96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

生き残りを懸けて戦う長崎に突きつけられた浦和の課題。 Jリーグ第20節 vsVファーレン長崎 分析的感想

広島、川崎とリーグ上位陣に連勝し、中断以降負けなしかつ6戦無敗と順位を急激にあげている浦和レッズ。今節はクラブ史上初のJ1での厳しい戦いに晒されながらもしぶとく残留圏内に留まっているVファーレン長崎との一戦です。

 

両チームスタメンと狙い

両チームのスタメンは下記の通り。

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浦和控え:福島、荻原、森脇、マルティノス、阿部、菊池、李

 

オリヴェイラ監督が試合前日に会見で明かした通り、浦和はメンバー変更なし。真夏の3連戦ですがそれ以前に1週間空いていたことに加えて、今節の後も1週間空くことが理由だそうです。まあオリヴェイラ監督はもともと大きく選手を入れ替えないタイプなので、スタメン固定気味の起用は飲み込んでいく必要があります。もちろん結果が付いてこなければ真っ先に批判の対象となる部分ではありますが、「勝っているチームはいじらない」もまたセオリーです。

長崎は前節欠場していたファンマがトップに復帰。また新加入のオランダ人DFヨルディ・バイスがディフェンスリーダー及びゲームキャプテンとしてCBに君臨します。システムは浦和と同じく3-4-2-1。とはいえ長崎は高木監督就任以降長い間このシステムで戦い続けており、浦和に形を合わせたわけでなく、長崎としては最も自信のあるフォーメーションでのぶつかり合いということになります。

戦前は、今節は長崎が守り、浦和がボールを保持する展開になるだろうとの予想が多くあったゲームでした。従って、上位相手に守備を固めつつセットプレーやカウンター、相手の弱点を突く攻撃などで堅く勝ちきってきた浦和が苦戦するであろう、という論調です。実際のところ、長崎が守備的な試合を展開したのは事実ですが、それだけで終わらないのがさすが高木監督かなという印象です。

長崎の狙いは大きく二つあったように思います。第一に、自分たちはあまりボールを持たないこと、第二に、浦和にずっとボールを持たれないこと。つまり長崎は、自分たちがボールを保持し、リーグ屈指の個人能力をベースに待ちかまえる浦和の守備網に突っ込んでカウンターを受けるのは絶対NG=ボールは持ちたくない、一方でこの暑さの中で、しかも初めての埼スタでのゲームで90分引きこもるのもジリ貧、という考えがあったのではないでしょうか。この一見すると二律背反の要求への解は、一般的には相手のビルドアップにハイプレスを掛けることで自由を奪う、ということになります。自陣ゴールから遠いところでボールを保持させ、プレッシングによってショートカウンターからの得点を狙うのが理想です。しかしこの暑さではそれも長くはもたず、チームの足が止まればその綻びをオリヴェイラ・レッズが見逃すことはありません。そこで長崎は、オンプレーの質を確保し続けるため、特別な作戦に出ます。つまり、時間稼ぎです。

 

長崎の真のターゲットは…

この試合がどのようなものだったかは、オリヴェイラが全て話していますので彼の言葉を引用します。

「少し、特殊な試合になりました。相手はゲームをぶつ切りにし、ゲームのリズムをつくらせないという戦略できました。フリーキックスローインコーナーキック、そのようなセットプレーの一つひとつで、かなり時間をかけていました。それはゲームのリズムをつくらせないためです。本日の試合でインプレーの時間を計れば、平均よりかなり低い結果になると思います。そして、インプレーの時間は長くしようということが推奨されていると、私は思います。

長崎はいいチームであり、ゴールのチャンス、決定機もつくったと思います。試合に勝っていてもおかしくありませんでした。しかし相手の選手たちの意図ははっきりとしていました。プレーを止めることでした。

(中略)

ゲームをずっと止めている選手たちに対しても注意をせず、このアンチゲームとも言える流れにレフェリーが協力してしまったのかな、と思えてしまいます。

そのような状況はありましたけれども、相手は非常に整っている、いいチームだったと思います。カウンターアタックから決定機もつくっていましたので、この試合に負けていても、おかしくありませんでした」

http://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/オズワルド-オリヴェイラ監督-長崎戦試合後会見/

