96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

【2022シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト

さあ今季もやってきました。僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。今年の夏のウインドーは7月15日から8月12日まで。夏の移籍はスピード感と勢いが大事なので、乗り遅れないようにしっかりと備えておきたいところ。とはいえ今季は浦和以外の試合をあまり観ていないので、今季はこいつだろ!という選手を外しているかもしれませんが、あくまで僕が観た中でのものですので、そういう理解でお楽しみいただければと思います。ちなみに去年のリストはこちら。

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記載ルールは昨年と一緒で、★がついている選手は特に気になっている選手でございます。なお、昨年までに選んだもしくは別途言及してきた選手は選ばないことにしました。引き続き大注目の選手はいるのですけどね、町野とか、鳥海とか。

 

後藤雅明 :モンテディオ山形 ・GK・1994年5月生(28歳)191cm/83kg・右利き

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今季からモンテディオの守護神として素晴らしいパフォーマンスを見せている中堅GK。大卒なのでプロ6年目となるわけですが、良い経験を積んでおりもはやJ1で通用する選手になってきているのではないでしょうか。191cmのサイズは日本のGK新時代のスタンダートを満たしていると言えますし、安定したシュートストップに代表される守備能力も魅力ですが、モフモフスキー監督の下ボールを保持しポジショナルの要素を盛り込んだサッカーをみせている山形にあって、ビルドアップでも貢献できるGKとなっているというのが付加価値の高さでしょう。

これはGKに限ったことではないですが、ビルドアップに貢献できると言ってもいろいろとタイプはあるもので、足元の技術がめちゃくちゃに上手くてFPのようなトラップを披露できるタイプとか、フィードが非常に上手いとかですが、後藤を観ていていいなと思うのは中距離の浮き球を味方につける能力ですね。特に右サイドから戻ってきたボールを左サイドにダイレクトで展開するキックが上手く、ハーフラインを超えない微妙な位置に降りてきた味方選手に正確にボールを届けてくれるのはプレス回避を設計するにあたって非常に心強いです。J1だとキムジンヒョンが上手いあのキックが出来る選手ですね。

年齢的には若干高めですが、GKというポジションであれば全盛期はこれからでしょうし、賞味期限はまだまだ長そうです。体格・守備面・ビルドアップ・そして経験値と各能力のバランスが取れたGKはレアだと思うので、金沢から今季移籍したばかりですが今年のオフにJ1ステップアップがあっても驚かないかなという感じです。

 

★野澤陸 : ヴァンフォーレ甲府・DF・1998年12月生(23歳)185cm/80kg・右利き

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甲府は昨シーズンからとても面白い選手がたくさんいて、個人的にはよく観るチームであります。現在はJ2で十桁順位に甘んじておりますが、自動昇格争いを繰り広げる上位3チームとの勝ち点差ほどタレントの魅力に差があるとは思えないチームです。

鳥海、長谷川、須貝、宮崎などなど良い選手はたくさんいるんですが、今回ピックするのはDFラインの野澤陸。3バックの左CBとしてプレーしていますがもともとはFWだとか。流行りの左利きではありませんが、柔らかい右足のフィードに加えて、最終ラインからどんどん運んでいけるプレーが魅力的。ふてぶてし気味の佇まいがどことなく岩波に似ている気がしますが、岩波よりも機動力は上ですね。ボールプレーが上手なことに加えて、自分の周囲のスペース認知が上手そうに感じます。ボールを運んで前線に出て行ってもばたつかない印象があるのは、元FWというところが影響しているのかな?と思ったり。

一方で守備者としての経験値はもう少し必要でしょうし、激しいトランジションや単純なスピード勝負への対応などまだよく観れていない部分もあるので、年齢を考えてもこの夏もしくは今シーズンのオフにどうこうという感じではないかな?という印象。とはいえ大卒選手なのでステップアップの道筋が見えれば決断は早いかもしれないので、3バックをメインに運用しているチームか、浦和のように4バックと3バックを行き来したいチームにはお勧めされそうな選手。メンタル面がわかりませんが厳しい先輩かショルツみたいな真のプロフェッショナルの横で成長させてみたくなります。浦和でみてみたい選手の一人。

 

川井歩: モンテディオ山形・DF/MF・1999年8月生(22歳)177cm/65kg・右利き

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広島ユースから昇格したものの広島ではチャンスをつかめず、レノファから今季山形に移籍してきたサイドプレーヤー。シーズン当初は出場機会を掴めていなかったようですが最近よくプレーするところを見ます。U-18代表にも選ばれていた選手なので、育成年代では知る人ぞ知るエリートかも。川村拓夢と同期。基本はSBの選手だと思ってるんですが、合ってますかね?

