96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

バージョンアップした名古屋と、結果としての大敗。 Jリーグ第24節 vs名古屋グランパス 分析的感想

清水との撃ち合いをドローで終えた浦和。5連戦最後の相手はなんと5連勝中と勢いに乗る名古屋グランパスとの対戦です。

 

両チームのスタメンと狙い

下記のメンバーでスタート。

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浦和控え:榎本、荻原、マルティノス、阿部、柴戸、菊池、李

 

浦和としては試合直前に内転筋の不調を訴えた柏木をベンチ外としなければならなかったのは痛恨でした。代わりに長澤がスタメンに。また、最近いろいろと試行錯誤を繰り返している最終ラインは右から岩波、マウリシオ、槙野の遠藤移籍後のスタンダートが選択されました。また、セカンドGKとして榎本が久々のベンチ入り。これについては情報ありませんが福島に何かあったんでしょうか。レンタルの期限は過ぎていると思うので、単にセカンドGK争いが活発化したということであれば良いのですが。

浦和としては中断明け直後の第17節、遠藤航のホーム最後の試合で名古屋と対戦しており、セットプレーから遠藤の2ゴールもあり快勝した試合が記憶に新しいところ。前回の対戦でも風間式ポゼッションに晒されながらもゴール前で耐え、セットプレーやカウンターで勝負を仕掛けるという戦法で勝利を手にしています。浦和としてはこれが対名古屋戦の基本的な考え方になると思います。

一方の名古屋は、夏のマーケットでゴリゴリの大補強を敢行し話題をさらいました。参考までに前回対戦時のスタメンを見てみると、前回はこんな感じでした。

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こうみるとそこまで変わってない気もしますが、大きなところではアーリアがネットにリプレイスされ、児玉のポジションには前田直輝。もはや右SBの位置に置かれただけという感じだった和泉のポジションには金井を獲得しています。CBにはFC東京から獲得の丸山、もう片方の新井も今や柏から獲得した中山に後塵を拝しているようですが、その中山は水曜日の天皇杯の退場による出場停止を天皇杯敗退のため直近のJリーグで消化する必要があり今節出場停止ということでチャンスが回ってきたようです。

 

試合を決めるべきだった立ち上がり

試合は最序盤から動きます。1分に橋岡が武藤とのワンツーで抜け出してマイナス気味のクロス。フリーで興梠が合わせますが枠外。名古屋の守備は極端で、最前線のジョーとシャビエルは前残り、後ろは4-4ブロックらしきものを組みます。後ろの4-41のコンセプトは2列目と3列目のスペースを出来る限り消すことで、最終ラインはなるべくラインを高く保ちつつ2列目はそこまでプレッシャーを掛けずに待ち構えます。さらに、必要であれば横幅も思い切って狭めてとにかくバイタルを人海戦術で守るような形をとっていました。

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従って必然的に名古屋の1列目と2列目の間のスペースは非常に大きく空いていて、ここを浦和のボランチは自由に使える上に、前線から人が降りると食いついてくるので最終ラインにスペースを作れます。また、4-4-2との対戦時にはWBに起点を作ることで相手のSBを引き出し、ハーフスペースを攻略するのが浦和の攻めの形ですが、これらの形が全て出たのが1分の橋岡の突破でした。金井との駆けっこで単純に勝てたということもあり、橋岡の突破からのクロスで仕留めたかったところでしたが、クロスの質が不十分だったことが悔やまれます。

また3分には名古屋の楔を槙野がカットしたところからカウンター。興梠と武藤のパス交換から武藤がエリア内に侵入しシュートを放つ場面がありましたが、ここでもランゲラックのセーブに合ってゴールならず。名古屋の守備に大きな隙があることはこれらの場面で分かっただけに、浦和としてはこの最初のチャンスで先制して試合の流れを掴みたかったところでした。

 

名古屋の攻撃戦術(1)ネットの加入

一方の名古屋は、前回対戦同様にボール保持からチャンスを伺う構え。しかし、選手補強によって名古屋の試合の作り方には変化が見られました。

前回対戦時と大きく異なるのは、第一にシャビエルのポジショニングということになります。前回対戦寺にはアーリア、小林、シャビエルの3人が中盤底で短いパスを繋ぎながら攻撃の機会を伺うという形(下図)がスタンダートでした。一方で、ゴール前で最も脅威となるシャビエルが中盤に降りることでジョーが孤立気味になり、ゴール前での迫力不足を招いていたというのが前回対戦時の名古屋の印象でした。