長崎は試合開始直後から、明らかな時間稼ぎを仕掛けました。GK徳重はなんでもないゴールキックに可能な限りの時間をかけ、スローインFKもとにかく遅い。プレーの質を確保するために、オンプレーの時間を短くする。そうすれば、この酷暑・連戦というコンディションでもゲームを通じてトランジション攻撃を仕掛け続けるだけの質を確保できる、そのような思惑があったのではないでしょうか。

まず整理しておきたいことは、これも一つの戦い方だろうということです。もちろん、エンターテイメント・興行として考えれば、他の試合と同じ金額を払って観戦しているサポーターからすれば裏切りのような行為かもしれません。今節はエンターテイメントとしての試合の質が高くなかったことは大方認められる事実でしょう。リーグが推奨するように、選手は可能な限りプレータイムを確保する義務があります。一方で、FKをクイックで始める権利があるのと同じように、FKをルールの中で時間をかけて蹴ることも認められた権利です。試合開始直後に奇襲をかけて残りの89分自陣に引きこもり試合を潰すことと、実質のプレータイムをできる限り削ることの発想は同じもので、ゲームを少しでも有利に進めるという意味で理解できるものです。1-0のロスタイム、相手陣地深くで時間稼ぎをするチームは鹿島に限らず、多少エンターテイメントとしてのモラルに欠けたとしても、勝負の世界においては否定できない生存戦略の一つではないでしょうか。

浦和にとって不運だったことは、長崎がこのようなプレータイムを削る作戦を実行したことではなく、この作戦を規制する力が働かなかったことではないかと思っています。つまり、ある意味で長崎は審判にゲームを仕掛けました。試合を有利に進めるために、ある意味でモラルの限界を試していたとも言えるのではないでしょうか。

この意味で、今節の主審である今村氏は役割を果たしませんでした。試合開始直後からセットプレーに必要以上の時間をかける長崎に対して、警告はおろか注意もほとんどありませんでした。今村主審は長崎の戦い方を許容していました。エンターテイメントとしてのモラルに鑑みれば、今村主審が前半のうちから長崎に早くプレーするよう強く注意しても不可解と批判されることはなかったでしょう。オリヴェイラ監督の言った通り、こうして試合は分断されることとなり、「自分たちもボールを持たないが相手にもボールを持たせた続けたくない」長崎の思惑はある程度具現化されることとなりました。今村主審については、槙野が指摘するようなCKでの判定基準やいくつかの不可解なジャッジなどいろいろな指摘がありますが、個人的にはこの進行に関する部分が一番大きな違和感があったところです。

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ちなみに、浦和のほうが走っていないじゃないか!という反論がありそうですが、論旨は両チームの走行量が今節最も少なかったこと、特に長崎が相当の走行量をセーブできたという事実です。長崎は前節札幌戦でチーム合計113.373km走っており、実に前節から15kmも走行量をセーブしているのです。一方でスプリント回数は前節動揺の123回ですので、やはり質を落とさずに走行距離をセーブするという考えではなかったでしょうか。

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もちろん浦和はオリヴェイラ監督に固定采配の傾向があり、連戦と熱さで運動量は少なかったと言わざるを得ませんが、一方で浦和がボールを保持し、相対的に走る機会が少なめだったことも勘案すべきでしょう。兎にも角にも、長崎が今節に特別なゲームプランで挑んだことは明白でした。

 

序盤の攻防/長崎の守備と浦和のビルドアップ

ようやく試合展開に入ります。長崎は上述の通りプレータイムを削りつつも、オンプレーの運動量はしっかりと確保していました。序盤の守備は5-2-3の形で、ファンマを頂点に2シャドーが高めの位置でプレッシングを掛けに行きます。ミラーゲームですので、浦和が3バックの3枚でビルドアップをすれば数的同数ではめることができます。ここからのショートカウンターでの先制パンチが長崎の理想の筋書きだったことでしょう。

一方の浦和は、ボランチの柏木、青木が最終ラインに落ちることで岩波、槙野を高い位置に上げていくことでビルドアップしていきます。

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これに対して長崎は2シャドーに入る鈴木武蔵や、時折武蔵と入れ替わってこの位置に入るファンマが岩波にアプローチします。すると中央のパスコースが空くために柏木やマウリシオがリターンから中央の縦パスを狙うというのが大まかな噛み合わせとなりました。

