96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

リスクの顕在化:Jリーグ2020 vs柏レイソル 分析的感想

柏は僕にとっては結構思い出深いというか、嫌な印象がたくさんあるクラブで、2011年の最悪なシーズンの最終節、順当に負けてその後の大ブーイングに繋がったこととか、2013年にナビスコカップ決勝で負けたこととか、2017年から2018年にかけての3連敗とか、古くは2005年の旧国立での3-0負けとか、なぜか負けた試合ばかり覚えている相手です。勝ったな~っていう記憶は関根のクロスから武藤のゴールが決まった2016年の対戦(ちなみに2016年はホームでも阿部ちゃんのFKとチュンソンのボレーでのループシュートとかいうよくわからない技術で勝利しています)や、ポポのロスタイムのヘディングで勝った2012年(もう8年前!!!!!!)くらいで、いつも嫌らしいチームという印象です。でも対戦成績は浦和の17勝7分16敗とほぼ五分五分らしいので、印象とは裏腹にクラブとしては苦手ってほどじゃないんですね。

両チームスタメンと狙い

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スタメン

両チームのベンチメンバーは、浦和:福島、岩武、伊藤涼太郎、汰木、長澤、健勇、興梠。柏:キムスンギュ、鎌田、川口、三原、瀬川、呉屋、山田。新潟にいた川口くん、今柏にいるんですね。良いSBだと思います。

さて、柏は前節湘南戦に勝利したスタメンをそのまま起用。湘南戦は全部見てませんがスタートの並びは一緒だったように思います。守備時は江坂が2トップ気味になって4-4-2ブロックだったり、そのまま4-4-1-1ブロックで守ったりします。一方浦和はFC東京戦から結構いじり、まずボランチに柴戸・エヴェルトンコンビを今季初起用。運動量とボールを狩る技術で中盤を締められる柴戸と、ボールキープに長けて運んでいけるエヴェルトンのコンビは攻守のバランスも良く、また守備時にちゃんとゾーンディフェンスの原則に沿ったポジションを取れる二人なので、個人的に観たかったコンビでした。SHは左にファブリシオ、右に関根。二人ともひさしぶりのスタメンとなりました。ファブリシオは前回スタメンだった仙台戦は右SHに入りましたが、今回は左サイド。考えられるのは、右サイドに入った場合対面となる柏の左SB三丸が攻撃の起点にもクロッサーにもなれる良いキッカーなので、右サイドに置いた場合の守備負担を嫌ったか、もしくは仙台戦も右サイドで橋岡とコンビを組みましたが守備の連係がうまくいかなかったというのもあるかもしれません。そして2トップには武藤雄樹が今季初スタメン。間受けからのターン、最前線での裏抜け、サイドに流れてのコンビネーション、細かいタッチでのドリブル、ゴール前でのワンタッチシュートと、相手のブロックを崩すためのスキルセットを一通り揃えているナンバー9に期待していた人は多いのではないかと思います。

柏はどちらかと言えば前節のFC東京に近いタイプのチームで、スタッツ的にもクロスやパスが多くなく、タックルやクリアの回数が多く出ているチームです(もちろん浦和もこのタイプ)。ただ柏は川崎と対戦した試合でかなり守りに傾倒して入ってしまい蹂躙された試合のスタッツ込みなので、本当の姿はもう少し攻撃的というかボール保持を厭わないチームではないかと思います。まあネルシーニョ監督のチームなんで、基本的には機軸となる選手とそれをサポートする仲間たちという理解で良い気がしますが。で、現在の柏の機軸と言えば間違いなく1トップに入るオルンガで、パワー・スピード・テクニック・人間性にまで優れたこのスーパーマンにゴール前で勝負させるのが基本的な狙い。加えて、トップ下に入る江坂、ボランチには大谷、GKには中村航輔と、チームの中心線上に在籍年数的にもキャリア的にもリーダーと言えるような、頼れる選手が起用されているのがネルシーニョっぽいです。

柏は前節のFC東京vs浦和の試合を観て、浦和がボール保持に問題を抱えていることは理解していたでしょうし、サイド攻撃をしっかり塞ぐのがポイント、ということも十分わかっていたと思います。同時に、柏は最終ラインがキャリア的にも年齢的にもJ1で戦っていくには心許ないところがあり、最終ラインがエリア内で浦和のFW陣と質の勝負になると怖いという感覚があったはずです。従って中盤の守備がどれだけ最終ラインを助けられるか、そして奪ったボールを良い形でオルンガに届けていけるか、結果として先制できれば優位に立てるはず、というのが柏側から見たゲームの基本的なポイントであったと思います。

