96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

華麗なる甲府に完敗。逆転への道筋は…。 ルヴァンカップカップ プレーオフステージ1stレグ vsヴァンフォーレ甲府

ACL組が待つベスト8への進出をかけたグループリーグ突破クラブによるプレーオフステージ。甲府との1stレグはアウェイでの一戦です。W杯期間を前にJリーグはすでに中断されていますが、今節と来週の2ndレグ、そして水曜日の天皇杯が本格中断前の最後の試合となります。それはいいけどなんでここだけ連戦にすんねん。

 

両チームのスタメンとフォーメーション

スタメンは下記の通り。

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浦和側控え;福島、荻原、白土(2種)、森脇、武富、直輝、池高(2種)

浦和は今節までのプチ中断期間で練習してきたと噂の4-4-2を採用。W杯本戦に槙野と遠藤が、トゥーロン国際大会に出場しているu21チームに先日19歳になったばかりの橋岡が飛び級招集されており、浦和は最終ラインからレギュラー3人を引っこ抜かれていますが、それでもCBにマウリシオと岩波を用意できています。2トップには興梠と武藤を組ませ、左SHに李を起用していますが、武藤と李は初めからポジションを入れ替えながら戦う前提なのでしょう。

一方の甲府は上野監督に変わってから、初戦を引き分けたもののその後4連勝と波に乗っています。フォーメーションは3-4-2-1で、基本はパスとコンビネーションのサッカーだと思いますが、直近のJ2リーグ戦では大分のビルドアップを完全に分断して6-2の大勝利をあげるなど、前線からのプレッシングにも自信をつけ始めている感じ。ちなみに、1トップに金園が入っていますが、本来はここにジュニオール・バホルという選手が入ります。1試合しか見ていないのですが、身長もそこそこあり、手足が長くしなやかな選手なのですが、瞬発力とスピードが特徴という感じの印象でした。チーム内得点王の彼の不在がどう響くかも試合のポイントとなりました。

甲府に限らず、3-4-2-1を採用しているチームはセットの守備では基本的には5-4-1で構える形を取ります。ピッチの幅を5枚+4枚の壁で埋めてしまう人海戦術ですが、本来のシャドーの守備タスクをどこまで整理・徹底できているか、またシャドーに入る選手がどれだけ守備タスクを遂行できるかが守備の安定度に大きく関わってきます。5-4-1で構える際は甲府のシャドーは浦和のSBをケアする役割ですが、浦和の最終ラインにプレッシングをかける場合、1トップでは浦和の2枚のCBに対して数的不利となるため、シャドーがプレッシングに参加することになります。すると、シャドーが見るべきスペース(主に相手SBのポジション)が空きますが、ここを塞ぐためにWBが最終ラインから飛び出せば、その分自軍3バックの横のスペースを使われてしまう、というのがありがちな泣き所ということになります。

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開始1分で明確になった甲府の優位性

その狙い通りかどうか、浦和のほぼファーストプレーでサイドからの前進を見せます。開始20秒、左サイドで宇賀神が甲府の右シャドー森からファールを受けると、マウリシオが早いリスタートで中盤に降りてきた武藤に。森が守るべき浦和左サイド後方のエリアで森を置き去りにするとことで左サイドから一気に前進、武藤→李→武藤でサイド深くまで侵入するとCKを獲得したのでした。

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浦和としては、このように甲府のシャドーをマウリシオや岩波のところで剥し、SBやSHの持ち上がりで置き去りにすることでサイドから甲府の5-4-1守備を攻略していくことを狙っていたのではないでしょうか。特にミシャサッカーに長年取り組んできたメンバーとしては、自分たちの弱点だった相手SBの前進からのブロック攻略をイメージすることは比較的容易だったことと思います。

