開幕戦はA神戸。結果は0−0の引き分けでした。
恒例の開幕前夜キャスで井上先発予想をした僕はともかく、kmさんとゆうきさんはかなり堅めのメンバー予想かなと思ったらまさかのオギ先発(長沼ベンチ)で全員予想を外すという、我々がいかにわかっていないかを示す開幕戦となりました。
ゲームの評価としては、前半浦和がセカンドボールをことごとく拾って神戸にリズムを作らせず、後半には浦和側に幻のゴールがあったこともあり、全体的には浦和が勝利に値しかけた引き分け、という感じでしょうか。ただ前半終了間際や後半の残り15分など神戸側にも決定機と呼べるチャンスがあったので、痛み分けの引き分けで妥当、もしくは紙一重でどちらに勝利が転んでもおかしくないゲームだったという気がします。そういう意味では前川・西川の両GKが活躍した試合とも言えるかもしれません。
スタッツでいうと走行距離・スプリント回数ともに少な目の試合となっており、特に神戸のスプリント回数89回というのは非常に少ない数字。なんか今季から数え方が変わったりしたのかと思ったのですが、岡山vs京都は岡山162回、京都148回、両チーム計310回とかいう大かけっこ大会が開催されていたので、やはりこの試合が少なかったのだと思います。調べたら昨シーズンの神戸のスプリント回数は平均126回らしいので、かなり少ないですね。神戸側のコンディションの問題もあるかもしれませんが、それよりは浦和が神戸の得意な展開に持ち込ませずにうまくゲームを運んだ結果ではないでしょうか。浦和のスプリント回数も、バイブス高めのゲームの印象からすると少なめでした。
細かい内容についてはゆうきさんか誰かが書いてくれるレビューに譲ることにして、僕はちょっと違うことを書こうと思います。十分観返す時間がいまだにうまく取れません。
サッカー観の共有を感じた
上記のような試合だったので、ファン・サポーターとしては評価が分かれがちなのかなと思います。先に僕の感想を記しておくと、僕はポジティブな印象を持ちました。結果は勝ち点1なのでそりゃ3と比べれば良い結果ではないし、後半少し落ちたこともあるし、リカルドやマティの時代と比べれば(特にボール保持における)戦術面では目立った注目ポイントに欠ける、というのはそうだと思います。ただそれよりも、チームとして浦和レッズが見せた全体的なパフォーマンスで言うと、一昨年や去年と違うものが確実に観られたのではないかと思うのです。
特に前半がそうでしたが、立ち上がりからかなりテンポの速い展開となりました。これは神戸が前線の選手にボールを当ててから組み立てていくスタイルというのももちろんですが、浦和側のアクション・リアクションに澱みがなかったというのも要因だと思います。平たく言えば、迷いがなかった。当然相手を見ながらテンポをコントロールしてゲームを組み立てるというのは重要な要素ですが、ここ2年くらいの浦和レッズさんはとにかく選手(特にオンザボールの選手)が悪い意味で考えながらプレーしている感じが強くて、相手を見る前にまず味方を確認しないとプレーできないという印象でした。もちろん全部が全部じゃないですが、多分シチュエーションごとに誰がどこにいるかとか、誰がどんなタイミングでどんなアクションをするかといったところの基準がうまく共有されていなかったんじゃないかと思います。当然監督は、特に去年マティなんかはその辺りの基準は明確に示していたと思いますが(そういうタイプの監督ですし)、それがピッチ上の11人、もっというとFPの10人、さらに言えば近いユニットの2、3人でどのくらいの精度や信頼感で共有されていたか、選手の実感として落とし込まれていたか、という話です。それが前節は、立ち上がりから蹴る方も迷いなく蹴れば、受ける方も困りながら受けていた印象があまりありません。トランジションからオギが猛然とスプリントをかけて正男を追い越したり、背後に走る松本にロングボールがポンポンでたり。去年は最終ラインがボールを持っていてもなかなか裏へのボールが出てこなかったこととはえらい違いです。ここに、「俺たちはどういうサッカーをするのか」もしくは「チームのやり方を踏まえると、今自分が何を期待されているのか」に対する理解の質を感じたのです。もっというと、チームとしてサッカー観が合ってる感じがしました。個人的にはこの感覚は久しぶりです。
キャンプ中にも「今年は(も)堅いサッカーになる」的な発言が選手からあったと思いますが、僕はこれを(やっててあまり面白いサッカーではないという)ネガティブなニュアンスが少なからず含まれているのかなと思ってました。また、「近い選手同士の連携が重要」という趣旨の発言も、そのくらいしか言うことがないのかなと感じていました。ただ試合を観た感じではネガティブなニュアンスはなくて、逆に「このやり方でいこう」というコミットメントがあったように思います。それも、ピッチ上の選手全員から。今季このあたりの意識の共有がうまくいっているとしたら、それがプレー選択のスムーズさや戦術実行の徹底度に表れてくるのかもしれないと思いました。
とはいえ当然、「やりたいことが共有できたな!ではうまくできるな!」という単純な話ではありません。結局のところやりたいことを具現化する能力がなければ話になりません。その意味で、やはり新加入選手の存在は大きいと思います。まずは今節別格のチャンスクリエイト能力を見せた正男、そして大外での仕掛けから存在感を見せた金子の二人。やはり独力でボールを納めてくれる、前を向ける選手というのは貴重です。特に浦和のSBからSHの二人へ縦にボールを付けるときに簡単にボールを失わないのはチームにとって大きいと思いました。ビルドアップで苦しくなったときに相手陣地奥にボールを付けてなんとかできるのはめちゃ助かります。これで全体が押しあがりやすくなりますし、加えてこの二人は独力でも一枚はがしてクロスまで持っていける力があります。また松本も動き出しの回数が多く、大きく走ることで相手のラインを押し下げてくれるので相手のボランチ周辺にスペースを作りやすいということがあったかと。
