96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

経験を積みながら積み重ねて:ルヴァンカップGS第1戦 vs湘南ベルマーレ 分析的感想

いきなりの過密日程!ということで今季もルヴァンカップの予選がリーグ序盤戦に平行してスタートです。毎年そうなんですが、ルヴァンカップってグループステージ(以下GS)の組み合わせとかレギュレーションとか、曖昧なまま進む(そして勝ち残ったり敗退したりする)感じなので、今季は最初にざくっと整理しておこうと思います。

まずは組み合わせから。

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Jリーグ公式からスクショを張るだけの手抜き作業、もとい引用です。

ACL組(PO参加のセレッソを含む)を除く16チームでグループステージが行われます。20チーム制のJ1はチーム数が多すぎる感じがしますけど、ルヴァンに限ってはきれいに4チームずつのグループが作れるのでなんか気持ち良いですね。

で、レギュレーションというか概要は以下の通り。

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Jリーグ公式からスクショを張るだけの手抜き作業、もとい引用②です。

で、昨年は浦和がGSで敗退したので忘れてましたが、GSを勝ち抜くとプレーオフがあります。今季の組み合わせがどう決まるかよくわからなかったんですが、2019年は以下の組み合わせだったみたいなので、今季も同じような感じでしょうか。

プレーオフステージはグループステージを勝ち上がったチーム同士の対戦により、ホーム・アンド・アウェーでの2試合制で実施される。
組み合わせ:Aグループ1位 - Dグループ2位 / Bグループ1位 - Cグループ2位 / Cグループ1位 - Bグループ2位 / Dグループ1位 - Aグループ2位(第1戦は各グループ2位チームのホームで開催予定)
勝者 (勝利数の多いチーム。同勝利数の場合は下記により決定) がプライムステージに進出。
2試合における合計得点数 (=得失点差)
アウェーでの得点数 (アウェーゴールルール)
15分ハーフの延長戦 (第2戦の後半終了後に引き続き実施、アウェーゴールルールは採用せず)
PK戦 (グループステージと同様)

ja.wikipedia.org

2019年に倣うと浦和はCグループなんで、Bグループの1位/2位とプレーオフを戦うことになるんですかね。まあGSを突破しないと始まらないので、先の話はこれくらいで。

このほかのレギュレーションで言うと、延長戦になった場合は交代枠が+1されること、若手(U-21選手)起用の枠は…昨季は撤廃されてましたが今年も同じなんでしょうか?よくわかりませんでした。※追記:やっぱり適用しないそうです。

■対象となる大会
2021JリーグYBCルヴァンカップ

【U-21先発出場ルール】(2020シーズン同様)
Jリーグ公式試合のエントリー下限人数(13名)を設けるため、継続して本ルールを適用しない。
・「U-21先発出場ルール(2021年12月31日において満年齢21歳以下の日本国籍選手を1名以上先発に含める)」を、適用しない

www.jleague.jp

というわけで浦和の入ったCグループを見ていきたいのですが、他のグループと比べると比較的良いグループな気がします。何より関東のチームしかいないのでホームアンドアウェーを考えると移動が楽です。鹿島が北海道と九州に行かないといけないAとか、FC東京が西日本周遊を強制されるBとか、大変そうです。戦略面でも、柏が上位枠ですがオルンガが抜けて戦力ダウンは免れない状況ですし、中下位枠の横浜FCも大分、札幌あたりと比べれば浦和にとっては戦いやすい気がします。懸念点があるとすればこのグループで新監督を迎えたのは浦和だけということでしょうか。リカルドの視点に立つとGSをうまく使ってスカッドの能力や組み合わせを試したいという考えがあってしかるべきなので、選手のやりくりはいろいろ発生しそうですが、とはいえそもそも序盤の過密日程はどこのチームも同じ条件ですし、他チームも試したい選手は多いでしょうからこれだけで不利になるというものでもなさそうです。また、開幕節に勝ち点を取ったのは浦和だけ(柏はセレッソに2-0負け、横浜FCは札幌に惨敗、湘南は鳥栖に1-0負け)ということで、入りとしてもまあまあ良いかなと。ただ浦和はけが人や移籍でスカッドの絶対数に不安があるので、4月の3、4節や5月の5、6節で苦労するということは考えられるかもしれないですね。

