96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

すこ観戦会報告書(あるいはスコルジャ監督によるチーム作りの展望について)

 

夜な夜な開催していた『すこ観戦会』、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。本当はもう少し多く試合を観る予定だったのですが、仕事の都合で時間を捻出できず。ただ楽しかったので満足です。せっかくなのでメモ書きを残しておきたいと思っていたので、ここで供養します。それにしても過去の試合のアーカイブを完璧な形でYoutubeに置いているエクストラクラサ、最高でした。あとおすすめの試合を教えてくれたレフサポの人、ありがとう。

 




 

第33節Warta Poznan vs Lech Poznan

第1回第2回

試合展開(レフ目線)

前半 PKで失点

前半 トランジションからアマラウのスーパーショットで同点

前半AT コーナー崩れからエリア外のシュートをイシャクがコース変えて逆転

 

雑感

  • プレスプレスプレスの序盤。裏返されると当然空く。
  • SHがポジションを変える。前半だけで2回。
  • SHが内側に絞ってプレーする、流動的というか全員真ん中でプレー。
  • 裏抜けの意識が高い。狙う場所はチャンネルで明確。
  • 5番の左SBは最終ラインに残って3枚回し風味でプレーしている。右SBは大外担当っぽくて上下動がメイン?
  • 低い位置でビルドアップする時はSHが開く、ボールが前進すると内側に入って前の2枚とプレーエリアを近づける。その分SBが開く。
  • ネガトラ要員はボランチ1枚、SB、CB2枚の4人?
  • プレスはSHを前に出す。相手が3バックだからかも。ただし逆サイドのSHは大きく絞ってボランチの横。これによりSH-SB間のスペースを横に出て埋めるボランチが空けた場所をケアする。
  • トップ下のアマラウがボランチの位置まで降りて一緒にスペースを埋めているのが興味深い。ボランチは飛び出して狩る前提、それを別の人が埋めるルールか?
  • 442のセットになる時は最前線が真ん中を切って横断阻止。これはかなり徹底されたルールで重要。イシャクもアマラウもちゃんとやる。
  • 交代で入った右SHは左利き。トップ下に入った10番も左利き。
  • 10番が入るとアマラウのやっていたボランチを助けるポジショニングをイシャクがやるように。イシャクはマイボール時トップ、相手ボール時トップ下みたいに見えた。ボランチを助ける役割は気が利く人に任せる?ただ人が変わっても役割を引き継いでいるように見えたから、チームの約束事ではありそう。
  • プレス意識は前半ほどではないが、後半も低くはならない。
  • 全体的に蹴っ飛ばすシーンが多いが、おそらくポーランドのサッカーがこうなだけで、浦和でも同じように蹴りまくるとは思えない。
  • 交代はおそらく3枚。5枚使い切らないということはメンバー固定気味?
  • シュートがかなり多い、ちょっと空いたら撃つ。

まずは完成形をみてみようということで優勝を実質的に決めた第33節をチョイス。正直これが完成形だったのかと言う部分には自信がないのですが、特徴をつかむには良い試合でした。優勝を決める可能性があるということでモチベーションは抜群。若干不運な失点もなんのその。ボール保持でも非保持でも前へ前へ、ゴールへゴールへプレーすることであっさりと同点に、そして前半終了間際に逆転。

特に印象的だったのはとにかくシュートを撃ちまくる一貫したチームの姿勢と、プレッシングの設計。とにかく、雑なのか緻密なのかわからないのが印象的。シュートを撃ちまくる=ボールを失う可能性を高めているということだし、正直シュートセレクションが良いとは感じませんでした。思い切りが良いというよりは無謀というべきシュートが多いくらいだったのですが、一方でプレッシングの設計はリスクを掛けた分のヘッジがちゃんとある。特にSHがプレスに出た際の背後のカバーリングをボランチがサイドに出張ることで行い、その分の中央のカバーリングを逆SHかトップ下の選手にやらせているのは面白かったです。特にアマラウは中央のスペース管理がとてもしっかりしていて大変好印象。アマラウ交代後は人が変わってどうなるかと思ったらエースのイシャクがその役割を引き継いでいたのも良い意味の驚きでした。となると必然的に、イシャク、アマラウ以外も同じようにやってくれるのか?(つまりチームの約束事なのか?)が確認したくなります。今後の要確認事項となりました。

