96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

【2023シーズン】個人的に今後が気になる選手リスト

今年もこの企画の季節になりました。今日から2023シーズンの第2移籍期間(夏のウインドー)ということで、僕の独断と偏見による僕のための今後が気になる選手リストです。前置きは何も思いつかないので、さっそく行ってみましょう。

 

★長倉幹樹 :ザスパクサツ群馬 ・OMF/CF/SH・1999年10月生(23→24歳)177cm/72kg・右利き

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知ってた案件?期待してたくせに。

限られた戦力であってもチームワークと粘り強い戦術遂行によって期待以上の成果を上げている今季の群馬ですが、その群馬にあって出色のパフォーマンスと重要度を誇っているのがこの長倉です。浦和ユースから順天堂大学卒業後、Jクラブ入りが叶わず2022年に関東一部リーグ東京ユナイテッドFCに加入。同クラブで半年間プレーすると、昨季大槻監督から引き抜かれる形で群馬に加入。昨季は後半戦6試合で2得点と結果を残し、ノンプロからやってきた助っ人の活躍はちょっとした話題になりました。

そして今季、長倉は大槻ザスパにとっては替えの利かないエース級の存在感を見せています。今季の群馬は4-4-2をベースに保持・非保持それぞれで多少変形しながらプレーするのが基本的な戦術となっていますが、特にボール保持では長倉の存在がチームのパフォーマンスに大きな影響を与えています。基本ポジションは4-4-2の左トップで、チームが3-4-2-1に変形すると左シャドーのような立ち位置に。群馬は左SBの中塩を起点に左でボールをキープすることが多いのですが、相手ボランチの左脇に降りてきてボールを引き出し、高いキープ力で全体が前進する時間を作るプレーができるのはチームで長倉だけ。さらに長倉の場合そこからターンして独力で盤面をひっくり返し、一気に相手ゴールになだれ込むような局面を作れるのが強く、彼がいるかいないかで群馬の相手エリア内への侵入回数は大きく変わっているはずです。

彼のプレーで最も特徴的なのは種類が豊富なターンの技術で、特にバイタルエリア付近で見せる股抜きターンは初見殺しのシグネチャームーブ。ほかにもトラップで回転をかけつつ先にボールを逃がしながら反転・加速したり、スペースがない中でも身体の下にボールを収めてターンしたりと、身体ごと潰されなければ高確率でボールを収め、前に進めてくれる便利な選手です。J2でもめちゃくちゃ上手い選手が普通にプレーしている昨今のJリーグですが、彼のようにいろんな種類のターンを平然と繰り出せる選手はあまり多くないと思います。で、これは個人的な想像なのですが、なぜこうしたプレーができるかというと、たぶん彼は全力でプレーをしていないのだと思います。正確に言うと、自分のプレースピードを意識的にコントロールしているのではないかと。保持でも非保持でもそうなのですが、彼のプレーを見るとジョグが非常に多くて、普段の姿にはキレをあまり感じません。ただ必要な局面、特に相手をうまく外せた瞬間やプレスがはまりそうな瞬間にぐいっと加速して、しかもそれが結構速い。40%⇒100%の出力を無段階で変速するような感じで加速するのですが、その使いどころは意識的に選んでいるのではないかと感じます。とはいえプレスバックも含めて運動量も多く、守備での貢献が大きいのもプラスポイント。まとめると、ターンの技術とスピードコントロールの巧みさ+運動量という武器の持ち合わせ方が彼のユニークネスかと思います。

ちなみに、シーズン序盤は中盤に降りるだけでなく相手の左SBの裏へ抜け出しロングボールを引き出すようなプレーも多かったのですが、リーグが進むにつれて群馬のビルドアップ手法が研究・対策されてしまったこともあるのか、最近の試合では中盤に降りる頻度と深さが増している印象。このあたりの裏抜けと中盤落ちの頻度やバランスはチームが変わればまた調整されるとは思いますが、もう少しバイタルエリア近くの仕事に集中させることができればわかりやすい数字ももう少し出せそうです。

大きな課題としては最近怪我なのかコンディションなのか稼働率に問題を抱えていることで、ここ1,2カ月はいたりいなかったりの状況。群馬としては彼がいないとできないプレーが多くなってしまうのでなるべく使いたいでしょうが、長期離脱となるのも怖いので歯がゆいでしょうね。対戦相手としてはまず抑えるべき選手なので、最近はマンマーク気味に降りるプレーを監視されていたりと厳しいアプローチが増えているというのも一因かもしれません。またターンしてオープンな状況を作り出した後にラストパスなのかシュートなのか、決定的なプレーを完成させる部分のクオリティも、特に上のステージでプレーするなら課題になるかなと思います。このエントリ時点での今季の公式戦の成績は19試合1658分出場で4ゴール。戦術兵器と言えるほど群馬にとって重要な存在なのに、数字上はそこそこの選手という感じです。

