96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

でもそれはそれとして:Jリーグ第27節 vs横浜Fマリノス 分析的感想

こういう試合を深く掘り下げて書くこと自体が精神的にキツいかと言うと個人的にはそうではなくて、現象がはっきりしている試合はポジティブかネガティブかに関わらず書きやすいのですが、じゃあそれを読みたい人がどのくらいいるのかと考えるとずーんとしてしまうので、やっぱり気が重くなるというのが正直なところです。

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マリノスACL出場の関係もあって試合消化数がリーグで最も多いチームで、今節ですでに32試合目、ホームは最終戦となります。勝ち点差は試合前で2しかありませんから、この試合で勝てば順位逆転、そうでなくてもこの試合の後に6試合戦える浦和の方が最終的な順位では上位にいる可能性が高いと言える相手です。つまり、シーズン全体の成績を考えると直接対決でも勝っておきたい相手ということになります。

ただそうはいっても前年優勝チームですし、攻撃面での迫力はリーグ随一のものがあるチームです。前回の埼スタでの対戦は90分間のほとんどを守備に使うようなゲームとなったこともあり、シーズン終盤にかけてやりたいサッカーを見せることができるようになってきた浦和としては自分たちが本来やりたいサッカーで彼らと勝負できるところが見せたいというモチベーションだったでしょうし、そういう意味で勝たなければいけない相手というよりはチャレンジャーとしてぶつかってみようという対戦だったと思います。

両チームスタメンと狙い

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浦和ベンチ:福島、トーマス、山中、青木、武富、健勇、レオナルド

相手ベンチ:高丘、チアゴ・マルチンス、高野、渡辺、大津、中川、松田

浦和は前回の広島戦から2週間近くインターバルがあったこともあり前節と同じスタメン。ベンチメンバーも概ね変わりませんでした。一方のマリノスは中2日での対戦で、中立地開催のACLも踏まえメンバーは大幅に変更されており、1.5軍のような印象です。

個人的には大分戦、広島戦と対3バックで苦しんだ浦和を観て、マリノスも3バックを採用することがあるかなと思いましたが、「自分たちのサッカー」流派のマリノスがそんなことをするわけがなかったのか、そもそも噛み合わせた方が上手くいくと考えたのか、これしかなかったのか、マリノスは4-2-1-3を採用。今季のマリノスはほとんど観ていませんが、トップ下がいる3トップシステムはマリノスの基本的な形の一つだと思います。右SBの印象が強かった和田がボランチにいたり、浦和では将来のトップの柱として期待されていたオナイウ亜道がトップ下にいたりとマリノスらしく選手の特性と役割がマッチングした場所で選手を起用するという部分も触れておいた方がよい部分でしょう。

浦和としてはどういうメンバーや形であれマリノスがやりたいことはわかっているし、シーズンの文脈からしても今節のテーマは繋ぐのがうまいマリノスに対してプレッシングでガチンコ勝負を挑み、そして勝つということではっきりしていたと思います。なのでお互いがトランジションの多いゲームを許容する素地はゲーム前からそこにあったと思いますし、正面衝突したときに何が起きるのか、主導権の握り合いで自分たちの良さを前に出していけるか、というのはポイントだったでしょう。

で、結果を分かっている僕たちからすればアウェー名古屋戦よろしく正面衝突からの大破することになってこれが正しい選択だったのかという話をしたくなるわけですが、勝算とは言わないまでも少なくともここ2試合よりは相手ゴールに迫れるであろうと予想できる部分もありました。例えばマリノスのボール非保持の原則はシンプルにボールの奪還を目指すプレッシングですから、その裏を使えれば浦和の強みである両SHが勝負を仕掛けられそうだし、浦和の好調の要因でもあったトップがゴールから離れて相手のCBをつり出し、相手の最終ラインにスペースを作り出すような前輪駆動的な攻撃も嵌りやすい相手であろうことは言えます。なので個人的には無失点とはいかずとも浦和が得点する可能性は高いゲームで、勝つ見込みもそれなりにあるゲームだろうと予想していました。

最終ラインの同数

開始2分で失点、15分で3失点、90分で6失点で大敗することになるゲームですが、個別にああだこうだ言うよりもまずは構造を見ていきましょう。単純に立ち位置を噛み合わせると以下の形になります。

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中盤、浦和のCHの周囲で数的不利ができやすい噛み合わせになっていることがわかります。これは前節広島がボランチの1枚+シャドーが降りてくることで作っていた中盤の数的優位に似ています。