ちなみにポズナン・ダービーだったのですが相手チームは下位に沈んでおり、スタジアムの大きさや雰囲気を見てもちょっと格差のある試合だったので、次は上位対決を観ることに。

 

第32節 Piast Gliwice vs Lech Poznan

第3回第4回

試合展開(レフ目線)

前半15分 ネガトラ→アーリークロスからわざありヘッドで先制。

後半1分 ロングボールにボランチ22が競り合ったがうまく落とされサイド展開→グラウンダーの折り返しを左足で綺麗に合わされて失点

後半42分 コーナーからCBが折り返しイシャクが頭で合わせて勝ち越し。

 

雑感

  • 相手は最終順位5位で期待したが、あまり魅力的には映らなかった。
  • 相手チームの予想フォーメーションは4411だったものの523を選択。これはレフも予想していなかったのか序盤はハマらない。
  • そんな中高い位置にボールを送り込んでネガトラ発生からの6番のスーパーアプローチからボール奪取。サイドに渡してクロスからゴール。
  • その後30分くらいまでは明確な狙いが見えにくい展開。
  • 30分ごろから左SB5番と右SH50番が523の脇を取り始める。ここからレフが試合を「支配」し始める。
  • 2の脇でボールを引き取って前へ、相手を押し込んで相手ゴール前にボールを入れ、ネガトラで狩る。もしくは大外から運んで2の脇を取る選手がパラレラで深い位置に侵入。もしくはこのパラレラで相手の2をサイドに引き連れて中央へ刺す。
  • 前半のうちに盤面を攻略する修正力、適応力は強いチームの証か。
  • 守備の仕組みは33節で観た通り。アマラウ、イシャクの中央埋めが非常に強い。人がボールに出てくるのにブロックに穴が開かない。SHが出る→ボランチがフリーの相手をケアする→トップ下か逆サイドのSHが中央を埋める。3段階のスライドが仕込まれており、単純に攻略できないようになっている。
  • ただし、相手チームの繋ぐ力には疑問。全体的に早めに蹴る傾向があり、プレスにいくリターンは大きい。J1クラブはもっと繋がるので、上記スライドが完成しないと結構剥がされそう。
  • 後半開始直後に同点にされてしまいゲームの主導権を渡してしまう。相手が勢い付く。
  • 相手が前に出てきたことでかなりオープンに。オープンな展開に合わせてドリブルで前進→縦パスで攻め返すレフ。近年の浦和的には少しコントロールしてほしい展開だったかそんな気なし。
  • 前半うまく523の脇を5と50が取っていた立ち位置がオープンな展開もあって消える。
  • 15分くらい苦しかったがなんとかイーブンに戻す。SH50が交代し21番へ。
  • 7と21のコンビはサイドを変える傾向があるっぽい。
  • プレスは後半も継続。前はボールにプレッシャーを続ける。プレスのスイッチはトップだと思われるが、SHが前に行った時の後ろの連動の方がちゃんと仕込まれているので、スイッチはSHにあるように見える。
  • 78分ごろ2枚替え。24→10、6→30。この交代は他の試合でも見られたのでパターン化されていそう。序列を固定する傾向?
  • 一人の選手が複数ポジションに入ることがない。この選手はここと決めて運用するタイプ?ただし流れの中でカバーし合う傾向が強く、局面局面で違う役割を果たすことは求められそう。特に2列目。
  • その後さらに交代、83分22→23。ボランチを2枚替えするのは珍しい?ボランチの強度が生命線という認識?逆にいうとトップ、左サイド、最終ラインは代えが効かない感じはある。
  • GK、CBのポゼッション性能は浦和の方が上。結構バタつく。そんな中自分のところで落ち着けられる5番の存在価値はとても高い。
  • 浦和の場合はさらに岩尾が出ていればコントロールできるか?岩尾のアジリティやカバー範囲とコントロールどっちを取る?

