96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

ミシャの"次の一手"は・・・。トレーニングマッチ湘南戦 in駒場

約2週間ぶりのさいたまでの試合、しかも駒場で45×4本と言われれば観に行かないわけにはいかないでしょう。観てきました、トレーニングマッチ湘南戦。朝方は雨が降っていたので、少々天気を心配していたのですが、お昼にはすっかり雨も止み一安心。一般席開場前の駒場には僕と同じように試合が待ちきれない人、さいたまでレッズの試合があれば駆けつけずにはいられない人、タダだし観るかーという感じのカップルやら親子連れやらでいっぱい。結局バックロアーは8割ほど埋まっていたのではないでしょうか。

今日の試合は45分×4本。全選手がみっちりやれるどころか、同時刻のチャリティーマッチに出場する槙野、柏木、元気の中核メンバーがいないこともあり、出場選手が足りないんじゃないかと思ってたのですが、どうやらユースの中心メンバーを呼んでいたようで、2試合目にはユース選手と控え組の混合チームで試合をやっていました。日曜日なので彼らもプリンス?の試合があったようですが、トップチームと一緒に、かなりの時間プレーすることができていたので、ユースっ子たちには良い経験になったでしょう。観る側の僕としても、プレーを始めてみる選手ばかりだったので良かったです。

 

ミシャの次の一手

さて、タイトルの、「ミシャの次の一手」です。前半戦上々の成果を上げた2年目のミシャレッズですが、興梠をはじめ、替えのきかないピースが明らかになってきました。柏戦の記事で書いたと思うのですが、レギュラーを固定し、コンビネーションの質が高まるにつれて、交代選手を使いにくい状況が生まれてきていると感じています。ミシャがメンバーを固定気味に戦う監督なのは広島時代からのことですし、実際彼のサッカーを観れば、あのサッカーを選手を入れ替えながら実践していくのが至難の業であることはすぐにわかりました。したがって、現状コンビネーションの醸成等の意味で同じメンバーを重用することに異論はありませんし、時々出てくる交代選手(マルシオはほとんどスタメン選手なのでもちろん例外です。)のプレーが、スタメン組に及ばないのも事実です。ただし、今後後半戦を戦っていく上で、ケガ人が出ない保障はどこにもありませんし、暑い夏を戦っていく上で控え選手の台頭は絶対に欠かせません。1シーズン通して活躍できなくとも、一気にチームを勢いづけるラッキーボーイ的な存在は優勝のためには必要なはず。さらに、チームのサイクルを考えれば、そろそろ若手組が本格的に試合に絡んでくるべき時期にきています。そういった意味で、控え組、若手組の成長・台頭、言い換えれば、誰が「ミシャの次の一手」と成りうるかがこの中断期間のひとつのテーマなのだと思うのです。ということで、今回はかなり選手個人個人にフォーカスした記事を書いてみようと思います。

 

一本目:小島秀仁を中心に

1本目は両チームレギュラー組を起用しました。といっても、元気、柏木、槙野、阿部ちゃんとコアメンバーがごっそり抜けていますから、その中でどれだけレッズのサッカーを実践できるかが大きなポイントでした。レッズは、

    興梠

  関口 マルシオ

ウメ 秀仁 啓太 ヒラ

 森脇 那須 坪井

    順大

というフォーメーション。なんといっても注目は小島秀仁プラチナ世代の旗手として活躍が期待される才能の塊ですから、このビッグチャンスをつかみ取ってほしいところです。関口は2本目のサイドで使うかなあと思っていたので、少々意外でしたが、矢島は2本目でじっくり見ようということだったのでしょうか。

試合は開始2分でマルシオのコーナーを那須がファーで合わせてあっさりと先制。バックスタンドは「ネイマールよりはやーい」の声があがっていたのを覚えています笑。その後はレッズがボールをじっくりキープする時間帯が長かったように記憶していますが、かといって湘南がひきこもっていたわけでもなく、マイボールになったらしっかりつなごうという意識が見えていました。

レッズは普段の阿部ちゃんの役を秀仁が担っていましたが、これが予想以上に落ち着いていて、特に序盤はかなり奥まで見えていたようです。逆サイドの平川へのロングパスを3,4本綺麗に合わせていました。たしか、先制点のコーナーも秀仁→平川のロングパスからだったような気がするのですが、覚えていません。

