96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

2020シーズン全選手振り返り(下)

(上)、(中)はこちら。

www.urawareds96.com

www.urawareds96.com

 

26 荻原 拓也

勝負の年と位置付けていたはずの今季はまさかのリーグ戦1試合25分のみの出場と出場機会を得られず、シーズン途中に新潟へレンタル移籍。強みである左足の質を見せつつも、新潟でも不動の存在とまではいかず、本人の性格からしても悩みの多いシーズンだったかもしれません。種々のコメントからもわかるようにチームに貢献したいという気持ちと選手として成り上りたいという野心が非常に強く、前向きのプレーに魅力のある選手ですが、その一方で年齢相応に先輩に遠慮してプレーするところがあったり、プレー中に選択肢が見つけられないと混乱してしまうところがあり、尖った武器を持つが故になんでもできるタイプの選手ではないことも相まって場面を限定した起用をされがちなのが難しいところ。ただプレーの幅を広げていくというよりはJ1でも十分に通じる左足のパワーと精度、そして前へのスプリントを最大限に発揮できるシーンを出場時間の中でどれだけ増やせるか、という視点でプレーを考えた方が良いような気もします。

来季はJ2京都にレンタル移籍し、チョウキジェ監督の下でプレーすることが決まっていますが、選手の特性に合わせた起用とコンバートをためらわないチョウ監督の下でどのような選手として再定義されるかは非常に興味深いところ。SHとしては手札が少ないし、SBで使うには守備の不安がある、ということであれば、個人的にはシャドーや2トップとして思いっきり攻撃をさせてみる、という考え方も面白いのかなと思いますが、どうなるでしょうか。世代別代表の経験が乏しい中ギリギリ逆転で昇格を勝ちとった浦和への思い入れが強く、プレースタイルからしても浦和サポーターとは相思相愛の選手なので、J1でシーズンを通して戦えるだけの武器を身に着けて戻ってきてほしいところです。

 

2020シーズンMIP

8節ホーム清水戦で見せた連続フェイントからの突破、レオナルドへのパスまで

 

27 橋岡 大樹

プロ入り3年目となる今季はチーム2位となるリーグ戦2,745分の出場、31試合出場のすべてがスタートからと、文字通りチームの柱として過密日程を戦い抜きました。もはや日本屈指とも言えるタフネスは今季もいかんなく発揮され、積極的なプレッシングを仕掛ける浦和側で広大なスペースを管理しなければならないバックラインの一員として、相手のサイドアタッカーとの1on1では安定した対応を披露。さすがに逆サイドからのクロス対応にはポジショニング等で難しさを感じていた時期もあったようですが、中盤以降は安定したパフォーマンスが出せていたと思います。また今季最終盤はCBとしてもプレーし、特に33節川崎戦では今季最高のウィンガーの三笘薫とのマッチアップに挑み、再三のピンチを処理するなどゲームの中で適応。無理が効く足腰と戦いの中で相手に順応し処理できるようになる成長性を発揮したと思います。

一方で、やはり課題はボール保持の面で、右SHに入る選手が誰であっても前後の連携には苦労したシーズンでもありました。ビルドアップ、ビハインドサポートの入り方、攻撃参加する際の内、外のレーンの判断、内側のレーンでプレーする際の足元の技術など、J1で要求されるボール保持のスペックを満たしているとは言い難く、この部分には最後まで苦しんだという印象です。ただCBとしてプレーしたゲームではその経験を活かしてか比較的堂々とした振る舞いでボールを持っていましたので、SBとしてプレーした経験は間違いなく糧になっているはず。近い将来のオリンピックは別として、海外でのプレーや、日本代表入りを考えたときには必ず大きな壁になるであろう富安健洋のクオリティを考えても、SBとCBの両方で、そしてボール保持の局面でも安定したプレーが出来るようになることは引き続きの目標になるのではないかと思います。

そうした意味で来季のリカルドのサッカーは橋岡にとっては課題克服にうってつけの環境になるはず。4バックと3バックの可変を考えたときにも橋岡のキャラクターは使いやすく、数的同数、1on1での対応も信頼できるので、ビルドアップやボール保持時の成長を信じて起用される可能性は高い気がします。来季加入する西大伍をはじめとした選手たちから多くのスキルを盗んで、来季はベストイレブン入りを目指してほしいところ。

 

2020シーズンMIP

「俺!俺俺俺!!!俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺!!!!!!!俺俺俺オレ俺オレおr」

 

