96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

2021シーズン順位予想のメモ

 いつのまにか日は進みもう今週末にはシーズン開幕です。というわけでがちゃせこラジオにお呼びいただき、順位予想に参加してきました。番組は約4時間の長丁場なので追っかけで聞くのも大変だろうということで、予想のついでに自分用のメモを書いてみたのでここに成仏させておきます。読みにくいかもしれませんが、暇つぶしにでもどうぞ。放送ではこのメモをもとに喋ったので、僕の話したことはだいたい網羅されているはずです。ちなみに本当は全部ですますに直したかったんですがさすがに誰も気にしないと思うのでやめました。

予想にあたっての考え方

 まずは昨年の成績から確認していく。最終順位と似たような成績となる指標を探したいので、得失点差、得点、失点で並べ替えてみる。

 まず得失点差順に順位を並べると、

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こんなかんじ。得失点差は文字通り得点と失点の結果を合わせたものでしかないので、これだけでは各チームのどこか強みで、どこか課題だったのかはわからない。ただ結果として川崎の出した結果が飛びぬけており、それだけ強かったこと、その下に+14以上のチーム(名古屋と柏)、+10前後のチーム(鹿島、マリノス、セレッソ、広島)のグループがあったことがわかる。さらにその下にFC東京、ガンバが+で続き、その下は―のグループとなる。マイナスのグループは大きく分けて二つ。苦しかったチーム(鳥栖、神戸、大分、札幌、浦和)と通用しなかったチーム(湘南、横浜FC、清水、仙台)となる。

 次に得点数。

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 得点数はチームのスタイルが明確に表れる。全てにおいて抜けていた川崎は別として、ゴールを多く奪ったチームは50得点以上のマリノス、柏、鹿島、神戸くらいまでか。リーグの平均得点(失点)が48.22なので、これらのチームはなんらかの理由で平均以上のゴールを上げたと言える。40点台のチームは清水、札幌、FC東京、ガンバ、セレッソ、広島、名古屋、浦和で、これらのチームはバランス型か、何らかの理由で平均以上になれなかったということ。30点台のチーム(横浜FC、鳥栖、仙台、大分、湘南)はどうにもしがたい迫力不足があったということになる。

 最後に失点数。

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 これをみると、失点数ランキングは得失点差よりも最終順位に近い結果になり、予想にあたっても参考にできそうなことがわかる。これは守備を比較的安定させてゲームをコントロールしたチーム(セレッソ、ガンバ、広島、FC東京)の存在をうまく反映できるからかもしれない。
 優秀なのはリーグ平均の48.22失点以下のチームなので、名古屋、川崎、セレッソ、広島、FC東京、ガンバ、鳥栖、鹿島、大分、柏、湘南(!)となり、中でも名古屋と川崎、30点台後半のセレッソ、広島が守備4強。40点台でまとめたチームはバランス型と言えるかも。失点については清水がダントツでひどく、その上は浦和の56~仙台の61と固まっており、これらはうまくゲームをコントロールできなかったチームと言える。

 加えて、過去5年間の失点推移と2021シーズンを戦う現体制下での成績を検討する。

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 赤字は現体制下(Average of Current Coarching Structure:Avr.C.)での成績。J1の実績のみを比較するので昇降格のあったクラブはデータに欠けるし、指導体制が変わっているクラブは大きなでこぼこが出る。で、現体制下で戦ったシーズンにおいて安定して失点数を少なくまとめているのは川崎、広島、FC東京。これら守備3強クラブが失点数の面から今季も安定した成績を残しそうと言える。これに続くのが平均40失点までに収めている名古屋、大分で、一定以上ゲームをコントロールできており、これまで悪くない数字でまとめている既存体制の継続なので、成績だけで言えば中位以上が予想しやすい。
 その下にあるのが40失点台の平均的なグループで、鹿島、ガンバ、柏、鳥栖と続く。これらのクラブは平均的な失点数をベースに得点数をどれだけ積み上げたか、接戦を制する力があるかどうかがポイントか。
 既存体制の失点数から不安定な戦いになりそうなのはマリノス、札幌、湘南、神戸、横浜FC。平均して50失点以上を記録してしまっており、安定感に欠ける。なお、過去5年間の成績でみると清水は最悪レベルだが、セレッソで初年度から優秀な成績を残しているロティーナ体制となるので例外。ちなみにセレッソのロティーナ体制だけの成績で言えば広島と同等レベルの堅守なので、清水も大幅な改善が期待される。新体制となり未知数なのはセレッソ、浦和、仙台。昇格2クラブもこのグループに入れて、基本的にこの5クラブも厳しめに予想すべきかもしれない。ただ、クラブの有する戦力や戦い方など、レガシーが残っている場合もあるので、過去5年の戦いぶりも多少参考にできるかもしれない。これまでの検討をまとめると、だいたい以下の感じのグループ分けができるので、これを参考に補強などの定性的な要素を加えていく。

