96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

2021シーズン全選手振り返り(下)

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22 MF 阿部 勇樹

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このエントリを書くのに各選手の出場記録を改めて確認するんですが、リーグ出場620分で3得点ってすごくないですか。まだやれるんじゃないですか。と、言ったところで引退の事実が変わるわけもなく、レジェンドがまた一人去る寂しさは拭えません。

今季は開幕スタメンを含む公式戦20試合出場、スタメン11試合。昨年コンディション不良でシーズンのほぼ全てを棒に振ったことを考えれば、今季はプレーをたくさん見せてくれたことに感謝です。ただ、現実的にはトップリーグでのプレーを通年で続けるには限界に近かったかも。いつもピッチ上の違和感を探して試合を観ている僕は「違和感を全く見せない」阿部ちゃんのプレーがあまり頭に残らないという弱点があるのですが、今年はさすがに攻守に重ためのプレーが目につくシーンもありました。特に今季のチームはCHにビルドアップの能力と中盤でのインテンシティと運動量の両方が求められていたこともあって、チーム内で戦術理解や若手のフィットが進んだ中盤以降はコンディション不安もあってか明確に出番を減らしてしまい、本人としてもプレーヤーとしてはやりきったという感じがあったのかもしれません。

とはいえ序盤戦はCHやバックラインでスタメン出場していましたし、リカルドも阿部ちゃんのビルドアップの能力を信頼しているという趣旨の発言をしていましたから、選手として晩年になってもやはり技術やこれまでのキャリアで培ってきたものは失われないのだなと。昨年の終盤に出場機会を得た際も美しいほどにシームレスだった守備ポジションの取り直しやカバーリングは(昨年の他の選手たちの4-4-2ブロックの熟練度と比べると)感動的ですらありましたし、ここであえて言うまでもなく、サッカー選手として伝説級の実力者でした。

なんやかんやで最後は千葉に帰って引退するのかなと思っていたので浦和での引退は少し驚きましたが、それだけ浦和での日々を大事に、このクラブの選手であることを重く考えていてくれたんだなとも思いました。引退後は指導者の道に進むということで、おそらくJFAの新制度も活用して数年以内にS級を取得するのではないかと思いますが、立場は違えど浦和に残ってくれるのかどうかが気になるところ。JYに所属している息子を直接指導なんてことはないと思いますが、いつかまた良い形でトップチームに関わってくれると嬉しいです。お疲れ様でした。今まで本当にありがとう。

24 MF 汰木 康也

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加入3年目の今季は公式戦46試合に出場(先発31試合)しキャリアハイの出場試合数を記録したものの、Jリーグでのプレータイムは1,706分と昨季に比べ微減。トータルで言えば悪くないものの、完璧なブレイクスルーを果たしたかというと難しいというシーズンだったでしょうか。ただ、昨季1,770分プレーして1得点だった得点はほぼ同じプレータイムで4得点に増加。ネット広告なら当社比400%増!!とデカデカと赤字で書かれること間違いなし。アシストも4つ記録して合計8点(昨年は1ゴール3アシスト)に直接的に絡んだのはこれまでの上手いけど…な汰木と比較すれば大きな成長といえます。今季は相方となる左SBがなかなか決まらず、山中、明本そして宇賀神といろいろなパートナーと仕事をしたのも彼にとっては良い経験になったのではないかと思います。

