96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

「正しい取り組み」と引き続きの課題:Jリーグ第20節 vs名古屋グランパス 分析的感想

前回のゲームがFC東京ACL日程に合わせた29節の事前消化だったので水曜日のゲームを前節と呼んでいいのか気にしているのは僕だけではないかと思うのですが、そういうわけで通常に日程消化に戻って第20節は名古屋グランパス戦です。名古屋との前回の対戦がどういうゲームだったかは何故か全く覚えていないのですが、興味がある方は以下のリンクから思い出すことが出来るかもしれません。

www.urawareds96.com

一応自分でも読み返してみましたが、本当にこんなゲームがあったのか?僕の妄想ではないのか?という疑念が今でも拭えません。

で、まずはリーグテーブルの確認からですが、ゲーム前時点ではこんな感じでした。

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連敗で順位を落としているものの、なんとか一桁順位、トップハーフに留まっているというのが妥当な言い方でしょう。とはいえ首位の川崎がめちゃくちゃ飛び出しているのと、2位グループもセレッソと東京の2チームのみという状態なので、4位マリノスとの勝ち点差を考えれば、上位に出ていくのは意外にもそこまで難しくはないというか、この試合に勝てれば希望がある、とも言えます。名古屋は消化試合数が少ないので順位は参考程度だと思いますが、状況的には浦和と似ていると考えることはできますが、得失点差が20近く離れているチームを比べて状況が同じとはさすがに言えませんね。前回大戦のこともありますし、ホームで連敗中という状況を踏まえても、浦和としては難しい相手ながらもなんとか勝ち点と手ごたえを得たい、という位置づけの試合だったと思います。

両チームのスタメンと狙い

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名古屋は前田がトップ下の4-4-1-1か4-2-3-1だったのかもしれないけれど、正直ピッチを観ていてもよくわからなかった。

浦和ベンチ:福島、岩波、山中、柏木、涼太郎、レオナルド、武藤

名古屋ベンチ:武田、藤井、成瀬、阿部、シミッチ、シャビエル、山崎

連戦の両チームですが、今節の選手起用にはちょっとした差があって、浦和は5枚、名古屋は2枚のスタメン変更でした。浦和が中盤を総とっかえしたのに対して名古屋はほとんどメンバーを変えずに試合に臨んでいますが、この辺りはお互いにポジティブにもネガティブにも捉えられるところだと思います。浦和はメンバーを変えて戦えるほど選手層が厚いという人もいるかもしれないし、いやいや固められるほどのメンバーがいないんだよと思う人もいるでしょう。事実として言えることはこれまでの連戦で柴戸を酷使していたので今節のメンバー外は仕方ないということと、青木が起用できない状況の中での残るCHの選択肢は柏木か長澤の二択で、柏木は横浜FC戦、FC東京戦と続けて長時間出場したのでプレータイムマネジメントとしては長澤が出場するのは妥当ということ、そして水曜日に累積での出場停止を消化してコンディションの良い関根とここ数試合途中出場でもオンザボールで違いを見せていたマルティノスを起用したSHの人選も妥当なもので、結論から言えば浦和は名古屋相手にどうこうを考えたわけではないということでしょうか。しいて言えばここ数試合レオナルドの出場時間が減っているのが気になるかな、という感じでした。

一方の名古屋は水曜日からの選手交代は2名のみ。おそらくフィッカデンティ監督の色だと思いますが、名古屋はメンバー固定の傾向が強いチームで、両チームの出場時間ランキングを比べると以下のような感じになります。

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まあ、ただ監督がそういう起用をしているだけと言えばそれだけだけれども。

 名古屋のわかりやすい特徴は固定された守備隊の起用です。また、リスクを冒さない中でも個人で局面を変えられるマテウスが重宝されているのがよくわかります。実はこの比較、浦和のほうが消化試合数が多い関係で出場時間の絶対値を比較するのは要注意なんですが、それでも1,500分以上出場の選手が浦和1に対して名古屋6というのは明確な傾向かと思います。

