96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

イニエスタ不在の埼スタで5万5000人が観たもの。 Jリーグ第27節 vsヴィッセル神戸 分析的感想

お久しぶりです、ということでイニエスタ加入で大注目のヴィッセル神戸との一戦を振り返ります。

イニエスタ加入後の神戸の首都圏でのアウェーゲームはこの試合が今年最後ということで、以前から非常に注目度の高かったこの試合。公式発表で5万5000人が集まりましたが、当のイニエスタが怪我の影響で欠場しベンチ外と、まさかの期待はずれ。とはいえ普段Jリーグを現地観戦しない層や、最近は埼スタに足を運んでいなかったレッズファンなど多くの人を引きつけたイニエスタの存在感は流石という他ありません。

 

両チームスタメンと狙い

両チームのスタメンは下記の通り。

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浦和控え:榎本、萩原、茂木、柴戸、阿部、武富、李

 

浦和は内転筋の負傷で戦列を離れていた柏木がスタメンに復帰。中断期間に加入後攻撃の核として得点を重ねていたファブリシオが大怪我で離脱してしまったため、前線は興梠と武藤の2トップを採用し、中盤は3枚のボランチを並べる5-3-2でスタートします。

一方の神戸はイニエスタ不在に加えて吉田監督の解任および新監督のファンマヌエルリージョの労働ビザの関係で林暫定監督が始めて指揮をとる試合。試合前の予想に反して浦和と形を合わせた5-3-2を採用し、前線には長沢とウェリントンのツインタワーを並べてこの試合に臨みました。

浦和としてはファブリシオが抜けたものの興梠と武藤のパフォーマンスは信頼できますし、中盤の3枚、長澤、柏木、青木のところで運動量と強度は担保できるため、中断以降の基本的な形であった3-4-2-1のマイナーチェンジといったところ。しかし神戸は普段は4-3-3を軸とした4バック戦術を採用しているため、この5バックの採用がどのように機能するのかというのがこの試合のポイントとなりました。

 

神戸の考え方と浦和の準備してきたもの

基本的にミラーゲームとなる場合、試合は2パターンに分かれるのではないかと思います。まずは4-4-2どうしの対戦のようにお互いのポジションがほぼ全て噛み合い、至る所でマッチアップが発生し、戦術云々の前に11個の1on1をどちらが制するか、がキモとなるパターン、もう一つは、あるポイントで両チーム噛み合わない部分があり、故に両チーム同じポイントに強みと弱みが発生するために、どちらがそれをうまく使えるかが試合を分けるパターンです。

この試合の5-3-2同士の噛み合わせは、まさに後者のパターンであったのではないかと思います。

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5-3-2同士では、両サイドのWBや中盤の3枚同士など、ピッチの大部分で噛み合わせが合い、数的同数をどちらが制するかの戦いになりますが、お互いの最終ラインvs最前線では数的不均衡が発生します。つまりビルドアップの起点となる部分においては常に3on2、攻め側の最終ラインが1枚数的優位になる状況を確保できる一方、守り側は相手の2トップに対して3バックで守る分最終ラインにセーフティが1枚あるという状況です。

神戸がこの5-3-2を採用した理由が、ファブリシオ不在のために2トップを採用すると事前に報道があった浦和への対策なのか、自分たちの事情(つまりウェリントンと長沢を並べたい)なのかはよくわかりません。ただ普段中盤の三田を左WBに、左SBが本職の橋本を左CBに起用するなど、コンバートをしてでもこの形を採用したからには、それだけの意図があったと考えるのが自然でしょう。イメージとしては、浦和が2トップで神戸の最終ラインを追いかけてきたとしても数的優位を活かして確実にボールは保持できる。従ってその数的優位を中盤に持ち込み中盤の3on3を時には4on3とすることで中盤を攻略し、最後はサイドからのクロスにツインタワーが合わせてもよし、その背後でポルディや郷家がフィニッシュに絡めば尚よし、という感じでしょうか。イニエスタ不在の中で、個人の質よりも数的優位や高さといった物理的な優位性で勝負を挑んだというような感じもします。