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 これを参考に、各クラブの補強や組織に大きな変更がないか、またボール保持の仕組みに大きな変更がないか(攻撃回数が減る、安定度が減る=守備機会が増えて失点リスクが高まる等)を確認していく。

 で、結果的に僕の順位予想は以下の通り。

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 優勝は川崎。浦和は正直わからないけど、ガンバには勝ちたい。ということで、個別のクラブについて考えたことを以下書き残しておく。

1位:川崎フロンターレ(昨年勝ち点83、得点88、失点31:得失点差+57)※今季ACL

 圧倒的なボールスキルとポゼッションの仕組みをベースにしたゲームコントロールとオフェンス機能、失点の少なさで昨年Jリーグ史上最高の成績を収めて優勝した川崎は、今季も優勝候補の最右翼となる。最大の懸念はアンカーとして昨季素晴らしいパフォーマンスを見せていた守田の移籍だが、ボール保持の肝となっていた両WG+SBの関係性は不変で、中村憲剛の引退、下田の移籍があっても中盤のタレントは豊富なので無理に4-3-3にこだわらず4-2-3-1にマイナーチェンジしても十分に闘えそう。シミッチにアンカーをやらせるかどうかはよくわからない。

 TMでは札幌に大勝するなど相変わらずの破壊力と完成度なので、ACLを含めた過密日程の中バックラインやGKに大きなけが人が出なければ今季も安定した成績で優勝候補となりそう。ちなみに、昨年だけが凄いのではなくて過去5年間の平均失点数も32.60でダントツのナンバーワン。

2位:鹿島(昨年勝ち点59、得点55、失点44:得失点差+11)

 長年比較的安定した成績を残している鹿島だが、昨季前半はザーゴのスタイルが結果になるまで連敗が続き苦しんだ。とはいえ終盤はフィットした外国人選手や若手の台頭でバランスを取り戻し、終わってみれば5位と今季に繋がる成績でのフィニッシュとなった。
 今オフはサブに甘んじていた選手を放出し主力級外国人や期待の若手を引っ張ってくるという手堅いもので、昨季後半を支えた主力が全員残留していることから考えても強力なスカッドになりそう。強いて言えばバックラインのファーストチョイスが犬飼・町田というのが「強い鹿島」に足るかどうかというくらいか。例年30点台の失点で収めていたのがザーゴ体制に変わったことで昨季44失点と目に見えて増加してしまったので、前輪駆動のチームであったとしても締めるところは締めておきたい。破壊力は申し分なくクラブの気風的にも昨季のパフォーマンスを踏まえても下位相手への取りこぼしは少なさそうなので、川崎や名古屋との直接対決が今季リーグ戦の大一番になりそう。

3位:FC東京(昨年勝ち点52、得点47、失点42:得失点差+5)

 長谷川健太監督の就任以降、3シーズンの平均失点を35で収めているのは立派。森重を中心にした守備陣の、特に球際の部分での強さは安定している。近年は4-4-2にしたり4-3-3をやったりといろいろ試している印象だが、それは東、安部、三田、高萩、アルトゥールシルバなどいろいろできるカードが充実しているが故かもしれない。前線は相変わらずパンチ力のある面々が揃っているが、特に序盤は永井の怪我でプレッシングスタイルが発揮できるかどうかが不透明。基本的にどのポジションも粒ぞろいで体制も変わらないので、上位予想が無難と言える。大きな連勝をしないイメージのクラブなので、どこかで大波に乗るのが優勝への肝かもしれない。