その後、レッズはGKからつなごうとしたところを啓太がミスって相手にパスしてしまいそのまま失点。焦ったのかダイレクトで相手にパスしてしまっていましたが、もしかしたら秀仁につなごうとしたのかなと思います。その辺はもうちょっとですかね。いつもと違う選手が入っていても意思疎通をしっかりしないといけないでしょう。

全体的な組み立てとしては、やはりツボが右に入るとオーバーラップが減ってしまうため、左からオフェンスを組み立てる回数が多かったかなと思います。森脇は左に入っても右とほとんどそん色ないプレーぶりで、改めて彼の存在は大きいなと感じました。大きいと言えば今日は応援が無いのでコーチングの声が良く聞こえたのですが、順大は当然としても森脇のコーチングや盛り上げの声が大きくて際立ってました。この二人は秀仁に守備のポジショニングや持ち上がり・組み立ての判断など様々なことで常に声をかけていて、やはり中堅どころがチームの中心になったんだなあと強く感じました。逆に言えば、秀仁はそういう部分で改善点があるということですね。あとは、バックラインに入ってボールを回しているときも、スペースで受けて前を向いた時も、決してダメなプレーをしているわけではないのですが、なんとなくクールに見えすぎてしまいますね。良いところでもあり誤解されやすいところかなと思います。どうせなら、もっと自分がゲームを支配する感覚でやっちゃっていいと思うんですけどね。彼ほどの能力を備えているのなら、好きなようにゲームを動かしてほしいものです。

 

前線の連携

さて、組み立てでは秀仁ががんばっていたものの、やはりスタメン2シャドーがいないため前線に収まるケースが少なく、興梠もキープで時間をつくってというような形はそこまで見られませんでした。関口のシャドーはボールの引き出し方や前の向き方にまだまだぎこちなさがあり、シャドーでの関口がマルシオや矢島を脅かすとは思えませんでした。試合は那須が相手ボールをカットした瞬間そのまま一直線にスルーパスを通し、ボールを受けた興梠が冷静に1対1を沈めて2-1。

エンドが変わった後半もメンバーは変えずにスタートしました。ウメからの早いクロスを興梠がアクロバティックなボレーで沈めてこの日2点目をあげ、終盤には永田と矢島を投入。坪井と関口がアウトとなり、二人はそのままのポジションに入りました。永田はひさしぶりの実戦復帰でしたが、さすがにスピードに乗った相手を捕まえるのは難しいらしく、投入されてすぐにイエローをもらってしまっていました。那須と永田の共存は誰しも思い描くテーマと思いますが、やるとしても永田のストッパーは攻守両面で少し難しいかなという印象です。そもそも、ケガから復帰したばかりで本来の永田のボールタッチとは程遠く、本格的な復帰はまだまだこれからという感じでした。

最終盤にはFKからきれいにボレーを合わせられ失点。那須がマークについていましたがその裏からの失点でした。矢島は何度か2シャドーで公式戦のプレーもありますから、すんなり入っていたように思います。やわらかくトラップしてから興梠やマルシオとコンビネーションを狙う場面もありました。

結局一本目は3-2でレッズの勝利。結局、4人のコアメンバーの不在が響きいつもスタメンで出ている選手たちも7割ほどの出来という印象です。前3枚、両サイド、後ろ5枚とそれぞれ密接にかかわり合いながらゲームを組み立てるのがミシャサッカーですから、そのうち4人もメンバーが変わってしまうとそれぞれのプレーの感覚もずれてきてしまうのでしょう。相手のやり方の違いもありますが、柏戦なんかと比べると少々窮屈そうにプレーしていました。注目の秀仁は時間がたつにつれ無難なプレーが目立ったように思いますが、それでもビルドアップでのパス捌きは公式戦でも十分通用しそうです。守備の経験値は試合にでないとつかめない部分もあるでしょうから、今後試合に絡む機会が増えていけばおもしろいと思います。周りの人は小島イマイチというような感想もあるようですが、僕は評価してますし期待してます。ただ前述のように、ちょっとクールに見えすぎるというか、ゲームに入れてるのかどうか不安になることもありますが。。。関口はシャドーよりもやはりウイングの選手だなという感じです。

