインテンシティの部分を武器と言えるまで積み上げることが出来れば将来的なJ1でのプレーも期待できそう。浦和ユースということもあり、2年後か3年後くらいに浦和が無視できない選手になって欲しいなと思っています。</p> <p> </p> <h5 id="佐藤亮ギラヴァンツ北九州FW1997年11月生まれ23歳171cm63kg右利き">★佐藤亮:ギラヴァンツ北九州・FW・1997年11月生まれ(23歳)・171cm/63kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="佐藤亮 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1604181%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1604181/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>FC東京の安部柊斗、中村帆高、現名古屋の森下らを擁し12人がプロ入りした明治大学最強世代のキャプテンとして知られる有望株。FC東京のユースからトップ昇格できたのを蹴って明治に入ったものの、最終学年で怪我をしてしまって冬までプロ入りが決まらず、結局北九州でプロキャリアをスタートさせた選手です。</p> <p>数々の得点記録やクラッチゴールの実績を持つストライカーですが、体格的にも得点能力だけでJ1、海外に出ていくのは難しそうというのが僕の個人的な印象で、今後はそれ以外の部分でも活路を見出したいところ。その意味で印象的なのは動き出しの良さを活かしたチャンスメイクで、中盤やサイドの選手が前を向いた瞬間にサイドの深い位置をとったり背後に抜けだしたりしてボールを引き出す能力が非常に高いと思います。理想としてはそのままゴールを決めるのが良いのでしょうが、さすがにプロではそう簡単に行かないのか深い位置でボールを受けてドリブル、折り返しといったプレーが良く見られます。でもそれが逆に良くて、個人的にはここ数年いろいろな選手を見てきた中で最も武藤雄樹2号に近い選手なんじゃないかと思うのです。大学時代までドリブルでゴリゴリに勝負してきた武藤とはまた違うタイプの選手なので武藤ほどの間受けやターンは見ることが出来ていないのですが、能力的には不可能ではないはず。謙虚な考え方やキャプテン経験を活かして責任プレッシングを小林監督の下で身に着け、武藤雄樹の正統後継者として浦和入りして欲しいのですが、どう考えてもFC東京が心のクラブでしょうから、無事に一皮むけたら満を持して飛田給に帰還しそうです。たった10行ほどの短い間でしたが夢を見させてくれて本当にありがとうございました。</p> <p> </p> <h5 id="新垣貴之ギラヴァンツ北九州MF1996年8月生まれ24歳171cm62kg左利き">新垣貴之:ギラヴァンツ北九州・MF・1996年8月生まれ(24歳)・171cm/62kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="新垣貴之 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1619413%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1619413/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>沖縄生まれ、流経育ちのレフティアタッカー。何よりも歯並びがかわいいので是非写真を見てください。</p> <p>サイズはないですが左足にはパワーがあり、右サイドからカットインしての強烈ミドルはお手の物。ゴールへ向かう意識が高く、自分の武器でゴリゴリ勝負する感じは見ていてワクワクします。左サイドに出れば高精度のクロスがありますし、大外レーンだけでなく内側のレーンでボールを受けて素早くターンからドリブルでつっかけていくことも出来るので、戦術的な枠組みが固まっていて、ライン突破にうまく個の力を使いたいチームには魅力的に映りそう。大卒1年目から30試合、2年目は32試合と試合経験を十分に積んでおり、3年目の今年大きなアクシデントがなければステップアップしてもおかしくないような気がします。</p> <p>弱点というか、もったいないのは相手と正対していたり複数のDFが寄せてきたときに意外性のある選択肢があまり持てていないことかなと思います。例えば坂元の切り替えしのような相手を外す武器はないようで、結構そのまま突っ込んでいく傾向があるかもしれません。まあでもそれもプレースタイルのうちとも言えますし、結果的にPKなりファールなり取ってくればいいわけで、本人もあまり気にしていないかも。</p> <p> </p> <h5 id="生駒仁ギラヴァンツ北九州DF1999年7月生まれ22歳185cm77kg右利き">生駒仁:ギラヴァンツ北九州・DF・1999年7月生まれ(22歳)・185cm/77kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="生駒仁 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1617895%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1617895/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>鹿児島城西高校からマリノスに加入し、現在は北九州に長期ローン中(2022年1月末まで)のCB兼SB。SBとしては高身長ですがけっこうクイックネスがあり、しなやかに動き回れるのが特徴で、ボールスキル、ビルドアップも安定しているので、ステップアップしていくならビルドアップ型のSBとしての方が希少価値が出そうです。ただ今季はSBとして出ている試合が多いですが、本職はCBということなので、本人としてはCBで勝負したいかもしれません。</p> <p>プレースタイルは万能型で、身長を活かして空中戦もやってくれるし、カバーリングは上手だし、ポジショニングも悪くなく、ボールスキルもあってなんでも任せたくなるタイプの選手なので、もしかするとミシャサッカーの3バックの右に適性があるかもしれません。良くも悪くも冷静なタイプなのかプレーから俺が引っ張る!っていう熱さはあまり見えませんが、かといってうまくサボるタイプという感じもあまりしないので、無茶ぶりしまくってタスク過多な状態でプレーしてみてもらいたくなります。こういうタイプの選手にして往々にありがちなのがフィジカルや認知能力が十分に積みあがるまでは帯に短し襷に長し的に中途半端になってしまうことなのですが、北九州でインテンシティの高いサッカーをやり続け、チームを引っ張るくらいの選手になると必然的にJ1が見えてきそうな気がします。マリノスが諦めてからが本番です。</p> <p> </p> <h5 id="鳥海芳樹ヴァンフォーレ甲府MF1998年8月生まれ23歳165cm62kg右利き">★鳥海芳樹:ヴァンフォーレ甲府・MF・1998年8月生まれ(23歳)・165cm/62kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="鳥海芳樹 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1600011%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1600011/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>おそらく今回リストアップする選手の中で最も小さく、そして最もクイックネスがある選手だと思います。桐蔭横浜大学から甲府入りした大卒1年目の選手なんですが、もう来年にはステップアップして全く問題ない感じです。彼を誘ったのはIJや稲垣を見出した名スカウトの森淳さんということで、普通に間違いないタレントというか、最初からJ1にいろという感じです。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【甲府】伊東純也を見いだしたスカウト期待のドリブラー、桐蔭横浜大の鳥海芳樹「1年目から結果にこだわる!」 - サッカーマガジンWEB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsoccermagazine.jp%2Fj2%2F17424561" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://soccermagazine.jp/j2/17424561">soccermagazine.jp</a></cite></p> <p>最近の甲府はボール非保持3バック、ボール保持ではリベロがボランチに上がっていく可変4バックを採用しているのですが、鳥海の役割は左サイドの泉澤と並んで右のシャドー/サイドアタッカーとして攻撃を牽引するというもの。結果を出しているのは泉澤の方ですが、試合を通して眺めているとマークの厳しい泉澤よりも目立つプレーをすることもあり、特にボールを受けてから素早くターンしたりワンツーを使って前に走り出したときのスピード感は相当なもの。上の記事にある通りドリブルに入ってスピードに乗ると普通のスプリントよりも速く感じますし、勢いに乗ったミドルシュートはかなりパワーがあり、身体能力の高さを強く感じます。</p> <p>甲府では右サイドでプレーしつつ、WBが前に出てくることもあって内側のレーンでボールを受けることも多く、観ている限りでは中央の選手としても問題なくやれそうです。