28 岩武 克弥

飛躍を誓ったプロ2年目の今季はリーグ戦11試合に出場しプレータイムは454分。本人としては不本意な出来だったかもしれません。特に本職右SBの選手は彼だけというスカッドの中で、優先して使われたのは本職がCBの橋岡で、トーマスも同じくCBと右SBを兼務したシーズンでしたので、外野が後から出場時間の数字を見て思う以上の悔しさが本人にはあったかもしれません。一方で左SBとしても起用されるなど全くチャンスがなかったわけではなく、出場した試合で分かりやすい結果を出せなかったのは痛恨でした。とくに左SBとして先発出場した15節ホーム鳥栖戦で裏を取られたところから失点してしまったシーンは、岩武だけのせいではないのですがボールが出た後の処理が悪く、全体的に出場した試合で良い印象が残しきれなかったかなと思います。

対人、1on1対応がしっかりしていて、ビルドアップでボールを持っても落ち着いており、SHのサポートに入るタイミングも適切、上下動を繰り返し、試合終盤のポジティブトランジションでは最後尾から一気にスプリントしてゴール前に入っていく走力が魅力の万能型サイドバックなのですが、一方で個人での突破はほとんどないなどJ1で目立つほどの武器が少なく、また性格的に周囲に遠慮してバランスを見ながらプレーするか、逆に思い切りすぎてバランスを崩したプレーをする傾向もあったために、結果的にポジティブな印象が薄くなるというもったいないパターンだった気がします。個人的にはもっとできる、もっとできると期待していた選手で、クラブとしてもスカッド構成的に来季の計算に入れていたのではないかと思いますが、来季の横浜FCへの完全移籍が決定。寂しいですが、浦和での2年間で14試合657分の出場というのは大卒のFPとしては危機感を感じてもおかしくない数字なので、本人の意思で決めたのではないかと思います。

横浜FCは戦術的に整理されていて選手の役割も明確ですし、雰囲気的にもプレーしやすいはずで、堅実なタイプの計算できるSBとしてJ1で名前が売れるような選手になってほしいと思います。がんばれ。

 

2020シーズンMIP

33節川崎戦、ファストブレイクからのクロスに飛び込むも前に入り過ぎてしまい空中で面白い姿勢になっていた瞬間。

 

29 柴戸 海

トランジション勝負を制することを目指す大槻レッズにおいて、圧倒的な運動量と球際の強さ、プレーの連続性がチームのスタイルに最もハマり、シーズン序盤には1試合での走行距離12km超を連発して一躍注目選手となった今季。途中怪我があってプレータイムが伸びなかったものの、リーグ戦25試合1,708分の出場はキャリアハイで、プロ3年目にして浦和レッズの主力選手として認識されたという意味で飛躍の年になったのではないかと思います。印象的な鬼の出足、球際に身体をねじ込んでいくプレーに加えて、データでもボール奪取やカバーエリアの広さでリーグ上位の成績を残しており、ボールハント型のCHとしては一定の地位を築くことが出来た印象ですが、逆にボール保持の面では自他ともに認める課題が出た感もありました。ただ毎試合ゲーム後に映像を見返し、反省と改善を繰り返す努力家なので、チームと個人に求められるものの客観視やそうした課題に対するチャレンジは他の選手に比べてよく取り組みが見えたのも事実で、やるべきことが認識できていないというよりは技術的に、もしくはプレー中の余裕の面で追いつかないという感じなので、今後の改善も期待できるはず。繋ぎの安定感はともかくとして、足元のスキルがないわけではない選手なので、ビルドアップ性能も求められる来季は彼にとってもちょうどよいチャレンジになるのではないかと期待しています。

ちなみに、来季加入する金子大毅は市立船橋高校の後輩で、市船コンビで中盤を制圧する姿にも期待がかかります。長澤の移籍でリーダーシップを発揮できる中盤の選手が誰になるのか注目される来季ですが、#急進的柴戸派 としては来季中心選手としてリーダーシップを発揮する姿にも期待です。

 

2020シーズンMIP

1)第2節横浜FM戦で喜田、扇原の前年優勝中盤コンビを一人で封殺したパフォーマンス

2)ルヴァンカップセレッソ大阪戦で見せたダイレクトボレーでのサイドチェンジ

 