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いつも浦和の泣き所として紹介しますが、5-2-3で守る場合は御馴染みのボランチ脇にスペースが出来てしまいます。浦和は武藤とファブリシオ、特にファブリシオがこの位置に降りてきてボールを受ける動きをよく見せていました。但し、ファブリシオは広島戦でもこの位置でボールを受ける動きが多く、戦術的デザインというよりは彼個人の習性としてボランチ脇で起点になるプレーを好むのかもしれません。

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前半4分、柏木の中央縦パスをファブリシオが受けて前を向き、瞬間裏をとった興梠へスルーパスバイスがもつれたところを逃さずエリア内でシュート。徳重のビッグセーブで防がれてしまったシーンですが、このような形は浦和の理想形だったと言えます。この流れのCKでは、セカンドボールを宇賀神がダイレクトボレーしますがこれも徳重のビッグセーブ。この2本のセーブで徳重がどんどんノッてしまったことも今節浦和を苦しめたかもしれません。浦和もそうですが、特に前へのベクトルの強い5-2-3守備においては、自陣ボランチの周囲にできる広大なスペースを使おうとする相手FWへの対応は5バックによる迎撃となります。この意味で試合開始直後は少し落ち着かなかったバイスをはじめとした長崎のバックラインが、時間の経過とともに自信をつけたか、はたまたスタジアムの空気に慣れたか、パフォーマンスを安定させていったことも厄介でした。浦和としては早い時間帯に狙い通りのビルドアップから得点を奪うことが出来ていれば、ということは言えるかもしれません。

 

マッチアップが彩るゲーム展開

ミラーゲームにおいては、1on1もしくは2on2のマッチアップが多く発生します。特に3-4-2-1同士の戦いではお互いのサイドの上下動を一手に担うWB同士の戦いが非常に重要です。ここで劣勢となると、サイドのケアに中央の選手が引き出され、堅いはずの中央に穴が空くというのが負けパターンの一つとなります。

今節におけるWB同士の勝負は浦和の右/長崎の左サイドにおける橋岡vs翁長、浦和の左/長崎の右サイドにおける宇賀神vs飯尾の組み合わせでした。この両WBの攻防こそ両チームがゲームをデザインするキモであったことは両監督の采配が示しており、この暑さの中、プレーが頻繁に分断されたとはいえ、後半39分に橋岡が森脇と交代した以外に両監督はWBに手を付けませんでした。

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中でも両チームにとって最も重要であったのは橋岡vs翁長のサイドでした。浦和ユース出身の高卒ルーキー橋岡と中央大からのルーキーである翁長のルーキー対決ですが、お互いに今季堂々たる活躍を見せている二人です。浦和としてはプレッシングが外されると潔く自陣を固める長崎の守備に対して、182cmの橋岡と172cmの翁長の高さのミスマッチを活用するという考え方が強く見られました。西川からのゴールキックのターゲットは一貫して橋岡で、翁長はこの競り合いにはほとんど参加せずに橋岡への対応は諦めていました。試合を通じて、この橋岡の空中戦に対応する手立てが長崎に無いように見えました。

一方の翁長は、運動量とスピード、そしてサイドを駆け上がった直後にさらに縦への突破を選択できる身体と心の強さが魅力の選手です。浦和時代の関根もそうでしたが、攻守にわたる上下動を繰り返した後に訪れる1on1での仕掛けは身体にも心にも負担のかかる重労働ですが、これを一試合こなし続けるタレントは稀です。その意味で翁長は長崎にとって替えの利かない最重要選手の一人であり、サイドにエンジンを置いておきたいJ1各チームはしっかりと彼のことをチェックしているのではないかと思います。その翁長は橋岡に対して地上戦で反撃。さらに浦和はビルドアップでこのサイドのCBである岩波を高い位置に置いていますので、その裏が使えます。7分には翁長が高い位置を取っていた岩波を置き去りにしてサイドを縦突破しますが、ギリギリで橋岡が追いつきクロスを上げさせなかったシーンがあり、このあたりから橋岡は翁長の縦突破をケアするポジショニングをしていたようでした。

