96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

個の輝きと混沌:Jリーグ第18節 vs清水エスパルス 分析的感想

中2日で行われる連戦は、プレーする方もそうでしょうが、観るほうにも明らかな連戦感がありますね。そう考えると連戦=連日試合があるプロ野球は1ゲーム1ゲームをあまり深く振り返る暇もないのかなと考えてしまいました。一方で毎日ゲームがあれば連日新しい話題があるので、ファンとしての楽しみに優劣はないとは思いますけど。

で、浦和は後半戦一発目はアウェーでの清水戦。順位表を見てもわかりますが、昨年に続きわかりやすく苦しんでいるシーズンとなっています。

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昨年マリノスのコーチとしてJ1優勝を支えたモフモフスキーみたいな名前の監督ですが、清水でも同じく低い位置からのビルドアップと相手を動かすパス交換からゴールに迫る論理的なサッカーを志向していると思います。一方で如何に監督のデザインが明確であっても、それを体現する選手がピッチに揃っていなければ現実にはならないわけで、では清水の選手たちは監督のデザインを体現できるのかというと、発展途上という言葉だけでは説明しづらい状況があると言わざるを得ず、そういう意味では方向性としては真逆でも清水と浦和は、程度の差こそあれ似たような状況にあるといえるかもしれません。

浦和は前半戦を8位で終えましたが、Jリーグファンからすれば内容と順位が最も一致しないクラブだと思われているかもしれません。実際に今節開始時点のリーグテーブルではトップ10で唯一の得失点差マイナス、しかも-7という数字を残しながら上位争いに食い込もうとしているわけですから、そうした評価に反論するのは難しいのが現状です。その意味でもレッズとしては今季の後半戦は勝ち点とともに得失点差、つまり内容面の積み上げを見せていきたい戦いであり、そうであれば同じく苦しんでいる清水のようなチームには内容を伴って勝ち切りたいところです。

両チームのスタメンと狙い

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最近ジュニオールなんとかって選手流行り?

浦和ベンチ:彩艶、宇賀神、マルティノス、武富、関根、エヴェルトン、健勇

清水ベンチ:西部、奥井、六平、金子、成岡、後藤、ティーラシン

浦和は連戦続きということもあってスタメンを複数交代。前節かなりの戦術的負担を負い、最後は脚が攣って交代したトーマスや右SHで先発した柏木がベンチ外に。右サイドには武藤がスタメン入り。目新しさで言えば長澤が今季初めてスタートからCHに入りましたが、普段のローテーションで言えば青木が入るであろうポジションなので、コンディションの問題か、もしかすると故障があったかもしれません。また攻守におけるトランジションの部分で貴重な活躍を見せていた関根の影に隠れつつあった汰木がスタメンに戻ってきました。

清水は前半戦にホームで対戦した際はダブルボランチの4-3-3もしくは4-2-3-1のような形でしたが、その後の大連敗を経て3バックにチャレンジ中。前節出場停止だった立田が最終ラインの左に、中盤はアンカーを置く3枚構成にしており、右WBにオンザボールの質があるエウシーニョを起用しています。

両チームはその完成度は別としても明確にチームの方向性を持っており、前回の対戦と同様に清水がビルドアップを、浦和がプレッシングからのファストブレイクを狙うという構図が自然と定義される対戦です。そのうえで今節の注目は、清水の3バック(5バックともいえる)に対して数が嚙み合わない浦和の4-4-2プレッシングであり、もっと単純化すれば2トップ+αで3バックをどう制限しますか、という部分から展開していく対戦だったと思います。

清水の極端なやり方

いつかのエントリで書いた気がするのですが、3バックシステムと4バックシステム、特に4-4-2と5-3-2のような嚙み合わせの悪いシステム同士の対戦は、それ自体がどちらかに有利不利ということはなく、いかにその嚙み合わせの悪さを自分たちの戦術で活かすことができるか、という部分がポイントになると思います。我々にとっては馴染み深いミシャの3-4-2-1システムも当初は5トップによる4バック殺しと言われましたが、実際のところは4-4-2相手に守備に回るとWBがサイドで相手のSHとSBに対応するために数的不利に陥り、ブロックをサイドから順番に崩されて失点してしまうというシーンが多くありました。サッカーはお互いに11人の選手でピッチを埋める(同時に、11人ではそもそも埋められない)わけなので、その瞬間、もしくはそのエリアにどれだけの人数(とリスク)をかけたか、それを活かし、またはカバーする約束事を用意できているか、そしてそれを選手が実践できるか、といった複合的な要素によって優劣が決まっていくわけですね。