30 興梠 慎三

腰の打撲、なかなか前進しないビルドアップ、ゴール前での仕事に集中するレオナルドと、自身のゴールが遠ざかる要素を上げればキリがないような苦しいシーズンでも30試合1,957分に出場し9年連続となる10ゴールを達成。それだけで今季もありがとうと言うしかない安定のパフォーマンスを見せた浦和のエースでした。今季はボール非保持の局面では第一プレッシングラインを担うことに加えて、安定しないボール保持に業を煮やして中盤に下がってゲームメイクをも担い、エリア内でのフィニッシュワークに集中力や体力を残すことが難しいシーズンでしたが、最低限の結果を出し続けてくれる姿は偉大というほかありません。かつてミシャ・レッズの流麗なサッカーに魅せられて移籍してきた興梠にとって今のサッカーがどの程度楽しいのか心配になりますが、それでも浦和のために安定して結果を出してくれる存在は唯一無二。来季はリカルドの戦術でボール保持と前進が整理されることが期待されるので、もっとゴール前の駆け引きに集中して10年連続となる10ゴールを記録してほしいところ。

 

2020シーズンMIP

26節アウェー広島戦、開始直後のゴール。背後からDFの前に現れて完璧なトラップからGKの股抜きで決める、興梠慎三らしいゴール。

youtu.be

 

31 岩波 拓也

浦和での3シーズン目となる今季は23試合1,793分に出場。クラブが、そして本人が浦和の次世代のDFリーダーとしての役割を意識していることを考えると、チーム7位の出場時間も満足とは言えないという感じでしょうか。開幕直後は大槻監督の期待を一身に背負ってスタメンフル出場を続けていましたが、チームがミスから立ち直れなかった6節ホーム柏戦を機にスタメンを外れると、次の7節アウェー横浜FC戦で槙野が素晴らしいパフォーマンスを見せて序列が一変。以降途中出場はあったもののスタメン復帰は16節アウェー札幌戦まで待つことになり、19節横浜FC戦で松尾にゴールを決められてしまうと前半のみで交代。21節鳥栖戦でスタメンに返り咲くも31節神戸戦からはまたベンチと、DFリーダーとは言い切れないプレータイムで今季を終えました。局面を変えるフィード能力は素晴らしいものを持つ岩波ですが、今季の浦和の最終ラインに求められたのは相手の第一プレッシャーラインを越えていく運ぶプレー。細かいボールの出し入れや縦パスで相手の守備組織を崩していくタイプの選手ではないことも相まって、求められるプレーを表現しきれない部分があったのは事実でしょう。またスピードやキレのある選手との1on1に晒されると後手を踏む場面も多く、特に27節のアウェー横浜FM戦では岩波のところからゲームが壊れてしまった感があり、チーム戦術として最終ラインに数的同数を制することが求められるサッカーをしている中でそれに応えきれなかった印象が強く残ります。一方でボール非保持の局面ではシュートブロックの才能が冴えわたったシーズンでもあり、西川とともに浦和のゴールラインを守り抜くという点においては強みが出た部分もありました。

来季のリカルド体制でも継続してビルドアップにおける運ぶプレーは求められるはずで、その点をどこまで表現できるかは継続してポイントとなりそう。一方でビルドアップが整理され、近いパスコースが常に用意されていればボールホルダーも思い切ったプレーができそうで、相手が近いところを意識した瞬間に逆サイドへ対角フィード、という展開も期待したいところ。スピード、対人能力、パスセンスなどそれぞれ個性がある最終ラインの面々の中で、総合力で主軸としての地位を掴めるか、そしてDFリーダーとして声で全体を統率していく力を示せるかどうかが来季の岩波に問われるのではないかと思います。

 

2020シーズンMIP

18節アウェー清水戦の山中の原理主義ミドルをおぜん立てしたスクリーンプレー

 

32 石井 僚

プロ入り2年目となった今季は終盤にはじめてのベンチ入り。ユースのひとつ下に至宝・彩艶がいるという環境でずっとプレーしてきたからか、インタビューを読んでも特別動じることなく自分のすべきトレーニングを積んできたという印象でした。191cmの体格は現時点では彩艶以上で、しかも身のこなしもしなやか。キックも悪くなく、彩艶がいなければ彼自身が逸材と騒がれてもおかしくないポテンシャルを秘めており、今後が楽しみな選手です。来季は福島がレンタル移籍するため、セカンドGKの座を新加入のベテラン塩田、そして彩艶と争うことが濃厚。リカルドのサッカーにいち早く順応すれば西川を脅かす存在になれるかもしれない来季、地味ながら注目したい選手です。

 