とはいえ、ACLでの戦いに加えリーグ優勝を目指す来季は更なる個人能力の強化が必須で、リーグでは浦和のビルドアップの熟練度を警戒して初めから引いてくる相手も増えることが予想されるため、特にサイドには理不尽な個を置きたいという考えがフットボール本部にはあるはず。昨年ルーキーながら7得点を上げついに来季の帰還が発表された松尾や、主に右サイドでプレーしていたもののJ2で点に絡む能力の高さを示してきた水戸の松崎、もしくは外国人選手の補強があった場合は、これまで以上に厳しいプレータイム獲得競争に晒されるかもしれません。若手ドリブラーの出世番号である24番を受け継ぐという意味ではこの2年間悪くない活躍をしてくれたと思うので、27歳になる来季はそろそろがっちりと主軸を任せられる活躍を、つまりは得点に絡む力をさらに伸ばして欲しいところ…と下書きしていたのですが、神戸移籍が発表、とても残念です。契約更新のタイミングでの移籍みたいなので、神戸の評価額(提示年俸)が無視できないほど良かったか、浦和の提示額があまり満足できるものではなかったのかもしれません。ていうかしゅーたんが最初に提示した金額が高すぎて今のクラブ財政ではあんまり昇給提示ができないとかじゃないの?ねえ。

山形時代のひたすらオンザボールのチャンスクリエイトだけはできるという選手から攻守に、そして裏に走れるSHになった昨季、内・外の立ち位置やビルドアップの出口としての振る舞いが洗練され、さらに効果的にプレーが出来るようになった今季と、浦和では悪くない時間を過ごしたと思いますが、超満員のスタジアムで彼のチャントを歌ってあげられなかったことは残念。去年と今年のパフォーマンスはそれに値したと思います。

25 GK 塩田仁史

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40歳にして浦和加入という珍しいキャリアとなった大ベテラン。

今季公式戦での出場はなかったもののその人間性やプロフェッショナリズムで多くの選手に良い影響を与え、チームを支えてくれていました。なかなかお目にかかる機会が多くありませんでしたが、一方でクラブのアパレルモデルとしてはチーム屈指のイケオジとしてMVPクラスの活躍でした。今季限りでの引退をシーズン後に発表しましたが、最後の決断ですら阿部、槙野、宇賀神に気を使って一人ひっそりと発表する始末で、どこまで人間が出来ているのですかと言いたくなります。

来季は浦和でアシスタントGKコーチに就任という話もありますが、真偽はいかに。もしGKコーチの道を進むのであれば、現役最後の年を恩師である浜野GKコーチと過ごせたことは本人にとっても良かったでしょう。それにしても「アシスタントGKコーチ」って浦和ではあまり聞いたことがないので、いろいろとそれくらい評価されているってことかもしれないですね。

28 DF アレクサンダー・ショルツ

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酒井と並んで夏加入の目玉となったデンマーク人DFは浦和レッズ今季最高の補強になったのではないかと思います。

189cmと長身ながら機動力に優れ、高いラインを敷いても全く不安を感じさせない素早く広範囲にわたるカバーリングで最終ラインを支えるだけでなく、必要であればドリブルで高い位置まで持ち上がり、サイドを使えるのであれば速く正確なパスで相手のブロックの脇へとボールを付けるなど攻守両面において一人で浦和のサッカーを1段、2段とレベルアップさせてしまいました。特にショルツの両隣でプレーした選手、特に岩波や山中はそれぞれの弱点を補い、長所を活かしてくれる存在として有難く感じていたはずです。今季の公式戦出場は後半戦のみの23試合でしたが、それでもプレーの質は格の違いを思わせるほどで、来季フルにプレーできればベストイレブンの有力候補となりそうです。

これだけハイレベルなパフォーマンスを見せてくれたのは間違いなく日本に早く馴染めたことが大きな要因のはずで、柔和な性格に加えて来日前から夏目漱石や村上春樹の小説を嗜み来日前から日本語の勉強に取り組むなど日本文化に興味津々。元々読書家かつ絵画のコレクションもしているなど文化的教養がめちゃくちゃ高い人なので、日本での生活も楽しんでいる感じですしリフレッシュの方法もたくさん持っていそう。人間性でも競技面でも完璧に信頼できる男にとって怖いのは怪我だけでしょう。

