96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

徳島サポーターと語る、リカルド・ロドリゲス監督と今季の浦和レッズについて(後編)

前編はこちら。

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「岩尾役」を任せるなら、もしくは…

96(以下黒字):で、岩尾選手の名前が出たんでここは無視できないと思うんですが、ピッチの内外で岩尾選手の存在が絶大だったのは浦和ファンもなんとなく知るところです。特にピッチ内において、彼が不可欠だったポイントはどこでしょう?

C&Dさん(以下青字):まずは怪我をせずピッチに立ち続けて、しかもパフォーマンスの波が小さいというのが何より大きいと思います。あと彼の場合は、状況判断の能力がずば抜けてるのかなと。相手がどのような形でプレッシングに来るのか、から始まり、自分がどこに立てば相手が嫌がるかとか、味方の選手をフリーにするにはどうすればいいかとかを常に正確に判断できてる気がします。

そのうえで、攻撃のスピードアップ、スローダウン、サイドチェンジとかパスを通して仲間にメッセージを伝えることができる。常にピッチを俯瞰的に認識できているから、守備の時にも相手より一歩早くスペースをカバーすることが可能になるのかなと思いますね。

まさにゲームメーカーですね。今、浦和ファンのリカルドへの期待は凄く高くて、基本的にみんなわくわくしていると思うんですが、一方で岩尾選手のようなタイプ、チームのリーダーという意味でもそうですが、特にピッチ内に関して言えば相手を見ながら相手も味方も動かせるタイプの選手がボランチにいないというのを心配する人もいます。実際、影響は大きいと思いますか?

大きいと思いますよ。今年小西が飛躍的に伸びて注目されましたけど、小西がノビノビとプレーできるのも岩尾がいるからこそだと思いますし。チームを軌道に乗せる意味でも、若手を伸ばす意味でも岩尾のような存在を早く確立させたいとリカルドも思ってるのではないでしょうか。

もしくは「岩尾がいなくたってやれるところを証明する!」と息巻いてるかもしれませんけど。笑

その点、リカルドは結構野心家なイメージがあります。笑

彼は頭が良いと思うので「岩尾抜きでどこまでできるの?」って見られてることもある程度気づいてるとは思いますね。

それは結構ありそうですよね。そういうのも含めて、浦和では徳島でやったこととは多少違う部分を強調するのかもしれないとも思います。

浦和では徳島の時とは多少違う部分を強調するのでは?という点に関しては僕も同意見です。

ぼくは浦和の試合をほとんど見てないので分からないのですが、岩尾のような役割を任せるとしたら誰になると思いますか?

いや~~~かなり難しいです。笑

相手を見ながらサッカーが出来るという意味では、やっぱり柏木陽介は図抜けていると思っています。ミシャの時に限らず、一人でオフェンスを作ってしまうコンダクターとしての能力はJ屈指のレベルにあります。ただプレー強度やカバーエリアの部分はどうしても限界があるし、パフォーマンスの波も大きいタイプですね。また、彼を真ん中に置くとあまりに存在感があるので周りが柏木しか見なくなるという弊害もあったかなと思います。同じ左利きとして、タイプは小西選手の方が近いかも。

今季のスカッドで言えば、ボランチは湘南から獲得した金子大毅と柴戸海が軸になりそうです。その他は柏木と阿部ちゃんのベテランがいて、新加入では流経大から獲得したユース出身の伊藤敦樹もいます。伊藤はパスを出せる大型ボランチですが、これまでの話を聞いた感じと機動力を考えると、バックラインで使うのかなと思っています。縦パスをズバズバ出せるCBはリカルドにとっても魅力的かなと。そうするとデメリットを飲み込んで柏木を使うか、金子・柴戸のコンビで多少違うサッカーを作るか、と言う感じでしょうか。ただ、琉球から獲得した小泉佳穂もボランチで使えないかな?とも思っています。

ああそうか、金子を獲ったんでしたね!一番適性が高そうなのは柏木に思えますけど、守備の部分が…ってなりますよねえ。小泉あたりを使えたら、確かに面白そうですけど。

浦和の場合だと、どうしても「3年計画」で定義したトランジション重視、ファストブレイク重視のサッカーを下敷きにしないと筋が合わなくなるというクラブ側の事情(リクエスト)もあると思うので、そこは多少意識するのかなと。だからボール保持率も徳島時代より少し下げて、あくまでプレッシングからのファストブレイクが出来ない時、気候や展開的に走り続けられない時の対応策としてボール保持も整理する、そういうやり方なら筋も通って理解しやすいですが、実際どうなるかは開けてみないとわかりませんね。

明本の獲得を見ても、トランジション、ファストブレイク重視ってのはリカルドも考えてると思いますね。徳島の時は次々と主力を引き抜かれてリカルドも頭を抱えていたと思いますけど、浦和ではそういった心配も無さそうですし、上手くソフトランディングさせるのではと僕は思ってます。

「相手の出方を見てから自分たちで判断するという部分も大きい」

リカルド・ヴォルティスはビルドアップが注目されましたけど、ボール非保持やネガティブトランジションでのプレッシングは一貫して強調していたと思っていいですか?