2020シーズンMIP

32節ホーム湘南戦でのGKアップ。しなやかなプレーは練習だけでも見ごたえあり。

 

36 鈴木 彩艶

浦和レッズどころか日本サッカー界の至宝は、今季はセカンドGKとしてベンチ入りを多く経験。まだ西川から正GKの座を奪うのは現実的ではないものの、ゲームに出る準備を着々と整えている印象です。世代別代表の常連のためチームを離れる期間が少なからずあることがネックですが、そうした経験も含めてレッズのゴールマウスを守る日もそう遠くなさそう。ダイナミックなセービングやスロー、キックなど技術面でのポテンシャルは間違いないので、あとはトップチームを声で動かしていけるか、そしてチームを最後尾から支えるだけの存在感と安定感を出せるかが問われそうな来季、まずはルヴァンカップでのデビューを目指すのではないかと予想します。

 

 2020シーズンMIP

この記事。

トップチームの1年で“戦いの場”を知った鈴木彩艶の証言 (浦和レッズニュース)news.line.me

 

37 武田 英寿

期待のルーキーは今季終盤にデビューし、3試合73分のプレー。本人はもっとプレーするつもりでいたかもしれませんが、個人的にはこんなもんかな、と思います。町田とのトレーニングマッチでも見せたように左足のキックの質は一級品で、即プロで通用するレベルにあるわけですが、やはりJ1でプレーするには強度不足が否めず、プレーの連続性や守備の部分、球際での強さなど最低限の部分が揃わないまま試合に出すのは個人的には消極的でしたので、彼を起用する際にわざわざトップ下を用意して4-2-3-1でゲームに臨んだことや、シーズン終了後の大槻監督のインタビューを読んでも、まあそうかな、という感じです。これは武田だけではなくて、同期で言えばセレッソの西川潤を見ても同じような感覚なので、ああいうテクニカルな選手は小野伸二や中村俊輔レベルで上手くないと難しいのかなという気がします。小野にしろ俊輔にしろ、ルーキーのころから球際も戦えてた気がしますけど。

で、本人が歓迎している通り、来季は戦術的に整理が進むはずなので、彼がどういった役割を担うのかは注目です。オフシーズンに身体強化できれば、再び横一線でスタートする来季はチャンスが増えるはず。サイドからトップ下に入ってプレーするのが最適だと思いますので、展開力、キープ力、そしてゴールに絡んでいくプレーを多く見せられれば競争に関わっていけるはず。ライバルはタフなJ2で活躍してきた新加入組や来季に賭けている涼太郎、関根などチーム内でも最も激しい競争が待ち受けていますが、青森山田の後輩である藤原も加入する来季は遠慮している暇はありません。

 

2020シーズンMIP

32節ホーム湘南戦、惜しかったシュートシーン。

 

39 武富 孝介

コンディションを上げ、完全復活を目指した今季だったものの結局は8試合116分の出場に終わり、来季は恩師・チョウキジェ監督が就任する京都への完全移籍が決定済み。結局のところ浦和では期待された活躍どころか、彼自身がどのような選手か発揮することもないままクラブを離れることになってしまいました。

もともとはミシャサッカーのシャドーのようなイメージで、堀監督の4-1-2-3のインサイドハーフ等でプレーすることを期待されたのではないかと思いますが、戦術的整理がなかなかなされないなか、個人で打開できる能力が求められたチーム事情もあってまとまった時間起用されることはなく、時々出場しても空回りという感じで、結局湘南に出戻りレンタル移籍。怪我をしたこと、そしてチョウキジェ監督の騒動がって浦和復帰とい波乱万丈のキャリアを歩んできた武富ですが、来季は京都の中心選手としてまとまった時間プレーする姿を見たいところです。浦和ではなかなか良さが見えませんでしたが、本来は豊富な運動量で走り回り、フィニッシュでは思いっきりゴール前に飛び込んでシュートをねじ込むタイプのシャドーストライカー。柏や湘南時代の輝きを取り戻せるでしょうか。

 

2020シーズンMIP

18節アウェー清水戦、途中出場から全ての守備機会にスライディングで飛び込みやる気をアピール。ただドフリーのシュートチャンスは外してしまった。

 