というわけで、お披露目となった前節からどれくらいのメンバー変更があるのか、連戦でも起用され軸となっていくポジション/選手はどこ/誰なのか、というのが今節の最初の注目かなと思います。

両チームのメンバーと嚙み合わせ

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湘南は冨居と岡本、浦和は彩艶と敦樹、両チームのベンチメンバー4人が木崎中出身という木崎中ダービーでした。全員浦和JY出身。

湘南ベンチ:堀田、大岩、岡本、名古、平岡、柴田、石原(直)

浦和ベンチ:塩田、宇賀神、岩波、山中、敦樹、汰木、健勇

いやーまさか頭数が足りていないCBの槙野起用以外全取っ換えとは。可能性はもちろん承知してましたけど、まさかやるとは。高卒選手含めてルーキー全部出す!ですか。リカルドのこと舐めてました。でもたしかに、どうせ過密日程ですしターンオーバーするなら徹底的にやって、全員試合に出して競争させるのは良いことですね。もしかすると、リカルド自身が全員を公式戦で見てみたいのかもしれません。というわけで、浦和はスタメンを10人変更、U-21選手を4人起用する大胆起用で臨みます。対する湘南も開幕節からメンバーを全員入れ替え、ルヴァンらしいといえばらしい、お互いに思い切ったメンバーでの対戦となりました。

基本フォーメーションの配置で重要なのは浦和の最終ラインに対する湘南の一列目で、2枚のCBに対してツートップがプレッシャーにくる構図となるので、ビルドアップからのクリーンな前進を見せたい浦和としてはここにどんな仕組みを施せるかというのがまず大事になります。また湘南のバックラインは3(5)バックで、浦和の1トップに対して人が余りやすいので、その分前に前に押し出していく守備が出来るかどうか、そしてボールを奪ってから素早くフィニッシュまで完結できるかどうかというのがテーマになるはずです。まあこれは、湘南にとってはいつも通りのテーマでしょうけど。

 前半:金子の迷い

チームのスタイルとしてボールを持ちたい浦和とボールを奪うことから始めたい湘南のおおよその意図が噛み合っている対戦なので、まずは浦和のビルドアップから見ていきます。前半、湘南の2トップに対する浦和のリアクションはあまり定まっていないように見えました。

まずは前半02:08前後のシーン。藤原、彩艶、槙野が並んでビルドアップを開始します。湘南の2トップはどちらかのCBにボールが出たらアプローチに来る狙いで、彩艶にはプレッシャーが無い状態。3on2の状況なので上手く運び出したいところでしたが、結果的にはうまくいきませんでした。この時ボランチの金子は槙野の左に降りようとして止めているのですが、どうも前半はどのように最終ラインをサポートすべきか、判断に迷っていたようです。

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武田は2トップの間だったりビルドアップ隊の一列前でボールを受けようとする意識が強かった気がするので、たぶん役割分担は事前にある程度整理されてるのだと思う

数的優位がありながらうまく持ち出せなかった理由はいろいろとありますが、一番単純な理由としてCBが相手の2トップにケアされてしまう位置に立っていたことが考えられます。この場面では藤原は彩艶を真ん中にした3バックの意識で、もっと幅を取ってペナルティエリアよりも外、そして少し前にポジションを取った方が良かった気がします。ボールホルダーがGKとはいえ中央をがら空きにすると最短距離で縦パスが入って自分たちのラインを超えられてしまう懸念があるので、湘南の2トップは最初から藤原、槙野をべったりとマークはしにくい状況です。なので、彩艶からのパスを受ける間に湘南2トップに寄せきられない位置まで広がってボールを受け、寄ってきた相手選手をドリブルで振り切って第一プレッシャーラインを越えていくというのがこの場面の正解だったかなと思います。逆サイドもしかりで、槙野がはっきりと幅を取れば金子は降りる場所がなくなるので、彩艶からの縦パスを受けられる位置、湘南の2トップの間かつ背後のポジショニングを狙えたかもしれません。

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距離でいうと2、3m外だったり前だったりするだけでその後のプレーへの影響とか効率は結構かわる(極論、寄せてきた相手選手の一歩前に出て身体を入れられれば勝ち)ので、この辺は細かいけど重要な気がする

類似の場面が04:03前後。今度は自陣エリア内で槙野がボールを持ち、相手の第一プレッシャーラインとは2on2の状況。左側にパスコースの無い槙野は同じく自陣エリア内の藤原へ。ここで藤原はドリブルで前進し相手をいなしつつ縦パス、一度は三幸にカットされるものの、こぼれ球を武田が拾って前進…と続く場面です。