浦和のこの目論見にヒビを入れたのは直後のプレーでした。早速獲得したCKでの先制を狙い、浦和は岩波、マウリシオを含め7人をゴール前へ。一方の甲府もいきなりの失点を割けるために11人全員でゴール前を固め、カウンター要員を一人も残さずに専守防衛を図ります。長澤のボールがニアで跳ね返されると、これを菊池が競り負けて自陣側にボールが転がり、うまい具合に駆け上がったエデルリマへ繋がれます。この時点で浦和の被カウンター要員は宇賀神一人と守備となっているのに対し、甲府はリマと並んで実に5人が全力で浦和陣地に殺到します。最後はゴール正面でGKと勝負になった金園がシュートを外して救われましたが、浦和は開始1分で大ピンチを背負っただけでなく、甲府トランジションの速さ、ボールを縦に運べる選手を要するカウンターの脅威、浦和の選手実に6人が一瞬で置いて行かれたフィジカルとメンタルの差を痛感したのではないでしょうか。このシーン、後付けで言えば菊池が最初の競り合いのところでファールしてでも潰せば良かったのでしょうが、本質的にはこのカウンターを潰せていたとしてもいつか同様のカウンターをくらうかプレーの中で上記の差を認識していたはずで、このカウンターについては甲府が見事、そして外してくれてありがとうというほかありません。この象徴的なカウンターを受けて以降、浦和の選手たちは甲府の鋭いカウンターを警戒しながら試合を進めることになります。しっかしエデルリマは早くて強い化け物でした。

 

浦和のビルドアップと甲府の守備

ワンプレーで甲府の強さを認識したと言っても、試合は浦和がボールを持つ展開となりました。浦和のビルドアップは2枚のCBがボールを保持し、青木と三角形を作るやり方。SBは早い段階で比較的高い位置を取りボールを待ちます。時々、青木が2枚のCBの脇に落ちることで3枚回しとなり、SBへのパスコースを作る素振りが見られました。一方もう一枚のCHである長澤はかなり高い位置をとって興梠に近づきます。先週の練習やTMでも長澤が興梠の近くに入っていくことで興梠を孤立させないという意図が伺えましたので、素直にそのような狙いだったのでしょう。興梠を一人にしない問題は3-4-2-1からの卒業を目指した堀政権でも主要な課題であり、オリヴェイラも同じ課題に向き合うことになっているようです。また、SHの李とマルティノスが比較的インサイドにポジションをとるシーンが見られたのが特徴的で、鹿島的にSBに高い位置を取らせて攻撃に絡ませる意図があったのかもしれません。これを図示すると下記のようになります。

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この時点で、浦和のビルドアップは前後分断状態となっています。4バック+青木の5枚と、2トップ2SHに長澤が寄り添う前の5枚は、甲府の2列目(5-4-1の4)によってきれいに彼我のものとなっています。さらに苦しいことに、上述の通り、浦和としては相手シャドーが食いついたところからSBを使って前進するのがスムーズなわけですが、2CBがカウンターを嫌ってか低い位置でボールを回しており、高い位置に出ていきたい(出ていくのがコンセプトと思われる)SBとの距離が開いています。これをつなぐ役割は青木一人が担うわけですが、青木を足しても甲府の1トップ2シャドーと3on3の状態で数が合っており、プレッシングを数的優位でかわすことはできません。

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甲府の守備は浦和のビルドアップがミドルサードに入ってきたところから。最初シャドーは縦を切りつつ浦和のSBにボールが入ってもすぐ寄せられる位置で構えています。ここから、青木が降りたり浦和のCBがどちらかのSBにパスを出せる位置まで出てきたりするとシャドーがプレッシャーをかけていきます。この時浦和のCBは同サイドのSBか振り返ってGKに戻す以外のパスコースを持っていませんので、SBにパスが入った瞬間に自信を持って甲府のWBがケアに出てきます。

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この時点で浦和のSBは後ろ向きにボールを受けており、狙いたいSBからの前進は不可能です。もたもたしていれば甲府のシャドーが鬼のプレスバックではさみに来ますので、こうなると奪われないにしてもボールを前進させることはできなくなります。カウンターの怖い浦和は、なかなかボールを前進させられないじれったさも相まってか、選択肢がなくなったら早めに蹴っ飛ばして裏を狙うという感じになっていきました。ちなみに、甲府の守備は片方のサイドでシャドー+WBを使ってプレッシャーをかけていても、逆サイドのシャドーが絞ってボランチと2枚で中央を固めており非常にバランスが良かったのが印象的でした。

 