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浦和のプレッシングは4-1-2-1-2の形を作る時のように、CHの一枚を高い位置に置くことで前への圧力を強める傾向がありますが、その裏でCHの周囲に数的不利が出来るとそこから裏返されて最終ラインが晒されたり、それを気にしたCHが前へ出れなくなってプレスが空転してしまうという現象が起きやすくなります。マリノスの場合は中盤のエリアにSBが絞ってプレーするため、状況はさらに悪くなります。こういう場合、対策の大きな方針として下がるがさらに前に出るかがありますが、最近の浦和は前に出る方を選ぶ傾向があり、要は最終ラインにリスクを負ってでもCBが前に出て対応することになります。

開始18秒でこれに近いシーンが出来ていて、スローインからの流れでしたがマリノスの2ボランチがボールに寄り、その対応でエヴェルトンが前へ。長澤が中央を埋めるポジションに入っていましたが、その脇のスペースでオナイウにボールが取ってしまいターンからジュニオール・サントスとのワンツー、オープニングシュートという流れでした。長澤はこの場面、縦パスを通した小池が最終ラインに下げてやり直すと思ったのか前に出ようとしているのですが、こういうところで縦を選択するのがマリノスですよ、という部分にアジャストできていなかったかもしれません。

今節失点、もしくは危険なシュートを受けたシーンは、先制点のように槙野がこのCHの裏の対応に出た背後で岩波が相手FWと1on1になり、止めることが出来なかったというパターンが多かったと思いますが、基本的にはこのCH周辺の数的不利への対処のために負っていたリスク、つまり最終ラインの数的同数を受け入れてでも前に前に人を使っていく部分が決壊してしまったことに起因すると思います。ただこれを以て最終ラインで同数が出来てしまう構造を浦和が押し付けられたから駄目だったという批評をしてしまうと本質から外れてしまうと思います。広島戦でも大分戦でも、もっと言うと内容が上向きだった過去6試合を含めてほとんど全ての試合で浦和は最終ラインの同数を受け入れることで前向きなゲームを作っていました。だから浦和にとってはこれは自分たちから受け入れているゲームの構造の根幹部分ですし、ここで勝ってきたのが浦和の強みだったわけです。

従って先制点に繋がったシーンの少し前、マリノスのビルドアップに対して浦和が4-1-2-1-2プレッシングを仕掛けたことはゲームプラン通りでしょうし、降りてボールを受けようとするオナイウに対して槙野がかなり高い位置までついて行ったのも最終ラインの数的同数を積極的に受け入れているという意味で主体的な判断でしょう。で、その裏を使われてジュニオール・サントスと岩波の1on1が無理だったわけですが、この1on1をどうにかするのは岩波の責任です。ただし、相手チームの目線からすれば槙野を引っ張り出してその裏で岩波と勝負するというやり方は、最近の試合で言うと大分が見せてくれていましたので、マリノスとしては岩波とゴール前で勝負するというところまで含めた設計だったかもしれません。

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この形を岩波が守り切ったから無失点で収まったのが大分戦だった。ここをなんとかされちゃう選手を持っているチームに難しくなるのは当たり前。

ジュニオール・サントスの先制点は彼の最初のランニングとは逆方向にボールが出て、反転からの初速勝負になったわけですが、ここで後手を踏んで良い体勢で対応できなかった時点で岩波には苦しかったですね。2タッチ目でボールを引っ掛けようとして両足で飛び込んで入れ替わられてしまったことで余裕をもってシュートを撃たれてしまいました。

で、この時点でこの構造はヤバいな、岩波とジュニオール・サントスの1on1が槙野が前に出た裏のスペースで起こるとまずいな、というのを感じて、ベンチからいったん引いてゲームをクローズしてみようという指示があれば6失点という結果にはならないかもしれませんが、浦和がこの試合に臨む文脈とゲームデザインを考えれば、1失点のビハインドがある中でホームでの対戦と同じように引きこもるのはそれこそ進歩がありませんから、ピッチ上もベンチも判断は「続けよう」になったのだと思います。好き嫌いはいろいろあるでしょうが、個人的には僕が現場で何らかの決定権を持っていても同じようにすると思います。