【更新情報】
— SPORTERIA (@SPORTERIA_JP) 2025年2月15日
J1 第1節 #神戸 0 - 0 #浦和
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パスソナーが出てましたが、SB⇒SHのパスの矢印が両サイドで出ているのが特徴的です。これがなくなると一気に前進する方策が限られてしまうので、ここは今季の生命線になるかもですね。そういう意味では正男、金子が怪我したらどうすんねんという話にもなりがちだと思いますが、怪我しないように祈るのは当然のことだし、それはそれということで。SHは厚い陣容になっていますが、サブになっている選手から似たような戦術的な役割を果たせる人が出てくるかどうかですね。
チアゴのパフォーマンスが上がった気がするのも松本がいることによる見えないサポートがあるのかもしれません。それと松本は守備面での貢献も大きく、プレッシングの部分だけでなくボランチの守り方に併せて中央のカバーリングができるのも大きいですね。ボランチがサイドのカバーリングに思い切って出ていく+前線に中央をサポートさせるやり方はすこのレフポズナンでもみられた戦術ですが、これが神戸用のものだったかは今後要観察です。
まとめると、ピッチ上の選手が監督のやり方を理解し、それに合意して、実感をもってプレーできていること、それを支える新戦力の確かな実力を感じられたこと、この2点から迷いがなく前向きのプレーが多く観られたこと、このあたりが今節の全体的な印象で、これが続けば今季はポジティブだなあと思います。
メンタリティと自信が今季の肝
ゲームの全体的な印象はポジティブですが、けが人も出ているしチームの戦術がうまく発揮できなかった神戸に対して勝ち切れなかったのも事実。特に後半もっと勝負をかけられたのではという意見もあってしかるべきかと思います。一方で、神戸の両サイドゴール前における質やワンチャンスをものにする選手の質を警戒し、まずは負けない選択をしたという風に今節のすこ采配を理解することもできるでしょう。
個人的には最後勝ち点1を取りに行くやり方になったのは仕方ないかなと思っています。もし今節この内容だったにも関わらず最後のどれかのプレーで失点し負けていれば、歴代の開幕戦の結果や2023シーズンの記憶と相まって「今年もか…」的なネガティブな雰囲気が瞬く間に広まっているのではないかと思うというのもありますし、それ以上にやっている選手としても、「この内容で大丈夫かな?」という疑念が生まれないとも限りません。僕の考えでは、上述の通り「できる」選手が(少なくとも今節のスタメン組であれば)揃っていると言える中で、勝負のあやで引いてしまった悪い結果に引っ張られてメンタリティとして「できないかも、結果に繋がらないかも」となってしまうのはかなりもったいない気がします。そういうところからせっかく一致してスタートしているように見えるサッカー観、プレー選択に迷いが生じ、「できない」スパイラルに陥ってしまうのは本当にもったいないことです。もっと簡単に言えば、「俺たちは堅くやろう」という合意があるにも関わらず、最後に勝ちに行って失点してしまうのは合意に反するとも言えます。
とはいえ、轡田さんが浦レポで良く書いている通り、引き分け2試合よりも1勝1敗のほうが勝ち点は多いわけで、負けるのを恐れて勝ちにいかないのではリーグは獲れませんというのは正論だと思います。そこは今季の開幕戦かつ相手が2連覇中のチームという個別の状況を鑑みて飲み込むという都合のよさを発揮してしまうわけですが、まあ開幕戦を堅くやり切ったというのは悪くないのかなと。勝ち点3はついてきませんでしたが、このサッカーができれば戦っていける、さらに良くなる可能性もあるというチームとしての手ごたえ也自信のようなものは神戸から持ち帰ることができたんじゃないかと思います。
長いシーズン、前述のような「できない」スパイラルに陥りかけることはあると思います。もしくはメンバーがなんらかの理由で変わっていく場合に「できる」の前提から崩れてしまうような試合もあるでしょう。そういうときに「できる」メンタリティ(自信)をチームとして維持できるのか、もしくは「できる」ようになるタイミングまで我慢しつつも要求し合えるのかというのは今季とても重要なポイントの一つなのかなと思います。当然、そのベースには今季合意しているすこのサッカー(戦術)やサッカー観、それらに紐づくプレー選択というのが根底にあるわけです。
開幕前に元気のリーダーシップがどうのこうの書きましたが、やはり今季は現実に向き合いつつも前向きに自信を持ち続け、そして足りないところは要求し合うチームとしてのメンタリティが重要かなと感じます。またキャプテンになった関根のチームを引っ張っていくモチベーションも高そうで、以下の記事は今回書いているような文脈で非常にしっくりきたというか、やっぱりチームの中でも課題意識がこういうところにあるのかなと思わせます。
「モチベーションを同じ方向に向けるのが僕の仕事だったと思う。中でも声を掛け合いながら、特に凌磨とも喋りながら、バラバラにならないように、同じ方向を向いてやれたかなと思います」
(中略)
キャプテンとして、サイドバックとして心身でチームを支える役割に関して関根は「そこはやらないといけないし、今の自分ならやれると思っているので。そこは自信を持ってこなしていきたい」と力強く答えた。
チームとしてのサッカー観の一致、「できる」メンバー、それらをベースにしたモチベーションやディターミネーションみたいなものがどこまで持続できるのかが今季の成績を左右するような気がします。ということで、個人的にはそんなところを注意深く観察してみようと思った今季の開幕戦でした。
今日のチラ裏はここまで。