4位:名古屋グランパス(昨年勝ち点63、得点45、失点28:得失点差+17)※今季ACL出場

 昨季リーグ2位の得失点差でフィニッシュした名古屋は、過去5年平均の失点が48.75なのに対してフィッカデンティ体制の過去2年間は平均39失点でまとめており、スタイルチェンジの是非は別にして成果は十分に発揮されている。ただし、大型補強でフィッカデンティ路線の強化を狙っているが、リーグとACLの二兎を追うのか優先順位を明確にするのかが曖昧な印象もある。戦力的にはCF以外申し分なく、特にWGを含めた中盤は豪華。木本が加わり盤石のCBに加えてSBにも吉田豊、森下、成瀬、宮原と粒がそろっていて侮れない。懸念はチームの肝になっていそうな前線のキーマン二人がどれだけ働けるか。既に負傷している金崎の分を山崎や柿谷が埋められるのかどうかと、主に守備力があり献身的な選手と突破力はあるがやや独善的な選手に個性が割れている中盤をリンクさせる阿部が使えなくなったときにどうなるか。守って守って個人技で一点とれるかどうかという煮詰まった状態に陥ってしまうと、過密日程を戦うのは大変になってきそうな気がする。上位予想は難しくないが、結構露骨なボトルネックがありそうなチーム。

5位:横浜Fマリノス(昨年勝ち点47、得点69、失点59:得失点差+10)

 優勝した2019シーズンに続く期待を受けた昨季は出入りの多いゲームに終始し中位でフィニッシュ。ACLの変則スケジュールや故障、移籍などスクランブルにも苦しめられたが、安定感のある戦いが出来なかったのは事実だろう。夏の補強で獲得したジュニオール・サントスや前田大然といったタレントはうまく既存スカッドと融合したが、今オフにはそのジュニオール・サントスやエリキ、大津といった主力級が移籍した。夏の移籍で本領を発揮するのが最近のスタイルなのか今オフの補強は控えめで、バックラインに岩田、前線にレオセアラーとエウベルの補強に留まっている。オフェンシブなスタイルが真骨頂となっている近年のマリノスだが、ペナ角の攻略など崩しのパターンは他チームにバレており、「対マリノス」の戦い方はある程度整理されている印象。これまでと同じ戦術で戦うのであれば、攻撃回数を最大化する志向と相まって大味な展開が多かった今季同様一定程度苦戦しそうな予感。ただ2019年の優勝を知るメンバーが多く残っておりスカッドの質は間違いなく上位レベルなので、わかっていても止められない、止めようとすると逆を取られる、といったどうしようもなさを相手に見せつけたいところ。岩田の加入でゲームコントロールや駆け引きの部分が強化されるのであれば、また将来を期待されているはずのオナイウが信頼できるCFとして使えるようになると面白い。

6位:サンフレッチェ広島(昨年勝ち点48、得点46、失点37:得失点差+9)

 広島は過去5年間の平均失点数が38.00、現体制での平均失点数が33.66と非常に優秀。城福体制下では継続して失点を抑えた手堅いスタイルで戦っている広島だが、3連覇を達成したときほどサイドから攻撃できるわけではなく、かといってボール保持も圧倒的ではないなどいまいち地味な印象だった。それを踏まえて、今季最大のポイントはスタイルチェンジの成否で、4バックからのハイプレスで戦うなど攻撃に重点を置いたスタイルに変えた場合の作用・反作用に注目。優勝候補に推すほどの迫力は感じないが、スタイルチェンジを諦めたとしても3バックで守ってロングカウンターとサイド攻撃を仕掛けていく駒は揃っており、下位に沈むのもイメージしづらい。昨季リーグ得点ランキング3位の活躍を見せたレアンドロ・ペレイラをガンバ大阪への移籍で失ってしまったが、マリノスからジュニオール・サントスを獲得し前線の迫力は維持できたか。

7位:浦和(昨年勝ち点46、得点43、失点56:得失点差-13)