シーズン終盤の上位対決ということで選んだら偶然前回までの一つ前の節をみることに。レフの方はあまりメンバーが変わっていなかったのでシーズン終盤になってチームは完成しているとみてよさそうな感じだった気がしますが、もしかしたら右SHだけは50番がスタメンだったかもしれません。うろ覚え。

この試合はとても有意義で、まず前回発見した守備の仕組み、とくにSHがプレスに出たあとのカバーリングのカバーリングがこの試合でも行われていることを確認できました。少なくともアマラウとイシャクは中盤中央埋めを日常的にやっているっぽくて、特に不満もなさそう。つまり、これはポジションに求められている仕事の一部なのかもしれない、と考えます。もしくはこの二人がこうした仕事をやってくれるからこそスタメンなのか。いずれにせよ、浦和でもハイプレスを増やすと明言している以上、「プレス出るのはいいけど外されたら大ピンチじゃん?どうすんの?」という心配をしないわけにはいかないわけです。こうした漠然とした心配に対して、浦和ではどうかは別としても前職ではしっかり仕組みを用意してエース級の選手たちにしっかり役割を果たさせていたというのがわかるのは大きいですね。一方で同時に強調していたと思われる逆SHの大きな絞りによる中央埋めはあまり精度が良くないというかけっこうサボってるシーンが散見されました。これはトップ・トップ下の人たちがやってくれちゃうからなのか、SH軍団がサボってるからエースたちが仕方なく中央を埋めているのか、そこまではよくわかりませんけど。

また、試合を観ている印象としてエクストラクラサのレベル感というか傾向がわかってきました。簡単に言うとプレスを掛けられたら蹴る傾向が非常に強いリーグだと思います。チームによっては繋ぎの仕組みをちゃんと用意しているのですが、ちょっと苦しくなったらわりと蹴っちゃいますね。下手というよりは大柄な選手が多いしあまり小回りが利かない傾向が強いのが理由かも。ともかく、相手が蹴ってくれるならプレスをかける意義は増します。ボールを奪えないにしても、相手が保持をある程度諦めてくれるならほぼプレスは成功だし、なにより繋がれたうえで展開されて思いっきり外されるリスクが低いので、プレスに行く期待値が高いと言えます。そもそもレフの選手がリーグ内で相対的にレベルが高そうというのもありますけど、この傾向はスコルジャ監督がポーランドで成功していた一因のように思いました。

で、じゃあJリーグで同じように出来るかと言うと、正直微妙かなと言う感じ。繋ぎはJリーグの上位チームの方がどう考えても上手いので、浦和レッズというチームというよりスコルジャ監督自身がその辺の感覚のアジャストをしなければいけないかも。本人がわりと慎重なコメントをしているのもこの辺の自覚があるからかなと思ったりします。

ちなみに、この試合は最初うまく嵌らなかった噛み合わせを前半のうちに解決してボール保持でも試合を支配で来ていたのは好印象。全員ではないですが立ち位置を工夫できる選手がいて(例えば左SBのレボチョ)、盤面を整理する振る舞いを観れたのはレフの印象を良くしました。

 

第21節 Lech Poznań - Bruk-Bet Termalica Nieciecza

第5回第6回

試合展開(レフ目線)

前半18分 ボール奪取から速攻、アーリークロスが流れたボールを右サイドで拾ってイシャクのヘッド

前半27分 10番がエリア内で間合いを図り左側に入れ替わろうとするも身体はブロックされる、そのこぼれ球を走り込んだカミンスキがズドン

前半44分 速攻崩れのネガトラでボール回収。カミンスキの仕掛けに5番が裏取りで呼応、SB-CB間に隙が出たところに10番が2列目から飛び込んで左脚を振る。

後半10分 エリア外右からセットプレー、二人降りてきてスペースを空け、大外から二人走り込む。こぼれ球が大外のカミンスキに渡って折り返しから16番が詰める。

後半40分 自陣左サイドでボールを奪ってロングカウンター。ドリブルで運んでから縦パス、97番が長い距離を走り、大外の50番を空けるニアへのランニング。右サイド2番のアーリークロスを50番が落とし、97番が詰める。

 

