96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

それぞれの課題とジレンマ - Jリーグ第8節 vsヴィッセル神戸 分析的感想

 

今年もイニエスタが来なかったので恨み節をツイートしたところちょっぴりバズりました。

んなことはどうでもいいですね、ということで神戸戦を振り返りたいと思います。浦和としては、前回の記事でも書いた通り、かたまりつつある暫定的に最適な11人がシステムとしてどの程度の向上を見せられるか、そして上位争いから早々に脱落しないためにも不恰好でもホームでの勝ち点3を確保できるかが焦点となるゲームと言って差し支えないでしょう。

 

両チームのスタメンと狙い

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浦和控え:福島、宇賀神、岩波、長澤、マルティノス、アンドリュー、汰木

 

浦和のスタメンは前節ガンバ大阪戦と同じ。前回の記事でも触れた通り、うまくいったメンバーは替えずに熟成の時間を取らせたいというのがオリヴェイラ監督の意図なのでしょう。ピッチ内で最適なシステムを構築する実験は今節も続きます。一方で「辞任」したリージョ監督に替わってまたしても監督に昇格した神戸の吉田監督は、不在となったイニエスタに替えて小川を右WGで起用。ポドルスキがトップ下に入り、左SBには裏への対応の甘さが指摘されていた初瀬の代わりに三原が入りました。

この試合の構造を理解するにあたっては、やはり神戸の攻め方(ビルドアップ)に対して浦和がどのように守ろうとしたかが最も重要ではないかと思います。浦和は基本のフォーメーションは上記の通り3-5-2(5-3-2)を採用しつつ、守備時は潔く5-4-1でブロックを作る形を採用していました。これまでの実験の中で、前から追いかけようとして簡単に外されてしまい最終ラインではどうしようもない状況となり失点という場面がありましたので、その反省を含めて一度相手の攻撃を受け止める昨年の基本に立ちもどろうという意思がここ最近の数試合で見られていましたので、今節も同様の考え方であったと思われます。

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浦和の5-4-1守備がどのような考え方でデザインされていたかというと、やはり中央を固めることが第一優先だったようでした。空中戦モンスターのウェリントンはマウリシオと槙野でなるべく監視をして、WBが相手のWGを見る形で5バックが自陣に張り付きます。中盤を任されるのは柏木、青木、エヴェルトン、武藤となりますが、ポイントなのは柏木と武藤の守備時SHで、彼らは自陣ハーフスペースを立ち位置の起点にして壁を作っていたようでした。つまり、本来であれば彼らは相手最終ラインのビルドアップにアタックする役割を担うこともできるのですが、まずは相手にハーフスペースを使われないように彼らを人垣として使うというのがチームが今節に準備した約束事であったようです。

神戸はリージョが去ってしまったものの、クラブの目標でもある「バルサ化」の御旗は簡単には下ろせないでしょうし、吉田監督にもそのつもりはないようでした。ビルドアップの担い手として7人目の男として獲得したサンペールを、彼の守備能力や機動力に関する疑問を意に介さぬかのように中盤に起用したことは、神戸としてはビルドアップ重視の路線を続けていくのだという意思表示であったかもしれません。

さて、ここで両者の思惑が合致することになります。高い目標を掲げつつもシーズンを戦いながらのぶっつけ本番でのチーム構築を余儀なくされている浦和はとにかく失点をしたくない。従ってクラブの強みである優秀なCBの能力を活用すべくブロックを作って攻撃を受け止めたい。一方の神戸は「バルサ化」するにあたって毎試合毎試合ビルドアップから逃げるわけにはいかないので、ボールを繋ぎたい。浦和から見て自陣ゴール前を浦和が占有し、そのかわり神戸のビルドアップラインは潔く神戸に明け渡す。この割り切りが今節のゲーム展開の根幹であったことは疑いようがありません。

 

神戸の攻め手と問題点(前半編)

