96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

打ち合いの予感・・・?

 

 明日は鳥栖戦。消化試合数が1試合少ないレッズとしては首位大宮(違和感)に離されないようにくらいついていきたいところですね。

 

 

 昨シーズンの対戦は3回。6月6日にナビスコ予選で1-2の敗戦。リーグ戦では元気、水輝がオリンピック落選直後の第17節を7月7日に戦い記憶に残る4-3での勝利。後半戦ではACL争いまっただ中の33節、1-3での痛い敗戦で僕は正直ACLを半ばあきらめました。笑。並べてみるとわかるのですが、鳥栖とミシャレッズの対戦では必ず両チームとも得点をあげているんですね。というか、3試合計で8失点もしているのには正直驚きました。

 豊田という絶対的エースFWを擁する鳥栖のオフェンスですが、攻撃パターンが多いわけでは決してありません。基本的に組み立ての優先順位は明確で、①ボールを奪った瞬間に豊田を含めた前線の選手へロングパスでカウンター。②サイドに早めにつけ、そこからのクロスを豊田めがけていれる。③ボールを落ち着かせてサイドバックの上りを待つと同時に中の選手が動き直し、サイドをえぐってクロス。①→②→③のオフェンスの組み立ては特に珍しいわけではありません。相手のゴールにボールを入れる競技であればカウンターを狙うのは当然ですし、豊田というターゲットを中央に配置しているのですからサイドからのクロスを狙うのも普通のことです。僕が思うに鳥栖の強みは、この①~③の狙いのみをひたすら繰り返すことです。下手にコンビネーションでワンツーなんて狙ってきません。早めに中央に入れて、ごちゃっとなって、ボールが転がってきたらゴールに向かって蹴る!そんな言い方すらできるかもしれません。ただ、僕は決して鳥栖さんを馬鹿にしているわけではありません。しっかりと約束事が整理され、意思統一が図られたうえでの戦術なのだと思うのです。まず最初の狙いであるロングボール。ターゲットの豊田には並のDFにはまず負けない屈強なフィジカルがあります。豊田が相手DFと1対1の状況でボールを受けられれば、比較的高い確率でボールをキープできます。何かが起きればそのままゴールに直結する勝負にも持ち込むことができます。何と言っても最低限、味方の上がる時間をつくることができる。この部分に関して豊田への信頼は絶対のものがあります。そのためか、鳥栖の選手が相手からボールを奪った瞬間にまず豊田を見ます。もし豊田に入りそうなら迷わず蹴る。さらに、2列目の選手が一斉に豊田を追い越そうと走り出すのです。そのため一気にゴールへなだれこむようなカウンターを発動できるんですね。昨年、今年とミシャサッカーを観ていればわかりますが、最前線の選手がボールを収めてくれるのは本当に大きい。昨年のレッズでは元気が多くの試合で1トップを務めましたが、正直言ってボールはほとんど収まりませんでした。(もちろん、元気が悪いというわけではなく、むいていないことをやらされた元気の苦悩はだれもが自分のことのように理解できていたと思います。)ボールが収まらなければ後ろの選手は逆カウンターを警戒してうかつに前へ出ることができません。そのため遅攻が増え、守りを固められてしまい手詰まりに。。。というシーンは嫌というほど観てきました。それが今年になって興梠にあれだけボールが収まる。その分2~3人で速攻を仕掛けてそのままゴールに迫るシーンを観ることも多くなりました。(というか、元気が追い越す側に回って本来の輝きを放っているとも言えますが。)話が逸れましたが、まず豊田にボールが収まるという前提を選手が疑わず、すぐに預ける。預けたらフォローに走る。こういったことがサガン鳥栖というチーム全体で共有されているように思います。次のフェイズではサイドからのクロスです。ここにも約束事がありそうです。というのは、逆サイドの選手が必ず詰めているんです。鳥栖の選手のクロスの精度は高いわけではありません。別に中の選手がマークを外しているわけでもありません。ただし、ほとんどの場合サイドからのクロスには逆サイドの選手まで飛び込んできます。クロス1本1本に3,4人の選手がだーっと飛び込んでくるのですから、対応は簡単ではありません。なにせ豊田洋平がいます。バイタルエリアで両チーム7,8人が入り乱れるルーズボールが豊田の足元にこぼれてくれば、それは鳥栖の一点を意味するんですね。高い精度を誇るわけではないクロスも、拾い手の数がそろっているのであれば大きな問題ではありません。実際昨シーズンのレッズとの試合でも、早めのクロスを逆サイドで折り返されて豊田へ、そしてあわやのシーンを作られています。最後に、サイドの選手へしっかりチェックがついていて、クロスがあげられない場合。ボランチサイドハーフで時間を作っている間に、一気にサイドバックが上がってきます。今シーズンは左サイドバックにキムミヌが入ることが多いようですが、カウンターを止めてやっと一息ついたところで鳥栖有数のチャンスメーカーである彼のクロスが上がってくるのは嫌らしいですねえ。しかも、もちろんですが、このクロスにも前4枚はしっかり飛び込んできます。こういった約束事が、一試合通して実践されます。それが僕の考える鳥栖というチームです。言葉にするとやっていることは単純ですが、これはたぶんかなり走らないといけない。鳥栖の守備はほとんどの場合豊田を残して10人で守りますから、そこから攻めに出るのはかなりキツい。でもそれを実行しているからこそ、昨年昇格直後ながら5位という好成績をあげることができたのでしょう。個の能力や選手への給料の額を考えれば、これは素晴らしいチーム作りだと思います。