あとは、順大が良いコーチングと安定したセービングを見せていました。自信をもってプレーしていたと思います。失点はいずれもノーチャンスですし、今日の順大は良かったと思います。

 

2本目:若手選手を中心に

 2試合目(3、4本目)はかなり目新しいメンバーでの試合です。暢久や永田充といった経験豊富な選手と10代のユースっ子が一緒のチームでしたので、試合内容としては評価しにくい部分が多かったのですが、個人個人についてはいくつか発見がありました。スタートのメンバーは、

      阪野

     矢島 広瀬

永田拓 野崎 斉藤 関根

   野田 永田充 暢久

      山岸

こんなかんじです。広瀬くんが8番を、関根君が5番を、斉藤君が32番をつけていたと思います。

ゲーム序盤から野崎が阿部ちゃんの役割で最終ラインに降りてきてはボールを受けるシーンが頻繁に見られました。野崎と永田で8:2くらいの割合で野崎がビルドアップの一歩目をやっていたと思います。野崎はまだまだ線が細いのでちょっと危なっかしく見えるのですが、ボールを足元に置いた時、秀仁同様に背筋を伸ばして前を向く立ち姿がとてもきれいでした。若手ボランチ二人はボールを足元に置いてルックアップするのが上手だと思います。この試合は1試合目よりも相手のプレッシャーも少なかったので、野崎が前を向いてバシバシと鋭いパスを通せていました。彼がボールを持った時に前線の選手から「雅也!雅也!」とパスを呼ぶ声が響き、時には鋭いグラウンダーで、時には一番奥に大胆なロングパスと、前半の45分はかなり野崎からボールを供給できていたように思います。ただし、良いタイミングで縦パスが入っても、そこからのキープやコンビネーションでやはりミスが多く、中央から具体的なチャンスにはほとんどつながりませんでした。一本だけユース斉藤君からの縦パスをCBの間の狭いスペースで受けた阪野が香川のようなトラップでGKと1対1になりましたが決めきれず。あそこの決定力は阪野には期待したいですね。

さて、中央からの崩しが無いため必然的にサイドから攻める事になるのですが、ちょっと残念だったのが永田拓也です。プレーが悪かったとは思いません。たしかにトラップや体の入れ方でもう少しな部分はありましたが、ポジショニングは間違っていなかったし、左足のクロスをあげようという意図も見えました。それなのに、自分の前にスペースがあってもほとんどボールを要求しなかったんです。時々控えめに手をあげたりするだけで、今拓也の前にボールが出れば大チャンスなのに。。。と、なぜか僕が歯がゆい思いで観ていました。ユースっ子3人が遠慮がちになるのはある程度仕方がないと思いますが、拓也はせっかく与えられたチャンスなんだからもっとアピールしてほしかったです。

ところで、今回初めてミシャサッカーの左ストッパーと左ウイングが二人とも左利きだったのですが、かなり窮屈そうでした笑。拓也のほうはまだしも野田の場合プレッシャーがかかると右足で広いスペースに持ち出せないので、必然的につなぎにくくなるんです。サイド側の利き足からは楔も入れにくそうでしたし、ちょっと野田大変そうだなと思ったのが正直なところです。ただ、右サイドで右利きの森脇があれだけやれていたのですから、そこまで問題ではないのかもしれませんが。。。もう少し右足も使えるといいかな、という感じです。

ユース組で頑張っていたのは関根君です。右ウイングで運動量も求められて大変だったと思いますが、良く動く上にロングパスを受けるトラップが非常に柔らかくて驚きました。おそらく彼は今日の試合でロングパスのトラップをミスっていないと思います。ピタッと足元に落として、何度かドリブル勝負を仕掛けていました。ただ、さすがにフィジカルでかなり潰されちゃってましたが。広瀬jrと斉藤君も同じくフィジカルに苦戦と言った感じで、ボールタッチの上手さを見せる前に潰されてたような印象です。スポット的にプレッシャーの無いところでボールを受けられればさすがの上手さを見せただけに、今後の成長に期待ですね。