対する浦和は、神戸のやり方を十分に研究してこの試合に臨んだようでした。

まず、浦和の守備は5-3-2というよりは武藤が下がり目で中盤の守備も兼務する5-4-1。これ自体は武藤の献身性を最大限活用した浦和のスタンダートと言えると思います。するとボールを持ちたい神戸のビルドアップの起点となる最終ラインに対して興梠一人で対処することになり、数的不利は深刻化します。基本的には5-4-1の1は守備時にたいした役割を担うことは出来ず、ここは自動ドアになってしまう一方で中盤以降の5-4の9枚で迎え撃つというのが5-4-1守備の考え方となります。

ただし、浦和は興梠に明確な役割を与えることで効果的に状況に対処しました。神戸の最終ラインは右から渡部、大崎、橋本の並び。徳島から加入した大崎こそビルドアップ能力に定評がありますが、渡部、橋本は違うタイプの選手です。そこで浦和は興梠を中央に留まらせ、大崎の前に蓋をすることで大崎からの配給を阻止し、そのかわりに大崎の両隣、渡部と橋本による中盤への侵入と配給を棄てていました。

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特に浦和が狙っていたのは渡部にボールを持たせることで、対人能力に評価が高い一方ビルドアップでは特別なものを持たない渡部がビルドアップの起点になれば、神戸が狙う最終ラインの数的優位を中盤以降の局面に持ち込む効果は限定的になってしまいます。せっかく目の前が空いておりパスを出しやすい状況にあっても、誰もが完璧なパスを出すことが出来るというわけではありません。実際これは非常に機能しており、神戸は渡部を起点とした攻撃をうまく作れずにボールを保持しているだけの時間を長く過ごすことになりました。

考えてみれば、ボールをほぼ取られない上に一人躱して局面展開まで出来てしまうイニエスタの存在は、神戸の抱える最終ラインのビルドアップ能力の不足という問題を覆い隠していた面があります。彼がいれば最終ラインから質の高いパスを供給する必要性は薄くなり、堅実にプレーする渡部のような選手でも、特に守備面で価値を発揮することができます。しかしイニエスタ不在により最終ラインのビルドアップの質が直接的に問われると、その堅実さがたちまち弱点として晒されるのは難しいところです。イニエスタ不在が大きく響いたとはいえ、その意味で浦和の狙いは完璧にハマったといって差し支えないのではないでしょうか。

 

神戸の苦戦を招いた3つの要因

上記の基本的な構造を背景に、試合を優位にすすめたのは浦和でした。ボール保持の時間は神戸が長かったものの、効果的にゴールに迫ったのは浦和のほうで、5-3-2で戦う上での熟練度の差を神戸に見せつけるような試合になりました。

神戸は守備時は基本的に前線から追いかけてボールを奪うという意図を見せますが、ビルドアップの起点でも浦和の3バックと中盤のサポートの熟練度と能力の適正で上回り、特に浦和がビルドアップで困ることはありませんでした。その裏で、この試合を通じて神戸は中盤の守備に大きな問題を抱えており、それを解決出来なかったことがこの試合の結果に直結したと言えると思います。

神戸の中盤守備の問題点は、主に三つの要因が作用していたと考えられます。ひとつは単純に中盤の枚数不足で、イニエスタ不在の影響かはわかりませんがポドルスキが中盤の3枚でプレーするには守備での貢献度が低く、神戸の守備は基本的に5-2ブロックとなっていました。