 年末までは完璧に近い移籍オペレーションを披露し、主力の放出があったもののベテランの減俸による残留と期待の新世代の獲得を進めていた浦和。キャンプが始まってから昨季FPとしてもっとも出場時間の長かった橋岡とチーム得点王のレオナルド、そして10年近くクラブを代表する選手だった背番号10がいなくなる羽目になるとは、あの頃の僕たちは知る由もなかったのだった。冗談は(冗談じゃないけれど)いいとして今回のフォーマットに沿って昨季を振り返ると、失点56はリーグ平均以下でやはりゲームコントロールがうまく行かなかったと言える。ボール非保持時のストラクチャーでは横幅の距離がリーグでもっとも狭かったのに対して縦幅(いわゆるコンパクトネス)は平均より長かったので、プレッシングには行きたがったが全体を押し上げるのが難しかったということかもしれない。これは今季のリカルド体制でも課題になるのではないかと思っていて、ビルドアップの役割や負担も大きくなるバックラインが昨季とほとんど変わらないことは不安要素の一つかもしれない。やりたいことが明確にはなったけれど、やれることはあまり変わらないので現象も変わらないというのは避けたいところ。その面で言えば、ボランチは人の入れ替わりもあって性格がかなり変わり、台頭しそうな雰囲気が漂っている伊藤敦樹を筆頭に相手を見てプレーできるようになるのではという期待感はある。個人的には昨季構築(しようと)したプレッシングスタイルにビルドアップが乗ればと思うが、優先順位的にはビルドアップ(ボール保持)がまずあって、失った時にプレッシングということになりそう。小慣れるまでは時間がある程度必要かもしれないが、リカルドへの期待感は高く、またサポーターもミシャ時代を経験している人が多いので、変な軋轢が生じることはない気がする。ボールがクリーンに運べるようになれば汰木、関根、田中、明本、武田、大久保、伊藤涼太郎とバイタルに仕掛けていける選手は多いので、中盤の序列がどう決まっていくかも大注目。

 レオナルドの移籍で心配されるCFは健勇の覚醒+興梠の復帰を待つという感じで回していくしか無さそう。不安要素も多いが、ポジティブに考えれば評判のおもわしくなかった昨季のサッカーでも終盤までACLに一縷の可能性を残し、最終結果もギリギリトップハーフで終えているので、ボール保持が整理されれば意外と悪くない順位で着地する気がしている。

 個人的な注目は右サイドで新しい一面を見せそうな宇賀神友弥。

8位:ガンバ大阪(昨年勝ち点65、得点46、失点42:得失点差+4)※今季ACL出場

 得失点差+4、46得点と決して良い成績というほどではないのに、最後の最後でなぜかリーグ2位に躍り出た昨季のガンバ。過去5年で見ても、宮本体制以降だけを見ても、一度も年間40失点以下で収めたことがなく、守備の安定やゲームコントロールでも特に優位な点は見当たらない。それでも結果が出たのは宇佐美をはじめとして前線に一発があることに加え、おかしなバランスで守っていても最後はCBと東口がなんとかしていたからに他ならない。なんだか変なことになりお互いにバランスが崩れて事故が起こりやすい状態で最前線と最後尾の質がいかんなく発揮されるというのが昨季のガンバ大阪だった。いろいろあってアデミウソンを失い、渡辺千真も移籍したが、今季はレアンドロ・ペレイラという新型の金属バットを確保。昨季台頭した山本悠樹がゲームをコントールしてくれればわかりやすく強くなりそうだが、ACLもある中でそんなに簡単にいかない気がする。宮本監督は攻撃的なサッカーを披露したいと息巻いているようだが、全体的にクセが強いので個人的にはすこし手堅いくらいでちょうど良いスカッドな気がする。もちろん、馬鹿試合が多いほうがガンバっぽいのだが。ACLとリーグを並行で戦った経験が少ない選手が増えているので、順位は控えめで。

9位:清水エスパルス(昨年勝ち点28、得点48、失点70:得失点差-22)