左サイドに置いてカットインから強烈なミドルを狙わせてみたい気もしますし、とにかくボールとスペースを渡して前向きにプレーさせたい選手、という感じです。浦和的に言えば2002年前後の初代田中達也を彷彿とさせる感じもあり間違いなく浦和のサポーターのお気に入りになる選手だと思うのですが、なぜか来年は紫色のユニフォームを着ていそうな悪寒がします。どうしてかな。</p> <p>実績もありチームトップの得点数を稼いでいる泉澤がチームのエースであることは間違いないのですが、是非とも遠慮せずにポテンシャル通りの結果を見せつけてほしい選手です。これがJ2中位以下のクラブであればもはや「いつ出ていくか、いくら残してくれるか」を考えるべき選手ですが、甲府はまだまだ昇格を狙える位置にいますし、面白いサッカーをしているので、昇格を決めて彼の成長と共にクラブごと上に登り詰めていく夢物語に真剣にチャレンジすべきかなと思います。最初にプロに誘ってくれた甲府愛を隠さない一途な選手っぽいので、それが叶えば他のJクラブのユニフォーム姿を見ずに済むかもしれません。</p> <p> </p> <h5 id="知念哲矢FC琉球DF1997年11月生まれ23歳178cm70kg左利き">知念哲矢:FC琉球・DF・1997年11月生まれ(23歳)・178cm/70kg・左利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="知念哲矢 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1629487%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1629487/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>近畿大学からFC琉球に加入した大卒2年目の左利きCB。名前の通り沖縄県出身の地元選手で、プロ入り前はボランチでもプレーした経験がある模様。CBとしては大きくないものの対人守備には自信がありそうで、がっつり身体をぶつけてもあまり倒れない印象。希少価値はやはり左足で、ものすごい縦パスを差し込むわけではないとはいえビルドアップ時の同サイドへの展開や前線へのフィードでは左利きのメリットを感じさせます。</p> <p>沖縄のバンディエラになっていくキャリアもあるのかなという気がしますが、貴重な左利きとしてJ1クラブが目をつけていても不思議ではない感じです。もしかすると、3バックの左で使うのが一番良いかもしれません。</p> <p>大学時代に対戦して衝撃を受けた選手として林大地、山本悠樹の名前を上げていましたが、彼らと同じ舞台に立つこともできるはず。ちなみに次に紹介する上門とは沖縄時代のトレセン同期で仲良しだそうです。何情報だよ。</p> <p> </p> <h5 id="上門知樹ファジアーノ岡山MFFW1997年4月生まれ23歳166cm61kg右利き">上門知樹:ファジアーノ岡山・MF/FW・1997年4月生まれ(23歳)・166cm/61kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="上門知樹 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1600232%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1600232/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>いや、これで「うえじょう」とは読めないだろ。無理だろ。ということで一度覚えたら忘れられない選手なのがこの上門。シャドーやトップ下として前向きにプレーさせるのが正しい使い方で、ミドルシュートの威力と精度はおそらくJリーグ全体でもトップクラス。一度覚えたら忘れないのは、名前の珍しさだけでなくセンセーショナルなゴラッソメーカーとして強烈だからで、15m~25mくらいの距離を狙ってゴール上にぶち込む能力はもはや特殊スキルと言えます。</p> <p>沖縄・与勝高校から当時J3のFC琉球に加入。2019年シーズンには38試合14ゴールをたたき出し、翌年に岡山へ移籍。2019年に一年だけ小泉と琉球で被っていますが、この年は上門がトップ下に君臨し、小泉はあまり出場時間を伸ばせませんでした。</p> <p>トップ下っぽいポジションでプレーするのがデフォルトだと思いますが、できないのかやらないのかは知りませんが小泉と違ってあまりビルドアップには係わらず、消えたなーと思ったらこぼれ球をボレーでズドン、みたいな印象です。高いボールスキルを持っていますがスペースを使って突破するという感じではなく、割と狭いところで一瞬の隙を通していくFW気質が強い印象。ポテンシャルを最大限に活かすなら相棒に潰れ役を用意すべきかもしれませんが、こういったスタイルはあまりビルドアップにこだわらない岡山でプレーしているからかもしれません。</p> <p>各年代を通じてビッグクラブに在籍した経験はないと思いますが、どちらかと言うとボールを保持できるビッグチームに所属して仕上げの専門家をやったほうが幸せになれそう。WGやSHとして出場しつつ、内側のレーンに入り込んで勝負出来ると上位クラブも獲得しやすそうですが、年齢的にも契約年数的にもいろいろ考えるであろう今後は果たして。</p> <p> </p> <h5 id="神垣陸レノファ山口MF1998年7月生まれ23歳178cm65kg右利き">★神垣陸:レノファ山口・MF・1998年7月生まれ(23歳)・178cm/65kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="神垣陸 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1632218%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1632218/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>最近見つけたお気に入り選手の一人です。フィジカル的に特別なものはあまりないと思いますが、「いる」能力が高くて面白い選手です。僕が観た試合ではダブルボランチの一角だったのですが、とにかく中盤の局面に「いる」。顔を出すとかではなく、もはや予め「いる」。ダブルボランチなのに体感で8割くらい神垣が局面を捌いていて、いっつもこいつだな、と思ったのが最初です。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="「全て奪って、全てさばく」レノファ山口内定・神垣陸インタビュー " src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=http%3A%2F%2Fsoccer.toin.ac.jp%2Fblog%2Fdetail%2Fid%2F18435" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="http://soccer.toin.ac.jp/blog/detail/id/18435">soccer.toin.ac.jp</a></cite></p> <p>それでこの記事を見つけたんですが、「全て奪って、全てさばく」っていいですよね。全て狩る系ボランチとしておなじみ「俺たちの」柴戸海は多少遅れても鬼速の出足と脚の伸び、身体をねじ込む技術で無理やり潰してしまえる、ある意味で派手なタイプですが、神垣は影のようにそこにいてボールを奪ってしまうみたいな感じでこれまた違った趣があり、これは僕と西野TDのボランチコレクションに加えるべきではないかと思います。正味のところ、阿部、柴戸、敦樹、金子、安居に平野を加えていいんだったらもはやコレクションでしょ?なら神垣もいいでしょ?ねえ買って?買えるよね?えっダメですか。はい。</p> <p>ちなみに、ボール保持においてもワンタッチを使ったりサイドにシンプルに捌いたりとガチャガチャしないので見ていてストレスは感じません。ただビシバシ中央に通す感じはあまり見ていないし、平野みたいな相手を見てのポゼッションコントロールみたいな能力は今のところ期待できないかも。そこまで出来たら、もうレべチなんですけど。</p> <p>大学では川崎の橘田と同期ということで、彼がJ1でそれなりに試合に出ている以上神垣もキャリアアップできるはず。なんとなく、セレッソとかが好きそうな選手ですね。次期主任みたいな感じで。</p> <p> </p> <h5 id="畑大雅湘南ベルマーレDFMF2002年1月生まれ19歳176cm70kg右利き">畑大雅:湘南ベルマーレ・DF/MF・2002年1月生まれ(19歳)・176cm/70kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="畑大雅 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1629405%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1629405/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>彼の場合は今季というより昨季の印象の方が強いのですが、タイガーというよりバッファローみたいなゴリゴリの突破が面白いサイドプレーヤー。右利きですが左サイドでも縦に仕掛けて左足でクロスを放り込めるのが特徴で、相当体幹が強いのか一つ一つの動きが力強く、ボールにもかなり力が伝わっている感じがします。