96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。 twitter: @urawareds96

THE RED IDENTITY:Jリーグ2020 第2節 vs横浜Fマリノス 分析的感想

いつだって笑顔がトレードマークの西川周作が、試合後のインタビューで言葉を詰まらせたことが、4ヵ月間に及ぶリーグ中断という異常事態を過ごしたことの難しさと、「観客が入場できない試合」を忘れもしない「無観客試合」とは違うものにしようと尽力したクラブスタッフや有志たちの努力が与えたパワーを物語っていたと思います。

 西川は「このような雰囲気をつくってくれて本当にありがとうございました。たくさんビニール(製シート)を使ってくれて…」と感極まった涙で感謝を口にした。

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僕たちがクラウドファンディング投げ銭を通じて支援したお金が多少でもこの素晴らしい「ヴィジュアルサポート」に通じたならば嬉しいですね。一応ホームでの「観客が入場できない試合」はこれで終わりですが、今後の状況でまた開催することがあれば、迷わず支援したいと思います。選手発表や入場の演出など出来る限り全てを通常の試合と同じように運営したというクラブのこだわりもあって、本当にJリーグが再開したんだなあと感傷に耽ってしまった方も多かったのではないかと思います。

というわけで、この過密日程でどこまで書けるのか、僕の挑戦も再スタートです。

スタメンと狙い

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両チームのスタメン

マリノスコイントスでエンドチェンジを選んだことからいつもとは逆の陣地でスタート。(追記:実は浦和側、つまり西川がエンドを変えたみたいです。かなり珍しいことだと思いますがなぜかはよくわかりません。ヴィジュアル見たかったのかな…。わかる方がいれば教えてください!)浦和のベンチは福島、宇賀神、柏木、関根、マルティノスファブリシオ、武藤。マリノスのベンチは中林、チアゴ・マルチンス、伊藤 槙人、水沼 宏太、マルコス・ジュニオール、エジガル・ジュニオ、オナイウ 阿道。両チームJ1らしい豪華なメンバーが揃う一戦となりました。

浦和の注目はやはり初先発となったトーマス・デン。町田とのTMで素晴らしいパフォーマンスを見せましたが、チーム内でもしっかりと評価されていることが伺えます。また開幕節では右SHは関根でしたが、長澤がこのポジションに入っています。マリノスの方は天野、小池とロケレンを退団しマリノスに加入した二人がスタメン。一方でエジガル、マルコス、チアゴのブラジル人トリオはベンチスタートとなっています。

基本的な試合の見方としては昨年のチャンピオンチームであるマリノスが得意のポジショナルなオフェンスから浦和の守備ブロックを崩すことが出来るか、そして浦和は挑戦者として今季から取り組む4-4-2をベースにどうマリノスを迎え撃つか、ということになるでしょうか。とはいえ、大槻監督は今季が始まる時から「主体的にプレーする」ということを強調していますので、「浦和は何をしようとしているのか」というところがこの試合(というか今季の浦和)を見ていく上では意識されるべきかなと思います。もちろん、相手は強いマリノスなので、彼らが相手ということを踏まえたゲームの設計はあって然るべきなのですが。ということで、ポゼッションのマリノス、カウンターの浦和という構図は誰もが予想出来る中でのゲームとなりました。

マリノスのオフェンス・シークエンス

アンジェ・ポステコグルー監督率いるマリノスの特徴がポジショナルプレーの原則を利用した効率的かつ破壊的なオフェンス・ムーブにあることは間違いないのですが、このチームはピッチで起きている事象をそれぞれの選手の役割ベースで説明しようとすると非常に苦労することになります。ミシャ・レッズのように(そして現在のJリーグの多くのチームがそうであるように)選手の特徴に合わせて戦術を構築している場合、もしくは採用する戦術の肝になる部分の役割を特定の選手しかこなせないような場合は、ビルドアップからチャンスメイクまでに特定の選手が特定の役割を担っているために再現性が高くなっている事象をよく見つけられるので、「この選手の役割はこれ」といったヒントを使いながら場面場面を理解すれば良いのですが、マリノスの場合はそうやって選手の役割ベースで目の前の現象を理解しようとすると、あまりうまくいきません。というのも、マリノスのオフェンスには約束事になっていそうな形こそあれど、そこに顔を出す選手は場面場面でかなり異なっているという特徴があるからです。もちろんこれも程度問題ではあるのですが、マリノスを見る場合は「この選手の役割はこの場面でこう動くこと」という理解よりも、「ボールを置きたい場所、攻略したいエリア」を中心に観たほうが整理がしやすいと思います。

