96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

残りの試合で疑念を晴らせ:YBCルヴァンカップ2022準決勝 2nd leg vsセレッソ大阪 分析的感想

書くたびにお久しぶりと挨拶している気がするので、もう言いたくないのですが、久しぶりに試合の感想を書いていきます。この試合は浦和にとっては本当にショックな結果となってしまったのですが、「この試合で何が出来なかったか」を残しておくことは、もし浦和レッズがこの方向性で進み続けるなら超えるべきハードルとして将来にも役立つと思うからです。

というわけで、ざっくりした内容になるかもしれませんが見ていきましょう。

 

両チームのメンバーと嚙み合わせ

浦和ベンチ:牲川、知念、宮本、馬渡、柴戸、江坂、ユンカー

セレッソベンチ:清水、船木、清武、中原、ブルーノメンデス、パトリッキ、北野

 

試合前の予想は浦和4-2-3-1に対してセレッソ4-4-2。これが今シーズン4度目の対戦ですが、前回対戦で不在だったキムジンヒョンが戻ってきたくらいでお互いのスタメンにほぼ違和感はなしでした。もちろん関根が右SBでスタメンだったことは浦和にとってはイレギュラーと呼ぶべきものかもしれませんが、リーグでの対戦で宮本のパフォーマンスが良くなかったので、馬渡のコンディションなんかを考えるとこういう起用になるんでしょうね。個人的には、現時点での完成度は別として関根が右SBでプレーできるようになることは彼にとって重要だと勝手に考えているので嫌な印象はないのですが、まあこの話は別の機会に。

で、試合後の記事でわかったことですが、実際にはセレッソはこの試合に4-4-2では臨んでいませんでした。もちろん非保持時は4-4-2をベースにプレスをかけていたのですが、チームとしてもボール保持時は4-3-3で整理していたとのことです。

「今回は完全に4-3-3で整理してやろうと入った試合でした。おっくん(奥埜博亮)との距離も近いし、(松田)陸くんと3人でローテーションしながらいい距離感でプレーできて、1点目もおっくんとの距離が近かったからスペースに相手が食いついたと思います」

soccermagazine.jp

現地で見ていて、僕が気になったのはまさしく奥埜の立ち位置でした。試合の立ち上がりからセレッソのボール保持の際に明らかにサイドの崩しに関わる選手が一人多いように感じたのですが、それが奥埜のIH化だったわけです。

浦和はおそらくセレッソの4-3-3基準でのボール保持に対して準備をしていなくて、もしかしたら予測すらほとんど出来ていなかったかもしれません。ピッチ上では4-4-2ベースで奥埜の対面となる岩尾が当然ながらいち早くこれに気づき、影響を受けていました。2枚のボランチの片割れとしてプレーするときよりも明らかに高い位置に立つ奥埜のマークに岩尾が引っ張られており、これによって浦和は中盤の真ん中のケアを敦樹一枚でしているような状態で守っていました。もっとも岩尾が奥埜のケアをしていることで目に見えるディフェンスの決壊が起きたわけではなく、手薄になった中央をぶっちぎられるということはありませんでしたが。結果的にIHとしてプレーした奥埜はこの試合で先制点の崩しに関り、アウェーゴール数で有利に立つことで浦和にこの試合での3得点を要求することになる追加点を自ら奪うことで試合を早々と決定づけてしまいました。とはいえ、浦和がこの試合で全く主導権を握れないままに2失点を喫した理由は奥埜の立ち位置そのものというよりも、セレッソの4-3-3の機能性が全体として素晴らしかったということになると思います。この機能性については少し後に回しましょう。

浦和ベンチとしてはセレッソが4-3-3で試合に入ることに対して確信的な準備をすることは難しいとしても、こういう可能性に備えて守り方やゲームプランを準備しておくことは必要だったかなという気がします。このシステムに素早く対応してゲームを落ち着かせることができなかった、そうして試合時間が経過するごとにこのシステムが刺さる自信と勢いを増していくセレッソをコントロールすることができず、1失点はまだしも2失点目を早いうちに取られてしまったことが浦和にとっての根本的な敗因と言えるのではないかと思います。