雑感

  • これまで観てきたシーズン終盤の試合とはメンバーが多少異なる。CB18、CH30、右SH23、トップ下10がスタメン。
  • 観戦会では初の真っ当な4バック相手の試合。ただ相手は右上がりでCBがずれて3枚回しっぽい作戦。
  • そのためカミンスキのマークが定まらず最初はブレスがはまらない。また23の絞りが甘く飛び出していくCHのスペースが埋まらず最終ラインが晒される序盤。
  • ただ相手のエリア内に人数をかける形はしっかり表現できている。ネガトラは怪しいがプレスをかけて蹴らせて回収はそこそこ機能。エリア内での相手の対応が甘い部分もあり首尾よく2点先取。
  • 相手が4◇2なのでレフのCB2枚に枚数があっているが、CHが降りて3枚回しにするような雰囲気はない。
  • 30分ごろからカミンスキが前に出て5番が長い距離をカバーするやり方で安定しだす。だいたい30分で相手のやり方に対応し非保持のバランスが取れると支配を支配できるように。フィールド上、もしくはベンチとのやりとりが頻繁にあったようには見えず、試合も大きく止まらない中で目線や相手への適応が前半のうちに見られるのはなぜ?
  • この試合ではCHのエリアのカバーをCBが前に出て対応する場面も。18番の特徴?
  • 30番が速攻と遅攻を良い感じでコントロール。その上で前に出ていく動きもこなす。パスを繋ぐ能力もあり良い選手。岩尾はこんな感じの役割をできるかも?
  • カウンターの際の人数がちゃんと確保できている、長い距離のランニングができる選手が多い。
  • 4-0で残り10分ほどの場面で74番が投入されたが、ユース上がりのデビュー戦。状況が整えば若手に経験を積ませる起用もするのか?ちょっと意外。
  • トップ下がCHのエリアをケアする挙動はこの試合では見られない。シーズンが深まるにつれて成熟させたのか、イシャクもアマラウもいないので気が効く人がいなかったのか?
  • プレスに行った際もそうじゃない時も最終ライン、特にCBが下がる挙動が早く大きい。結果的に2列目との距離が空いてバイタルが大きく空くシーンが頻出。なんとなくわざとラインを下げさせてる気がする。最終ラインの裏を一発で取られるのを嫌っている?
  • この試合ではCH2枚が両方サイドに出張ったり一枚がプレスに出た時に広大なスペースが中盤にあったりして危なっかしい。トップ下が埋める役割はこの時点ではまだ確立されていない?トップ下の人選によっては浦和でもこうなる可能性があり、Jでは結構危険な気がする。
  • 全体的に相手よりもレフの選手の方が上手く、レベル差、クラブ格差を感じる。

いわゆる完成形はだいたいわかったので、今度はベストゲームを観てみようということで大量得点試合を観戦。少し時間を巻き戻してリーグ中盤戦をチョイス。ちなみにエクストラクラサは18チーム制のリーグです。

メンバーが終盤戦と多少異なることでピッチ上の振る舞いも少し違った感じに。ざっくり言うと、この時期の試合は終盤に比べて完成度がそこまで高くない印象です。アグレッシブではあるし得点もたくさん奪ってはいるものの優勝するチームには見えませんでした。逆に言えば、レフではいろいろと試しながらシーズンを通じて完成度を高めていったということかもしれません。最初に見た2試合は交代選手やパターンがわりと決まっていた印象でしたが、シーズンを通じてみれば多くの選手にチャンスを与えていたのかなという感じ。最終的には走れて気を使える選手が重宝されている感じがします。

この試合はゴールの多さとは裏腹にあまり戦術的な見どころがなかったのですが、チームスタイルの根幹として早めにクロスやシュートに持ち込む部分と、失ってもその後のカウンタープレスで主導権を握っていく部分は発揮されていたと思います。要は攻撃を「多く」したいタイプのチームで、「長く」したいチームだった昨年の浦和とはかなり印象が異なるのではないかと思いました。個人的には「多く」のほうが好きなので、これは歓迎。またハイラインを引いていますが危険な形でパスを刺されたり最終ラインが晒されてしまうような局面では速攻でゴール前に撤退する挙動を見せていたのが面白かったです。これまで観てきたプレスのところもそうですが、第一印象はリスクガン積みで仕掛けていく感じなんですが紐解いていくとリスクヘッジが考えられているのが面白いというか、大味と見せて緻密みたいなバランス感覚がスコルジャ監督の強み・魅力なのかなと思ったり。この辺りは浦和でもぜひ上手い形で表現して欲しいところです。