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5-2ブロックの問題は、3枚でも埋めることが難しいとされる中盤の横幅を十分にケアできず、中盤の選手がサイドのケアに出ていけばその分バイタルエリアにスペースを与えてしまうということに尽きます。ポルディは守備時には2トップと並ぶような形で中盤左前方をケアしており、浦和の最終ラインにプレッシングをかける意識は強いものの中盤の横幅を埋める作業を手伝うという意識はあまりなかったようです。すると、なんらかの形で浦和のビルドアップが成功し、5-2-3の3を突破された瞬間に神戸の中盤は2枚で横幅のケアとバイタルを埋める作業を同時に実行することになり、オーバータスクで必ず綻びが生じます。これが明確に現れたのが8分のシーンで、橋岡が三田を躱して前進すると、外に開いた長澤に預けてフリーラン。藤田がそれについていくと、バイタルエリアを埋めるのは郷家のみ。青木が後ろからサポートに入って結局中央を使いましたが、この時点で柏木は中央に浮いており、神戸の5-2守備が早い段階から弱点を晒していることがわかります。

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また、二つ目の要因は最終ライン5枚の迎撃にありました。前述の通り5-2ブロックで守る際には中盤のケアが困難なのですが、一方で5バックで守る以上最終ラインには人が余っています。それを活かし、本来であれば中盤のスペースを使いたい相手が縦パスを入れるなどしてきた際には、最終ラインから中盤まで飛び出して相手の自由を奪うような守備が必要です。この点でも神戸の守備は不十分で、最前線から中盤に降りてボールを受ける武藤や興梠に自由を与えてしまっていました。前線が浦和の最終ラインにプレッシングをかけているのにあっさりと躱されて前進を許してしまい、縦パスが入っても中盤で潰すこともできず、しかも自軍は中盤を2枚で守るためにサイドに揺さぶられるとすぐにバイタルエリアが空いてしまう。このような状態で守りきるのは最初から難しいと言わざるを得ず、正直設計段階で気づかなかったのだろうか?という疑問すら湧いてきます。神戸最終ラインの迎撃ディフェンスの不足は浦和のスローイン時にもよく現れていて、昔から浦和は興梠の前のスペースに長めのスローインを放り込みキープさせるという手法を得意としますが、この試合では興梠のマークの大崎が一度も興梠を困らせることができず、前半だけで4回も同じパターンでキープからサイドチェンジを許していたのはある種絶望的ですらありました。

 

熟練度の差が露呈した前半

さて、最後の要因は神戸のこの試合のトランジション(攻守の入れ替わり)の遅さでしょう。これがある意味で最も重要かもしれませんが、この試合の神戸の攻撃から守備、守備から攻撃の切り替えの遅さには敵ながらがっかりしました。今の浦和は、ミシャ時代ほどに組織的なカウンターが仕込んであるわけでも、昨年のラファエルシルバのように反則級のスピードを持ったFWがいるわけでもありません。非常に鋭いカウンターを繰り出せるというわけではない浦和に対して、神戸の選手が6人もトランジションで置いていかれ、しかもそれが度々繰り返されるのを観るのはなかなの衝撃でした。また攻撃時にもトランジションの遅さが目立ち、せっかく最終ラインや中盤でボールを奪ったのに前線も周りの選手も反応せず、またボールホルダー自身も早く攻めようという意図がないのか、スローダウンしてしまう。神戸は解法を持たないポゼッションからのセットオフェンスに自らのめり込んでいった感もありました。

この点浦和はオリヴェイラ監督の判断が素晴らしかったというほかありません。当初は鹿島時代の4-4-2しか引き出しが無いのではないかと思われていたオリヴェイラ監督ですが、選手の特徴を見極めて3バックを継続したことは浦和が中断以降徐々に浮上してきた大きな要因ではないかと思います。この試合でも、神戸のツインタワーとポドルスキが多少追いかけてきたとしても慌てず、時に中盤から降りてくる青木や柏木をつかって4バック化しながら、最終ラインの数的優位をベースに安定してボールを前進させ、安定したチャンスメイクを見せていました。これはミシャ時代から通算6年以上浦和が磨いてきた武器であり、この継続性を失わなかったことは浦和にとっては非常に大きなものだと思います。また、ACLを継続して戦ってきた影響かはわかりませんが、攻守の切り替えにおいても終始神戸を圧倒し、ボールを保持させつつも効果的にゴールに迫るというオリヴェイラ監督のチームらしい戦いを見せることが出来ていたのではないでしょうか。