セレッソ4-4-2⇒4-3-3の機能性

この4-4-2ベースの4-3-3化は浦和が連戦連勝で非常に調子が良かった8月に基本として使っていたシステムで、浦和では敦樹が前に出て下がり目のトップ下(この試合ではセレッソ上門、浦和では主に佳穂)とIHの役割を担うわけですが、選手の特性がハマっていれば大きなポジションの移動もないので比較的採用しやすい可変システムだと思います。中盤でビルドアップに関わったりターンができる上に守備時に2トップとしてプレッシングをこなしてくれるトップ下と、ブロックを形成した際に中央で守備を担いつつゴール前に進出する推進力と攻撃センス・技術があるボランチがいればいいわけなので、導入コストが比較的リーズナブルで、そのうちどのチームも基本動作としてこのシステムを持っているのが当たり前ということになるかもしれません。逆に4-3-3ベースのチームがボール非保持時だけ4-4-2でブロックを形成するというのもそこまで珍しくないですし。何が言いたいかというと、これくらいの変化には素早く対応できないといけなかったね、という恨み節になってしまうのでこれくらいにしておきます。

余談ですが、似たことをやっているとは言えセレッソのスカッドでは両SBにチーム内でも経験豊富で戦術的な武器となれる選手がいるのに対して、この試合の浦和には酒井も大畑もおらず、彼らがいないとSBの質で攻守の違いを作れていないというのは大きな違いとして認識しなければいけません。川崎を見てもマリノスをみても、破壊力のある攻撃を繰り出せるチームはSBがもたらす+1が攻撃の質を大きく上乗せしているというのは事実だと思いますので、浦和レッズのチーム作りにおいてもSBの攻撃面の質というのは大きなテーマだと思いますが、この点についても今回の本筋とは違うのでまたいつか。

具体的にセレッソの4-4-2⇒4-3-3システムになぜここまでやられてしまったかを見ていきます。前述の通り、結果に繋がったのは奥埜の立ち位置とプレーでしたが、全体の構造として、そして全体を構成する部分の要素ひとつひとつをして、浦和はセレッソの4-4-2⇒4-3-3の機能性に全く対応できず、上回られてしまいました。

まず重要なのはここ数試合対戦するたびにほぼ完ぺきなプレーをみせている鈴木徳真のアンカーワークの質と、戻ってきたキムジンヒョンを加えたセレッソのビルドアップ隊への規制がほとんどできなかったことになると思います。試合後のコメントで佳穂が言っていた通り、ここで規制が全くかからなかったことが浦和の勝ち筋を霞ませてしまいました。やっぱり調子が良かったときの浦和は松尾と佳穂のプレッシングで相手のビルドアップに制限をかけて、残りの8人が予測を持って前向きに圧をかけることでペースを掴んでいくのがパターンでしたし、リカルドもそれが生命線と感じていたからこそ7月~8月にかけてスタメンを固定気味にして起用していたと思います。実際に走っていた松尾や佳穂からすると、長い距離を追い回してもキムジンヒョンのところでぽーんと簡単に逃げられる上に正確に配球されてセレッソの前進が始まる=自分はブロックまで早く戻るためにまた走らないといけないという状況にされてしまうと、さすがに精神的にきつかったでしょうね。

さらに浦和にダメージを与えたのが、セレッソから見て守備から攻撃に切り替わった瞬間に裏へのフルスプリント・アクションを繰り返していた加藤陸次樹や為田の仕事ぶりでしょう。このアクションに浦和の最終ラインが引っ張られてしまい、大きくラインを下げさせられてしまいました。試合序盤に多くみられたように、浦和からみて攻撃から守備に移るネガティブトランジションでのボール奪還プレッシングは現在の浦和の基本的な戦術で、ゲームの流れを引き寄せる大事な要素です。ただ相手の強度の高い裏へのアクションで浦和の最終ラインが引っ張られると、ボールに寄せて一気に奪いたい中盤から前との距離が開いてしまいます。また、カウンタープレッシングが発動しない場面でも、こうして下げられた最終ラインは浦和の2トップとの距離を空けてしまい、浦和の2トップがセレッソのビルドアップ隊を捕まえるためにかなり長い距離を追い回して頑張っても、後ろの8人が遠すぎてどうにもならないという以下同文。

こうして後ろと前の距離感が大きく開いたことで、IH化するセレッソの上門と奥埜のプレーエリアが広がり、そこに入れ替わりに落ちてくる加藤や為田といった選手のプレー効果も増していきます。セカンドボールを浦和側に拾われたとしてもバランスが整っているのはセレッソのほうなのでゲームの主導権争いで基本的な優位が取れますし、浦和の2トップがプレスに出て、さらに最終ラインと中盤の4-4が下げられたことで生まれたスペースでアンカー役の鈴木徳真がフリーでプレーできる優位性も生まれます。1失点目は奥埜を使ったワンツーと見せかけて鈴木徳真が関わって裏へのパスを出すことでサイドを攻略し、2失点目は一度詰まらせたサイド攻撃をこの状態で悠々とプレーする鈴木徳真にやり直されてしまったことでクロスまで持っていかれてしまいました。