彼の魅力は何といってもパスを前につけながら自分がどんどん前に上がっていくプレースタイルで、まるで右SHがもう一枚プレーしているようなクオリティのオンザボールの質を期待できます。ボールの持ち方が中盤の選手っぽいんですよ、観ればわかる。で、前にボールを当てつつサイドの高い位置まで侵入し、最終的には精度の高いクロスで仕留めるのが得意なプレーではないかと感じます。特に外側にこだわるでもなく内側に入っていけそうな雰囲気も出しているので、「そういうチーム」で良さを発揮できるタイプかも。攻撃面で凄みが出てくれば右SBとしては川崎の山根とか、馬渡のような雰囲気・系統の選手になりそうな予感。

そういう選手なので、やはり懸念は守備になりそう。ダメという印象はいまのところないですが、ポジショニングが怪しいシーンは散見され、そのせいで遅れた対応から外されてしまうことがあるのは改善点かも。今シーズンも序盤は「モンテの至宝」半田陸のサブ扱いという感じで、出場機会を掴んだ第6節以降はプレーが認められたのか左SBとしてながら半田と同時起用されるようになり、その後は半田がいなければ川井を右SB、半田が使えれば半田を右SB、川井を右SHとする運用もみられるように…という感じで、右SHでも使われているところをみると、チーム内でも守備よりも攻撃の選手という評価のようです。個人的には彼は右SBを極めたほうがキャリアの天井が高い気がするし、後ろからボールを運んで攻撃にアクセルを入れられる選手はユニークだと思うので、期待しています。

あとは、ボールスキルや推進力があるとはいえ置いておけばビルドアップを作ってくれるタイプではなく、右SHとしても対面の相手をベリベリ剥がしてくタイプの選手ではないと思うので、使い方と戦術のマッチングが重要かもしれません。この意味では山形は彼にとって良いチームに思えますね。

 

新保海鈴: テゲバジャーロ宮崎・DF/MF/WG・2002年8月生(19歳)171cm/64kg・左利き

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本企画では初めてJ3からの選出。とはいえレノファ山口からのローン移籍中なのですが。柏のU-12/U-15、セレッソU-18を経てセレッソU-23でプレーした後レノファへ移籍。レノファでは3試合しか出ていないみたいなので、ここまで所属したクラブの選手という印象はあまりないかもしれません。田中隼磨とMALIAの息子という覚え方をしている人もいるかもしれませんけど。

左利きの左サイドで、左SBの印象が強いのですが直近の試合では左WGでもプレーしている模様。濃い目の顔面には似つかない(失礼)テクニカルかつ懐の深いボールの持ち方が特徴の左利きで、キープ力があり組み立ての上手さが目立ちます。なんならちょっとしたエレガントさも感じます。ボールを保持し人数をかけたアタッキングに力を入れているテゲバにあってもビルドアップでボールを落ち着かせ相手を外しながら組み立てていけるのは面白い存在です。

試合を観ている感じ、スピードに特徴を感じたことはないのでSBをやるなら弱点になるかも。WGで出ていた試合を観ても大外に張るというよりはガンガン中央に入ってプレーしていたので、加速力で勝負するような選手ではないかなという感じ。ただ走り回る感じの走力はあるし、スペースを見つけて入っていく能力はあると思うので、年齢を考えても今後数年でどういう役割と戦術の中であれば自分の強みを相手に押し付けられるかを見つけられるか、またはそれを提供してくれるチームに行けるかどうかが重要になりそう。ポジショニングを学んだらIHとかでもロマンを感じられそうですが、前の方にいると動き回りそうなので逆に難しいか。なんか特殊な指導理念と指導テクニックを持ったコーチに魔改造してもらったら覚醒しそうな選手。湘南とかにぶち込んでみたい。