そうですね。ウタカが前線にいた時以外は、基本的に前線からのプレッシングは絶対です。

あーウタカ!これも結構重要なテーマなんですが、浦和でリカルドが苦労しそうなのはトップの人選だと思うんです。興梠は怪我で出遅れが決まっていて、垣田選手役が上手くできそうなのは杉本健勇ですが、数字の部分で結果を出しているのはレオナルドです。ただレオは生粋のボックスストライカーで、サイドに流れたりビルドアップを助けたりというタイプではありません。ウタカよりはプレッシングに走ってくれますが、タイプ的にはウタカをどう使ったかが参考になると思っています。ウタカがいたときのリカルドの起用や徳島のサッカーはそれ以外の時期とは結構違いました?

そうですね、ウタカを起用するときは上で出た大分戦のようにブロックを敷いてという守備が基本になっていたように思います。彼は守備をしなくてもボールを預ければキープしてくれるし起点を作ってくれるので。

ただウタカが加入した2018年の後半って、岩尾も後に「本来の徳島のサッカーではなかった」と語ってましたし、主力が4人抜かれた後だったので事実上チームが崩壊してたみたいなんですよね。昇格という望みが絶たれたあとは、もはやチームとしての体をなしていなかったので、どこまで参考になるかはわかりません。笑

じゃあやっぱりトップの選手は運動量豊富に動き回ってくれるタイプの方が重宝されそうですね。レオの決定力は間違いないんですが、他の10人でボールを前進させて彼にボールを届けることができなかったのが昨季の浦和だったので、このあたりのバランスがどうなるかは注目ですね。

で、ちょっと浦和の話になってきたんで、確認したいことがあるんですが、4バックをベースにするとして、やっぱりボール保持時に5レーンを埋めるような可変は採用する気がしています。その時にメジャーな方法論(戦術)として画像の2パターンがあると思うんですが、昨季までのリカルド・ヴォルティスではどちらが主流でしたか?それとも、特に明確な使い分けはない感じですか?ちょっと徳島を観た印象では、片方のサイドを上げて、ボランチ2枚は動かさないような気がしました。

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浦和ではどのような形を作るだろうか?

徳島では両方のパターンがあったと思います。DFの選手だけで3枚残ってる時もありましたし、逆に両SBをあげてボランチが落ちるのもありました。これはSBの選手の特徴にもよるのかなと思います。ただ落ちる時も特に岩尾なんかは、SBが上がったスペースに落ちるというパターンも多かったと思いますね。

そうなんですね!聞いてよかったです。あまり型で決めない感じなんですね。ここでも岩尾選手の状況把握能力が必須だったことがわかるので、やっぱりボランチの選手の戦術的素養が気になるポイントになりそうです。

徳島でいうと(SBの)岸本・ジエゴあたりはビルドアップの局面よりも前で仕事をさせた方が良さが生きるタイプなので後ろは2枚にして、ジエゴが田向に変わったら後ろを3枚で運び出すみたいなのもやってましたね。

そういうのって選手判断なんでしょうか?これはサポーター視点だと断言できないのはよくわかってるんですが。

いやあ難しいですね。笑

ただ徳島の試合を見てると、特に序盤のゴールキックなどでは、GK、CB、岩尾あたりがボールをセットして相手の陣形をかなり確認してるのがよく分かるんですよ。なので、相手の出方を見てから自分たちで判断するという部分も大きいのかなと思ってます。

たしかにゴールキックの時にGKとCBや岩尾選手が並んでいる姿は記憶にあります。で、繋ぐかと思いきや普通に蹴っ飛ばしたり。相手を見るっていうのがかなり重要なキーワードですね。

そうですそうです。ここは繋がんのかい!ってときもありますしね。そういう点に注目しても面白いと思います。

「たぶん伊藤くんは絶好のチャンスですね。」

おかげさまで、なんとなくイメージが掴めてきました。ここからは雑談みたいな感じなんですが、画像は僕が独断と偏見で今季の予想スカッドをポジション別に振り分けてみた図なんですが、気になるところとかあります?リカルドはこの選手好きそうだなあとか。わからない選手もいると思うんで、ざっくばらんで構いません。

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4バックの場合

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3バックの場合

まず、個人昇格組はもちろんなんですけど、西はリカルドがすごく好きそうなタイプだなと思いました。笑

正直、一番相手を見てサッカーできそうな選手は西ですね。笑

あとやっぱりレオナルドはスタートじゃないかもですね。笑

やっぱそう思います?