唯一欠点というか期待と違ったと言えるのは『闘将』として激しく周りを鼓舞するようなプレーヤーではなかった点くらいでしょうか。顔も厳ついし刺青だらけなので安易にラベリングされた面もあるのでしょうが、実際の彼は恵まれたフィジカルをベースに知と技で冷静に戦うチームプレーヤータイプのように感じます。サッカーの質を上げるという部分では全面的に信頼できるものの、裏を返せばチームが上手くいかない場面を一人でひっくり返していけるような選手ではないので、リーダーシップは日本人選手が担っていく必要がありそうです。とにかく怪我無く、長く浦和でプレーして欲しい選手です。

29 MF 柴戸 海

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今季開幕当初は「柴戸はビルドアップ出来ないので出場機会が激減する」とか「リカルドのサッカーには合わない」とかさんざんなことを言われていましたが、4月に入ると無事に覚醒、今季は公式戦43試合出場(先発33試合)となりました。

春先まであまり試合に絡めなかったことや途中の怪我による離脱でリーグ戦は1971分のプレーだったものの、9月以降は完全にCHのファーストチョイスに。誰の目にも明らかなのはビルドアップへの関わり方の進化で、相手の2トップの背後に立ちボールを引き受けてからのターン、ひとつ前の列へボールを運び出し、センセーショナルではなくとも確実に水を運んでいくパスなどがわかりやすかったですが、一番は相手の出方を見ながらプレー出来るようになったことが素晴らしく、これには#急進的柴戸派もニッコリ。まあ未だにガチャガチャはしてはいるんですが、もともとデビュー戦でルーレットをかましたり突然浮き球をボレーでサイドチェンジしたり自陣バイタルエリアで寄せられた時には本能的にダブルタッチで脱出したりと足元の技術が全然ないとは思えなかったので、個人的には余裕を持てればこのくらいは出来るはずだよね、という気もします(ひいき目)。本人によるとこうした余裕の要因はポジショニングが良くなった、どこに立つべきかわかってきたことだそうで、「立ち位置」で解放されるとここまで変わるんだぞという良い例になったのかもしれません。

というわけでボール保持においてもチームに貢献できるようになった柴戸ですが、ボール非保持時の良さも相変わらず。相手に寄せる瞬間のクイックネスと脚の伸びは他の選手にはない彼のアイデンティティであり、実は180cmと身長が高い方であることを地上戦に活かしている珍しい例でしょう。進化した柴戸の良さはデータにも表れていて、Football Labのプレー指標のデータで「ビルドアップ」11、「ボール奪取」16、「カバーエリア」13の合計40(MAX60)を超えるCHの選手はシミッチの45(同12,18,15)のみ。恣意的な指標の組み合わせかつチームスタイルに大きく左右されてしまう数字を比べているだけではありますが、ビルドアップ貢献+ボール狩りをさせるならリーグトップクラスの仕事量が期待できる選手になりました。

来季は新加入選手にポジション争いの深刻な対抗馬がおらず、敦樹とのプレータイムの共有はあるとしても怪我さえなければ柴戸の仕事を奪うことができそうなのは期待の新加入である安居海渡が覚醒した場合くらい。今季終盤に柴戸と敦樹を起用し、ボランチをあまり動かさず中盤に残すことでセカンドボール争いやトランジション対応を強化する布陣を敷いたことでチームが安定したことを踏まえても、来季も引き続きチームにとって重要な選手となるのではないかと思います。今後への期待という意味ではピッチ外の部分、キャプテンシーの発揮がテーマになると思いますが、明治大学時代は「自分は引っ張るタイプではない」と副主将を務めていたというメンタリティがどう変わっていくか、それが振る舞いとしてどのように現れるかに注目です。

30 FW 興梠 慎三

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ここ数年の浦和を支え続けてくれた大エースですが、今季は公式戦すべてを合わせても1,000分に満たないプレータイムと思うように稼働できず苦しいシーズンとなってしまいました。リーグ戦は20試合に出場とそこそこ出ているように思えますが、スタメンはたった3試合のみとそもそもチームの構想に入れていなかった印象です。