で、マリノスはこの「ボールを置きたい場所、攻略したいエリア」が非常に明確にピッチ上に現れるチームです。それは選手の役割が明確に分担されていない割に、オフェンス・シークエンス(攻めの順序)が非常に明確とも言い換えられます。そしてこのオフェンス・シークエンスを理解することで、大槻監督はこのゲームをどう戦うか、そしてどんな選手を使うべきかを決めていったのではないかと思います。

具体的に見ていきます。マリノスのオフェンス戦術で分かりやすいのは、いわゆる偽SBの動きから始まる攻撃です。

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シークエンスA(仮)

これを仮にシークエンスAと呼ぶとして、このシークエンスA(仮)で重要なのは「特定の選手がどこにいるか、どう動くか」ではなく、「大外にボールを置くことで相手最終ラインのCB-SB間のチャンネルを空け、そこに内側から選手を走りこませることで折り返しのチャンスを創出すること」です。要は、もちろん初期ポジションやプレースタイル、効率の面からある程度誰がどう動くかの傾向はあるにしても、大外で受ける人は仲川でなくてもいいし、チャンネルに飛び込むのも誰でも良いということです。この試合でも最初は偽SBの動きで中央に入った小池がそのまま裏抜けするパターンや、天野がここに飛び込むパターン、後ろから喜田や扇原がこのエリアを使うパターンなど、選手ベースでみるとかなり多様な攻撃パターンが見られたわけですが、マリノスは、というかポステコグルー監督は「誰が」にはあまりこだわりがなく、このシークエンスA(仮)をどう効果的に、よどみなく完結させて得点機会を創出するかを考えているのではないかと思います。

このようなシークエンスはGKスタートのビルドアップからいくつか約束事として仕込まれており、このA(仮)を中心に攻撃を連続させながらシームレスに繰り出していくのがマリノスのオフェンスの根幹です。これを実現するために、マリノスの選手はポジションチェンジを多用するというよりも、良い場所にいる選手がシークエンスに反応するといった形でピッチを縦横無尽に移動します。これによって、マリノスは人を見るディフェンスでは非常に捕まえづらいオフェンスを構築しており、必然的にポジションにとらわれないプレーができる選手が起用される(それが出来る選手を集めている)という説明が出来ると思います。

大槻監督の論理的なゲームデザイン

大槻監督は、この構造をよく理解していたはずです。マリノスとの対戦においては、「誰が」狙われているスペースに入ってくるかはわからなくても、「どこが」狙われるかは初めからわかっています。誰がどうプレーしてこようと、どんなに立ち位置が入れ替わろうと、例えば自分たちの最終ラインのCB-SB間のチャンネルからクロスが狙われるわけです。であれば、その手当を用意すればよい、となります。

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シークエンスA(仮)への対応

浦和はマリノスが狙ってくるCB-SB間のチャンネル攻略に対しては、なるべくCBを動かさずに2列目がついて行く対応をしようとしていました。基本的には柴戸と青木の両ボランチがこの空間を埋める意識が高く、必要に応じて長澤が対応する場面も見られました。大槻監督はCBを動かさないことで、結局はゴール前にクロスが入ってくるマリノスのフィニッシュパターンへの対応が安定すると踏んだのではないかと思います。このチャンネルを使われてクロスが入ってくると、ニア、中央、ファー、マイナスと選択肢が豊富なうえに、マリノスの選手たちは中盤や逆サイドからクロスに反応するよう意識づけられているので、壁が少ないと危険なんですね。

この意味では、柴戸に加えて青木を起用したダブルボランチ、そして右SHに長澤を起用したアイデアは理に適っていたと思います。上記の最終ラインを助けるタスクを十分にこなせるのはもちろんのこと、浦和はマリノスのビルドアップ時に前からプレッシャーをかけていましたが、これにはボランチのうち最低一枚もプレッシングに参加しなければいけません。従って浦和のボランチの選手は、マリノスのビルドアップでは前線の選手たちと共に前に出て、中盤では中央を締めつつ簡単に前を向かせないように寄せていき、マリノスがシークエンスA(仮)を狙ってくれば最終ラインまでついていくという厳しいタスクをこなす必要があります。組み立てやラストパスでは物足りなかった部分もあるかもしれませんが、このタスクを遂行できる中盤を作るという意味では、柴戸、青木、そして長澤の起用は大槻監督にとっては必然だったのではないでしょうか。