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前半は他のシーンでも藤原-槙野ラインに対して金子が0.5列くらい前で並ぶような形が多かった。金子としては下がり切って最終ラインに入るのに違和感があるか、運び出したい気持ちが勝って降り切れなかったのかも

この場面は彩艶と3on2を作れないので、別の方法、つまりサポートに金子が降りてきて3on2を作りたいところですが、金子は中途半端なポジショニングになってしまいました。槙野から観ると対面の平松の身体で金子へのパスコースの半分くらいが消えてしまっていたのではないかと思います。藤原のチャレンジや運もあってボールは前進したのですが、この場面では金子はもっとはっきり立ち位置をとって、槙野と並ぶくらいの高さまで降りても良かったと思います。そうすれば相手の2トップに対して3on2が明確になり、「余り」になっている金子が自らボールを前進させるか、茨田が金子についてくるなら茨田の元々の持ち場に武田が入るか田中が降りてきてパスコースを作ったのではないかと思います。

こんな感じで、前半は上記の2シーンに近い状況か、2CB+2ボランチが基本ポジションのままでSBを絡めてビルドアップする形が大半だったと思います。また、14:02前後のシーンなんかがそうですが、彩艶を使った3on2を作るのか、金子を使った3on2を作るのかが曖昧なままボールが進んでしまう場面もあって、槙野がペナルティエリア幅でボールを持っているさらに左側、サイドバックの位置に金子が開いてボールを受けるという形もありました。これは狙いと言うよりは両方の方法論がごっちゃになって表れてしまったという感じかなと思います(ただ、やりなおしの14:15前後の場面では良い感じのバランスが出来ていましたが)。21:25前後、27:46前後、36:00前後も同じような感じ。

全体としてボールをクリーンに前進させる意図はありましたし、前線の選手が受けようとする意識も高く、特に縦パスが涼太郎に入るシーンでは彼のターンの技術やポストとしての頑張りで前にスピードアップする、というシーンがいくつかありましたが、上手くビルドアップ出来たとは言い難い場面が多かったかなと思います。ただ、開幕節で小泉と敦樹、そして阿部ちゃんを中心としたボールの前進機能を観てしまったためにこちらのハードルは上がってしまっていますし、さらに言えばプロデビュー戦の藤原や彩艶がビルドアップの担い手でしたから、広く幅を取るという理想通りの立ち位置を取るのは少し怖かったかなとも思います。自陣ゴール前でボールホルダーであるGKから離れるというのは勇気のいる判断だと思いますが、このあたりは慣れもあるでしょうし、もう少し様子を見たいところです。

試合の展開をざっくりと追うと、09:35前後に藤原のインターセプトから涼太郎にボールが入り、ボールを触らずにターンから裏に走りこんだ田中へスルーパス。クリーンなシュートは出来ませんでしたがサイドネットを脅かすシュートが最初の決定機でした。その後しばらく浦和のビルドアップの試行錯誤が続いたものの、18:35前後に湘南がFKを獲得。FK崩れから池田がシュートを狙いますがここは彩艶のグッセーがさく裂。飲水タイムを経て湘南平松が槙野、福島に連続ファールを受けた恨みを直接FKで晴らそうとしますがこれも彩艶のグッセー。32:30前後には浦和のFKで武田→藤原の青森山田ラインを狙うも不発。36:27には金子、武田、涼太郎がワンタッチで中央を突破し涼太郎がバイタルで前向き、勝負のパスを出すところまで出ますがこれも不発。その後は主に中盤の攻防がごちゃごちゃありつつ、青嶋実況うるせーってなって前半終了。

後半:ビルドアップの整理と「主力」の登場

後半、浦和は槙野に代えて岩波を投入。CBの台所事情が厳しいので、この交代は連戦による負担のシェアのために予定されていたものでしょう。槙野から岩波に代わることでビルドアップの立ち位置の上手さやセンスみたいなものの差が見えるかなと思いましたが、リカルドはそもそも立ち位置の約束事から整理し直してきました。

48:13のシーンがわかりやすかったですが、後半は金子がCB間に降りる形。岩波は最初から左サイドに幅を取っていましたので、ベンチから真ん中に降りてもいいんだよというアドバイスがあったのだと思います。