この試合、神戸の攻め手は基本的に以下の3つとなっていました。

  • 中央の数的優位or同数を攻略する中央ビルドアップ
  • SBが高い位置に出張り、WGと2枚で攻めるサイド攻撃
  • ゲーゲンプレスからのショートカウンター

さて、序盤の神戸からすれば中央は塞がれているため、プロトコル上の次善策はサイドを起点にしたビルドアップという事になります。神戸の両SBはビルドアップ段階で高い位置を取っていますので、神戸は浦和の5-4-1ブロックの外で構える西と三原にボール前進を任せることになります。

浦和は両SH、というかチーム全体で、まず中央を塞ぎ、大外は捨てる、大外にボールが出たらSHが中のコースを切って同サイドのWBとともに対応するという準備が出来ていたようでした。神戸の最終ラインからSBを使ってボールを前進させようとする神戸のビルドアップに対して、大きな混乱なくまずはブロックを作って神戸の攻撃を受け止めようとする意思は十分に共有されており、慌てるそぶりは見られませんでした。

神戸の問題点というか悩みどころは、ボールを運んだ後、どのようにゴールを決めるかという部分でした。神戸のビルドアップ隊は、2枚のCBと中盤のサンペールと山口、そしてサイドに張り出す両SBの6枚が基本です。一方で浦和の守備ブロックは神戸のCBへのプレッシャーはほぼ放棄しており、前述の通り中央をまず固め、大外に振られた場合はSHが中から寄せつつ、WBが前進して捕まえます。この時WGのマークはスライドした左右のCBに受け渡しながら最終防衛線を圧縮して神戸のプレーエリアを制限する形を取ります。これに対して神戸のビルドアップ隊は両SBを使うわけですが、神戸のWGとSBの2枚に対して浦和はSH、WB、CBさらには中盤からボランチまでヘルプに出れる距離感をベタ引きによって保てていますので、2枚だけでサイドを攻略することは非常に難しい。しかも浦和が特にプレッシャーをかけてこない最終ラインのビルドアップに6枚使っているため、必然的に中央に枚数が足らず、クロスが上がってもウェリントンが浦和の3バックに包囲された状態で空中戦で迫力を見せることも難しい雰囲気でした。

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本来であればそれでもボールを回し続け、浦和の守備ブロックの綻びが見つけていく作業を繰り返すことになる神戸ですが、この試合では7分の大崎のスリップによって興梠が抜け出し、最終的には自ら得たPKを冷静に沈めて前半10分で浦和が先制。この場面でも大崎が三原に預けた時点で浦和はサイドで上図の準備が出来ており、三原には選択肢がほとんどない状況で、しかも興梠は三原から大崎へのリターンを見越して大崎へプレッシャーをかける準備が出来ていました。大崎のスリップは不運とか言いようがないものですが、敢えて言うのであれば完全に準備されているサイド攻撃のために三原に安易に預けたこと自体が間違いだったかもしれません。

今季初めて前半に(!)得点し、守り抜くゲームプランに欠かせない先制点を手に入れた浦和は、この試合のミッションが一層明確になったと言えます。逆に得点へのプレッシャーが高まった神戸は、試行錯誤の後に徐々に浦和ゴールに迫る方策を見出していきます。その一つがサンペールを中心にした中央攻略でした。序盤の浦和はの守備はまず中央を固めるということで柏木と武藤がハーフスペースに蓋をしたと表現していましたが、時々最終ラインに落ちるサンペールや山口をサポートするようにポドルスキがビルドアップに関わる素振りを見せ始めると、センターサークル付近に神戸の突破口が見えてきます。