41 関根 貴大

2019シーズンはシーズン途中での復帰だったため、スタートからチームに関わる今季は並々ならぬ思い入れがあったはず。ただ結果的には24試合出場1,324分のプレーに終わり、本人の自身へのハードルの高さを考えればとうてい納得のいく数字ではないことは明らかです。シーズン序盤は、開幕戦湘南アウェーの決勝ゴールをはじめとして、ベストパフォーマンスではないながらも決定機に絡んでいた印象ですが、中盤に数字が伸び悩むと、21節以降は出場がほとんどなく、怪我やコンディションの低下もあったようで最後はガングリオンの手術で一足先にシーズンを終える結果となりました。

関根と言えばサイドでの1on1、特に静止状態から両足で仕掛けて相手の重心をハックするドリブルが魅力ですが、今季はあまりそういった場面が見られず。ビルドアップの形が定まらない中で、自分の間合いで仕掛けるポイントを見つけ出せなかったような印象があります。本人はサイドから中央に入ってトップ下のようにプレーすることにも前向きに取り組んでいたようですが、結果は2ゴール2アシスト。結果論ですが、やはり大外で暴れてこその選手なのかなと思ってしまったシーズンでした。

考えてみれば関根はデビューしたシーズンからずっと後ろには森脇良太がいたわけで、Jトップクラスにビルドアップの上手い先輩に仕掛けの場を用意してもらっていたからこそのパフォーマンスだったのだと思います。そうした意味でサイドで何のおぜん立てもないまま勝負を仕掛ける難しさがあるんだなと分かったシーズンだったかもしれません。

来季のリカルド体制ではシャドーアタッカー(トップ下)としても、4-4-2のままプレーする場合のSHとしても需要があるはずですが、個人的には3バック化したときの大外ロール、つまりWBとして振る舞う役割に期待しています。西大伍の獲得がどう影響するかわかりませんが、左右のサイドを問わない関根がSBにコンバートされてWBとして振る舞うとか、スタートポジションをSHに置きながらWBとして大外で仕掛けるとか、やりようによっていろいろ出来そうな予感です。とにもかくにもまずはコンディションを整えることが大切で、来季はスタートから軽やかで相手を嘲笑うかのような関根らしい仕掛けを見せてくれることに期待します。

 

 2020シーズンMIP

開幕節アウェー湘南戦の決勝ゴール

youtu.be

 

45 レオナルド

J3得点王、J2得点王、そしてJ1での得点王を狙ったJ1挑戦のシーズンでしたが、リーグ戦は11ゴールで10位。J1挑戦のシーズンから二桁得点を記録し実力は十分に示したと思いますが、本人はこの結果に満足することはないでしょう。2019シーズンに得点王を争ったオルンガが28ゴールを記録したことを考えても、シーズンを通じて彼にシュートチャンスが供給されていればもっとゴールを奪えたことは間違いありません。ちなみに28試合に出場しプレータイムは1,802分とチーム6位。本人は満足しないでしょうが、チームの主軸として期待されただけのプレーはしたのではないかと思います。

加入前の予想通り、最近のサッカー選手では珍しいエリア内でのフィニッシュワークに特化した純粋なボックスストライカーで、このスタイルでJ1まで成り上ってくるだけのエリア内でのプレー精度の高さを見せつけました。特にシュートフェイントで相手を滑らせてから落ち着いて相手の逆に流し込むシュートテクニックは目を見張るものがあり、「形」に入れば90分で1ゴールは難しいことではないと思わせてくれる選手であることは間違いありません。

チームの戦い方が定まらない時期に少ないチャンスの中で得点を重ね、チームを牽引したことは間違いなかったのですが、一方でチームの調子が最も良かった23節ホーム仙台戦の前後ではスタメン出場がなく、彼の調子とチームの調子がリンクしなかったシーズンでもありました。エリア内のプレーに集中力と脚を残すタイプの選手だけに、その裏側ではビルドアップに関わり過ぎないように意識してプレーするレオナルドですが、今季の浦和は最終ラインからボールを前進させることに非常に苦労し、レオナルド以外の10人では相手を動かせない、ボールが前に運べないというのが根本的な構造でした。だからこそ興梠、武藤の2トップにSHが推進力を発揮する戦い方がハマったわけで、SHが連戦ですり減ってしまったことで最後に勢いを失った今季のレッズだったのですが、トップの選手が中盤やサイドをサポートしなければ機能しないチームの構造と、自分の最高のパフォーマンスのためにすべきプレーが矛盾してしまった、という感じでしょうか。結局、スタメンに復帰した最後の5節は「10人で運べない、SHも独力では運びきれない」という状態でレオナルドまでボールが届かず、出場時間を得た割に本人も無得点と、どうにもならないもどかしさの中終わったレオナルドの今季でした。