ただやっぱり選手の質の優位性は感じます。レフの選手はリーグ内では相対的に優秀です。これも監督・コーチングスタッフの仕込みなのかもしれませんが、第32節もこの試合も前半のうちに噛み合わせがあっていないのを修正してしまっているのは凄いです。長くゲームが止まった感じはなく、監督もぎゃーぎゃー指示を出していたようには思えないんですけどね。

 

第22節 Lechia Gdansk vs Lech Poznań 

第7回第8回

試合展開(レフ目線)

86分 コーナーから失点

 

雑感

  • 前節40分で交代したイシャクがベンチ外。アマラウも控えスタート。右SBの2番もベンチで、シーズン終盤はCBで出ていた37が右SBに。CHは6と30のコンビ。トップにはネクストレヴァンドフスキこと97。
  • 相手は4231。ボランチが降りて3枚回し、降りたボランチからミドルパスで展開したい気配だが、レフの第一プレッシャーラインを越えられず有効なビルドアップができない。
  • 序盤からプレスをかけて主導権を握りサイド攻略からエリア内に惜しいボールを供給するレフ。
  • 前半10分までに決定機が4回くらいあったのでは。どれも決められず。
  • 37番はどう考えてもCBの選手だがチームの約束であるチャンネルランは忠実にこなす。SHもわりと37のランニングを使う。約束事がしっかりしてる分、誰がやっても同じようにスペースを突き、その動きを使うことが徹底されてる?逆に言えばボールを渡しても多分何もできない選手にも、約束通りの動きならボールを渡す傾向。
  • プレスの精度はともかくCHが出たところを埋めるカバーリングのカバーリングは微妙。真ん中が空くことが多いが最終ラインが迎撃で処理したり、相手のビルドアップが効果的でないこともありピンチは少ない。
  • ボール保持では10番が頻繁に降りるのでその代わりに6番が前線へ出て前の枚数確保に努める。これが終盤の布石に?
  • 後半55分あたりの3枚替えから相手がペースアップ。プレス強度を上げてくる。同時にレフは前線に疲れが見え始める。特に右SHとトップ下、CH6番、30番の出足が遅れ始める。
  • レフのプレスはSHが早めに相手のSBを消すことで中央からのプレッシャーを当てる感覚があるが、一手目のSHが遅れるとサイドに逃げられて辛い。
  • さらに相手のボランチにCHが出ていくものの捕まえられないと横断され始める。サイドに大きく動かされると撤退となるのでポジティブトランジションの位置が下がり、間伸びする。ということでレフは被シュートがあからさまに増え厳しい流れに。
  • ここですこ采配。63分に2枚替え。右SHに50番を、トップ下にアマラウを。上記を踏まえるとかなり納得感のある交代。
  • アマラウは出てきた瞬間にこのチームのトップ下としてのプレー理解度の違いを見せつける。守備のカバーリング意識、プレスの出かた、攻撃時の質の高さ。
  • アマラウ起点で2回、50番起点で1回レフに大チャンス。正直ここで決めないのは選手が悪いくらいのチャンスだった。采配は合っており監督としてはチームを勝たせる寸前までは持ってきている印象。
  • その後若干試合が硬直。レフはCHが活性化された前線についていけておらず辛そう。ということで交代するも6番を残し30番クヴェクヴェをベンチへ。22番IN。
  • 86分コーナーから失点。ゾーンで3人競り合ったこぼれをボレーで詰められる。失点自体は仕方ない。
  • その後さらに選手交代して追いつこうとするもゲーム終了。レフは攻め手が明確なチームだけにパワープレーはあまり得意ではなさそう。
  • ゲーム全体としては負け試合ではあるもののレフらしさはよく出ており、采配にも納得感があった。上位対決を落としたので痛いが悪い負けではない気がする。
  • SHのとCHの体力がどこまで持つかの見極めはチームにとって重要。そういった意味でもトップ下によるCHのカバーリングは重要なのかも。10番はこれをほぼやらない。6番は前方へのランニング、ゴール前の枚数確保支援の意識が強く、10番が降りた分を埋めていたが終盤は足が止まった。この辺は選手の特性の噛み合わせみたいなところもあるかも。

