96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

プラスアルファの差:ルヴァンカップGS第2戦 vsセレッソ大阪 分析的感想

よくわからないんですが、セレッソとの対戦をレビューするのは初めてらしいです。結構印象深い試合が多い気がするし、何よりセレッソ大阪を分析するブログのAkiさんファンの僕としては自分自身信じられないのですが(普通に2,3試合は書いてると思ってました)、やっと弊ブログにも「セレッソ大阪」カテゴリが追加されました。ようこそ。ちなみに柏戦でもこんなことを書いたんですが、柏の試合は普通に書いてました。僕の記憶むちゃくちゃですね。

というわけでルヴァンカップが再開。前節のベガルタ仙台戦は2月、つまり半年ぶりのルヴァンカップと言われると、もうそんなに経ったっけ?という感じがします。今年は一年がいつも以上に早い感じがしますが、これは自粛したり在宅勤務したりで活動の総量が減って日々代わり映えしないからなのか、浦和レッズの試合をまだ10試合しか観ていないからなのかはわかりません。

カップ戦のレギュレーションも特例的に変更となり、戦う前に松本山雅が脱落。仙台、浦和、セレッソの3チーム一発勝負ずつのグループステージとなったため、浦和はこの試合がはやくも最終節となります。勝ち抜け条件はいろいろありますが、浦和は要は勝てばええんやという試合でした。

スタメンと狙い

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スタメン。前節から浦和は8枚、セレッソは4枚変更。

浦和の控えは彩艶、鈴木、青木、荻原、武田、涼太郎、健勇。
セレッソは茂木 秀、小池 裕太、ヨニッチ、清武、奥埜、西川 潤、豊川。

浦和は前節からスタメンを8枚入れ替え。特にここまでスタメンを固定していたGKと両SBをそれぞれ福島、岩武、宇賀神に変更したことは浦和にとっては注目すべきポイントでしょう。一方でそれ以外の選手は前節スタメンではなかったというだけで、8人替えたというわりには実績的にも能力的にもレギュラーから大きく落とした感じはありません。興味深いところで言えば、清水戦のスタメンのうち西川、橋岡、トーマス、槙野、山中、汰木とバックライン5枚を含む6人が今節召集外ということで、この辺は中2日で迎えるアウェー名古屋戦を見据えたアウェー2連戦用のオペレーションなのでしょう。今節出場した選手は大阪から名古屋に直接移動し、上記の6人を含む今節召集外のメンバーは浦和から名古屋に直接移動することになるのだと思います。

一方のセレッソは前節からスタメンを4枚入れ替えたようですが、ベンチにヨニッチ、清武、奥埜がいるあたり、1.5軍から1.7軍くらいのメンバーに見えます。セレッソは今季のJリーグでは特徴的なスプリント回数の少なさを記録しているチームで、1試合平均スプリント数がリーグ最低の123回(ちなみに、最高はFC東京の183回、浦和は168回で6位、17位の名古屋等でも152回!)を記録しています。明らかにスプリント数を少なく抑えることをスタイルとして志向しているというのはもちろん、相手あってのゲームということを考えれば、セレッソは自分たちのスプリントが少なくなるようなゲーム展開を相手に押し付けることすら出来ている、と考えることができます。このスプリント回数の少なさが選手の負担の少なさ(=主力選手を多くのゲームで起用できる)に繋がるのかどうかはわかりませんが、ロティーナ・セレッソの一つのスタイルであることは間違いありません。

というわけで、スプリント回数に現れる通り両チームの狙いは対照的で、走りたい浦和と走りたくない(走らせたくない)セレッソという構図。どちらがゲームを自分たちの色で染めるのか、お互いのスタイルが真っ向からぶつかる試合となりました。

ゲームの構造:四つの局面で見る両チームの戦術①

序盤から色を出したのは浦和でした。ボールを失った瞬間から素早く相手のボールホルダーにプレッシャーをかけ、奪ってからカウンターに出ていくんだという狙いを明確に表現していた上に、それでもセレッソがボールを保持したり、ゴールキックからビルドアップがスタートしたりするセットディフェンスの局面では、高い位置からのプレッシングを敢行していました。