というわけで、紆余曲折や過密日程を経て、新しいサッカースタイルに取り組む中で出場機会が分散し世代交代を進めつつある浦和と、フィッカデンティ監督の下固定気味のメンバーで堅く戦っている名古屋との対戦と言える今節ですが、「やり方を変えない」名古屋に対して浦和がどんなやり方を取るのか、そして前回の6失点のリベンジではないですが、成長を見せることが出来るのかどうか、というところをポイントに置いた方もいたのではないかと思います。

横浜FC戦、FC東京戦の2試合の記憶を共有できる浦和ファン・サポーターの方であれば実感があると思いますが、ここ2試合の浦和は対戦相手に露骨に構えられ、ボールを持たされるような展開のゲームを戦ってきました。ボール保持率はそれぞれ56%、65%と対戦相手を上回り、その対策として生粋のボールプレーヤーである柏木陽介をCHで起用し、それがはまった横浜FC戦ではあまりの変貌ぶりに「今までのサッカーやめちゃったの?」と混乱する我々、という光景が出来上がったという流れです。

そうした戦術というかゲームプランの面では、普段から構えて守ることの多い名古屋も浦和相手にトランジションゲームをすることは望まないはずで、というかこの3チームでは一番堅め志向な監督が率いているのが名古屋です。従って浦和はみたびボール保持を問われる展開になるだろうという中で、一方その対策の肝であった浦和の太陽・柏木陽介横浜FC戦をフル出場、FC東京戦も85分までプレーしており、それまで1試合おきにスタメンに名を連ねるような起用だったことを考えれば3戦連続のスタメンは考えにくいところでした。従ってこの試合を観るうえで個人的なテーマを与えるならば、柏木は使えないけれどボール保持は問われるという時に何が見せられますか、どう戦いますか、という部分でした。

命拾い

予想に反して、序盤は名古屋が浦和に激しくプレッシャーに来る展開。今季の浦和の定番であるキックオフ直後のロングボールを跳ね返されたところから西川まで押し戻され、キックミスから名古屋ボールになる等、序盤に圧力をかけたのは名古屋の方でした。余談ですがキックオフ直後のプレーでミスが出るのは個人的に不吉な印象があって、それが特に相手ボールになるようなミスの場合は「今日は難しいかなあ」という目で見てしまう傾向があります。

そんな僕の個人的なオカルトが反映されたわけではないでしょうが、いきなり名古屋に決定機。名古屋の右サイドで関根からボールを奪うと中央のパス交換を経て左に開いた相馬へ、金崎がチャンネルを抜けて浦和の最終ラインを動かすと、米本に戻したパスをダイレクトでエリア内の前田へ。ターンから左足を振りぬいたシュートはファーポストをかすって抜けていきました。これが決まっていたらメンタル的にかなりきつかったと思いますので、浦和としては助かったシーンでした。浦和にとってこのシーンは、浦和のやり方的に空いてしまう部分、そしてマルティノスを起用した典型的なリスクが顕在化したシーンだったと言えるかもしれません。清水戦でもそうでしたが、マルティノスはWGの選手らしくボールが自分を超えていくと足が止まってしまう傾向があり、名古屋がサイドを崩すために人数をかけた関係で長澤が出て行ったことで空いたスペースに米本が入り込み、そこがフリーなのでトーマスがマークを捨てて出て行った裏を使われてしまった、という場面でした。

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凄く素早く運ばれた場面でもないので、ボールラインに取り残された選手がプレーを止めているのが主因で、要はなんでもない場面なのに単純に必要な人数が足りていない。関根はプレスに行った後だったのでそもそも遠かったけれど。