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これを補完したのが新加入のネットで、川崎在籍時から非常に評価の高かったボール保持からの縦パスを入れる能力を名古屋でもいかんなく発揮していたのではないかと思います。前回対戦時には攻撃作りの部分、セットプレーの守備の部分で敗戦の要因となってしまったアーリアに替わってネットが中盤深部に構えるようになったことは、名古屋の攻撃の威力を大きく改善する要因になったのは周知のところです。

シャビエルが前線に留まるこの出来る構造が出来たことで、大きく改善したのは最終ラインからミドルサードアタッキングサードへの前進の部分と思われます。前回対戦時はシャビエルが中盤に降りるために、両SHが中央に入り込み中央の枚数を確保、幅取り役として両SBに高い位置を取らせるというのが名古屋の戦術の大枠でしたが、シャビエルが前線にとどまり中央にジョーとシャビエルという脅威を確保したことにより、SHにはより自由度の高いタスクが与えられるようになったのではないかと思います。

 

名古屋の攻撃戦術(2)流動性とは何か?

具体的には、名古屋の組立はネットを最終ラインに落とし、擬似3バックを構成することろからスタートします。その上で、今回の名古屋のビルドアップにおけるキーフレーズを用意するのであれば、斜めのパスコースということになるのではないでしょうか。

風間監督のサッカーは、一般的にボールポゼッションを最重要視した、流動的なサッカーと称されるのではないかと思います。実際に今節においても、様々な選手が様々なポジション、スペースに顔を出すことでボールを前進させており、まさに「流動的」なサッカーを展開していました。ということで、この「流動性」とは一体何だろうか、という疑問を深掘りしなければいけません。

個人的には、名古屋の「流動性」の本質は、局所化したピッチの特定の箇所=ボール保持者のポジションに対して斜めのパスコースを複数用意する、という原則のように思います。名古屋のビルドアップは、ネットが最終ラインに降りることで形成される擬似3バック+小林のポジショニング、またはSBが後方で前を向くところからスタートします。ここから、前進を試みることもあればボールを戻して保持することもありますが、多くの場合はボール保持者に対して斜めのパスコースに入り込むように、非ボール保持者がポジションを移していきます。

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もしくは、斜めのパスを出せるスポットを埋める、という表現が正しいのかもしれません。とにかく、特定のスポット=斜めのパスコースを埋めるために、周囲の選手がかなり自由にポジションを移します。特徴的なのは、通常のチームであればある特定の選手が特定のゾーンに移動することで他の選手を押し上げたり、ボール保持者を助けたり、または特定のゾーンにおける味方選手の枚数を揃えたりするわけですが、名古屋の場合は局所化した特定のスポット=ボール保持者から斜めのパスコースを埋めることだけが原則であり、元々どこにいた誰が埋めようと問題がないかのように11人が振舞っていることです。また逆に、前方二つの斜めのスポットが埋まらない限り、特に名古屋の最終ラインからの前進は始まりません。

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通常であれば、万が一のネガティブトランジションに備えて、または来るべきシュートチャンスに備えて、ある程度自分の基準となるポジションから離れずにパスを受けるか、ある程度決まったルートおよびエリアでのポジション移動となるはずです。しかし名古屋は、このパスを受けるための移動距離が他のチームに比べてかなり長いという印象があります。要は、ボール保持者に対して斜めのパスコースを作るスポットを誰かが埋めるのが重要であり、誰が埋めるかは問題ではない、という風にすら感じられます。斜めの関係を構築・維持するという点では5ラインに一定の人数を配置するポジショナルプレー(モデル)と類似するように見えるものの、ピッチ全体の最適および攻・守・トランジション全てにおいて最適な配置を求めるポジショナルプレーと、局所的な優位を得るためにかなり自由に選手が出入りする風間式は似て非なるものではないかというのが個人的な理解です。これが、現在の名古屋の大きな特徴であり、極めて不規則で「流動的な」サッカーの正体ではないかと思います。一方で、誰が埋めても良いということは、誰が埋めても同じようにポゼッションおよび前進に貢献する必要があり、それにはほとんどの選手にかなりのボールスキルが要求されることは想像に難くありません。前回対戦時の名古屋がボールを保持しながらも効果的な攻撃を繰り出せずに浦和に敗北したことも、それだけのフィールドプレーヤーを準備出来ていなかった、ということかもしれません。