</p> <p>最近はポジショナルプレーとかいってSBを中に入れたりしてみんないろいろやってますけど、やっぱり最後は縦への突破だと思うんですよね。結局上手くチームを作れば作るほど相手は引きこもるし、裏のスペースもなくなってやることがなくなってくるわけで。ミシャの時代の経験からしても、最後に必要になってくるのは縦への突破、特に静止状態からよーいどんで一気に1m相手を置き去りにして、エリアに侵入するなりクロスを上げ切るなりできる選手が欲しくなるわけです。そういう意味でこの選手は特筆すべき能力を持っているし、それに両サイドで縦に行けるのは本当に興味深いです。まだ10代の選手なのでこれから学ぶことはいろいろあるでしょうが、順調に強烈な選手になってほしいなと思います。</p> <p>ちなみにこの記事を書くために彼のwikipediaを見たら、おじいちゃんがアメリカの方なんですね。それでお父さんがプロボクサーって半端ないフィジカルエリートじゃん。そりゃああなるわ。市船でも湘南でも明確に香車としてプレーしてきている印象があるので、今後もあえてインテリジェンスを無視して力とはパワーを合言葉にキャリアアップして欲しい選手です。</p> <p> </p> <h5 id="池田昌生湘南ベルマーレMFFWDF1999年7月生まれ22歳176cm70kg右利き">池田昌生:湘南ベルマーレ・MF/FW/DF・1999年7月生まれ(22歳)・176cm/70kg・右利き</h5> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="池田昌生 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1618074%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1618074/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>この選手もあまりたくさん試合を観たわけではないのですが、浦和と対戦した時に印象的だったのでリストアップ。セレッソのアカデミーから東山高校を経てJ3福島に加入、3シーズンを過ごした後湘南へジャンプアップという経歴。高卒から3年で約100試合出場経験があるのは立派です。でもよくわからないのは、僕が観た試合では彼は3バックの右をやっていたはずなんですけど、wikipediaにはFWって書いてあって、Football LABでは右WBとOH(多分シャドー)で出場していることになってます。どんな使われ方してるんだよ。</p> <p>で、僕が彼を見たときの印象も、どこのポジションかよくわからない、でした。3バックの右のはずなんですけど、立ち位置は完全に右SBで、前にいる畑をサポートして追い越したりしてました。しかも上手い。普通に上手い。スピードとタフネスはもちろんのこと、前の畑を使いつつ中に絡んでいったり、ただのSBとは思えないほど攻撃の局面でアイデアがある選手でした。で、後で調べたら福島ではアタッカーとしてスルーパスをバシバシ通してました。そんなことある?</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="~J3からJ1への挑戦状~「福島が育てたチャンスメーカー」池田昌生" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fcolumn%2Fentry%2F780%2F" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/column/entry/780/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>ということでググってみたら、がっつり特集されてました。右SHから中央にコンバートされたんですね。ということで、彼はもしかすると面白いと思います。スピードもあるし、パスも出せるし、サイドと中央の両方の動きを知っている選手というのは結構良いのではないかと。中央兼サイドの選手ってスピードはあんまりなかったりするんですけど、彼の場合は普通にサイドプレーヤーとしてやっていけそうですし。</p> <p>ただ湘南では思うようにプレータイムを確保できていないようなので、強度とかいろいろあるのかもしれません。ただまだ22歳。大学4年生の特別指定選手がJ3で100試合キャリアを持っている状態と考えると、何にも悲観する必要はありません。これからに期待です。</p> <p> </p> <h5 id="山崎浩介モンテディオ山形DF1995年12月生まれ25歳182cm80kg右利き">山崎浩介(モンテディオ山形・DF・1995年12月生まれ(25歳)・182cm/80kg・右利き</h5> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.football-lab.jp%2Fplayer%2F1617907%2F" title="山崎浩介 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.football-lab.jp/player/1617907/">www.football-lab.jp</a></cite></p> <p>モフモフスキー監督の下J1昇格に向けて一気に順位を上げてきている山形のCBの一角。大宮のアカデミー育ちで、大宮ユースから明治大学を経て愛媛でプロデビュー。愛媛での3シーズンで100試合以上を経験し山形でもポジションを掴んでいる中堅CBです。</p> <p>見た目からして体が分厚く、フィジカルコンタクトに強さを発揮する迎撃タイプのCBであることは明らか。ただ裏への対応も意外とスピードがあって、ラインを上げるのを恐れていない感じがグッド。さらに目についたのは、ボール保持を怖がらないこと。山形がそういうサッカーをしているからというのもあるのだと思いますが、相手を押し込んだ状態では悠々とハーフラインを超えた位置に進出してボールを受けていました。今でこそCBが高い位置に出ていくことの重要性はかなり指摘されますけど、普通に考えて怖いと思うんですよ。だからこそボランチ出身やSB兼務の選手がCBとして起用される例もあるわけで、そうなると純粋なCBとしてのバトル性能とか、最後の局面の責任感とか、守備者としての素養をある程度諦めるような起用も多くなります。この選手が面白いのは、CBとしての恵まれた体格と能力、メンタルを持ちながら、ポゼッションやポジショナルな組みたてに貢献できるプレーを備えているように見えることです。あれだけ分厚い選手が普通に相手陣内でボールを持っていれば、そりゃ目立ちます。ものすごい縦パスやサイドチェンジのセンスがあるわけではないでしょうが、高い位置で普通にパスを繋げるCBというのは相手を押し込んでいきたいチームには魅力的でしょう。</p> <p>年齢は今年の冬で26歳とさすがに中堅になっていますが、CBであることを踏まえれば将来性は十分。ポジションを掴んでいる山形でのJ1昇格、トップディビジョンでの力試しが青写真だとは思いますが、フィジカル+ポゼッション適応を合わせ持つ選手はそう多くないため、山形の昇格の有無にかかわらず声がかかるかもしれません。明治大学では柴戸と同期だったという縁もあって、今後が気になる選手にリストアップです。</p> <p> </p> <p>ということで、今のところ僕の気になるリストには15人が入っています。シーズンはまだ続くので、これからも増えるかもしれません。ということで、今回のチラ裏はこのへんで。それでは。</p> reds96 敦樹の立ち位置:Jリーグ2021第10節 vsセレッソ大阪 分析的感想 hatenablog://entry/26006613718406567 2021-04-21T08:48:14+09:00 2021-04-21T08:48:14+09:00 セレッソ戦、浦和のスタートが442だったか4141だったか、意見が分かれまくっていて面白い。フォーメーションの数字は電話番号と言う人もいるとはいえ、気になるのもたしか。さて、どっちだったでしょう?— 96 (@urawareds96) 2021年4月20日 両チームのメンバーと嚙み合わせ 浦和ベンチ:彩艶、宇賀神、工藤、田中、汰木、健勇、興梠 セレッソベンチ:松井、新井、鳥海、松本、中島、加藤、山田 前節武田が負傷し貴重な右IHの人材を失ってしまった浦和ですが、今節は敦樹と柴戸を同時起用する形でゲームに臨みました。いろいろな媒体を見ると4-1-4-1表記で敦樹がIHだったとするものも多いんです… <p> <blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">セレッソ戦、浦和のスタートが442だったか4141だったか、意見が分かれまくっていて面白い。フォーメーションの数字は電話番号と言う人もいるとはいえ、気になるのもたしか。さて、どっちだったでしょう?</p>&mdash; 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1384357235778674689?ref_src=twsrc%5Etfw">2021年4月20日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <h5>両チームのメンバーと嚙み合わせ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210420/20210420001526.png" alt="f:id:reds96:20210420001526p:plain" /></p> <p>浦和ベンチ:彩艶、宇賀神、工藤、田中、汰木、健勇、興梠</p> <p>セレッソベンチ:松井、新井、鳥海、松本、中島、加藤、山田</p> <p>前節武田が負傷し貴重な右IHの人材を失ってしまった浦和ですが、今節は敦樹と柴戸を同時起用する形でゲームに臨みました。