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この場面では裏に蹴ったが、岩波は相手を見ながら運んでいくプレーも2、3回披露していて悪くなかったと思う

結果的にはこの整理は良かったと思っていて、金子は仕事がはっきりして前半よりも迷いなくポジションを取っていましたし、岩波も幅を取って3バックの立ち位置に入っていたので中盤より前の選手たちが降りてくる場所もはっきりしたように感じました。中盤より前の選手たちの立ち位置で言うと、これは前半から見えていた部分だったのですが、福島は大外の高い位置でWGのように振る舞い、田中がインサイドをとったりSBやボランチの位置に降りる仕事をこなしていました。福島はあまり目立つプレーはなかったですがスピードと加速力は感じましたし、戦術面も含めてわりとシンプルにWG役だけやるという感じで整理されていたのだと思います。その分田中が盤面を見つつ気を利かせていて、この辺は先輩の経験値を感じることが出来ました。開幕節で気になったトップ下のビルドアップサポートの頻度と降りる深さですが、今節の涼太郎も下りる動きは比較的多く見せていたと思います。ただ開幕節の小泉のようにボランチと完全に並ぶような立ち位置までは降りずに、相手の2列目のライン上でターンをするイメージだったように感じました。相手の守り方や最終ラインの状況、選手の個性もあるのでどっちがどうとは一概に言えませんが、涼太郎の立ち位置とプレーは攻撃のスピードアップに効果的だったと思いますし、個人的にはこっちの方があるべき姿かなという気がします。小泉のほうがビルドアップに対して気が利くのとボールの出し入れが上手いので重宝されるとは思いますが、後半に勝負したいときにトップ下を涼太郎に代えてカラーを少し変える、みたいなオプションになっても面白いかなと思います。

49:52には武田が、50:58には金子がと言う感じでボランチが中央に降りるビルドアップを見せる浦和は、この形を基本に前半同様金子がCBの左に降りる形、2ボランチを維持する形を展開の中で使い分けながらゲームを進めていきます。出口を見つけてチャンスクリエイトするという部分で高い質が出ていたかというとそうでもなかったですが、56:27の涼太郎の縦パス→武藤の落としから中央で大久保のドリブルシュートや57:38の藤原のフィードから武藤の抜け出し、クロスでCKを獲得した場面なんかは結構良かったと思います。

62分に両チーム選手交代。湘南は茨田→平岡、原→石原。浦和は福島に代えて山中を投入します。山中は入った瞬間からインサイドにポジションを取っていたので、この辺りが自由度と言うか、関係性が整理されていれば個性を出していいよという部分なんでしょう。さらに飲水タイムを経て69分に両チーム交代。湘南は三幸→名古、毛利→大岩、浦和は涼太郎に代えて健勇、大久保に代えて敦樹を投入します。健勇、敦樹の開幕節でのパフォーマンスと彼らが担える役割、今後の連戦を踏まえると、この時間帯までにリードが奪えていたらこの交代をしたのかどうか気になるところですが、ここからレッズのボール保持のクオリティは目に見えて向上していきます。

71:35前後で浦和のカウンター。田中が持ち運び、山中のクロス。健勇が落として武田のミドルはブロックされましたが、中央に高さがあることが活きたシーンでした。72:34前後も浦和は早い前進。自陣右サイド深い位置から金子が運び出し内側に入った山中へ。山中のミドルパスが大外の田中に通りドリブル勝負。エリア内に侵入しての1on1は止められてしまいましたが、田中としては大外を取れる山中とのコンビの方がやりやすそうです(高卒ルーキーとの比較もどうかと思いますが)。73:10のシーンでは敦樹が何気ないワンタッチのインサイドキックで田中の加速にぴったりと合わせて技術の高さを見せ、74:09のシーンでは敦樹→インサイドに入った山中の合計3タッチで健勇に楔を刺すなど、リーグ開幕節を戦ったメンバーの質の高さが目立ちました。こうしてボールを前進させる質が向上し湘南の守備組織を押し込めるようになると、ネガティブトランジションでの金子の出足の良さが目立つようになり、この時間帯は浦和がゲームを支配し湘南のゴール前に迫るという構図でゲームが進んでいきました。