 

名古屋の攻撃戦術(3)前田直輝ロングフィード

とはいえ、大まかに言えばポジショニングの原則を見て取ることは出来ます。例えば、右SBの宮原はビルドアップ時点ではあまり中央に入り込まず、幅を取るように大外で構えることが多く、その分中央(もしくはハーフスペース)側のパスコースに入るのは前田直輝かシャビエル、または竹内が多くなります。特に前田直輝は主に右サイドハーフスペース(名古屋的に言えば、中央のネットか右CBの新井に対する斜めの関係)でボールを受けて収める技術、また隙あらばターンからドリブルで自ら仕掛けることが出来る攻撃力と機動力、そして中央で待ち構えるジョーやシャビエルへの縦パス、最終ラインに入り込めば裏抜けまで狙うことが出来ると、抜群の攻撃センスを発揮していたのではないかと思います。特にドリブルがあるのが厄介な選手という印象でした。

逆に、左SBの金井は積極的に中央側のパスコースを埋めるようにポジショニングします。ただ、左SHの玉田も同じく中央、時には逆サイドまで流れることも多いため、前との関係性で中にポジショニングをとっているわけではなさそうでした。金井が中に入る分、外に出て行く選手がCBの丸山です。左利きの丸山は、金井が中央に入り込むのに呼応するかのようにSBのようにサイドに張り出し、開きながらボールを受けるというプレーが何回か見られました。

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丸山に関しては、非常に効果的だったのは彼のロングフィードでした。前半5分には、高い位置から粘り強くボールホルダーとパスコースを潰した上で、中盤で受けようとする玉田を5バックから岩波が迎撃しようとした瞬間を嘲笑うかのようにロングフィードをジョーに通し、エリア内でボールを確保したジョーの折り返しに逆サイドでシャビエルがフリーで飛び込むというシーンがありました。このようにネットのJリーグでは特異とも言えるボール保持能力と縦パスの能力に加え、ラインを上げて前から追いかけてきたり、中盤の選手を最終ラインからの迎撃で対応しようとする相手に対するジョーめがけたロングフィード、裏抜けのボールを準備出来ていることが、結果的に名古屋の安定的な攻撃の構築を支えているのではないかと思います。

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これに対して浦和は(というか多くのJクラブは)名古屋の長短の選択肢を同時に限定できない、その根底には一人でジョーを抑えられる選手がいない、という構造は無視できません。もちろん、中断期間で体重を5キロ落としたとも言われるジョーの中断明けのパフォーマンスが圧倒的であることは認めざるを得ないところなのですが。また、上述のようにボールを受ける(斜めのパスコースを確保する)ためのボール非保持選手の移動距離がかなり長いために、マンマーク気味にプレッシングをかけると守備陣形があっと言う間にバラバラになります。となると選手を受け渡しスペースを守っていくということになりますが、そうすると浦和のやりたい主体的に追い込んでボールを奪いショートカウンターという展開には持ち込めず、我慢が必要なゲームとなりました。

 

槙野の怪我、最終ラインのパフォーマンス低下、守れなかった先制点

ということで、名古屋が最終ラインで安定してボールを保持、浦和はボールを引き取りに降りてくる選手に粘り強く対応しつつ名古屋の縦パスをなんとか最終ラインで処理し、カウンターを狙うというゲームモデルに落ち着いていきました。

ただし、浦和も万全でなかったのは事実です。浦和の5-4-1守備の2列目はなるべくカウンターを狙いたいということと、頻繁にボールを受けにくる名古屋の選手へのマークで徐々に高い位置まで引き出されていきます。必然的にボランチの背後、最終ラインの前には大きくスペースが出来るため、ジョーやシャビエルが待ち構えるバイタルエリアへのパスは浦和最終ラインの選手が迎撃していく必要がありますが、特に槙野はこの連戦で怪我をした影響もあってか思ったように相手を潰すことが出来ていなかった印象です。