いろいろな媒体を見ると4-1-4-1表記で敦樹がIHだったとするものも多いんですが、いくつかの理由で僕はフラットの4-4-2で臨んだのではないかと思います。一つはメンバー表記のルールに乗っ取るとアンカーシステムの場合最終ラインの次はボランチの選手が来るはずなのにサイドの選手(右からなので関根)が来ていること、もう一つはもしIHを採用するならこれまで観てきた通り、IHはサイドのトライアングルを素早く形成するために崩しの局面ではペナルティエリアの角を素早くとることが重要なはずにも関わらず、敦樹にしろ小泉にしろ全くその素振りを見せていなかったこと等々あるのですが、それはともかく、これまでも言及している通り4-1-4-1の機能性を発揮するには適材適所が重要になってくるので、前節とこの試合までの1週間でそれが見つからなかったということではないかと思います。4-4-1-1(ほぼ4-2-3-1)で並べるのかなとも思いましたが、4-2-3-1は前節徳島戦でもその前でもボール保持は良いけれどゴール前の迫力が…と言う感じだったので、潔く違うやり方で臨もうということかもしれません。ちなみに、今季の浦和は特にボール保持ではかなり選手の立ち位置が動くサッカーなので、どう並んでいるかよりもキーになる選手がどんな役割を果たしているかを観察した方がフォーメーションや作戦が分かりやすいとも思います。</p> <p>対するセレッソの方も4-4-2。普段のセレッソを観ていないのでよくわかりませんが、清武が中央に入ってトップ下のように振る舞うシステムだったでしょうか。その後ろには藤田と奥埜という運動量もあるし技術もあるし気が利くタイプのボランチを据えていて、「あとは任せた!」感が強い気もします。個人的には今季左CBとして起用されている西尾君にひそかに注目しています。19歳とは思えない胸板が印象的です。</p> <p>で、両チーム同じフォーメーションなので基本的にはお互いのマークが噛み合うわけですが、実際のところの立ち位置をもってどうやってフリーを作るのか、つまり相手のマークに対してずらしたり離れたり寄ったりして自分たちに優位を引き込んでいくのか、というのがポイントの一つだろうと思います。</p> <h5>3-2ビルドアップ</h5> <p>で、今節のアウトラインがそうであったように、序盤からボールを保持し小気味よくパスを繋いで相手ゴールに迫ったのは浦和でした。セレッソのディフェンスが中途半端というか、どこを狙いにしているのかよくわからない感じだったのも影響したかもしれませんが、最終ラインからパスを繋ぎ、ターンやワンタッチを織り交ぜつつ前進していくプレーは今季ここまでで一番良い出来だったかもしれません。相手のプレッシャーをワンタッチの連続でかいくぐった02:06前後のプレーも印象的でしたが、まずは最終ラインのビルドアップ隊形から観ていきます。</p> <p>今節の浦和はおそらくわりとはっきりとビルドアップの基本形を決めていて、山中を高い位置に置く代わりに西がCBと並んで最終ラインに残る左肩上がりの3バックでのパス回しを意図していたと思います。この3枚の前に柴戸と敦樹が並ぶ、いわゆる3-2ビルドアップです。加えて、前線は4-4-2の前4枚+山中が5つのレーンを埋めるようにポジショニングしていました。この場合山中は大外に入ることが多く、また小泉は列を降りたり、降りたままIHのようにプレーしつつ空いている位置を埋めるために大外のレーンに立つこともあり、前5枚の並びは図のようになることが多かったかもしれません。4-1-4-1ほどではないですが、この並び方でも選手の立ち位置の移動がそこまで大きくないので、ボールが前進してくれる限りは効率よくポジションを取ることが出来ていたと思います。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="もちろん立ち位置は状況によって入れ替わりまくるのが今季の浦和だが、基本はたぶんこんな感じ。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210421/20210421034534.png" alt="f:id:reds96:20210421034534p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">もちろん立ち位置は状況によって入れ替わりまくるのが今季の浦和だが、基本はたぶんこんな感じ。</figcaption> </figure> <p>おそらく浦和としては今季のセレッソがあまりメンバーを変えないチームであることと、4-4-2をボール非保持の基本にしていることは分かっていて、相手の2トップをいかに無力化するか、というところでこの形を採用したのかもしれません。もしくは、もう少し勘ぐってみると、前節「狙われた」と話題の岩波を疑似的な3バックの中央でプレーさせるにはこの形が良かったのかも、という見方もあるかもしれません。</p> <p>どちらなのかはわかりませんが、実際にこの形はしっかり機能して、02:54前後の小泉から関根へのスルーパスはセレッソの2トップの脇を西が最終ラインからするすると持ち上がって相手の守備組織に影響を与えたことが起点になりましたし、10:57前後のビルドアップでも、15:23前後のシーンでも同様にセレッソの2トップに対して浦和の3-2ビルドアップ、特に西の2トップの脇から前進していくプレーが機能していました。相手ゴール前に迫るという意味では、具体的なチャンスは02:54に関根が相手のSB裏を取ったシーン、04:02前後に山中のピンポイントクロスに対して武藤がゴール前に飛び込んだシーン、06:35前後に武藤のパスから小泉がエリア内に入り込んだシーン、08:35前後に槙野からのサイドチェンジを受けた関根のスルーパスに武藤が反応したシーン、11:10前後に山中のパスから明本がSB裏を取ったシーン、13:14前後に西のスルーパスに関根が反応したシーンなどなど多数で、15:40前後にパス回しからバイタルに浮いた武藤が左足でシュートを狙うまで(結果はブロックされてしまいましたが)シュートには繋がらなかったもののかなり良い序盤の過ごし方をした浦和だったのではないかと思います。</p> <p>セレッソの守備組織は、2トップがあまり積極的にプレッシングや方向の限定をしてこないので簡単に突破できるとして、その脇からボールを進めていくと後ろの4-4ブロックはサイドで人数が足りなくなります。最終的にはボランチが頑張って危険なスペースを埋めてくれるのですが、セレッソのSBが大外に出てきた背中を取りに行くというのはチームの狙いとして浦和の選手たちの間で共有されていたのだと思います。</p> <p>ただ浦和の4-4-2システムがチームの狙いに対して100%機能していたかというとそうも言い難く、個人的にはもう少し改善の余地があるのではないかと思うところもありました。前半を通じて良く見られたのですが、3-2ビルドアップの際のボランチの立ち位置がそれで、例えば05:37前後のシーンのように柴戸が相手の2トップの背中を取っているのに対して敦樹が列を降りて最終ラインのサポートに入ろうとする動きがよく見られました。</p> <h5>敦樹の立ち位置</h5> <p>今節の浦和が4-1-4-1で戦っていたのではないかと感じる人はおそらく、この柴戸の立ち位置がアンカーでプレーしているときとほとんど同じだったことを根拠の一つにするのではないかと思います。実際柴戸はアンカーでプレーするときとほとんど同じような動きをしていて、それ自体も問題があるどころか比較的良いプレーだったと思います。ここで僕が気になるのはどちらかと言うと敦樹の方で、相手の2トップがプレッシャーをかけてこず、どちらかのサイドにボールを追い込もうともしない中で、しかも浦和は意識的に3バックを形成してボール保持の態勢を整えることが出来ていた中で、敦樹の立ち位置が少し低すぎたのではないか?という部分です。</p> <p>敦樹が列を降りることの効用は明白なので省くとして、問題は列を降りた分、別のところで人が足りなくなることです。そして、今節足りなかった場所は前線5枚のすぐ後ろだったのではないかと思います。今節の浦和は相手のSB裏に選手が走りこむことで相手のラインを押し下げ、昨年のロティーナの指導の通り素早く最終ラインの隙間を埋めようとするセレッソのゴール前の守備を逆手にとってマイナスのクロスでのチャンスメイクを意識的に狙っていたのではないかと思いますが、本来のチームの意図というかこの試合の最適な敦樹の居場所は、まさにこのマイナスのボールが入ってくる前線5枚のすぐ後ろ、自陣ゴールに向かってカバーリングに戻る相手のCHの間または背後だったのではないでしょうか。つまり、敦樹がボール保持に絡むことは問題ないとして、敦樹にはボールの前進とともに柴戸と明確な縦関係になり、あえて並びに落とし込むとすれば3-1-1-5を作るような立ち位置が求められていたのではないかと思います。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="この形は最終ラインに人数を使いすぎず、サイドへのサポートも用意出来ていて、4-1-4-1とは違うものの機能性が高そう。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210421/20210421040357.png" alt="f:id:reds96:20210421040357p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">この形は最終ラインに人数を使いすぎず、サイドへのサポートも用意出来ていて、4-1-4-1とは違うものの機能性が高そう。