苦しむ浦和、ささやかな改善と新たな問題

上記の通りなかなかリズムをつかめない浦和は、見かねて武藤や興梠が中盤まで下がってボールを引き出しに降りてきます。2枚のCBに青木、そして武藤や興梠が降りてきたことでいくつかパスコースは増えましたが、その後どのように前を向くか、甲府の第2プレッシャーラインをどう突破し、最終ラインを動かすのかというところまでは全くデザインされていませんでした。2枚のCBは相変わらず低い位置に留まりたがり、SBは両サイドに張り付いてボールを待つばかりで、一度はボールを受けた武藤や興梠も中盤の密集の中で下手にキープして奪われるわけにもいかず、シンプルに後ろにはたいてやり直すほかありませんでした。

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時折岩波から縦パスが前線に入ることがありましたが、ゴールから遠く、また甲府の最終ラインは揃って迎撃態勢が整っている状態で、浦和がゴール前にクロスを送るときには甲府ボランチの島川、佐藤までも戻ってきており、具体的なチャンスを作り出すことはできませんでした。

さらに悪いことに、中盤に武藤や興梠が降りてきたために、前線の動きだし、裏抜けが減る一方となってしまい、甲府の最終ラインが前向きに守備ができる状態が整っていきました。こうなると浦和の一か八かのパスはほとんどがカットされ、放り込んでも数的優位をベースに弾き返されるかGKに収まるばかりと、浦和は攻め手を失ってしまいました。

 

金園英学を中心とした攻防

浦和の苦し紛れのボールを回収すると、次は甲府のターンです。結果的に、ジュニオール・バホスの欠場に伴う金園の起用は大当たりとなりました。甲府J2リーグ戦ではボランチの島川を中心に細かいパスを繋ぎつつアタッキングサードでの小塚、堀米、今節であれば森といったシャドーの選手たちの質で攻撃を仕掛けているようですが、今節は、とりわけ序盤においては最終ラインをあまり上げずに潔くカウンター狙いという風に見えました。浦和との個人能力の差、戦力差を考えてのことだったと思われます。となると、甲府は無理につながず、中盤でプレッシャーを受けると素直に最前線に蹴りこみます。そこにいるのが金園で、彼がボールを繋げれば甲府は前向きに攻め上がることができます。甲府の良かった点は金園が競り合う位置で、浦和陣地内(高い位置)ではなく、ハーフライン付近(比較的低く、甲府の選手がサポートしやすい位置)で金園に競り合わせたことだと思います。金園が低い位置まで下りてくることで浦和のCBがついていけず、金園が比較的フリー、もしくはプレッシャーを受けずにボールに絡めたことと、甲府は2枚のボランチに加えてシャドーまでも彼のフォローに入れるのに比べて、長澤が前線のサポートに出ている浦和はセカンドボール競争に参加できるのが青木くらいしかいませんでした。

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結果、前半だけで約10回金園にボールが入るか競り合う場面があり、そのうち浦和が明確に彼を潰せたのは2回だけでした。ここをポイントにすることで甲府は安全にボールを前進させるだけでなく、長澤やSBが高い位置を取ろうとすることによる浦和のネガティブトランジションにおける移動距離の長さをも利用し、決定的チャンスを複数回、しかも再現性を有する形で作り出すことに成功し、試合を支配しました。象徴的なのは序盤に浦和が肝を冷やしたシーンで、自陣でボールを持った湯澤が引いてきた金園へ浮き球のパス。それまでも散々キープを許していた岩波が食いつくと、まさかの金園スルーで後ろの小塚が完璧な胸トラップで前を向き、動き直した金園へスルーパス。菊池が粘ってクリアするも、マウリシオに当たったボールがバーに直撃。一連の動きの迷いの無さは甲府の調子の良さだけでなくデザインされた攻撃の狙いが見て取れました。

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その他の甲府のオフェンス戦術

金園が中盤に降りてきてポイントを作り、それを中盤の4枚が拾って前向きに仕掛けることによって、甲府はリズムよく攻撃を仕掛けていきます。特徴的だったのが金園やシャドーをポイントにした大外狙いの攻撃で、前半4分に見せた崩しが特徴的でした。