6分にも名古屋に良いシーン。またも外に開いた相馬の1on1からCKをゲットし、インスイングと見せかけてマテウスのアウトスイングのボールを蹴りこむと、ファーの金崎がフリーでヘッド。名古屋が普段からセットプレーで金崎をファーに置いているかどうかはわからないのですが、この試合を通じて名古屋はCKでは金崎をファーに置いていましたので、浦和のゾーンディフェンスを構成する選手の中で一番小さい関根の頭の上を狙っていたかもしれません。

嫌な流れで始まった試合ですが、表があれば裏があるということで、この雰囲気を変えてくれたのもマルティノスでした。8分にオープンな態勢でボールを受けると相馬を揺さぶりながらクロス。9分にも低めの位置でボールを受けると安易に寄せてきた吉田を躱して突破、右足でのクロスを健勇がスルーすると興梠がトラップと同時に反転して左足シュートの得意な形。ランゲラックのスーパーセーブで得点にはなりませんでしたが、このシーンが出来たことで必要以上に受けに回らず、前向きにプレー出来たという部分があったかもしれません。

15分以降は名古屋のプレッシングも弱まり、浦和がボールを握る展開。飲水タイムを経て、浦和のボール保持率が一気に高まっていきました。名古屋は4-4-2でセットした状態で浦和の攻撃を受ける分には大きな穴も出来ず、浦和のボール保持の質が高くないこともあって安定して守れていた印象がありますが、一方でカウンターやボール保持からの攻撃の部分では目立ったものがなく、起点になれそうな金崎も、トーマスの前回対戦の反省あってか決定的な仕事はさせていなかったように思います。

前回対戦時は意欲的にハーフスペースを使い、浦和の4-4-2ブロックの間を取りながら浦和の最終ラインの選手を裏返し、オープンスペースを享受したアタッカーが躍動する、という形でゴールを量産した名古屋ですが、今節はそういった意図を明らかに持っておらず、どちらかというと両SHが開いてWGのように振る舞っており、ビルドアップも中央を使うというよりはサイドに簡単に預けていました。最初のシュートシーンを観ても前田直輝はハーフスペースでの仕事も十分できると思いますし、後ろの選手たちが極端に繋げない選手という印象もないのですが、そういったことをやらないというのは監督の方向性なのでしょう。前回対戦時から今節までの文脈を追ってこの辺りを考察するのは僕のやることではありませんが、選手層(単純な人数)や起用方針はあるとしても、あれだけのアタッカーを持っていながら取り組まないというのは名古屋ファンにとってはもどかしいかもしれません。もしかしたらフィッカデンティ監督は序盤15分間のプレッシングで浦和の出鼻を挫き、ここ2試合のようにリスク承知で中央への縦パスを強引に狙う展開を浦和に強いたい、そして浦和が勝手に作ってくれるオープンスペースを突破力のある両SHに使わせたいと考えていたのかもしれませんが、もしそうだとすれば結果的に目論見が外れた、という序盤の展開だったかもしれません。浦和としてはある種の命拾いをした序盤だったと言えますね。

前半の後半、いわゆる2Qの時間帯はお互いにワンチャンスずつ。30分までの浦和のボール保持の時間帯をやり過ごした名古屋は相馬がマルティノスにファールを貰うと、マテウスの左足での鋭いFK。西川が難しいバウンドをファンブルしたところを丸山が詰めますが西川がギリギリでグッセー。その後も名古屋が圧力を強める時間帯が続いたものの、興梠がポストプレーでぐちゃっとなりながらもキープし、タッチライン際を上がっていたマルティノスを見逃さずに完璧なパス。エリア内で左足のクロスと見せての切り替えしでさらに深い位置を取ろうとしたところに吉田が滑り込み、ファールでPKかと思われましたが、判定はノーファール。個人的にはファールで妥当ではないかと思いますが、どうなんでしょうね。判定は審判界の偉い人とか詳しい人に検討してもらえればいいんですが、あれだけフルスピードで突っ込んでいくプレーは反射的に怖いと思って避けるのは人間として仕方ない気がします。自分から跳んだよねと言われればそうですけど、そりゃ飛ぶでしょ、と思っちゃうんですけどね。