前半の浦和の2得点は、どちらも上記の神戸の守備の課題を突いたものとして説明できます。先制点は浦和がボールを奪った場面から、しっかりとボールをつないで柏木が神戸の中盤2の脇から侵入。クロスは跳ね返されますが、バイタルエリアに溢れたボールを長澤が落とすと、青木がフリーで蹴り込み先制。

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この場面ではエリア内に侵入していく柏木に藤田がついていき、郷家が中央を埋めるよう戻っていましたが、セカンドボールの局面では遅れて戻ってきたポドルスキ一人しか反応していないという状況でした。柏木のクロスは難しいボールではなかったので、そもそもバイタルエリアにクリアするなという話もあるのですが、その前の段階で中盤に人が足りておらず、柏木に簡単に前進を許したことは見逃せない事実で、結果的にバイタルエリアでフリーを作り出してしまったということかと思います。

2点目も同様、右サイド橋岡が作った起点に武藤、長澤、青木が寄ってサポート。この時点では郷家が柏木のマークについてバイタルを埋めている状況ですが、まずは武藤が自分についている橋本の裏を、その直後に武藤が開けたスペースに長澤が走り込んでボールを呼び込みます。

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この長澤のランニングに反応が遅れたポドルスキ。長澤がフリーでスペースに入ったために郷家がサポートに出ていくと、またも柏木がバイタルでフリーに。青木から橋岡、橋岡が小さく中にカットインしフリーの柏木へ届けると、柏木と興梠でないと通らないようなコースが開通し、前半終了直前の2点目となったのでした。

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浦和が意図して神戸の中盤を寄せ、バイタルで柏木をフリーにしたかと言えば、そうとは言い切れません。しかし重要なことは、浦和の攻撃ではボールホルダーをサポートする動きと、相手を動かせるようなフリーランが多く見られたことだと思います。神戸の中盤の守備は上記の通り十分でないのですが、それにしてもボールを受けてターンする部分やフリーランのタイミングと質において浦和は試合を通じて上回っており、このフォーメーション、そしてチーム全体の連動という面において神戸との熟練度の差を見せつけた前半になりました。

 

アジアを狙う浦和レッズの地力

後半開始直後、浦和は峻希のミスをついた武藤がループでねじ込み3点目。この3点目でほとんど勝負がついてしまった感はありますが、その後の対応など含めて引き続き振り返ります。神戸は後半開始時点では前半とおなじ形でスタート。しかし(当たり前ですが)前半とおなじ形で戦えば熟練度の差がそのまま現れて何もできないということで、50分を目安に古橋を準備していました。個人的な印象ですが、やはり監督のキャリアや経験はこういうところに出るのではないかと思っていて、この後半開始の5分間は神戸にとってほとんど意味のない時間でした。うまくいっていないことが前半であれだけ明らかになってしまっているのに、おなじ形で入って、ミスからとはいえ早々に3点目を失って試合を終わらせてしまったのですから、やはりうまく行っていないなら後半頭から試合を変えた方が良いと思います。

結局、神戸は失点直後に2トップが機能していなかった長沢に替えてWG古橋を投入。5-3-2を諦めて4-3-3に移行します。

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イニエスタ不在でも神戸はこの4-3-3でスタートした方が良かったんじゃないだろうかというのが正直な印象です。コンバート的な起用もなくなり、前半に見せたスタック感は多少なり改善されました。この4-3-3神戸で面白かったのは古橋の動きで、大外に張るのではなくインサイドに寄ってから裏をとる動きを繰り返していました。またポドルスキの役割も変わるようで、ウェリントンの近くで2トップのように最前線でプレーする時間が多くなっていたように思います。右WGに入った郷家もインサイドに入ることを厭わない感じでしたので、神戸としては基本的にはSBを上げて大外を使わせる戦い方をやっていきたいということなのでしょう。