そうですね。たぶん健勇、明本でスタートしてどうしてもゴールが欲しい展開の時にレオナルドってなりそうな気が。レオナルドがそれで納得するかどうかですけど。笑

まあ納得はしない気がします。レオがプレーをある程度変えられればもちろん使うだろうし、点がとれない試合が続けばレオナルドを軸にしたチーム作りにシフトする可能性はありますけど。

ちなみに上記のCBで左利きっていましたっけ?

いませんね。そこも問題です。最終ラインの選手で両足でプレーできそうなのはルーキーの伊藤、藤原でしょうか。

ああそうですか。ではたぶん伊藤くんは絶好のチャンスですね。

徳島では左足が使えるCBは常に確保していた感じですか?

CB専門職とは限りませんけど、CBもできるSBみたいな選手は常に用意してましたね。一年目はヴァシリェヴィッチという助っ人がいました。二年目は井筒が台頭して、三年目は内田、今年はジエゴがいて田向も左足をある程度使えるので。戦術理解度の高い左利き(両利き)の選手は重宝されると思います。

なるほど。じゃあ左足でプレーできるCBという立ち位置をアピールできれば大抜擢のチャンスですね。昨季の浦和はCBを結構入れ替えながら戦いましたが、左CBは結局槙野に落ち着いて、ビルドアップ能力というよりは対人性能やリーダーシップを重宝していたという感じでした。そういう意味では、戦術理解度の高い左利きCBは引き続き補強ポイントになるかもしれませんね。

「年齢にはこだわらないと思いますよ。」

あと徳島は「育てて売る」という方針を強化部も打ち出してましたし、リカルドもそのリクエストに十分すぎるほど答えてくれたと思いますけど、浦和ではどういうチョイスでいくのか楽しみですね。

まさにその話で、浦和レッズの今季のテーマとして本格的な世代交代も意識されています。特に今季は25歳以下の選手を大量に獲得して、いよいよ大ナタを振るう感じなのですが、リカルドは若手登用の面ではいかがでしょう。昨季のメンバーであれば渡井選手、小西選手は高卒生え抜きで育てた選手ですよね?

そうですね。ただ新卒という括りでいくと、成功したのってその2人ぐらいなんですよね。あとは大卒の井筒がチームに残っていれば主力だったでしょうけど。

そうなんですね。じゃあ積極的に(無理してでも)若手を起用するというよりは、出来る選手であれば年齢にこだわらないという方が正確ですか?

どちらかというと20代前半の選手を他クラブから連れてきて、リカルドのサッカーに慣れた2年目ぐらいに主力になってくれればという感じの補強だった気がします。年齢にはこだわらないと思いますよ。

なんかそれって、今季の浦和の補強って感じですね。笑

まさにそうですね。笑

ただ徳島で言うと昨季だけは例外で、垣田、西谷、杉森と一年目の選手がびたっとハマってくれたので、その分チームとしての戦力アップが大きかったのだと思います。一部の例外を除くと、アタッカーがサイドプレーヤーになってたり最初はぎこちなかったCBの選手が徐々に運ぶドリブルを身につけていったりというのが徳島での補強あるあるでした。

成長を見込んだコンバートやプレーの幅を広げさせるような起用も多いということですね。個人的には全体の仕組みと、それに応じて求められる役割をこなせれば登録や元々のポジションを気にする必要はあまりないと思うので、そういったコンバートは歓迎です。総じて、これまでの浦和とはかなり違ったシーズンになりそうです。

「リカルドの勝負は二年目なのかな」

さて、そろそろ最後の話題にしようと思うんですが、浦和レッズさんは厄介なことに「3年計画」の一年目をすでに消化しており、リカルドは二年目からのチャレンジ、そして目標は今季のACL圏内、三年目となる来季での優勝という感じになりそうです。個人的にはミシャ・レッズの時の経験を踏まえてもリカルドのサッカーが浸透して安定するようになるには一年半くらいかかって、計画目標の達成は良くてギリギリではないかと思っていますが、ズバリ、どういう印象ですか?笑