昨季の終盤から動きの連続性が出なくなっており、局面局面でのボールキープや展開、シュートの技術など個別のプレーは衰えを感じさせないにしても試合全体の流れに何度も顔を出すようなことはもう難しいのかなと思わせるシーンもしばしばでした。ただ終盤戦は時間限定ではあるもののコンディションが上がってきているのではないかと思わせる試合もあり、大原ではかなり良いプレーが出来ていた様子で、来季はもう少し期待できるかも。そもそも過去3年くらい無茶な働かせ方をし過ぎた反動なのかもなとも思います。

アジアの戦いを控える来季こそ完全復活しまたゴールを量産して欲しいのですが、どうやら札幌からの熱烈なオファーにかなり気が向いている様子。キャリアの終止符を意識せざるを得ない成績となってしまった今季ですが、最後はもう一度ミシャのもとに行くのか、浦和の男であり続けてくれるのか。もちろん心の底から残ってほしいのですが、これまで浦和にもたらしてくれたこと、怪我を抱えながらも常にゴールという結果で浦和を助けてくれたことを考えれば、浦和を好きでいてくれるなら彼の好きなようにしておくれとしか言えないかなあとも思います。

33 MF 江坂 任

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まさかの電撃加入で夏の移籍市場最大クラスのサプライズとなった和製プリンス。

関西出身ですが群馬、大宮、柏と関東圏のクラブでのプレー経験に加え、今季のレッズは流経大出身者が一大派閥だったこともありチームに馴染むのは非常に早かったようでした。昨季の柏でのオルンガとのコンビネーションに代表される通り、時間と最低限のスペースさえあれば自力でのターン、必殺のスルーパス、キープしてのサイドへの展開、シャドーストライカーとしての仕上げ仕事など、チャンスクリエイトからフィニッシュに絡むまであらゆるプレーがハイレベルにこなせるハイスペックな10番で、西野TDが語った通り「獲れたらいいねリスト」に載っていたとしても、普通は獲れない選手のはずでした。移籍は柏でネルシーニョ監督とうまく折り合っていなかったのが理由のようですが、浦和に来たからこその決勝戦での先制、そして意外にも彼にとって初の主要タイトルとなる天皇杯優勝があったかと思うと、上手くいかないなら思い切って環境変えた方がいいぜ!という考え方にも説得力が出てきます。巡り合わせですね。個人的には去年のJ1ドラフトでオルンガの外れ1位で指名した選手でしたので、浦和で見れることになったのはとても嬉しかったです。

シーズン通算ではJリーグで7得点(浦和で5得点)3アシスト、天皇杯とルヴァンカップで1ゴールずつと現役日本代表の選手としてはやや物足りなかったものの、特にリーグ戦の中盤~終盤にかけて小泉との2トップもしくは江坂をワントップにおいたいわゆる0トップシステムを採用した試合も多く、彼が最も輝くであろう最終ラインにゴリゴリ圧を掛けてくれるストライカーとの併用、つまりユンカーとの2トップもしくは江坂トップ下での起用が限られていたことは考慮が必要でしょう。ただ、じゃあこれが来季は解消されるかというとそうでもなさそうなところがややこしいところで、ユンカーが通年稼働出来なかったのが根本的な原因ではあるものの、おそらくリカルドはユンカー+江坂のユニットではボール非保持時のプレッシングの精度に物足りなさを感じているはず。小泉はその点プレッシングの回数・距離・追い込み方の全てで二人を上回っており、ボールを相手から取り上げたい展開においては小泉を使いたいという判断があったとしても納得できます。かといって江坂を使いたいのでサイドに置くと、今度は本職サイドの選手に比べて縦突破の可能性が制限されてしまう上に中央からサイドにボールを展開して自分がゴール前に入っていくという江坂に最もやってほしいプレーから遠ざかってしまうというジレンマもあり、江坂・小泉・ユンカーをどのように共存させるかというのは答えのないパズルのようなもので、リカルドが今季終盤苦労したテーマの一つかなと思います。この3人の使い分けや共存に関してはボール保持においてもジレンマがあり、江坂と小泉は二人とも中盤に降りて一度関わるタイプ、ユンカーは最終ラインのギャップが出来るのを待って自分が一番ゴールできるタイミングで動き出すタイプと、最初に囮になって裏に抜けていくタイプの選手がどの組み合わせでも足りていませんでした。これについては明本をSHで起用し江坂の代わりに最前線での無限裏抜けの刑を命じることによってある程度の解決を見ましたが、ここをどう解決していくかは来季も重要な戦術的テーマになるのではないかと思います。そういう意味で、補強で前線の選手の獲得がある気がするのですが、そうなるとユンカー・江坂ですら競争に晒されるということで、観ている方は楽しいですが本人は大変ですね。

