96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

徳島サポーターと語る、リカルド・ロドリゲス監督と今季の浦和レッズについて(前編)

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

新年一発目は、徳島ヴォルティスでのリカルド体制を観察し続けてきた徳島サポーターのC&Dさんをお迎えしての対談エントリ(前後編)です。徳島でのリカルドの仕事ぶりを踏まえて、浦和レッズではどのような仕事をしてくれるのかについて語りました。4年間観てこられただけにリアルで率直な意見がめちゃくちゃ多くてすごく楽しかったです。皆さんC&Dさんにお礼を言っといてください。ありがとうございました。それではどうぞ!

リカルドは明るくてエネルギッシュ、そして…

96(以下黒字):あけましておめでとうございます。よろしくお願いします。そして、昇格おめでとうございます。昇格を決めた思い入れのある監督を引き抜く形になって申し訳ないような気もするんですが、リカルド監督についていろいろと教えていただければと思います。よろしくおねがいします!

C&Dさん(以下青字):あけましておめでとうございます。こちらこそお手柔らかにお願いいたします。

まずざっくりとしたところから行きたいんでですけど、C&Dさんはリカルド初年度から観戦を続けていると思いますが、彼は一言でいうとどういう監督でしたか?

とにかく明るくてエネルギッシュな人だなあというのが第一印象でした。当時はリカルドの手腕って懐疑的に見られてる部分もあって、僕も期待と不安が半分ずつって感じだったのですが、最初のキャンプの時点で「例年になく雰囲気が明るい」ってコメントが番記者からも出てましたから。ですので、まずはチームやそれを取り巻く人々、環境の雰囲気を変えられる、というのが彼の長所の一つかなと思って見てました。周囲の人々を巻き込むエネルギーみたいなものを持ってる人ですね。

明るい!周囲を巻き込むエネルギー!そうなんですね。今たしか46歳なんで、当時42歳とかですか?かなり若い監督だったし、キャリアもそこまで積んでいなかったということで、結構選手と近いフランクな感じだったんでしょうか。

そうですね。ゴールが決まったら決めた選手と監督を中心にベンチ前で輪ができる、なんてのは日常茶飯事でしたし。浦和への報道が出た直後の試合はそれが全くなくて「ああやっぱり行くんだな」と察しましたけど。笑

なるほど。笑

試合中でもよくタッチライン際に立って大声で指示を出してますし、選手を下の名前で呼んだり片言の日本語で指示を出したりもしますので、その姿も浦和サポの皆さんに愛されると思います。

なんとなく、ミシャを思い出しますね。浦和はミシャ以降そういう明るいエネルギーを持った監督がいなかったので、ベンチ前で輪ができるっていうのも最近は記憶にないです。笑

リカルドが徳島で愛されたのも、ピッチ上の現象はもちろんなんですけど、彼の人柄によるところも大きいと思います。あれほどサポーターに愛される監督は珍しいんじゃないですかね。

人間的に明るいエネルギーがある監督はやっぱりいいですよね。観ていても明るくなるというか。ガチガチに厳しい軍曹系も悪くはないんですけど、やっぱり選手が楽しそうにしているかどうかは継続して観ていればわかりますし。
ただ、明るいだけで勝負師になれないというのは結構困るというか、浦和サポーター的にはミシャの時の記憶がまだ薄れていない気もします。大一番の采配や振る舞い、負けが込んでいるときの振る舞いで印象的なことってありますか?

岩尾がZISOってコンテンツでも話してたことなんですけど、最初の一年目、二年目ぐらいまでは引き出しが少ない感じは確かにあったんですよね。ぼくが印象的だったのは、二年目の夏場に主力を4人ほどJ1へ引き抜かれて、その後に大分との試合があったんですよ。大分はその年昇格するチームで、高木駿とか鈴木義宜を中心に当時から疑似カウンターみたいなサッカーで勝ち点を稼いでたんですよ。その試合でリカルドはいきなり、これまでの前プレをやめて5-3-2のセットディフェンスから助っ人2トップのカウンターってサッカーを披露して。1-0で勝ったんですけど、ああこんな引き出しもあるんだってのは驚いた記憶があります。

理想に走るばかりではないということですね。今年の終盤のサッカーを観ていても、渡井選手が使えないとすんなり4-4-2でボール非保持重視の展開を受け入れていたり、結構現実的な監督だなという印象でした。