良い試合を観た後は負けた試合も観てみようということで21節に続いて22節を観戦。ただ内容的には21節よりも面白かった気がします。たくさんゴールに迫ったものの1点が奪えず、罰を受けた形で試合終盤に失点し敗戦というパターンでした。こういうのはどこのフットボールでも同じなんですね。雑感に記載の通りスコルジャ監督の采配は納得感のあるもので、選手交代の直後に出した選手がビッグチャンスを作っていることを踏まえても監督には文句なしという珍しいタイプの敗戦。そもそもこのシーズンのレフはリーグ戦で2回しか負けていないのですが、こういうガンガン行こうぜ系のチームにしては事故的な敗戦が少ないところをみると、こういう感じで監督のバランス感覚や采配で盛り返したり勢いをつけてポイントをもぎ取った試合が結構あったのかなと思わせてくれます。これまで観てきた通りピッチ内での修正力もあるし、監督の采配も打率がいいしとなればそりゃ安定してポイントをとれるわけかな。

試合周辺の情報がないのでなぜこの試合でアマラウがベンチだったかはわからないのですが、レフではレベチの戦術理解とゲームへの影響力を示していたアマラウですら出ずっぱりではないとすると、浦和でもローテ気味にいろいろな選手が使ってもらえるのかなと思ったり。レフの場合はシーズン序盤と比べるとGKも変わっているし、最終ラインもポルトガル人コンビの両SBは別格気味とはいえずっと同じ選手がでているわけでもなく。ボランチより前は当然いろいろな選手が出場機会を得ていました。もしかしたらある程度プレータイムをコントロールするタイプの監督なのかもしれません。僕みたいな箱推しファン向きの監督かもなと思いました。幸いなことに今の浦和にはショレやもうやんを除けば良くも悪くも大きなレベル差の無いスカッドがありますから、集めたスカッドの有効活用は期待したいところです。

観戦会も7・8回目ともなると、もはやレフの選手に愛着が湧いてきています。個人的なお気に入りは左SBの5番レボチョ、CHの30番クヴェクヴェスキリ、そしてトップ下24番アマラウさんでした。イシャクがエースで彼が収めないと何も始まらないのかと思ったらそこまでではなく、むしろ走れる選手と気を使える選手が上手い感じにバランスをとりながら相手に圧をかけまくるというチームだった気がします。攻撃ではわりと簡単にボールを捨てる(シュートやクロスにチャレンジする)チームですが、その後のリカバリー・カウンタープレッシングはかなり徹底されており、むしろ一回相手ボールになった方が調子が出る感じにも見えます。相手のビルドアップに対するプレッシングとそれに応じたハイラインも、結構隙が大きく見えるのですがその隙をカバーする仕組みとそのカバーをカバーする仕組みにも構想があったりとか。レフポズナンは全体的には雑な感じと見せかけて緻密、ノリ重視と見せてバランス派、週3で焼き肉屋に通ってるけどランチのみ、酒は飲んでも吞まれるな的な感じのチームという印象でした。

スコルジャ監督によるチーム作りの展望について

ちょっと長くなってしまいましたが、以上が「すこ観戦会」の報告となります。イメージ湧いたでしょうか?本当は浦和のトレーニングマッチとかPSMとかそういうのが見れたらいいんですけど、そういうのがなかったのでわくわくする燃料にでもなればと思います。とはいえもう今日開幕なので、このエントリでイメージを膨らませる必要はないかもしれませんが。