そうですね。おそらくファストブレイク、トランジション重視であれば大枠を仕込むのに時間はかからないでしょうが、そこから先の構築は一年では間に合わないと思います。ですので、リカルドの勝負は二年目なのかなと思いますが、一年目の進捗状況とその間の補強がカギを握るのかなと思いますね。リカルドが浦和でどういうサッカーを表現しようとしてるか?にもよりますけど、おそらく引いた相手をどう崩すかという問題には必ず直面すると思うので、となるとDFラインとコンダクターの補強・育成をどう考えるかにたどり着くのかなと。J2でさんざん選手を抜かれた時にも思ったんですけど、ライン間で勝負をする選手とサイドプレーヤーは意外と何とかなる気がします。特にリカルドはサイドアタッカーを育てるの上手いですし。

いやーリアルですね。笑

後ろの選手がプレー強度や対人性能を維持しつついかにゲームを構築できるかというのがポイントですね。これはどのチーム、どのサッカーでも真理になりそうな部分ですが。
観る側としては、使われる選手や「相手を見てプレーする」と言う部分は「3年計画」のコンセプトと併せて今まで以上に注視していくのが良さそうです。そこからリカルドがどのようなサッカーを思い描いているかを逆算していくというか。実は大槻監督の体制でも「相手を見てプレーする」ことの重要性は(実践できたかは別として)強調されていたので、そういう意味では昨季と似たようなチャレンジにはなりそうです。

ただリカルド自身も徳島での初年度よりは明らかに成長して引き出しも増えているはずなので、あとはいかにして選手を納得させることができるかじゃないかと思いますね。相手がこう出てきたとき、ボールをこう動かせばここが空くだろう、と。その積み重ねで選手をいかに早く納得させることができるかどうかが勝負のような気もします。

たしかに、「選手を納得させる」っていうのは浦和を観ていても重要性を感じます。まずは監督の言うことをやってみようと思わせられないと、特に国内のキャリアでは頂点に近いクラブの、それぞれの成功体験が既にある選手たちを新しい方向に動かすのは難しいのかなと。とはいえ昨季も含めてここ数年しっかり整理された戦術的約束を伴ったサッカーが出来ていなかったので、そういう点では選手たちもリカルドに期待していそうですけど。

最後におまけみたいになって申し訳ないんですが、今季の徳島はどうでしょう。ポジャートス監督マルセルコーチのコンビの欧州でのキャリアはリカルド以上ではないかと思いますが。

ウチはまだ何とも言えません。コロナの新規入国停止で、監督コーチのコンビが来日できないのでは?という話もありますし、何より補強のお知らせが皆無なので。笑

ただ選手のコメント等を読む限り、多くの選手が残ってくれそうな感じはあるので、あとはセンターラインの補強ですかね。天皇杯でのガンバ戦で痛いほど感じたので。特にCFとCBの補強は必須ですね。どちらも二人ずつぐらいは即戦力が欲しいです。誰か貸してください!!!笑

はい、ありがとうございました。笑

 

あとがき

いかがだったでしょうか。やっぱり徳島を長く観てきた方だけあって、時系列を踏まえた話が聞けたのは凄く有意義だったのではないかと思っています。3バックの監督と思われがちですが一年目は4バックをベースにしていたとか、今からネットの記事を漁ってもなかなか探せない情報です。話を聞いた感じ、総じてリカルドは非常に良い選択になりそうという期待感があります。ただ、スカッドをどのように料理するのか、具体的なところはふたを開けてみないとわからない部分が多いというのは仕方ないですね。

個人的には対談中に出たように、4バックをベースにしたプレッシングにビルドアップを乗せていくイメージのオーダーがクラブから出ているのではないかと思っています。そのうえで、ボール保持から相手を押し込んだ時にゴールを取り切るための工夫や役割をどう表現できるかが大事になるのかなと言う印象です。「成長を見込んだコンバート」の話がありましたが、何人かその対象になりそうな選手もいるわけですし。

C&Dさんとはシーズン中にももう一度話が出来ればと思っています。やっていく中でもっと具体的に聞きたいことも出てくるでしょうし、なにより受け答えのクオリティが高くて単純に楽しかったというのがあります。この記事、ほとんど僕とC&Dさんのやりとりそのまんまコピペです。助かります。

もしこの対談の内容以外で話題にしてほしいことがあれば、ぜひ僕にインプットしておいてください。今度聞いてみます。C&Dさんありがとうございました!