全体的な印象としては、この夏というよりも今季Jリーガーとしてフルシーズン戦ってみて、その評価でステップアップするのが妥当でしょうか。J1の真ん中以上のクラブでもロールプレーヤーとして十分活躍できると思いますので、大怪我がなければ未来は明るそうです。イメージとしてはセレッソの加藤陸次樹みたいな感じの活躍ができるのではないかと思います。で、レッズへの移籍はどうなんだということですが、貴重なHG対象選手というのが一つポイントです。彩艶と敦樹の海外移籍なんかがあると2024年シーズンに4名必要なHG枠対象選手がひっ迫してしまう(関根、荻原、堀内、早川くんでギリギリ+レンタル組の去就次第)ので、そういう意味でのボーナスポイントもついた獲得というのはあるかもしれません。ただここ最近のフットボール本部の動きをみると、日本人選手は相当の実績(日本代表級)を持った選手を獲得していく方針があるようなので、実績という意味では厳しいところ。編成の全体的な動きの中で優先度が敏感に上下しそうな感じがします。個人的にはこういう選手は手元に置いて損しないと思うので、是非獲得してほしいですが、この夏に動くと群馬がめちゃくちゃに厳しくなるので冬がいいです。

★藤本一輝 :大分トリニータ ・WG/SH/WB・1998年7月生(24→25歳)180cm/70kg・右利き

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今季J2で観た中では、長倉を除けば最も何かを感じたアタッカー。主戦場は4-4-2でいえば左SH、大分のフォーメーションではたまに3-4-2-1の左シャドーでもプレーしていると思います。最大の特徴は左サイドのペナ角付近で繰り出せるアタックの多彩さで、外に張って1on1は朝飯前、内側を取ってターンもできるし、近くの選手とのワンツー・コンビネーションも問題なし、さらには縦にえぐってクロスだけでなく中央に侵入して強烈なミドルありとまさになんでもあり。Football LABのドリブルチャンスポイントは堂々の19/20で、まさに今季のJ2最強ドリブラーの一人と言っていいでしょう。左サイドで攻撃的なプレーであれば本当に何でもできるので、2列目の選手がゴールへ向かう迫力を高めていきたい浦和にとっては気になる存在ではないかと思います。また日本のアタッカー/ドリブラーには珍しい180cmの高身長も大きなポイント。ヘディングがめちゃくちゃ強いというわけではないですが身体は分厚いですし、逆サイドからのクロスに対してゴール前に飛び込んでいくプレーも見せており、スコルジャ監督の下で総合力の高いアタッカーとして育てていく価値がありそうな選手です。浦和に所属した高身長ドリブラーと言えば永井雄一郎や原口元気、汰木康也なんかがいますが、攻撃的なプレーのイメージは浦和時代の元気に近いかもしれません。

キャリアは鳥栖のU-15⇒U-18昇格を蹴って藤枝明誠高校⇒鹿屋体育大学。大学時代には天皇杯で名古屋相手に強烈なシュートをぶち込み勝利するなどプロ相手への結果も残しており、プロ入りにあたっては鳥栖からの出戻りオファーも含めた争奪戦だったとのこと。大学3年生の2020年から大分の特別指定選手としてプレーしており、大分では4シーズン目。クラブの昇格有無もキャリアには影響するでしょうが、昨季・今季と出している結果、見せているプレーからしてもそろそろステップアップを意識する頃かなと思います。もともとはトップでプレーしていたみたいですが、この先のキャリアを考えたら左SHを極めていくのが最も到達点が高くなりそうです。見ている感じ、攻撃に関しては裏抜けが多くないくらい(本人も認めるように足元でもらうのが大好き)しか気になるポイントがないですね。

「リハビリ中は自分の身体をより自由に思いのまま動かせるように、コーディネーション系のトレーニングを集中してやりました」。その結果、復帰後はより自分の意図する身体操作ができるようになり、ドリブルのキレも増した。同時に復帰後、チームのフォーメーションが4-4-2から3-4-2-1に変わり、藤本は2トップの一角から2シャドーの一角にポジションチェンジしたことも大きかった。

「1列下がったことで、新しい自分が見つかりました。FWも全然問題なくやれていたのですが、最前線だと『間で前向きにボールを受ける』ことがあまりないんです。僕は足もとでボールを受けてどうにかするタイプなので、間で受けるとプレーの選択肢が一気に広がるんです。細かいタッチで素早く前を向いて、ドリブルなのかパスなのか、リターンを受けにいくのか判断しやすくなる。これに気づいたことで、よりいい状態でボールを受けるために、常に周りを見ないといけないし、FWの動きを生かすためのポジショニングなどを考えるようになりました」

 FWで足もとにボールを受けるシチュエーションはどうしても後ろ向きだったり、DFに寄せられている状況が多い。そうなるとトラップをしてから前を向かねばならなかったり、ドリブルで剥がさないといけないシチュエーションが多くなる。だが、シャドーをやることで相手のディフェンスラインと中盤の間で前向きにボールを受けることができる。視野を確保した状態でボールを受ければ、彼ほどの一瞬のスピードと技術を持った選手であれば、選択肢がいくらでも湧いてくる。