この意味で、今節この噛み合わせを優位に使えていたのは清水だったと思います。ただし浦和にとって面倒だったのはWBが大外に張ることではなく、中盤の3枚の運用でしょう。浦和の中盤中央は2枚のCHが対応しますが、清水はアンカーを置くシステムのため、どうしてもこのポジションに余る竹内を捕まえきれません。

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竹内のポジションの取り方が上手いとも言えるが、このアンカー番にトップの選手を使えば最終ラインへのプレッシャーがほぼ掛からなくなるので、浦和は完全に押し込まれてしまう。

浦和はおそらく、3バックのサイドの選手には対面のSHが、そしてWBにはSBがプレッシャーをかけるような形のプレッシングをなるべく出したいと想定していたと思いますが、竹内を誰が捕まえるか曖昧なままになってしまったために清水のビルドアップを制限することが出来なかったと思います。そもそも浦和の2トップは興梠とレオナルドで、この組み合わせだと相手の最終ラインを追い立て続けることが出来ないことはこれまでの17節で分かっているので、もしかするとこの辺りは捕まえられないならある程度構えてしまえば良い、という考えも同時にあったかもしれません。

それでも清水のビルドアップをめぐる攻防はどちらかと言えば清水優位でした。ただ浦和が悪かったかというとそういう感じはせず、清水が極端なやり方を採用していたからだったように思います。今節の清水は前回対戦時とはシステムを含めて大きくやり方が変わっており、結果が出ていない苦悩を反映してのものなのでしょうが、自陣からボールを前進させること、つまりビルドアップにやりすぎな程のリソースをつぎ込んでいました。

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余っている竹内だけでなく2トップがガンガン降りてきて中盤の選手のようにプレーするので、最終ラインは捕まえられない。ここからIHと2トップが裏抜け、サイド流れを繰り出していくのが今節の清水のオフェンス。今節の清水のフォーメーションを実態に即して示すなら、3-7-0でもよいかもしれない。

清水は2トップが中盤に降りてきてビルドアップに関わるのですが、ここまでボールサイドに人数をかけられると、浦和としてはなかなか網にかけることは難しくなります。清水のIHはボールの前進に合わせて結構裏に走ったりサイドに流れたりするのですが、それでも清水の中盤の枚数が減らないのでどうしてだろうと思ったらすごく自然に、まるで最初からそういうポジションであったかのように2トップが中盤に降りてきていたからでした。

これがチームとしての狙いなのか両選手の特性なのか(たしかに以前からカルリーニョス・ジュニオは中盤でもプレーしていましたが)は不明ですが、これには明確なメリデメがあります。メリットは当然中盤の枚数を確保できることで、これによって清水のビルドアップは安定とは言わなくとも少なくとも浦和のプレッシングに嵌め込まれることは少なかったように思います。他方デメリットは単純に前線に人がいなくなることで、清水はこの中盤の(自分たちで作っている)混戦を抜け出してもゴール前の危険なエリアに入り込んでいる選手がいない(もしくは少ない)だとか、うまくポジションを入れ替えながら状況を打開したものの、サイドから中央に抜け出したエウシーニョが一番前でドリブルしているとかといった不思議な状況が生み出されていました。浦和としては前線~中盤でサイドに出たボールを閉じ込めて、ボールを狩ったら素早く2トップがゴールへ勝負、という局面を生み出したいわけですが、清水のこうした極端なやり方によってなかなか狙いは出ず、しかしその極端なやり方によって肝を冷やすほどのピンチもない、という序盤となりました。