とにかく僕が思うのは小野伸二田中達也山田直輝といった選手たちのキャリアをぶち壊すほどの大けがのことで、プレーに入っている足元にスライディングが入るシーンはだいたいビビりながら観ています。まあ直輝の怪我は本人のプレースタイルの部分もありますけども、そういう意味でも吉田が足を引いたのはとっさに危ない状況だと判断したからでしょうし、その判断自体は良かったと思うんですけど、そういうプレーだったんじゃないの?とは思います。というわけで、個人的にはPKの細かい要件を語る前にまず怪我がなくてよかったという感想でした。

で、結局お互いに決定的なチャンスを一度作るものの決まらないという展開だった前半ですが、ゲームの流れよりも、ボールを保持しながらもなかなかゴール前に侵入していく回数が増えなかった浦和のボール保持についてみていきたいと思います。

正しい取り組み

このゲーム、特に前半の浦和の戦いぶりに僕は概ね前向きな印象を持って観ていたんですが、それは結果や決定機の数がどうこうというよりも、今季大槻監督が目指しているボールの動かし方、前進のさせ方への取り組みがよく感じられたからでした。とはいえ意図的にボールを動かしてゴールに迫れたシーンはほとんどなかったので、それが正しい取り組みだとしても結果としては悪いという評価になるでしょうし、名古屋の戦い方もあって「ボールを持たされていただけだろう」と言われれば、まあそうかもねと答えるしかないことも確かです。ただ僕は継続的な取り組みがピッチ上に見られた方が勝ち負けよりも浦和を追いかけていくモチベーションになるタイプなので、その意味で今節の戦いぶりは有難かったし、浦和が今季に持たせるべき意味を考えたときにも、個人的には正しい取り組みをしていると思っています。

具体的な部分に入っていくと、今節のボール保持時の取り組みからは、直近の試合の反省点とすべき部分の改善が見られたのではないかと思っています。前半15分以降は最終ラインではボールが持てるようになった浦和ですが、今季これまで取り組んできた立ち位置とボールの前進で言えば、CHが縦関係となって相手の2トップに対して最終ラインでの数的優位を作るという部分と、CHを使って相手の2トップに対してズレを作ることで脇からボールを運んでいく、という部分についてポジティブな取り組みがみられたと思います。

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もちろん、CHがターンでマークを剥がせれば最高だし、エヴェルトンは何度かそれを見せていた。そうでなくとも、こうやってCHを使うことで相手の第一プレッシングラインをクリーンに超えていく、安全に運び出していく仕組みが出来るとかなり安定するはず。

縦関係になるCHの高さを使って2トップを外し、前向きにボールをもった最終ラインの選手が上がるという状況が狙って何度も作れるようになれば、ボール保持の第一段階はまずまずと言えると思います。この時横パスだけで2トップに対してズレを作ろうとすると2度追いに捕まることがあるのと、ボールを横から受けてから前に運ぶ際の視野の確保状況によっては前節のトーマスのような事故が起こるので、ボールを運ぶことになる選手に最初から前向きにボールを渡すというのは最終ラインの選手のスキルを考えても重要な点かなと思いました。この高さのズレを使って前を向かせるプレーは、マルティノスが降りてきて長澤につけた場面など最終ライン以外でも出ることがあったので、チーム全体に意識づけがある部分と考えています。実際今季途中から新しくなったアップのメニューにも同じようなものがあるので、ピッチで出るまでに取り組みが浸透してきた部分なのかなと。

で、ここからうまくゴール前まで運んでいければいいんですが、相手のブロックに入っていくのは次の段階のチャレンジと言えます。今季の浦和が最も苦労している部分がこの点で、問題点としてはざっくり以下が挙げられるかなと思います。