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ただし、ここでも問題はイニエスタ不在による最終ラインのビルドアップ能力でした。浦和はハーフタイムで既にこの4-3-3への移行を予想していたのだと思いますが、神戸が古橋を投入するとすぐにはっきりとした5-4-1守備へシフトしました。それに伴い浦和のファーストディフェンスはほとんど効かなくなるのですが、興梠は前半同様に大崎には蓋をし続けていたため、前半同様に渡部が持ち上がろうとするも詰まってしまうというシーンが散見されました。63分にはポドルスキが渡部に「なんでここまで持ち上がってこないんだ?前が空いているだろう?」というジェスチャーをしているのですが、渡部からすれば最終ラインにいる自分がポドルスキの求める高さまでボールを運んでいくことは感覚的に受け入れられないのかもしれません。結局、その後も神戸のビルドアップは機能したとは言い難い状況でした。

試合は75分に浦和が決定的な4点目。武藤から長澤のスルーパスは一度相手にクリアされますが、こぼれ球を柏木が拾うと間髪入れずに「右足で」クロス。ファーサイドに流れていた長澤への完璧なデリバリーはこの試合2アシスト目となりました。このシーン、何度リプレイを見ても柏木がいつ長澤の位置を確認したのか、視線が長澤を捉えている感じがしないのですが、少し前のシーンから感覚でクロスを上げたんでしょうか。浮き玉を相手二人に囲まれながらトラップし息つく暇なくファーサイドに完璧なボールを放るのは簡単なことではありません。今節は神戸の守備もあまり良くありませんでしたが、この4点目のアシストは柏木の能力を存分に見せつけたものだったと思います。

それにしても、今節目立ったのは浦和の選手たちの躍動でした。特に中盤の3枚は、神戸が構造的に中盤を開けがちなためプレーしやすい環境だったとはいえ、柏木2アシスト、長澤1アシスト1ゴール、青木1ゴールと全員が得点に絡む仕事ぶり。浦和の中盤の選手がいかに相手ゴール前でプレー出来ていたのかがわかります。スペースを埋め、ボールを奪い取る青木、攻守のリンクマンとして、特に奪ったボールを運んでいける長澤、2トップとともに攻撃を演出する柏木と、それぞれの特徴を活かしながら試合を支配していました。また2トップがそれぞれ得点したこと、最終ラインのマウリシオがほぼ完璧なプレーで神戸のFWをシャットアウトしたことなど、ほぼ文句のない出来だった浦和の地力ばかりが目立つ試合となりました。イニエスタだけを観に来た観客がどれだけいたかはわかりませんが、5万5000人の大入りとなった埼玉スタジアムで観衆が目にしたのは、変革に喘ぐ神戸と、ACLを戦うだけの資格を示した「強い浦和」の姿だったのではないでしょうか。

 

来年のACL争いはこれからが本番

今節の4-0の勝利で、浦和は神戸を追い抜いて勝ち点38で8位に浮上。残り7試合で現在3位のFC東京との勝ち点差は5。しかもこの7試合に仙台、札幌、鹿島、FC東京ACLを争うライバルクラブとの対戦を4試合も残しています。名古屋に大敗したことで一時は残留争いに脚を突っ込むかとも思われた浦和ですが、どうやらこの2連勝で上を目指す戦いに間に合ったようです。