浦和は前節までの課題として大きく2点;構えるディフェンスに傾倒しすぎて重心が下がり、「3年計画」で目指すファストブレイクが出せていないこと、そしてボールを持たされた時のビルドアップが整理されていないことがありました。柏はFC東京や浦和と比較的近い戦術的特徴を持っているクラブなので、内容でも結果でも前回のリベンジを果たさなければいけません。

ゲームの構造①:課題に取り組む浦和

浦和は前節で露わになった二つの課題、守備のブロックが低くなりすぎて守備からの速い攻めを出せていない点と、ポゼッションでゴールに迫る手立てがなくなってしまう点への取り組みを序盤から表現していました。まずは武藤を中心に柏の最終ラインにトップがプレッシャーをかけ、中盤から降りていく柏のボランチには主にエヴェルトンがついていき、SBにボールが出たところにはSHが早めにチェックをかけていきます。序盤は柏がマイボールを早めにオルンガに当てようとしてロングボールが多くなったこともあり、最終ラインでロングボールを回収してから攻めに出ていく形を表現していきます。3分には岩波が最終ラインでボールをカットしてから前線のレオナルドへ縦パス。少し運んだレオナルドとクロスした武藤がターンしつつDFを躱してGK中村と1on1。このシュートは中村のセーブに合いますが、ここ数試合見られなかった守備から早い攻めでいきなり相手ゴールに迫ります。5分にも相手の攻撃を受けとめて柴戸がボールを得ると、レオナルドと山中が反応しファストブレイク。レオナルドのシュートは相手にブロックされるものの、奪ったら中央が動き出して縦につけ、素早くゴールに迫る姿勢を見せていました。このほか13分にも柴戸のパスからレオナルド、ファブリシオが絡むファストブレイクが見られました。

柏がゲーム前にどの程度自分たちでボールを保持しようとしていたかはわかりませんが、10分までにあった柏のゴールキックの場面で、中村は2回、CBを寄せてのつなぎをやめてロングキックを選択していました。おそらく試合の入りにプレッシャーから早い攻めを繰り出せていた浦和の圧力を感じ、セーフティに蹴り出すという判断をしたものと思われます。柏がボールを蹴り出すので、ゲームはそれを回収した浦和がボールを保持する時間を得るという構図が徐々に強まっていきます。

ということで、まずは浦和のビルドアップから。ファブリシオが左サイドで起用されたことで、山中との関係性はこれまでの汰木と組んでいた時よりも若干柔軟になっていたと思います。ただ基本的にはレーンを意識した立ち位置を取ることは同じで、ファブリシオが外であれば山中は中、山中が中であればファブリシオは外。どちらが立ち位置のイニシアチブを持っているかも見ていたのですが、決定的な感じはなかったように思います。個人的な注目だったボランチコンビは、やはりビルドアップでは最重要となる相手の2枚のトップの間、アンカーの立ち位置にエヴェルトン。柴戸は左サイド側を起点に岩波のパスコースになるような立ち位置を意識していたようでした。右サイドはほとんどいつも通りで、SHが中に入り橋岡が大外高い位置を取ります。

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浦和のビルドアップにおける初期立ち位置

これに対して柏は、確信はないのですがオルンガがマウリシオをマークしてビルドアップからマウリシオを消し、左サイドでボールを持たせるような形で守っていた気がします。

オルンガがマウリシオをマークしつつ、岩波の右側面から圧力をかけていくことと、浦和が自ら岩波を起点にボールを持っていたことと、どちらが要因というよりはどちらの意図も同じだったような気がしますが、浦和がボール保持する局面では上図の構造になることが多くありました。浦和からすれば右サイドは橋岡を高く上げて突破やビルドアップの逃げ道としての空中戦をさせたいサイドなのでビルドアップの第一選択肢ではないことと、単純にオルンガがマークしているマウリシオのところでボールを奪われるのを嫌ったという面があるでしょうし、柏からすればボールを持ちあがって守備ブロックにマウリシオが侵入していくことは避けたいし、左でヒジャルジソンや江坂がひっかけられればショートカウンターを出しやすいということ、またオルンガの仕事量を減らすために最初から右サイドの守備機会を減らすという考えもあったかもしれません。いずれにせよ両者の考えがハマって、浦和の自陣左サイドは、そこから浦和が前進できるのか、それとも柏が奪ってショートカウンターなのか、というお互いの狙いの起点となるポイントであったように思います。