「分かりやすく言うと、『後出しジャンケン』ができるようになったんです。相手が近づいてきたらシンプルに叩いてまたもらい直せばいいし、相手が来なかったらドリブルで運んで、アクションをさせてその裏を取る。もちろんそれまでも駆け引きはしていたし、相手を見てやってはいたのですが、FWの時は対峙する相手しか見ていなかった。シャドーになって対峙する相手だけではなく、その背後やそばにいる2人目、3人目の選手がどう動いて、何を警戒しているのかが見えるようになったんです。そうなるとプレーの選択肢の幅も判断力も磨かれて行くのが分かるし、どんどん自分の引き出しが増えて行く感覚になるんです。」

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では課題は何かというと、守備とスタミナかもしれません。前に出ていくプレスは積極的ですが4-4-2ブロックの一角として埋める、ズレる、パスコースを消す、目の前の相手を止めるといったプレーで目を見張るものはなく、特に今の浦和でプレーさせるのであれば最初は穴をあけがちになりそう。大分でも相手のSBやCBにプレスをかけて前に出るもののそのまま3トップのような立ち位置にとどまって背中を使われるシーンが散見されます。ただ逆に言えばそれはアタッカーとして彼がどこでパワーを使うべきかという判断に基づいたものでしょうし、大分でチームから要求されるプレーが浦和とは違うのは当然なので、この点だけを切り取って神経質になる必要はなさそう。むしろかつての汰木がそうだったように、近年の浦和がサイドアタッカーに求める高くて幅広い攻守の要求をこなせるようになることで総合力の高いアタッカーとしてレベルアップする伸びしろとして捉えてもよいのではないかと思います。

というわけで、個人的にはこの夏に狙ってみてほしい選手の一番手がこの藤本一輝です。本物が帰ってこないなら和製原口元気にロマンを託しましょう、西野さん。

島村拓弥 :ロアッソ熊本 ・SH/OMF・1999年3月生(24歳)170cm/59kg・左利き

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昨年ほど熊本の試合を観ることは多くないのですが、あれだけ選手を抜かれても(抜かれたからこそ?)また面白い選手が出てくるのが近年のロアッソの充実度、そして大木監督の指導の面白さを示しているのではないでしょうか。熊本の王様・平川怜やU-17の大砲・道脇豊、左利きの右WB大本祐規など面白い選手はたくさんいますが、個人的にビビッときたのはこの島村です。

岡山県生まれで京都のU-18からトップ昇格し、岐阜やブラジル、セレッソU-23へのレンタル修行を敢行。しかし芽が出ずに2021年にFC今治へ完全移籍。J3での戦いぶりが認められ今季から熊本に完全移籍。今季すでに22試合に出場しており、杉山が抜けた3-3-1-3の3トップの右での出場が多くなっています。

プレー面の特徴は、左利きのドリブル+パス+オフザボール。特にオフザボールのランニングの回数が多く、ボールプレーヤーですがオフザボールでもピッチ上の局面を動かせるのが面白いです。熊本自体が流動的というか、多少ポジションを捨ててでも局面を動かすようなプレーを許容するチームなので、こうした点が島村の特徴にはまったのかもしれません。試合を観ていると中央はもちろん動き出しの流れのまま左サイドでプレーするシーンもあったりします。オンザボールではシーズン序盤はドリブラーだなあという印象でしたが、ここ最近は引いて受けてターンから鋭い縦パスやスルーパスを前線に刺すことも多く、ちょっとプレーが変わってきているかも。わりと厳しめのコースに刺していく攻めのパスが多いのですが、ボールを受ける⇒ターンする/ドリブルで相手を外す⇒縦に刺すまでのテンポが良く、いつ周りの状況を把握しているのか映像だけではよくわからないこともあります。ドリブルはどちらかというとぬるぬる系で小さいフェイントを入れながら相手の足を止めてズレたところを抜いていくのが多く、右サイドの深いところでポケットに侵入していくのが得意な感じ。当然縦から右足でもアシストをつけています。藤本一輝に比べれば万能アタッカーの色が強いですね。

これだけ面白い選手がなぜ京都であまり評価されなかったのか、当時のことはよくわかりませんが、今季の活躍はさらなるステップアップを可能にするレベル。攻守にわたってよく走りボールに食らいついていく選手ですし、左利きですがボディバランスが崩れている感じもなくボールを受ける場所によってできないことがあるタイプとも思えないので、「みんなで頑張る」系のチームが攻撃のアクセントを求めて狙うというストーリーがありそうです。ただ前述の通りポジションに縛らずに流動的に走り回らせるほうが気持ちよくプレーできるタイプっぽいので、ポジショナルなやり方を意識しているチームだと彼の良さを活かしきれないかも。それと、たくさん走るが故か体力的な交代が多いと思うので、90分を任せられる選手にはまだなっていないというのもポイントでしょうか。