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このリーグ終盤にきての復活は、やはりシーズンも終盤に入って連戦がなくなったためにコンディション調整がしやすくなり、その分パフォーマンスも安定するということなのだろうと思います。もともと昨年のACL王者となったチームがベースなのですから選手の質は折り紙つき。今季苦しんだ序盤のコンディション調整の失敗や夏場の連戦でのメンバー固定によるパフォーマンス低下がクリアできれば、中断直後のように力強い試合を期待できるということでしょうか。また、交代選手のパフォーマンスという意味でも、今節は中盤に柴戸が途中出場し埼スタデビューを飾りました。最後はロストからポドルスキを潰してイエローカードを貰ってしまいましたが、カウンターを潰す危機察知能力など光るものは見せたのではないでしょうか。怪我さえなければ出番はもらえそうなので、今後も期待したいところです。

一方の神戸は難しい試合をしてしまいました。試合開始から4-3-3でスタートするか、せめてポドルスキを中盤ではなく前線で使うことで中盤を3枚でケアするような形を設計していれば試合も違ったかもしれません。神戸は新監督のリージョの前でチームの厳しい現在地を晒した試合となってしまいました。このチームがイニエスタ一人の存在でどこまで変わるのか、それはそれで興味がありますが、今節の出来を見る限りでは「バルサ」には程遠いと言わざるを得ません。そもそも「バルサ化」といっても時代や監督、選手構成によってバルサもスタイルを変えており、リージョのサッカーが「バルサ化」なのか?という疑問もないことはないのですが、ここからリージョの下チームがどのように進化していくのかは楽しみです。

もっとも、個人的には神戸は来年のACL出場は難しく、また今オフに大量の補強が必要になるだろうと思います。今節の実況解説コンビは「神戸には良い選手が多く、「バルサ化」を目指すチームでパスサッカーが十分に出来る」と言っていました。良い選手が多い事はその通りですが、少なくとも今節の出来ではパスサッカーを十分にこなすのは難しいでしょう。試合後のコメントでは「パスを受けた後相手を引きつけてからパスする」ことを意識した」という旨神戸の選手が話していましたが、今節のように前、後ろ、横どこにもオフザボールの動きがない中でズレを作っていくのはほぼ不可能で、やるとすれば寄せられても失わず、そして難しい体勢でも中距離のパスを確実に成功させる相当な技術が必要です。今節見ていた中ではポドルスキの要求を感じてオフザボールでアクションを起こそうとしていたのは本職でない位置に入った三田だけでしたし、最終ラインはボールを持ち上がって数的優位を中盤に届けるというプレーが出来ていません。また4-3-3にしろ5-3-2にしろ中盤の守備の整理が必要で、チームのアイドルであるイニエスタポドルスキの同時起用に拘るのであれば相当な守備性能を持ちながらパスサッカーに順応できる有能なボランチとが必要になります。思いつくだけでも、ビルドアップ能力に長けたCB、守備性能が高くパスサッカーに順応できるボランチ、ドリブル・パス・フィニッシュ全てを有する右WGといった選手は神戸が今後血眼で探していくことになるのではないでしょうか。

そういう意味では、神戸が今オフに青木にオファーを出すということも考えられるかもしれません。今節のパフォーマンスだけでなく、ボールを刈り取って繋ぐ、時には攻撃に出て行くというプレーでは青木はリーグ有数の能力を発揮しており、年齢的にもここから全盛期を迎える選手です。もちろん、浦和にとっては出場機会が減って苦しかったであろうミシャ政権下で移籍せずに耐え抜いてくれた選手ですから、簡単に手放すとは思えませんし、ファンとしても絶対に失いたくない選手です。しかし神戸は既に川崎の車屋に獲得オファーを出していると報道も出ており、本気になればカネは積めるはず。となれば、やはり浦和としては残り試合を全身全霊で戦い、来年のACLという浦和の選手にとっての最大のインセンティブの一つを必ず確保しなければならないと思います。

残り7試合、日程や組み合わせは浦和にとって追い風です。必ずACLへの切符を掴み取ってくれると信じています。そのためには、今日のような「本当の埼スタ」で試合をたくさんさせてあげたいですね。

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。