</figcaption> </figure> <p>図の15:32前後のシーンはまさにシュートに繋がった場面ですが、ここでは前5枚に敦樹がバイタルエリアで関わり、さらにその背後から西もサポートに出てくることでかなり分厚い攻撃を仕掛けることが出来ていて、結果的に8人で守備をしていたセレッソのブロックに中央で穴が開き、武藤のシュートに繋がっていきます。相手の2トップが攻め残っているとはいえセーフティには柴戸と両CBが構えており人数優位も出来ているので、セレッソのような守り方に対してはこの形で押し込み続けることが一つの正解だったのではないかと感じました。敦樹は他にも23:10前後のシーンなどで意識的に一つ前のポジションを取ろうという意図が見える立ち位置を取っていたのですが、一方で36:32前後のシーンなど背後のサポートよりももう一つ前にポジションを取れていればかなり良い形になったのでは、と思うシーンもあって、さらには高い位置で留まることで相手を困らせることができる場面でビハインドサポートに降りてきてしまいせっかく前進してきたボールとすれ違ってしまった場面や、おそらくビルドアップの過剰なサポートになってしまうような立ち位置を取っていた06:21前後、08:13前後、37:36前後のようなシーンもありました。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="結局この場面は槙野が関根へサイドチェンジを通して前進するが、武藤、小泉、明本が反応するに留まる。実際関根から武藤へのスルーパスが通れば得点チャンスなので悪くはないが、3-1-1-5を作るのが狙いとすると、敦樹はその役割を果たせない。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210421/20210421041539.png" alt="f:id:reds96:20210421041539p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">結局この場面は槙野が関根へサイドチェンジを通して前進するが、武藤、小泉、明本が反応するに留まる。実際関根から武藤へのスルーパスが通れば得点チャンスなので悪くはないが、3-1-1-5を作るのが狙いとすると、敦樹はその役割を果たせない。</figcaption> </figure> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="要は、3-2ビルドアップが基本といえども相手の2トップに対して過剰な枚数を使う必要はないし、敦樹の役割はビルドアップで終わりではなかったと思うので、そこまで踏まえると彼が過剰に降りる必要はなかったということ。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210421/20210421042453.png" alt="f:id:reds96:20210421042453p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">要は、3-2ビルドアップが基本といえども相手の2トップに対して過剰な枚数を使う必要はないし、敦樹の役割はビルドアップで終わりではなかったと思うので、そこまで踏まえると彼が過剰に降りる必要はなかったということ。</figcaption> </figure> <p>39:37前後で見せたような柴戸の少し前でのビルドアップへの関りと、ボールの前進に伴って前5枚とともにバイタルエリアへプレーするような動きが本来の狙いだとすると、サイドからバイタルエリアへとボールを入れることが多かった今節の浦和の前半の崩しは意図が見えて面白かったと思います。一方でボールを貰いゴールを奪うためのプレーが出来るような本当にクリティカルな場所に敦樹が立てていなかったのも、そしてそういう状況にも関わらずバイタルにボールを入れてしまっていたことも事実で、この辺りは結局のところ、最後の1/3の精度、という言葉にまとまってしまうのかもしれません。敦樹としてみればもしかすると、健気にアンカーのプレーにトライし続ける柴戸と隣り合ってある程度プレーエリアを共有するよりも、自分ひとりでアンカーをやっていた方がプレーをイメージしやすかったのかもしれませんし、もっと単純に癖のようなものが出て危険な立ち位置よりもボール保持・循環を優先したのかもしれません。いずれにしろすごく悪いというわけではなかったのですが、一方でボールを保持している割に「決めなければいけない」というほどの決定機の数は少なく、リカルドは後半を迎えるにあたって敦樹を前半までで交代させる決断をすることになります。</p> <h5>どうしても</h5> <p>両チーム選手を交代し後半へ。セレッソは西川、清武を下げて中島、山田の並べるとなぜかサザエさんを思い出してしまう苗字の二人を投入。浦和は敦樹に代えて意外にも興梠が最前線に投入されました。敦樹の交代の部分は、彼が悪かったからではないと思いますが、中盤で下げるなら敦樹、という判断があったことは事実でしょう。前線5枚の流動性やオフザボールでの動き出し、オンザボールのスキルは信頼できますし、+1としてボール循環と崩しの両面に関わる役割であれば小泉の方が上手くできるという判断だったのではないかと思います。実際、小泉と柴戸のコンビの方が縦の関係の作り方はスムーズだったような気がしました。</p> <p>それが奏功したのかはわかりませんが、浦和は48:33前後に「決めなければいけない」決定機。西川のフィードのこぼれ球を武藤が引っ掛けると小泉が素早い出足でセカンドボールを拾い、左足に持ち替えて絶妙のスルーパス。抜け出した明本がエリア内で左足を振りましたが惜しくも枠外。50:14前後では1-5で押し込んでから一度ボールを戻し、槙野のサイドチェンジから関根がカットインシュート。51:16前後にはゴールキックを自陣エリア内で受け取った柴戸から興梠へのスーパーな縦パスから決定機。マイナス気味の折り返しを受けた武藤が切り返し、スライディングしてきた丸橋の肘にボールが当たりPKかと思われましたがOFRの結果これはノーハンド。55:52前後のシーンでは柴戸の自作自演インターセプトから山中→明本と渡りカウンター気味に相手ゴールに仕掛けて最後は中央の武藤へボールを送るもシュートは枠に飛ばず、さらにこれはオフサイド。</p> <p>浦和としてはこの辺りの時間帯までに先制しておきたかったところでしたが、後半立ち上がりのこの時間帯、セレッソが前に前にプレッシングを強めようとしてきた勢いを裏返してゴールに迫るという形が多く、浦和としては仕方ない面がありつつもビルドアップで押し込むというよりはゴールに向かって空いたスペースを使っていくプレーが多くなった気がします。これによってだんだんと試合はオープンな攻め合いの様相を呈し始め、浦和がゴールに迫るとともにセレッソも浦和ゴールに近いところでのプレーが増えていきました。</p> <p>で、先制はセレッソ。ロングスローのこぼれ球を松田陸がミドルシュートし、それをブロックした小泉のハンドが今節2度目のOFRの対象となりプレーが途切れた後、浦和はセレッソから奪ったボールを繋ぎ落ち着かせようとしたところで山中が自陣中央に浮き球のパスを入れてロスト。この流れで豊川の強烈なミドルシュートを浴びると、それで与えたCKから丸橋に右足で蹴りこまれて失点。このシーン、ボールがファーにこぼれた瞬間にゴールラインのカバーに素早く入ったところまでは良かったものの、最後クリアしにいった左足が空振りになってしまった岩波は不運だったかなと思います。本来であればもう一歩でも二歩でもファーサイド側、ポストをカバーできるところに戻れれば良かったんですが、あの一瞬でゴールラインをカバーしたこと自体は高い集中力と危機管理がよく出来ていたプレーだったと思います。できれば利き足でない左足は振らずにコースに置いておければと言う感じもしますが、まあちょっと難しいかなと。チャンスを決め切れないと罰が待っているのが古今東西サッカーの原理ですが、浦和は久しぶりにこれを痛感することとなりました。</p> <p>はやく追いつきたい浦和は67:25前後の関根と武藤の狭いところでのコンビネーションからのシュート、西のスルーパスに抜け出した武藤のクロスに興梠が合わせた68:33のシーンと立て続けにゴールに迫りますが決め切れず。飲水タイムを挟んで74:50前後に柴戸のサイドチェンジをエリア内で受けた山中のクロスに興梠が飛び込むも合わず、78:55前後には小泉のサイドチェンジをエリア内で西が受けてのクロスに関根が飛び込みますがヘッドは枠外。先制後セレッソがSHを下げて最終ラインを5枚気味にしはじめたこともあり相手ゴール前が狭くなっていたものの上手くボールを動かしながらゴールに迫った浦和でしたが、今節はどうしても最後の結果が出ませんでした。</p> <p>結局、最後は健勇を投入し高さを補強、槙野がゴール前に居残ってパワープレー気味に人数を掛けたもののあまり良い形は出来ず、昨年までのロティーナ監督の守備組織の残り香よろしくゴール前とバイタルエリアに人垣を用意したセレッソが逃げきることとなり、浦和は4連勝を逃す1-0の敗戦となったのでした。</p> <h5>3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感</h5> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210421/20210421042943.png" alt="f:id:reds96:20210421042943p:plain" /></p> <p><strong>「1.