  1. フリーで運んで、2on1を活かす位置まで我慢できない。2on1になる前にボールを手放してしまう。
  2. 前線もサポートが早すぎて2on1を作れていない。
  3. また、サポートのために選手が降りるのでにゴールに背を向けてしまう。(後ろから横に入るサポートが欲しい)
  4. 立ち位置の意識は強いが、使いたいところが被ってしまう
  5. 二人目は意識があるが、三人目がない。(次に空くところ)

 大槻監督のサッカーをここまで観ている限り、そこまで複雑なコンビネーションを目指そうとは思っていないと思いますので、このサッカーが上手くできているかどうかを観るにはコンビネーションの最小単位である2on1の状況をいかにクリーンに作って攻略しているか、というのが指標になるような気がしています。その意味で言うと、前述の運ぶ状況を作るパス交換だったり、エヴェルトンや長澤のターンでうまくボールを運ぶ状況までは作れていたのですが、ボールホルダーがまだ運べるのにパスしてしまうという状況が多く、もどかしい感じがありました。そのまま運んでいけば味方のマークについた選手はボールに出てマークを捨てるかボールを放置するかを選ばなければいけないわけですが、こうした選択肢を迫る状況、つまり局地的に2on1になる状況の前にボールホルダーがパスを選択してしまうと、結局パスを受けた選手のマークは外れていないので状況が良くなっていません。最初の一歩で貯金を作れるようになったけれど、二歩目で貯金をぶん投げてしまう状況と言えば良いでしょうか。

上記がボールホルダー側の問題であれば、2.と3.は受ける側の問題です。ボールホルダーをサポートしようという意識が強いのだと思うのですが、あまりに早いタイミングでサポートに入ると良い位置で2on1を作れません。またボールホルダーの近くで背中を向けてパスを受けても結局選択肢も優位性も減っているので貯金を浪費しているだけですから、運んだはいいけどすぐ詰まっちゃうよ????という感じでやり直す場面が多かったかもしれません。

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もし一定の高さを保って待っていれば(黄色矢印)、もしくはボールを運ぶ槙野に対して 名古屋のどの選手がケアをするかリアクションを待てれば、どこかで選手が空いたはず。 槙野・関根vsオジェソク、もしくは槙野・宇賀神vsマテウスの2on1が作れた可能性がある。

4.についても今季の浦和あるあるで、相手の守備ブロックの間、そして相手選手がボールに寄ったことで空いたスペースを使うというのが大槻監督のボール保持時のコンセプトの一つだと思いますが、今のところ近い選手が同じスペースを見つけて使おうとしているので、浦和の選手の立ち位置が頻繁に被ることがあります。この点についても今節劇的に改善されたかというとそうではなかったので、運べるシーンはあるのにゴール前に行けない、という部分では解決すべき要因の一つです。これと関連するのが5.で、相手の守備者はボールの状況によってポジションを変えなければいけないので、ボールが動かせれば相手は基本的に動きます。一つパスが出て、それに反応した相手選手の背中を受ける動きがあればかなり違うと思うのですが、こうした部分もまだボールホルダーへのサポートという意識が強すぎるのか、うまく表現されていませんでした。ただこれについては大槻監督からの長澤へのコーチングで「和輝、その次(次のボールホルダーのパスコース)だ、その次だ!」という声が聞こえていましたので、今後はさらに意識されていくものだと思います。

あとは単純にパスコースがある時に使えないとか、ターンの方向が違うとか、パスをどちらの足に出すのかとか、タイミングが合っていないとかいろいろあるのですが、もはや選手の適正を嘆くのも飽きましたし、サッカーはミスのスポーツですし、上から観ている我々には観えていてもピッチの目線でそのスペースを認知するというのは全く別の次元の話なので、そこは頑張って、という感じです。