ちなみに、こういったジレンマの中でも江坂本人はしっかり持ち味を出してくれており、0トップ戦術の中で相手に囲まれながらも高質なテクニックでボールをキープしトランジションを成立させるなど本来期待したいプレーとは多少異なる場面でもよくやってくれていました。無理げなシーンでもボールを収めてチームの戦術を一人で支えるというのはさながら浦和加入当初の興梠のようにも見え、それがいいか悪いかは別にして和製興梠のような立ち位置に今後収まっていくかもしれないなと思ったりもしてしまいます。またJリーグ公式のデータでは1試合平均のチャンスクリエイト回数がリーグ2位と定義がよくわからないものの立派っぽい数字を残しており、願わくば来季は上記の戦術的なジレンマを解消し今期以上の活躍を、そしてその結果としてW杯に絡んでいく活躍を期待したいところです。

34 DF 藤原優大

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高校サッカー界の帝王青森山田のキャプテンが武田に続いて2年連続で加入。最大の武器はヘディングの打点の高さで、ジャンプ力だけでなく空中で頭をねじ込んでいく技術というかセンスというか気合も持ち合わせているのが特徴です。

ここ10年、15年くらいの浦和レッズはなかなか高卒選手を試合で使うことが出来なくて、DFの選手だと2年くらいは平気でベンチ外のまま放置されてしまうかもなと心配もしたのですが、リカルドの方針なのかルヴァンカップであっさりデビュー。ただデビュー戦で左眼窩底骨折の大けがを負ってしまうなどあまり運は良くなかったですね。

浦和では2試合しか観ていないのであれですが、守備の面ではまだしもビルドアップ、特にパススピードはまだまだJ1で通じるまでに時間がかかりそう。見えているところやボールの持ち方は良いと思うので、少し時間がかかるかもしれませんが引き続き期待です。相模原に行ってからは同時期に大量に補強された選手たちの中でも真っ先に試合に絡み、17試合中16試合をスタメンで戦うなど貴重な経験を積めたと思います。J2では空中戦の強さはすでに際立っていたように思いましたし、チームを残留させることは残念ながら出来ませんでしたが彼にとっては良かったと思います。

来季はJ3相模原への育成型期限付き移籍延長が発表済み。一時噂の出た湘南や大槻さんが就任したJ2群馬などもあり得るかなと思いましたが、10代のCBが試合経験を確保するためにはカテゴリーはあまり気にしていられないかなという感じもするので悪くないのでは。「海外には興味がない、浦和を強くしたい」と言い切ってくれる誇りある選手なので、着実にステップアップして浦和の最終ラインを10年安泰としてください。

36 DF 福島竜弥

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彩艶とともに昇格を果たしたユース出身の生え抜きSB。左利きでスピードがあり、対人バトル大歓迎のガツガツ系SBなのですが、顔面のインパクトは控えめというのがポイント。

