96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

【お題で書く】サイドアタッカーに順脚を置くことのメリットデメリットについて。なぜリカルドは順脚を置きたがるのか【1,500字】

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お題で書くシリーズ、第2弾。お題を思いついた人はPagefulで投げてください。

今回のお題

サイドアタッカーに順脚を置くことのメリットデメリットについて。なぜリカルドは順脚を置きたがるのか。1500字程度でお願いします

時々話題になりますね、これ。早速いってみましょう。

書いたもの

「自分は右サイドを主にやるんですが、右サイドからのドリブル突破やチャンスメイクを見てほしいです」
 大久保智明の加入会見での一言である。彼は、右サイドでプレーする左利きのアタッカーであったが、浦和加入後は左サイドでのプレーが目立つ。彼が右サイドでプレーしていたことを知っている人には疑問に思う点もあるだろう。なぜ右サイドでのプレーの方が得意なはずの大久保を左に置くのか?
 結論から言えば、僕はリカルドが利き足でアタッカーを選んでいるわけではないと思っている。だが、利き足とのサイドの関係を整理するのはより深い理解に役立つはずだ。
 サイドアタッカーはその持ち場の性質上、プレーする方向が限られている。基本的には縦に行くか、中に行くかだ。数年前までは、中に行く逆脚の選手が重宝されていた。ロッベンやリベリがそうだ。彼らの最大の強みは中へのプレーに破壊力があることだ。ゴールを守る相手DFから遠い利き足から直接シュートを狙うことができるし、クロスやパスもゴールに向かっていく危険な軌道のものが出しやすい。一方で、順脚の選手は縦に突破したあとは利き脚が相手から遠い脚になるので、右脚のクロスや折り返しのボールが出しやすく正確になるメリットがある。
 これを前提にすると、リカルドが順脚アタッカー使う時、基本的に縦に突破した後のプレーが期待されていると想像できる。これはおそらく、ポジショナルプレーの目指すところとも関係している。ポジショナルプレーが狙うのは相手に複数の選択肢を突きつけ、先手を取り、確率の高い勝負をすることだ。そうであるなら、ゴールデザインも確率を重視したい。
 サッカーで最も簡単なプレーは正面から来たボールを蹴り返すことだ。つまり、ゴールポストの脇からのマイナスの折り返しはゴールの確率が高いはずだ。マイナスの折り返しをサイドアタッカーに求めたいとなれば、中に入って自らゴールチャンスを創出しようとする逆脚アタッカーよりは順脚アタッカーの方が都合がよい。こうした論理で順脚アタッカーが好まれるのではないかというのが一つの説明だ。
 もう一つ仮説を挙げるとすれば、SBとの関係性を考えることになる。逆脚アタッカーたちが大活躍していた頃、SBの仕事はもっぱら守備とオーバーラップであった。今風に言えば、大外レーンの上下動だ。中に入っていく逆脚アタッカーと大外を駆け回るダイナモは相性抜群であり、これ以上ない組み合わせにも思えた。ところが、最近はSBが内側のレーンを使うことが珍しくない。これは攻撃のためだけでなく、ボールを奪われた後の速攻防止の意味でも合理的で、ポジショナルプレーの代表的な駒使いとなっている。問題は、SBが内側を取るなら、サイドアタッカーは中に行くべきではないということだ。ここにも順脚アタッカーの都合の良さを見つけられる。
 とはいえ、実際のところ、リカルドの采配に上記の傾向を感じることは確かだが、それだけとも限らない。昨年は逆脚の汰木が左サイドのファーストチョイスだったし、右サイドの関根は順脚だが中に入っていける選手で、実際に内側でも多くプレーしていた。これは、サイドの采配が利き足だけの問題ではないということを示唆している。汰木は縦突破からマイナスの折り返しをよく供給していたし、選手起用では攻守の立ち位置の習熟度や強度における関根の強みも考慮すべきだ。大久保に関しては、総合的に関根をピッチに残したいので、左に置いて縦突破を期待したという側面もあっただろう。結局のところ、順脚・逆脚の議論は本質ではなく、表面上そう見えている模様のようなものだということだ。

 

1,499字。

 

最初何も考えずに書いたら3,000字くらいになったのでかなりきつかった。ちょっと詰め込み過ぎ感があるけど、良い訓練になりました。