一方の宇賀神vs飯尾のサイドは経験を積んだ選手同士の駆け引き勝負。逆サイドほど目立たなかったものの、お互いビルドアップで簡単にサイドに起点を作らせない守備をしていた一方で、トランジションの場面ではサイドを疾走し合うなど、地味ながらお互い一歩も譲らない1on1を展開していました。浦和サポ目線ですが、かなり激しい上下動ができるウガに全く引けをとらず、またオンザボールではスペシャルでないものの、ワンツーを使ってサイドを突破したりトランジション時には逆サイドでもサボらずに最前線を走っていたりと、飯尾の運動量は強く印象に残りました。

 

浦和の課題と戦術兵器ファンマ

このようにサイドでバチバチのマッチアップが繰り広げられる中、徐々に浦和の課題が顕在化していきます。オリヴェイラ就任以降、相手の攻撃を受け止める守備力と走力を伸ばしてきた浦和ですが、監督・選手が認めるように攻撃についてはまだまだこれからで、上手くビルドアップできるパターンは限られています。特に重要なのはWBに起点を作るパターンですが、今節のようなミラーゲームではWBにパスが入ってもすぐに寄せられるためサイドを起点にした攻撃が思うように発揮できません。特に長崎は基本5バックで守るものの、自軍中盤、もしくは第2プレッシングラインを超えたボールが入る際には後ろ4枚のみ残していればWBやCBが勢いよくパスを迎撃し相手に自由を与えない守備が仕込まれています。

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するとビルドアップの逃げ場がなくなり、サイド起点でのボランチやシャドーの絡みなどの攻撃時の動きが減り、攻撃を作るパスは相手が待ち構える中央への縦パスに絞られ、ビルドアップがギャンブル性を帯びていくというのが悪いパターンです。前述したように岩波や槙野を高い位置に上げる、長崎のシャドーがサイドに食いついた時に中央を使うなどで攻略を試みますが、プレッシングを諦めると自陣に構える長崎に対して縦パスが引っ掛かるシーンがいくつかあり、すると長崎のカウンターへの対応を迫られます。

長崎のカウンターは明快で、「ファンマよ今こそ甦れ」作戦でした。ボールをひっかければとりあえずファンマ。単純に当てて良し、裏に走らせて良し、ハイボール良し、グラウンダーも大丈夫と、「とりあえず頼んだ!」タスクに関しては万能な性能を発揮する古代兵器ファンマのストロングを最大限活用します。しかも高木監督はいやらしく、巨神兵ファンマを左サイドでプレーさせることで浦和のエースキラー槙野から遠ざけるなどの小技も併用していました。ということで浦和はまずはファーストディフェンダーとしてマウリシオが対応しますが、荒々しく競り合う闘神ファンマの前になすすべなく、17分には攻めきれずに奪われたボールを拾ったオベリスク・ファンマを倒してイエローカード。早い時間でイエローを貰ったマウリシオに代わって、その後は岩波が競り合いながら対応する形をとっていきました。このかたちでは、長崎の1トップ2シャドー、特にファンマと鈴木武蔵の裏抜けのスピードには岩波は手を焼いているように見えました。岩波はスピードが無いので、あまりに高い位置に出ると裏のケアが非常に怪しくなります。一方で彼のフィード力を活かすには攻撃参加をさせたく、また今節のような展開になるとミシャ式を使って両CBを高い位置に持っていかなければならず、この辺りは万能感のあった遠藤の代役としては一長一短かもしれません。25分、27分、31分と続いた場面に限らず、ファンマvs岩波の対戦は非常に多く見られ、また39分にはクリアボールを拾いに前にでた岩波の前に武蔵がボールを拾い、そのまま裏のスペースを独走。なんとか追いついた柏木がエリアギリギリでファールしイエローカードをもらうという場面もありました。サイドチェンジや縦パスで毎回良い印象を残すと同時にスピード不足や守備面での課題が見える岩波。長崎はこの辺りの特徴をも掴んだ上でのファンマ、武蔵の運用だったのかもしれません。 

 

長崎のレーンを意識した仕掛け

中盤以降、試合は攻めたくも緒を掴めない浦和と、リズムに慣れてくるに連れてやることがはっきりしていく長崎の構図となっていきます。特に長崎は奪ってからのスペースの使い方に特徴があり、カウンターの場面でシャドーが浦和3バックの大外裏に走り込む際にはそれに呼応するようにWBがハーフスペースに走り込む、またはその流れのまま中央に入り込んでボールを受けるというものでした