ルーキーイヤーの今季はルヴァンカップで3試合217分出場で、横浜FC戦では鋭いクロスからプロ初アシストも記録。縦へのスピードある攻撃参加から鋭いクロスを供給する姿は先輩である荻原と山中のハイブリッドといった感じで、今季のトップチームで目立った印象を残したかというとそうではないものの、トップ昇格しただけのポテンシャルは十分に有しているように思います。

他の22歳以下の選手と同じく来季はルヴァンカップのグループステージに参加しないため出場機会を確保することが難しく、さらに同年代・同ポジションでJ1経験を積んでいる大畑歩夢の鳥栖からの完全移籍加入まで決定済み、さらに松原后の獲得もあるか?!という状況なので出場機会確保は厳しい状況。シーズンレンタルで修行を積むのが得策のように感じますが、サイドに槍を置いて素早く仕掛けつつ守備でもガンガン対人勝負を求める監督のいるチーム、例えば大槻さんが就任した群馬とかどうでしょうか。と思ってたらJ3相模原に育成型期限付き移籍することが発表されました。がんば!

37 MF 武田英寿

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プロ2年目となった今季はキャンプから状態が良かったようでシーズン序盤に4-1-4-1システムのIHとしてポジションを掴むなどリーグ戦8試合に出場。特に7節鹿島戦、8節清水戦あたりはチームが軸となる戦い方を見つけたかにも思われた時期で、その中心としてスタメン出場していたので期待感も高まっていたのですが、結局はその後怪我で出場機会を失い、FC琉球へレンタル移籍、J2で修行を行うこととなりました。

琉球でのプレーはあまり観ていないのでがっつり省いてしまうとして(出場していきなりゴールを決めたのは見ました)、浦和での今季を振り返ると非常にもったいなかったなと思います。シーズン序盤の段階では4-1-4-1のIHをうまくこなせる選手は小泉以外には彼だけで、SHとしてはスピード不足、トップ下としてはプレッシャーに負けてしまう、かといってボランチでは強度不足で使えないというものすごく中途半端な選手だったことが逆に功を奏して、IHの位置をスタートに状況に応じてトップ下になったりSHになったりボランチのように振る舞ったりする役割がハマっていました。もちろん強度不足の感は否めなかったのですが、左利きの中盤ということもあり少なくともチーム内でユニークな存在になってはいたので、このまま出場機会を積むにつれて強度が追いついてくれば…という感じだったのですが、徳島戦で負傷離脱。帰ってきた後はダブルボランチのシステムが定着し始めており、そうなると居場所を失ってしまうよなと。

来季について考えても、補強を経てかなりソリッドな陣容になり、プレーモデルも安定しつつある今の浦和に帰ってくるとしても競争相手は江坂や小泉となるので簡単にチャンスは得られなさそう。彼らと比べたときのユニークネスは左利きということですが、リーグ優勝を目指すチームではどうしても足りない部分が気になってしまいそうです。チャンスがあるとすれば4-1-4-1システムをもう一つの基本システムとして使っていく場合ですが、その場合でも江坂、小泉に加えて敦樹や安居、もしかすると関根との競争が待っているという感じなので、ここは潔くもう一年レンタルで実戦経験を積むべきかも(12月26日に大宮への期限付き移籍が発表となりました)。J2であればテクニックで明確なアドバンテージが取れそうな感じでしたので、まずは年間を通じて攻守に貢献する部分を学びつつ、身体を作る作業が必要かもしれません。もともとシュートが凄く上手い選手ですしFKも蹴れるので、特に試合を決める部分を発揮できるようになれば期待感が上がってくると思います。

40 MF 平野 佑一

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ほぼ無名のJ2リーガーから半年間で「浦和レッズの頭脳」と評されるようになるほどの大飛躍を遂げたレジスタ。