 ここ2年間の平均失点数はダントツでリーグ最悪の69.50、昨季の得失点差は-22と真っ暗闇のシーズンを過ごしているここ最近の清水だが、唯一の希望はそれでもJ1の舞台に留まっていることと言える。そうして静かに(?)耐えていれば良いこともあるもので、それなりにうまく行っていたセレッソが名将ロティーナをなぜかポイ捨てし、まさに拾う神を得た形となった。千葉ロッテでの実績から敏腕として名高く、鈴与様を筆頭にスポンサーの強力な理解を取り付けている山室社長は積極補強に動き、今オフの覇者とも言える豪華補強を敢行。ロティーナの後を追ってセレッソから片山瑛一まで獲得することが出来た。セレッソの例を見ても今季の失点数が激減することは容易に期待でき、一気に安定感のある戦いが出来るようになりそう。一方で守備の安定はロティーナサッカーの一面でしかなく、ボール保持、トランジション制御を含めたゲームコントロールを身に着けることが重要。その意味でボランチに大きな補強がなく、竹内、河井、ヘナトと既存のメンバーが主力となるのが不安要素か。

10位:セレッソ大阪(昨年勝ち点60、得点46、失点37:得失点差+9)※今季ACL(PO)出場

 ロティーナと袂を分かち、象徴たる8番を背負う柿谷を含む多くの主力を放出してまで実現したかった史上最攻とは何なのかが問われる今季になりそう。とはいえもともと日本人選手は粒ぞろいで、原川や進藤といった補強は悪くない。J2のタレントを引き抜くなど、雰囲気的には一昔前のセレッソに近い印象があるが、それが帰ってきたクルピによってどう料理されるのか。ロティーナ政権では安定したゲームコントロールで失点数はリーグトップクラスの少なさだったが、昨季の得失点差に出ているように得点数が思うように伸びなかった。個人的にはスーパーなFWを一枚当てるだけで優勝、少なくともACLストレートイン圏内は確保できたのではないかと思うけれど、もうめんどくせーからガラガラポンが好きな人はどこにでもいるということか。どうせやるなら大久保ワントップの下に為田、西川潤、清武を並べてトップ下3枚がムービングする懐かしの何かを見せてほしい。

 11位:大分トリニータ(昨年勝ち点43、得点36、失点45:得失点差-9)

 J3から這い上がってきた片野坂体制は見た目の戦力からは信じられないような好成績をJ1でも残してきた。現体制下で戦った2シーズンを平均40失点でまとめており、過去2シーズンの平均でこれより成績が良いのはセレッソ(31失点)、川崎(32.5失点)、広島(33失点)、東京(35.5失点)、鹿島(37失点)、名古屋(39失点)のみとなる。ゲームコントロールに関しては上位並みの質を発揮できていたと言える。それだけに、その根幹を担っていた鈴木義宜と岩田の移籍が非常に痛い。特に岩田はビルドアップ~攻撃に移る局面での貢献がすさまじく、大分の生命線であるゲームコントロールの面で不安がある。補強した坂や上夷が素早くフィット出来るかどうかが大きなポイントになりそう。ポテンシャル的には問題ないはずなので、ここが克服できれば、最前線に長沢が加わりシャドーの陣容も豊富な攻撃陣に期待できる。うまくいけば得失点差の改善、トップハーフ進出が期待できそう。

12位:柏レイソル(昨年勝ち点52、得点60、失点46:得失点差+14)

 得失点差+14で7位という、ガンバとは逆方向で不思議な成績で昨季を終えた柏だが、昇格組であるという忘れられがちな事実を踏まえれば十分合格点の出来だったと思う。もちろん柏サポーターは昇格即優勝の再現を期待していたかもしれないが、さすがにあのバックラインで優勝は難しい。これだけの得点力を発揮できたのは偏に得点王・MVPのオルンガあってこそで、そのオルンガを失ったことによる戦力ダウンは否めない。新外国人のアンジェロッティとドージがどれだけのパフォーマンスを見せるかがポイントになりそう。オルンガー江坂の鉄板コンビの存在から相手に対策される側に回ることも多かった昨季の柏だが、今季はネルシーニョ監督のチームらしく相手の良さを消しつつ必殺のパターンを繰りだす戦いになるか。その点ではレドミ⇒酒井宏樹のようなパターンを見つけられるかも重要か。降格候補は他に多いので大丈夫だと思うが、必殺パターンの一翼を担うであろう江坂を怪我で失うことだけは避けたい。昨季バックラインを支えた中村航輔の大きなコーチングの声を失ったことがどう影響するかが個人的な注目ポイント。