個の能力を最大限に発揮する」は6.0点。</strong></p> <p><strong>「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は6.5点。</strong></p> <p><strong>「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は6.0点。</strong></p> <p>試合全体としては悪くなかったと思います。良い形は作れていましたし、相手がフラットの4-4-2であれば自分たちのボール回しに対してどこが空くのか、誰かが動いた分誰がどうやって必要なポジションを埋めるのかと言ったところの共通理解が高まってきていることをよく感じられた試合内容でした。特に今節前半のセレッソのように2トップがあまりボールを追い込んでこない場合は、あまり苦労せずに崩しの段階までボールを進めることが出来そうですし、崩しも3月に比べればかなりスムーズに、そしてバリエーションも増えてきたと思います。最後のパワープレーの効果はともかく、今節の結果に関しては作り出した決定機でゴールを奪い切れなかったことが全てで、今節取り上げた無数の良かったシーンのどれかでゴールが入っていれば問題なく勝利できたゲームだったと思いますし、そうした負け惜しみを言うに足るくらいの質と量を伴った決定機は作り出せていたと思います。じゃあなぜそれが入らなかったんだというのは言葉で説明しきらない部分も含まれていると思うので、今節溜めた分がどこかで解放されるとポジティブに考えることにします。</p> <p>ただ正直、今節のリカルドの「修正」は少し性急だったかなと感じるところもあって、個人的には前半で敦樹を下げてしまったのは残念でした。武田の代役が見つからないことで4-1-4-1を簡単に採用できなくなったと考えると、今節取り組んだ4-4-2は今後の基盤として使うのに足る可能性を見せたシステムだと思いますし、その肝の部分として柴戸と縦関係を作って前線5枚に絡んでいく選手として敦樹を活かすというのは非常に良い試みだと思います。個人的には以下のツイートをしていた通り、HTに敦樹の立ち位置をもう少し整理して敦樹を0.5列押し出すようなプレーをさせてみて欲しかったんですが、叶いませんでした。</p> <p><blockquote data-conversation="none" class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">敦樹をもっと押し出すのが文脈的な正解だと思うけど、どうするんだろうなー。</p>&mdash; 96 (@urawareds96) <a href="https://twitter.com/urawareds96/status/1383675821013934081?ref_src=twsrc%5Etfw">2021年4月18日</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p>とはいえ、同じ役割をやらせるなら小泉の方が上手に出来そうだね、というリカルドの判断が間違っていなかったのも事実で、後半より多くの「決めなければいけない」決定機が出てきたのは小泉がビルドアップに関わりつつも適切に前に絡んでいき、かといって突っ込み過ぎないポジションを取るプレーを見せ、前線の1-5の関係がよりはっきりと形成できたからというのも一因だと思います。さらにその分FWを多く使うことでゴール前に迫力を出そうというのも間違っていないですし、今後ユンカーが加入してトップのポジション争いが激しくなることを踏まえても、1トップシステムより2トップシステムで形を作っておくことは有用だと思います。僕が今思いつくのはこんなところですが、リカルドが実際に何をどこまで考えてこのシステム(これが4-4-2だったのか4-1-4-1だったのかも含めて)と今節の交代枠を使ったかというのはとても興味深く、なんだかバリエーションが増えて難しくなってきましたが、観るほうもその意図に頑張ってついて行きたいところかな、と思います。</p> <p> </p> <p>というわけで、今節はここまで。今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。また次節。</p> reds96 武田の役割:Jリーグ2021第9節 vs徳島ヴォルティス 分析的感想 hatenablog://entry/26006613717327853 2021-04-18T11:31:04+09:00 2021-04-18T11:54:37+09:00 ピンチはチャンス!ということで、仕事が忙しくて時間が取れないなりにエントリを書いてみるチャレンジです。これから7連戦とかどうなってしまうんでしょうか。 両チームのメンバーと嚙み合わせ 浦和ベンチ:彩艶、宇賀神、工藤、汰木、柴戸、健勇、興梠 徳島ベンチ:長谷川、安部、浜下、杉森、小西、岩尾、河田 浦和は4-1-4-1を継続。一方でアンカーにはコンディションが万全ではなかったと思われる柴戸ではなく敦樹がスタメンに名を連ねました。浦和の今季のスカッドの中でボランチ(CH)でプレーする選手は主に5人で、トップ下と兼務のような形で起用される小泉を除けば阿部、柴戸、敦樹、金子がポジションを争っています。4… <p>ピンチはチャンス!ということで、仕事が忙しくて時間が取れないなりにエントリを書いてみるチャレンジです。これから7連戦とかどうなってしまうんでしょうか。</p> <h5>両チームのメンバーと嚙み合わせ</h5> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210417/20210417201833.png" alt="f:id:reds96:20210417201833p:plain" /></p> <p><br />浦和ベンチ:彩艶、宇賀神、工藤、汰木、柴戸、健勇、興梠</p> <p>徳島ベンチ:長谷川、安部、浜下、杉森、小西、岩尾、河田</p> <p>浦和は4-1-4-1を継続。一方でアンカーにはコンディションが万全ではなかったと思われる柴戸ではなく敦樹がスタメンに名を連ねました。浦和の今季のスカッドの中でボランチ(CH)でプレーする選手は主に5人で、トップ下と兼務のような形で起用される小泉を除けば阿部、柴戸、敦樹、金子がポジションを争っています。4-1-4-1採用後に台頭した柴戸が開幕して暫くは全くスタメン起用されず4番手と認識されていたことからも競争の激しさが想像できますが、最近メンバー入りしていない阿部と金子はもしかしたら怪我かコンディションを落としているかで使えない状況なのかもしれません。敦樹はこれまで2ボランチを採用するフォーメーションでのみ起用されていて、プレー的にもビルドアップに関わりつつ前線に飛び出していくプレーを良く見せていたので、中盤中央を一人でケアする必要のあるアンカーとしてどういったプレーが出来るかは今季だけでなく、流通経済大学で同じく4-1-4-1のアンカーを担っている安居君が加わりさらに激しい競争が予想される来季以降を考える上でも重要なポイントかもしれません。</p> <p>噛み合わせで行くと、今節は4-1-4-1で戦う浦和にとって初めてトップ下を配置する相手との対戦となります。中盤中央の3枚が噛み合いやすい配置の対戦となるため、マークにつきやすいとも言えるし、マークした相手に動かれることで動かされやすいとも言えるわけですが、全体の配置を整えて前進し、相手陣地に大きなスペースを作り出して攻め込むというのは徳島が実践するポジショナルプレーの狙いでもありますから、これにどう対処できるか、もしボール非保持で対処できないなら、リカルドが4年間指導してきたチームからボールを取り上げて浦和がボールとゲームを支配できるか、というのがポイントになりそうです。</p> <h5>「特徴の違い」</h5> <p>ゲームは山中のFKのこぼれ球を武田がボレーで思い切りよくシュートを放ちスタート。ただ残念ながらその武田が開始6分で負傷することとなり、浦和は開始10分とかなり早い段階で健勇をトップに投入、武藤を右IHで起用することとなります。</p> <p>で、結果的にこれはあまり機能せず、リカルドも試合後にそれを認めていたのですが、そのコメントが面白かったのでまずはその話から。</p> <blockquote> <p>--武田選手の負傷について、柴戸 海選手を入れたり、システムを変えるなどほかの選択肢もあったと思うが、杉本選手を投入した理由は。<br />まず柴戸はこの試合に出られる状態かどうかがギリギリのところでした。スタートから出られない、長い時間で出られないという状態だったので、この時間帯ではまだ早いと判断しました。杉本を入れましたが、武藤を武田の位置に入れてどれくらいできるかを試したのですが、やはり特徴が違うのでどうしてもうまくいかなかったため、小泉(佳穂)と伊藤 敦樹をダブルボランチに置く形に変更しました。</p> <p><iframe class="embed-card embed-webcard" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" title="【公式】浦和vs徳島の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2021年4月11日):Jリーグ.jp" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.jleague.jp%2Fmatch%2Fj1%2F2021%2F041107%2Flive%2F%23coach" frameborder="0" scrolling="no"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.jleague.jp/match/j1/2021/041107/live/#coach">www.jleague.jp</a></cite></p> </blockquote> <p>フォーメーションや並びの数字は電話番号(それに大きな意味はない)ということはよく言われていますが、4-1-4-1を採用してから浦和のパフォーマンスが上向きなのも事実で、じゃあ何が大事なんだというのは気になるところです。