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よく見られた左サイドからの組み立て

22分にも同様のシーンがあり、こちらはファブリシオが大外、山中が中央レーンに入り、右サイドでは関根がハーフスペースに入り込んでいるのですが、浦和の狙いはおそらくこのハーフスペースに立つSHもしくはFWへの縦パスを通すことだったと思います。この試合、上記の構造から岩波がボール保持の起点となることが多かったですが、実際に岩波からこのレーンに立つSHやFWに縦パスをつけるところから柏の最終ラインに勝負を仕掛けていくというシーンが数回見られました。前半終了間際に、この試合で最もゴールに迫ったと言える関根のシュートシーンに繋がった場面でも、山中からパスを受けたエヴェルトンがハーフスペースに立ったレオナルドにパスを通したところから一気に柏の最終ラインに仕掛けていったのが起点でした。

ただ難しかったのはこの形から前進する頻度と確実性、そして狙いの縦パスを通してから仕掛けに入るフェーズで、序盤に降っていた大雨の影響もあってか、または個人の技術の問題か、素早くターンしたりワンタッチで大外に展開して一気に前進するという場面はそう多く作ることはできず、結局ロングボールに頼る場面も多々ありました。浦和としては、せっかく山中をインサイドに立たせる形ができるのですから、この立ち位置に呼応する形でもう少しボールを動かすルートを作っていきたいところです。例えば上の図の場面では柏が浦和のビルドアップに人数を合わせて食いついているので、マウリシオが思い切って高い位置を取って空いている右サイドのスペースに進出しボールを受けるとか、いっそのことGKもビルドアップに参加させて数的優位を一層増やすとか。そういう、立ち位置による優位をもう一段階思い切って活かす工夫が必要になるのではないかと思います。

一方の柏もそう多くチャンスを作ったわけではないですが、浦和の左サイドのボックスビルドアップをひっかけてゴールに迫ったのが17分、オルンガの強烈なミドルに繋がったシーンで、この場面でインターセプトされるパスを出した柴戸はその前に一度逆サイドを見ているのですが、オルンガが目に入ったのかタイミングが合わなかったのか逆サイドへの展開はせず、ターンして狭い左サイドの大外・山中へパスし、これを奪われたのが起点となっていました。柏からすれば相手のビルドアップで片方のサイドをほとんど消して守れるわけですし、ボールハンターのヒジャルジソンのサイドで守備が出来るのですから好都合だったかもしれません。

ゲームの構造②:ミスからの失点、響く声の主、人選と守備組織。

ここまで見てきた構造と関係なく、ゲームの趨勢は決まってしまいました。31分にゴールキックからのスタートをショートパスで始めた浦和は、岩波からのリターンを受けた西川のパスが柴戸に渡る前にヒジャルジソンに奪われ、そのままゴールを決められてしまいます。失点後に西川がアピールしていた通り、単純に彼の判断ミスでした。西川がどちらを気にしているかわかりませんが、観ている方として気になるのはショートパスで始めた判断です。今季の浦和はビルドアップを前提にしたサッカーをしていないし、今節は前節に比べれば前から追い込んでいく守備も機能していたのですから、単純に大きく蹴ってルーズボールから始めても良かったのではないかと思います。このあたりは今季の試合を観ていてもチームとしての約束事をあまり感じないので、西川個人の判断に拠るところが大きいのではないかと思います。この期に及んでミシャの時代のやり方に固執しているわけではないでしょうが、ミシャの時代によくやっていた疑似カウンターのように、相手の守備を引き寄せて中盤以降にスペースを作り、前の選手に勝負できる場所を用意したいという考えがあったかなと思います。ただ今季の戦い方を考えれば優先順位の高くないショートパスからのリスタートでミスをして失点というのは、間違いなく大槻監督のゲーム設計では想定していない失点だったと思われます。