永田はやはり本来のエリアである真ん中のほうが良いプレーを見せていました。結局今日は1試合目の途中からと2試合目すべてで、今日一日プレーした選手だったと思います。これから上がっていくといいですね。暢久は暑かったのがダメだったのか少々ミスが多く、前半の失点はたしか暢久のパスミスからだったと思います。(うろ覚え)暢久の前が関根君だったので、伸久がフォローに駆け上がっても関根君がうまく暢久と連携できずロスト、また急いで戻るという感じで難しいところでした。ユース組はその辺の連携や仕掛けとキープの判断なんかもこれから磨かれていくんですかね。

 

後半戦と今後にむけて

さて、後半開始から大谷と注目の逸材邦本君が、途中からは直輝と宇賀神、あとはおそらく小川君、もしかしたら茂木君も投入されたのではないかと思います。最終的な構成は

 

      関根

   直輝 邦本

小川 野崎 斉藤 宇賀神

  野田 暢久 茂木

     大谷

 

となっていたと思います。(あんまり自信なし)

邦本君は噂通りの体つきと思い切りでドリブルを仕掛けて、おしいシュートを放っていました。まだ高1ですから、本当にこれからの存在だとは思いますが、観戦していたサポもあれが邦本かーというような感じで期待値の高さはうかがえました。観ていてなんだか、左利きの峻希が元気のプレーをしてるような感覚になりました。低くて速いんですが、フェイントなんかも細かく入れて相手を揺さぶって切り替えしてと言う具合です。ちょっとつっこみすぎちゃってたかなという感じですが、そんなことは現時点では全然問題ではありませんし、才能の片りんをみせてくれたというところでしょうか。

大谷は安定したプレーを見せていましたが角度のないところから決められて1失点。直輝はいくつか怖い接触プレーもありひやひやしたのですが、やはりボールの受け方や散らし方は他のどの選手とも一線を画していましたし、本人もどこかで語っていましたが、裏を狙う動きが多かったように思います。まずファーストチャンスで裏を狙って相手DFを動かすというシャドーの動きを平然と実践していました。ああいうところが直輝のセンスなんですかね。宇賀神は復帰直後ということもあり良い時のプレーにはまだまだ遠く及ばない感じでした。とにかく出場できてよかったという感じでしょう。

結局最終的に出場選手の半分がユース組ということや夕方にかけて陽が出てきて気温が高くなったこと、試合勘の無さというところで試合はほとんど動かないまま。前半良かった野崎の縦パスもほとんど見られなくなってしまいました。受ける側の動き出しの問題もあったでしょうが、最後は少し試合から消えてしまいましたね。その代り、暢久から拓也へのロングパスが終盤にかけて4,5本通ってチャンスになっていました。拓也からのクロスはうまく中と合いませんでしたが、一気にサイドを掛け上がる拓也の魅力は最後良く出ていたと思います。終盤1トップの位置に入っていた関根君が狙い澄ましてファーに決め一点を返したものの、そのまま1-2で終了。2試合合計は4-4の引き分けでした。

 総括として、今日ミシャの次の一手が見つかったとは言い難い内容でしたが、ケガ明けの選手や今までほとんど出場機会に恵まれていない選手、注目のユース組のプレーを観ることができて、非常に意義のあるTMだったように思います。個人的には若手ダブルボランチ小島秀仁野崎雅也に期待したいです。二人ともプレーの安定感、守備時のポジショニングや状況に応じてのカバーリング、ゲーム体力など課題はまだまだありますが、今日の試合、特にビルドアップの部分でしっかりと光るものを見せてくれました。高質なボランチを輩出していくことがレッズの伝統になってほしいという思いもありますし、今後長い目で二人には期待したいと思います。秀仁については徐々に出場時間がもらえそうな感じもするのですが。。。どうでしょう。あと、岡本拓也はどうしたんですかね?今日出てくると思って期待してたのですが。彼にもものすごく期待しています。ケガなのかな。残念でした。ケガ明けの選手たちはこれからじっくりコンディションを上げてもらって、うまくいけばナビスコで試運転、7月の過密日程でリーグ戦復帰といったところでしょうか。彼らが本来のプレーを取り戻せば、それもまたミシャの次の一手の駒になるのでしょう。

 2週間レッズの試合が無かった分を一気に取り戻せた一日でした。