13位:コンサドーレ札幌(昨年勝ち点39、得点47、失点58:得失点差-13)

 ミシャ政権4シーズン目となる今季は、放出を最低限にしつつ大きく人員を補充し、スカッドが充実。ミシャ自身が脚の怪我で合流が遅れているものの、チームのスタイルが大きく変わることはないはずなので致命的なマイナスではなさそう。スカッドの特徴を踏まえて広島時代、浦和時代とは異なる、ダイレクトなサッカーを構築している印象のミシャだが、就任4シーズン目はある意味で集大成を見せようとしているような気がする。一方で、ダイレクトなサッカーを志向する中で唯一ゲームをコントロールできていた荒野が故障離脱していることは大きなマイナス。田中や宮澤の存在は頼もしいが、彼らを使うと最終ラインの強度やアスリートの能力が間に合わず、キムミンテを使うとビルドアップが不安という最終ラインの課題をどう解決するかは見もの。WBや前線はオールコートマンツーマンを採用しても戦えそうな走れる選手に加えてパンチ力のある外国人が揃っており、浦和とのTMではおっかなびっくりのビルドアップを破壊して勝利している。ハマればスペクタクルなサッカーになりそうだが、じゃあボールはどうぞとなったときや、浦和戦に続くTMで川崎にボコボコにされたように走ってもボールが取れない時にどうするの?という脆さと付き合っていくシーズンになるのかもしれない。昨年のリーグで勝ち点40に到達出来なかったように、勝負強さ、二桁得点をしてくれそうな信頼できるストライカーの不在も気になる。

14位:神戸(昨年勝ち点36、得点50、失点59:得失点差-9)

 バルサ化とはいったい何だったのか。それを探るため出向いたアマゾンの奥地で発見された逸材リンコンに期待。特に三浦監督との衝突。

15位:横浜FC(昨年勝ち点33、得点38、失点60:得失点差-22)

 レジェンド大集合のネタスカッドで苦戦するかと思われた昨季、その実戦術的にしっかりと落とし込まれたビルドアップを武器に残留圏内の15位フィニッシュした横浜FC。川崎が強すぎ、各チーム取りこぼしのあまりないシーズンだったので下位チームが大きく沈んだこともあったが、この成績は誇ってよいものだと思う。今季は適格な補強でスカッドが整理され2年連続の残留に期待が高まるシーズンになりそう。とはいえ失点数はワースト3位となる60と多く、大分や鳥栖と比べてゲームをコントロール出来ていたかというと不安は残る。バックラインに獲得した中塩やボランチで起用されそうな高秀先生など、後ろ目の選手がどれだけのクオリティでプレーできるかがカギになりそう。前線は斉藤光毅が抜けてしまったが、松尾の残留に加えて渡邉千真や伊藤翔、クレーベといったCFタイプの実力者を補強。効果的な前進だけでなくゲームのテンポやボールを保持することによる守備が出来るようになれば4チーム降格の厳しいシーズンを生き延びられる可能性がある。その意味で期待したいのは、昨季光るものを見せていた安永怜央の覚醒か。

16位:仙台(昨年勝ち点28、得点36失点61:得失点差-25)