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金園が中盤でボールを収め、中盤でボールを前向きに回収すると大外からハーフスペースに入り込んだ森へ。森には浦和SBの宇賀神が激しく寄せて前を向かせませんが、森からの落としが甲府ボランチ佐藤に繋がるとダイレクトで大外裏へ走り込んだWBの湯澤へ。湯澤のクロスはへっぽこで本人も頭を抱えていましたが、エリア内に金園が走り込んでおりクロス次第では可能性を感じさせました。このハーフスペースで受けるシャドーにSBが食いついた際のWBの大外裏抜け攻撃は美しくデザインされていたと思います。

ちなみに、甲府のシャドーは小塚が中央気味にプレーする一方で森はサイドに流れていくことが多く、これが本人の特性(無意識)なのか狙いなのかわかりませんが、宇賀神が森を捕まえざるを得ず、湯澤がその後ろから出てくるために1on2状態で困ったり、その湯澤を見るためにSH(李か武藤)が戻らなければならず浦和左サイドが押し込まれたり…といった状況に繋がっていました。

 

2つの失点シーン

甲府の先制点はCKから。報道によると浦和の守備陣がCK準備の間に給水を取っている間にクイックでショートコーナーを許したことが失点の要因ということでした。

セットプレーでの油断は細部にこだわるオリヴェイラの逆鱗に触れたことでしょうから選手には反省してもらうとして、このゴールも遠因は金園が中盤に降りてきて起点をつくるプレーを潰せなかったことでした。この直前のプレーとなった金園とマウリシオのマッチアップで潰すことができず、フリックされたボールが森に渡ると、これをファールで止めてFK。FKがエリア内に蹴りこまれたのをクリアしたことで生まれたCKからの失点でした。浦和の選手たちとしては(特にビルドアップも守備の起点潰しも上手くいかなかった守備陣の選手たちとしては)、攻守にわたってリズムが作れず、思い通りにいかない中で一度落ち着きたかったのかもしれません、実際、甲府の決定力不足に助けられながらとはいえ35分までなんとか無失点で我慢してきたところだったので、熱さもあり集中力が続かなかったのかもしれません。これは選手を盲目的に擁護したいわけでなく、浦和は(オリヴェイラは)この状況をもっと早く改善すべきだったというのが個人的な意見です。後ろの組み立てはかみ合わず、中盤に降りて起点をつくる金園をどちらがマークし潰すかもはっきりしないまま35分間状況を放置しながら失点を免れるというのはなかなか難しい注文ではないでしょうか。

また後半5分の2点目は更に悪く、浦和陣地でのスローインを素早くエリア内に放り込まれるとフリーの青木が真上にクリア、それを後ろの岩波がもう一度中途半端にヘディングし、ゴール前で金園に拾われる失態。落としを小塚にうまく蹴りこまれ、まあこれはどちらがJ2なのかと言われても仕方のない失点を喫してしまいました。集中という意味ではここもはっきりとCKにしてしまえば良かったのですが、攻守にリズムを失ったままでしたので、普段できるプレーができない、選択しないプレーを選択してしまう、ということがあるのかもしれません、それにしてもひどい失点でした。

 

もがく浦和、万全の甲府

その後も浦和がビルドアップの方法論を変えないことから、同じような展開が続きます。うまくいっているだけに集中力が続く甲府と、うまくいかない故に考えることが多く悩む浦和という感じの時間帯が終盤にかけて続きました。目を引いたのは甲府の中盤の4枚の積極性と献身性で、シャドーのプレスバックに加えて島川、佐藤が守備の強度を保ちつつも攻撃面では細かいパス交換や味方のパスコースを作るポジショニングを継続していたのが印象的でした。

60分には李に代えて久々の公式戦となる森脇が登場。浦和は中盤を長澤、青木、森脇と並べた4-3-3に移行します。

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試合中のシステム変更ですのでどこまで細かい狙いがあったかは不明ですが、噛み合わせ的に浦和の中盤の3枚が甲府ボランチ2枚を剥しやすくなったため、この時間帯からは甲府の最終ラインをプレーさせる場面が増えていきました。中盤の3枚を起点にサイドで宇賀神や武藤が絡むことでクロスまで到達する場面が見え始め、直後に久々のCKを獲得しています。