水戸時代の彼を皆さんより一足早く彼を見つけられたことは僕のちょっとした自慢になりましたが、それは当然僕の目が良いのではなく、彼がそれだけの違いを水戸で見せていたからに他なりません。一方で本人も素直に認めていることですが、彼がこの一年間ですさまじい成長を遂げたのかというとそうではなく、彼がこれまで培ってきたプレーと浦和に足りなかったプレー、あるいは求められるプレーががっちりハマったことが大きな要因であり、またボール保持時のプレーを生命線とする選手にとって周囲に立つ味方選手の技術や動き出しの質が高いことは大きな助けになったと思います。

夏の加入ということで浦和では公式戦20試合、リーグは13試合1,003分の出場となっていますが、水戸でのプレータイムを合わせるとJリーグ32試合2,622分出場と圧倒的なキャリアハイ。特筆すべきは浦和ではリーグ戦13試合のうちすべてがスタメン出場であることで、特にゲームのリズムを作る、ビルドアップの場面でチームの目として相手の形や出方を探るという部分でリカルドから高い信頼を得ていたことがわかります。

実際に今季の浦和では平野の役割を代替できる選手はいませんでしたし、リーグ全体を見渡してもこれほど露骨に相手を見てプレーしているのがわかる選手というのは非常に少ないので、希少価値の高い選手を確保できたという意味でも良い補強でした。ただし、普通のクラブ、これまでの浦和であれば今後も平野は安泰なので来季も怪我無く頑張ってくださいなのですが、我々はガチで3年計画をやっているのでそうはなりません。なんと希少なはずの「チームの頭脳」になれる選手、しかもその代表格とも言える岩尾憲に獲得の噂があるとのこと。もしこの補強が実現すれば来年は岩尾とのレジスタ2枚体制で厳しい日程を戦っていくことになるのだと思いますが、その中で経験豊富な岩尾から何を学び、彼自身かどう進化していけるのか、そして未経験ゾーンの厳しさである通年のJ1+アジアの戦いの中でタフさをどう身に着けていくのかに注目したいと思います。

ちなみに冷静でロジカルなプレーとは裏腹に謎のダンスを踊ったり相手にビルドアップの狩りどころにされると来るとわかってるのにあえて向かっていったりと、実は調子が良くて負けず嫌いなパーソナリティの面も徐々に出てきているので、来季はさらなるキャラ立ちにも期待です。

41 MF 関根 貴大

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浦和に復帰して以降ずっとそうだったように、今季序盤も悩みながら、もがきながらプレーしているのかなという印象だったのですが、終わってみれば公式戦51試合出場、リーグは36試合2,233分プレーとまさに主力として戦い抜いたシーズンとなりました。特に後半戦は連戦でもスタメンで出ずっぱり、走れなくなるまで毎試合出し尽くすようなプレーをしており、彼のタフさや戦える部分は直接的に結果を争う場面で非常に頼もしかったと思いますし、そういう存在になってくれたことは選手が多く入れ替わるクラブ状況の中で浦和らしさを担保するという意味でも重要だったように思います。

昨季から大外レーンだけでなく内側に入ってトップ下のように振る舞うプレーには取り組んでいましたが、今季はその方向性がさらに強まり、右サイドをスタートポジションとするものの前後左右に顔を出していたのが印象的。ビルドアップの出口としてハーフスペースの入口でボールを引き出し、ターンから相手の最終ラインに仕掛けつつラストパスを狙うプレーは関根らしさ×リカルドらしさの最大公約数のようにも感じました

