96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

強いチームには頼れるベテランがいる。 Jリーグ第19節 vs川崎フロンターレ戦 分析的感想

さてさて、前節首位広島を撃破し勢いに乗りたい浦和。今節は3位につける前年王者川崎との対戦です。ここで勝てばオリヴェイラ体制の確立とともに自信を深められる重要な一戦。華麗なパスワークと中村憲剛を中心としたクリエイティブな攻撃陣を抑えられるのか、また前回の対戦に続いての勝利でリーグダブルを達成できるのか、注目の一戦となりました。

 

両チームのスタメンと狙い

スタメンとフォーメーションは下記の通り。

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浦和側控え:福島、荻原、森脇、マルティノス、阿部、菊池、李

 

浦和は中3日ながら前節と同様のスターティングラインナップ。台風の影響で前節中止となった川崎は休養十分の中10日で、この時点でコンディションには大きく差がある対戦となっていました。それもあってか、浦和は川崎の攻撃を受け止めるためにフォーメーションを整理し、守備時に武藤をCH(ボランチ)の位置まで下ろして5-3-2の陣形で守るような形をとっていました。これまでは、浦和の5-4-1守備の場合、シャドーの一角に攻撃的な外国人選手が入った際に求められる守備タスクを完遂できず、また5バックが相手の攻撃を受け止めることに集中するあまり相手にプレッシャーがかけられなくなり、結果的に大外で余る相手SB等をボランチがケアするためにバイタルエリアが空いてしまうという難点がありました。5-3-2を採用すると、興梠とファブリシオの守備タスクを軽減しつつも中盤を3枚で守るために中央を比較的埋めやすく、多彩なパスワークや連携で中央を攻略してくる川崎を迎え撃つにはこの中盤中央の厚みが必要という判断があったのだと思います。

一方の川崎。スタメンには大卒ながら抜擢されている守田や将来が楽しみなドリブラーである長谷川などの若手選手に加えて、中村憲剛とやっかいな仲間たちことお馴染みの面々が揃っています。一方で阿部がベンチ外。これまでも彼の質の高い動きに苦労することが多かったため、浦和としてはラッキーだったかもしれません。それでもベンチには齋藤学や「浦和戦で頻繁に謎のスーパーゴールを決めるために浦和サポからの評価額だけ異様に高い男」こと森谷賢太郎など嫌な選手が控えており、さすが昨年の王者の戦力といったところ。彼らの戦いぶりとしては小細工無用の攻撃サッカーであり、多くを語る必要はないでしょう。

 

「想定内」の浦和、「想定外」の川崎

結果として試合を総括すれば、90分のうち80分くらいは浦和が守っていたのではないかというほど浦和は守らざるを得なかった試合でしたが、それは浦和の想定内。一方で川崎は想定外にも、試合開始早々に浦和に先制点を許してしまったのでした。

浦和の先制点は岩波のフィードから。一度攻め込んだ後のやり直しでGK西川までボールを戻すと、西川からボールを受けた岩波が川崎のSB裏へフィード。高精度のフィードが裏抜けした武藤にぴったりと合って武藤が抜け出すと、すかさず中央に走り込む興梠。GKチョンソンリョンが距離を詰めた瞬間、力を抜いたタッチで芸術的なワンタッチループ。試合最初の決定機にも抜群の落ち着きを見せる興梠のゴールで早々に浦和が先制に成功したのでした。

川崎としてはこの失点はさすがに想定外だったと思います。もちろんハードワークと堅守を武器に勢いを増している浦和相手の今節、長い時間点が入らず焦れるような展開も予想していたはずですが、ファーストチャンスでここまであっさりと先制されるという展開は想定にはなかったのではないでしょうか。しかし、浦和側からすればこの得点は十分に想定内、もしかするとデザインされた狙い通りの得点だったかもしれません。まず、川崎は攻撃時は4-2-3-1をベースに中盤の選手が縦横無尽にポジションチェンジしつつ相手に迫る流動的なサッカーをしますが、守備時はトップの小林悠とトップ下の憲剛が並ぶような形で相手最終ラインにプレッシングする4-4-2守備がデフォルトの形です。注目すべきは最終ラインの守備の仕方で、川崎はボール保持を信条として試合を支配するフィロソフィーを持つからか、守備もかなり積極的かつハイリスクなプレッシング重視の守備を実施します。