というわけで最終ラインからボールを運ぶ態勢を作り出し、次の段階へ進むという点においては良い取り組みが見えた前半でしたが、お互いにゴールは決まらず0-0で後半へ。

 超えられない60分、失点からの手詰まり: 引き続きの課題

詳しく数字を調べていないのであれですが、今季のレッズを観てきた印象として、拮抗した試合展開で60分まで我慢できない、というのがあります。後半に入る時にも60分まで無失点なら何かあるかな~という話を仲間としていたのですが、まさにそこまでたどり着けずに55分で失点することとなってしまいました。さすがに60分までに失点してしまうことに戦術的な何かがあるとは思えないのですが、じゃあ選手の集中力が足りないのかと言われるとそういう問題なのかな?と思ってしまうし、なかなか難しいところです。うまい仮説を立てるのが難しいですが、今季の浦和は比較的失点リスクが高いプレーをしていて、その危険度が1試合に1.5失点くらいするレベルで、確率論で60分までには1失点するのが妥当なのだ、と言われると納得できる気がします。失点リスクの高いプレーというのが、最終ラインが5枚から4枚になったことに起因するのか、SHの守備の不足なのか、スライドやチャンネルラン対応でポジションがすぐ崩れてしまう中盤の守備組織の話なのか、プレッシングに行った裏側なのかと考えると、まあ全部の和なのでしょう。

失点のシーンはマテウスが左サイドに出張してからドリブルで状況を打開したわけですが、その直前のプレーから中央~左サイドに流れていて、もっというとその前のプレーでは良いクロスを上げてあわやというシーンを作っていたので、一気にマテウスの存在感がでた後半の立ち上がりでした。名古屋ベンチの中で後半最初はマテウスで、みたいな作戦があったとしたら面白いですが、どうなんでしょう。少なくとも前半は自分のサイドから逸脱せずにプレーしていた印象があるので、状況を打開するためにプレーする位置を変えていたというのは間違いないと思います。ずっと自陣に引くというよりも、ボール保持で前進したら浦和のビルドアップを狙ってカウンタープレッシングをしようという意図も名古屋にはあったかもしれないので、前半のように外側から単騎で攻めるというよりも後半は片側に人を集めてボールを失っても寄せやすいように、という狙いだったでしょうか。

失点直後から交代カードを検討していた浦和ベンチは、58分に選手交代。関根を下げて柏木を投入、さらに健勇→レオナルド。柏木はCHに入りましたが、おそらく今後はこの起用が基本になるのでしょう。自身のことを「中央の選手」だと宣言したコメントの影響力は分かりませんが、まあ後半負けていて相手が引いてくるのが明白な中での投入というのは個人的には納得です。交代が関根だったのは、対面のオジェソクに一回も勝てていなかったからでしょうか。関根は昔からオジェソクを抜けない印象があったので苦手としているかもしれません。だったら早い段階でサイド入れ替えを試しても良かったんじゃないの、とも思いましたが、長澤を右に残す決断の理由は何だったんでしょう。もし聞けるなら聞いてみたいポイントです。特にこの試合は両SHが中と外を使い分けていて、これまでの中央偏重の立ち位置とは明らかに違うものがあったので、サイド攻撃ができるドリブラーを使うというのはゲームのポイントだと思うのですが。もしかすると、柏木をCHで起用して中央からの打開を狙っていきたいという部分からSHのキャラクターを変えた、という可能性はあって、そうであれば監督が意図的にピッチ上で絡み合う選手の特徴をコントロールしようとしているということなので、それはそれで面白いところです。実際、61分の長澤のハーフスペース受けから大外の橋岡へ、斜め後ろでサポートに入った柏木がシンプルにエリア内のレオナルドを使う、といった流れは期待していた現象に近い部分だったかなと思います。

そう考えると、このシーンの直後に投入された涼太郎に求められていたことも明確になります。彼の特徴でもある間受けとターン、フリックを使ったコンビネーションに関わる創造性の部分を期待したということでしょう。この仕事をさせるなら長澤よりも使ってみたくなる選手でしょうし、久しぶりにベンチに置いたというのはそれだけコンディションが良いところを大原で見せていたのだと思います。