リーグでの3ゴール3アシストは本人の納得できる基準とはほど遠いとは思いますが、守備や球際での戦い、年の近い新加入選手たちとのコミュニケーションなど数字には現れない部分での貢献が大きかったシーズンであり、本人もそうした部分に重みとやりがい、役割を感じ始めているのかなという気がします。天皇杯では「自分はどうでもいいし形もなんでもいいからゴールが決まって勝てばよい」と言った発言も出てきていて、チーム内での立場の変化が言動から良く感じられたのが今季の後半戦でした。浦和版ミシャサッカーの形成期にデビューし、関根のプレーがその完成に大きな役割を果たしたという経緯を踏まえても、その時代の兄貴分たちが次々とチームを離れることが決まっていく中で感じているものは大きいはず。26歳、Jリーグでは6シーズンしか戦っていないにも関わらず既にJ1通算183試合出場とキャリアの面ではベテランに近い立ち位置であり、ACL4大会出場の経験値を踏まえても来季は名実ともにチームを引っ張る活躍が求められてしまいます。個人的にはあまり背負いすぎて欲しくはないのですが、「試練は乗り越えられる者にしか訪れない」という言葉が真であるならばこれもまた必然なのかもしれません。

42 DF 工藤孝太

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シーズン開始時から2種登録選手としてトップチームに帯同し、4月にルヴァンカップでデビュー、18歳の誕生日を迎える前の5月にトップチームへの正式昇格を決めた期待の左利きDF。今季後半は全く出番なしでしたが、世代別代表にはコンスタントに招集されておりキャリアのスタートとしては今季はまずまずのシーズンだったのではないでしょうか。

180cmの身長は現代のCBとしては大きくなく身体もまだ出来ていないものの、得意のビルドアップには自信をもって取り組めていたのではないかと思います。近年欧州の戦術トレンドへのフォローが強まっているJリーグでは左利きでビルドアップに貢献できるCBの市場価値が高まっていることもあり、浦和としてはじっくり育てて長く使っていきたい選手だと思いますが、同じく左利きのCBでボランチ出身、サイズ感も似ている知念が完全移籍で加入ということもあり、来季はレンタルの可能性も考えられそう。個人的にはJ2でもJ3でも構わないのでシーズンを通してプレーできるチームで頑張ってほしいのですが、例えばg(文字数オーバー)

背番号なし チラウラー 96

3年計画の2年目、リカルドを監督として迎え本格的な変革となる今季を記録すべくモチベーション高く臨んだものの、シーズン中盤にかけて同じようなゲーム展開、同じような構造のゲームが続いたチームの失速とプライベートのバタバタを言い訳にチラ裏が停滞。一度止まってしまった歯車を再起動させる強い気持ちを持ち続けることができず、チームが大きくバージョンアップした終盤はツイッターで躍動するもついにチラ裏は放置し続け、シーズントータルとしては責任を果たしたとは言えず期待外れの結果に。いろいろとそれっぽいことを言っていますがチラ裏を書いていない試合はほとんど忘れていますし、そもそもチラ裏を書かないチラウラーに何の価値があるのかは疑問です。浦和レッズブロガー界隈では毎試合レビューをアップできたりいろんなデータを上手にまとめたり論理的な考察を書ける優秀なプレーヤーが着実に増えており、来季はさらに厳しい競争に晒されることになりそう。一方で現地観戦はホームのほぼ全試合+天皇杯終盤戦に参戦とそこそこの成績を残しており、また写真もクオリティはともあれたくさん撮ったので活動の幅は若干拡がったか。

独自の情報によると来年は人生的にいろいろあるためこれまでとは違ったスタイルでの応援を余儀なくされてしまいそうですが、それを逆に活かしてチラウラーとしての活動を増やしていくことが期待されます。レッズが勝負の3年目を迎える来季はACLを含む過密日程への対応が求められることに加え、チームの完成度がこれまで以上に高くなるため勝負を分ける細かい狙いや流れの描写、戦術的配慮の観察をより高いレベルでこなしたいところ。これまで得意としてきた長文を好きなだけ書いて読者に投げ付けるスタイルは本人の身体への負担も大きくコンディション面の不安も指摘されているため、サステイナブルなチラ裏スタイルを構築できるかが最も重要なテーマになりそうです。

 

というわけで、2021シーズンも皆さんお疲れさまでした。今年も長文にお付き合い頂きありがとうございました!良いお年を!