 昨季はけが人や事件などなんやかんやで落ち着いてシーズンに臨めなかった感のある仙台。終盤はなかなかサッカーにならず、経営的にも厳しい中で日程消化で精いっぱいだったかもしれない。今季はレジェンドである手倉森監督が復帰し「あの時」のようなサッカーになるかに期待。ただし昨年同様晒されると諸そうな最終ラインは弱点。マテは頼もしいが、晒された時点でボールに食いつくから外されたらカバー不可であっさり失点というパターンはありがち。そのため中盤のがんばりがポイントになりそうだが、中盤を支えていた椎橋の移籍や、IHとして光るものを見せていた浜崎の穴を埋められるか。またCFが皆川、赤崎というのはJ1では役者不足感が否めない。となると比較的層の厚いWGに期待したいところで、中盤より後ろはみんなで走って、転がったボールをマルティノスが津軽海峡まで運んでくれることを期待する形になるか。個人的には手倉森監督が以前仙台で見せていたSBが大外を爆走しテキトーなクロスを上げ、逆サイドからエリア内に飛び込んだSBがヘディングで合わせるダイナミックなサッカーが好きだったので、恩師との再会で蜂須賀がまたああいうプレーを見せてくれると嬉しい。

17位:アビスパ福岡(昇格組)

 予定通り(?)5年ぶりにJ1に帰ってきた盟主も、残留に向けて予断を許さない状況に見える。少なくともセランテスが残留していればと思うが、結果的にはGKの補強はうまく行かなかったと言ってよいと思う。徳島にも言えるが、J1で通用した実績の少ないスカッドはどうしても難しい。ガンバや名古屋、柏のようにJ1常連が間違えて落ちたもののスカッドを残しつつ戻ってくるのとは全く違う難しさが久しぶりの昇格にはあるのではないかと思う。せめて2+1枠の降格ならまだしも、4枠自動降格の年にあたってしまうとは、運がないというかなんというか。ポジティブな要素を上げるとすれば最前線と最終ラインは比較的経験値があるメンバーがそろっており、成すすべもなく沈黙するゲームや、早々にゲームが壊れるような展開は少ないかもしれない。外国人も枠目一杯使うとして、J1のプレーに他の選手が慣れるまでを凌ぎたい。ファンマとブルメンの2トップでサッカーが成り立つのか僕はよくわからないけれど、ワンチャンがありそうな二人ではある。中盤のチャンスクリエイトが出来るかどうかがポイントで、評価の高い長谷部監督の仕込みが上手くハマるかどうかに加えて、杉本太郎あたりが覚醒すれば一波乱起こしてもおかしくないかも。

18位:徳島ヴォルティス(昇格組)

 (僕が言うのもあれだけれど)リカルドの移籍はまあある意味で仕方ないとして、後任のポヤトス監督が未だに入国できてないというのは想定外だったに違いない。リモートでトレーニングをしているらしいが、練度はなかなか上がらない様子。またリカルドのサッカーとポヤトスのサッカーはやはり違うようで、どちらかというとポヤトス監督はロティーナ監督に近い志向なのではないかという気がしていて、継続性という意味でも当初期待していたよりも難しいかもしれない。ただこれで結果が出ればリモート監督と契約するというサッカー界の新しい潮流を生み出す可能性があるので徳島には人柱として頑張っていただきたい。リモートならあのサム・アラダイスもJリーグの監督になれるかもしれない。アラダイスのサッカーならリモートでもなんとかなりそうだし。余談はさておき、徳島は残留に本気だということをオフの補強でしっかりと示したと言える。ヴェルディから藤田を引き抜き、川崎からは宮代をレンタルで獲得。残留にむけてバージョンアップが必須の最終ラインには有望な若手ブラジル人カカ、前線にはなんとフランス一部からバトッキオの獲得が発表されている。渡井・小西の生え抜きコンビも残留し、もちろん大黒柱・岩尾も健在ということで、徳島らしさを維持したまま戦力の補強はある程度出来たと言えるのではなかろうか。ただ、これまで数々の昇格チームが経験してきたように、J1でそのまま通用するチームと言うのはまれで、特にJ2暮らしが長い選手たちは環境の変化に苦労するはず。ほぼすべてのポジションがJ1で通用するか未知数な上に監督もJリーグを知らない(というか日本にいない)という状況で楽観的な予測は立てにくい。

19位:サガン鳥栖(昨年勝ち点36、得点37、失点43:得失点差-6)