具体的には、浦和のWBへの対応はSBが担当します。川崎は小林、憲剛のファーストプレッシングに連動するように両SHも積極的に高い位置、今節で言えば浦和の3バックまでプレッシングに行くことを厭わないため、それに連動するように全体が前向きの守備になり、結果的に浦和WBへのマークは最終ラインからSBが飛び出して対応します。例えば前節対戦した広島であれば、基本的にはWBにボールが入ればSHの選手が戻って対応し、4バックは最終ラインでゴール前を固めます。ここに浦和の狙いがあり、WBの対応にSBが出てくれば川崎の最終ラインはCB2枚、SBの裏には走り込むスペースが生まれます。浦和は開始早々にも橋岡が自分に対応すべく前に出てきた車屋の裏にボールを蹴り込んだシーンがあり、チームとしてSB裏へボールを送り込むことを共有していたようでした。そして、開始6分にして「想定通り」SB裏のスペースに走り込んだ武藤にボールが渡り(しかも谷口があっさりと武藤のマークを外しており)、川崎の最終ラインを攻略することに成功したのでした。

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それにしても、先制点の場面は岩波のフィードが良かったと思います。実は岩波は前節も広島のライン裏へ走り込んだ興梠にあわやのフィードを合わせており、遠藤移籍後のポジションを掴もうと武器である中長距離のキックをアピールしていました。まだまだレギュラーとしてはプレーに遠慮が感じられることと、前節は活躍した選手が多くゴールも展開も多彩だったために記事で触れることが出来ませんでしたが、このフィードで自分なりの色を魅せることができたのではないでしょうか。これまでも出場すればフィードや縦パスで特徴を見せてくれていましたが、今後は時折異常な軽さを見せる守備に加えてビルドアップ能力、フィード砲台としての能力を存分に発揮してほしいと思います。ちなみに、56分にも岩波のサイドチェンジから柏木のシュートまで持ち込むことができています。川崎側としては、本来最前までプレッシングに出る必要のある長谷川が中途半端に岩波を自由にさせたことと、SB裏は泣き所なのでCB谷口になんとかしてほしいということだと思いますが、この場面では対応が遅れてしまいました。

ということで鮮やかな先制パンチを決めた浦和はその後も川崎のSB裏をポイントに試合を進めますが、時間が経つにつれて次第に川崎の猛攻に晒されることとなりました。

 

川崎の多彩な攻撃〜中央こじ開け講座〜

川崎の攻撃は非常に流動的かつパターンが多彩で、なかなか簡潔に説明するのには馴染みません。おおまかなルールとしては守田が中盤の底から最終ラインに落ちて最後尾のコントロール役を担うことが多く、状況に応じて大島、憲剛が中央から降りてきてボールに触ります。両SHはボールを持って前を向けばドリブルで仕掛けられるタレントですが、基本的には中央に入ってくことを厭わず、サイドに張って待っていることは多くありません。もう一つの特徴としては縦のパス交換、パスの出し入れが非常に洗練されており、縦につけてリターンを受けて展開というプレーが多いのが特徴で、これに併せてあらゆる選手がドリブルでボールを運んで行くプレーを多用することも特徴です。

浦和は前述の通り5-3-2でブロックを作ります。浦和としてはとにかく中央突破を防がないといけないために中盤中央に3枚を用意しており、さらには全体が押し下げられた場合にボール配給の起点となる川崎のボランチを2トップが下がってケアするところまでを約束事として準備していたようです。

川崎が試合を支配し始めたのは15分以降。まずは5-3-2の泣き所となる2トップ脇および3枚の中盤の脇で起点を作り、浦和の守備のスライドがずれたところを起点に縦の出し入れを混ぜつつ中央からサイドへの展開を狙います。

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17分には上記に加えて両SBに高い位置を取らせることで幅を確保し、その分SHが中央に入り込むことで浦和の中盤に対して数的優位を確保し逆サイドへ展開、最後は外に構えた長谷川のドリブル勝負からのクロスに小林が合わせてあわやのシーンを作りだします。