失点後に立ち位置をベースにしたゲームの構造が大きく変わることはなかったと思いますが、選手のメンタル面では有利不利がはっきりしてしまったかもしれません。得点が入る前からそうでしたが、浦和のホームである埼玉スタジアム2002に響き続けていたのは柏のGK中村とキャプテンの大谷の声でした。ディフェンスラインを統率する声、前線の選手が危険なエリアをカバーした時に褒める声、ビルドアップでどこにボールを運ぶのかを指示する声。柏にはピッチ上に少なくとも二人のリーダーがいて、組織を明確に引っ張っていたのを感じたのは僕だけではないはずです。一方の浦和は、最初の失点シーンから後半に崩れてしまうまで、お互いに要求しあう声や他の選手を鼓舞する声がすくなかったように思います。平たく言えば、世代交代を伴うチームの再構築を進める中で、ピッチ上のリーダーが誰なのか、というのは浦和の課題かもしれません。キャプテンマークを巻く西川が自ら認めるミスで失点してしまったのは、こうしたリーダーシップの発揮という面でもマイナスであったことは想像できます。前節もそうですが、先制点を取られてしまうと攻め手の単純さとバリエーションの少なさからゲームが苦しくなるのが今季の浦和の特性であり、それを誰よりも理解しているのはピッチ上の選手だと思います。そうした苦しい中でも、完璧な相手などいないのですからもう一度戦っていくんだという姿勢を他の選手に示せる選手が出てきてほしいと思います。

ゲームは、後半の立ち上がり51分に古賀のクロスからオルンガにうまく合わされて柏が追加点。前半はあまりうまくいっていなかった印象のビルドアップからの得点でした。

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柏の2点目の場面

試合後にネルシーニョが語った通り、柏は後半ボール保持を安定させていきますが、後半最初にビルドアップから良い前進が出来たのがこのシーンでした。江坂が柏の左サイドに流れてボールを受けると、それを受けて左SHの仲間が浦和のSB-CB間のチャンネルへダッシュ。ボールは出ませんがそこに留まると江坂からの斜めのパスをうまく落として江坂に戻します。浦和はSHの関根が三丸のマークへ出ていっているため、エヴェルトンが大外に引っ張り出されて対応しており、壁パスを受けた江坂には十分ルックアップの時間がありました。これを確認した右SBの古賀がスプリントで一気に前線にポジションをとり、江坂からの完璧なサイドチェンジが通ると、オルンガがクロスにうまく合わせて追加点となりました。

柏側からすれば江坂を中心にしたコンビネーション、古賀がポジションを上げるタイミング、そしてクロスの精度とオルンガが浦和のディフェンスラインのスライドに合わせてマウリシオの背後に逃げてクロスに合わせた点などいろいろ良いところがありますが、浦和側からすると守備組織の約束事を徹底できていれば防げたかもしれない失点でした。ポイントはエヴェルトンが大外の江坂に対応するために出ていったスペースである①と、柴戸がバイタルを埋めるために中央にスライドしたことで空いた②の二つのエリアです。①をケアできそうだったのは武藤で、もし武藤がここに対応するとすれば江坂にボールが入った瞬間か、彼が周囲を確認しながらドリブルでゆっくりと前進していたところでした。武藤が瞬時に仲間と江坂の壁パスを読み切ることは難しいでしょうが、とにかくこのスペースを埋めておけば江坂は簡単に壁パスからサイドチェンジを出せません。状況に応じて完璧にスペースを埋めることは、特にそれがトップの選手であればかなり難しいですが、考え方としては一つ目の予防策です。もう一つは②のポイントで、これはファブリシオが埋めるべきエリアです。4-4-2ゾーンディフェンスの鉄則はボールの状況に応じたスライドであり、その際にはボールと逆サイドのSHはボランチの位置まで戻ってスペースを埋めなければいけません。ここにファブリシオが立っていれば、江坂はあれほど低弾道で早いサイドチェンジを選びにくいでしょうし、江坂にとってはサイドチェンジの次の選択肢となりそうだった、柴戸の背中をとっていた神谷に対応できます。もちろん、この前の場面では浦和がゴールに迫る場面を作れており、心境的には全力で戻って中盤を埋めるというのは前の選手には難しいのだと思いますが、4-4-2ブロックで守る以上はここは徹底すべきポイントでした。実際に決まったゴールは、仮に確立を取ればこのルートでゴールが決まることはなかなか難しそうなゴールでしたが、結局このゴールが試合の趨勢を完全に決めてしまいました。

大槻監督からすれば、このゴールはリスクとして織り込み済みだったかもしれません。ファブリシオのSH起用によって②のエリアが空きがちなことは百も承知でしょうし、実際に前回起用した仙台戦でも問題となることがありました。判断としてはこのリスクよりも攻撃面でハーフスペースで受けてのターン、そこからエリア内でシュートを打つようなシーンへの期待値を信じたということでしょう。前半に彼にシュートチャンスがあったことを考えても、まったく起用を外したとは思えませんが、その代わり覚悟していたリスクもしっかりと顕在化してしまったということではないかと思います。