それはコメントでリカルドが言っている通り「特徴の違い」なのですが、じゃあ武田と武藤の特徴の違いが何だったのかを考えるのは有益でしょう。</p> <p>おそらくポイントの一つは動き過ぎないという点ではないかと思います。武田はIHでプレーするときは基本的に大きく動かず、浦和の右サイドに留まってプレーすることが多く、周囲に動く選手(例えば小泉だし、関根も外⇔中、前⇔後ろの動きが多い)がいる中で、あまり動かずに立つ場所を意識してプレーしている気がします。年齢的に下だからか、そういう考えなのかはわかりませんが、周りの選手が動いて空いたスペースに入っていくのが上手で、自分が一人目として動き出すよりは、誰かが動いた二手目として変化する状況を使うのが上手い選手だと思います。一方で武藤は、もちろん彼も誰かが空いたスペースを使うのは上手ですが、志向的に一人目になろうとするタイプではないかと思います。少なくとも武田よりは自分がまず動き出す意識の高い選手だし、それによって周囲に影響を与えようとするタイプでしょう。で、それが祟って右IHの武藤が左サイドまで出張してボールに対してアクションを起こしているシーンが今節ではいくつかあって、すごく悪いわけではないけれどボールの周囲が狭くなったり、展開後に人がいなかったり、ということがありました。これまでも指摘している通り、4-1-4-1の機能性の一つはサイドのトライアングル(SH,SB,そしてIH)を素早く作り過不足なくペナ角攻略に移行し、またそれを連続できる点にありますが、IHが逆サイドまで出張することがあるとそれが出来ず、また展開後の迫力に欠けたり、そもそも片方のサイドに閉じ込められてしまったりと副作用もあるような気がします。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="**戦で使った図。左サイドのトライアングルと同じように、右でも武田、関根、西のトライアングルが素早く作れることが4-1-4-1の強みで、その意識が高くポジショニングが素早いのが武田の良さだった。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210405/20210405021715.png" alt="f:id:reds96:20210405021715p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">4-1-4-1のお披露目となった鹿島戦で使った図。図で強調した左サイドのトライアングルと同じように、右でも武田、関根、西のトライアングルが素早く作れることが4-1-4-1の強みで、その意識が高くポジショニングが素早いのが武田の良さだった。</figcaption> </figure> <p>リカルドが言及した「特徴」というのはこのあたりで、武田はサイドのトライアングルを形成する意識が高く、動き過ぎないために右サイドのバランスが取れていたことに対して、武藤は一人目として動き出す意識が高いのでトライアングルの形成に間に合わない場面があった、ということかもしれません。例えば23:37前後のシーンなんかはそういう意味で気にする人は気にするのかなという気がします。また、それと同時にそうした武藤の動き出しの良さが大きな武器になっていたトップのポジションについては、武藤ほどの動き出しの回数も鋭さもない健勇では良さが出にくい、というのも前半徳島ペースで進んだ理由になるかもしれません。こう考えるとやはり4-1-4-1でやりたいことをベースにすると適材適所が結構はっきりするし、それが鹿島戦から今節までほとんどメンバーを変えていない理由とも思えます。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="武藤がボールに絡みに降りてくることで、右サイドの崩しが2枚の関係になってしまう。我慢が必要な局面もあるというのは、それをしていた人がいなくならないとわかりにくいことかもしれない。"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210418/20210418115314.png" alt="f:id:reds96:20210418115314p:plain" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">武藤がボールに絡みに降りてくることで、右サイドの崩しが2枚の関係になってしまう。我慢が必要な局面もあるというのは、それをしていた人がいなくならないとわかりにくいことかもしれない。</figcaption> </figure> <h5> 均衡への耐性を見せた前半</h5> <p>そんなわけで悩ましい浦和に対し、徳島が徐々にゲームを支配していく展開。基本的にボールを持つことで守備をしているようなところもあるチームなので具体的な決定機が多くないことは徳島にとってはそこまで気にならなかったと思います。ボール非保持では4-4-2になる浦和に対し、基本的には右SBの岸本を高く上げる右上がりの配置で3バックを形成。ただ、浦和が明本が下がり気味で岸本をケアすることもあって徐々に左サイドや中央を使おうという考え方に変わっていったかもしれません。飲水タイムを経たあたりからは藤田が左に降りてジエゴを押し出してみたり、鈴木徳真が中央に降りてCBを横に出してみたり、いろいろと工夫をしながらボールを支配し、時間を使いつつ前線の宮代、渡井、垣田を使っていこうという感じでした。</p> <p>パススピードが速く迂闊に選手同士が近づきすぎることもないので、ピッチ上にかなり広く選手が散らばってプレーし、本当はプレスをかけて追い込んでいきたい対戦相手もそれを諦めざるを得ない、という展開に持ち込んでいくのが徳島のサッカーですが、今節の前半の浦和はまさにそんな感じで、広くポジションを取っているので近くのパスコースが消えても逆サイドにはサイドチェンジを受けられる選手が出来ており、徳島はボールを使いつつも大きな展開でボールを逃がし、それに応じて浦和が空けたスペースに渡井が素早く入り込んで崩しに繋げるという形がよく出ていたと思います。浦和は敦樹に加えて岩波や槙野が状況に応じて最終ラインから飛び出して中盤を埋めるなどギャップに入り込む渡井をどうにかする意識は強かったと思いますが、その一方で早々に前から追うことは諦め、その代わりサイドに出たボールには強くプレッシャーをかける、という考え方だったように思います。</p> <p>33:45前後に岩波から武藤に繋ごうとしたボールがミスになり藤田にインターセプトされ、そこからフリーで宮代にシュートを許しますがギリギリで西川がスーパーセーブ。トラップが長くなったのもありましたがよく先に動かずに我慢したと思います。また宮代に時間を与えなかったという意味では明本もよく戻ってトラップ際にプレッシャーをかけました。まあでも宮代はあれは決めないとだめですね。決めていたら今節のスコアは逆になっていたかもしれません。</p> <p>このプレーの印象が強いからなのか、今節については岩波が狙われていたという感想が多かったようですが、個人的には戦術的に彼個人を狙っていたんだろうか、という疑問もあります。結果的に岩波の良くないところがいくつか出て大きなピンチとなったこのシーンのように、岩波のところでプレスが嵌っていたのは事実だと思いますが、そこまであからさまに浦和の右サイドへの誘導があったかはよくわかりませんでした。たしかに渡井が岩波に強くプレッシャーをかけていましたが、それよりもどちらかと言うとその一つ前で西川の左足を切りたかったのではという気がしていて、そうすることでパスを出す方が岩波に出すとわかっているから岩波を追い込みやすいだけという気もするし、どうなんでしょう。浦和はどうせ右サイドからビルドアップして前進するにつれて左サイドを使い、山中なり明本のパワーを前線で使うのが一つの形なので、37:00前後のように岩波が追い込まれてもロングキックから裏返して左サイドが相手の最終ラインと勝負できるなら収支はそこまで悪くない気もします。相手チームが浦和の右→左の前進の流れをわかっているのなら、僕だったら岩波を消して槙野に持たせ、山中をサポートに下がらせてクロスの脅威を消したくなるんですが、そうしない理由はなんでしょう。ちょっと腑に落ちてないところです。</p> <p>それはともかく、押し込まれていた浦和はこの時間帯を境に少しずつ修正を掛けていきます。38分くらいのボール非保持のシーンが象徴的でしたが、高い位置を取る岸本を気にして下がり目のポジションをとっていた明本に前に出るようにベンチからの指示があり、その直後に上福元のミドルパスを明本が拾えたことでイメージが掴めたかもしれません、次のプレーで藤田が流れるようにボールを持ちあがり、スルーパスから藤原のシュートを演出して肝を冷やしましたが、西川がナイスセーブ。42:26前後にはトランジションから西のクロスに武藤が合わせてバー直撃。直後の43:30前後もビルドアップから西が絡んで前線へ、パスが乱れるも関根や武藤のプレスバックでボールを奪い返し、続く44:51前後も右サイドの作りから西が絡んで狭いところを脱出し健勇→武藤とつないで右サイドに抜け出した関根へ。クロスに合わせた明本は合わせきれませんでしたが、これで得たCKでもエリア内で明本にシュートチャンス。