15分で終わってしまった試合

マリノスは守備時4-4-2。序盤、前からジュニオールサントスが追ってくるところを興梠のポストから逆サイド展開というは浦和のボールの動かし方はよく狙いが出ていました。マリノスの4バックはかなりサイド圧縮の傾向があり、逆サイド大外に張るSHがフリーになるので、そこへボールを届けようという意図が感じられました。そんな流れで、最初は興梠からマルティノスへ、5分にはマルティノスから汰木への展開からCK獲得。

ただゲーム全体としてはマリノストランジション強度が非常に高く、少し油断するとボール保持が入れ替わるような展開。マリノスはSBが内側に入ってからの和田の裏抜け等で浦和のエリア内に侵入するものの、浦和も興梠や武藤が降りてからの相方の裏抜け等で応戦し、8分40秒には興梠の裏抜けを処理したオビパウエルオビンナのパスをマルティノスインターセプトループシュートクロスバー直撃のシュートが決まっていれば、「トランジションの多い出入りの激しい展開ながら浦和も互角にやり合っている」と言われるようなゲームだったと思います。

ただ直後の9分40秒にマリノスが追加点。マルティノスのバー直撃ループの流れのままに嵌めようとした浦和のプレッシングから脱出したボールを中盤中央で受け取った小池が持ち運び、CKを獲得するとクイックリスタート。流れでハーフスペースに残る小池を槙野がマークした結果中央~ファーサイドで岩波・橋岡がオナイウ、ジュニオール・サントス、前田に対応することとなり、最終的に前田に合わされて2失点目。結果的に槙野が中央から引っ張られて、彼が不在の最終ラインが晒されてからの失点となったわけですが、このCKからの失点については浦和はかなり対応が難しかったと思います。カウンター気味に攻撃を受けてからのクイックリスタートでマークを確認する時間がほとんどありませんでした。息継ぎする暇がない中で長澤がオナイウのマークを外してしまい、最終ラインの前を埋めていたエヴェルトンもボール周辺、そしてゴール前の状況を確認できないままにクロスが入ってしまい、ゴール前の数的不利を作るオナイウのマーク、そして数的不利が出来そうな最終ラインのサポートのどちらも手当できないままクロスが入ってしまいました。槙野はボールサイドの対応としてエリアに近い小池を自分んがケアしてボールに宇賀神を押し出そうとしていますが、宇賀神はボールが扇原に一度戻った時点で槙野を中に戻して小池に自分がつくという判断をしています。汰木が戻ってこれていない状況で結果としてクロッサーがフリーになってしまったことによる失点でした。

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①の横パスに対して浦和がラインを上げたが、ボールマンがフリーで最終ラインが数的同数の局面で中途半端に全体を押し上げた結果一番後ろが晒されてしまったという感じの失点。CHの背後で余っちゃうオナイウどうするの?という意味では同じ失点だが、浦和としては声を掛け合って対処したい場面だった。

で、続けて13分に3失点目。縦パスに対して槙野がジュニオール・サントスを潰したもののオナイウがボールを拾い、3列目からラインブレイクを狙った小池へスルーパス。宇賀神のオフサイドトラップむなしく橋岡が残っていた最終ラインを一気に通され、そのままGKとの1on1を制されてしまいました。この場面ではオナイウにボールが入った瞬間に岩波が潰すチャンスがあったと思いますが、おそらくこれまでのゲーム展開的に背後にスピード勝負を仕掛けられるのを警戒したのか岩波が下がっており、フリーになったオナイウがスルーパスを出す時間を与えてしまいました。しかも下がるなら下がるで小池をマークするようなコースに走り続けられればまだマシでしたが、その後なぜかボールから目を切って身体を右サイド側に開きなおしており、それによって小池へのアプローチの可能性もなくなりました。ボールマンであるオナイウを捨てるという決断が、唯一のパスコースである小池を先に消すという判断をもとにしたものであればまだ意図がわかるんですが、この目の切り方と身体の向きの変え方からそれもないとわかってしまうので、これはちょっとどういう意図かわからないというか、厳しかったですね。おそらくあまり周囲の情報を取り入れずに勘で展開を予測したんだと思いますが、最終ラインのディフェンダーとしての機能を失ってしまう対応なので、ゲームを壊してしまうという意味でも苦しいものがありました。エヴェルトンがリアクションしていますが、あそこはファールでもボールを潰してほしいところでした。