「浦和を背負う責任」

ゲームはこの失点を機に大きく動き出し、浦和は直後の53分にファブリシオに替えて汰木を投入。しかしその直後に橋岡→関根のパスを狙われ、関根が挟まれて奪われ所からカウンターを受け、最後はフリーで仲間に頭で押し込まれて3失点目。59分に大槻監督は今季初の3枚替えで流れを引き戻そうとしますが、最後はまたもカウンターから神谷に決められて4失点目で終戦。序盤は前節の反省を活かそうとチャレンジが見えた試合でしたが、ミスや守備組織の綻び、被カウンターへの対処など、もしかするとこれまではブロックを低い位置で敷くことで隠してきた要素が露わになった形で失点を重ねることとなりました。言い換えれば、試合展開が大きく左右したとはいえ、守備から主導権を握っていくというやりたいサッカーに内在するリスク、そして今いる選手たちでそのサッカーを実現させなければならない難しさが顕在化してしまったというゲームだったかもしれません。

戦術的な内容以上に残念だったのは、そういったリスクが顕在化したとはいえ、あまりにも脆くゲームを壊してしまったことでした。浦和は後半になってから、ビルドアップの際に左サイドに偏ることなく、2枚のCBが前半よりも距離を空けてビルドアップをスタートさせることで右サイドからの前進にも取り組んでいたように思います。また守備でもボールをロストした直後にボールホルダーにプレッシャーをかけるなど、序盤に見せていた積極的な姿勢を見せようとしていました。3枚替えの後もゴールに向かう姿勢やボールを奪う姿勢はある程度継続していたと思いますし、崩しの形は属人的だったもののなんとかしてゲームを変えようという姿勢がなかったわけではありません。しかし3失点目、4失点目の場面のように、失点につながった場面ではカウンターの局面でエリア内に数的不利が作られていたり、そもそも中盤より前が戻ってこれていなかったりと、局面を諦めてしまったか、もしくはボールに近い選手に任せたような振舞いがあったのも事実でした。またボールに近い選手に任せると言えば、ビルドアップでも相手を背負っている選手にパスを出して状況を苦しくする場面が特に終盤はよく見られました。もちろん、2失点目の守備組織の綻びや、ビルドアップで窮屈な展開になったり、次にどこにボールを運べばいいのか迷ってしまうのは戦力的にも戦術的にも未整備なことが根本的な原因であり、それはチーム作りの過程にはよくあることというのもわかります。ただそれでも、浦和レッズであれば、浦和レッズなのだから、追いつけなくても追う、不利な状況でもプレーをやめない、そして苦しくても味方を鼓舞し戦う姿勢を見せ続けてほしかったです。やっぱり、浦和レッズのファン・サポーターはそういう姿勢を大事にするんじゃないかと思います。

「浦和を背負う責任」という言葉は非常に抽象的で、何をもってそれを示すのかは正直よくわかりません。ですが僕なりにこの言葉を解釈するならば、諦めない、人に押し付けないプレーを見せてくれるということなんです。そのためには間に合わなくても走らなければいけないし、うまくいかないのが構造的な問題だとしても、それに抗って状況を変えてやろうとしなければいけないはずなんです。うまくいかない状況なら味方にもっと要求しないといけないはずだし、声を出して指示しなければいけないはずなんです。そういう姿が見えていれば、戦術的にうまくいかなくても許せるし、応援したいと思えます。

このツイートは僕自身が大敗直後であまり冷静ではなかったですが、たとえ人数制限付きであっても、ファン・サポーターが入ったホームスタジアムでは一層こういった姿勢を見せてほしいと思います。

サポーターと言えば、こういう試合で拍手しかできないというのはかなり歯がゆいなと思いました。いや、ブーイングがしたくなるとかそういうことではないんですけど、やっぱり淡白な拍手とため息くらいしか聞こえないスタジアムは悪い流れがなかなか変わらない気がするし、良いプレーがでても、歓声がそれに呼応して雰囲気を変えるみたいな要素がないのかなと思います。ひとつのシュートがチームの流れを変えるように、抜群のタイミングで盛り上がるスタジアムは間違いなくゲームに作用するし、ゲームを構成する要素の一つだなと思うわけです。そういう意味では、今節はなんだか今の状況の悪いところばかりが目立つ試合になってしまいました。