セレッソのビルドアップに対して、まず第一プレッシングをかけるのは浦和の2トップ+エヴェルトン。左右に開くセレッソのCBの選手をチェックします。この時、浦和の2トップは必ずどちらかのサイドを切りながら、斜めにアプローチ。正面から追いかけずに片方のサイドを切ることでセレッソの選手を方向付けようという意識が見えました。こうなるとセレッソのCBに選択肢は多くなく、たいていは大外に出ているSBにパス。浦和はおそらくここを第一の狙い目としており、ボールサイドのSBにはSHがかなり早くチェックに出ていました。逆に言えば、セレッソのSBはSHで見るという約束のために、その前の段階、セレッソの最終ラインへのアプローチにはSHをなるべく使わないという意図があったかもしれません。

また、セレッソのビルドアップは最終ライン+GKを助けるためにボランチが降りることがありますが、これには基本的にエヴェルトンがついて行って対応しており、結果的に中盤は頻繁にダイアモンド型になっていました。前に出ていくエヴェルトンが頑張る範囲がかなり広くなりますが、その分SHを温存できるのでSB経由でボールを運ばれることは少なくなります。

で、選択肢のなくなったセレッソはロブパスを多用。苦しくなったら裏に蹴るほうがリスクヘッジできると思うのですが、あえてここで前線中央にロブパスを出すことが多かったのは、その時の状況のほかにセレッソのボール前進の仕組みが大外から中央へという流れを意識しているからではないかと思いました。ボールが入る中央にはセレッソの2トップと逆サイドのSHが絞っていることが多いのですが、浦和はここにボランチの1枚と逆サイドのSH、そして2トップをそれぞれケアするCBがついて行くことで枚数を確保。浦和はこのエリアでボールを回収することが多かったと思いますが、今節プレッシングをしていこうと決めた時点で、おそらくここまでデザイン出来ていたと思います。

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浦和のプレッシング:4-1-2-1-2

浦和はこの2+1プレッシングと、ボールを失った直後の即時奪還プレスの両方を組み合わせ、序盤からファストブレイクでセレッソのゴールに迫る場面をいくつか作り出していました。一方のセレッソは浦和の2+1プレッシングが面倒くさかったようで、いろいろと試した後に17分にはボランチが最終ラインに落ちる3枚回しに移行。こうなると浦和もさすがに追いきれず、セレッソのセットオフェンス=浦和のセットディフェンスへ移行する展開が多くなった気がします。

ゲームの構造:四つの局面で見る両チームの戦術②

浦和のセットディフェンスの場面では、なんとなく長澤が下がり目に立っていることが多かったと思います。これはおそらく丸橋の攻撃参加を警戒してのもので、鹿島戦でも採用した攻撃的な左SB対応だと思います。セレッソの攻撃は相手を引き出しながら空いたところを使い、個人の質で勝負できる両SHが中央の崩しに関わることが最初の狙いで、これに合わせる形でSBが攻撃参加してのサイド攻撃がありますので、長澤はこの時に丸橋をフリーにさせないようにと意識づけられていたのでしょう。

そのセレッソのセットオフェンスですが、あまり上手くいっている印象はありませんでした。普段を知らないのでよくわかりませんが、これは浦和の4-4-2ブロックが大外を捨てた片側圧縮でスペースを消していたことと、浦和の2+1プレッシングを嫌ってビルドアップで3バック化した流れで中盤の枚数が不足しがちだったことが要因なのかなと思います。ハーフスペースもしくは中央レーンで柿谷、坂元の両SHにボールが入ることはありましたが、そこにボランチが関わって厚みのあるアタックに入ったシーンは26分頃にデサバトと坂元が近くで絡んだシーンくらいではないかと思います。またこの中盤のエリアでは、プレッシングでは後ろで構えることの多かった柴戸がインテンシティを発揮しており、中央に入る両IHと2トップが絡んでシュートまで持ち込むという場面を作らせませんでした。セレッソは時々サイドを変えながらアタッキングサードに入っていきましたが、ゴール前では特に特別な仕組みや強みは出せていなかったと思います。

うまくボールを奪えれば、早く相手ゴール前まで迫りたいのが今季の浦和。ボールを前進させたい場面では武藤が非常に良い仕事をしていました。ポジティブトランジションの場面ではまずトップに当てて、そこからSHにサイドを駆け上がってもらうというのが浦和のファストブレイクのスタイルですが、武藤が素早くトランジションに反応して一列降りてボールを受ける動きを繰り返し見せていました。ここにボールが収まれば浦和は全体を押し上げることが出来、ファストブレイクもしくはセットオフェンスへと安定して移行することが出来ます。