(飄々とプレーするので気づきませんでしたが、青木も柴戸と同じくらいの走行距離を記録しており、かなり厳しいタスクをこなしていたことがわかります)

ただし、安易に2列目を最終ラインのサポートに使えば、その分守備組織はどこかで枚数が足りなくなっています。具体的には2列目が3枚になってしまうことと、守備ブロックが下がりながらの対応を迫られるために注意が向かなくなるマリノスのアンカーのところがポイントになります。マリノスが優秀なのは、基本であるシークエンスA(仮)がうまくいかなくても、やり直しのためにトップ下の選手やDHの選手がすぐサポートに寄ってくる部分まで連動していることで、ここから中央に繋がれてサイドを変えられ、逆サイドで再びシークエンスA(仮)が始まると守備側は中盤のスライドが間に合わない可能性が高く危険な上に、そもそもマリノスの攻撃が終わりません。これに対処するために大槻監督は健勇を守備時に中盤に落とし、4-5-1ブロック、もしくは4-4-1-1ブロックに見えるような並びを作ることでマリノスのアンカーをフリーにしないような工夫をしていたと思います。これによってマリノスの中盤底がフリーにならず、簡単にはサイドを変えられなくなったために、浦和のブロックは両サイドから往復で殴られ続けるという状態を回避できました。

この健勇の起用はオフェンス面でもメリットがあり、彼が得意とする前線から降りてきてキープして落とす、というプレーを浦和のポジティブトランジションに織り込みやすくなります。ポジティブトランジションにおいて健勇と中盤の選手の位置が近いので囲まれても落とす先が近くにありますし、フリックして前にいる興梠に預けるという選択肢も用意できます。そういうわけで、今節は守備面で負担が大きい役割でしたが、攻守にわたって健勇の貢献度はかなり高かったと言えるゲームだったと言えるのではないかと思います。

マリノスの狙いに対処した後、浦和のオフェンスは基本的に今季のテーマである早い切り替えからの速攻、ファストブレイクを繰り出していくことが狙いです。仙台戦、湘南戦では同サイドから縦に直線的な速攻を意図していたシーンが多かったと思いますが、今節はサイドチェンジがかなり意識されていました。ここでも大槻監督はマリノスのやり方を理解したうえで自分たちのやり方に工夫を加えていたと思います。マリノスはボールを失った後のネガティブトランジションでは近い選手が早い段階でボールにアプローチするゲーゲンプレスを採用しており、偽SBの中央に入ってくる立ち位置も相まってブロックをかなり圧縮します。従って逆サイドの大外をチームに意識させておくことでマリノスの守備組織を大きく裏返し、一気にゴール前に迫っていくというやり方を採用していたように思います。左サイドは汰木が、右サイドは橋岡が高い位置をとることでサイドチェンジの行き場を作るとともに、そこから素早くゴール前に迫る攻撃がプランにあったようでした。サイドチェンジはビルドアップにおいてもかなり意識されており、中盤で中途半端につないでショートカウンターを受けるリスクを回避する意味もあったかもしれません。実際に前半、左サイドから大きなサイドチェンジで橋岡が競り合い、興梠がエリア内で拾ったところをGK梶川に倒されたように見えたシーンなど、一定のチャンスメイクはできていたと思います。マリノスのSBは高さがないので、大きなサイドチェンジを橋岡に競らせるというのはこちらの強みの出し方としても良かったと思います。

マリノスの多彩な攻撃にゴール前を脅かされることが多かったこのゲームですが、相手のやり方と構造を理解した上で守備の手当てから相手ゴールに迫るまでの展開と方法論をデザインし、それに見合う選手を起用した大槻監督の論理的なゲームデザインは十分に機能していたのではないかと思います。