3つのコンセプトに対する個人的評価/選手個人についての雑感

というわけで、採点です。

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前節に続いてさみしい点数になりました。

「1.個の能力を最大限に発揮する」は、過去最低の3点。序盤の武藤のプレーや中盤でボールを運び続けたエヴェルトン、終盤に出てきて短い時間ながらインパクトを残した涼太郎など、良いプレーを見せてくれた選手もいたのですが、やはり全体的に浦和の強みが出せたとはいいがたく、またミスもありました。大槻監督のゲームプランニングや戦術の考え方の傾向は概ねわかっていますし、意図も理解できるのですが、やはりもっと躍動し得意なプレーを迷いなく見せてくれる選手たちを観たいと思います。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は3点。前半、特に序盤はかなり前向きにプレーできていましたし、出足鋭くインターセプトをして即縦につける、というプレーも観られました。ただやはり後半に崩れてしまった部分は観たくないですし、序盤のプレーをなるべく長い時間維持できなければ、「3年計画」で理想とするサッカーには到底たどり着かないのかなと思います。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は、少し改善した4点。特に再開後の試合でほとんど見られなくなっていたファストブレイクからゴールに迫るシーンや、ボールを奪われてから即プレッシャーに行く姿勢など、トランジションまわりの意思決定は理想とするものを目指していく方向性が感じられました。これから本格的に夏場に入っていく日程はかなりきついと思いますが、やはり前向きに守備から主導権を握り、ファストブレイクで一気にゴールに迫るというサッカーを今のレッズには期待したいと思います。

選手個人については、まず柏の選手のパフォーマンスを褒めたいと思います。クオリティを見せたオルンガ、江坂、仲間、神谷の前線は言わずもがなで、加えて組織全体を締めた大谷と中村のプレーとリーダーシップは素晴らしかったです。特に中村航輔は開始直後の武藤との1on1を阻止しゲームの主導権を浦和に握られることを防ぎ、その後もバカでかくよく聞こえるうえにタイミングが完璧で途切れないコーチングの声で柏の最終ラインを統率していたと思います。彼の声で個人的に印象に残っているのは前半30分くらいに神谷が最終ラインをカバーしたシーンで、プレーが途切れるとわざわざ名前を呼んでナイス!と褒めていました。たぶん二人の距離は15mくらいあったんじゃないかと思いますが、神谷もしっかり反応していました。ああいうコミュニケーションは、次に同じシーンがあったときにもカバーに戻らなければと思わせるし、褒めることで組織としてやらなければいけないプレーを明確にします。また周囲の選手にも彼の貢献を伝えられるという効果もあり、素晴らしい声かけだったと思います。中村はスーパーセーブを少なくとも3度は見せたと思いますが、試合を通じて途切れなかったあの声が一番印象に残りました。

浦和では、まずは柴戸のプレー、特に攻撃面でのプレーにさっそく進歩が見られました。彼は間違いなくレッズで今一番成長している選手だと思います。奪ってからの縦のキーパス、裏抜けへのロビング、ビルドアップでサイドを変える強くて速いパスなど、これまでちょっと課題かなと思っていたプレーをすぐに改善してチャレンジしてくれる、こういう選手の成長はいつも見れるものじゃないので、継続して彼の今を観ている我々は幸せだなと思います。あとは武藤ですね。試合展開もあって早々の交代となりましたが、チームにもたらせるものがあることを証明した60分弱だったと思います。適切なスペースへ走りこむ抜群のタイミングや近い選手とのコンビネーション、そして狭いエリアでのターンで一気に相手の最終ラインに仕掛けていくプレーは興梠ともレオナルドとも健勇とも違う武藤らしさだったと思いました。今日はトップでの起用でしたが、あのプレーなら右SHで起用してハーフスペースに入れても十分やってくれると思います。最後に、本当に久しぶりに浦和のユニフォームを着て埼スタに戻ってきた涼太郎。FWとワンタッチで絡みながらゴールに迫るプレーを見せていたのは彼らしくて良かったと思います。少ない時間でも惜しいシュートシーンを作りましたし、彼のように一発なにかやってくれる選手は今後も必要になると思います。あわよくば、あれを決めれば…というところ。近年の浦和では阪野がそうでしたが、あのゴールを決めていればノっていけたのに…というシュートを外してしまって波に乗れないということがないように、次の決定機は彼自身のためにも決めてほしいと思います。

 

というわけ、今節も長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。