この局面でセレッソはかなり割り切った対応をしているように見えました。浦和がポジティブトランジションでまずトップに当てたがることは簡単にスカウティングできますから、バックラインから武藤を潰しに出てくる選手がいてもおかしくない気がしましたが、セレッソのバックラインは潔く撤退。そのうえ前線の選手が素早くプレスバックするわけでもないので、浦和は比較的簡単に速攻に入ることが出来ました。一方で凄いと思うのはバックラインの4枚+ボランチ2枚の6枚がブロックを作るスピード感で、一つでもプレーが遅れればすぐにセレッソバイタルエリアには6枚のブロックが形成されます。残りの前4枚が凄く早く戻ってくるというわけではないんですが(坂元は早ちゃんとしてましたが)、この6枚がとにかく早くブロックを作るので、浦和はファストブレイクのチャンスが多く作れていた割には相手GKのキムスンギュ追記:ジンヒョンでした。この二人いつもどっちがどっちかわからなくなります。)に仕事をさせる場面が作れませんでした。この6枚ブロック、例えばサイドにボールをつければ当然SBがボールにつくのですが、4バックで空きがちなSB-CB間のスペースをシームレスにボランチが埋めていきます。なのでサイドに振っても密度が変わらないし、結構高い選手が多いので単純なクロスでは割れそうにない。今の浦和がそんなに攻撃が上手くないというのはもちろんなんですが、中央の6枚ブロックの完成度はここまで今季10戦した中でも群を抜いていたと思います。

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簡単に言えば、セレッソの洗練されたブロック形成が、浦和の攻撃よりも上だった。

もちろんそんなブロックにも泣き所はあって、ブロックの密度を維持するのに人を使う分、ブロックの外、つまりセレッソのバックラインが跳ね返したボールを拾う役割の選手は薄くなりますから、浦和がセカンドボールを拾ってボール保持に移行するという場面が必然的に多くなります。

てことで浦和のボール保持を観ていきます。両SBのレギュラー、特に特徴的な役割を担う山中を起用していないので組み立てがどうなるかなと思いましたが、結果的にはウガでも全く問題ないように思えました。普通にIHロールもやってましたし、むしろ関根と合わせるという意味では彼ならではの良さを見せたのではないかと思います(あと右利きなのですごい窮屈そうな体勢からのバックパスがないので安心)。

で浦和のオフェンスですが、お手本に近いゾーンディフェンスを組むセレッソのブロックの間と外、この2点の攻略をかなり意識づけられていたように感じます。結果的にだとは思いますが、左右の組み立ての役割はいつも通り。右サイドはSHが内が基本、SBは外で、左サイドは関根と宇賀神のコンビなのでもう少し器用に、内・外を入れ替えながらという感じでした。トータルで言えばこれまでのゲームに比べれば浦和はビルドアップで苦労している感じがなかったのですが、ここにもやはりセレッソのディフェンスの方法論が作用していたと思います。

セレッソのブロック構築とゾーンディフェンスは、被カウンター時だけでなく浦和がボールのビルドアップの局面でも統率されていました。前半、後半それぞれの序盤は全体を押し上げて前からプレッシングをかけていく素振りを見せていたものの、基本的には4-4のブロックを組んで守る選手と最終ラインを遊撃する2トップの選手に役割が分かれていたように思います。

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浦和はセオリー通りの前進は出来ていたが、セレッソのブロックがそうさせたとも言える。

図は18分くらいのシーン。浦和の左サイドから戻ってきたボールをマウリシオが運ぶドリブルを見せますが、2トップはついていくのかいかないのかよくわからない振舞い。結局ブルメンは途中でついていくのを諦めていましたが、そうなるとマウリシオはセレッソの1列目-2列目のスペースをエンジョイできます。一方で間受けを狙っている浦和の2トップや右SHの長澤が使いたいセレッソの2列目-3列目のスペースは非常に狭く、通せないことはないのですがここに入ればセレッソも黙っていないという感じ。結局このシーンでは武藤が一度裏を狙った後に降りてきて「セレッソの2列目の前」でボールを受け、ターンから左サイドに展開していきます。しかしこれではセレッソの4-4ブロックはバランスを保ったままなので、そのまま下がってゴール前のスペースを消してしまいます。つまり結局速攻で崩しきれなかったエリア内の壁が再び目の前に現れるわけで、そうすると普通に攻撃に詰まるというのが今節の浦和でした。