ちなみに1失点目も浦和の2トップが鈴木徳真をマークできずフリーでプレーされてしまった。
浦和は何ができたなかったのか、またはすべきだったのか

で、噛み合わせや構造上かなり不利な試合をさせられたというのはわかったので、浦和はどうすればよかったんだい!という部分ですが、身もふたもないことを言えばこのセレッソの構造に付き合わないという選択肢がまず考えられると思います。どうせ規制できないなら無駄に相手を追いかける必要はないわけですし、よく考えると試合が始まる前はアウェーゴール差で浦和が有利なのですから、点を取らないといけないのはセレッソの方です。だったらセレッソが突っ込んでくるのを待てばいいじゃないと。で、プレスに行く必要がないなら別の選手が使えるじゃないと。それはもちろん江坂とキャスパーのセットなわけですが、後半の苦し紛れとも言える4-3-1-2システムを無理やり機能させていた彼らの個人の能力というのはやっぱりセレッソにとっても警戒対象だったと思います。変なことを言えば、浦和が松尾・佳穂のメンバーで試合に入った時点でセレッソの小菊監督は賭けに勝っていたというか、4-4-2⇒4-3-3可変を採用すると決めた時点でセレッソは最終ラインの前のスペースが一時的にでも鈴木徳真一人になるリスクを負っていたわけで、ここでボールを受けた江坂がひらりと前を向いたらどんな試合になったかなと考えてしまうわけです。

でもわかりますよ、リカルドはそういうゲームはしないんでしょ。もしかすると、ここ2シーズン小菊さんに散々上手を取られて苦杯を舐めさせられていたし、それ以前に小菊さんのサッカー観というか彼がつくるチームへの親近感・リスペクトもあっただろうし、正面から倒したかったんでしょ。もしくは、こんな形で圧を掛けてくるとは思ってなかったんでしょ。それでいいかは別として、現場責任者の監督が戦い方を決める特権を持ってますから、こういうことはリカルドの裁量と責任で決めてもらうしかありません。

ではもうちょっと現実に即して、キックオフの後に何ができたかを考えてみましょう。まずは相手の4-4-2⇒4-3-3可変に気づきます。そこからですよね。先制点が入るまでの23分間、そして致命的な2失点目までのその後7分間。このどこかで浦和側の戦術的なアクションが必要でした。ひとつあるとすれば早い段階で佳穂を落とし4-5-1でセレッソを迎え撃つ形に変えることでしょうか。これはおそらくここまでのリカルド・レッズでは一度も採用していない方法なので現実味があるかと言われれば微妙ですが、少なくとも相手の4-3-3可変に対して中盤の枚数を揃えて対処するということで、先手を取りに行って後手を踏むみたいな状況にはマシな形で対応できたかもしれません。もしくはなんとかして5バックにしてしまうことですかね。大久保を左WBに、佳穂を中盤に落として松尾と松崎の2トップで5-3-2ブロックを作るとか。

どれもこれも守備的なやり方なので、もうちょっと違う目線で違うやり方を考えるなら、左SB役の人選変更はあり得るかもしれません。これは浦和のビルドアップの局面で頻発していたポイントの改善が目的です。浦和が最終ラインでボールを保持している場面ではセレッソは前4枚が一気に距離を詰めてきます。浦和のボール保持の仕組みは岩尾がアンカー気味になる形がメインで佳穂と敦樹がそれぞれ左右のヘルプに入りますが、高いラインを維持するコンパクトなセレッソは中盤のスペースも消しています。ということは裏を狙いたいわけですが、最終ラインには当然時間がありません。従ってできればボールを逃がした先のSBから縦にボールを動かしたいのですが、左利きの明本にボールを預けても、ゴール方向から来たボールを左足で前に蹴るには山中並みのアウトサイドキックで蹴っ飛ばすしかないので難しいです。実際明本はうまくトラップして身体を入れたりタッチライン側にターンしたり相手にぶつけてスローインにしたりと頑張っていましたが、前にボールを出せたのは1回あるかないかではないかと思います。この裏で、実は明本がボールを受けた瞬間、一列前の大久保や松尾はずっと、前に出るセレッソの右SB松田の裏へのアクションをしていました。特に多かったのは大久保が降り気味に松田を引っ張って松尾が抜けるパターンだったと思いますが、タイミング的にここには明本からダイレクトでボールを出さないと間に合いません。ミシャの時代に槙野がウガを走らせていたアレです。アレじゃないと無理なんですが、残念ながら一回も出ませんでした。もしアレが出せていれば、その成功確率はともあれ、松尾がサイドに抜けて相手のプレスから脱出できるばかりか、構造上セレッソの守備の要であるヨニッチをサイドに引っ張れますので、その後のクロスや崩しにも多少期待ができたかも。浦和がセレッソ戦で苦労する要素の一つとして、ヨニッチを外せない、超えられないというのは結構大きいと思いますので、槙野のアレを使いたかったですね。