そうですね。リカルドがボール保持とネガトラに特徴のある監督なのは間違いないと思いますが、4バックにしろ5バックにしろ非保持の構築も決して下手ではないと思います。

浦和の場合ミシャの印象が強すぎて、ボール保持を仕込む監督は全員理想主義者で自陣ビルドアップを死ぬまでやらないと(見せられないと)いけないという感覚がある人もいるかもしれないので、そういう意味ではバランス感覚のある監督は新鮮かもしれません。笑

ここ二年ぐらいはビルドアップの局面がすごく注目されるようになりましたけど、逆に言うと一年目、二年目は今ほど細かい仕込みをしてた印象はないんですよね。一年目はサイドに馬渡という戦術兵器がいて、渡・山崎の2トップもプレッシングを厭わない2人だったので、ハイプレスと馬渡のアイソレーションという武器を前面に押し出していた印象が強いです。リカルドの理想がどこにあるかは別として、浦和でも現有戦力を鑑みながら上手く落としどころを見つけるのではないでしょうか。

おおおーこれはずっと観てる人ならではの意見ですね。じゃあビルドアップ教というよりはプレッシングも軸にしているし、現実的に使える武器は活かすっていう感じだったんですね。

そうですね。ただ岩尾によると当時のリカルドは毎日のように怒ってたらしいので「お前らはなぜオレの言うことがわからないんだ!」って感じだったのかもしれませんが。笑

本当はビルドアップを仕込みたかったけど、、、という感じだったのかもしれないってことですね。笑

「今、思わず懐かし〜って声出ちゃいました。」

ご存じかもしれませんが浦和レッズさんはクラブ主導で策定した「3年計画」の中で、2006年、2007年くらいの「速く、激しく、外連味なく」のサッカーをアップデートして、要するにプレッシングから早い攻撃をしようというのを大まかなコンセプトにしています。ただ今季はビルドアップがあまりにも、ほんとうに、全然できなくて、いろいろ工夫して良い内容だった時期もありましたが最終的にはいろいろあってゲームが全くコントロールできませんでした。そのあたり、浦和は足し算の発想(プレッシングはある程度できるから、ビルドアップを乗っけたい)でリカルドを呼んだと思っているのですが、今聞いた話だと徳島の監督に就任したときと状況は近い感じがします。

やっぱりJ2だと、足下が器用で対人も強くてってCBがいないんですよ。徳島でも最初の一、二年目は大崎が辛うじてこなせるぐらいで、他の選手はリカルドの要求に応えられるレベルになかったと思います。なので三年目になって何が大きく変わったかというと、バイスの加入とSBの内田裕斗が3バックの一角に定着してくれたことだと思います。今の内田航平にしてもそうですけど、リカルドもガチガチのCBでディフェンスラインを固めるのを諦めた部分があるのかなって。元来はSBとかDHの選手かもしれないけどCBも出来ます、って感じの選手を並べるようになった気はします。ボール保持の局面を優先するために。そのために上背とかパワープレーとか犠牲になるものもありますけど。

なるほど~。浦和がミシャサッカーをやっていた時もリベロの人選にすごく苦労して、山田暢久にやらせてみたり、永田充を重用したり、阿部ちゃんにお願いしたり、最初はいろいろやってました。結局遠藤航が加入してなんでもやってくれるようになって安定しましたけど、やっぱりバックラインを固めるのが大事になりそうですね。

そうですね。徳島とは違ってトップレベルの選手を引っ張ってくる財力のある浦和ではアタッカーももちろんですが、CBにどんな選手を置くのかなってのは注目だと思いますね。

とっても納得できます。実際、昨季の浦和も大槻監督の下でバックラインが運んでいくプレーが求められたんですが、平たくいうと選手が応えられたとは言い難い状況でした。でも昨季の浦和は前からプレッシングもしたかったので頻繁に最終ラインが晒されて、そこでの対人の強さも必要だったので結局運び出しはある程度諦めた感じがありました。そういう意味では今季はバックラインの評価軸は少し変わるかもしれないなと今思いました。
ちなみに、バックラインのボール保持の能力を優先すると、必然的に失点が増えそうなもんですが、徳島での1,2年目くらいは守備についてはどうでしたか?