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その後も森脇が中盤で前向きにボールを持つ機会が増えていき、甲府の中盤を寄せての逆サイドでのWG勝負を狙ったり、(途中からマルティノスが左に入っていました)、甲府の最終ライン裏を狙ったりと試合が作れそうな雰囲気になっていました。しかし、さすがに復帰戦ということなのか残念ながらパスの精度やタイミングが合わず上手くいきません。その後は長澤が少し高い位置に入ってマウリシオ、岩波、青木、森脇がボックスを形成してビルドアップ。ここにSBも絡んで前進、という風にいけばよかったのですが、SBとの距離感は相変わらず、しかもSBに入った後にシャドー+WBに早い段階で捕まってしまうというのは変わらなかったため、ゲームを変えるほどの効果はなく、要所で甲府が鋭いカウンターや美しい連携を見せていく展開となりました。

浦和はその後菊池に代えて荻原を、長澤に代えて武富を投入しますが根本的な解決には至らず、その後も攻守に人数を書ける甲府が盤石なゲーム運びを見せ、完璧とも言える2-0の勝利を挙げたのでした。

 

2ndレグをどうするか?敗因の分析

どちらがJ1だったのかと言われるほどの無残な敗戦(甲府にしてみれば鮮やかな勝利)となった試合でしたが、ここでまだ終わらないのがH&Aのカップ戦。週末には埼玉スタジアムでの2ndレグが予定されています。2ndレグでどのように戦うのかはオリヴェイラのみぞ知る、なのですが、「どーせ負けるだろ」とサポーターが諦めるのも癪なので、今節の敗戦の構造から打倒・甲府を考えてみたいと思います。

まず、選手のコンディションについては、確かに今節の前の期間に2部練習を詰め込み負荷をかけていたということで、体が重かったのは事実だと思います。オリヴェイラ監督は認めませんでしたが、甲府の上野監督の浦和の選手のコンディションへの言及は正直な感想ではないでしょうか。オリヴェイラ監督が甲府の力を見誤ったのか、選手のコンディションを見誤ったのかはわかりませんが(おそらく前者)、いずれにしろ2ndレグに向けては万全のコンディションを整えてくるはずです。天皇杯が水曜日に予定されており浦和サポとしては不安が募りますが、水曜日の天皇杯甲府も同条件、次はコンディションは言い訳にはなりません。

試合の展開上最大のネックとなったのは金園を潰せなかったことでしょう。金園が(キープであれフリックであれ)甲府の攻撃の起点となったことが甲府の(物理的に)前向きなプレーの基盤となっていました。よって、2ndレグはなにがなんでも金園を潰すとともに、金園の周囲でセカンドボールを拾わせないことが重要です。また、甲府が中盤でボールを握った際の島川と佐藤の2枚のボランチがお互いを近い距離感でサポートし合うことをベースとしたパス交換を阻止し、甲府の中盤を沈黙させなければなりません。
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次に、ビルドアップにおける前後分断を改善する必要があります。長澤を2トップの近くでプレーさせる狙いは結果的に逆効果だったと言わざるを得ません。また、両SBが早い段階で高い位置を取るポジショニングについても、もう少し柔軟性を持たせるべきでないかと思います。今節のビルドアップは起点となるCBからの選択肢があまりにも限られており、それゆえ甲府にボールの動かし方を予測されてしまいました。2ndレグでは2点のリードを持ったうえで埼スタでのアウェイゲームということで、甲府はべた引きしてくることも予想されますが、いずれにしろ90分放り込むわけにもいかないので中盤の4枚、最終ラインの5枚の壁を再現性高く攻略・突破していく必要があります。

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3つ目に、最終局面での質勝負で優位に立てなかったことがあります。今節はとにかく両SHに入った選手に良いボールが入りませんでしたが、入ったとしても局面の勝負で優位性を見せることができませんでした。特に浦和の右サイドでのマルティノスvsエデルリマの勝負では、躱してクロスを入れたシーンはありましたが、1on1の局面ではエデルリマの体の強さと反応速度に圧倒された感がありました。とはいえマルティノスからのクロスは浦和の重要な得点パターンのひとつですので、簡単に外すわけにもいきません。彼を活かす術を準備するとともに、エデルリマを困らせ、重要な局面から追いやる必要があります。