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さらに19分以降は右SBのエウシーニョが高い位置を取るだけでなく自らドリブルで浦和の中盤3枚の脇のスペースへ侵入する動きを織り交ぜ、浦和の守備を攻略していきます。個人的にはこのエウシーニョの中盤化、ドリブルでの直接的なバイタル突撃が最も厄介でした。浦和は中盤3枚が数的同数に晒される上にスライドの隙間に憲剛や大島が入ってくるスペースを作られてしまいます。

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こうなると浦和は最終ラインが防波堤となり、川崎の縦パスやドリブルでのエリア侵入を防いでいかなければなりません。浦和としてはこの時間帯は足が動くこともあり縦パスを引っ掛けたりと最終ラインで防ぐことが出来てしましたが、ボールを奪った後の川崎SB裏という狙い目がはっきりとし過ぎていたか、ロングカウンターを一発で狙うボールが多くなり、自分たちの時間が少なくなってしまったのが残念なところでした。2トップが数的不利でロングボールを収めるにも限界があり、なかなか自分たちのボール保持の時間を確保出来なかったことが後半早い時間帯の消耗に繋がったかもしれません。

その後も川崎に押し込まれつつも時々攻める時間を得る浦和。一旦ボールを保持すると川崎の4-4-2守備はそこまで強度もなく、狙い目のSB裏は相変わらず使いやすいという状況でした。ただしトランジションがあれば相手にもチャンスがあるということで、30分には憲剛の芸術的なワンタッチパスに抜け出した小林がマウリシオを交わしシュート、36分にはラインを上げようとした瞬間に小林に抜け出され(オフサイドっぽかったですが)西川との完全な1対1に持ち込まれますがこれは西川が神セーブ。45分には憲剛がバイタルを攻略しCKを与えてしまうとこれを小林悠がドンピシャで合わせてクロスバー直撃など、浦和が守りきれていたかというと非常に怪しかったことは認めなければなりません。中盤を3枚で守ることでスライドに問題があり、基本的に90分間安定して守ることが非常に難しい5-3-2を採用しているとはいえ、2トップの守備意識を強めており後ろ5枚も個人能力の高い選手を揃えている浦和に対して、これだけのチャンスクリエイトができる川崎はやはり攻撃に関しては別格と思わされる前半でした。とはいえ、例えばエウシーニョのような攻撃性能を持つSBをあれだけガンガン中盤化して攻めるのも川崎か名古屋かくらいのものだと思いますが。

 

早くもパターン化した守備の補強とベテランの価値

後半に入っても流れや構造は大きく変わりませんでした。それどころか蓄積した疲労からか川崎のパスと運ぶドリブルを織り交ぜた中盤攻略にどうしても中盤3枚がついていけなくなる浦和。50分にはついに中央で3枚が分断され右サイド高い位置に進出したエウシーニョからのクロス、逆サイドで拾われると最後は中央に折り返してのミドル、54分にも中央を突破されるなど守備のフィルターがかからなくなってしまいます。

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川崎は立て続けに57分に小林がフィードを落として家長のミドル、60分にはエウシーニョの中盤進出からバイタルが空いてしまい中央でミドルを浴びてCK。そのCKではエリア外の大島をフリーにしてしまいあわやのミドル、直後の62分にも中央を攻略されハーフスペースに走り込んだエウシーニョに合わせられますがギリギリで宇賀神がクリアするなど、浦和の守備網は完全にボロボロにされていました。この時間帯柏木は何度もベンチにSOSを出しており、コンディションの差と川崎の質の高い崩しに晒されて精神的にも辛い時間帯だったと思います。ただ実は、柏木が我慢できずに持ち場を離れているだけという場合もあるのですが。極めつけに64分の橋岡。川崎攻勢の流れを切るために浦和がボールを保持しリズムを落としていた中で、なんでもないバックパスをミス。ゴール前で小林に奪われてしまい西川との1対1を招いてしまいました。橋岡はこれまでの連戦だけでなく、U-19代表の活動でA代表に帯同してロシア遠征するなどルーキーながら今シーズンほとんど休みなしで活動しており、暑い中で体力、集中力が限界だったのかもしれません。