単純に考えれば噛み合わせで竹内が余っているのですから、ここを起点に浦和の最終ラインに2トップが揺さぶりをかけるやり方でいいのではと思うのですが、ビルドアップから相手を崩したいという監督の意図と、保有している選手の出来ること、そしてカウンターから失点を重ねたくないというチーム事情がこのようなやり方を選ばせたのかもしれません。連敗はチームを壊してしまう、という感じがしなくもないですね。

ちなみに前半は清水の選手のアフター気味のファールが目立ちましたが、清水の選手の勝ちたいというメンタリティのほかに、こうした密集が生まれやすい盤面も要因であったかもしれません。浦和の選手がボールを引っ掛けても中盤マシマシの清水は近くに選手がいるわけで、しかもこの中盤を突破されれば清水は最も恐れているカウンターを受けるわけですから、多少無理してでもボールマンを潰したくなる気持ちはわかります。まあ清水からすれば、浦和の選手のファールや自分たちが受けたジャッジに不服もあったはずなので、総じていえばレフェリーの早めのコントロールが求められた試合だったと思いますが。でもそれにしても、清水の2トップのチャージはほとんど体当たりでしたね。ボールに強くいくのはまだいいとして、その後ボールを奪って攻撃するつもりあったんでしょうか。

個の輝き①:脈絡のない先制点

清水はやりたいことは出来ているのだろうけどそれでいいのか?感がぬぐえない序盤を、いくつかロストからのカウンター気味の攻撃を受けつつ浦和がやり過ごすと、脈絡のない先制点が浦和に転がってきます。起点となったのはカルリーニョス・ジュニオの謎のタックルから。浦和のビルドアップの場面で、山中からのパスを受けた長澤に体当たり。これが(当然ですが)ファールになると浦和のFK。山中が放り込んだボールがCKになると、武藤のアウトスイングのボールがこぼれたところに山中のモンスターレフトがさく裂。浦和での初ゴールが清水のGK大久保の両手を貫通してゴールに突き刺さりました。カルリーニョス・ジュニオのファールは脈絡もないし結果的にゴールになるし、デメリットしかなかったですね。

守備面で明確なデメリットを見せ続けながらもその左足のロマンを信じ続けてきた山中原理主義者の皆様、おめでとうございます。ただこのゴール、こぼれた瞬間に相手選手をスクリーンして山中のシュートエリアを確保している岩波のプレーが素晴らしいですね。岩波がこぼれ球に対してスクリーンを選択するスピード感からしても、ゾーンディフェンスで守る清水に対してこぼれ球にはミドルが狙えるという設計があったことがわかります。左足のキックの質はチームでもナンバーワンである山中があえて右のCKを蹴らなかったことはこうした設計があってのことでしょう。ちなみに左サイドのCKは山中が蹴っていましたが、これはおそらくアウトスイングのボールを供給して相手GKにキャッチされにくくすることと、こうしたこぼれ球からのミドルシュートのシーンを多く作り出すためと思われます(一般的に、インスイングのボールはクリアが遠くに飛びやすいので)。なお、山中がキッカーの時にミドルシューターになっていたのは長澤と武藤だったようでしたが、この辺の人選が誰かを観察するのは今後も面白いかもしれません。まあもうばれちゃってるので、大槻監督は違うやり方を用意するかもしれませんが。それにしても、神戸戦でトーマスが見せたスーパーミドルに続いてシーズンのうちに二度もこうしたミドルが見られたシーズンはここ数年では珍しいのではないでしょうか。

前半はこのシュート一本に終わった浦和ですが、オフェンス面でのチャレンジをいくつか見ていこうと思います。今季の浦和はそもそもボール保持よりもボール非保持、さらにいえばトランジションの局面を強調しているわけですが、一応ボール保持のセットオフェンスの局面でも相手の弱点を使おうという設計が見え隠れしています。

浦和のビルドアップはここ最近の通常運転となっている2枚のCB+柴戸のサポート。右SBの橋岡は基本的に大外のレーンを、左の山中は汰木の立つレーンを見ながらですが、今節は大外に立つ機会がいつもより多かったかもしれません。確信はありませんが浦和が狙っていたのは清水と浦和の噛み合わせで生じる穴で、具体的に言えばサイドにボールが入った時の清水のリアクションの裏を取る、という部分です。