1,2年目に関して言うと上手くいかない時のパターンってだいたい決まっていて、押し込んでチャンスは作るんだけど決めきれない。そうこうしてるうちに相手が息を吹き返してきて、ロングカウンターとか陣地回復してからのセットプレーでやられるパターンが多かったと思います。

今、思わず懐かし〜って声出ちゃいました。笑

対人の部分もそうですし、やっぱり裏のスペースが空いちゃうのでCBのスピードだったりGKの飛び出しが求められるなという印象でしたね。笑

そうそう、CBにポリバレントな選手を使いたがるのも、トランジションや非保持の局面でスピードが求められるからって部分もあるのかなって思ってます。

わかりました。すごく具体的なイメージが湧いてある意味覚悟が出来ました。笑

「ローテーションとかポジションの移動によってそれをさせない」

ポゼッションに傾倒するとありがちな点を取りきれない問題ですが、ミシャの時そうだったんですが大外の選手の1on1性能、特に静止状態から仕掛けて抜ける選手が必要だと思うんですけど、さっき馬渡選手の名前も出たように、そういうタイプは好んで使う印象ってことで合ってますか?

そうですね。馬渡とか去年活躍してくれた杉本竜士、あと今年の西谷なんかはそのタイプだと思います。ちなみに、今思えば上にあげた選手、全員右利きなんですけど基本は逆足サイドに置いてますね。

あ、そうなんですか。縦に行くよりカットイン重視なんですかね?

たぶん縦に勝負してってのが基本路線ではあると思うんですよ。でもトップの選手がサイドに流れてたり、相手が間延びしてる時には左からのカットインってパターンも多い気がします。

近くの選手の関わりの中でいろいろ求められる感じですね。ここは結構重要だと思っていて、ミシャ・レッズってトップの選手はあまりサイドに流れませんでした。純粋に5トップを作って、大外は大外とスタートの立ち位置が決まっている感じです。でも昨季の徳島を観ていると、垣田選手の特性なのか結構サイドに流れることもあるし、明確に5枚を前に並べるって感じでもなかった印象です。ボール保持での前線の作り方で印象に残ってることってありますか?

なるほど。昨季の徳島の場合だと、垣田がサイドに流れる動きもそうですし、ピン留め役も結構ローテーションするんですよね。例えば最初は西谷が左の大外に張ってるけど、ビルドアップの局面で左SBの田向を押し上げたら西谷はハーフスペースに移動する、とか。徳島のビルドアップに対して、相手はどこかで人数を揃えて捕まえにいきたくなると思うんですよ。でもローテーションとかポジションの移動によってそれをさせない狙いだったんじゃないかと思ってます。

ありがとうございます。やっぱりかなり高度ですね。数人わかっている選手がいたくらいじゃ再現できないような気がします。で、サイドの話になったんで気になるところを聞きたいんですが、結構3バックの(つまりWBを置く)イメージが強い監督ですが、最近のゲームを観ていると4バックも普通に使うし、試合中に可変もします。徳島では最初3バックだった気がしますけど、4バックとの併用は最初からですか?例えば3枚の配置をベースにローテーションなんかを少しずつ出来るようにして言って、そこに4バックも乗っけてきた感じなんでしょうか?

 3バックと4バックの併用は一年目からでしたね。3-1-4-2だったりダイヤモンドの4-4-2だったり。岩尾のアンカー以外の選手の並びは、蓋を開けてみないとわからないって感じでした。これは自分のブログを読み返してみないと証拠はありませんが、一年目のベースは4バックだったと思うんです。かつ両SBには広瀬・馬渡という推進力のある選手を置く。で、逃げ切りたいときには3バック(5バック)にするって記憶がありますね。ただ広瀬が途中で離脱しちゃったので、右サイドどうすんねん?ってなって山崎を右WBにしたり島屋を置いてみたり、右サイドの優位性の担保に苦心していた印象ですね。

4バックベースというのは意外でした。浦和も昨季4バックで通年戦ったんで、クラブとしては4バックベースをオーダーしているんじゃないかと勝手に思っているんですが、リカルドも特に抵抗はなさそうですね。中盤ダイヤモンドの4-4-2はJではなかなか見れないシステムなので、もし採用されたら面白そうです。

そうですね。ぼくも当時は今ほど知識が無かったので、今4-4-2のダイヤモンドをもう一回見たいなって思います。すごく。笑

リカルドもまだ浦和の試合はほとんど観ていないみたいですし、そもそもスカッドもかなり入れ替わるのが今季なので、浦和でも特に序盤はいろんな選手をいろんなシステムで使うかもしれませんね。

 

 

後編へ続く...