もしも浦和でみることがあるなら右SHでの起用になりそう。いきなりOKBを脅かす選手になるとは思わないですが、OKBのステップアップということがあるならば後任候補としては面白そう。当然、ボール非保持時の振る舞いには入念な仕込みが必要になるでしょうが、オンザボールでもオフザボールでも局面を動かしてくれる選手は貴重だし、前線を縦横無尽に動きながらプレーするアタッカーはスコルジャ監督も好きそうです。最近のJリーグではかなり珍しいクリクリの坊主頭が完全に似合っているので、ビジュアルは絶対にこのままでお願いします。いい選手です。

榎本啓吾 :藤枝MYFC ・WB/SH・1999年9月生(23→24歳)165cm/62kg・右利き

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今季初めてのJ2リーグを戦う藤枝MYFCの左の翼。藤枝では右WBの久保藤次郎のほうが数字的にインパクトのある活躍(今季既に5ゴール8アシスト、ちなみに榎本は2ゴール3アシスト)をしているので注目されていると思います(実際凄いです)が、個人的には試合を観ていて榎本の良さが印象に残ることが多かったのと、久保は名古屋の下部組織出身で名古屋ならWBでそのまま起用可能なためどうせ狙ってると思うので僕としては榎本の方をチョイス。

藤枝はクラブ一丸となって自分たちのスタイル構築にこだわっており、基本的には前に前に繋いで攻め込んでいくサッカーを志向しており、特にポジティブトランジションではガンガン相手陣地に雪崩れ込んでいくバイブス強めのサッカーをしています。そんな藤枝のサッカーにあって、榎本は3-4-2-1の左WBが定位置ですが、攻撃時にはほぼ左WG/左SHのような役割でプレーしています。特徴は一言でいえば和製相馬勇紀で、かわいい顔してカットインからパンチのあるキックをぶち込めるのが最大の魅力です。相手陣地でのオンザボールの第一選択肢はほぼ全て"勝負"なので、彼のプレーには百戦錬磨の勝負おじさんたちもにっこり。トップスピードがどうかはよくわかりませんが、加速は間違いなく速いので相手を押し込んだ後の狭い局面でも活躍できそうなのもよいところです。ミドルシュートを積極的に狙う選手で、特にカットインからファーに巻いたシュートはパワーもコントロールも魅力的。本家相馬のように右サイドに回されたりSBまがいのことをやらされたりしても大丈夫かというとそれはない感じですが、少なくとも左WG/SH/WBでのプレーは大丈夫でしょう。藤枝のサッカーはどうしても出入りが多くなり慌ただしいのですが、そんな中で自陣に戻り速攻に加わりと元気に走り回っている選手なので、強度や理不尽を求められる環境でも結構走ってくれそうな気がします。

千葉出身でキャリアはジェフU-15⇒U-18⇒東海学園大⇒藤枝。この活躍を見るとジェフサポの皆さん的には帰ってきてくれ!となってそうですが、J1及びJ2上位クラブはしっかり彼のことを見つけていると思うので、夏はともかく今季オフのステップアップの可能性は高いんじゃないかと思います。こういうタイプは控えでもベンチに置いておけば短時間で何か起こしてくれるかも的な考え方ができるので、どういうチームでないと…ということはないですが、イメージしやすいのはやはり3バックを採用するクラブでしょうか。札幌なんかは間違いなく好きなタイプでしょうし、柏好文に「全部突破してくれ」とはさすがに頼みづらくなってきた広島も面白いかもしれません。浦和で彼を見ることがあれば左SHということになりますが、そうなった場合は最近内側で技術を活かす道を見出しつつある関根とは違うタイプの選手として使い分けられることになりそう。走力+突破+ミドルシュートにステータス極振りしてる感じの選手なので、システムである程度助けてあげる必要があるとは思いますが、ハイライト映えする選手でもあると思うので意外とスルスルっとステップアップするかもなと思ったり。最近はカットインをあからさまに切られており苦戦しているシーンも見られますが、ハマったらえぐい系なので、藤枝のようにデメリットを飲み込みつつもうまく活かせるチームで観てみたいです。

高橋勇利也 :ザスパクサツ群馬 ・DMF/CB/SB・1999年3月生(24→25歳)181cm/72kg・左利き

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敷島にすい星のごとく現れたロマンの塊。このエントリを書いている時点で、今季のスタメン・フル出場は直近の4試合のみ。甲府戦では左CBでの出場でしたが、その前の3試合にボランチとして出場し、ボランチとしてはそれが唯一のキャリアです。それでいてすでに2得点。まさに大槻監督による魔改造がバチバチにハマったと言えます。

本職は左SBで、大卒3年目。ファジアーノ岡山U-15⇒東北高校(仙台)⇒神奈川大学というちょっと不思議なキャリアで、群馬に新卒加入するも2021シーズンは9試合、2022シーズンは4試合出場とリーグ戦ではほぼプレーできず、大槻監督就任以来の群馬のゲームは7割以上チェックしている僕もよく知らない選手でした。プレー面の特徴は左利きを活かしたビルドアップが得意なバックスという感じで、出場機会が伸びなかったのはおそらく対人守備や背後への対応、クロス対応あたりに問題があったのでしょう。プロ選手としては線も細いですし、スピードがあるという印象もないので、強度の部分に不安があって使われなかったのだと思います。群馬には今季同じタイプの中塩が加入して登録上左SB⇒可変して3バックの左でビルドアップ係を担っていますが、高橋としてはこの役割が一番やりたい形だったかも。特徴が似ていることに加えてキャリアで勝り、大槻監督が育成時代からよく知る中塩との競争は彼にとって少し厳しかったのかもしれません。