4-4-2と5-3-2で発生するサイドの噛み合わせの悪さは浦和にも清水にも選択を迫るわけですが、パターンは大きく分けて二つで、サイドにボールが出た際にWBが出てくるのか、IHが出てくるのか、となります。WBが出てくる場合は、清水の最終ラインは大きくスライドしないためにWBの背後、サイドの深い位置をSHが取れる可能性が高まりますし、IHが出てくるのであれば今度は横幅を3枚で埋める清水の中盤は逆サイドを捨てざるを得ず、そうでなければバイタルエリアが空くことになります。

しかしここで面倒だったのがまたも清水の2トップで、オフェンスだけでなくディフェンスにおいても彼らは頻繁に中盤に降りてきていました。本来であれば中盤を3枚で守るというのは隙が出来やすいのですが、2トップが降りてきて守備をする清水の場合そこまで人数の穴が出来ず、しかも浦和のボール保持も決してレベルが高いとは言えないので、結果としてはそこまで多くこの狙いを出せたとは言えない結果になっていました。ただし、トップが中盤に降りてくるということは清水のポジティブトランジションは低い位置から開始されるわけで、一発で浦和の最終ラインの裏を突くようなカウンターは出せません。そもそも清水はビルドアップから崩していきたいチームなのでこれでいいのかもしれませんが、こうした構造に従って密度のある中盤で清水が優位を得るものの、浦和はゴール前を割られないというゲームが出来上がった感があります。

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飲水タイム以降、大槻監督が汰木に幅を取るように再三声をかけていたが、これは基本ポジションを取ろうということともに、汰木が幅を取って①のエリアに山中を侵入させたかったのかもしれない。汰木が最初から内側にいるとエウシーニョが絞ってくるので、空けたいエリアが空かないのはたしか。
個の輝き②:久々のファストブレイク

後半は立ち上がりこそ浦和が前に仕掛けたものの、その後は清水が押し込む展開。浦和はブロックを構えて守る時間が長くなったと思います。49分に立田の縦パスから鈴木唯人がエリア内に侵入したシーンや、53分の西澤のシュートを岩波がブロックしたシーンなど、清水がだんだんと浦和のペナルティエリア近くでプレーする割合が増えていきました。オリヴェイラ体制の時に浦和も採用していた3-1-4-2(5-3-2)は、相手を押し込むことが出来ればIHがシャドーのようにプレーすることでゴール前の崩しの人数を確保できるうえに、4人が出入りすることで相手に捕まえられにくくなるという特徴があります。浦和を押し込んだことを前提に、中盤に自由に降りていく2トップが空けたスペースをIHが上手く使うことで清水のゴール前でのプレーが増えていったということが言えるかもしれません。
浦和は50分に汰木が決定機。こぼれ球を拾ったレオナルドを追い越した汰木がGK大久保と1on1になりますがシュートは正面。これが決まれば浦和としてはかなり楽になったと思いますが、残念でした。汰木もゴールが生まれればもっと流れがよくなる気がするのですが。

57分には清水がカウンターから大外西澤のシュート。西川がギリギリのセーブでチームを救いましたが、このカウンターが出た場面の直前の守備ではやはりカルリーニョス・ジュニオが中盤に入って守備参加しており、そこから引っ掛けたボールが起点となりました。この時間の清水はかなり良いプレーをしていたと思います。浦和は何が悪いというわけではなかったと思いますが、相手が前に前にくる展開にこちらも早い攻撃を仕掛けたいという思惑がはまってしまい、上下動の激しいゲームの中で落ち着くポイントを見つけることが出来なかったかもしれません。

この流れでCKが続いたものの、それを跳ね返すと中盤で清水がこねていたボールを長澤が奪い、前残りしていたレオナルドへ。独走でゴールを決めるかと思いきや、追いすがった立田とGK大久保をピッチに寝かせて後ろから走りこんだ興梠へパス。最高のおぜん立てを受けた興梠が流し込み完璧なカウンターで追加点を奪いました。