要するに彼以外の10人でゴール前までボールを運べるチームが最も合っている選手なのですが、リカルド体制になる来季のレッズがそうしたチームなのかは定かではありません。今季の徳島を観ている限りではボックスストライカーの席はチームにあまり用意されないような気がしますが、一方でボールさえ届ければシーズン20点を期待できるストライカーの存在は稀有であり、普通の監督であれば何とか活かそうと考えるはず。強烈な得点力と個性を発揮するストライカーと戦術家の邂逅がどのような化学反応を起こすのか、来季を占う上での一つの大きなポイントになるのではないかと思います。

ちなみに、ストレートな物言いでざわざわさせることもある選手ですが、ゴール前のプレー以外は課題に取り組む真摯な姿勢を持ち合わせており、今季途中に単独でボールを追いかけてしまうプレッシングを大槻監督に矯正された際はしきりに後ろを振り返りながらプレッシングに出ようとする姿が印象的でした。最後は怪我で早期にブラジルへ帰国しましたが、じっくり休んで、来季こそ本人がイメージする得点王に至るパフォーマンスを期待したいところです。

 

2020シーズンMIP

8節ホーム清水戦、慌ててシュートブロックに来る相手選手をフェイントで無力化させてからのGKの重心の逆へ突き刺すゴール。これぞレオ。

youtu.be

96

今季は新年早々「ブログをたくさん書く」と宣言し、その通り27節アウェー横浜FM戦まではルヴァンカップを含めてすべての公式戦の分析的感想エントリを書くなどハードワーク。チームが苦しい戦いを続ける中で現実的に難しい点、前向きに評価すべき点をなるべく拾い、3年計画のコンセプトに従って毎試合短評を付けるなどしつつ過密日程に何とか食らいつきました。ただマリノス戦の大敗後、28節の神戸戦を仕事の都合で書き逃すと、その後ガンバ戦の敗北でACL出場権が絶望的になり、SHの疲労、レオの先発復帰とともに戦術的な構造が巻き戻り、積み上げを失ってしまったようなプレーに終始するチームのパフォーマンス低下とともにモチベーションが急落。その後はエントリを書けず、最終的にはリーグ、ルヴァンカップ合わせて公式戦30試合の分析的感想を書き残し今季を終了しました。2019シーズンはチームが戦術的な取り組みをほぼ失っていたこともありほとんどエントリを書かなかったことを考えれば今季の取り組みは評価できるものの、できれば苦しい時期も含めて全試合完走したかったところ。この点はモチベーション低下もさることながら96特有の最後の最後でやる気を失い仕上げが適当になる悪癖が露呈したとも言えます。

また、全試合書きたいことを書くだけ書き残す読み手のことを一切考慮しない独善的なスタイルに拍車がかかったのが今季で、全ての分析的感想が1万字を超え、中には1万7千字というロキノンまがいな記事も出てくるなど、「チラシの裏」と予防線を張っているとはやりすぎで、何かを書いて読んでもらう以上この点には改善が望まれます。これではサステイナビリティの欠片もないため、来季以降はもう少し内容を整理して書くのではないかと思われますが、浦和レッズの歴史の中でも新たな転換点を迎えそうな来季、どのようなパフォーマンスを見せるかは注目です。

今季途中からは浦議にエントリが転載され、予想通り浦議ユーザーの反応は良いとは言い難い状況ですが、いつのまにかフォロワーが3,000人を超え、いっそう迂闊なことが言えなくなった模様。また今季から運用を開始したPageful(匿名質問・リクエスト)は一年でまさかの2,000件を超える質問に全回答するハードワークを見せ、負けた試合ではイライラをどストレートにぶつけられる便器のような役割を立派に全うしました。写真のほうはホームゲームを中心に細々と撮影したもののスキルはまだまだで、機材を持て余していると評価されても言い返せない状況。今後も改善が望まれます。

来季のリカルド体制は戦術的な狙いも明確で、96が後悔しているといって憚らないミシャの時代を書き残せなかったことのリベンジになる予感。記事の鮮度、文字数、サステイナビリティ、クオリティと様々な要素の間で、どのような活動記録を残せるのかが問われます。

 

2020シーズンMIP

18節ホーム横浜FC戦での柏木のパフォーマンスの強烈さに発狂したこと

www.urawareds96.com

 

2020シーズン、皆さんお疲れさまでした。

 

今年も長文、雑文なチラシの裏にお付き合い頂きましてありがとうございました!