疲労とオープンな展開、戦略面の評価

 というわけで、洗練されたオフェンス・シークエンスを連続して繰り出すマリノスと、それに対応するだけの仕組みを準備してきた浦和の対戦は、ボール保持の熟練度で勝るマリノスが比較的長くボールを握りつつも、お互いにチャンスありという感じで進んでいたと思います。浦和は汰木の惜しいシュート2本や、興梠のPK未遂(VARがあったらPKだったと思います)、長澤のミドルでゴールを脅かしました。

とはいえ暑さも湿度もある中で4ヵ月ぶりの公式戦ですから、前半35分過ぎ、後半は60分前後からお互いの中盤と最終ラインが押しあがらなくなり、オープンな展開が見られるようになりました。先日Jリーグ再開に合わせて書いた通り、5枚の交代枠の使い方がモノを言う時間帯です。

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前半に肉離れを起こしたマリノスの實藤を除けば先に動いたのは大槻監督。58分に両SHをマルティノスと関根に替え、ファストブレイクの質の担保を図ります。時間帯が比較的早いことから考えても、ゲームプランとしてあらかじめ準備していた交代でしょう。2列目のタスクが多いことや、両SHの突破がファストブレイクの生命線となることを考えても妥当な交代だっと思います。それに呼応するようにポステコグルー監督も62分に2枚替え。マルコス・ジュニオールとエジガル・ジュニオを投入し、前線をブラジル人トリオに再編成します。こちらも予定していた交代だと思いますが、こちらは単純に選手がスペックアップしており、まるで第2形態に進化したみたいな豪華さのある交代でした。細かいことははしょりますが、トップ下としてゴールに関わっていくプレーは天野よりマルコスのほうが上だと思いますし、エジガルがトップに入りエリキをWGに持っていくことで強引な突破の面では遠藤よりも迫力が出たと思います。要は点を取りに来てましたね。

交代以降は浦和がポジトラを安定して繋げなくなったこともあって、マリノスがボールを支配し浦和ゴールに迫る展開となりました。浦和は交代で入った両SHを使ってファストブレイクという狙いはピッチ上の選手たちによく共有されていたと思いますが、ミスでなかなか繋がらなかったことと、いかんせんボランチ2枚と健勇のタスクが多く、だんだんとマリノスに押し込まれ、さらにはボランチ経由での逆サイド展開を許してしまうようになったと思います。後半73分に岩波がイエローをもらうシーンが象徴的なんですが、マリノスがシークエンスA(仮)を左サイドで試してから、逆サイドに展開されたことで浦和の2列目のスライドが間に合わず、チャンネル抜け対応に岩波が出ていったというプレーでした。

中盤の攻防において、マリノス側で後半特に輝いていたのは喜田でした。マリノスのオフェンスの肝はいかに各シークエンスに必要な動き出しを実行し続けるか(スタートポジションに関わらず必要なエリアに飛び込む人がいるか)、そしてそれぞれのシークエンスをいかに切れ目なく続けていくか、だと思いますが、この両方において喜田はマリノスの中盤では唯一無二の存在だと思います。シークエンスを発動させるのに必要であれば相手の最終ラインに飛び込み、シークエンスが詰まればボールを逃がして次のシークエンスに移行させる、こうした喜田の存在に浦和の守備組織はかなり苦労させられたと思います。走行距離を見てもポゼッションで優位だったマリノスにあって唯一の12km台を記録しており、喜田がシークエンスを繋ぐことでマリノスの攻撃が止まらず、徐々に徐々に浦和のゴール前でのプレーが増えていったという構造があったかなと思います。

ゲームはお互いに交代3回で4枚のカードを切ったものの得点には至らず、結果的に引き分け。最後は西川の神セーブでなんとか難を逃れ、勝ち点1をもぎ取ったというのが正直なゲームだったかなと思います。ただ相手は昨シーズンのチャンピオンチームですし、浦和は今季から新しいスタイルに取り組んでいるところということを踏まえれば十分な結果だったとも思います。あわよくば橋岡のクロスから健勇がフリーでヘディングできた場面や、マルティノスが抜け出してグラウンダーのクロスを中に入れた場面でシュートまで行けていれば、というところですが、4ヵ月ぶりの公式戦ということや相手の実力を踏まえれば良いゲームだったと言えるはずです。

チームのリソースをどのように使っていくかという戦略面を考えると、両監督とも事前に準備していたであろう攻撃的なカードを後半早い時間で使ってきました。戦略の評価は長期的な打ち手の選択の中で評価されるべきものなので、この試合だけでどうこうは言いにくいですが、連戦を戦い抜くためにプレータイムを分散させるというコンセプトはどの監督も持っているはずで、それが現れたのかなと思います。