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浦和の5-4-1はたしかに強固な人垣を形成しており堅いのですが、神戸の4-3-3の中盤3枚が近い関係性を築いた場合、3枚に対して浦和のボランチ2枚では数的不利or同数となる現象が生まれます。例えば13分にはサンペールがポドルスキのサポートを得ることで前を向き、山中と槙野の間のスペースに走り込んだ小川にスルーパスを通すシーンがそれです。浦和は神戸にサイド攻撃を狙わせている間は問題ないのですが、根本的に中盤中央で数的不利であることをSHの立ち位置で隠していました。神戸がそれを乗り越えて中盤3枚で前を向くことが出来ていれば、浦和は守備の修正など別の手立てを用意することになったかもしれません。実際、サンペールは簡単にサイドに展開するというよりも少しボールを保持しながら中央を通すパスコースを探してプレーしていたように思います。青木とエヴェルトンは状況に応じてサンペールと山口の中央での前進を塞いでいましたが、最終ラインに入り込むかのような低い位置でボールを保持されるとプレスに行くべきか構えるかが曖昧になります。現象としてはエヴェルトンが引き出される形が多かったのですが、ここにポドルスキが3枚目として中央をサポートすると、壁パスなどで中央からの前進が狙えます。こうなると浦和は苦しくなり、例えば浦和が5バックを崩せないことを前提に考えれば、5-4-1を諦めて5-3-2にするなどの方法を考えなければいけません。しかしそうなれば両サイドの攻防はWBが一身に引き受けることになるため神戸はサイド攻撃に活路が見いだせます。ベタ引きされてなかなか攻め手を見つけられなかった神戸ですが、前半早いうちに意識的にこの攻め方を徹底できるほどの認識共有が出来ていれば、ももう少し効果的に西川を脅かすことができたかもしれません。結局19分に近い形から山口のスルーパスで惜しいシーンを作りますが、それ以外には前半にこの形を使うことは出来ませんでした。

 

浦和の課題とジレンマ

上述した通り、浦和は神戸にボールを持たれることを初めから許容しており、さらに前半早い時間で先制点まで奪えたことからこの試合のプランは嫌でもはっきりすることとなりました。SHがハーフスペースに立つことで中央を消しているように思わせ、3枚で対応できるサイドに誘導し囲い込む。神戸にメッシはいないため、基本的にCBが余っている状態であれば大崩れはなく、また中央もウェリントン1枚であれば西川、マウリシオ+1で十分に安定した対処が出来ていました。

一方で前半から90分を通じて頻出する浦和の課題はポジティブトランジション、守備から攻撃の切り替えの部分でした。これはこの試合だけの問題ではなく今シーズン、もっと言えば昨年から根本的な解決が出来ていない、オリヴェイラ・レッズ最大の課題の一つです。浦和の5-4-1はどうしてもボールを奪う位置が低くなるため、ボールを奪ってからショートパスをつなぐというのはなかなか難しい所。特に今節では、神戸の攻撃を囲い込むために柏木、武藤のSHもサイドの守備に出ていきますので、中央には青木とエヴェルトン、そして最前線の興梠しかいない状況が頻発していました。オリヴェイラ監督のチームとしてはまずはサイドで起点を作りたいところですが、WBも最初は5バックを形成しているわけでポジティブ・トランジション時のスタート位置は低く、選択肢をなくした最終ラインは詮方なく中盤を見ることになります。多くの場合エヴェルトンがボールを預かりますが、もちろんその次が準備されているわけではないので彼一人ではどうしようもありません。また神戸は人数をかけているビルドアップ隊のうち中盤のサンペールと山口、とくに山口蛍がさすが代表レベルの出足で浦和のポジトラを潰しまくる構図となっており、これは90分間全く改善されませんでした(もちろん、誰が悪のではなくそういう割り切りなので仕方ないのですが)。エヴェルトンも個人の努力としてせめてファールをもらおうと相手を背負うのですが、最近はなかなかファールも貰えていません。ただ、長澤とエヴェルトンを比べた時に、フィジカル面やボールキープの面でエヴェルトンに優位があるのかなという気がしています。