ちなみに、今節はセレッソが低い4-4ブロックをベースにすることもあってCB→SHといった中央を介しないサイドへの展開が、主に左サイドで良く見られましたが、これも結局同じことでセレッソの4-4ブロックは頑丈なままなので、ルートが違うだけで行きつく先は同じです。関根が何度か大外でボールを受けましたが、中は混み合ってるし時間をかけると坂元が寄ってきて1on2になるしで、なかなかサイドから崩せる感じはなかったですね。

というわけで、ここまで見てきたようなゲーム構造をまとめると以下のような感じです。

浦和が上手くできていたのはセットディフェンス、特にセレッソのビルドアップに対するディフェンスと、ポジティブトランジションにおけるファストブレイクの起点づくりの部分。これによって良い形でボールを奪い、そこからカウンターを仕掛けていくところまではかなり上手く表現できていた。一方でセレッソもセットディフェンスの部分では自分たちの形である強固な4-4ブロックを、それもかなり素早く形成できており、浦和はその攻略に非常に苦労した。

リーグの試合と違ってポゼッションなどの細かいスタッツが出てこないのでアレなのですが、おそらくボール保持率にはそんなに差はなかったのではないかと思います。一方で浦和は狙いの守備から速攻が出せている分だけ印象が良い前半を、逆にセレッソは最低限の守備の部分は見せているものの攻撃面で迫力を出せず、物足りない前半を過ごしたという感じで、前半ポジティブに過ごしたのは浦和の方だったでしょう。

土台の高さ、プラスアルファの差

ハーフタイムにロティーナ監督がカードを切ります。ブルメンに代えて豊川を、そして坂元に代えて今節デビューとなる西川潤を投入。西川は後半1分にいきなり、今節のセレッソのファーストシュートを放ちましたが、セレッソとしては守備はまあ良いとしても攻撃面で物足りない前半でしたので、この二人の投入は個人の力でもう少し打開していきたいという考えだったのだと思います。

ただこの交代でゲームの構造が大きく変わるということはなく、展開は一進一退、やりたいことが出せているのは浦和という状況が続きました。48分セレッソの安易な中央へのパスを読んでいた柴戸がパスカット&ダイレクトでレオナルドにつけてシュートまで、51分の柴戸の浮き球ダイレクトボレーでのサイドチェンジから関根のカットイン、55分には岩武のクリアを武藤が拾い、押し上げたエヴェルトンがボールを運んで長澤がクロス、中でこぼれ球を拾ったエヴェルトンがシュートを狙う、これで得たCKをエヴェルトンが中央で合わせて惜しいシュート、など、浦和は前半に作った良い流れ、良い構造を維持しながら後半に入ることが出来ていたと思います。

戦術上重要な先制点のためにあと一押しがほしい浦和は57分に武藤→健勇の交代。ゴールに迫るところまでは出せていたので、高くて強固なセレッソのブロックに高さで勝負できる健勇を入れるという判断だったでしょうか。実際、早速60分には岩武のクロスをファーで折り返すなど、健勇が入ったことで使えるオプションが変わったという認識はチームにもたらされていたと思います。

なおも変わらないゲームの構造に対して先手を打ち続けるロティーナ監督は62分にルーカスミネイロ→奥埜の交代。それでも浦和の4-1-2-1-2プレッシングが打開できないでいると立て続けに69分には柿谷→清武とさらにタレントを投入。70分までに交代枠5枚すべてのカードを使い切り、勝負を仕掛けます。ちなみに、清武がピッチに入るときに岩武と大分ユースの先輩後輩として挨拶をしていたんですが、清武の大先輩感がめちゃめちゃ出てて面白かったです。当然なんですけど。

結果的に、清武の投入がゲームの構造に影響を与えたように思います。これまで柿谷はどちらかというと中盤に落ちることなく2トップのサポートを出来る位置でプレーしていましたが、清武は頻繁に浦和のブロックの2列目の前まで降りるプレーを見せていました。これが浦和のセットディフェンスにとっては厄介で、清武は簡単にはボールを失いません。今までは4-1-2-1-2プレッシングでロブパスを蹴らせて回収、そうでなくともセレッソのセットオフェンスはボールの収まりどころも特になく、パス交換からサイドチェンジ、時々1on1くらいで浦和はそこそこ安定して守れていました。ただ清武が浦和のブロックを出入りし始め、ボールを受けては落とし、またブロックに入りとボールに関わり出すと、セレッソのセットオフェンスに起点が作られ始めます。浦和としては、清武に簡単に寄せて躱されればピンチですし、仮にうまくリターンさせたとしても清武はバックステップを踏んでパスを受けられる状態のままブロックの中に戻っていくので安易に放置することもできない、そうすると必然的に出足も悪くなり、ボールホルダーに余裕が生まれればその分オフザボールが出てきます。