具体的にどうするかと言うと、例えば敦樹か岩尾を左SBの位置に落として、その分は佳穂をボランチに落として大久保を内側に入れるとかで対処できそうですね。ちょっとポジション移動する選手が多いので試合中に実践するには準備が必要そうですが、とにかく受ける側の松尾や大久保は狙いを持ってアクションできていたので、ボールを供給する側の仕組みに工夫ができればなあと思って試合を見ていました。

2失点後についてはあまり語る必要はないと思います。あの2点目が決まってしまって有利だったはずの対戦で3点が必要になってしまった時点で浦和としてはゲームが絶望的に難しくなり、正直万事休してました。とはいえ後半の4-3-1-2システムはカウンター対策を無視すれば何かが起きそうなロマンがあったし、後半から出場してチーム最多のシュートを撃ち、右SBに移れば大外ランから惜しいクロスを供給した馬渡のパフォーマンスは素晴らしかったです。ただPSG戦以来ずっと出場するたびに球際の攻防で膝から崩れるように倒れているので、足腰の筋肉や身体のコーディネーションがトップパフォーマンスから程遠いのだろうなあということも容易に想像できました。あと、どんなに失点しても声で鼓舞し続けたゴール裏の皆さんは素晴らしかったです。最後の方は「俺たちはやりきったぞ、お前らはどうなんだ」って言うための意地かもなって感じもしましたが、それもまた浦和らしいし。

まとめると、浦和はゲームに臨む時点で状況を活かした作戦を立てることができませんでした。つまり、戦術パッケージを選ぶ時点でリスクが高いかそもそもハマらない間違ったチョイスをしてしまいました。これは結果論としても、それを把握した時点でやり方を変えるという部分で不足があり、連続失点で早々にゲームを壊してしまいました。これまでのリカルド・レッズを観ていても、作戦が上手くハマらない時に一度相手に合わせてでも相手の勢いを受け止めてゲームのコントロールを取り戻し、そこから次の手を考えるというような戦い方が正直あまり得意とは思えません。この点は今後も闘うことになるのであろうセレッソとの対戦はもちろん、「リーグで勝ち続ける」ことを考えた時に必ず対峙することになる準備した作戦がハマらないことはあるはずなので、なるべく早くチームとして身につけたい要素かなと思います。加えて、ボールを繋いで相手陣地に前進していくという部分でも、ボトルネックをなるべく早く解消する戦術的対応策(例えば左SBに右足で裏に蹴れるような選手を配置するための可変)をより多く備えておくことも必要だと思います。それと、試合後の岩尾のコメントでは、「セレッソのプレスのスピードに対して浦和のポジション取りのスピードが遅れた、また個で剥がす部分が出なかった」という趣旨のコメントがありましたが、これを突き詰めると、かの風間八宏教祖のトメルケルを突き詰めるというところに繋がってくると思います。

「ピッチの中で打開策は探していましたが、相手のプレスが整理されているところも含めて、なかなか穴を見つけられませんでした。相手を見てポジションを取るスピードよりも、相手のプレスのスピードのほうが速かった。自分たちがポジションを取ることに時間をかけてしまって、それ故にハマってしまったわけです」

【浦和】岩尾憲は「これが現実」とハードな自戒。必要なのは「統一性」「時間がない中で個でズレを生む作業」(サッカーマガジンWeb) - Yahoo!ニュース

奇しくも教祖はこの試合の解説をしていたわけですが、浦和に対してしっかり「ボールが止まっていない」と指摘されていました。こういうサッカーをやる以上、彼が指摘するような個人技術・個人戦術の向上もこれまで以上のペースと徹底を以て突き詰めていかないといけないんでしょうね。この部分は確かに改善の余地があると思います。