ここまで悪い状態であれば失点しても何もおかしくないような状況でしたが、このピンチも西川がスーパーセーブ。それに呼応するようにオリヴェイラは役割過多気味の武藤に変えて前節同様に阿部を投入。さらに大ミスの動揺からかボールロスト後のファールでイエローをもらっていた橋岡を下げ、70分には森脇を右WBで送り出します。この采配、そしてそれに応えたベテラン勢が試合を変えました。

阿部と森脇投入から、浦和は守備を5-4-1に変更。ファブリシオをトップに据え、柏木を右シャドー、興梠を左シャドーに置いた4枚で中盤を埋めにかかります。これによって、攻め上がってくる川崎の両SBの対応をシャドーが見るという原則をはっきりさせ、柏木、青木がボールにアプローチしても中央に最低限阿部が残ることでバイタルエリアを埋めやすくなりました。橋岡→森脇の交代は若干のイレギュラーもあったかもしれませんが、武藤→阿部による中盤およびバイタルエリアの引き締めと柏木、青木の運動量のサポートはここ数試合で定番化してきました。70分前後の苦しい時間帯で、高い対人能力、危険なスペースを埋める危機察知、さらにはボール保持におけるパスワークまでこなせる阿部を投入できることは浦和の大きな強みと言え、オリヴェイラとしては非常に有り難い存在に違いありません。

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一方で、ファブリシオがなかなかボールをキープできないこと、守備に体力を使った中盤が前に出ていけないことによって浦和の攻撃はほとんど停滞していました。前節までのパフォーマンスからすると期待外れだったファブリシオですが、さすがに日本の夏への適応が十分でないかもしれません。ここ3試合の連戦で体力的に厳しかったかなと思います。ただ、オリヴェイラに喝を入れられたこともあり守備に戻る意識を失わなかったことは彼のチームプレーヤーとしての質が見えたのかなとも思います。オリヴェイラのサッカーは前線での複雑なコンビネーションを要求しないため、ズラタンやナバウト、マルティノスなど個人で勝負できる外国人選手は使いやすいのではないかと思いますが、一部の選手には怪我もあってこの様子だとオリヴェイラファブリシオを使い続けるのかなと思います。

5-4-1で守りつつ、時折興梠とファブリシオが入れ替わって守備時の負担を分け合って我慢していた浦和。80分にオリヴェイラは最後のカードで李を投入。興梠を下げて、彼の入っていた左シャドーに李を据えます。オリヴェイラとしては5-4-1のシャドーの守備タスクを実行できるうえにサイズもある李を入れる定石通りの交代だったと思います。ただ80分以降となるとチーム全体がかなり消耗しており、李を入れたとはいえ84分には中盤のスペースを使われて放り込まれたクロスに小林が合せて危ないシーンを作られるなど、満身創痍の状態でした。一方で、この試合を通して、そしてこの時間でも自らの走りでチームを鼓舞し続けたのが柏木で、右シャドーに入って以降は自らカウンター時の起点役として前線でのボールキープをするなど、鬼気迫るプレーを見せていました。実際84分の大ピンチの後の86分にはサイドで車屋に潰されながらもボールを落とすと、後方から走り込んだ森脇が独走。ゴールには繋がりませんでしたがチームに希望をもたらすカウンターを演出しました。そしてロスタイムに入った90+1分、中盤でボールを奪うと李がドリブルで川崎ディフェンスと2度入れ替わりゴール前へ侵入。最後はエリア内で倒されてPKを獲得。ボールを譲り受けたファブリシオがしっかりと決めて試合を決めたのでした。