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72分過ぎのシーン。この後は瀬古が裏に狙ってロストしたが、本質的には清武にボールが入ることで浦和の選手4人が影響を受けている。

ここまで、セレッソのオフェンス局面およびポジティブトランジションでは、ボール保持のために一度バックパスを選択することも多かったのですが、清武にボールが転がるとそこからいきなりラストパスがあります。そうでなくとも簡単にはボールが奪えないので、彼がボールに多く触れるという展開は避けていきたいわけです。ところが、この72分すぎのシーンからこぼれ球は清武、清武、ビルドアップから展開してまた清武。彼を起点にボールが回り始めたセレッソがリズムをつかみ始めたのが75分前後の時間帯でした。

ここが潮目の変わるポイントだと感じていたのか、そもそも準備していたのかはわかりませんが、浦和は76分に2枚替え。レオナルド→涼太郎、さらに長澤を下げてデビュー戦となる武田英寿を投入。疲労もあるでしょうが一発がある選手を投入し先制点を奪いにかかる交代だったと言えると思います。

しかし、ゲームを決めた先制点はセレッソ。80分にビルドアップを助けに降りてきた清武の展開からCKを獲得したセレッソが、奥埜のミドルシュートで浦和ゴールを脅かした直後でした。この時間帯、清武投入後から明らかにセレッソのCKが増えていたこともあり、浦和の選手もこの流れはまずいと思っていたことでしょう。若いメンバーがそろった右サイドでペナ角を崩そうとしますが、エリア内でフィーリングが合わずロスト。このネガティブトランジションは、これまでミシャの元で数々の「やられるパターン」を経験してきた関根が逆サイドまで緊急出張してボールを奪い取りますが、その後の攻撃でも狭いパス交換が失敗しまたもロスト。2回目はさすがにフィルターがかからず、デサバトのドリブルにエヴェルトンが吹っ飛ばされるとそのままセレッソのカウンター発動。最後は西川のパスから豊川。福島のニアにシュートをぶち込まれ、決定的な先制点を献上してしまったのでした。

涼太郎のプレーなどいろいろ語りたいことはありますが、この先制点で気になったのは以下の通り。

基本的にGKはニアを抜かれてはいけないと思うんですが、この場面では福島はニアを抜かれてしまっています。シュートは強烈ですがコース的には身体にそう遠くないので、どうしても反応できないシュートではないと思い見直してみると、上記のツイートの通り、福島がポジションを取り直す過程で一瞬ファー側(福島の右足側)に重心を移しています。なんでこの動きが必要だったのか、それは本人にしかわからないのですが、この重心移動でシュートへの反応が難しくなったかな、と思いました。うーん残念。

というわけで、守備から攻撃に入るところまでの局面で再三良いプレーを見せたゲームだったのですが、結果的には1-0の敗戦。先制されてからはうまくゲームをコントロールされ、終わってみればセレッソの守備を崩せず、逆にカウンターから一刺しでやられるというお手本通りにロティーナイズド(今造りました)された試合となってしまいました。

振り返ると、序盤から自分たちの形を出し続け、あと一歩まで迫りながらも交代選手を使ってチームをバージョンアップすることが出来なかった浦和と、最低限の守備は見せながらも苦しみ続け、70分までに交代選手を使い切るほどあの手この手を試した結果として清武が最後にチームを変えたセレッソ、という見方もできます。この意味では、監督のスタイルを積み上げてきた期間としては丸一年先輩のセレッソに、土台の高さの違いと、今節に限ってはベンチメンバーで出せるプラスアルファの差を見せつけられた試合だったのかもしれません。

まあ、そうだとしても今節浦和は非常に良くやったと思いますし、個人的にはルヴァンカップで若手を思い切って起用することは若手起用ルールがない今季ですら正しいと思います。これで浦和は今季のフィールドプレーヤー全員がピッチに立ったようですから、このゲームをひとつのマイルストーンとして、浦和もこれから「あのセレッソ戦が最低限」と言えるくらいのチームになっていってくれればよいと思います。