ところが、その後浦和は沈黙。連戦の疲労もあってかペースが上がらないまま時間を使ってしまった感じでしたが、前半はよくチャレンジできていた2トップの背後でポジションを取るCHを使った相手の一列目を超える狙いがなかなか出なかった印象でした。何故かはいろいろと理由があると思いますが、名古屋の2トップが中央を意識的に塞いでいたことや、柏木がCBの脇に降りる割にエヴェルトンも最終ラインに降りてしまうなど、立ち位置の部分で少し整理を失ってしまったかもしれません。その分槙野が途中出場のシャビエルの脇から持ち上がろうとするシーンもありましたが、2回ともファール気味に潰されたように、クリーンな前進とは言えないものでした。柏木としては後ろで+1になって、ボールの前進とともに自分も前に出て中盤、前線でも+1であり続けるというのが彼のスタイルですが、今節はそういった形が出来る回数も少なかったかなと思います。

先制後はゲームの進め方が明確になった名古屋が2トップまで中盤に戻ってブロックを組む形に入ったことで、立ち位置でどうこうするスペースは生まれず、その分スペースを得たトーマスからいくつかの縦パス、柏木からもエリア内へボールが入る場面があったものの、崩しの部分が繋がらずにランゲラックや名古屋の守備陣を脅かすには至りませんでした。対戦相手の質にもよりますが、0-0ならまだしもリードを奪われてどっしり構えられてしまうと立ち位置でどうこうでは手詰まりになり、山中などの飛び道具を使おうにもいまいち意図が共有できず、攻め手をほとんど失ってしまうというのは引き続きの課題と言えるでしょう。これが優勝を狙うチームであればこういう時の対処に取り組んで引き出しを増やすのでしょうが、現実的に言って今の浦和は基礎の基礎、土台の部分をまず安定して見せられるようになり、0-0の展開を自分たちのものに出来るようにするのが先、という感じです。

で、ゲームは終盤、名古屋が安定したゲームバランスを崩さないように交代枠を2枚しか使わない一方で、浦和は武藤と山中も投入しゴールに迫ろうとしましたが、85分にCKからの被カウンターでシャビエルを倒したトーマスがDOGSOで一発退場。これで万事休した浦和は90分に柏木のFKから相手エリア内でスクランブルを作りますがゴールならず、そのまま試合終了。ホームでの無得点の連敗を4に伸ばす、厳しい0-1での敗戦となりました。

採点

さいてん。

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「1.個の能力を最大限に発揮する」は4点。インパクトのある活躍をしたマルティノスは良かったと思います。彼の絡んだプレーから失点していますが、ほとんどPKというシーンも作りましたし、起用の収支は取れていたのではないでしょうか。長谷川健太監督のチームがそうなりがちでしたが、ブロックを組んで守って、その後前に出て行く仕組みが不十分な場合に個人で長い距離を運んで陣地を回復できる選手が重宝されるという意味でも有用だったかなと思います。逆サイドの関根もそういうプレーが出来るはずなんで、そうした意図のある両SHかなと思いました。今節はオジェソクの前に沈黙してしまっていましたが。ビルドアップの初手の部分での取り組みやマルティノスのオンザボールでのプレーなど良い面もあった今節でしたが、そもそもゴールに迫る部分でもっと輝けるはずの選手たちがいることを考えると、やはり評価としては難しくなってしまう、という感じでしょうか。

「2.前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」は3.5点。ビルドアップでの横パスの多さや、前に当てて落とすプレーからオープンでクリーンな前進に繋げられる回数が少なかったために印象論では評価しにくいですが、やっていることは間違っていないし、消極的なプレーに終始したという感じはしませんでした。ただボールを長く保持してぎこちなくビルドアップに取り組む姿を観ていても「情熱的だ!」と感じることは少ないので、やはりこういうゲーム展開になってしまうこと自体が本来目指しているものとは違うし、ボール保持は出来るだけ早く最低限に仕上げて、相手ゴールに迫ったところからのトランジションまでで勝負、というゲームに持ち込みたいところです。相手ゴールに効率的に、そして効果的に迫れないが故にその次の局面であるネガティブトランジションでのカウンタープレッシングが出せないとか、ボールを奪っても素早く前進して早く攻め切る部分の回数を増やせないという感じはあるので取り組みは間違っていないと思いますが、チャレンジするにしても時間がかかり過ぎだよね、という感想は否めません。