しかし!この選手をボランチで使うとどうでしょう!夢に次ぐ夢、とめどなくあふれるロマン!これが夢にまで見た左利き大型ボランチか…と全国中盤真ん中愛好会では話題持ち切りとなりました。スピードや強度の不足は自陣低い位置に引き込んでブロックを張る群馬ではうまく隠せる種類の欠点となりますし、それよりもビルドアップでボールを逃がせる技術の高さが目立ちます。本当にこれまでタッチライン際でプレーしていたのかと疑わしいくらい背後からのプレッシャー感知もよくできていますし、周囲の状況認知にも問題はありません。さらに彼の魅力はよくわからない攻撃参加センスで、ボールを捌いた後にゴール前に飛び込んでいくダイナミックさを見せたかと思えば点を取って帰ってくる。この目に見えるロマン、これこそがこの企画に必要なものです。というわけで実績は0に近いのですが勢いだけでここに選出しておきます。

ちなみに、謎の攻撃参加はボランチとしての経験があまりない故に自分が出て行った背後が怖いという感覚が単に薄いだけかもしれません。周囲と協力すればなんとかなりますが、個人で相手からボールを引きはがすような球際の強さも今のところ見られません。とはいえ左利き高身長で技術のあるボランチという属性は非常にユニークですし、さらに後ろのほうで繋いでいるだけでなく前に出て得点に絡めるというのは利き足に関わらず貴重な特徴です。身体なんて今からでもなんとかなるでしょうし、プレー強度はステージとともに基準が上がれば問題なし。となればここは大槻監督の夢見たロマンを引き継ぎ、浦和レッズが責任を持ってこの改造を成功させるしかないのではないでしょうか。

まじめな話、大槻監督は今季天笠泰輝をボランチにコンバートして起用してきたように、バイタルより前でフィニッシュに関われる中盤中央というのを模索してきたように感じます。たしかに群馬の試合を観ていてゴール前に絡める迫力あるボランチは欲しいよね、という感覚は僕にもありましたので、このチャレンジには非常に納得感があります。また今季の群馬は右ボランチに左利きを用意することでボール保持の安定を狙っている節もあり、そういう意味での抜擢だったのかもしれません。さすがに3試合2ゴールと結果が出ているのはビギナーズラック的な何かを感じてしまいますが、これまで堅いチーム作りで結果を出してきたもののシーズンが進む中で戦術も読まれ、対策を上回っていく起爆剤が必要なステージに差し掛かっていましたから、高橋のボランチ起用がハマれば群馬のチームとしてのスケールがもう一段大きくなるのではという期待感もあり、今後に注目しています。浦和としても、敦樹が海外に移籍するのはもはやタイミングの問題。大型でボールスキルに優れたBtoBタイプのCHというのは探しても簡単に見つかるものではないので、単純に考えれば外国籍選手の補強というのが手っ取り早いのですが、高橋のような国産ロマンをリストに載せておくのもいいんじゃないかと思います。敦樹と同学年ながら現時点でのキャリアの差は歴然としていますし、もしかしたらそのうちすい星のごとく消えていくかもしれませんけど。

東俊希:サンフレッチェ広島 ・WB/SH/CH・2000年7月生(22→23歳)180cm/69kg・左利き

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ときめき、それは人の意外な一面を見たときに感じるもの。今季のJ1でときめいた選手と言えば東です。

サンフレッチェ広島ユースから昇格5年目の生え抜きで、U-15からU-22まで歴代の世代別日本代表の常連でもあるエリート。もうすぐ23歳で大卒一年目相当の選手ですが既にJ1通算100試合をゆうに達成しており、僕がよく使う基準で言えば次は海外に行くべきレベルのキャリアです。とはいえ、正直言うと僕はあまり彼のプレーがものすごいとかユニークだと思ったことはあまりなくて、クロスが武器で技術はあるけど単騎突破はあまり心配しなくてよいタイプの左サイド、くらいのイメージしかありませんでした。

それが今季J1第5節のvs柏戦、マジで驚きました。CHでプレーしてる。そして面白い。もともとキックの種類が多い選手でストレート系のボールも巻いたボールもふわっとしたボールも繰り出せるのですが、特に中盤の真ん中からふわっとした浮き球を前線の裏に落とすプレーを観ていると柏木陽介的なセンスを感じます。狭いところでつけるパスも次のプレーをイメージしながらスムーズに出来ているし、意外性のある攻めたパスが出せて判断も速い。サイドの選手なので真ん中ではターンがどうかなと思うところですが、それも柏戦ではあまり問題にならず、むしろ身体をぶつけられてもボールを隠しながら無理やりターン出来ているシーンもあり、あまり気にしていませんでしたが180cmのサイズがある良さというのも発揮できていたのではないかと思います。左利きらしく逆足でのプレーはあまり回数も精度もありませんが、左足のタッチは変幻自在で足裏、アウトサイドなんでもあり。またボール保持時、特にポジティブトランジションで空いたスペースに入り込んでいくポジショニングはセンス抜群。もともとサイドでも逆サイドまでよく狙ってクロスを供給する選手でしたので、中央でも視野の広さと深さを活かせるのかなあと思わせます。とにかく、左WBとしてピッチの端っこにいるよりも魅力的でユニークな選手に映りました。調べたら昨年からCHで起用されるようになったらしいのですが、全然知りませんでした。