3つのコンセプトに対する個人的評価/雑感

粛々と採点。

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は6点。非常に良かった選手は柴戸、エヴェルトンそして武藤。この三人は素晴らしい出来だったと思います。特に柴戸は目に見えて違うなというパフォーマンスを出し始めてますね。前半に柿谷の落しを受けようとした坂元を吹っ飛ばしたコンタクトと、柿谷のカウンターを潰したシーン、そして50分くらいにパスカットからダイレクトでレオナルドに通したパスが個人的なベストプレーです。また、エヴェルトンもこの過密日程の中体力的にかなり厳しい4-1-2-1-2プレッシングのトップ下として縦横無尽に走り回ったことは高く評価されるべきだと思います。最後の崩しの部分でミスが出ましたが、今節のゲーム構造を支えていたのはこのボランチコンビだったと言って差し支えないのではないかと。また、少し地味なところを評価すると、宇賀神、関根、レオナルドの3人も良かったと思います。レオナルドはゴールこそありませんでしたが、プレッシングで何度も二度追いを見せていたこと、コースを限定して寄せることで相手を追い込むプレーを継続出来ていたことが素晴らしかったです。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は6.5点。ゲームのほとんどの時間を通じてセレッソを苦しめた4-1-2-1-2プレッシングをはじめとして、相手の時間を奪いながら前へ攻めるディフェンスをして、ボールを奪ったら素早く相手ゴールに迫るという部分は良く出ていたと思います。今季一番プレッシングがハマった試合だったと思います。

ただやはりファストブレイクをあれだけ発動しながらキムジンヒョンに仕事をさせるようなシュートをほとんど打てなかったことは大きな課題で、ファストブレイクにおいては各選手の選択肢の選び方が若干違ったり、走るスピード、もらいたいエリアに共通認識が作れていなかったりするシーンが見られました。この辺は試合をこなしていけば合ってくる部分だと期待していますが、これだけやりたいことが出せていれば一点は取りたかった。セレッソの守備は非常に硬かったですが、もう少しクリティカルな、失敗する可能性が高くても相手の急所を突くような選択肢を選んでいく必要がある気がします。

ボール保持からの崩しについては、こういう試合を観ていれば改善を求めたくなるのは当然かなと思います。特にペナ角まで前進してからの形がほとんどないのが歯がゆいところで、SHとSBの2枚の関係で崩し切れるほどのものもまだ見せられていません。この辺りは最低限、シンプルに3枚目を使って崩す形だけでも見えてくれば印象はかなり変わるのではないかと思います。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は6.5点。これもやはりプレッシングがハマったことが大きくて、そこからファストブレイクを発動させた回数も今季一番多かったのではないかと思います。最後の部分で決定的なシュートを撃てていないので、印象としてはもう少し低いかもしれませんが、ボールを失った直後のカウンタープレッシングも含めて、相手がゲームを殺すのが得意なセレッソであったことを考えても、攻守の切れ目のなさをよく表現できていたのではないでしょうか。

セレッソについての雑感ですが、まずは長い時間ボール保持に形が見えなかったのが予想外でした。後ろの選手で今節お休みだったのは松田陸ぐらいだと思いますが、彼がキーマンだったんでしょうか。とはいえブロックの形成と維持、密度と単純な高さ、堅さは素晴らしいものがありました。前半~後半の中盤、清武が出てくるまでは本当にうまくいってなかったと思いますが、あの守備で凌げてしまうのは強いです。一方で意外と攻撃は個人のクオリティに素直に頼るんだなあというのが正直な感想で、ロティーナ監督のサッカーは数えるほどしか観ていませんが、もう少し精緻に攻撃をデザインするのかと思っていましたが、そうでもなかったかな?と思います。ただ清武が出てきた瞬間にすべての歯車が正しい方向に回転して、一気に浦和のゴール前に迫ってきたのは単純に凄いなあとも思いましたが。あと西川くんね。イケメンでした。

これは負け惜しみだけど、あんなアシストでやられたとは言わないぞ、浦和的には。他の初物にはもっとやられてるんだぞ!

負け惜しみで終わるってどうなんだろう。今節も長文にお付き合いいただきありがとうございました。