で、大事なのはこれをどうするか。前回の記事で触れた通り、オリヴェイラの修正方法が人を替えるものであるとするならば、最大の可能性はファブリシオの復帰となりますが、トランジションはサッカーにおいて最も奥深い要素の一つ。一人選手が変わっただけでは簡単に解決しないのではないかと思います。やはり根本的に中盤の選手を増やし、トランジション時にボールを繋ぎ前に出ていける選手を多く用意すること、そして自陣深くではなく、より攻撃に移りやすい位置でボールを奪うことが大事なのではないでしょうか。本当は後ろ5枚でも、ポジティブトランジションでのボールの逃し方とか、どのスペースに人を走りこませるとか、そういう仕込みはできるはずなんですが、時間もないのかなかなかそのような約束事を作っているようには見えません。そうすると必然的に、最終ライン5枚は重すぎるため、中盤を増やして高い位置にアプローチしていくための4バックへの取り組みが必要になっていくのかなと考えています。

ということで、浦和は自分たちの状況もあってあれもこれも欲張れないため、自陣でしっかりと構えつつサイドで囲い込んで90分間守りきることを考えました。その副作用として、神戸のビルドアップを放置するとともに自分たちのポジティブトランジションに深刻な問題を抱えることとなりました。ピッチを全てカバーできるほどの選手を起用できないのがサッカーの本質ですから、何かを得れば何かを捨てることになるわけで、その中でジレンマ的に抱える問題については、解消するというより上手く付き合っていくことが必要なのかもしれません。

 

神戸の攻め手と問題点〔後半編)

さて、後半もほとんど試合の基本構造は変わりませんので、特段詳しく説明すべきことはないのですが、神戸の見せた工夫をいくつか記録しておきます。この試合、神戸が最もゴールに近づいたのは後半開始〜60分すぎまでの20分弱の間でした。

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この時間帯、神戸は明らかに両サイドのハーフスペースに誰か人がいるように徹底していました。このエリアに人を置くことで選択肢が増え、また浦和の最終ラインが引っ張り出されることでより効果的に浦和の最終ラインの裏へ入り込んでいくようになり、2on3を作られて停滞していたサイド攻撃や、中央からサイドの裏へ出すしかなかった攻めのパターンに、サイドからハーフスペース、ハーフスペースから裏といった浦和のディフェンスラインが裏返されるような形が加わり、効果的な攻撃が連続する時間帯となりました。この時間帯は、ハーフタイムの指示からか浦和が前への圧力を強めており、またエヴェルトンと橋岡が相次いで怪我をして中盤の立ち位置を入れ替えたりしている時間帯だったために第2プレッシャーラインと最終ラインにスペースが出来ていたことも神戸の攻撃を後押ししたかもしれません。

しかし前半同様に、ビルドアップとチャンスクリエイトに人を掛けているためにゴール前に人数が足りなくなる現象に改善は見られませんでした。古橋の個人突破や中央でボールを受けたポドルスキから裏を狙う小川へのパスなど、狙いに近い形は出来ていたものの、その形を作り出すまでに人数を使い切っている感は否めず、最後にゴールを取りきるまでの迫力が出せなかったのは神戸にとっては重い課題と言えるかもしれません。

その後、吉田監督はポドルスキに替えてTJ、小川に替えて増山朝陽を投入します。この交代でウェリントンとTJの2トップとなったため、ゴール前に迫力を出したいという吉田監督の思惑があったのでしょう。しかし皮肉なことに、はっきりとした2トップにして以降は中盤が中央が2枚となったことで浦和のディフェンスと枚数が合ってしまい中央突破が減り、サイドでも再三中央に走り込んでいた小川ほどのダイナミズムを増山が見せられずに停滞し、浦和としては逆に守りやすくなったかもしれません。