ただ残念なことに今季CHとしての出場はそこまで多くないようで、件の柏戦に続く第6節鹿島戦の後半途中まで、その後少し開いて第12節の福岡戦の後半から、続く第13節の神戸戦の前半、さらに開いて第20節の鹿島戦のみとなっているようです(雑な調べ方をしているのでもしかしたらもう少しあるかもしれませんが)。おそらくこれは広島のスカッド事情と東自身の真ん中の選手としての課題の両方が要因で、そもそも広島には川村、野津田の左利きコンビ、松本泰志に加えて大卒ルーキーの山崎大地も中盤で起用されることがあるということで、中盤中央に使える選択肢がかなり多いというのがあります。左利きCHという属性は本来レアなはずなんですが、川村と野津田を擁する広島は贅沢です。彼らを差し置いて中央の経験が少ない東を使うかというと…みたいな感じかもしれません。加えて、広島は対戦相手によってなのか実験なのかいろいろとフォーメーションを変えてプレーするし、そもそも左WBで東より良い選択肢を見つけきれていないという事情もあるかもしれません。

東自身の、中央の選手としての課題としてはやはり非保持時のポジショニングがあると思います。ボール保持時のポジショニングと表裏一体の部分があるとは思いますが、無意識っぽくボールに吸い寄せられて局面に食いついていく傾向が強く、特にバイタルを埋める意識は希薄に映ります。まあチームのやり方やその時のボール周辺の状況もあるのですべてダメというわけではないですが、やはり最終ラインの前を盛大に空けたまま放置する傾向があるのは、特に僕が今季の浦和を見ているからかもしれませんがちょっとそわそわします。まあサイドが本職の選手をわざわざ捕まえて中央で埋めるスペースを埋めていないと細かいことを言うのは野暮な気がしますけど。魅力的ならそれでいいんですよ。やってりゃ慣れるだろうし。

プレー以外の面では、世代別代表経験も多く10代からJ1での経験を積んでいることからもわかるように物怖じしないメンタリティは強みの一つ。色々見ていると結構強気な発言があったりプレー選択も強気なので、そういう感じなのかなと思います。ただ昨季の7月に左下腿コンパートメント症候群と診断され、筋肉壊死の可能性すらあった大怪我から7ヵ月かけて戦線復帰してきた苦労もしているということで、怪我でキャリアにはダメージがあったでしょうがいろんな意味での経験値は積んでいます。そんなわけで、これからいろんなバランスがとれてきて大人になったらもう一段グッと伸びるみたいなことも期待できそうかなあと思ったりします。

というわけで、ルーキーイヤーからFKのキッカーを任される左足のキック精度、バリエーション豊かな左足のタッチ、ボールに関わるポジショニングに加えて180cmのサイズもあるということで、左サイドの選手としてよりもCHとしての東にユニークネスを感じています。尖った攻撃センスのある中央の選手として、なんならノリ重視でIHとかトップ下でもいいと思うので、どんな選手になれるのか見せて欲しい、そんな意味での選出でした。広島の生え抜きですし別に移籍してほしいとかそういうわけではないですが、一つだけ言わせてもらうと大原サッカー場は比較的通いやすいですよ。

西久保駿介 :ジェフユナイテッド千葉 ・SB・2003年7月生(19→20歳)178cm/67kg・右利き

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まだ前のやつが治ってないのに強行出場して新しい怪我をするビッグゲームジャンキー酒井、左サイドから連れてこられた北関東たち、なぜか評価の低い馬渡、どこまで信用していいかわからない帰ってきたランニングマンを使いまわす今季の浦和レッズの右SB事情ですが、今の選手たちもいいけど来期以降はちょっと新たな可能性を見てみたいと思っているファンは多いことでしょう。

ということで右SBは誰かいるかなかといろいろ考えながら今季のJリーグをウォッチしていたのですが、ここではジェフの身体能力お化けをチョイスします。実際のところ、J1・J2を見渡してもユニークな特徴・魅力があって年齢的にも将来性のある右SBというのはそこまで多くありません。経験がものをいうからでしょうか。そりゃいい選手はたくさんいるんですが、じゃあ川崎の山根選手を獲得しようといっても、リアリティというか、ちょうどよく夢見られそうな感じがないじゃないですか。この企画には「そう言われるとなんか獲得したいかも」と思えるラインの現実感が必要なんです。そこで西久保です。