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試合序盤は五分五分と言ったところでしたが、時間が経つにつれて対応が遅れ、結果手を使うなどファールが増えていき、危険な位置のFKを与えるとともに守備から攻撃でリズムを作りたかった浦和としてはなかなか自分たちのゲームに持ち込めなかったということはあったかもしれません。

オリヴェイラ・レッズとしてはやはり最終ラインの質の高さを武器に相手の攻撃を受け止め、そこから逆に相手の隙を突いていく試合が理想だと思いますが、連戦だったこともあったのかここ数試合は中断明け直後と比べて特に最終ラインの選手たちは相当にパフォーマンスが低下しているのではないかと思います。もちろん今節に限ってはジョー・シャビエルの質の高さは相当のものがありましたが、浦和のこのサッカーはどうしても最終ラインが相手の攻撃に晒されながらも耐える必要があり、夏場ということもあり消耗が激しいのかもしれません。改善策としては、第1、第2プレッシャーラインから追い込んでいく守備の整備が出来れば良いのですが、5バックの守備はどうしても前から追いにくいため、ここは泣き所になってしまうところ。しかし今後は気温が下がってくるとともに連戦も減っていくので、考えてみればこの名古屋戦が一番コンディション的に難しい試合だったということも言えるでしょうか。

お互い狙いは違えども一進一退という感じの展開の中、先制点は浦和に転がってきました。21分、スローインのボールを受けた興梠が入れ替わると、そのまま侵入してクロス。これを小林がダイビングヘッドでオウンゴール。たしかに後ろに橋岡が詰めていましたが、無理してダイビングする必要もなかったかなというところでしょうか。名古屋の守備はとにかく人についてなんとかする+やばくなったらゴール前を埋める、なので、こう言った失点は一定数見込んでいる…かはわかりませんが。

しかし、これを活かせなかったのが今節の痛恨でした。27分にエリア内で前田直輝にボールを持たれてしまうと、狭いスペースを突破されクロス。これはなんとか槙野がニアで跳ね返したものの、マウリシオのトラップが伸びたところ突っ込んできた宮原にボールを奪われ、マウリシオが慌てて倒してPK献上。ジョーのPKは西川がセーブしたにも関わらずセカンドボールにいち早く反応した玉田に蹴り込まれてすぐさま同点。マウリシオのトラップミス、玉田を自由にした岩波の緩慢な反応と、やはり最終ラインの選手の集中力に問題があったのかなあという気もしてしまいます。暑さと連戦の疲れで、声を掛け合うことが出来なかったのかもしれません。

 

最も悔やまれる時間帯

その後も名古屋がボールを保持する展開。浦和はなんとかボールを奪って素早く攻めようとしますが、サイドに起点を作ってもなかなか効果的な崩しにつながらず、シュートの意識は強いものの、完全に崩しきるところまではたどり着けません。やはりアタッキングサードでの攻撃の質のほとんどを柏木に依存する浦和ですので柏木の不在は影響大きく、名古屋の4-4ブロック(というか人垣)を攻略するだけの崩しを見せることが出来ませんでした。

そうこうしているうちに42分、最終ライン前でボールを受けたシャビエルに対して槙野がファール。これで得たFKにジョーが打点の高いヘディングで合わせて逆転。やはり最終ラインが潰しきれなくなったところからの失点となってしまいました。ただ、同じような位置からのFKはこの時点で3回目で、浦和の守備は並び順まで含めて全て同じ対応をしていましたので、名古屋もこの失点のシーンまでには浦和のゾーン守備攻略のイメージはついていたのかもしれません。

この前半終盤の失点はもちろんショックだったのですが、結果論ですが勝敗への影響という意味ではその後の時間帯が最も悔やまれたのではないかと思います。前半終了間際の逆転弾で完全に試合の主導権を握った名古屋は、後半開始以降はボールこそ握るものの、極端にリスクを犯さないプレーに終始していました。もちろん浦和が追いかけない限りはボールを保持していれば良いのですが、一度追い込まれると早めにロングボールを入れたり、初期ポジションを放棄してボールを受けるための長い距離を移動するといったオフザボールの動きを自重したりと、極端に安全策でプレーしていたように感じました。