神戸がバルサ化を諦めないとして、ここに大きな現実の壁があるように思います。つまり、本家バルサのごとく安定して意図したチャンスを論理的に作り出すためには、まず中盤中央かサイドのどちらかに明確な突破口を見出し、順番に相手のブロックを動かしていく必要があります。安定して狙い通りプレーするためには人数の優位か相手の守備を物ともしないような技術的・身体的な優位が必要になるわけですが、今節に限ってはイニエスタが不在で人数をかける必要があったのかもしれません。しかしここに人数を掛ければどこかに人数が足りなくなる。CBを無闇に前に出せないのであれば人数の不足は最後の局面にダイレクトにのしかかってくるわけで、結局これを解決するためには人数の不足を一人で解決してくれるFWが必要にある…。端的に言えば、今節の神戸はビルドアップに6人を使ったわけですから、問題は最後の局面の質が足りなかったということになってしまいます。

たらればですが、ここにイニエスタがいれば中盤のビルドアップにもっと人をかけずに前進出来たのでしょうか。古橋やポドルスキがゴールを奪う仕事に集中出来たのでしょうか。浦和にとってはイニエスタがいなかったことが競技的なアドバンテージになったことは間違いないのですが、やはり少し見てみたったような気もします。

 

バルサ化」への道のり

神戸にとっては、これはより根本的な問いかけとなるのではないでしょうか。まさか「バルサ化」というのは「イニエスタがいる間だけバルサ化」という意味ではないでしょうから、少なくとも中長期的には彼がいなくとも意図したビルドアップからチャンスクリエイトを安定して実行できなくてはいけません。その時ビルドアップに人数をかけて対処するのであればWGやCFにはもっと強力な選手が必要になるはずです。三木谷マネーという国内最強クラスの資本が付いているのでそれもまた良しなのかもしれませんが、バルサ化を突き詰めた結果、ラストピースはメッシだったということは十分にあり得ると思います。そもそも本家バルサ自体が、毎年強力なWGを獲得しては捨てているのですから、それ自体正しい方向なのかもしれませんが。

もっと短期的に、当座吉田監督が非常に頭を悩ませるのは求められる哲学の体現と勝ち点の稼ぎ方ということになるでしょう。イニエスタがいればビルドアップやチャンスクリエイトの質が上がることは間違いなく、また今節の古橋の役割の多さと消耗の激しさを正しく観察出来ていれば今節のやり方では理想と現実のギャップが大きすぎることは火を見るよりも明らかです。しかしイニエスタポドルスキ、そしてビジャまで使えばリージョが抱えた問題と同じくキム・スンギュはベンチ外となるでしょうし、何より守備の強度が相当に毀損されるために必然的にオープンな展開が増え、得点の期待値とともに失点のリスクが高まります。

今節のように守備にも走れる小川やバランスを見れる三原といった現実的な起用が続くのであれば今節の浦和のような引きこもりは対神戸の有効な戦術と言えるでしょうし、豪華外国人を起用し理想に走るのであれば撃ち合い覚悟でトランジションゲームに持ち込み、カウンター要員をSB裏に走らせるのが有効です。それにしても、上からも下からも強烈なプレッシャーに晒されるこの状況でのチームマネジメントに加え、開幕から2ヶ月を経て強みも弱みも周知となりつつあるこの状況での仕事の難しさたるや…。

結局神戸は、というより三木谷会長自身が、バルサ化の道筋をしっかりと見据える必要があるのではないかと思います。彼が金を出しているのですから誰にも文句は言えないのですが、もしもこのプロジェクトを最速で成功させたいならば、強固な資本力をバックにバルサの戦略をまるごとコピーする必要がある。結局、「バルサ化」が目指すプレースタイルがいわゆるポジショナルプレーなのであれば、ポジショナルプレーとは論理的な勝利を求める方法論なので、裏を返せば論理的にプレーすれば勝てるだけの戦力が前提になるということになります。年々レベルが上がるJリーグとアジアの舞台で、VIPの同時起用と神戸の現有戦力は「論理的にプレーすれば勝てる」戦力に足るものなのか。そう考えると、改めてバルセロナが達成している資本と哲学の積み上げの高さに圧倒されるところです。

 

長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。