ただ、柏木に俗人的に解決してもらうという方法もある中で引き続き大槻監督の目指す取り組みを継続し、チームとして超えていきたい壁や成長のステップから道を外したわけではないということが分かったのは小さいけれどポジティブな点と言えるでしょう。相手の第一ラインを超えたところからうまく2on1を作れないとか、次のボールホルダーのパスコースに入れないという課題は引き続き目の前に立ちはだかっているわけですが、一歩目でクリーンな前進、最終ラインの選手がオープンに前を向く場面を安定して作れるようになれば、今度は中盤の選手がそれを前提に次のポジションを取る、という流れが出来てきて、次第にスムーズに空いた場所を使って前進することが出来るようになるのではないかと期待しています。一歩目で躓きそうに、おっかなびっくりプレーしているのであれば、ボールが前にくることを信じてその次の展開に備えることはなかなか出来ないので、まだまだ閉塞感がありますがここは続けていくしかないんじゃないかと思っています。

「3.攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」は3点。川崎戦以降のゲームでは継続してボール保持を問われるゲームが続ていますが、前述の通り早くこのステップをそつなくこなせるようにならないと自分たちの勝負したい局面を増やすことは難しいのかなという印象です。ただそうとは言えボール保持の局面が注目され過ぎるというか、チーム作りのテーマがぼやけるほどにボール保持に向き合いすぎているきらいもあるので、大槻監督が試合後にコメントした通り、ボール保持の部分にも継続して取り組みながら、チームとしてははっきりとボールを捨てて前線からのプレッシングを仕掛ける場面を時には用意してもいいのかなという気がします。

 --連戦で時間をかけての修正が難しかったと思うが、次の1週間でどういったところをテコ入れしたいか。
少し回復もできるので、1つは守備のところをもう少し(やりたい)。前からもう少しプレッシャーを掛けて、構えてから取って攻撃をするのではなくて、というところはやりたいです。あとは攻撃から守備の切れ目のところはもう少し強度を上げるだとか、整理したいと思います。もう1つは最後のアタッキングサードのところは取り組まなければいけないと思います。

www.jleague.jp

 5連戦を戦う中ではなかなか戦術的な積み上げも出来ず、結果が出てこない中で迷走気味に見えることもあった浦和ですが、大槻監督のこのコメントを読む限りではチーム作りの方向性は失われていないように思います。結果は全くと言っていいほど出なくなってしまった後半戦ですが、今節見えたようなビルドアップの初手の部分への取り組みと、大槻監督の言葉通り「アタッキングサードのところ」の整理、そして本来コンセプトの根幹であるはずのプレッシングの部分にもう一度取り組んで、「こういうゲームが浦和の目指すところに近いよね」と言えるようなゲームを見せてくれることを期待しています。これは期待が大いに入っているので話半分ですが、次の試合まで1週間あるので「アタッキングサードのところ」の取り組みについてはこれまでの原則ベースの指導ではなく明確なパターンや型を導入していくのではないか、という気もしています。

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今節の黒星で浦和はついに10位に後退。勝ち点28の広島、大分の下は差がありますが、このままずるずる勝てずに沈んでいく状況は避けたいところ。難しい対戦相手が続きますが、少しずつ取り組みが形になることが増えてきた中で、どこかで明確なターニングポイントになるような勝利、そして充実した内容の得点が欲しいところです。

 

今節も長文にお付き合い頂きありがとうございました。