というわけで、前半15分間で3-0と重すぎるリードを許してしまった浦和。その後も少しでも得点差を縮めるために引くことなくゲームを進めましたが、おもしろOGでの得点後、36分に速攻からジュニオール・サントスにボレーをねじ込まれて4-1。そもそも15分で終わっていたゲームですが、この時点でゲームは終わってしまったと言えるでしょう。ハーフタイムに選手交代をしたものの後半もやり方を大きく変えることはせず、マリノスも浦和もお互いに志向するオープンなゲームを演じきった両チームは、結局6-2と非常に派手なスコアでゲームを終えたのでした。

全部が全部そうとは言わないですが、こういう大味なゲームなる時こそ実はシンプルな構造に支配されているというのが最近の気づきです。シンプルに勝てないところ、ヤバいところを修正出来ないからこそ同じような形で何度もピンチになり、ゆえに大量失点してしまうというのがサッカーの一つのパターンなのでしょう。今季の浦和のサッカーは結果が出ていようとそうでなかろうとかなりシンプルな構造というか、強みも弱みも明確なものでしたので、それが嵌れば仙台戦やセレッソ戦になるし、そうでなければここ3試合のようになる、というのが現実なんでしょうね。セレッソに勝った後に「ほとんどのチームとまともにやり合えるサッカーが出来てきた気がする」という趣旨のことを書きましたが、噛み合わない相手にここまではっきりと苦労するとはさすがに予想できませんでした。

他のやり方はなかったのか

これは単に愚痴なんですが、そこそこ規模のあるチームが大負けしていたりしょうもない試合をしていると普段そのチームの試合を観ていない人からもいろいろ言われるわけなんですが、浦和もそういうチームの一つなわけで、こういう試合をしているといろいろ目に入ってきます。毎回毎回、あれほどイライラさせられるものはないなと思います。僕だって他のチームのことをとやかく言うこともあるのでお互い様ということはわかってるんですが、あれがだめだのこれがだめだのうるせーと。そんなの毎週毎週試合を観てるこっちの方がわかって…るかというと、実は客観的な視点から出てくる素朴な意見というのが本質を突くことは少なからずあるわけです。今節で言えば、「なんで浦和は前から追うのにラインが低いままなの、だめだよね」とか、「マリノスのプレッシャーに負けてるのになんでボールを繋ごうとするの」とか、「ボランチの脇を取られて中央で数的不利なのになんで4-2-4で守ってるの」とか。で、こういうことのだいたいは今季大槻レッズが戦ってきた文脈というかストーリーを考慮すればだいたいは理解できて、それらは出来る/出来ないとやった/やらなかったの4象限に分けられます。

例えばボランチの脇を使われる、もしくは中央で数的不利を作られることに対応する戦術的な変化は「出来るけどやらなかったこと」でしょうし、何度もロストしたのにボールを繋ごうとしたのは「出来ないけどやったこと」でしょう。その試合だけを考えれば「出来ることをやる」のが良いのでしょうが、自分たちが本当にありたい姿に近づいていくためには、もしくは自分たちがそうなってはいけない姿から離れるためには、「出来るけどやらないこと」と「出来ないけどやること」が重要なのだと思います。「あなたが選ばなかった選択肢があなたの姿を形作る」みたいな話ですね。

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でもこういうことを強調すると、反論として必ず「いやプロなんだから、出来ることをやって結果を取りに行かないのはおかしいでしょ?今は過程なんですなんて通じないわけよ」みたいな意見が出ます。もしくは、「出来ないことをやって負けるってシンプルにアホなのでは?」みたいな話ですね。出来る/出来ないとやった/やらなかったのそれぞれの象限に属する行動がどう評価されるかはそれこそ文脈によるわけですが、エヴェルトンがしばらく前にコメントしていたようにACL圏内に入るためには全試合が決勝戦という状況だったレッズからすれば、たしかに出来るのにやらなかったことを残したまま負けたことには疑問が残ります。とにもかくにも勝つために、それこそホームでのマリノス戦の再現をして最後にPKでもなんでも1点をもぎ取る作戦も選べたはずですし、そうしたことでコンセプトに合わないサッカーが表現されたとしても決勝戦なんだから仕方ないと言えるはずです。

ただまあこの未来が行きつく先は何なのかと言うことを考えると、たとえACL圏内に入ったとして、それが「3年計画」の非常に重要なマイルストーンだったとしても、そうした結果が長期計画に沿ってチームを強化していくというプロジェクトに対してどれほどの意味を持つのかは少々疑問です。このプロジェクトは結果を出すためのものですが、「3年計画」で掲げたサッカーで成績を残すことが重要なわけで、結果だけを合わせるなら金策をしたほうが良い気がします。