川崎にこれでもかと押し込まれ、決定的なピンチを何度も向かえた今節ですが、終わってみれば2-0の完全勝利。かなりの暑さの中での前年王者との対戦は消耗戦となりましたが、最後にチームを救ったのはベテランの域に差し掛かったミシャ時代のレギュラーたちでした。5年半にも及ぶミシャの時代を経て、一時代を築いたレギュラーの選手たちは32歳~34歳に差し掛かっています。青木の完全定着や橋岡や岩波の起用など、これまで不動だったレギュラー争いを盛り上げる若手・中堅の起用はこれからも増えていく方向であることは間違いありません。ベンチに座る時間が多くなるにつれモチベーションが下降していく選手が多くなる中で、苦しい時間帯を救ってくれた阿部、森脇、李といったベテランの選手たちの活躍は非常に大きなものでした。思えば、先制点の興梠や武藤、獅子奮迅の働きの柏木、宇賀神、槙野、そして今節の勝ち点3を手繰り寄せた守護神西川と、ミシャのサッカーに魅せられて浦和にやってきた選手たち、ミシャのサッカーの下でおおいに輝いた選手たちが、180度違うアプローチの現実的で泥臭いサッカーをする中でも、腐らずチームのために働いている。これは降格圏からの下剋上を進めていく浦和にとってはこの上なく大きく、特別なことではないかと思います。円熟期を迎えた選手たちと、勝負にこだわる新しい指揮官、そして新しい時代を担う若手と中堅。これまでの攻撃の時代とは違うこのタフでリアリスティックなサッカーも、またサポーターに認められ、浦和らしさになっていくのかもしれません。

 

過渡期に差し掛かる川崎と真価を問われる次節・長崎戦

川崎はこれで浦和にシーズンダブルを食らうこととなりました。昨年のACLでの対戦以降、対戦している浦和の中身は毎回違うのですが、いずれにしろ川崎は浦和戦であまり良いパフォーマンスを出せていません。他チームについては詳しく事情を知らず、定点観測をしているわけでないのでにわかの意見ですが、川崎はそろそろ過渡期を迎えているのかもしれません。つまり、選手の質が変わってきている気がしています。これまでの対戦でもそうでしたが、鬼木体制に代わって以降の川崎は、ほとんど必ず憲剛が交代する70分前後以降にチームのパフォーマンスが下がっていく印象です。今節でも、最も攻勢を強めた45分~70分までの時間帯の後、70分に憲剛が交代してからは単調な攻撃が増えていきました。鬼木監督としては大ベテランの憲剛のパフォーマンスを平準化させ、コンスタントに彼を使うためには致し方ない交代なのだと想像しますが、交代で入ってくる鈴木や知念、今節はスタメンでしたが長谷川といった選手たちはこれまでの川崎のプレースタイルとは少し色の違う、いわゆる風間教の教えを受けていない選手たちです。2016年までに風間イズムを教えられた選手たちとそうではない選手たちを圧倒的な存在感とゲームメイクでつないでいた憲剛がピッチから降りることでピッチ上のコンセンサスが失われるような感覚。これは今後川崎が時間をかけて向き合っていく課題なのではないかと思っています。

今シーズン首位を独走する広島と、昨年の王者かつ現在3位の川崎に連勝したことで、復活の浦和が強く印象付けられました。多くの人が気づいているように、これで暫定7位、次も勝てば本格的にACL圏内が見えてくる順位まで浮上してきました。ただし、個人的には次の長崎戦はこれまで以上に厳しく、オリヴェイラ体制で上に上がっていけるのか?を問われる試合になるのではないかと思います。

現在勝ち点20で14位の長崎は、もちろん初のJ1の舞台に残留することが最大の目標です。大よそ勝ち点38~40で残留確実と言われるJ1の傾向からして、長崎にとっては勝利することよりも負けないことが重要となります。そんな長崎が、カウンターから勝利を掴む浦和に対して素直に攻め込んでくるとは思えません。浦和がボールを保持する展開の中で、リアクションではなくアクションで何を見せるのか?それとも長崎にボールを持たせるように仕向けるのか?これから上位に食い込んでいく上で、自分たちより下位に沈む相手との対戦をいかに御していくかは非常に注目です。また、長崎は3-4-2-1を採用するためにミラーゲームになると予想されますが、マッチアップが多発する展開の中で如何に個人能力で勝ちきるのか、セットプレーを含めた盤石さを見せることができるのか。長崎を相手にこれまでとは違う趣向の課題に向き合うことになる次節ですが、パフォーマンス次第では、本格的に台風の目になることができるのではと、期待しています。

今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。