このゴールはほとんどレオナルドのものと言っても誰も異存ないでしょう。毎試合毎試合レオナルドが必ず狙っているボールホルダーが前を向いた瞬間の裏抜けが完璧にはまったことに加えて、シュートをチラつかせながら相手をピッチに転ばせて"無力化"する冷静さが輝きました。清水の選手が状況を諦めてスピードを落とす中で、一番最初に反応しハーフライン手前からサポートに走りこんだ興梠のランニングとゴールになりそうなシーンへの嗅覚も素晴らしかったと思います。清水はこの直前のシーンでCKのためにかなりバランスを崩していたので、下手にこねるならば上げきってしまった方が良かったと思います。単純にクロスを入れるやり方を好むか好まざるかに関わらず、そうした方が損をしないタイミングというのがあると思いますが、清水はそこでセオリーに反して罰を受けた、という失点だったかもしれません。ちなみに、この試合シュート0で終わったレオナルドが自分で撃たずに興梠にパスをしたことは特筆すべき点です。だいたいの試合でクロッサーが自分を見ていないと僕の一年分の怒りを放出したくらいのパワーでキレているレオですが、そうしたエゴと自信を持ちながら勝利のために必要ならばパスが出来る選手というのは特別だと思います。普段シュートを枠内に撃ちまくっているからこそ、大久保もあれだけシュートを警戒して態勢を崩していたのでしょうし。ただ、走りこんでいたのが彼が普段から尊敬していると公言し大好きアピールをしている興梠だったから、という気もしますけど。というわけで、浦和が久々のファストブレイクを決めて追加点。

交代による混沌

失点を受けて清水は60分に3枚替え。浦和は68分に両SHをマルティノス、関根に交代します。清水は追いつくための、浦和は連戦を見据えた予定通りの交代だと思いますが、ここからピッチ上は混沌としていきます。

72分にはエリア内の守備からマルティノスがドリブルを開始し、詰められたところを蹴りだすもカットされ、まさかのそのまま左サイドへ移動。ボールサイドだから良かった(?)ものの、そのまま右SH不在でブロックを組む浦和。逆サイドにボールが展開されるに従ってマルティノスも右に戻りますが、なぜかその直後の守備機会からフレームアウトしどこかに消えてしまいます。

そのマルティノスが深い位置を取ってからの橋岡クロスから興梠に惜しいシーンがあったのち、浦和は2トップを交代し健勇と武富をピッチへ。これも予定してた交代かもしれませんが、結果的に浦和は前線4枚を総入れ替えすることになり、途中出場の選手はもちろん攻撃的ですので、試合終盤でも前から相手を追い込んでいく守備を敢行します。ここからしばらくはまさに混沌としたゲーム展開で、健勇がマーク出来ているヴァウドに関根が長い距離を走ってアタック。80分には健勇がCBにアタックしたところからマルティノスも連動し立田を追い込むものの逆サイドへ展開されカウンター。これをなぜかトップの健勇がスプリントで戻って右SHを埋める応急処置。武富は自分の近くに転がったボールすべてにスライディングを仕掛け、ボールが前進すれば山中がフルスプリントで最前線まで駆け上がる。どっちが負けているのかよくわからない前衛的なゲーム展開で浦和は時計を進めていきました。

86分の長澤→エヴェルトンの交代を挟んで、さすがの浦和もブロックをベースに攻撃に人数をかけない形へ収斂。健勇がロングボールを収め、ペースを落としてくれることで後ろの選手はかなり助かっていたと思います。一方でマルティノスまわりのセットディフェンスの不備は相変わらずで、ブロックの意識があまりないのかふらふらと3トップ気味に前に出て行き、戻ってこれないために柴戸がサイドをカバーし、清水が左WBにボールを展開すると橋岡が出ざるを得ないためにエリア内の枚数が一枚足りなくなるという状況が引き続き生まれていました。

そうこうしているとロスタイムに失点。サイドからのクロスをファーで山中のマークに決められる今季見慣れた形でした。ゴールを決められた直接的な責任がエリア内でのマークマンである山中にあるのは間違いないんですが、彼のエリア内のクロス対応がいまいち以下であることはもうわかっていることなので、0-2で勝っている展開を考えてもここは違う守り方が出来なかったかなあと思います。