残りのシーズンをどう過ごすのか、それに意味はあるのか

最後に軽く、今シーズンの残りの話を。この試合の敗戦は浦和レッズにとって非常にショッキングなものとなりました。それは単にルヴァンカップの決勝進出、タイトルの可能性を逃したと言うことだけではなくて、既にこの「3年間」の大目標である2022シーズンのリーグ優勝がなくなっている現実を見た時に、「ここまでやってきた道の先に優勝があるのか?リカルドにこの先も任せるべきなのか?」という疑念を具体的に抱かせてしまう内容の敗北であったという意味で、です。やはり掲げた目標が達成できなかったという現実がある中で、「ある程度はできた、できるようになった」というだけでは説得力はありませんし、この試合でできなかったことのほとんどは、リカルド・レッズの強みだと思われていたことなのです。強みだと思っていた部分が明確に通用しなくて、それでいいのかよとなるわけです。

「3年計画」そのものへの賛否や納得感は人それぞれなので、サポーターの総意というものはないのかもしれませんが、とはいえクラブが主体的に「浦和のサッカー」を定義しようとし、様々な理論やアプローチを用いて持続的に、体系的に強くなろうとしているこの取り組みには一定の意味があるはずで、そうであればこの流れを守るために、クラブは、そして個人事業主としてのリカルドはここまで取り組んできたサッカーとこの道の先にある浦和レッズに未来と可能性があるということを最低限示さなければなりません。そういう意味で、似たような志向を持ち、現在の監督就任からの経過時間もほぼ同じチームに手も足も出ず、シーズン4回戦って一回も勝てず、ベンチワークもピッチ上の質も足りないまま負けてしまったこのゲームのショックが大きいわけです。

大袈裟に言えば、このままでは「似たような時期から似たようなことを始めたチームに強みと思っていた部分で明確に勝てていなくて、このペースでやってたら何年かかるの?このペースではダメなのでやり方を変えるべきなんじゃないの?」という意見を抑え込めません。もちろん小菊監督のセレッソはロティーナ時代のエッセンスを多分に引き継いでいるので実質は同じ取り組み期間ではないとか、浦和は主力をうまく戦力化できない事情があったとか、いろいろと議論になりそうな要素はありますが、それはリーグ優勝を目指すならどのシーズン、どの時期でも飲み込んで勝たなければいけないもの。そういう意味で、今季の浦和はこういうチームには、こういうチームにだけは勝たなければいけませんでした。少なくともこうした大敗はすべきではありませんでした。取り組みのスタートで明らかに遅れをとっているクラブや方向性・カラーが全く違うクラブにはともかく、似たことを同じくらいやってきた競争相手に負けると、これでいいのかという疑念はどうしても生じてしまいます。

なので今シーズンの残りの試合は、リカルド・レッズが間違っていないこと、この先に可能性があること、今季は、このセレッソ戦では難しかったとしてもチームが強くなるペースは十分に早いこと、要約すれば、「このチームがちゃんと闘えること」を示す戦いにしなければいけないと個人的には思います。違う言い方をすれば、一つでも高い順位とか勝ち点がいくつとか、そういう数字での比較ももちろんですが、定性的に「このチームは、リカルドのサッカーはちゃんと闘えるし強くなっているので大丈夫です」というメッセージを内外に発せられるかどうかが大事なのではないでしょうか。そのために必要なのは、対戦相手への準備だとか、作戦が外れた時の修正だとか、状況に対応するための戦術の引き出しとか個人の技術とか、このエントリでここまで見てきたような要素を残りの試合で強みとして見せていくということでしょうし、今季ここまで目立てていないながらも可能性のある選手を見出して使っていくということでもあるかもしれません。

そんなわけで僕としては、今シーズンの残り5試合は消化試合になったとは言え浦和レッズのこの先数年にとって非常に重要というか、いくつかの未来への枝分かれになるような5試合になるのではないかと思います。そのどれが良い未来で悪い未来なのか、どうなれば一番良いのかはもちろんわかりませんが、この道を進みたいのなら、ここから5試合の内容と結果は決定的に重要になるのではないかと考えてしまうのです。そして残りの対戦相手である広島、鳥栖、札幌、マリノス、福岡はどのチームも御しがたく、そうしたテストをするのに十分すぎるほどの対戦相手だと思います。

 

というわけで今回のチラ裏はこのへんで。またそのうち。