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2016年のミシャ完成期の浦和も同様のWBが中に入り込む形を多用していましたが、浦和の場合は後方から上がってくるCBのオーバーラップのレーンを確保する意味での三角形のポジションチェンジとしてWBが中央に入り込む形がポピュラーでした。一方の長崎の場合は、特にポジティブトランジション(カウンター)の際に1トップ2シャドーは中央レーンやハーフスペースのみならず大外に開いてボールを受けても良いルールで、ただし同じレーンに2人以上の選手が走り込まないように1トップ2シャドーの選手のランニングに合わせてWBが走り込むレーンを決めるという約束があるのではないかと想像します。また、その他にも、後半に飯尾がカウンターから中央にダイアゴナルに走り込んで宇賀神のファールを誘ったシーンに代表されるように、シャドーがボールを受けに降りたスペースをWBが使ってゴール前に入り込んで行く、WBが得点に絡むという意識が強く見えたのは前半戦にはなかった部分でした。

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35分以降試合のリズムを掴んだのかこの動きがよく見られ、特に後半は1トップ2シャドーの一人が大外に流れて浦和最終ラインを拡げ、後ろからそのスペースに飛び込んで行く形でのチャンスクリエイトがよく見られました。キープ力があり仕掛けられるファンマ、澤田に加えてスピードのある武蔵の裏抜け、さらに大外から試合終盤まで上下動を繰り返すことのできる両WBが絡む攻撃は時間が経つにつれて迫力を増し、35分の澤田の仕掛け、46分の飯尾の裏抜け、62分の武蔵のダイアゴナルの裏抜けからのポスト直撃、70分のファンマから武蔵へのスルーパスが出た決定機、78分に途中出場の米田が開いたスペースを使って中央に入り込んだ翁長のミドルなど、再現性高く浦和の最終ラインを攻略しゴールに迫りました。あと一歩のところで精度が足りずにゴールに至らなかったことが長崎の苦労の根源だとは思いますが、守備的に戦ったとされる長崎がその実浦和以上に崩しの形を披露したことは触れておきたいと思います。

 

宿題となった「その先」

望んではいなかったとはいえ、浦和はボールを保持したもののなかなか再現性のある崩しの形を披露できず、長崎の守備網をこじ開けることは出来ませんでした。それは例えばWBにボールを繋いだ後のゴールに向けた崩しであったり、最終ラインから両CBを上げたとしてその後どのように相手ゴールを脅かすのか?といった部分なのですが、前述の通り、オリヴェイラ・レッズにおける攻撃構築はもう少し時間を要するであろうことは想定内で、絶望感はありません。とはいえいくつかの課題は今後の中位、下位チームとの対戦に向けた宿題となっており、おそらくこれに解決策を見出さなければボールを持たされるとリズムが作れなくなって窒息死してしまう、という試合に出会すことになってしまうのではないかと思います。

武藤が試合後にコメントした通り、例えば橋岡に個人技でのドリブル突破を求めるのは選手の特徴からもなかなか難しく、そのために武藤がサポートにサイドに流れることでファブリシオ、興梠との距離が離れてしまうといった副次的なジレンマも発生している状況です。これらを改善するには単純にWBにドリブラーが欲しい、ということにもなるのですが、それではオリヴェイラらしくないだろうというところもあり、例えば長崎が今節見せたような走り込むレーンの整理など、個人技以外の部分での戦術的な工夫が求められて行くでしょう。危ないシーンがあったものの今節も無失点で耐え抜いたことで、守備面では自身を深めているであろうオリヴェイラ・レッズ。試金石となった長崎との一戦で突き付けられた課題は、今後チームが上位に進出して行くにあたっては妥当かつ避けて通ることの出来ない課題であると思います。

次節の鳥栖も長崎と同じく守備から強力なな前線でのカウンターを狙いたいはずで、そう考えると課題解決までに時間はなかなかありません。今後の上位進出のためにも、身につけた堅守+アルファとなる攻撃面での整理を期待したいところ。「オズの魔法」の効果が守備の安定だけではないことは、我々レッズサポーターは痛いほどに知っているのです。

 

今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。