浦和は戦術が比較的シンプルなので、この試合で大槻監督が青木、長澤、健勇を起用したように対戦相手の特徴と出場選手の特徴をうまくかみ合わせて使っていくことが重要になると思いますが、日程のめぐりあわせと連戦で準備期間が少ない中でどこまで「良い起用」を続けられるかがポイントになりそうです。使う選手によってチームとして出せるパフォーマンスがかなり変わるはずなので、今シーズンは大槻監督が各チーム相手にどのようなゲームプランを用意するかによって起用される選手がけっこう変わると思います。

一方マリノスは複雑な戦術ながらやり方はチームに広く浸透しているように思われますし、ACLもあって単純に駒を十分にそろえているので、選手を入れ替えつつも自分たちのスタイルを継続していくことになるでしょう。その中で、喜田のような戦術の骨格を支えているような選手をどこまで起用するかというのがテーマになりそうです。2,3試合では大きなボロはでないでしょうが、すべての試合に主力選手を出し続けることが現実的に難しい今シーズンは、どこでメンバーを落としながら勝ち点を取るか、ということが長期的に問われていくのではないかと思います。

3つのコンセプトに対する個人的評価/選手個人についての雑感

というわけで、採点です。

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は過去最高の7点。苦しい試合ではありましたが、中盤で豊富な運動量と厳しいチャージでボールを狩りまくった柴戸や、降りてきてのボールキープでチームを助けた健勇、Jリーグデビュー戦ながら玄人好みな安定感とアフリカンらしい身体能力を兼ね備えるポテンシャルの高さをみせたトーマス・デン、そしてロングフィードをサイドに正確に散らしつつ終了間際にまさに守護神といえるスーパーセーブを見せた西川など、選手の特徴は良く出た試合だったと思います。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」については5.5点。守備に回る時間は長かったですが、狙いを出そうとする意識は良く見えましたし、決して消極的なプレーに終始していたわけではありませんでした。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は4点。休めなかったのはどちらかというと浦和のほうで、オフェンスの連続性、ネガトラの切り替えなどはさすがにマリノスが上手でした。守備から攻撃だけでなく、攻撃をやりきること、パスミスを減らすこと、失った後に奪い返すことなど、このテーマを向上させるにはもう少しチームとしての上積みや選手の成長が必要かなと思います。このテーマが評価できるようになってくると、強いチームになってきたと言えるのではないかと思います。

ほとんどの媒体で予想はされていましたが、注目していたトーマス・デンは期待通りの活躍でした。戸田解説員の評価も上々でしたが、実際試合経験を積んでいけばリーグでも屈指のCBと評価される日は遠くないと思います。身体能力+精度の高い展開予測で実現するカバーリングに加えて、ボールホルダーに対するアプローチで簡単にファールしないことも素晴らしいです。繋ぐ、蹴るもハイレベル、さらにラインコントロールもこなすなど、23歳ですが現時点で非常に完成度の高いCBだと思います。コミュニケーションの部分に慣れればディフェンスリーダーを任せられることは間違いないですね。さすがオーストラリア五輪代表キャプテンだけあります。一方、良いパフォーマンスを見せていた選手が多かった中で、関根は若干身体が重いというか、まだコンディションが出来ていないような印象でした。普段あまりしないようなミスや迷い方をしているシーンがあったのが少し心配ですが、開幕節で活躍したぶん流れが切れてしまってやりにくいのかもしれません。次節はお得意様の仙台戦なので、浮上のきっかけになればと思います。

最後に、勝利はモノにできませんでしたが、クラブスタッフが大変なコストを払って準備してくれたビジュアルとスタジアムの雰囲気、そして昨年のチャンピオンチームに対して自分たちのスタイルで挑み、勝ち点をもぎ取った選手たちのプレーから、「俺たちは浦和レッズなんだ」という声を感じた気がしました。当たり前が当たり前でなくなったことで見えることがある、というと安っぽいですが、強力なサポーターの存在が代名詞であったクラブが、観客のいない試合で見せたパフォーマンスに、僕たちと共有するクラブのアイデンティティを見たような気がしました。

 

今節も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。