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いくらテキスト実況とはいえ、ここまで片方のチームのプレーのみが取り上げられることも珍しいのではないでしょうか。で、この時間帯の浦和は本来であれば消極的になった名古屋に対して、ボールを保持して押し込んでいく、名古屋に苦手名守備を強要させて前2枚と後ろ8枚を分断させるようなプレーが必要だったのではないかと思います。この時間帯は明らかに浦和が主導権を握るべき時間帯であり、この時間帯に効果的な反撃が出来なかったことがその後の失点を招いたようにすら感じます。個別のシーンを振り返れば、ネットのパスを長澤がカットしたところから生まれたシュートチャンスをファブリシオが決められて入れば、とか、カウンターで橋岡が持ち上がり、興梠の裏抜けにスルーパスを出すも全く合わなかったシーンでもう少し良いパスが出せればということがあるのですが、全体として今節の浦和は試合の主導権を握ることに対して意識が低いか、もしくはボール保持の名古屋に対してカウンターという頭が強すぎたのかなと思います。こういうところで柏木がいると浦和もボール保持に一気に自信が持てるので、そういった意味でキャプテンの試合直前の離脱は痛かったと言わざるを得ません。

 

結果としての大敗

与えられたチャンスを活かさなければ罰を受けるのがフットボールの掟。67分に投入された現役大学生で特指選手の相馬勇紀が浦和にとっての死神となりました。イエローカードをもらっていたネットに替わって左サイドに入ると、2分後の69分に丸山のフィードに反応し左サイドを抜け出してクロス。これをゴール中央に走り込んだジョーが槙野を引き倒しながら押し込んで3-1。続く77分には右サイドからの持ち運びから大外でボールを受け、インサイドに切り込みながら絶妙のクロス。バックドア気味にゴール前に入り込んだジョーがまたも合わせてハットトリック達成。浦和にとっては絶望的な4点目を演出したのでした。試合終盤には直接FKを蹴ったことからも分かる通り、彼はおそらくキッカーとして非常に優秀なのだと思います。彼のプレーは初めて見ましたが、特に2アシスト目となったボールは完全に狙ってあの空間にボールを落としており、普通の選手ではそうそう蹴れない精度と質のボールではないでしょうか。初対戦の橋岡が疲れと油断もあってか寄せが甘かったとはいえ、あれだけのボールをいきなり蹴ってくるのは特異というほかありません。

この時間帯、浦和も荻原、阿部の同時投入で状況打開を図るなど奮戦しましたがゴールは遠く、結果としては1-4の大敗となってしまいました。浦和としては1-3になった段階で追いつくためには前からボールを追うしかなく、4点目は前から追った結果として和泉の前進を許しており、そこからジョーを経由したことで中央に5バックが寄ってしまい大外の相馬に時間が出来てしまいました。相馬の質が高かったことは認めざるを得ませんが、大敗の原因としてはその前の時間で2-2に戻して入れば展開が違ったのではないかと思います。個人的には、後半頭〜65分の20分間でもっと何か出来たのではないか、という思いが強くあります。

 

これで浦和レッズは終わりなのか?

今シーズン最多失点での大敗と、その前の清水戦と合わせての2試合7失点で中位からの脱出どころかまたも下位に沈みかけてしまった浦和。あまりの大敗にオリヴェイラ監督は審判を批判し、試合後の選手コメントも大敗の後らしく数が少なく、選手としてもフラストレーションと落胆は大きかったのではないかと思います。一方で、大敗とはいえその原因はある程度見えており、しかも改善・回復がなされる類のものではないかとも思います。たしかに構造的に最終ラインの負担が大きいため、最終ラインの5枚が耐えられなければかなり苦しい試合を強いられるのですが、真夏の連戦もこれで終わり。天皇杯とのやりくりはありますが、シーズン終盤に向かって日程は落ち着いてくる方向です。アジアの舞台を目指す上では今の成績と戦いぶりに満足することはもちろん出来ませんが、かといって清水戦の前から順位は変わらず9位のまま止まっていることも事実です。昨オフのラファの移籍、夏の遠藤の移籍を乗り越えて戦うチームと考えれば、悪くない戦いが出来ているのではないかとも思います。中位〜下位が例年以上に大混戦の今期のJリーグACLギリギリ圏内の4位とは勝ち点8差。残り10試合で逆転が不可能な数字ではありませんから、次節セレッソ戦でうまく切り替えて良い試合ができれば、またここから上がっていくことは不可能ではないと思っています。

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。