西久保は川口市出身で三菱養和⇒ジェフという選手経歴。特徴は何と言ってもスペシャルな身体能力で、走力と跳躍力は特に魅力的。特にヘディングがめっちゃ強く、空中でリアルに停止するタイプのジャンプを見せてくれます。またロングスローが投げられるので、ジェフサポはよく西久保が投げたロングスローを西久保にヘディングしてほしいと夢見ているそうです。残念ながらその夢はかないませんが、言っていることはわかります。SBとしてのプレーはわりとスタンダードで、大外の上下動がメイン。クロスはワイドオープンからアーリー気味に入れる種類のものが多く、千葉のやり方なのか本人の好みなのか深い位置をえぐってのマイナスのクロスはあまり見ないかも。キック精度は若干安定感に欠けますが、うまくミートした時にはかなりいいボールが入ってくる印象。一人で対面の相手を外すキレはあまりないですが、相手陣地ペナ角付近まで毎度毎度詰めてくるタイプの走力は持っているので一生右サイドを上下動をさせるキャンプ用品的なハードユースで彼の特徴を活かしていきたいところ。

SBの跳ね返す力、1on1での対応力なんかはスコルジャ体制になって浦和では非常に重視されているところなので、西久保のようなフィジカルと将来性のあるタイプは浦和にとって面白い存在になるのではないでしょうか。「上手くなれ」と「高く跳べるようになれ」でいけば「高く跳べるようになれ」のほうが難しそうなので、高く跳べる人を上手くするというアプローチがあってもいいかなと思います。ロングスローも今の浦和にはない武器ですし、酒井や明本といった良いお手本がいるうちに若手SBを獲得してトップレベルのなんたるやを見せておくのは悪くないのではないかも。ただ浦和レッズさんとしては同世代に下部組織出身で現在明治大学一年、西久保と同じく3月のU-20日本代表トレーニングキャンプにも召集されている稲垣くんがいることも忘れるわけにはいかないので、そのあたりは考えどころになりますけど。何でもできる選手ではないですが、特徴があって面白い選手なのでしっかりキャリアを積んで上に上がってきてほしい選手です。

 ★須貝英大:ヴァンフォーレ甲府 ・SB・1998年10月生(24→25歳)172cm/67kg・右利き

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近年グローバルレベルで最も大きな課題となっているのはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰及び世界的なインフレ、半導体不足、そして雑に使い倒せるSB人材の欠乏であるというのは小学校レベルの常識ですが、その一つはこの須貝英大が解決できる可能性があります。

明治大学からヴァンフォーレ甲府に加入し3年目。10月生まれなので今年で25歳になりますが、昨季までに2年間で公式戦68試合出場で6得点、今季もこのエントリを書いている時点では公式戦全試合にスタメン出場し26試合出場3得点と今季中の公式戦100試合・10ゴール達成を目前としています。浦和ファンにとって比較しやすいのは同じく大卒SBの宇賀神友弥で、彼の浦和時代の成績が12年間で361試合出場・24ゴール。ウガくらいの稼働率でウガよりも1.5倍得点能力が高いSBと思えばおおよそ間違いではないと思います。SBだけでなくWBとしての実戦経験も十分にあるのも似ていますね。

須貝のプレー面での特徴は上下動を連発でき対人にも強いタフネスはもちろんのこと、両サイドでプレーできる点にあるかと思います。オンザボールで圧倒的に違いを作れるタイプではないですが、ある程度のスペースがあれば両サイドで縦突破を図ることができるので見ていて気持ちの良い選手です。ゲーム中の選手交代に合わせてサイドを変えてプレーすることも多く、甲府の監督としては須貝が両サイドでプレーできることで試合中のサイドの味変を容易にしたり編成上の歪さを吸収させたりと采配の幅が広がっているはずです。今季のプレーを全て観たわけではないのですが、感覚的には左サイドでプレーするときはアタッカーのような位置を取りつつ逆サイドからのクロスに飛び込むためゴール前に飛び込むような意識が、右サイドでプレーするときはよりSB的に内側と外側を使い分けた上下動からのクロスの意識が高いように感じます。ただ、チーム事情や戦術によっては右サイドの低い位置に残って3バックの一角としてビルドアップに参加するパターンがあり、その場合は大きな違いを見せられていない印象。なんでもやってくれる選手だとは思いますが、やっぱり一番の魅力は後ろから空いたスペースに突撃させることだと思うので、J1でプレーしてもらうのであれば戦術的なタスクを山盛りにするのは良くなさそうではあります。

ピッチ上のプレー以外の面では、彼のキャプテンシーを語らずにはいられません。以下の記事に詳しく語られていますが、自分にも周囲にも厳しく、普段の振る舞いからチームを引っ張る人間性タイプのキャプテンで、甲府でも試合の状況に応じて身体を投げ出し周囲を鼓舞するなど、まさに「責任」という言葉がぴったりの選手です。

「基準づくりは高校生からずっと意識してやっている。周りに指示するためには自分がしっかりやらないといけないし、自分ができていなかったら説得力もなく、みんなもついてこないと思う。自分はどちらかというと、熱くなってチームのボルテージを上げるタイプではない。やるべきことをやってチーム内での基準をつくり、みんなを正しい方向に引っ張っていくというキャプテン像」