79分に武田に代えて汰木を投入。ボールの支配とビルドアップからの前進は出来るようになったので、アタッキングサードの質を向上させようということだったと思います。で、83:06に決定機。汰木の投入でサイドを変えた田中のクロス、健勇の背後に飛び込んでフリーになった汰木にボールが入りますが、コントロールできず。ダイレクトで撃てたと思うんですが、当たらなかったんですかね。直後に石原と藤原が競り合ったところでエルボーが顎にクリーンヒットして藤原が負傷、脳震盪での特別交代かと思いきや藤原をピッチに戻すと、最後の最後に今節最大の決定機。ビルドアップから右サイドで柴戸がオープンになり健勇へ楔、キープした健勇から高い位置に入ってきた敦樹に渡し、ダイレクトで走りこんだ田中へ。トラップからシュートまで持ち込めましたが、ギリギリで冨居の右足がこれを阻み、試合終了。試合を進めるにつれてビルドアップを改善し、後半は選手のクオリティを上げたこともあってゴールに迫るところまで行きましたが、結果的には0-0のスコアレスドローとなりました。

雑感

全体としては、新しい選手が多かった中ではチームのコンセプトにチャレンジ出来ていたし、悪くない試合だったと思います。冨居に仕事をさせたのは最後の一発だけでしたが、決定機未遂みたいなシーンはわりと出来ていたのではないでしょうか。さすがに後半投入されたリーグ戦開幕スタメン組との性能の差はわかりやすく出ていましたが、一部の選手は個性の違いをリーグ戦のメンバーと融合させてみてみたいと思わせるプレーが出来ていたと思います。

特に印象が良かったのは彩艶、藤原、涼太郎あたりでしょうか。彩艶は安定したセービングと大きな声で18歳とは思えないどっしりとした印象を与えていたと思います。単純に大きいのもあって、デビュー戦とは思えない安心感がありました。ビルドアップはチャレンジ中でしょうけど、逃げる感じもなかったですね。本人がコメントしている通り得意のロングキックや豪快なワンハンドスローを観る機会は少なかったですが、このパフォーマンスならリカルドは使い続けると思います。クラブにとっても重要なJYからの生え抜きのプロデビューは成功と言ってよいのではないかと思います。藤原は時々パススピードが遅かったり、特に前半は安全側でプレーしているのかなと思う場面もありましたが、思いっきり競りに行く空中戦、いくつかのインターセプト、ビルドアップでの運び出しと僕が思っていたよりもかなり堂々と自分の特徴を出せていたと思います。3バック化したときの真ん中を任せるのはちょっと怖いですが、3バックの右の立ち位置なら問題なく使えそうです。若いというのもあるかもしれませんが、180cm超のCBにしては機動力があるのが魅力かなと思いました。それだけに最後の怪我(脳震盪or骨折?)が気になりますが、無事ならプレータイムは当初の予想よりも多くありそう。涼太郎は本職のトップ下でプレーしましたが、セカンドトップとして振る舞う明本、リンクマンとしてボランチの位置まで降りる小泉の丁度中間くらいのプレーエリアだったかなと思います。なので開幕節によくみられた小泉のボランチを最終ラインに落としたときの2列目から3列目への列移動は、トップ下の役割というよりも小泉の個性が大きそうです。もちろん枠組みとして1ボランチのサポートは提示されているでしょうけど、この試合ではSBが内側に入ることもまれだったので両SHが降りてくる形が比較的よく見られました。涼太郎の場合はオンザボールのキレで一枚剥がしていけるのが非常に良くて、相手の2列目の選手をターンで剥がして前進、決定機を作っていくプレーが多く出るのが良いですね。最後のパスが3回くらいひっかかったりズレたりしていましたが、プレータイムが伸びれば感覚も合わせてきてくれそうです。ゲームコントロールを考えると小泉の方が先発に近いのかなと思いますが、ベンチから出てきたら攻撃のスイッチを入れる役割を期待できるのではないかと思いました。勝負のシーズン、涼太郎にはやれるだけの能力があると信じているので、思い切ってやって欲しいです。