 

長峰祐斗: ツエーゲン金沢・DF・2000年3月生(22歳)175m/67kg・左利き

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なんかSB多いですね。特に意図しているわけではないんですが。この選手は埼玉平成高校→拓殖大学→金沢特指→金沢内定の大卒ルーキー。埼玉平成高校では川崎の佐々木旭と同期かつ、ということは埼玉県の高校サッカー時代に安居と同じ代で競ってますね。左利きの左SBで、基本的には左脚一本でプレーする選手です。右脚?体重を支えられればいいんだよ、的な。当然左のキックは質が高く、サイドの選手としてスピードもそこそこ、そしてSBとしては175cmの身長もまあまあな安心感です。

アーリー気味の位置からえぐいポイントに落としてくるクロスが最大の武器なんですが、拓殖大時代はパスサッカーをするチームだったそうで、ビルドアップへのかかわりも好きな様子。バックラインでボールを受けて素早くルックアップからの左脚でのフィードや縦パスなどの配球はなかなか良いです。さらにプレッシャーが近いところでの味方との近い距離での繋ぎもこなれ感があり、しかもロングスローも投げられるとくればSBとして求めたい攻撃ツールは一通り備え付けのコスパ物件というわけです。

ただ、まあルーキーなのでチームの序列とか経験とかいろいろあるんでしょうけど、金沢ではまだ彼のポテンシャルを全て発揮していないのではないかなーと思う節もあります。堅めのオーソドックスなチーム戦術を否定するわけではないのですが、隣でプレーする左CBの松本が長峰を押し出してくれるわけではないし(どちらかというとファイタータイプの松本のビルドアップを介護するために長峰は低めの位置に留まる傾向があるように思います)、その結果左SHを内側にしまって長峰を高い位置に押し出す形もチームとして狙ってはいるんでしょうが回数をもっと増やせそうな気もします。別にフィードも上手いのでいいんでしょうけど、凄いクロスがある君が最終ラインからボール配球してるのもったいなくない?と。基本的には山中、永戸と同じタイプのポケモンなので、こういう選手は戦術で彼らの強みを尖らせてあげるのがいいというか、サッカーファンとしてはそうしたユニークネスが見たいんですが、マルチツールでバランスが取れているが故にマイルド感のある本人とオーソドックスなチーム戦術が彼のポテンシャルに対してちょっとした制限になっているかもと思ったり思わなかったり。

というわけで、チーム戦術に思いっきり組み込んでバキバキに尖らせたらどうなるか見たいので、J1組ならマリノスさんとか京都さん、昇格候補組なら新潟あたりが彼のポテンシャルを解放してみて欲しい気もします。派手なキャリアはないですがいい選手です。

 

★河原創: ロアッソ熊本・MF・1998年3月生(24歳)169cm/65kg・右利き

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全国津々浦々のセンターハーフをついつい探しては品定めしてしまう日本中盤真ん中愛好会の皆様、お待たせしました。今季のJ2ボランチセレクションは熊本からのご紹介です。

この選手を語るにはまずロアッソ熊本が今年やっていることを紹介した方がいいんですが、まずはフォーメーション表記が3-3-1-3です。もっと言うと、実際プレーしている選手たちは5-1-1-3みたいな感覚ではないかと思います。この5-1-1-3の運用についてだけで結構なボリュームの記事になるネタ(話題)だと思うんですが、ざっくり言うとトータルフットボール的なとんがった思想を感じさせる5-2-3の亜種と言えばざっくりとしたイメージがつかめるかもしれません(?)。この5-1-1-3のアンカー(?)を務めているのが24歳にしてチームのキャプテン、今季のJ2リーグのMFでは唯一ここまでフルタイム出場の河原創です。