クロスが上がったシーンは以下のような状況でしたが、その直前のクロスが上がった時のように、エリア内に最終ラインのうち3枚+CHが構えている状況を作れていればチームとしてはOKでした。それがクロスのこぼれ球に対応する過程でマルティノスと武富がボールに置き去りにされ、中盤を漂う形になってしまい、流れの中でボールに出た橋岡(SB)と岩波(CB)の間のチャンネルを使われてしまいました。そこに岩波が対応したことでゴール前が槙野、山中の2枚だけになり、クロスに対して数的同数、2on2での対応を迫られることとなりました。

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クロスが上がった瞬間はエヴェルトンがニアを埋めていたので、枚数的には最悪の状態ではなかったし、クロスの質が良かったのは間違いないが、この状況が頻繁に起きるようだとファーに待つ選手が変わらない限りこれからも何度でも失点しそう。

ベストなのは西澤のチャンネルランに武富かマルティノス、現実的にはこの場合武富がついていき、エリア内の最終ラインの構成を崩さないことではなかったかと思います。橋岡がクロスを上げさせない、山中が最後のところで競り勝つというのが必要なのは当然ですが、チームで守るということを考えるならばこの場面では交代して入ってきた選手にもう少し守備にも貢献して欲しかったところです。競争がある中で、出場気時間が限られる中で結果が欲しいのはわかるんですが、上下動するタスクが厳しい中でも最低限ボールについていくとか、最終ライン、ゴール前のブロックを最適な状態に保つためにこうした役割を果たしてくれる選手でないと、このサッカーでプレータイムを掴んでいくのは難しいのかなと思います。個性はわかるんですけど、こうした貢献の上で輝く個性であってほしいというか。これが出来ているのがセレッソですし、こうしたゴール前を最適な状態に保つ機能を果たす中盤、サイドの選手がいてこそゴール前の堅さにつながっていくのではないかと思います。

というわけで、ゲームは1-2で終了。多少のもやもやを残しつつも、浦和は下位清水に勝ち切り、王国の面目を保ったのでした。

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3つのコンセプトに対する個人的評価と雑感

採点。

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は6.5点。理由は山中のミドルが決まったからです。とはいえ、この試合のMVPを決めるならレオナルドになるかなあと思います。シュート0でも相手の脅威になり続け、決勝点を冷静にアシストしたプレーは素晴らしかったと思います。レオナルドにスルーパスを出し、中盤でかなりのフィジカルコンタクトに晒されながらもトランジションで勝負を決めた長澤のプレーも、彼の特徴がよく出ていたという意味では良かったのではないかと思います。個人的には、終盤のケイオティックな展開の中で落ち着きをもたらし、マルティノスのカバーで右SHの守備の役割まで部分的に担った健勇のプレーは非常に素晴らしかったと思います。大槻監督のサッカーは体力的にもタスク的にもタフさが必要になりますが、前線で高さとうまさを活かしてゲームのペースを作ってくれる上に守備にも貢献してくれる健勇のプレーは本当に貴重だと思います。あわよくばゴールがもっと欲しいところですが、そうなれば文字通りチームの軸としての役割を担ってくれるようになると期待しています。あと、何度も頭蓋骨をしばかれた橋岡はよく頑張ったと思います。西澤に何回か抜かれてたけど。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は6点。ボールは保持されていましたが、試合全体を通じて積極的に戦う姿勢は出ていたと思います。交代選手もこの意味ではゲームに勢いをもたらしたと言えるのかもしれませんが、個人的には展開とゲームの内容を考えたときに期待したのは違うプレーだったかな、という気もします。おそらくチームとしては、得失点差のこともあるし、今季完勝と言える試合が少ない中で、0-2から交代選手を使って前への勢いをリブートできる状況にあった今節の展開は「もう一度前へ」という雰囲気で正解なのだと思いますが、観ている方としてはがっちり固めても良かったんじゃないの?という感覚は拭えません。最後の失点どうこうは結果論としても、トランジション以外の局面、終盤のゲームクローズの部分で安心感が出てくると一段上がっていく気がするので、その点は今後の後半戦への課題なのかな、と思います。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は4点。ボール非保持(セットディフェンス)→ポジティブトランジションの部分で久しぶりに点を獲れた試合なので若干評価をしていますが、やはりこの項目を評価するにはもう少しゲームを握る感覚を得たいところです。今節の清水は勝利がどうしても欲しいチームでしたからそれ相応に球際も激しく、なかなかボールホルダーに時間が与えられなかった試合でしたが、それでもポゼッションロストが多かったかなという印象です。今季の浦和は基本的にボール保持にこだわらないチームですが、ゲーム展開が安定しない試合では相手よりもポゼッションロストが多く出ている傾向があります。今節は清水136回、浦和124回とさすがに浦和のほうが少なかったですが、ボールポゼッションの58%:42%を考えるとまだまだ数が多いかなという印象です。相手を崩し切るボール保持や大きすぎるポジションチェンジはこのチームには要らないと思いますが、空いているところに顔を出し、強みであるフォワードにボールを届けるためのポゼッション、そしてプレッシングにパワーを出すための小休止としてのポゼッションはチームの完成度を高めていく上で欠かせないものなので、これからの後半戦を通じた向上を期待したいと思います。