最後にざっくり、浦和レッズでのチーム作りの展望を書き記しておこうと思います。正解は一年後。もうだらだら語るのもあれなので、箇条書きで。

  • 全体としては昨年に比べリスクを許容しつつチャレンジを多くする志向性の転換が肝になるのでは。ビルドアップとプレス重視、立ち位置がどうこうも工夫するという意味ではリカルド体制からの引き継ぎ事項は多いと思うが、プレー選択のメンタリティはだいぶ変わると予想、というか期待。
  • まずは相手のビルドアップへのプレッシングの積極性と、特にSHが前に出た後ろのスペースの埋め方、カバーリングに誰が行く設計になってるかに注目。できればカバーリングのカバーリングまで観たいけれど、どうなるか。最初の方は対戦相手を考えてもあんまりうまく出来ないかも。
  • カバーリングのカバーリングまで考えると、トップ下は攻撃だけでなく守備でも重要ポジション。プレスの先頭になるか、後ろを埋めるか刻々と判断しなければリスクヘッジが成立しない。当初はセカンドトップタイプを置くのではという噂があったけれど、どうもセカンドトップの点取り屋ではバランスが悪そう。アマラウが凄いのはチームで最も気が利く選手だったのに点を獲ってチームを勝たせていたこと。というわけで佳穂が真の主人公として覚醒すれば問題なし。
  • とはいえJリーグでは繋げるチームが結構多いので、そもそもポーランドでのレフのように上手くいくかは未知数。ただこの懸念をおそらくスコルジャ監督本人が持っているので、序盤は戦術や采配をJリーグにアジャストさせていくことに力を入れるはず。この辺りに自覚的っぽいところが期待している要因の一つ。
  • レフでのSHは走力とゴールへプレーするエナジーが求められていた感じがあるものの、浦和ではテクニカルなドリブラーが多いのでそこがどうなるか。キャンプではボールと逆サイドのSHが絞ることで中央を埋めるやり方を徹底していたようなので、その辺の完成度がどうか。今まで浦和を観てきた感じでは、そこまで精度が高くなるとは思えないが、上手くやれる選手は信頼されそう。
  • またチームの基本的な約束事となっていそうなチャンネルラン(CB-SB間へのフリーランニング)がどのくらい観られるか。これはわりと早くから徹底されそう。
  • レフはクロスもシュートもかなり多いチームだったが、浦和でもその傾向が出るかどうか。前監督とは志向が真逆となる部分なので選手の中に残っている感覚が強く出て最初はスコルジャカラーに染まり切らないかも。ただシーズンのどこかで吹っ切れていく必要がある。中途半端は良くない。
  • 攻め手が雑に見えたとしても、それがカウンタープレッシングのトリガーになるとも言える。トランジションをたくさん引き起こすことでペースを握っていく戦い方がJリーグでどこまで通じるか、浦和の選手がどこまで体現できるか。シーズン単位でも試合単位でも最初の方はやれそうだが、中盤以降どうなるか。夏は監督も警戒している模様。
  • 選手起用がどのようになるか。シーズン中でも序列を結構変えるタイプなのか、割と固めちゃうのか。わりと鉄板コースを決めるタイプのようにも見えるので、そこに食い込んでいく選手は誰か。レフではボランチ、SH、トップ下の交代が多く、浦和でもこのポジションの選手は競争が激しくてもわりと出場機会がありそう。というわけで後ろが先に固まるか。
  • ボランチはカバーリング範囲の広さや要求されるアクションの多さからして敦樹・柴戸に期待。特に柴戸には徐々にでも信頼を勝ち得て欲しい。
  • レフを観ている感じだとシーズンを通じて完成度を高めていけるタイプの監督なので、この点大いに期待。シーズン序盤の対戦相手が厳しめなのと、ACL決勝、夏の暑さ。この3点をうまく乗り越えられれば終盤にかけて期待できるのでは。
  • 序盤3連勝で始まったらめっちゃ熱い。できれば上位争いをしながら序盤~中盤を進めたい。そのほうがスコルジャ監督の選手のメンタル面へのアプローチなんかの強みが出そう。逆に下から上がっていくのは難しそう。最初に下にいるということは監督のサッカーがJリーグにはまっていないということなので、監督自身が悩みだすかも。

 

何はともあれ楽しみですね。文字ばっかりですみませんでしたがこのあたりで今回のチラ裏は終わりです。ではまた。