このあたり、大槻監督はかなりピュアに、まっすぐにあるべき姿にコミットしている感じがします。個人的にはこうした姿勢は好みですし、応援したいポイントですが、いろいろな理由でそうではない人もいるでしょう。好き嫌いはあまり議論にならないので多く語る必要はないと思いますが、じゃんけんでグーしか出せないことを硬直した戦術だと批判するのか、純粋に理想を追い求めるリーダーだと評価するのかは難しいというか、意見が分かれるところでしょうね。

他のやり方はなかったのか?答えは「あった」でしょう。4-5-1でも5-3-2でも配置を変えるだけで多少マシなゲームになったのではないかと思います。選手起用の部分でそれでよかったの?と思うところはありますし、さすがに前半15分間で3失点する前に何かを変えるにはタイミングがなさ過ぎたとは思いますが、気づく人であれば開始30秒でオナイウがシュートを撃った場面で「これはハマらない」と感じるくらい、明確なミスマッチを放置していたことも事実です。この部分に納得がいかない人は「大槻監督は良いリーダーかもしれないけどもう少し現実的にやってほしい」と言うでしょうし、もしくは「3年計画の方向性はわかるけど、それはそれとして上手く行ってないなら柔軟にやればいいじゃないか」と言うのかもしれませんし、じゃあどうすればいいの?という話を置いておけば、たしかに極端だよね、という気はします。

個人的には、大槻監督ならこういう戦いをすべきだったし、修正できずに極端に悪い結果になったのは良くなかったけれど、他のやり方を見せられるのはプロジェクト的には納得しがたいものがあったし、15分間で3点入る試合をどう修正すれば良かったのだろう、という感想です。簡単に言えば、負けたのは悔しいけれどこういう結果も受け入れていかないといけないだろうなと思います。でもそれはそれとして、こういう結果にどれくらいの人がついてくるのだろうという気もします。

他人事みたいに聞こえるかもしれませんが、こうした大槻監督の姿勢と結果がクラブ内外にどう評価されるかには個人的に非常に興味があります。別に良くても悪くても理由がしっかりしていればいいんですが、もし今節やアウェー名古屋戦の大敗を例に出して「バランスを欠いた」とか「大敗が多く安定しなかった」とか言うのであれば、コンセプトから見直した方がいいのかもなと思ったりもします。「派手に勝つより大負けを許せない」という考えがクラブを取り巻く空気としてあるならば、そういうサッカーを志向した方が幸せになれるんじゃないかな、という気もするんですよね。誰が監督をやるべきか、という話もあるんでしょうけど、その前に「3年計画」的なサッカーを一年やってみたけど、みんなこれ好き?負けても背中押せる?みたいなところを確認したらどうなるのかなと、今節の大敗を目の当たりにして考えてしまいました。

3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は2.5点。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は4.0点。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は2.0点。

まあ今節は、細かい採点はいいでしょう。

しかしまあこの試合ではオナイウ阿道のプレーが印象的でした。両チームの噛み合わせや浦和のディフェンスラインの設定的に広いエリアでのびのびとプレーできる環境が整っていたとはいえ、長澤にしろエヴェルトンにしろそんなにフィジカルコンタクトが弱い選手ではないんですが、五分五分のボールを収めてチームを前進させた彼のプレーがゲームに与えた影響は非常に大きかったと思います。千葉にいたころからプレーエリアを広くとりたがる選手という印象はありましたけど、トップ下というかセカンドトップでこれだけプレー出来るという印象はなかったので意外でした。最前線で戦えるCFというのはどんなにチームにとっても戦術的なオプションとして重要で、浦和も定期的にこの枠で選手を獲得していますが、伝統的にというか傾向的に、本当はセカンドトップで一番輝きますというタイプの選手が多い気がします。エジミウソンもそうでしょうし、ズラタンもそう、最近では健勇もそのタイプですが、浦和ではプレーを見せる機会そのものがほとんど与えられなかった彼もまたそのタイプだったのかなーと思わせるようなプレーでした。だからどうなんだっていうことはないんですけど。

 この大敗でACL圏内を目指す戦いは現実的に厳しくなりましたが、それでも日程は続きます。次節の神戸戦では結構起用する選手を入れ替えるのではないかと思いますが、それが来季にどうつながっていくのか、未来に期待を抱かせる内容になるのかというのが今後の見どころになっていくのかもしれません。

 

今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。