 鳥栖をオフェンスを褒めましたが、問題ももちろん抱えています。守備です。鳥栖は現時点でJ1最多失点を喫しています。その内訳すべてを観たわけではないのですが、昨年から観ていても鳥栖の守備に関してははっきりとした狙いどころがありそうです。鳥栖の守備は基本的にしっかりと戻って人数をかけ、アグレッシブにプレッシャーをかけていくスタイルです。前述のオフェンスのようにディフェンスでもかなり約束事の整理や意思統一ができているようで、全員が高い意識をもって守備している印象です。レッズのように最初からボールを保持してくるチームに対して90分間追いかけるほどのことはしてきませんが、ハーフラインを超えれば怒涛のプレッシャーを仕掛けてきます。またこぼれ球への反応は守備時も非常に高く、かなり早い出足を毎試合見せているように思います。ただし、総じて意識が高すぎて、頻繁にバランス崩壊を招いているのも事実のようです。相手の仕掛けに対してプレッシャーをかける意識のあまり食いつきすぎてスペースを空けてしまうシーン、全体で連動してハメに行った結果連動しすぎて逆サイドがら空き、こぼれ球に鳥栖の選手だけで2,3人同時に反応した結果エリア内でどフリーの選手をつくるなどなど。。。昨年はそれでも紙一重のところで失点を防いでいた印象がありますが、今季は特に簡単にサイドにスペースを空けてしまいそこを使われての失点など、うまく粘り切れていないようです。アグレッシブな魅力ある全員サッカーを展開する鳥栖ですが、それゆえの問題を抱えてしまっているということでしょうか。

 さて、次節の展望ですが、上記のような鳥栖の特徴と、2年目に突入したミシャレッズの特徴。これを組み合わせると、僕はどーも打ち合いになる予感がしてなりません。

 前回までの記事でレッズの守備の弱点は早い段階でクロスを上げられた場合の対応と、そのセカンドボールを拾えなくなってしまうことと書きましたが、サガン鳥栖というチームはまさに早い段階でクロスを上げてくるチームです。一斉にとびこんでくる鳥栖の選手を捕まえ損ねたり、セカンドボールを簡単に拾われてしまうと、前半の早い時間であっさり先生を許すなんて展開もあるかもしれません。また、エースFW豊田を止めることができるのかも大きな問題です。基本的には豊田は那須とのタイマン勝負になる時間が多と思います。彼が先制点をあげるようなことがあれば鳥栖はがぜん勢いづいてきますから、ぜひ那須さんには豊田を90分間大人しくさせておいてほしいものです。清水戦ではバレーという個の力だけに勝ち点3を持って行かれていますから、同じことを繰り返すわけにはいかないのです。このミッションをクリアできれば、ここのところセットプレーでサポーターの厚い信頼を得ている那須さんのポジションはさらに安泰。。。という要素もありますよね。あとはセットプレー+ロングスロー。ほとんどターゲットは豊田だけなんですが、それに昨年やられたのも事実。鹿島戦でもレッズのファウルを取られまくってリズムをなかなかつかめませんでしたが、より一層注意が必要な部分です。

 逆に、レッズのオフェンスの強みと鳥栖のディフェンスの弱みも、がっちりとかみ合っています。鳥栖はボールにかなり食いついてきますから、基礎能力で上回るレッズの選手が一枚はがしさえすれば、かなりクリティカルなところでフリーの選手が生まれるはずです。前述のように鳥栖のディフェンスは逆サイドを空けることが多いので、後ろの選手のサイドチェンジからWBの早いクロスにも期待できます。はっきり言ってサイドは空くチームなんてレッズの格好のカモです。今の平川やウメに良い組み立てからボールが入ればかなり決定的な仕事をしれくれますから、相手もかなりそこは警戒してくるでしょう。サイドに意識が傾けば元気のドリブルに柏木-興梠ラインなど多彩な攻め手を持つ浦和がかなり有利な展開に持ち込める可能性も十分あります。特に元気のドリブルは有効で、昨年の対戦でも鳥栖の選手は元気のドリブルに全く飛び込めていませんでした。だいたいあれだけのスピードでドリブルできる時点でプロでもうかつ飛び込めないんでしょうけど、元気が前を向けば基本的に鳥栖の選手を2枚は引きつけられちゃいますから、そこで大チャンスが生まれそうです。鳥栖が割り切ってべた引きしてこない限りはがっぷり四つで組み合って勝負できる相手です。レッズはあらゆる方法で鳥栖ディフェンスを崩してほしいですね。鳥栖は現在リーグ戦最多失点ということもあり守備に関しては自信を失いかけている部分もあるでしょうから、うまく一回崩してしまえば案外もろいかも?とすら思っています。

 そんなこんなで長所と短所がお互いかみあってしまっている両チーム。下手したら昨年のホーム戦なみのオープンな展開もあるのでは。。。と思いながら、いずれにしろわくわくしている僕なのでした。