 

2ndレグをどうするか? 大逆転への道筋(案)

これらの敗因への対処を単純に考えると、3バックに変更することでマウリシオと金園などマッチアップを明確にすることでゴリゴリタイマン勝負×10に持ち込んでいくのが一つの方策に思えます。

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ミラーゲームに持ち込むことでJ1とJ2の質的優位(あるはず)を前面に押し出し、甲府を制圧する、という考え方です。ただし、ミラーゲームを考える際は、左CB(槙野のバックアップ)不在という難点に対処しなければなりません。

ビルドアップを考えると、3バックでも4バックでも森脇をスタメン起用したいところ、適正ポジションの右CBを彼に与えると、これまで3バックの右で力を発揮してきた岩波のポジションが無くなります。岩波の適正を考えると次点で3バックの中央ということになりますが、そうすると金園とのマッチアップが必須となります。浦和でのパフォーマンスを見る限り、岩波はマークする選手が下がってボールを受けに行く際の対応が中途半端になりがちで、ノーファールで潰すことはおろか、ファールもできず受け渡すことも難しいという状況をよく目にします。今節の出来を見ても、岩波vs金園を明確にすることは得策とは言えず、できれば金園の面倒はマウリシオの無表情ディフェンスでみてもらいたいところです。そうすると左CBに岩波を置くということになりますが、おそらく彼がこのポジションに入るのは初めてになってしまいます。(調べたのですが、今期3バックで戦った試合すべてで槙野がフル出場していました。)

また、ミラーゲームでは必然的に甲府もマークマンをはっきりさせることができるメリットを享受します。甲府としては2失点までは負けないため、割り切ってべた引きするという選択肢も取り得ます。これを考えると、べた引き+マッチアップでビルドアップすらうまくできない、という状況はあまり好ましくありません。ただし、1トップ2シャドーに前線の選手を起用できるため、最終ラインの質勝負では勝ち目がありそうです。問題はミラーゲームでもビルドアップできるだけの質を担保できるかで、柏木は叶わずとも阿倍ちゃんの復帰が必要になりそうです。

次に、今節でも若干の光を示した4-3-3フォーメーション。個人的にはどちらかというとこちらが有力だと考えています。ポイントはビルドアップを任せたい森脇をどこで使うか。個人的には、森脇を右SBで起用し彼本来のパフォーマンスを期待したいところです。その代り、今節右SBだった菊池を右SHで使ってみてほしいと思います。後ろでいろいろ考えながらプレーするよりも、前めで猟犬のごとく走りまくるプレーのほうが彼に向いているのではないでしょうか。浦和の右サイドに立ちはだかるエデルリマに菊池をぶつけ、菊池のアグレッシブ・バイブス(フリーラン)でリマを骨抜きにする作戦に期待したいところです。菊池なら前線からでも守備に戻れるため、4-3-3から守備時に菊池が戻って4-4-2で守ることもオプションです。

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また、中盤では長澤、青木に加えて武富か武藤、もしくは直輝をトップ下起用することで甲府の2枚のボランチに対する優位性を作ると共にセカンドボールを回収していきたいところ。左サイドはマルティノスvs今節先制点のパフォーマンスで全浦和サポをイラっとさせた今津の対決。粗っぽく激しい守備が信条の今津がマルティノスに少しでも触れれば即FKが獲得でき、マルティノスの高精度FKに興梠が合せての得点が見込めます。真面目に考えると左サイドでプレーする場合、マルティノスは縦に抜きにくいからか近くの味方をシンプルに使ってくれる印象があり、宇賀神のサポートがあればより選択肢を多く持つことができそうです。

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とにかく勝ちあがるには攻めるしかない浦和。甲府はある程度引いてからのカウンターを狙ってくると思いますが、恐れずに点を取りにいかなければなりません。甲府は押し込まれると人海戦術で5-4ブロックで引きこもりますが、肝心の3バックとGKのクロス対応が不安定な部分があり、盤石とは言い切れないはず。2ndレグをホームで戦えるのは昨年のACLの良いイメージがあるだけに、諦めずに戦いベスト8進出を勝ち取りたいところです。

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。