試合を観るとわかるんですが、熊本は表記上そうなっているというわけでなく、思ったよりも5-1-1-3でサッカーをしてます(マジで一回観て欲しい)。そうすると何が起こるかと言うと、まあアンカーの河原の周囲が空いてきます。もちろん最終ラインからの迎撃であったりトップ下やWGの選手が中盤に戻っての守備参加もあるわけですが、瞬間的にバイタルエリアというか中盤の大事そうなスペースほぼ全てが河原のワンオペになるシーンが当然出てきます。これをカバーするのが彼の仕事なんですが、まずこの理不尽な状況と仕事量に対して文句も言わずに(いや言ってるかもしれないけれど)毎試合フル出場しているのが凄い。そして、瞬間的ワンオペ状態でもなんとかしている彼のポジショニングと寄せの早さ、思い切りが凄い。しかもどっしり構えるタイプではなく割と動き回るタイプで、動きの連続性も高い。身体がめちゃくちゃ強いというわけではないので寄せたところで奪えないというシーンもあるのですが、それでも立派な仕事量です。で、彼の最も価値があるところは、こうした守備面での良さに加えてビルドアップや攻撃のシーンにもしっかり関わっていける総合力ではないかと思います。ビルドアップのスタートポジションは基本的には相手2トップの背後で、ボールを受けてからのターンもスムーズ。近くの選手に預けてリターンをもらってという細かいパス交換も冷静に対応できますし、機を見ればポジションを捨てて(いいのか?)前線に絡んだり、WGの背後を走ってサポートからクロスというプレーもあります。さらには今季直接FKも決めているというまさに何でも屋。とりあえず置いとけばいろんなことをやってくれるので、厳しい日程でもフルタイム出場させてしまう熊本ベンチの気持ちはよくわかります。

惜しむらくは身長が低いことで、浦和でいう柴戸や敦樹のようなダイナミズムとフィジカルを兼ね備えるスケールの大きさはありません。逆に言うと一定程度の技術があってしっかり動けるうえでの体格の良さは若くしてJ1で期待されるかどうかの重要なポイントなんでしょうね。とはいえ中盤の人事・経理・財務・総務・広報・企画課長的な使い勝手はJ2どころか日本でも有数のレベルではないかと思いますので、いわゆる主任系ボランチの次世代としてJ1中下位チームからのスカウトメールでビズリーチの通知が凄いことになっていそう。なお、顔は新卒2年目なのに名刺にマネージャーって書いてある中堅不動産会社の営業っぽい感じで、なんとなくガンバにいそうな感じがします。この選手はこの夏にステップアップしてもおかしくないと思います。

 

神戸康輔: 栃木SC・MF・2000年3月生(22歳)170cm/63kg・右利き

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「かんべ」と読みます。あだ名はべーちゃん。神戸(こうべ)出身で大阪桐蔭から立正大学を経てプロ入りしたルーキーです。今季の栃木は植田啓太(fromマリノス)や谷内田哲平(from京都)など中盤前目にヤングでテクニカルなタレントをレンタル補強しており、例年ほど耐えて蹴ってに全振りしていない感じなのですが、そうした傾向にマッチしているんじゃないかなーと感じさせるのがCHとして出場機会を掴みつつあるこの選手です。170cmと身長は低いものの、運動量と正確な繋ぎが強みで、セカンドボールを拾って動き回りながら少ないタッチ数で縦に斜めにパシパシパシパシパスを繋いでいく選手という印象。レジスタというほど盤面をコーディネートしている感じはしないのですが、リンクマンと呼ぶにはふさわしいのではないかと思います。前に後ろに顔を出しながらじわじわと流れを引き寄せていくプレーが面白いです。ポジション的には2枚のCHの片割れとしてだけでなく、5-1-2-2のアンカーとして出場した試合もあり、危なっかしい感じはあるのですが割と成立させているのでチーム内でも結構やれるのでは?と思われ始めている最中ではないかと思います。

というのも彼、まだリーグ戦では8試合しか出場がなく、5月にやっとデビューしたところから徐々にプレータイムが増えている状況。面白い選手なので期待していますが、最初からJ1でデビューできたのにわざわざ自分が育った栃木でキャリアをスタートさせた明本のように大卒1年目のオフにステップアップというのはないかなという感じ。現在はJ2で確固としたキャリアを持っている佐藤祥と交代しつつ起用されているので、しばらくは学びの時間かもしれません。

弱点はやはり身体面で、セカンドボール回収部隊としては有能ですが彼自身がハイボール勝負を担当するのは厳しいところ。かといって0.5列前のIHで使うには個人として局面でどれだけできるかという課題がありそうで、このままだとステップアップするには若干使いにくいか。この感じでプレー出来ていれば試合の経験値はたまっていくと思うので、リンクマン+何かを表現してくれる選手になればJ1が見えてきそうな予感です。