(中略)

 2021シーズン、ヴァンフォーレ甲府でプロサッカー選手としてのキャリアをスタートする。将来、もしキャプテンを頼まれたとしたら?という問いに須貝はこう答えた。

「やりたい。他の人にしてくださいとは言わないと思う。もし、やってくれと言われたら、任される以上は自分もやりたいし、チームに貢献したいという強い気持ちもある」

 悩むことなく即答した本人から強い意思を感じた。高校時代から時に厳しくチームメイトを鍛え上げ、その厳しさを自らにも与えることでさらに成長し、明治大では強いプレッシャーをはねのけてタレント軍団をまとめ上げた須貝のキャプテンシーは、誰も疑う余地がない。

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世代的には佐藤亮、森下龍矢、中村帆高、安部柊斗、瀬古樹ら選手の質が非常に高かった世代の一つ下で、同期に小柏剛、常本佳吾、坂本亘基、佐藤凌我、蓮川壮大ら。明治大学サッカー部主将の系譜で行くと俺たちの柴戸⇒俺たちの岩武⇒俺たちの佐藤亮⇒須貝と続きます。もう決まりでしょう。獲得です。とはいえ、大学4年次に他クラブからのオファーもある中で地元山梨を選んだ熱い選手なので、タイミングを考えずにオファーしても移籍は実現しないはず。今季の甲府には十分昇格の可能性がありますし、さらにはACLもあるとなると、夏の移籍はないとして冬ですらステップアップは甲府の状況次第かも。

プレースタイル、責任感あふれる人間性、両サイドで使える便利さ、どれをとってもぜひぜひ浦和の男に仕立て上げたい逸材です。甲府の皆さんから愛されまくってるのは知ってますが、君には浦和レッズでJの頂点、アジアの頂点、そして世界に挑むという選択肢もあります。ご検討のほどよろしくお願い致します。

 安藤智哉:大分トリニータ ・CB・1999年1月生(24→25歳)190cm/84kg・右利き

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圧倒的な肉感、それが長らく日本サッカー界に欠けていたものでした。190cm/84kgのダイナマイトボディにふてぶてほしいプレーの所作、安藤智哉なら日本サッカーに長らく欠けていた圧倒的肉感を補完できるかもしれません。

2021年にFC今治でデビューし、昨季はJ3ベストイレブンを受賞。今季から大分トリニータでプレーする成り上がり株です。当然大きな魅力は体格を活かしたパワフルなディフェンス・空中戦なのですが、ボール保持でもオンザボールのプレーを怖がっていない点が特徴的。フィジカル+ボール保持で言えば山形→鳥栖にステップアップした山崎浩介に以前注目しましたが、安藤は山崎の特徴をさらに尖らせた感じと言えるかもしれません。さらに言えばセットプレーではクロスに高い打点で合わせるダンプカーヘッド・ボムを繰り出すなど攻撃面での迫力も魅力。

今季は開幕前から注目度が高く、大分関係の記事でも期待されていたのですが、開幕戦で先発したあと数試合は出場なし。経験不足を懸念されたのかと思いましたが、どうやら怪我だったようです。最近は安定してピッチに立っており、下平監督もチームの柱として期待・信頼をしている様子。

一方で、今後J1で闘うことを考えた時に不安要素になりそうなのはクイックネス。まっすぐ走るのは速いと思うんですが、方向転換は苦手そう。前に出て一発で外されたり、予想外のプレーをされると即無力化されてしまう傾向があり、テクニカルなドリブラーへの対応がどうかは気になるところ。この辺りは守備者としての経験値みたいなものも関係していそうです。またボール保持を怖がってる感じはしないのですが、パススピードがあまり速くないのと前にスペースがあっても運んだり対面の相手を寄せたりしようとする意識があまり見えないのもプレーするチームによっては重たい課題となるかもしれません。

地元は愛知県で岡崎城西高校⇒愛知学院大学と一貫して県内でプレーしており、もしかしたら地元愛が強いタイプかもしれません。タイプ的にも名古屋グランパスさんが気にかけていそうな選手かなと思います。でも名古屋は吉田麻也も気になるでしょうし、名古屋のフロントは悩ましいところかもしれません。もういっそ両方行っちゃえば、という感じもしますけど。闘莉王2世として育ててもいいし、育てるのが面倒くさくなったら肉壁として最前線に置いておくのもいいかもしれません。ボスからの攻撃を全部受け止めてくれそうなので、その間に強力な魔法をぶち込みましょう。夢とロマン、ポテンシャルは計り知れないので、浦和どうこうに関係なく今後が気になる選手です。

 

ということで、今回は9選手を選んでみました。夏、そしてリーグ後半戦を踏まえた冬の移籍市場で彼らのキャリアがどうなっていくのか、今後も見守っていきたいと思います。ちなみにいつか「気になる選手」たちのその後をまとめてみたいなあと思っているので、その話もいつか。

それでは。