一方でまだ時間がかかりそうなのは武田、大久保、福島でしょう。ただ武田はポジションと役割、周囲の選手に泣かされた感があって、ボランチ起用で低い位置でボールを受け手もあまり良さが出ず、後半右サイドに入っても剥がすタイプではないので大外の仕事はSBに任せたいのですが後ろは柴戸だったのでそれもなかなか難しく。ただペナ角の崩しに参加したときはヒールパスや落としを受けてのキレのあるシュートなど片りんは見せていたので、気持ちを切らさないで欲しいと思います。大久保はまだ遠慮しているのか、トップフォームではないのかわかりませんが、一枚剥がす部分もあまり見られず、かといってゲームメイクに加わるでもなく、ちょっと良さが見えませんでした。キャンプから戦術的な部分についていくのに悩んでいるようなので、そのあたりが思い切りに欠ける印象に繋がっているかもしれません。時間はかかりそうですが、「これは通じる」という型があるはずなので、まずはそこを見つけ出して自信をつけるところからでしょうか。福島はスピード・加速力と左足のクロスが魅力のWGタイプのSBですね。相模原とのTMよりは全然やれてましたが、球際の強さは全然なのでもう少し時間がかかりそうでした。荻原と山中の間みたいな印象ですが、ここからスケールの大きさを示していけるかが生き残りには重要でしょうか。

あとは武藤、田中、金子、柴戸といった面々ですが、本人が一番輝くポジションでプレー出来なかった柴戸と武藤はちょっとかわいそうでした。特に武藤はワントップで良さを出せと言うのは結構大変かもしれません。チームとしても収まりどころがなくて落ち着けない時間帯がありましたし、このシステムならトップ下が良さそうですが、そうするとゴールから離れていくであろうことがジレンマ。ジレンマと言えば柴戸ですが、試合に絡んでいくにはSBで信頼を掴むのが重要になるかもしれません。中央で走り回るのが良い選手なので、片方のサイドにプレーが限定されるのはもったいないんですが、敦樹が絶対的な存在になっていきそうなので、阿部、金子とのボランチ競争よりは現状層の薄い右SBとして数えられるのはある程度仕方ない気もします。どうせなら柴戸+2CBで3バック化するとか、柴戸がビルドアップで内側に入ってボランチとしてビルドアップに参加するとか、彼なりの良さを見出してくれると良いのですが。金子は上記で振り返った通り最初は迷いが見えたものの、後半はプレーが整理されて悪くなかったと思います。敦樹が入ってからは前に前にプレーできるので鋭い出足なんかも出ていたし、ボールを運び出す部分を任せられる相方と組むのが心地よさそうです。阿部ちゃんのプレータイムをコントロールする意味でもリーグ戦での出番は遠からずありそう。田中は立ち位置を取る、味方と相手に合わせてそれを変えるという部分は他の選手よりも抜けていますね。気を利かせていたと思います。ただ上手い選手ではないので、本当の良さは大外でスペースを享受してアイソレーションで発揮されるというのが面白いというか、でっこみひっこみが人間らしくていいなと思います。最後のシュートは本人は悔しいでしょうが、冨居が良く止めたと思います。

3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は5.0点。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は4.5点。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は4.5点。

もうすでに長くなってしまったので、コンセプトは採点だけ。リカルドのコメントにもありますが、今節はコンセプトどうこうよりも若手がデビューして、そこそこの試合をやり切ったこと、その上でリーグ戦開幕スタメン組が質の違いを見せたこと、負けなかったことで十分かなと思います。

[ リカルド ロドリゲス監督 ]
前半はよりお互いがぶつかり合った試合で五分五分だったのかなと思います。後半はわれわれがボールを握れるようになってきて、相手を押し込む時間が増えてきました。相手にセットプレーなどで少し危険な場面を作られたところもありましたけれど、最後に2つチャンスがあったので、そこを決め切れていればというところがあります。ただ大事なのは、前回試合に出ていない選手や若手が長い時間プレーして、経験を積みながら積み重ねていくところなので、チームにとっては良かったと思います。理想を言えばもちろん勝利を手にすることができていればなというところです。

www.jleague.jp

もちろん勝てれば良かったですけど、勝っていても上記の採点は変わらないですね。ともかく、これでけが人以外の全てのFPと彩艶の試合を観ることが出来ました。リーグ戦開幕節と併せて、リカルドの作っている「大枠」の範囲と、選手の個性がどの程度反映されるのかという部分を考える上では非常に良い材料となる2試合だったと思います。ここからはリーグ戦をゴリゴリ消化していく日程となりますが、まずは開幕5節の成績、そしてチャンピオンチームである川崎相手に何が出来るかが今季を占うバロメーターになると思うので、ここからは内容の変化とともに結果も求めていきたいところです。人数はギリギリなんで、大怪我だけはなしでお願いします。

 

というわけで、今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。また次節。