全体としては、相手の狙いを受け止めつつも選手の個を輝かせゴールを奪った勝利であり、一方で終盤に見せた混沌は選手の個性が戦術という枠になかなか納められない現状がピッチに現れたとも言えるものでした。今季の浦和が戦術の問題以上に編成の問題を抱えていること、一方で中期計画の初年度として、そうした状況でも選手に合わせた「今やれる」やり方に甘んじるべきではないことにはこれまでも言及してきましたが、今節を見てもやはりこうした状況とは今年いっぱいは付き合っていくしかないのかなという印象です。ただそうした中でも勝ち点を拾ってトップハーフで戦えていることは、今節の対戦相手の立場で考えれば非常にポジティブなことであり、有り余る成長余地を残していると言えるのかもしれません。連戦が続きトレーニングによるアップデートはなかなか望めない中で、今季の浦和の戦いは今節見せたようなアンバランスさとうまく付き合って勝ち点3を積み上げていくものなのだと理解するのが妥当かな、という印象です。ま、清水に勝てて良かったです。

清水に関しては、極端なボール保持の安定化、ポゼッションへの人数のかけ方は、良し悪しは別として面白いものを観たという感想です。最前線にボールが入ってもゴールから遠いのでドリブルで運んでいく必要があったりして、ゴールを奪うという部分から逆算するとあまり効率が良いようには思えませんが、スタメンだった2トップはそこそこ運べる選手でもあるので、戦術と選手の特性という意味でのミスマッチはあまり感じませんでした。エウシーニョを使っても3バックでカバーできるというのも、スカッドの個性を活かすという意味ではポイントなのでしょう。ゴール前を崩していくという意味では前半戦のようにトップ下が高い位置でのボール保持をサポートし、相手の最終ラインを主体的に動かしていく、昨年のマリノスのようなやり方のほうが怖さがありますが、選手の能力も含めてリスクとリターンを考えたときに、まずポゼッションと最終ラインの安定化を図りたいというのは理解できる部分です。このやり方にどれくらいの伸びしろがあるのか?というのはこの試合を観ただけではよくわかりませんが、点を獲るパターンがいくつか見えてくると勝ちを積んでいけるかもしれないと思いました。個人的に監督の名前が好きなので、ぜひ頑張ってもらいたいと思います。

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あまりたらればを語るのは好きではないですが、今節は上位が勝って下位が負けるという今季のJリーグの傾向通りの結果だったので、もし今節負けていたら順位を争う上ではかなり厳しい状況になっていたと思います。順位は8位で変わらずですが、得失点差のマイナスを1削り、なんとか勝ち点30グループについていくことが出来たという試合になったと思います。

日程は相変わらず厳しく、中2日で土曜日にはホーム横浜FC戦、その後3日空いて水曜日にはFC東京戦と、一年でも最も厳しい連戦が続く時期を駆け抜けていきます。戦術練習の時間がほとんど取れない中で、如何にして共通理解を醸成し、スカッドを拡げつつゲームの中で成長していけるか、そしてその上で内容的な上積みをどれだけ見せることが出来るかが、今後も問われていくのだと思います。

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。