上福元の素晴らしい反応で防がれたものの、浦和は均衡・我慢の時間が長かった前半を凌ぎ切り、最後に相手ゴールに迫って前半を終えるというのは悪くなかったと思います。</p> <h5>困った時の</h5> <p>徳島は後半開始から選手交代。CBの鈴木大誠と垣田を下げて岩尾と河田を投入。垣田は序盤で痛めた個所の影響があったようですが、鈴木はパフォーマンスの問題だったようです。前半、相方CBの福岡がボール保持時のコントロールやボール非保持時のラインコントロールの大声でのコーチングでかなりの存在感を発揮していたことに対して鈴木は確かに目立ってはいませんでしたが、もしかすると浦和が明本が下がり目になってしまうことを気にしていたと同時に、徳島は明本を押し込めていたのに右サイドからボールを前進させて岸本に仕掛けさせる形がなかなか作れなかったことを気にしていたのかもしれません。で、ボランチで出場できる選手が藤田、鈴木徳真、岩尾の3枚となりどうするのかなと思ったら、藤田を右CBでプレーさせたのは少し驚きました。割り切って3バックにして岩尾を真ん中とかやるのかなと思ったんですが。徳島ベンチの甲本コーチには違和感がなかったようですが、育成年代でCBとしてプレーしていたとは言えこの試合のパフォーマンスから言えば中盤の底で存在感を発揮していた藤田を最終列まで下げてしまうのはもったいなかったかなという気がします。とはいえ藤田はかなりの頻度で持ち場を離れて動き回り、逆サイドの深い位置まで進出したりかなり自由にプレーしていたので、実質福岡が1枚で最終ラインをなんとかしていることも多かったのですが。</p> <p>浦和は相変わらず武田の負傷交代に伴って選手が変わったことで適材適所の修正に手間取っており、もしかしたら後半頭から4-4-2もしくは武藤トップ下の4-2-3-1でプレーしていたかもしれません。とはいえ本来の4-1-4-1と比べたときの課題は明らかで、前半と同じく、57:27前後のシーンなんかのように武藤もしくは健勇がサイドのトライアングルに入ってくれず、サイドから崩していけませんでした。これに関連して、時折サイドの枚数が足りないことに気づいた敦樹がアンカーポジションを捨ててサイドに出て行く立ち回りを見せており、敦樹は気を利かせてくれているので悪くはないのですが、その分小泉がアンカーの位置に下がってしまうわけで、4-1-4-1で見せていた機能性からすればちょっと違うことをしていますし、そのような形にしたのだから当然ですが内容的には3月の浦和に近かったかなと感じました。武藤はトップ下だと裏抜けも狙ってくれるんですが、明本と役割が被ってしまうことも多かったですね。</p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="この時点で4-4-2もしくは4-2-3-1で戦っていたと思うので武藤のポジションが悪いとも言い切れないが、要は4-1-4-1で武田がやってくれていたことをやる人がいなくなったということ。"> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210418/20210418111323.png" alt="f:id:reds96:20210418111323p:plain" /></p> <figcaption class="mceEditable">この時点で4-4-2もしくは4-2-3-1で戦っていたと思うので武藤のポジションが悪いとも言い切れないが、要は4-1-4-1で武田がやってくれていたことをやる人がいなくなったということ。</figcaption> </figure> <p>とはいえ、困った時の武器は用意できていた浦和。60分にCKから関根が合わせて先制。これまでもショートコーナーの形はいろいろ試していましたが、形になることも増えてきました。徳島はゾーン+マンマークの併用で守っていましたが、マークにつかれた選手があえてエリア内に入っていかないことで網目の粗いゾーンの中に小さくても競れる選手を飛び込ませるという形は面白かったです。それにしてもDAZN解説の水沼パパはこのCKについて「徳島はシンプルなミスからなのでこのCKは気を付けないといけない」と指摘していたのはさすがですね。</p> <p>その後の試合は一進一退。浦和がボールを保持する時間もありましたが基本的には徳島がボールを持ち、浦和はそれを4-4-2ベースで受け止め、小泉や敦樹、明本を中心に球際のプレッシャー維持しつつマイボールは簡単に捨てないという形で推移。徳島は途中杉森(63分)、小西(72分)、浜下(81分)とカードを切りますが状況の打開には至らず、最終版にはジエゴがWGの位置まで上がっていき、そのサポートに藤田が前に出て行くなどしてゴール前の枚数をかなり増やしましたが、85分に柴戸を、試合終了間際には宇賀神を投入し守備固めも抜かりなかった浦和が守り切って1-0の勝利。浦和は久しぶりの3連勝となりました。</p> <h5>3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感</h5> <p><img class="hatena-fotolife" title="" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/reds96/20210418/20210418105737.png" alt="f:id:reds96:20210418105737p:plain" /></p> <p><strong>「1.個の能力を最大限に発揮する」は5.5点。</strong>4-1-4-1で武田を使うフォーメーションが非常に良い機能性を発揮していただけに控えめな採点にならざるを得ませんが、今節の敦樹がアンカーとしても機能したことはポジティブな点だったと思います。ダブルボランチで前に出て行くことが出来るのも魅力ですが、ボール保持での落ち着きやスキルは高いものがあるし、守備でも広い範囲をカバーし球際もしっかり対処できていたので、前の人選が定まれば敦樹のアンカーも計算に入ってくると思います。柴戸のほうが動き過ぎずに立ち位置で勝負しようとする意図やチャレンジを感じますが、どちらを使ってもある程度は計算できるというのはチームにとっては非常に大きいのではないでしょうか。</p> <p>今後の人選はボランチの特徴というよりは前の人選、特にIHとしてサイドのトライアングル構築にスムーズに関われる選手を武田以外に見いだせるかがポイントになりそうで、それが見つからなければ次善策として4-2-3-1か4-4-2に戻すということになりそうです。ただその場合、使える選手をほとんどスタメンに使ってしまうことになったり、3月や今節見られたようにボールを前進させた後に崩しの形が作りにくくなってしまったりすることが懸念されます。個人的には涼太郎あたりがIHで機能してくれるとチーム力が一段上がっていくような気がするのですが、もしかしたら右SHに別の選手を使って関根をIHで使うオプションもあるかもしれません。</p> <p>これまで結果の面ではあまり目立たなかった武田ですが、いなくなったことで彼の果たしていた役割と4-1-4-1の機能性のポイントがよくわかる試合となったのが今節でした。そういう意味では、4-1-4-1を軸にした適材適所をこれからどれだけ見つけていくことが出来るかがチーム力の向上には欠かせず、今後もスカッドの状況に応じて意外な選手起用が見られるかもしれません。4-1-4-1が使えないと3月のようなパフォーマンスに戻ってしまう可能性が高いですが、ハマった時には高い機能性・パフォーマンスが期待できるのが分かっているので、それだけでもチームとしては大きな進歩ではないかと思いますし、少なくとも軸が見つかったのはチームにとって良いことでしょう。</p> <p>また今節に関しては西川が前半のピンチをしっかり凌いでくれたことが勝利につながったのは言うまでもありません。</p> <p><strong>「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は6.0点。</strong>ゲーム全体としては徳島のビルドアップが一枚上手で意図したほどボールを持てませんでしたが、ボール非保持面での安定感は継続しており、球際でもしっかり戦えていたので悪くなかったと思います。特に小泉と明本は危険な場所に気づけるし、トランジションが続いてもゲームに関わり続けることが出来るのが良いですね。J2から個人昇格してきた二人ですが、既に十分J1にアジャストしてきているし、明本であればボールの受け方やターン、小泉であれば寄せられてもパスせずに自分のところで収め切ってから次につなげるプレーなど、開幕当初には見られなかったプレーが見えており成長を感じるところです。</p> <p><strong>「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は5.5点。</strong>全体として「相手を休ませない」というところまではなかなか難しかったですが、トランジションに反応する意識は相変わらず高く、難しい試合をしてもリカルド・レッズらしさは維持できるようになってきていると思います。ひとつの要因は自信でしょうし、それぞれの選手がこういうプレーをしてくれるだろうという信頼感も醸成されつつある気がします。だからこそ、ここからは連戦になるので、この3連勝になかなか絡めていない選手たちが同様にチームのプレーモデルに沿った形でそれぞれの良さを還元できるかどうかが次のポイントになるかもしれません。</p> <p> </p> <p> </p> <p>というわけで、今節はここまで。今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。また次節。</p> reds96