 

名倉巧 : ベガルタ仙台・MF・1998年6月生(24歳)168cm/61kg・右利き

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あれ?長崎にいなかったっけ?と思ったらレンタル移籍したんですね。仙台って氣田も長崎からですよね。あ、そういうこと?という話は置いておいて、名倉はFC東京U-15深川から国学院久我山、卒業後にFC琉球でプロデビューした選手で、深川では小泉佳穂の二つ、安部柊斗の一つ下。そこまで尖った選手ではないですが、右利きながら逆足のキックもうまいので、なんとなく佳穂と系統が近いかもしれません。

基本的に、名倉はスペース認知と周囲の選手を動かし使うことに長けた希少価値の高い選手ではないかと思います。仙台では基本的に右SHで出場しているんだと思いますが、やっていることは右IHですね。基本的に右のハーフスペースを出入りしつつ、ビルドアップの状況に合わせて降りたり裏に抜けたりしているので、チームとしての約束もそうですが、本人も「そういう」意識でプレーしているのだと思います。アタッカーという感じではないですが後ろでプレーする右SBが大外でボールを持てば間髪入れずに相手のSB裏へ走りこみチャンスメイクをするなど相手の急所を突く意識が高く、またそれを可能にする走力やアジリティも備えているように見えます。ボールの位置と展開に合わせてアクションを取ることに長けた、プレービジョンの部分に強みのある選手という印象です。中盤に降りて相手のブロックの隙間でボールを待っている様がなんとなくありし日の香川真司に見えたり、見えなかったり。逆脚精度も非常に高く、玄人好みな選手かも。

ボール保持に関わる局面での魅力が大きい選手ですが、この先キャリアを作っていくにあたっては対面の相手を独力で剥がせるかどうかだとか、攻守のトランジションでかなり働けるだとか、もう一味欲しいかもしれません。身体能力は高そうなプレーをしていますが、体格的な優位性はないので、やっぱりチーム戦術やゲームの展開の中で二つ以上の役割をこなしてくれる選手になると重宝されていくのかなと。もしくは、これは小泉佳穂に僕がよく言うことですが、チーム全体のメンタリティにポジティブな影響を与えるようなプレーをしてムードを持ってくるとか、得点に絡んで直接的にゲームに勝たせてくれる主人公的な仕事が出来るかどうかであるとか。上手いし賢い選手なんだろうなあとは思うし、その魅力もよくわかるんですが、J1でバリバリやるにはプレスを仕掛けて奪いに行って一発で躱されるとかあっさりファールしちゃうとか、プレーになんとなく漂う淡泊な感じを払拭して欲しいところです。

仙台がJ1に復帰できればクラブとともにJ1挑戦というのが最も良いシナリオなんでしょうけど、もう一工夫でJ1の上位チームでプレーしていそうな画が見えてきそうな選手です。ここまで書いて思いましたけど、「古巣」のFC東京が狙う可能性も高そうですね。

 

★三戸舜介: アルビレックス新潟・FW/MF・2002年9月生(19歳)164cm/60kg・右利き

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今季5月の月間MVP(J2)、先日のU-23アジアカップに出場したU-21日本代表にも選出されており、ルーキーシーズンだった昨年から印象的なプレーを見せていたので今更感はありますが、どうにかして赤いユニフォームを着せたい日本人アタッカーの一人です。

FootballLABのプレー偏差値でドリブルチャンスが20と上限値をたたき出している通り、一級品のクイックネスで突破を図るプレーが魅力的ですが、個人的には彼の最大の違いはキックの能力で、振りが小さく速いことに加えてインパクトの上手さが異常で、パワーシュートは日本人というよりヨーロッパか南米の選手ですか?という破壊力と精度。しかも右脚も左脚も関係ないというロマン、最高です。さらに、こういうえげつないキックを持っている選手というのは得てしてそのキックを繰り出すだけのスペースを自分で作り出すのが上手くないという傾向があるかなと思うのですが、この選手は周りが作ってくれたオープンを活かすだけでなく、ドリブルで相手を外して自力で脚を振れるのがスペシャルではないかと思います。