 大分と同じく戦力比で考えればうまく失点数を少なく収めていた鳥栖。さすがにフィッカデンティ体制と比べれば失点数は増えているが、金明輝体制にはポジショナルな魅力があり、個人的にも印象が良いチーム。ただ今オフは原川、森下、原を引き抜かれ、開幕直前に金森のまさかのアビスパ復帰も決まってしまうなど強化面で非常に厳しい戦いを強いられた。経営が脆弱であることはユースが充実している鳥栖にとっては単純なマイナス面ばかりではないが、今季のように降格リスクが通常の倍高いシーズンにおいてはさすがに札束が枕元に湧かないかと願わずにはいられないはず。補強は島川やファンソッコなどJ1でキャリアのある選手に加えて田上や仙頭などJ2上位のタレントを揃えているが、良いサッカーをしているというだけで残留に太鼓判を押すことはできない。残留に向けては厳しい戦いが予想されるが、幸いなのは第8節川崎戦までの開幕7試合の相手が湘南、浦和、仙台、清水、柏、福岡、セレッソと盤石とはいえないチームが多いことか。試行錯誤の序盤にうまく勝ち点を稼いで、中盤以降の我慢の展開に繋げたい。

20位:湘南(昨年勝ち点27、得点29失点48:得失点差-19)

 湘南スタイルを貫きJ1残留を目指す戦いとなる今季だが、正直言ってポジティブな要素は多くない。浮島監督の就任以降ボールを握るスタイルにもチャレンジを見せているが、昨季は2019年に比べて失点を減らしたものの得点数も寂しいものとなってしまい、なんとかゲームをコントロール出来ていたと言えそうだが湘南らしい躍動感という意味ではチョウキジェ監督時代を上回れていないかも。さらに今季は金子(→浦和)、坂(→大分)、斎藤未月(→ルビン・カザン)、松田天馬(→京都)と湘南スタイルの一端を担ってきた選手が移籍し、スカッド全体の経験値、迫力もスケールダウンしてしまった印象。ウェリントンの復帰や個人的にイチオシの町野修斗の獲得など楽しみな面もあるが、かなり厳しい戦いになりそう。残留に向けて重要なのはやはり中盤の走りっこで負けないこと、相手に簡単にプレーさせないような圧力をかけ続けることか。下位チームにありがちなことだが、最終ラインが一瞬晒されただけで失点してしまうパターンを減らせないようだとかなり厳しいのでは。ボール保持に力点を置く場合は大分のような戦い方が参考になるが、その場合も練度の面で不安が残る。ここはひとつ、混戦から一瞬のアイデアで勝負を決められる山田直輝の覚醒に期待。

あとがき

 相変わらずの長文でした。当然ながら、全部のチームを深く追いかけているわけではないので、浦和以外のチームの予想には見当はずれなものもあるかもしれませんがご容赦ください。素人のチラ裏です。

 ちなみに、がちゃせこラジオでの他のパネラーの順位予想は以下の通りでした。

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ちくわさん、勝手に借りました。

 みんな鹿島優勝予想でびっくりしました。というか、上位6チームと下位はほとんどみんな同じような予想ですが、これはたぶん同じ資料を参照した結果ではないかと予想します。笑

 がちゃせこラジオの放送でもありましたが、だいたい上6チームと下3チームくらいが比較的堅く予想されていて、その間をどうするかという感じでしょうか。僕個人の予想としても浦和を含めた中位以下のチームはかなり予想が難しかったです。いろいろ計算しても勝ち点差がものすごく僅差になりました。放送では話題にできませんでしたが、今年も中位は混戦と予想します。川崎が今年ほど勝ち点を伸ばせず、ACL圏内~10位くらいまでを巻き込んだ大混戦…となったら浦和的には面白いですね。2012年のような感じで何故か3位、みたいな展開も歓迎です。サプライズがありそうなのは、大分や横浜FCのトップハーフ入り、セレッソ、神戸あたりのびっくり降格でしょうか。

 浦和はだいたいトップハーフの下の方ということで今年並み。まあ新体制だしこんなもんでしょう。どうなるかわかりませんが、シーズン終了後には答え合わせをする予定です。みなさんの予想と比べて高い低いがあると思いますが、その辺も楽しんでいただければ嬉しいです。というわけで、2021シーズンも楽しみましょう!

 

それでは、今回のチラ裏はこのへんで。