なお、もともとは左サイドでプレーしていた選手だと思いますが、今季は右サイドでのプレーがほとんど。とはいえ流れの中でトップ下の位置に入ってプレーしますし、狭いスペースでのコンビネーションも対応可能。なによりどの位置でプレーしていても変なクセや制限を感じないというか、得意な型への固執を感じさせないくらいいろんな状況に自然と対応しているのが凄みかなと思います。

U-15からすべての年代の日本代表に継続して選出されている逸材であり、ポテンシャルを発揮できるよう身体づくりを待ちましょうというレベルでもないので、このまま試合経験をしっかりと詰めればいつかは海外に出て行くべき選手だとは思いますが、その前に浦和で同世代の彩艶や工藤とともにアジアを制してみるのはどうでしょうか。最高だよ、アジアの戦い。

 

★高橋利樹: ロアッソ熊本・FW・1998年1月生(24歳)182cm/76kg・右利き

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FWの選手は誰を選ぼうかかなり迷って、ヴェルディの佐藤凌我とかジェフの櫻川ソロモンとかそれこそ小川航基とか、いろいろと候補はいたんですが、ここはやっぱり僕らしいチョイスをしようということでロアッソから二人目のご紹介です。

さいたま市出身で埼玉栄から国士館大学に進学ということで、われらが明本考浩と大学の同期であり平野の後輩ですね。何かと浦和に縁がありそうなキャリアがすでに良い感じです。プレースタイルは長身ながら走り回ってプレスをかけられるリカルド好みのハードワーカーで、ポストプレーもしっかりこなしてくれます。熊本に縁がある長身ハードワーカーと言えば巻誠一郎さんですが、彼なら正統派巻二世としてオシムさんも認めてくれるかもしれません。

前述の通り熊本のサッカーはかなり尖っているのですが、高橋自体はそこまで不思議な役割を担っているわけではありません。とはいえ仕事量は非常に多く、ブロックを組む時は基本的に前残りしてクリアボールを死ぬ気で収め、プレスを仕掛ける局面では先頭として走り回り、必要であればプレスバックもガンガンこなしてくれます。加えて熊本は構造上サイドからの前進が多いので、上がってくるクロスのほぼ唯一のターゲットである必要がありますし、ボール保持時はポジションチェンジが非常に多いので状況に応じて中盤に降りてプレーする場合もあります。それだけの仕事をしながら現時点でJ2で5位の7得点というのは立派な数字ではないでしょうか。僕の印象では長身プレーヤーって意外とヘディングが上手くないというか、身体的な特徴をめいいっぱい活かす動き出しやポジショニングが上手くない印象なんですが、彼の場合は期待通りゴール前でポジショニングの駆け引きをしつつ頭でねじ込むようなゴールを決めているのも良いところですね。あと、ゴール後の喜び方がストレートに熱いのが良いです。

これで身長があと5cmあればいきなりJ1でプレーしていたかもしれませんが、J3からのたたき上げで成果を出してきた彼のキャリアそのものが魅力になるかもしれません。182cmの身長はJ1では破壊的な武器にはならないでしょうし、J1ではさすがに決定力やオンザボールの技術で課題が出てくるでしょうが、ゲームに関わるトータルの仕事量多さは他のストライカーにはない特徴なので、得点数だけを伸ばしている選手とは一味違った需要が見込めそう。特に近年の浦和の場合はリカルドの好みや要求として仕事量を求める傾向にあると思うので、こういったユニークな選手はさっさと確保しておきたいところです。リンセンやユンカー、シャルクがいる中で彼にとって今年の夏や冬が最適なタイミングなのか、そもそも浦和が魅力的な移籍先なのかという話はありますが、他のJ1クラブの色がついたり、変な長期契約で移籍に支障が出ないうちに呼び込みたいなあと思います。西野さん、どうっすか。

 

ということで、今季の気になるリストは上記10選手をリストアップしてみました。夏、そしてリーグ後半戦を踏まえた冬の移籍市場で彼らのキャリアがどうなっていくのか、ひっそりと見守りたいと思います。へんなジンクスがつくのは嫌なので、各選手におかれましてはお願いですから怪我だけはしないで頂きたいです。それでは。